説明

軸体

【目的】 内部に可撓性材料、ゲル状物質や気体を封入した把持部は任意に変形してしまうため腰がなく柔らかすぎて筆記感が悪いという欠点があった。また、空間に微細な固体を配し腰がある把持部とした場合でも、好みの触感の個人差を補うには更なる改善の余地が残されていた。
【構成】 内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または補助材を配した把持部を配置及び/または一体に設けた軸体において、微細な固体及び/または粘調物の配される空間容積を変化させる手段を設けることを特徴とした軸体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持部を設けた軸体に関するものであり、その軸体の1例としては、ボールペンやシャープペンシルなどの筆記具や、口紅やアイライナーなど細長い容器、釣り竿、ドアノブ、ドライバーなどの工具類が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
把持する部分には、滑り止めや把持のしやすさといった効果を持たせるために様々な発明がなされている。滑り止めとしては、シリコーンやエラストマーといった弾性樹脂を把持部に配置した構成(グリップ)が採られており、把持部の内部に可撓性材料、ゲル状物質や気体、微細な固体を封入することによって持ちやすい把持部を形成している。
【特許文献1】特許第3431317号公報
【特許文献2】特開2005−199594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、内部に可撓性材料、ゲル状物質や気体を封入した把持部は任意に変形してしまうため腰がなく柔らかすぎて筆記感が悪いという欠点があった。また、空間に微細な固体を配し腰がある把持部とした場合でも、好みの触感の個人差を補うには更なる改善の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、軸体の把持部内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または補助材を配した把持部を配置及び/または一体に設けた軸体において、微細な固体及び/または粘調物の配される空間容積を変化させる手段を設け、把持部の触感を変化させることを特徴とする軸体を要旨とするものである。
【0005】
軸体1の材質は、金属や樹脂、木材、石材など形成できるものであればよく、把持部2を形成する材料が軸体1を形成できる強度を有していれば、その材料で把持部を軸体自体に形成することも可能であり、特に限定されない。また、これらの材質は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0006】
軸体1及び/または把持部2の材料として樹脂及び/または弾性樹脂があげられる。樹脂としてはポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレンテレフタレート樹脂(PET)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、弾性樹脂としてはアクリル樹脂やシリコーン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、エラストマーゲル、ポリエチレンゲル、ジメチル系シリコーン、メチルビニル系シリコーン、メチルフェニルビニル系シリコーン、メチルフルオロアルキル系シリコーン(フロロシリコーン)、フロロ−ジメチル共重合シリコーン、ウレタンゴム、エチレンアクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどが挙げられるが、形状が維持できるものであれば特に限定されない。これら樹脂及び/または弾性樹脂は1種または2種以上の混合物であってもよい。また樹脂で成形した把持部表面に弾性樹脂を成形、塗装するといった方法で滑り止め効果や把持感の向上を図ることもできる。
【0007】
把持部を構成する弾性樹脂の硬度は、ショアーAで0度から90度もしくは、アスカーCで0度から90度までの硬度範囲の中で適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。ただし、ショアーAで60度、アスカーCで80度以上の弾性樹脂は硬くなり、表面のベタツキや膨潤も少なくなることから、ショアーAで60度以下、アスカーCで80度以下の弾性樹脂であることが望ましい。また、内層と外層は同一材料で一体に成形しても硬度の異なる材料で別体で成形して組み立ててもよく、特に限定されない。
【0008】
