軸受包装体
【課題】 防錆性に優れ、包装作業が容易な軸受包装体を提供する。
【解決手段】 軸受包装体Bは、紙製の外層材3の内側面に、油を通さない材料からなる内層材4を設けた複層シートからなる袋状の容器2と、この容器2の内部に密封状態で収容された軸受1とを備える。内層材4は、樹脂製または金属製のフィルムコート層からなる。容器2の内部は、防錆油5で満たすか、または真空とするか、または不活性ガスで満たす。容器2の内部を真空とするか、または不活性ガスで満たす場合、軸受1の表面に防錆油またはグリスを塗布する。
【解決手段】 軸受包装体Bは、紙製の外層材3の内側面に、油を通さない材料からなる内層材4を設けた複層シートからなる袋状の容器2と、この容器2の内部に密封状態で収容された軸受1とを備える。内層材4は、樹脂製または金属製のフィルムコート層からなる。容器2の内部は、防錆油5で満たすか、または真空とするか、または不活性ガスで満たす。容器2の内部を真空とするか、または不活性ガスで満たす場合、軸受1の表面に防錆油またはグリスを塗布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受を袋状の容器で包装した軸受包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装状態で錆の発生の問題がない軸受の包装方法として、軸受を気化性防錆シートで包装する方法(例えば特許文献1)や、軸受を密封包装する方法(例えば特許文献2)がある。いずれの方法も、包装された軸受は、外装容器に入れて梱包される。
【0003】
また、易錆部品の防錆包装体として、易錆部品を気化性防錆袋で密封してから、外装容器に梱包したものがある(例えば特許文献3)。
【0004】
さらに、容器を容易に開封するために、引き裂き紐オープナを備えた食品包装の方法がある(例えば特許文献4)。この方法は、食品包装のような、包装容器の厚みが薄い場合に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200658号公報
【特許文献2】特開2004−224426号公報
【特許文献3】特開平11−222265号公報
【特許文献4】特表平05−505164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の軸受の包装は、防錆能力を有するシートまたは密封フィルムと、その外側に覆われる外装容器とからなる二重包装であり、シートまたはフィルムによる包装、および外装容器による包装をそれぞれ別々にしなければならず、包装作業に手間がかかった。
【0007】
この発明の目的は、防錆性に優れ、包装作業が容易な軸受包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の軸受包装体は、紙製の外層材の内側面に、油を通さない材料からなる内層材を設けた複層シートからなる容器と、この容器の前記容器の内部に密封状態で収容された軸受とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、油を通さない材料からなる内層材により、内部の軸受が外気に触れることを防ぎ、錆の発生を防ぐ。また、外層材により、内層材を損傷等から保護する。外層材は紙製であるため、加工が容易で、比較的安価に製作できる。容器を、上記外層材および内層材からなる複層シートとしたことにより、1回の包装作業で軸受を包装することができ、包装作業が簡単である。
【0010】
この発明において、前記内層材は、樹脂製または金属製のフィルムコート層からなっているのが良い。樹脂製のフィルムコート層の材料としては、例えばポリエチレン、ポリスチレンが適する。また、金属製のフィルムコート層の材料としては、例えばアルミニウムが適する。なお、フィルムコート層とは、コーティングによってフィルム状に形成された層を言う。
上記樹脂製や金属製のフィルムコート層は、油を通さず、内部の軸受を外気に触れさせない効果が高い。
【0011】
この発明において、前記容器の内部を防錆油で満たしても良い。または、前記容器の内部を真空としても良い。または、前記容器の内部をアルゴン等の不活性ガスで満たしても良い。
いずれについても、容器の内部に空気が存在しないようにして、軸受に錆が発生することを防ぐことができる。
【0012】
容器の内部を真空にする場合や、不活性ガスで満たす場合、前記軸受の表面に防錆油またはグリスを塗布するのが望ましい。
軸受の表面に防錆油またはグリスを塗布すれば、仮に容器の内部に外気が侵入しても軸受が外気に触れることを防ぐことができる。
【0013】
容器の内部を満たす前記防錆油や軸受の表面に塗布する前記防錆油として、専用の防錆油の代わりに、軸受運転時に使用する潤滑油を流用してもよい。この潤滑油としては、ISO粘度がVG2ないしVG10の範囲に含まれる低粘度の鉱油系軸受油が適する。この種の低粘度の鉱油系軸受油は、使用する潤滑環境に悪影響を与えることが少ない。つまり、メーカや銘柄が異なる潤滑油と混じり合っても悪影響が出ない。
【0014】
この発明において、前記容器の内部に複数の軸受を収容し、各軸受間に仕切り材を介在させても良い。
前記容器の内部に複数の軸受を収容することで、コスト低下を図れる。その場合、各軸受間に仕切り材を介在させることで、各軸受が互いに接触して損傷することを防ぐ。
【0015】
この発明において、前記容器は、展開状態で平面状の容器素材を、軸受を収容可能な定められた立体形状に成形したものである場合、前記容器素材における、成形後に内部に収容される軸受の外周縁が接触する箇所に、軸受の外周縁に沿って外向きに凸形状に変形するのを容易にする折り目を付けても良い。
これにより、容器で軸受を包装したとき、軸受の外周縁に沿って容器が変形することで、容器内で軸受が移動しにくくなり、位置が安定する。
【0016】
この発明において、前記容器は、袋の開口縁部分である一対の接着片同士を互いに重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造である場合、前記接着部の前記一対の接着片間に挟み込んだ紐状体の一部を前記容器の外部に露出させ、この紐状体の露出部分を引っ張ることで前記一対の接着片を分離可能としてもよい。
この構成によると、紐状体の露出部分を引っ張ることで、紐状体が引き出される際に一対の接着片を分離させられる。そのため、容器の開封が容易である。
【0017】
または、前記容器の外層材の一部に、切断を容易にするための切れ目を設けてもよい。さらに、前記切れ目に続いて外層材にミシン目を設けてもよい。
切れ目を設けると、この切れ目から外層材の切断を開始することで、容器を簡単に開封することができる。さらに、ミシン目を設けると、このミシン目に沿って外層材を容易に切断できる。特に外層材の厚みが厚い場合、切れ目とミシン目の両方を設けるのが有効である。
【0018】
この発明において、前記容器の前記内層材は樹脂製のフィルムコート層からなり、かつ前記容器は、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片同士を重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造であり、前記接着部における前記一対の接着片同士の接着は、前記内層材同士の溶着によっても良い。
