説明

軸受鋼

【課題】所望の軸受部材に成形するときの加工性と、軸受部材を高温環境下で使用するときの転動疲労特性に優れた軸受部材を製造するための軸受鋼を提供する。
【解決手段】C:0.8〜1.2%(質量%の意味。以下同じ)、Si:0.35〜0.99%、Mn:0.1〜0.4%、Cr:1.35〜1.75%、Mo:0.26〜0.4%を含有すると共に、C,Si,Moの含有量が下記(1)式を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼とし、該鋼に分散している炭化物の最大粒径が5μm以下にすれば、加工性および高温転動疲労特性に優れた軸受鋼となる。
0.60≦[C]×([Si]+[Mo])≦1.00 …(1)
なお、式中、[ ]は、鋼に含まれる各元素の量(%)を示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械などに使用される玉軸受やローラ軸受などの軸受部材を製造するために用いる軸受鋼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸受鋼としては、従来からJIS G4805に規定されるSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼が主に用いられており、こうした軸受鋼から製造される軸受部材は、常温のみならず、例えば100℃以上の高温で使用されることがある。特に近年では、例えば自動車などの分野においては、エンジンの高出力と小型化が急速に進行しているため、軸受部材の使用環境も益々苛酷になっており、瞬間的には180℃程度にまで温度上昇すると考えられている。そのため軸受鋼には、高温環境下でも良好な転動疲労特性(以下、高温転動疲労特性ということがある)が要求される。
【0003】
軸受鋼の高温転動疲労特性を改善した技術としては、例えば特許文献1に、Cr量を増やすと共に、SiとMoを合計で1.0%以上含有させることが提案されている。
【0004】
ところで軸受鋼には、高温転動疲労特性の他に、所望の軸受部材に成形するための加工性も要求される。しかし上記特許文献1には、この加工性については考慮されていない。
【0005】
これに対し、特許文献2には、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼の加工性を改善するために、鋼の成分組成を規定すると共に、転動疲労特性のバラツキを抑えるために、炭化物の最大粒径と量を規定することが記載されている。しかし高温における転動疲労特性を改善することについては考慮されていない。
【0006】
なお、本出願人らは特許文献3に、転動疲労特性に及ぼす巨大炭化物量の影響について先に開示している。即ち、この文献では、常温環境下における転動疲労特性と炭化物量の関係について明らかにした。しかし高温環境下における転動疲労特性と炭化物量の関係については明らかにできていなかった。また、軸受鋼の加工性についても考慮していなかった。
【特許文献1】特開平3−253542号公報(特許請求の範囲など参照)
【特許文献2】特開2002−12919号公報(特許請求の範囲など参照)
【特許文献3】特開平9−165643号公報(特許請求の範囲、段落0005など参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の軸受部材に成形するときの加工性と、軸受部材を高温環境下で使用するときの転動疲労特性に優れた軸受部材を製造するための軸受鋼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意検討を重ねた。その結果、鋼の成分組成を規定すると共に(特に、C,Si,Moのバランスを正しく制御すると共に)、該鋼に分散している炭化物の大きさを適切に制御すれば、加工性と高温転動疲労特性の両方の特性に優れた軸受部材を製造するための軸受鋼を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、上記課題を解決することができる本発明に係る軸受鋼は、C:0.8〜1.2%(質量%の意味。以下同じ)、Si:0.35〜0.99%、Mn:0.1〜0.4%、Cr:1.35〜1.75%、Mo:0.26〜0.4%を含有すると共に、C,Si,Moの含有量が下記(1)式を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなり、該鋼に分散している炭化物の最大粒径が5μm以下である点に要旨を有する。
0.60≦[C]×([Si]+[Mo])≦1.00 …(1)
なお、式中、[ ]は、鋼に含まれる各元素の量(%)を示している。
【0010】
更に他の元素として、
(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
(b)Al:0.04%以下(0%を含まない)および/またはN:0.015%以下(0%を含まない)、
(c)P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Ti:0.005%以下(0%を含まない)、およびO:0.002%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