これら樹脂及び/または弾性樹脂には、吸油および/または吸水性がある物質が添加されてもよい。吸油性および/または吸水性がある物質は、化粧品に使用される物質、オイルの除去に使用される物質、家庭内で防臭、清浄効果に使用される物質と多岐にわたり、その種類や形状は数多くある。例を挙げると木材や繊維、コルク、炭、皮革などの天然材料、シリカゲルや活性炭といった吸着素材、ゼオライトやけい藻土といった無機鉱物、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド多孔質体などを始めとした高分子吸油・吸水剤、紡錘状中空多孔質シリカ、多孔質シリカ、多孔質シリコーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムいった無機化合物、多孔質セラミック等が挙げられる。また、表面に多孔質シリカ等の吸油性および/または吸水性を有する被膜を形成することで、物質に吸油性および/または吸水性の機能を発揮、向上させてもよい。吸油および/または吸水した際に、これら吸油および/または吸水性がある物質の大きさが変化しないことが望ましいことから、無機鉱物、無機化合物が特に好ましい。これら吸油および/または吸水性がある物質は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0009】
吸油および/または吸水性がある物質はその機能を十分に発揮させるために、微粒子粉体として添加することが望ましい。これは粒径が細かい程、単位重量当たりの表面積が増大することから、油および/または水の吸収効率を高める効果が期待できる。しかし、その粒径は把持部の形状や大きさに応じて適宜選択すればよい。また、吸油および/または吸水性がある無機粉体を使用することにより、油および/または水を吸収した際にも容積の変化がなく、把持部の膨潤やゆるみを更に防止することができる。樹脂への添加量は把持部の形状や大きさに応じて適宜選択すればよいが、添加量が少な過ぎると十分な効果が期待できず、多すぎると強度が損なわれることから、樹脂に対して重量比率で0.001%〜50%、特に0.01%〜10%の添加量であることが望ましい。弾性樹脂への添加量は把持部の形状や大きさに応じて適宜選択すればよいが、添加量が少なすぎると十分な効果が期待できず、多すぎると弾性樹脂の硬度が高くなり、弾性が損なわれることから、弾性樹脂に対して重量比率で0.001%〜50%、特に0.01%〜10%の添加量であることが望ましい。
【0010】
これら弾性樹脂には触り心地や指先へのフィット感の向上、着色や文様といった意匠性の向上、抗菌や汗の吸放出、光触媒反応による自己洗浄といった機能性の付与のために粉体、微粒子、発泡剤などが含まれてもよい。
その粉体の具体例としては、スチレン、ナイロン、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシ、ポリメタクリル酸メチルなどの樹脂粉体や、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ガラス片、金属片などの無機粉体、シルクパウダー、木粉、コルク粉などの天然素材を粉体化したものなどが挙げられる。また、それらの粉体に、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系などの粉体塗膜を被覆した複合粉体、さらには、自動乳鉢、ボールミル、ジェットミル、アトマイザー、ハイブリダイザーなどを用いて樹脂粉体にこの樹脂粉体より小さい無機粉体を吸着させたり、打ち込んだりしたものなども挙げられ、特に限定されない。また、粉体の形状は、無定型、球状、板状、針状などが用いられ、特に限定するものではない。これら粉体は1種または2種以上添加してもよい。
【0011】
また、前記微粒子の具体例としては、カーボンブラック、グラファイトや、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウムなどの酸化物、窒化チタン、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化タンタルなどの窒化物、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化タンタルなどの炭化物、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタルなどのホウ化物が挙げられ、特に限定されない。また、微粒子の形状は無定型、鱗片状、球状、繊維状などを用いることができる。これら微粒子は、1種または2種以上添加してもよい。
【0012】
前記発泡剤は、化学発泡剤、物理発泡剤、熱膨張性マイクロカプセルなどが用いられる。化学発泡剤の具体例は、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジド化合物、トリアゾール化合物などの有機系熱分解型発泡剤、イソシアネート化合物などの有機系反応型発泡剤、重炭酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、水素化物などの無機系熱分解型発泡剤、重炭酸ナトリウム+酸、過酸化水素+イースト菌、亜鉛粉末+酸などの無機系反応型発泡剤などが挙げられる。