【0019】
その場合、前記容器の内部を、前記内層材同士の溶着温度よりも低い温度で蒸発する防錆油で満たすのが良い。
容器の内部を防錆油で満たすことで、容器の内部に空気が存在しないようにして、内部の軸受に錆が発生することを防ぐことができる。防錆油が溶着温度よりも低い温度で蒸発する油であれば、各内層材の溶着面に付着した防錆油を加熱により蒸発させた後、さらに加熱することで内層材同士を溶着させることができる。
【0020】
この発明において、前記容器の一方向から見た外形を、長方形の部分と、この長方形の部分の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分とを合わせた五角形状としても良い。
製品としての軸受包装体は、定められた個数ずつ外装箱に詰めて梱包される。軸受包装体を2列並べて外装箱に詰める場合に、各列の軸受包装体の二等辺三角形の部分が互いに向き合い、かつ各列で軸受包装体の位置を並び方向にずらす。これにより、各列の軸受包装体の二等辺三角形の部分が互いに係合して、輸送時等に各軸受包装体が外装箱の中で位置ずれするのを防ぐことができる。そのため、各軸受包装体間に緩衝材を挟む必要がなく、梱包作業の能率向上とコストダウンを図れる。
【0021】
この発明において、前記容器を四面体形状としてもよい。
容器が四面体形状であると、複数の軸受包装体を外装箱に詰めた場合に、外装箱の中で各軸受包装体が互いに位置ずれしにくくできる。特に、容器が正四面体に近い形状である場合、六角柱状の外装箱にほとんど隙間無く詰めることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明の軸受包装体は、紙製の外層材の内側面に、油を通さない材料からなる内層材を設けた複層シートからなる袋状の容器と、この容器の前記容器の内部に密封状態で収容された軸受とを備えるため、防錆性に優れ、包装作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図2】同軸受包装体の断面図である。
【図3】同軸受包装体の容器の展開図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】この発明の異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図6】同軸受包装体の容器の展開図である。
【図7】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の断面図である。
【図8】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図9】同軸受包装体の一方の接着部の断面図である。
【図10】同軸受包装体の容器の展開図である。
【図11】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図12】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図13】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図14】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図15】(A)この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図、(B)はその概略側面図である。
【図16】同軸受包装体を外装箱に詰めた状態を示す断面図である。
【図17】(A)この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図、(B)はその概略側面図である。
【図18】同軸受包装体を外装箱に詰めた状態を示す断面図である。
【図19】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図20】同軸受包装体が詰められる外装箱の斜視図である。
【図21】図19の軸受包装体を図20の外装箱に詰める場合の第1の過程を示す斜視図である。
【図22】図19の軸受包装体を図20の外装箱に詰める場合の第2の過程を示す斜視図である。
【図23】図19の軸受包装体を図20の外装箱に詰める場合の第3の過程を示す斜視図である。
【図24】従来の密封容器の斜視図である。
【図25】同密封容器の接着部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1ないし図4は、この発明の第1の実施形態を示す。図1および図2に示すように、この軸受包装体は、軸受1が、袋状の容器2の内部に密封状態で収容されたものである。容器2は、紙製の外層材3の内側面に、油を通さない材料からなる内層材4を設けた複層シートからなる。図1における上下両端の部分は、後で説明する接着部6,13である。
【0025】
内層材4は、例えば外層材3の内側面に、樹脂製のフィルムコート層をコーティングにより形成したものである。樹脂製のフィルムコート層の材料としては、例えばポリエチレン、ポリスチレンが適する。樹脂製のフィルムコート層の代わりに、金属製のフィルムコート層としても良い。金属製のフィルムコート層の材料としては、例えばアルミニウムが適する。また、外層材3の内側面に、上記樹脂や金属製のフィルムからなる内層材4をラミネートして、複層シートとしたものであっても良い。
【0026】
軸受1の防錆のために、例えば容器2の内部は防錆油5で満たされる。代わりに、容器2の内部を真空としても良く、または容器2の内部をアルゴン等の不活性ガスで満たしても良い。容器2の内部を真空とする場合や、不活性ガスで満たす場合、軸受1の表面に防錆油またはグリスを塗布するのが望ましい。
【0027】
前段における容器2の内部に満たす防錆油5や軸受1の表面に塗布する防錆油としては、一般的には市販されている専用の防錆油を用いるが、専用の防錆油の代わりに、軸受運転時に使用する潤滑油を流用しても良い。この場合の潤滑油は、ISO粘度がVG2ないしVG10の範囲に含まれる低粘度の鉱油系軸受油であるのが望ましい。低粘度の鉱油系軸受油は、使用する潤滑環境に悪影響を与えることが少ない。例えば軸受1が工作機械用である場合、工作機械が設置される工場によって、使用している潤滑油のメーカや銘柄が多種多様である。軸受包装体Bの防錆油としての潤滑油が低粘度の鉱油系軸受油であれば、潤滑油メーカや銘柄が異なる潤滑油と混じり合っても悪影響が出ない。
【0028】
容器2は、展開状態で図3に示す平面形状の容器素材2Aを、軸受1を収容可能な定められた立体形状(図1)に成形したものである。成形は、例えば以下の順で行う。図3が外層材3側から見た状態とした場合、まず、各山折りの折曲げ線L1〜L4に沿って紙面の向こう側に凸となるように折り曲げ、糊代片7の内側面を被接着部8の外側面に接着することで、筒状に形成する。上記山折りの折曲げ線L1〜L4および下記の谷折りの折曲げ線L5〜L8に沿って予め折り目を付けておけば、成形時の折り曲げが容易である。
【0029】