等を含有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼の成分組成を規定すると共に、該鋼に分散している炭化物の大きさを適切に制御することで、加工性と高温転動疲労特性に優れた軸受鋼を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
加工性に優れ、しかも軸受部材として使用するときの高温転動疲労特性に優れた軸受鋼とするには、成分組成のなかでも特にC,Si,Mo量のバランスが重要である。即ち、本発明では、鋼の成分組成のうち、C,Si,Moの含有量が、下記(1)式を満足するように調整する。
0.60≦[C]×([Si]+[Mo])≦1.00 …(1)
なお、式中、[ ]は、鋼に含まれる各元素の量(%)を示している。また、上記「[C]×([Si]+[Mo])」の値を、Z値ということがある。
【0013】
C,Si,Moは、いずれも高温転動疲労特性を改善するのに有効に作用する元素であり、特に、Cは、軸受鋼として必要な硬さ(ロックウェル硬さで、HC58以上)を確保することで高温転動疲労特性を向上させる元素である。一方、Siは、鋼中に分散する炭化物を微細化すると共に、焼戻し処理による軟化を抑えることにより高温転動疲労特性を向上させる元素である。また、Moは、焼入れ処理時の焼入れ性を高めて鋼材の硬さを向上させることにより、高温転動疲労特性を改善する元素である。
【0014】
そして本発明では、こうしたC,Si,Mo量から算出される上記Z値を0.60〜1.00%の範囲に制御する。Z値が0.60%未満では、高温転動疲労特性が急激に悪くなる。従ってZ値は0.60%以上とする。Z値は0.65%以上とするのが好ましく、より好ましくは0.7%以上とする。しかしZ値が1.00%を超えると、C量過多となって鋼中に粗大な炭化物が生成して加工性が悪くなるか、或いはMo量とSi量が増加して加工性が低下する。従ってZ値は1.00%以下とする。Z値は0.95%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.9%以下とする。
【0015】
なお、本発明においては後述するように、C量は1%前後に調整することが好ましいため、上記(1)式の「[Si]+[Mo]」の値は、下記(2)式に示す関係を満足することが好ましい。より好ましくは下記(3)式に示す関係を満たすのがよい。
([Si]+[Mo])<1 …(2)
([Si]+[Mo])<0.9 …(3)
【0016】
本発明は、C,Si,Moのバランスを上述したように調整するものであるが、これらの元素の含有量は、次に示す範囲に調整する。
【0017】
C:0.8〜1.2%
上記効果を発揮させるには、Cは少なくとも0.8%含有させる。好ましくは0.85%以上であり、より好ましくは0.9%以上である。一方、C量の上限値は1.2%とし、好ましくは1.15%以下、より好ましくは1.1%以下である。
【0018】
Si:0.35〜0.99%
上記効果を発揮させるには、Siは少なくとも0.35%含有させる。好ましくは0.4%以上であり、より好ましくは0.45%以上とする。一方、Siの上限値は0.99%であり、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。
【0019】
Mo:0.26〜0.4%
上記効果を発揮させるには、Moは少なくとも0.26%含有させる。好ましくは0.27%以上であり、より好ましくは0.28%以上である。一方、Moの上限値は0.4%とし、好ましくは0.38%以下、より好ましくは0.35%以下である。
【0020】
本発明では、C,Si,Mo以外に、Mnを0.1〜0.4%、Crを1.35〜1.75%含有する。こうした範囲を設定した理由は次の通りである。
【0021】
Mnは、脱酸剤や脱硫剤として作用する他、焼入れ処理時の焼入れ性を高める元素であり、これにより鋼材は硬くなる。そのため高温転動疲労特性を向上させるのに有効に作用する。こうした効果を発揮させるには、0.1%以上含有させる。好ましくは0.15%以上であり、より好ましくは0.2%以上である。しかし過剰に含有させてもこうした効果は飽和し、また粗大な炭化物が生成して却って加工性が低下する。従ってMn量は0.4%以下とする。好ましくは0.38%以下であり、より好ましくは0.35%以下とする。
【0022】
Crは、焼入れ処理時の焼入れ性を高めて鋼材の硬さを高める元素であり、これにより高温転動疲労特性を確保することができる。従ってCrは、1.35%以上含有させる必要がある。好ましくは1.38%以上であり、より好ましくは1.4%以上である。しかし過剰に含有させてもこうした効果は飽和し、また粗大な炭化物が生成して却って加工性が低下する。従ってCr量は1.75%以下とする。好ましくは1.7%以下、より好ましくは1.6%以下とする。
【0023】
本発明で用いる鋼材の必須構成元素は以上の通りであるが、更に他の元素として、
(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、およびV:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