物理発泡剤の具体例は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロルエタン、ジクロルメタン、フロン、空気、炭酸ガス、窒素ガスなどが挙げられる。
熱膨張性マイクロカプセルの具体例は、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサンなどの低沸点炭化水素を芯物質とし、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの共重合体からなる熱可塑性樹脂を壁物質としたマイクロカプセルなどが挙げられ、特に限定されない。これら発泡剤は、1種または2種以上添加してもよい。
【0013】
又、把持部を構成する弾性樹脂の表面は滑らかな面や粗な面に成形できる。摩擦抵抗を高め、指先表面の引っかかりをよくするためには表面を鏡面の様に滑らかに、摩擦抵抗を低くしてさらさらした触感やゴミ、ほこりを付きにくくするためには表面を粗にすればよい。更に、把持部を構成する弾性樹脂の表面には適度な凹凸を形成してもよい。
【0014】
把持部は少なくとも内層と外層を設けることで内部に空間を設けた構造となっている。また、内層と外層は一体であっても、別体であってもよく、内層と外層の一部が連接している構造であってもよい。軸体の径方向の断面において、把持部の内層と外層の最短距離をRとする。
【0015】
把持部2の製造方法としては、圧縮成形やトランスファー成形、射出成形、押出成形、真空注形といった方法で成形した弾性樹脂を軸体に装着する方法や、インサート成形で形成するといった方法が挙げられるが、製造方法は特に限定されない。
【0016】
微細な固体4は軸体と把持部との間及び/または把持部に設けられた空間に配されている。微細な固体4の具体的な例としては、ステンレス、洋白、ジルコニア、ルビーボール等の硬球、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、めのう、水晶等の鉱石、御影石、大理石等の岩石、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル、ABS、AS、PMMA、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂やその発泡体、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ジメチル系シリコーン、メチルビニル系シリコーン、メチルフェニルビニル系シリコーン、メチルフルオロアルキル系シリコーン(フロロシリコーン)、フロロ−ジメチル共重合シリコーン、ウレタンゴム、エチレンアクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等の弾性樹脂、ナイロン、絹、綿等の繊維、ガラスなどが挙げられるが、微細な固体が形成できればよく、特に限定はされない。また、これらの微細な固体は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0017】
微細な固体4の形状は粒子状、繊維状、不定形状等様々な形状の固体が利用できる。硬球などの真球に近い形状の微細な固体を配した場合には、把持した際の変形が速く、また、放した時の形状復元も速い。岩石やガラスを粉砕した不定形の微細な固体を配した場合には、把持した際の変形は遅いが腰がある把持感があり、また、放した時にも形状をある程度記憶している。微細な固体の大きさは軸体の径方向の断面において、把持部の内層と外層の最短距離をRとしたとき、微細な固体の最短直径rはr=ARの係数Aが0<a≦0.8の条件を満たすものが望ましい。また、これらの微細な固体の大きさは1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0018】
軸体と把持部との間及び/または把持部内部に設けられた空間には微細な固体4の他に、微細な固体の流動性、形状保持性を補助するために弾性樹脂やゲル状物質や粘稠物などの補助材を配してもよい。粘稠物としては、KF96(信越化学工業(株)製)といったシリコーンオイルやtsk5370(Ge東芝シリコーン(株)製)といったシリコーンオイルコンパウンド、レチナックス グリース CL(昭和シェル石油(株)製)といった石油系グリースがあげられる。ゲル状物質としてはKE−1052、sifel827(信越化学工業(株)製)、アルファゲル((株)ジェルテック製)といったシリコーンゲル、人肌のゲル((株)エクシールコーポレーション製)といったウレタンゲルなどがあげられる。また、これらの補助材は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0019】