次に、筒の一方(上側)の開口部を閉じ状態に接着して接着部6とする。すなわち、谷折りの折曲げ線L5,L6に沿って紙面の手前側に凸となるように折り曲げて、一対の接着片9,10の間に折込み片11,12を挟み込み、接着片9,10同士、および接着片9,10と折込み片11,12とを互いに接着する。接着部6は、図4に示す断面形状となる。一対の接着片9,10は、それぞれの中央部同士が互いに接着し、接着片9の両端部に各折込み片11,12の片側部分11a,12aが接着し、接着片10の両端部に各折込み片11,12のもう片側部分11b,12bが接着する。
【0030】
同様に、他方(下側)の開口部を閉じ状態に接着して接着部13とする。すなわち、谷折りの折曲げ線L7,L8に沿って紙面の手前側に凸となるように折り曲げて、一対の接着片14,15の間に折込み片16,17を挟み込み、接着片14,15同士、および接着片14,15と折込み片16,17とを互いに接着する。下側の接着部13の断面形状も、上側の接着部6と同様の断面形状なので、図示を省略する。
【0031】
これにより、内部が密封された袋状の容器2となる。つまり、容器2は、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片9,10同士および接着片14,15同士を重ね合わせて接着して接着部6,13とすることで内部を密封する構造である。上記成形過程における適当な段階、例えば上側の接着部6の接着が終了してから下側の接着部13の接着を行うまでの間に、容器2内に軸受1を挿入すると共に防錆油5を充填する。
【0032】
各接着部6,13における一対の接着片9,10同士および接着片14,15同士の接着は、例えば内層材4同士の溶着によって行なう。その場合、容器2の内部に満たす防錆油5は、内層材4同士の溶着温度よりも低い温度で蒸発する性質のものであるのが良い。なぜなら、各内層材4の溶着面に付着した防錆油5を加熱により蒸発させた後、さらに加熱することで内層材4同士を溶着させることができるからである。
【0033】
この構成の軸受包装体Bは、油を通さない材料からなる内層材4により、内部の軸受1が外気に触れることを避け、錆の発生を防ぐ。また、外層材3により、内層材4を損傷等から保護する。外層材3は紙製であるため、加工が容易で、比較的安価に製作できる。容器2を、上記外層材3および内層材4からなる複層シートとしたことにより、1回の包装作業で軸受を包装することができ、包装作業が簡単である。
【0034】
図5および図6は異なる実施形態を示す。この軸受包装体Bの容器2は、図6の容器素材2Aから成形される。容器素材2Aは、成形後に内部に収容される軸受1の外周縁が接触する箇所に、軸受1の外周縁に沿って外向きに凸形状に変形するのを容易にする折り目18を付けたものである。このように予め折り目18を付けておけば、図5のように容器2に成形したときに、軸受1の外輪(図示せず)の外周形状に沿って容器2が変形する。これにより、容器2で軸受1を包装したとき、容器2内で軸受1が移動しにくくなり、位置が安定する。
【0035】
容器2内に収容する軸受1の個数は、1個に限らず、複数個であってもよい。容器2内に軸受1を複数個収容することで、コスト低下を図れる。その場合、図7のように、各軸受1間に仕切り材20を介在させて、各軸受1が互いに接触して損傷することを防ぐのが良い。
【0036】
図8は容器2の開封を容易にする手段を設けた軸受包装体、図9はその接着部の断面図、図10はその容器素材をそれぞれ示す。この軸受包装体Bは、容器2の一方の接着部6の互いに対向する一対の接着片9,10間に、両端を容器2外に露出させた紐状体21を挟み込んである。紐状体21が挟み込まれる位置は、接着片9,10の基端(容器2の内部領域に沿う箇所)の位置であり、かつ成形時に折込み片11,12にかからない幅方向(左右方向)中央の位置とされる。
【0037】
この構成であると、紐状体21の露出部分21aを引っ張ることで、紐状体21が引き出される際に前記一対の接着片9,10を互いに分離させて、容器2を開封する。一対の接着片9,10を分離させるのであり、接着片9,10を切断するのではないため、容器2の開封が容易である。
【0038】
なお、従来、紙等でできた密封容器を開封する技術として、図24および図25に示す構造が知られていた。この密封容器30も、各実施形態の容器2と同様に、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片同士を重ね合わせて接着して接着部6,13とすることで内部を密封する構造である。さらに、この密封容器30は、一方の接着部6を折り返し、その本体部分6aと折り返し部分6bとを互いに接着してあり、本体部分6aと折り返し部分6bとの間に紐状体21を挟み込んである。紐状体21の両端は、接着部6の左右両側に露出している。
【0039】
この密封容器30は、紐状体21の露出部分21aを、紐状体21の長さ方向に対し垂直な方向に引っ張ることで、接着部6における本体部分6aと折り返し部分6bとの境界部を引き裂いて容器2を開封する。そのため、接着部6を引き裂くには、容器素材が薄くて脆弱である必要がある。したがって、この開封技術は、容器素材が薄い場合には有効であるが、容器素材が厚紙や段ボール等である場合には向かない。
【0040】
容器2の開封を容易にする他の手段として、以下が挙げられる。
図11の容器2は、接着部6,13にそれぞれ切込み22を設け、両切込み22を互いにつなぐミシン目23が外層材3に設けてある。ミシン目23は片面だけに設けても、両面に設けてもよい。この構成であると、切込み22の両側の部分を手でつかんで外側に引っ張ることにより接着部6,13を引き裂き、さらに両側に引っ張ることによりミシン目23に沿って外層材3を切断して容器2を開封する。容器素材が薄い場合には、ミシン目23が無くても容器2を切断することができる。したがって、容器2が厚紙やダンボール等でできている場合だけ、ミシン目23を設ければよい。
【0041】
図12の容器2は、前記切込み22およびミシン目23が、互いに平行に2条設けられている。この場合は、2条のミシン目23に挟まれた部分が帯状に除去されて容器2が開封される。
【0042】
図11および図12に示す容器2は、両端が接着部6,13とされているが、次段で説明するような示す容器2のように、一端だけが接着部6とされ、他端は平面状になっている場合にも、前記切込み22およびミシン目23は有効である(図13、図14参照)。
【0043】
図15は、容器の外形が異なる実施形態を示す。この軸受包装体Bの容器2は、一端にのみ接着部6が設けられ、他端は平面状とされている。つまり、正面から見た外形は長方形で、側面から見た外形は、概略で、長方形の部分24と、この長方形の部分24の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分25とを合わせた五角形状である。この軸受包装体Bは、軸受1の中心Oが前後に沿う姿勢で軸受1が容器2内に収容されていて、側面視で縦長の形状とされている。このように縦長の形状とすると、容器表面のうち、狭い表面積の面に接着部6が設けられるので、容器素材の材料を節約することができる。
【0044】