(b)Al:0.04%以下(0%を含まない)および/またはN:0.015%以下(0%を含まない)、
(c)P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Ti:0.005%以下(0%を含まない)、およびO:0.002%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
等を含有してもよい。
【0024】
(a)Cu、Ni、およびVは、何れも高温転動疲労特性を高める元素である。特に、CuとNiは共に、焼入れ処理時の焼入れ性を高める元素であり、鋼材の硬さを高めて高温転動疲労特性を一層高めるのに有効に作用する。こうした作用を発揮させるには、Cuは0.1%以上、Niは0.1%以上含有させるのが好ましい。しかしNi,Cuの過度の添加は鋼コストの上昇を招き、また加工性の低下を引き起こすので、Niは0.5%以下、Cuは0.5%以下に抑える。Niは、0.4%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.3%以下である。Cuは、0.4%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.3%以下である。
【0025】
一方、Vは、炭化物や窒化物、或いは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して靭性の向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるには、0.005%以上含有させることが推奨される。しかし過剰に添加してもこうした効果は飽和し、コスト高となるので、上限は0.05%とする。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。
【0026】
NiとCuとVは、夫々単独で含有させてもよいし、2種以上を併用してもよい。併用する場合の合計は0.8%以下とするのがよい。
【0027】
(b)AlとNは、窒化物を生成し、この窒化物は熱処理時におけるオーステナイト粒の成長を抑制し、結晶粒を微細化する作用を発揮する。これにより鋼材の靭性を高めることができる。こうした効果を発揮させるには、Alは、0.005%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.008%以上であり、更に好ましくは0.01%以上である。一方、Nは、0.001%以上含有させるのが好ましい。より好ましくは0.002%以上であり、更に好ましくは0.003%以上である。しかし過剰に含有させると粗大な窒化物を生成し、却って高温転動疲労特性を低下させるため、Al量は0.04%以下に抑える。より好ましくは0.035%以下であり、更に好ましくは0.03%以下である。一方、N量は0.015%以下に抑える。より好ましくは0.013%以下であり、更に好ましくは0.010%以下である。
【0028】
(c)Pは、非金属介在物を形成して靭性に悪影響を及ぼすので、極力少なく抑えるのがよい。従ってPは、多くとも0.03%とする。より好ましくは0.025%以下、更に好ましくは0.020%以下に抑えるのがよい。
【0029】
Sは、Mnと結合して硫化物を形成し、鋼材の被削性を高めるのに作用する元素であるが、酸素含有量の少ない鋼材においては、高温転動疲労特性が低下する。従ってS量は多くとも0.03%とする。好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.02%以下である。
【0030】
Tiは、Nと結びついて粗大な窒化物を形成し、高温転動疲労特性を劣化させるため、多くとも0.005%とする。より好ましくは0.004%以下であり、更に好ましくは0.003%以下である。
【0031】
Oは、Alと結合してAl23系介在物を形成し、高温転動疲労特性を悪化させる元素である。従ってOは、多くとも0.0020%とする。より好ましくは0.0018%以下、更に好ましくは0.0015%以下に抑えるのがよい。
【0032】
本発明で用いる鋼材を構成する元素は以上の通りであるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の元素を更に含有してもよい。なお、残部はFeおよび不可避不純物であってもよい。
【0033】
本発明の軸受鋼は、成分組成を上記の範囲に調整する他、鋼中に分散している炭化物の最大粒径を5μm以下とする。炭化物は、軸受部材の表面硬さや芯部硬さを向上させて、耐摩耗性を良好にするのに作用するが、粗大化すると加工性が低下する他、高温転動疲労特性も劣化する。そこで本発明では、鋼中に分散する炭化物の最大粒径を5μm以下とする。炭化物の最大粒径は4μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下である。
【0034】
炭化物の最大粒径は、光学顕微鏡で10mm2の視野範囲を観察して測定すればよい。
【0035】