微細な固体及び/または粘調物の配される空間容積を変化させる手段として、空間の軸方向に対して前後に移動する空間断面形状と同形状の環状部材を空間内に配し、環状部材の移動によって微細な固体及び/または補助材の配される空間容積を変化させる方法や、外層の外周に外層外径より小さい環状部材を配し、これを移動させる方法等があげられる。また、把持する部分以外の箇所、例えば軸体の内側で空間容積を変化させる箇所を設けてもよい。微細な固体及び/または補助材の配される空間容積を変化させることができればよく、その方法は特に限定されない。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、把持部内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または補助材を配した把持部を配置及び/または一体に設けることによって、従来の弾性樹脂のみの把持部より変形能力を向上させ、かつ、可撓性材料、ゲル状物質や気体のみを封入した把持部より腰がある把持部となっている。さらに、微細な固体及び/または補助材の配される空間容積を変化させる手段を設けることによって、微細な固体及び/または粘調物の密度が調整でき、把持部の触感を変化させることが可能となっている。空間容積を大きくすると微細な固体及び/または補助材の密度は小さくなり、硬度が低下するため把持部は変形しやすく、柔らかい触感となる。逆に空間容積を狭くすると微細な固体及び/または補助材の密度は高くなり、硬度が上昇するため把持部は変形しにくく、硬い触感となる。すなわち、空間容積を変化させる手段を設けることにより、把持部を使用者の好みにあった触感に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または補助材を配した把持部を配置及び/または一体に設けた軸体において、微細な固体及び/または補助材の配される空間容積を変化させる手段を設け、把持部の触感を変化させることを最も主要な特徴とする。把持した指先の形状に合わせて変形し、形状を保持する把持部において、好みの触感に調整する目的を実現した。
【0022】
図1は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例1の図である。図2は図1の内部空間容積を変化させた図である。内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に微細な固体と補助材を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は把持部外層、参照符号4は微細な固体、参照符号5は補助材、参照符号6は筒状の空間容積変更部品、参照符号8は空間である。
軸体1の後方外周には雄ねじ部1aが形成されており、また、その雄ねじ部1aには空間容積変更部品6の内周面に形成された雌ねじ部6aが螺合している。即ち、軸体1と空間容積変更部品6は螺合によって固定されているが、互いを相対的に回転させることで前後移動することができる。この空間容積変更部品6の前後移動によって把持部2に設けられた内部空間8の容積が変更される。さらに、前記空間容積変更部品6は前方の内面が前方に向けて拡径した形状の筒状部材のため、把持部2の外層3の変形が追従しやすくなっている。
ここで、空間容積変更部品6を最後方に移動させた場合は、内部空間容積は最大となり、空間8内に配された微細な固体4と補助材5の密度は最小となるため、最も柔らかい把持部2となる。また、空間容積変更部品6を前方に移動させると内部空間容積は徐々に小さくなり、空間8内に配された微細な固体4と補助材5の密度は大きくなっていくため、硬い把持部2となる。
【0023】
軸筒1はポリエチレン、把持部2としてエラストマー(アクティマーAE−2060S、リケンテクノス(株)製、ショアーA硬度:60°)を用いて射出成形で成形した。微細な固体5としてガラスビーズ(ユニビーズUB−2022L、(株)ユニオン製)を内層と外層の間の空間に配し、隙間にシリコーンゲル(KE−1052、信越化学工業(株)製)を充填した把持部2を軸体1に装着した。把持部2は握った指の形状に変形し、持ちやすさ、滑りにくさといった効果を発揮する。内部のガラスビーズそのものは硬いため、しっかり握った際にも変形しすぎない、腰のある良好な感触が得られる。さらに空間容積変更部品6を回転させることで内部空間容積を調整することが出来、図2の状態では容積が小さくなっており、内部のガラスビーズの数やシリコーンゲルの重量には変化がないので空間内の密度が上昇するため図1の状態と比較して硬い触感となっている。
【0024】
図3は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例2の図である。図4は図3の内部空間容積を変化させた図である。内部に空間を設け、この空間に微細な固体と補助材を配した。把持部の前方と後方に前後移動可能なリング状の空間容積変更部品を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は把持部外層、参照符号4は微細な固体、参照符号5は補助材、参照符号6はリング状の空間容積変更部品、参照符号8は空間部である。