通常、製品としての軸受包装体Bは、複数個数ずつ外装箱にまとめて梱包されて輸送される。その場合、図16のように、下段と上段とで上下逆向きとして各段の軸受包装体Bの二等辺三角形の部分が互いに向き合い、かつ各段で軸受包装体Bの位置を並び方向にずらして外装箱26に詰める。それにより、下段の軸受包装体Bの二等辺三角形の部分25と上段の軸受包装体Bの二等辺三角形の部分25とが互いに係合して、各軸受包装体Bが外装箱26の中で位置ずれするのを防ぐことができる。そのため、各軸受包装体B間に緩衝材を挟む必要がなく、梱包作業の能率向上とコストダウンを図れる。
【0045】
図17に示す軸受包装体Bも、前記同様に、正面から見た外形は長方形で、側面から見た外形は、概略で、長方形の部分24と、この長方形の部分24の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分25とを合わせた五角形状であるが、この軸受包装体Bは、軸受1の中心Oが上下に沿う姿勢で軸受1が容器2内に収容されていて、上下に平たい形状とされている。
【0046】
この軸受包装体Bも、図18のように、前記同様に外装箱26に詰めることで、外装箱26の中で位置ずれするのを防ぐことができる。また、この軸受包装体Bは上下高さが低いため、下段と上段の組を上下に複数組重ねても、外装箱26があまり上下に高くならず安定している。さらに、この軸受包装体Bは、外装箱26の底面に接する面が表面積の大きい面であるため、荷姿が安定し、容器2への負荷が小さくなる。
【0047】
図19は、容器の外形が異なる実施形態を示す。この軸受包装体Bの容器2は、四面体形状である。四面体を構成する6本の稜線のうち互いに隣接しない2本の稜線の部分が、展開状態で平面状の容器素材(図示せず)の糊代部からなる接続部6とされている。容器2が四面体形状であると、複数の軸受包装体Bを外装箱26に詰めた場合に、外装箱26の中で各軸受包装体Bが互いに位置ずれしにくくできる。
【0048】
また、この実施形態のように、容器2が正四面体に近い形状である場合、図20に示す六角柱状の外装箱26にほとんど隙間無く詰めることができる。外装箱26は、底面に六角錘状の凸部26aが設けられている。以下、外装箱26への軸受包装体Bの詰め方について説明する。
【0049】
まず、図21のように、前記六角錘状の凸部26aの各錘面の上に、1段目の6個の軸受包装体B(1)をそれぞれ載せる。その際、各軸受包装体Bの片方の接着部6が平面視六角形に並ぶようにする。
【0050】
次に、図22のように、1段目の各軸受包装体B(1)によって形成された凹部27に嵌め込むように、2段目の6個の軸受包装体B(2)を、1段目の各軸受包装体B(1)に対して平面視の位相をずらして載せる。この段階では、2段目の各軸受包装体B(2)の頂点が集まる中央部は凹んだ状態となる。
【0051】
次に、図23のように、2段目の各軸受包装体B(2)の上に、3段目の6個の軸受包装体B(3)を平面視の位相をずらして載せる。すなわち、3段目の軸受包装体B(3)は、その下側の稜線を、互いに隣接する2段目の軸受包装体B(2)間に位置させる。これにより、3段目の各軸受包装体B(3)の上面によって、外装箱26の凸部26aと同じ六角錘状の面が構成される。そのため、3段目の各軸受包装体B(3)の上に、外装箱26を重ね合わせることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…軸受
2…容器
2A…容器素材
3…外層材
4…内層材
5…防錆油
6,13…接着部
9,10,14,15…接着片
18…折り目
20…仕切り材
21…紐状体
21a…露出部分
22…切れ目
23…ミシン目
24…長方形の部分
25…二等辺三角形の部分
B…軸受包装体
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受を袋状の容器で包装した軸受包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装状態で錆の発生の問題がない軸受の包装方法として、軸受を気化性防錆シートで包装する方法(例えば特許文献1)や、軸受を密封包装する方法(例えば特許文献2)がある。いずれの方法も、包装された軸受は、外装容器に入れて梱包される。
【0003】
また、易錆部品の防錆包装体として、易錆部品を気化性防錆袋で密封してから、外装容器に梱包したものがある(例えば特許文献3)。
【0004】
さらに、容器を容易に開封するために、引き裂き紐オープナを備えた食品包装の方法がある(例えば特許文献4)。この方法は、食品包装のような、包装容器の厚みが薄い場合に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200658号公報
【特許文献2】特開2004−224426号公報
【特許文献3】特開平11−222265号公報
【特許文献4】特表平05−505164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の軸受の包装は、防錆能力を有するシートまたは密封フィルムと、その外側に覆われる外装容器とからなる二重包装であり、シートまたはフィルムによる包装、および外装容器による包装をそれぞれ別々にしなければならず、包装作業に手間がかかった。
【0007】
この発明の目的は、防錆性に優れ、包装作業が容易な軸受包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の軸受包装体は、紙製の外層材の内側面に、油を通さない材料からなる内層材を設けた複層シートからなる容器と、この容器の前記容器の内部に密封状態で収容された軸受とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、油を通さない材料からなる内層材により、内部の軸受が外気に触れることを防ぎ、錆の発生を防ぐ。また、外層材により、内層材を損傷等から保護する。外層材は紙製であるため、加工が容易で、比較的安価に製作できる。容器を、上記外層材および内層材からなる複層シートとしたことにより、1回の包装作業で軸受を包装することができ、包装作業が簡単である。
【0010】
この発明において、前記内層材は、樹脂製または金属製のフィルムコート層からなっているのが良い。樹脂製のフィルムコート層の材料としては、例えばポリエチレン、ポリスチレンが適する。また、金属製のフィルムコート層の材料としては、例えばアルミニウムが適する。なお、フィルムコート層とは、コーティングによってフィルム状に形成された層を言う。
上記樹脂製や金属製のフィルムコート層は、油を通さず、内部の軸受を外気に触れさせない効果が高い。
【0011】
この発明において、前記容器の内部を防錆油で満たしても良い。または、前記容器の内部を真空としても良い。または、前記容器の内部をアルゴン等の不活性ガスで満たしても良い。
いずれについても、容器の内部に空気が存在しないようにして、軸受に錆が発生することを防ぐことができる。
【0012】
容器の内部を真空にする場合や、不活性ガスで満たす場合、前記軸受の表面に防錆油またはグリスを塗布するのが望ましい。
軸受の表面に防錆油またはグリスを塗布すれば、仮に容器の内部に外気が侵入しても軸受が外気に触れることを防ぐことができる。
【0013】
容器の内部を満たす前記防錆油や軸受の表面に塗布する前記防錆油として、専用の防錆油の代わりに、軸受運転時に使用する潤滑油を流用してもよい。この潤滑油としては、ISO粘度がVG2ないしVG10の範囲に含まれる低粘度の鉱油系軸受油が適する。この種の低粘度の鉱油系軸受油は、使用する潤滑環境に悪影響を与えることが少ない。つまり、メーカや銘柄が異なる潤滑油と混じり合っても悪影響が出ない。
【0014】
この発明において、前記容器の内部に複数の軸受を収容し、各軸受間に仕切り材を介在させても良い。
前記容器の内部に複数の軸受を収容することで、コスト低下を図れる。その場合、各軸受間に仕切り材を介在させることで、各軸受が互いに接触して損傷することを防ぐ。
【0015】
この発明において、前記容器は、展開状態で平面状の容器素材を、軸受を収容可能な定められた立体形状に成形したものである場合、前記容器素材における、成形後に内部に収容される軸受の外周縁が接触する箇所に、軸受の外周縁に沿って外向きに凸形状に変形するのを容易にする折り目を付けても良い。
これにより、容器で軸受を包装したとき、軸受の外周縁に沿って容器が変形することで、容器内で軸受が移動しにくくなり、位置が安定する。
【0016】
この発明において、前記容器は、袋の開口縁部分である一対の接着片同士を互いに重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造である場合、前記接着部の前記一対の接着片間に挟み込んだ紐状体の一部を前記容器の外部に露出させ、この紐状体の露出部分を引っ張ることで前記一対の接着片を分離可能としてもよい。
この構成によると、紐状体の露出部分を引っ張ることで、紐状体が引き出される際に一対の接着片を分離させられる。そのため、容器の開封が容易である。
【0017】
または、前記容器の外層材の一部に、切断を容易にするための切れ目を設けてもよい。さらに、前記切れ目に続いて外層材にミシン目を設けてもよい。
切れ目を設けると、この切れ目から外層材の切断を開始することで、容器を簡単に開封することができる。さらに、ミシン目を設けると、このミシン目に沿って外層材を容易に切断できる。特に外層材の厚みが厚い場合、切れ目とミシン目の両方を設けるのが有効である。
【0018】
この発明において、前記容器の前記内層材は樹脂製のフィルムコート層からなり、かつ前記容器は、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片同士を重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造であり、前記接着部における前記一対の接着片同士の接着は、前記内層材同士の溶着によっても良い。
【0019】
その場合、前記容器の内部を、前記内層材同士の溶着温度よりも低い温度で蒸発する防錆油で満たすのが良い。
容器の内部を防錆油で満たすことで、容器の内部に空気が存在しないようにして、内部の軸受に錆が発生することを防ぐことができる。防錆油が溶着温度よりも低い温度で蒸発する油であれば、各内層材の溶着面に付着した防錆油を加熱により蒸発させた後、さらに加熱することで内層材同士を溶着させることができる。
【0020】
この発明において、前記容器の一方向から見た外形を、長方形の部分と、この長方形の部分の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分とを合わせた五角形状としても良い。
製品としての軸受包装体は、定められた個数ずつ外装箱に詰めて梱包される。軸受包装体を2列並べて外装箱に詰める場合に、各列の軸受包装体の二等辺三角形の部分が互いに向き合い、かつ各列で軸受包装体の位置を並び方向にずらす。これにより、各列の軸受包装体の二等辺三角形の部分が互いに係合して、輸送時等に各軸受包装体が外装箱の中で位置ずれするのを防ぐことができる。そのため、各軸受包装体間に緩衝材を挟む必要がなく、梱包作業の能率向上とコストダウンを図れる。
【0021】
この発明において、前記容器を四面体形状としてもよい。
容器が四面体形状であると、複数の軸受包装体を外装箱に詰めた場合に、外装箱の中で各軸受包装体が互いに位置ずれしにくくできる。特に、容器が正四面体に近い形状である場合、六角柱状の外装箱にほとんど隙間無く詰めることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明の軸受包装体は、紙製の外層材の内側面に、油を通さない材料からなる内層材を設けた複層シートからなる袋状の容器と、この容器の前記容器の内部に密封状態で収容された軸受とを備えるため、防錆性に優れ、包装作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図2】同軸受包装体の断面図である。
【図3】同軸受包装体の容器の展開図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】この発明の異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図6】同軸受包装体の容器の展開図である。
【図7】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の断面図である。
【図8】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図9】同軸受包装体の一方の接着部の断面図である。
【図10】同軸受包装体の容器の展開図である。
【図11】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図12】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図13】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図14】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図15】(A)この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図、(B)はその概略側面図である。
【図16】同軸受包装体を外装箱に詰めた状態を示す断面図である。
【図17】(A)この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図、(B)はその概略側面図である。
【図18】同軸受包装体を外装箱に詰めた状態を示す断面図である。
【図19】この発明のさらに異なる実施形態にかかる軸受包装体の斜視図である。
【図20】同軸受包装体が詰められる外装箱の斜視図である。
【図21】図19の軸受包装体を図20の外装箱に詰める場合の第1の過程を示す斜視図である。
【図22】図19の軸受包装体を図20の外装箱に詰める場合の第2の過程を示す斜視図である。
【図23】図19の軸受包装体を図20の外装箱に詰める場合の第3の過程を示す斜視図である。
【図24】従来の密封容器の斜視図である。
【図25】同密封容器の接着部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1ないし図4は、この発明の第1の実施形態を示す。図1および図2に示すように、この軸受包装体は、軸受1が、袋状の容器2の内部に密封状態で収容されたものである。容器2は、紙製の外層材3の内側面に、油を通さない材料からなる内層材4を設けた複層シートからなる。図1における上下両端の部分は、後で説明する接着部6,13である。