ゴム状弾性体などからなるリング状の空間容積変更部品6は把持部2の前方と後方に配されており、リング状の空間容積変更部品6の内径は把持部2の外径より小さい径になっているため空間容積変更部品6は把持部2を締め付け、把持部2の外層3との摩擦抵抗によって固定されている。空間容積変更部品6の断面は円形であると共に、弾性を有しているため、把持部2の外周面を滑らせたり、回転させたりすることで前後移動できる。この容積変更部品6の前後移動によって把持部2に設けられた内部空間8の容積が変更される。
例えば、前方に配された空間容積変更部品6を最前方に、後方に配された空間容積変更部品6を最後方に移動させた場合は、内部空間容積は最大となり、空間8内に配された微細な固体4と補助材5の密度は最小となるため、最も柔らかい把持部2となる。また、前方に配された空間容積変更部品6を後方に移動させると共に、後方に配された空間容積変更部品6を前方に移動させると内部空間容積は徐々に小さくなり、空間8内に配された微細な固体4と補助材5の密度は大きくなっていくため、硬い把持部2となる。
【0025】
軸筒1はアクリロニトリルスチレンブタジエン、把持部2としてエラストマー(ラバロンMJ6301C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。微細な固体5としてガラスビーズ(ユニビーズUB−1719LN、(株)ユニオン製)を軸筒1と把持部2との間の空間に配し、隙間にシリコーンゲル(SYLGARD527、東レ・ダウコーニング(株)製)を充填した把持部2を軸体1に装着した。空間容積変更部品6はシリコーンゴム(GE東芝シリコーン(株)製、TSE2570−6U、ゴム硬度30°)でコンプレッション成形で成形され、拡径した状態で内径に把持部を通し、拡径を解放することで把持部を締める状態となっている。把持部2は握った指の形状に変形し、持ちやすさ、滑りにくさといった効果を発揮する。内部のガラスビーズそのものは硬くシリコーンゲルによる弾力があるため、しっかり握った際にも変形しすぎず、腰のある良好な感触が得られる。さらに空間容積変更部品6を移動させることで内部空間容積を調整することが出来、図4の状態では容積が小さくなっており、内部のガラスビーズの数やシリコーンゲルの重量には変化がないので空間内の密度が上昇するため図3の状態と比較して硬い触感となっている。
【0026】
図5は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例3の図である。図6は図5の内部空間容積を変化させた図である。内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に微細な固体を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は把持部外層、参照符号4は微細な固体、参照符号6は筒状の空間容積変更部品、参照符号7は筒状の空間容積調整リング、参照符号8は空間である。
把持部2の後方には、空間容積調整リング7の回転により前後移動する空間容積変更部品6を配し、その空間調整リング7を回転させることにより空間容積変更部品6が前後に移動できるようにした。具体的に説明する。把持部材2の空間8の内部後方には、その空間8の横断面形状と同形状の前端部を有する空間容積変更部品6の前端部が挿入されている。一方、軸体1の後方外周には環状凸部1bが形成されており、その環状凸部1bに前記把持部2の後方に配置された空間容積調整リング7の内面に形成された環状凹部7aが嵌り込んでいる。その環状の凸部1bと凹部7aとの嵌め合い作用によって、空間容積調整リング7は軸体1に対して径方向に回転が可能であるが、前後動は不能になっている。
また、その空間容積調整リング7内部には雄ねじ部7bが形成されており、空間容積変更部品6の内面にはその雄ねじ部7bに螺合する雌ねじ部6aが形成されている。即ち、空間容積調整リング7と空間容積変更部品6は螺合により固定されているが、互いを相対的に回転させることで前後移動することができる。尚、空間容積変更部品6の前端部は、把持部材2の内面に圧入された状態になっているため、補助部材5などが摺動部分から漏れ出してしまう危険性がなく、また、把持部材2に対する前後動は可能であるが回転は不能になっている。この空間容積変更部品6の前後移動によって把持部2に設けられた内部空間8の容積が変更される。例えば、空間容積変更部品6を最後方に移動させた場合は、内部空間容積は最大となり、空間8内に配された微細な固体4の密度は最小となるため、最も柔らかい把持部2となる。また、空間容積変更部品6を前方に移動させると内部空間容積は徐々に小さくなり、空間8内に配された微細な固体4の密度は大きくなっていくため、硬い把持部2となる。
【0027】
軸筒1はポリプロピレン、把持部2としてエラストマー(ラバロンMJ6301C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。微細な固体5としてガラスビーズ(ユニビーズUB−1416LN、(株)ユニオン製)を内層と外層の間の空間に配し、隙間にシリコーンゲル(SYLGARD527、東レ・ダウコーニング(株)製)を充填した把持部2を軸体1に装着した。把持部2は握った指の形状に変形し、持ちやすさ、滑りにくさといった効果を発揮する。内部のガラスビーズそのものは硬くシリコーンゲルによる弾力があるため、しっかり握った際にも変形しすぎず、腰のある良好な感触が得られる。空間容積変更部品6は空間容積調整リング7を回転させることで前後に移動して内部空間容積を調整することが出来、図6の状態では容積が小さくなっており、内部のガラスビーズの数には変化がないので空間内の密度が上昇するため図5の状態と比較して硬い触感となっている。また空間容積変更部品6と空間容積調整リング7を分けることで外観上の変化はないが、把持部の硬さを調整することが可能になっている。
【0028】
図7は、本発明を筆記具の把持部に使用した実施例4の図である。図8は図7の内部空間容積を変化させた図である。内層と外層を設けることで内部に空間を設け、この空間に補助材を配した。把持部の後方にスライドにより前後移動する空間容積変更部品を配した。参照符号1は軸体、参照符号2は把持部、参照符号3は把持部外層、参照符号5は補助材、参照符号6は空間容積変更部品、参照符号8は空間である。
軸体1には把持部2の内部空間8に連なる連通孔1cが形成されている。その連通孔1cには、その連通孔1cの横断面形状と同じ形状を前方部に有する空間容積変更部品6の前端部が挿入されている。また、その空間容積変更部品6の後端部には、空間容積変更部材6を前後に移動させるための突起6bが形成されている。その突起の外径は、前記把持部2の外径よりも大きなものとなっており、把持部2及び軸体1より外径部から突出している。空間容積変更部品6は軸体1の後方に設けられたスリット部9に挿入されており、そのスリット部9と空間容積変更部品6の摩擦抵抗により固定されている。この空間容積変更部品6の前後移動によって把持部2に設けられた内部空間8の容積が変更される。例えば、空間容積変更部品6を最後方に移動させた場合は、内部空間容積は最大となり、空間8内に配された補助材5の密度は最小となるため、最も柔らかい把持部2となる。また、空間容積変更部品6を前方に移動させると内部空間容積は徐々に小さくなり、空間8内に配された補助材5の密度は大きくなっていくため、硬い把持部2となる。
【0029】
軸筒1はポリプロピレン、把持部2としてエラストマー(ラバロンMJ6301C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。補助材5としてシリコーンオイル(KF96、信越化学工業(株)製)を内層と外層の間の空間に配し、把持部2を軸体1に装着した。把持部2は握った指の形状に変形し、持ちやすさ、滑りにくさといった効果を発揮する。空間容積変更部品6を前後に移動することで内部空間容積を調整することが出来、図8の状態では容積が小さくなっており、内部のシリコーンオイルの重量には変化がないので空間内の密度が上昇するため図7の状態と比較して硬い触感となっている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、軸体の少なくとも把持部する部分に弾性樹脂を設けた軸体に関するものである。その軸体の例としては、シャープペンシルやボールペン、修正ペンなどの筆記具、カッターや彫刻刀、ドライバーなどの工具類、PDA(パーソナル デジタル アシスタンス)や電子手帳に使用される入力ペン、自転車のハンドルなど多岐にわたる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を筆記具の把持部に使用した実施例1の図である。
【図2】図1の空間容積を小さくしたときの図である。
【図3】実施例2の図である。
【図4】図3の空間容積を小さくしたときの図である。
【図5】実施例3の図である。
【図6】図5の空間容積を小さくしたときの図である。
【図7】実施例4の図である。
【図8】図7の空間容積を小さくしたときの図である。
【符号の説明】
【0032】
1 軸体
2 把持部
3 把持部外層
4 微細な固体
5 補助材
6 空間容積変更部品
7 空間容積調整リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を設け、この空間に微細な固体及び/または補助材を配した把持部を配置及び/または一体に設けた軸体において、微細な固体及び/または粘調物の配される空間容積を変化させる手段を設けることを特徴とした軸体。
【請求項2】
前記容積を変化させる手段を軸体の長手方向に対して前後動可能に配置したことを特徴とする請求項1記載の軸体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−241471(P2009−241471A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91983(P2008−91983)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】