【0025】
内層材4は、例えば外層材3の内側面に、樹脂製のフィルムコート層をコーティングにより形成したものである。樹脂製のフィルムコート層の材料としては、例えばポリエチレン、ポリスチレンが適する。樹脂製のフィルムコート層の代わりに、金属製のフィルムコート層としても良い。金属製のフィルムコート層の材料としては、例えばアルミニウムが適する。また、外層材3の内側面に、上記樹脂や金属製のフィルムからなる内層材4をラミネートして、複層シートとしたものであっても良い。
【0026】
軸受1の防錆のために、例えば容器2の内部は防錆油5で満たされる。代わりに、容器2の内部を真空としても良く、または容器2の内部をアルゴン等の不活性ガスで満たしても良い。容器2の内部を真空とする場合や、不活性ガスで満たす場合、軸受1の表面に防錆油またはグリスを塗布するのが望ましい。
【0027】
前段における容器2の内部に満たす防錆油5や軸受1の表面に塗布する防錆油としては、一般的には市販されている専用の防錆油を用いるが、専用の防錆油の代わりに、軸受運転時に使用する潤滑油を流用しても良い。この場合の潤滑油は、ISO粘度がVG2ないしVG10の範囲に含まれる低粘度の鉱油系軸受油であるのが望ましい。低粘度の鉱油系軸受油は、使用する潤滑環境に悪影響を与えることが少ない。例えば軸受1が工作機械用である場合、工作機械が設置される工場によって、使用している潤滑油のメーカや銘柄が多種多様である。軸受包装体Bの防錆油としての潤滑油が低粘度の鉱油系軸受油であれば、潤滑油メーカや銘柄が異なる潤滑油と混じり合っても悪影響が出ない。
【0028】
容器2は、展開状態で図3に示す平面形状の容器素材2Aを、軸受1を収容可能な定められた立体形状(図1)に成形したものである。成形は、例えば以下の順で行う。図3が外層材3側から見た状態とした場合、まず、各山折りの折曲げ線L1〜L4に沿って紙面の向こう側に凸となるように折り曲げ、糊代片7の内側面を被接着部8の外側面に接着することで、筒状に形成する。上記山折りの折曲げ線L1〜L4および下記の谷折りの折曲げ線L5〜L8に沿って予め折り目を付けておけば、成形時の折り曲げが容易である。
【0029】
次に、筒の一方(上側)の開口部を閉じ状態に接着して接着部6とする。すなわち、谷折りの折曲げ線L5,L6に沿って紙面の手前側に凸となるように折り曲げて、一対の接着片9,10の間に折込み片11,12を挟み込み、接着片9,10同士、および接着片9,10と折込み片11,12とを互いに接着する。接着部6は、図4に示す断面形状となる。一対の接着片9,10は、それぞれの中央部同士が互いに接着し、接着片9の両端部に各折込み片11,12の片側部分11a,12aが接着し、接着片10の両端部に各折込み片11,12のもう片側部分11b,12bが接着する。
【0030】
同様に、他方(下側)の開口部を閉じ状態に接着して接着部13とする。すなわち、谷折りの折曲げ線L7,L8に沿って紙面の手前側に凸となるように折り曲げて、一対の接着片14,15の間に折込み片16,17を挟み込み、接着片14,15同士、および接着片14,15と折込み片16,17とを互いに接着する。下側の接着部13の断面形状も、上側の接着部6と同様の断面形状なので、図示を省略する。
【0031】
これにより、内部が密封された袋状の容器2となる。つまり、容器2は、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片9,10同士および接着片14,15同士を重ね合わせて接着して接着部6,13とすることで内部を密封する構造である。上記成形過程における適当な段階、例えば上側の接着部6の接着が終了してから下側の接着部13の接着を行うまでの間に、容器2内に軸受1を挿入すると共に防錆油5を充填する。
【0032】
各接着部6,13における一対の接着片9,10同士および接着片14,15同士の接着は、例えば内層材4同士の溶着によって行なう。その場合、容器2の内部に満たす防錆油5は、内層材4同士の溶着温度よりも低い温度で蒸発する性質のものであるのが良い。なぜなら、各内層材4の溶着面に付着した防錆油5を加熱により蒸発させた後、さらに加熱することで内層材4同士を溶着させることができるからである。
【0033】
この構成の軸受包装体Bは、油を通さない材料からなる内層材4により、内部の軸受1が外気に触れることを避け、錆の発生を防ぐ。また、外層材3により、内層材4を損傷等から保護する。外層材3は紙製であるため、加工が容易で、比較的安価に製作できる。容器2を、上記外層材3および内層材4からなる複層シートとしたことにより、1回の包装作業で軸受を包装することができ、包装作業が簡単である。
【0034】
図5および図6は異なる実施形態を示す。この軸受包装体Bの容器2は、図6の容器素材2Aから成形される。容器素材2Aは、成形後に内部に収容される軸受1の外周縁が接触する箇所に、軸受1の外周縁に沿って外向きに凸形状に変形するのを容易にする折り目18を付けたものである。このように予め折り目18を付けておけば、図5のように容器2に成形したときに、軸受1の外輪(図示せず)の外周形状に沿って容器2が変形する。これにより、容器2で軸受1を包装したとき、容器2内で軸受1が移動しにくくなり、位置が安定する。
【0035】
容器2内に収容する軸受1の個数は、1個に限らず、複数個であってもよい。容器2内に軸受1を複数個収容することで、コスト低下を図れる。その場合、図7のように、各軸受1間に仕切り材20を介在させて、各軸受1が互いに接触して損傷することを防ぐのが良い。
【0036】
図8は容器2の開封を容易にする手段を設けた軸受包装体、図9はその接着部の断面図、図10はその容器素材をそれぞれ示す。この軸受包装体Bは、容器2の一方の接着部6の互いに対向する一対の接着片9,10間に、両端を容器2外に露出させた紐状体21を挟み込んである。紐状体21が挟み込まれる位置は、接着片9,10の基端(容器2の内部領域に沿う箇所)の位置であり、かつ成形時に折込み片11,12にかからない幅方向(左右方向)中央の位置とされる。
【0037】
この構成であると、紐状体21の露出部分21aを引っ張ることで、紐状体21が引き出される際に前記一対の接着片9,10を互いに分離させて、容器2を開封する。一対の接着片9,10を分離させるのであり、接着片9,10を切断するのではないため、容器2の開封が容易である。
【0038】
なお、従来、紙等でできた密封容器を開封する技術として、図24および図25に示す構造が知られていた。この密封容器30も、各実施形態の容器2と同様に、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片同士を重ね合わせて接着して接着部6,13とすることで内部を密封する構造である。さらに、この密封容器30は、一方の接着部6を折り返し、その本体部分6aと折り返し部分6bとを互いに接着してあり、本体部分6aと折り返し部分6bとの間に紐状体21を挟み込んである。紐状体21の両端は、接着部6の左右両側に露出している。
【0039】
この密封容器30は、紐状体21の露出部分21aを、紐状体21の長さ方向に対し垂直な方向に引っ張ることで、接着部6における本体部分6aと折り返し部分6bとの境界部を引き裂いて容器2を開封する。そのため、接着部6を引き裂くには、容器素材が薄くて脆弱である必要がある。したがって、この開封技術は、容器素材が薄い場合には有効であるが、容器素材が厚紙や段ボール等である場合には向かない。
【0040】
容器2の開封を容易にする他の手段として、以下が挙げられる。
図11の容器2は、接着部6,13にそれぞれ切込み22を設け、両切込み22を互いにつなぐミシン目23が外層材3に設けてある。ミシン目23は片面だけに設けても、両面に設けてもよい。この構成であると、切込み22の両側の部分を手でつかんで外側に引っ張ることにより接着部6,13を引き裂き、さらに両側に引っ張ることによりミシン目23に沿って外層材3を切断して容器2を開封する。容器素材が薄い場合には、ミシン目23が無くても容器2を切断することができる。したがって、容器2が厚紙やダンボール等でできている場合だけ、ミシン目23を設ければよい。
【0041】
図12の容器2は、前記切込み22およびミシン目23が、互いに平行に2条設けられている。この場合は、2条のミシン目23に挟まれた部分が帯状に除去されて容器2が開封される。
【0042】
図11および図12に示す容器2は、両端が接着部6,13とされているが、次段で説明するような示す容器2のように、一端だけが接着部6とされ、他端は平面状になっている場合にも、前記切込み22およびミシン目23は有効である(図13、図14参照)。
【0043】
図15は、容器の外形が異なる実施形態を示す。この軸受包装体Bの容器2は、一端にのみ接着部6が設けられ、他端は平面状とされている。つまり、正面から見た外形は長方形で、側面から見た外形は、概略で、長方形の部分24と、この長方形の部分24の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分25とを合わせた五角形状である。この軸受包装体Bは、軸受1の中心Oが前後に沿う姿勢で軸受1が容器2内に収容されていて、側面視で縦長の形状とされている。このように縦長の形状とすると、容器表面のうち、狭い表面積の面に接着部6が設けられるので、容器素材の材料を節約することができる。
【0044】
通常、製品としての軸受包装体Bは、複数個数ずつ外装箱にまとめて梱包されて輸送される。その場合、図16のように、下段と上段とで上下逆向きとして各段の軸受包装体Bの二等辺三角形の部分が互いに向き合い、かつ各段で軸受包装体Bの位置を並び方向にずらして外装箱26に詰める。それにより、下段の軸受包装体Bの二等辺三角形の部分25と上段の軸受包装体Bの二等辺三角形の部分25とが互いに係合して、各軸受包装体Bが外装箱26の中で位置ずれするのを防ぐことができる。そのため、各軸受包装体B間に緩衝材を挟む必要がなく、梱包作業の能率向上とコストダウンを図れる。
【0045】
図17に示す軸受包装体Bも、前記同様に、正面から見た外形は長方形で、側面から見た外形は、概略で、長方形の部分24と、この長方形の部分24の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分25とを合わせた五角形状であるが、この軸受包装体Bは、軸受1の中心Oが上下に沿う姿勢で軸受1が容器2内に収容されていて、上下に平たい形状とされている。
【0046】
この軸受包装体Bも、図18のように、前記同様に外装箱26に詰めることで、外装箱26の中で位置ずれするのを防ぐことができる。また、この軸受包装体Bは上下高さが低いため、下段と上段の組を上下に複数組重ねても、外装箱26があまり上下に高くならず安定している。さらに、この軸受包装体Bは、外装箱26の底面に接する面が表面積の大きい面であるため、荷姿が安定し、容器2への負荷が小さくなる。
【0047】
図19は、容器の外形が異なる実施形態を示す。この軸受包装体Bの容器2は、四面体形状である。四面体を構成する6本の稜線のうち互いに隣接しない2本の稜線の部分が、展開状態で平面状の容器素材(図示せず)の糊代部からなる接続部6とされている。容器2が四面体形状であると、複数の軸受包装体Bを外装箱26に詰めた場合に、外装箱26の中で各軸受包装体Bが互いに位置ずれしにくくできる。
【0048】
また、この実施形態のように、容器2が正四面体に近い形状である場合、図20に示す六角柱状の外装箱26にほとんど隙間無く詰めることができる。外装箱26は、底面に六角錘状の凸部26aが設けられている。以下、外装箱26への軸受包装体Bの詰め方について説明する。
【0049】
まず、図21のように、前記六角錘状の凸部26aの各錘面の上に、1段目の6個の軸受包装体B(1)をそれぞれ載せる。その際、各軸受包装体Bの片方の接着部6が平面視六角形に並ぶようにする。
【0050】
次に、図22のように、1段目の各軸受包装体B(1)によって形成された凹部27に嵌め込むように、2段目の6個の軸受包装体B(2)を、1段目の各軸受包装体B(1)に対して平面視の位相をずらして載せる。この段階では、2段目の各軸受包装体B(2)の頂点が集まる中央部は凹んだ状態となる。
【0051】
次に、図23のように、2段目の各軸受包装体B(2)の上に、3段目の6個の軸受包装体B(3)を平面視の位相をずらして載せる。すなわち、3段目の軸受包装体B(3)は、その下側の稜線を、互いに隣接する2段目の軸受包装体B(2)間に位置させる。これにより、3段目の各軸受包装体B(3)の上面によって、外装箱26の凸部26aと同じ六角錘状の面が構成される。そのため、3段目の各軸受包装体B(3)の上に、外装箱26を重ね合わせることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…軸受
2…容器
2A…容器素材
3…外層材
4…内層材
5…防錆油
6,13…接着部
9,10,14,15…接着片
18…折り目
20…仕切り材
21…紐状体
21a…露出部分
22…切れ目
23…ミシン目
24…長方形の部分
25…二等辺三角形の部分
B…軸受包装体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の外層材の内側面に、油を通さない材料からなる内層材を設けた複層シートからなる袋状の容器と、この容器の内部に密封状態で収容された軸受とを備えることを特徴とする軸受包装体。
【請求項2】
請求項1において、前記内層材は樹脂製のフィルムコート層からなる軸受包装体。
【請求項3】
請求項1において、前記内層材は金属製のフィルムコート層からなる軸受包装体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記容器の内部を防錆油で満たした軸受包装体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記容器の内部を真空とした軸受包装体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記容器の内部を不活性ガスで満たした軸受包装体。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記軸受の表面に防錆油またはグリスを塗布した軸受包装体。
【請求項8】
請求項4または請求項7において、前記防錆油として、軸受運転時に使用する潤滑油を用いた軸受包装体。
【請求項9】
請求項8において、前記潤滑油が、ISO粘度がVG2ないしVG10の範囲に含まれる低粘度の鉱油系軸受油である軸受包装体。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記容器の内部に複数の軸受を収容し、各軸受間に仕切り材を介在させた軸受包装体。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記容器は、展開状態で平面状の容器素材を、軸受を収容可能な定められた立体形状に成形したものであり、前記容器素材における、成形後に内部に収容される軸受の外周縁が接触する箇所に、軸受の外周縁に沿って外向きに凸形状に変形させるのを容易にする折り目を付けた軸受包装体。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、前記容器は、袋の開口縁部分である一対の接着片同士を互いに重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造であり、前記接着部の前記一対の接着片間に挟み込んだ紐状体の一部を前記容器の外部に露出させ、この紐状体の露出部分を引っ張ることで前記一対の接着片を分離可能とした軸受包装体。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項において、前記容器の外層材の一部に、切断を容易にするための切れ目を設けた軸受包装体。
【請求項14】
請求項1において、前記容器の前記内層材は樹脂製のフィルムコート層からなり、かつ前記容器は、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片同士を重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造であり、前記接着部における前記一対の接着片同士の接着は、前記内層材同士の溶着によるものとした軸受包装体。
【請求項15】
請求項14において、前記容器の内部を、前記内層材同士の溶着温度よりも低い温度で蒸発する防錆油で満たした軸受包装体。
【請求項16】
請求項1ないし請求項15のいずれか1項において、前記容器の一方向から見た外形を、長方形の部分と、この長方形の部分の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分とを合わせた五角形状とした軸受包装体。
【請求項17】
請求項1ないし請求項15のいずれか1項において、前記容器を四面体形状とした軸受包装体。
【請求項1】
紙製の外層材の内側面に、油を通さない材料からなる内層材を設けた複層シートからなる袋状の容器と、この容器の内部に密封状態で収容された軸受とを備えることを特徴とする軸受包装体。
【請求項2】
請求項1において、前記内層材は樹脂製のフィルムコート層からなる軸受包装体。
【請求項3】
請求項1において、前記内層材は金属製のフィルムコート層からなる軸受包装体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記容器の内部を防錆油で満たした軸受包装体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記容器の内部を真空とした軸受包装体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記容器の内部を不活性ガスで満たした軸受包装体。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記軸受の表面に防錆油またはグリスを塗布した軸受包装体。
【請求項8】
請求項4または請求項7において、前記防錆油として、軸受運転時に使用する潤滑油を用いた軸受包装体。
【請求項9】
請求項8において、前記潤滑油が、ISO粘度がVG2ないしVG10の範囲に含まれる低粘度の鉱油系軸受油である軸受包装体。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記容器の内部に複数の軸受を収容し、各軸受間に仕切り材を介在させた軸受包装体。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記容器は、展開状態で平面状の容器素材を、軸受を収容可能な定められた立体形状に成形したものであり、前記容器素材における、成形後に内部に収容される軸受の外周縁が接触する箇所に、軸受の外周縁に沿って外向きに凸形状に変形させるのを容易にする折り目を付けた軸受包装体。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、前記容器は、袋の開口縁部分である一対の接着片同士を互いに重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造であり、前記接着部の前記一対の接着片間に挟み込んだ紐状体の一部を前記容器の外部に露出させ、この紐状体の露出部分を引っ張ることで前記一対の接着片を分離可能とした軸受包装体。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項において、前記容器の外層材の一部に、切断を容易にするための切れ目を設けた軸受包装体。
【請求項14】
請求項1において、前記容器の前記内層材は樹脂製のフィルムコート層からなり、かつ前記容器は、袋の開口縁部分である互いに対向する一対の接着片同士を重ね合わせて接着して接着部とすることで内部を密封する構造であり、前記接着部における前記一対の接着片同士の接着は、前記内層材同士の溶着によるものとした軸受包装体。
【請求項15】
請求項14において、前記容器の内部を、前記内層材同士の溶着温度よりも低い温度で蒸発する防錆油で満たした軸受包装体。
【請求項16】
請求項1ないし請求項15のいずれか1項において、前記容器の一方向から見た外形を、長方形の部分と、この長方形の部分の一辺と底辺が一致する二等辺三角形の部分とを合わせた五角形状とした軸受包装体。
【請求項17】
請求項1ないし請求項15のいずれか1項において、前記容器を四面体形状とした軸受包装体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
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【図16】
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【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−250747(P2012−250747A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126012(P2011−126012)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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