上記炭化物の最大粒径を5μm以下にするには、鋼の成分組成を上記範囲を満足するように調整すると共に、熱間圧延後に図1に例示する条件で球状化熱処理を行えばよい。即ち、熱間圧延終了後、790℃まで加熱し、この温度で2時間保持した後、680℃まで平均冷却速度20℃/hrで徐冷し、次いで室温まで空冷すればよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
下記表1に示す成分組成の鋼を真空溶製炉で溶製し、ビレットに鍛造した後、1200℃で5時間ソーキングした。ソーキング後、直径65mmの棒鋼に熱間圧延し、次いで図1に示す条件で球状化熱処理を行った。
【0038】
得られた球状化熱処理材について、下記の手順で炭化物の最大粒径を測定すると共に、球状化熱処理材から切り出した試験片を用いて下記の手順で加工性と高温転動疲労特性を評価した。夫々の結果を下記表2に示す。また、鋼の成分組成から上記(1)式を用いて[C]×([Si]+[Mo])の値(Z値)を算出した結果を下記表2に併せて示す。
【0039】
<炭化物の最大粒径の測定>
球状化熱処理後の棒鋼におけるD/4位置(Dは棒鋼の半径)の縦断面を、光学顕微鏡で10mm2の視野範囲を観察し、該視野範囲に観察される炭化物の最大粒径を測定した。
【0040】
<加工性>
球状化熱処理後の棒鋼におけるD/4位置から直径10mm、長さ15mmの円柱状試験片を切り出し、プレス試験機を用いて加工率80%で加工した後、試験片の側面を光学顕微鏡で40倍で観察し、下記式で割れ発生率を求め、加工性(変形能)を評価した。なお、試験片の数は10個とし、試験片の側面を観察したときに、0.1mm以上の割れがある場合を「割れ発生」とした。
割れ発生率(%)=(割れが発生した試験片の数/10)×100
【0041】
<高温転動疲労特性>
球状化熱処理材をスラスト試験片に加工し、これを図2に示す条件で焼入れ焼戻し処理した後、表面を100μm研磨したものを転動疲労試験片とした。
【0042】
転動疲労試験は、面圧5GPa、回転数1500rpm、鋼球数3個、温度150℃とし、潤滑油としてタービン油を用いて行った。試験片の数は15個とし、ワイブル分布図を用いて10%破損確率(L10寿命)で整理した。
【0043】
なお、高温転動疲労特性は、表2に示したNo.7(JIS G4805に規定されるSUJ2相当)のL10寿命を1としたときのL10寿命比で評価した。L10寿命比は1.5以上を合格とした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表2から次のように考察できる。No.1〜6は、本発明で規定する要件を満たす例であり、鋼の成分組成と該鋼に分散している炭化物の大きさが適切に制御できているため、割れ発生率が0%で、L10寿命比が1.5以上である加工性と高温転動疲労特性に優れた軸受鋼を実現できた。
【0047】
一方、No.7は、JISに規定されているSUJ2相当鋼であり、Z値が本発明で規定する範囲から外れて小さく、また粗大な炭化物が生成しているため、加工性と高温転動疲労特性の両方に劣っている。No.8は、C量が少ないため、Z値が本発明で規定する範囲から外れて小さい。従って加工性は良好であるが、高温転動疲労特性を改善できていない。No.9は、C量が多く、粗大な炭化物が生成しているため加工性が悪い。従って高温転動疲労特性も低下している。No.10は、Si量が多いため、Z値が本発明で規定する範囲から外れて大きい。従って加工性が悪い。No.11は、Mn量が多いため、粗大な炭化物が生成した。従って加工性が悪く、高温転動疲労特性も改善できていない。No.12は、Cr量が小さいため、焼入れ処理時の焼入れ性が悪く、充分な硬度が得られないため高温転動疲労特性を確保できない。No.13は、Cr量が多いため粗大な炭化物が生成し、加工性が悪い。No.14は、Mo量が少なく、Z値が本発明で規定する範囲から外れて小さい。従って高温転動疲労特性を充分に改善できていない。No.15は、Mo量が多く、Z値が本発明で規定する範囲から外れて大きい。従って加工性が悪い。
【0048】
上記表2に示したNo.1〜6、No.8、No.10、No.14、No.15の[C]×([Si]+[Mo])の値(Z値)とL10寿命比の関係を図3に示す。図3から明らかなように、鋼中に分散している炭化物の最大粒径が本発明で規定する範囲を満足している場合には、Z値を0.60%以上にすれば、高温転動疲労特性を改善できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、球状化熱処理における温度、保持時間および冷却条件を示す図である。
【図2】図2は、焼入れ焼戻しにおける温度、保持温度および冷却条件を示す図である。
【図3】図3は、[C]×([Si]+[Mo])の値(Z値)とL10寿命比の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C :0.8〜1.2%(質量%の意味。以下同じ)、
Si:0.35〜0.99%、
Mn:0.1〜0.4%、
Cr:1.35〜1.75%、
Mo:0.26〜0.4%を含有すると共に、
C,Si,Moの含有量が下記(1)式を満たし、
残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、
該鋼に分散している炭化物の最大粒径が5μm以下であることを特徴とする加工性および高温転動疲労特性に優れた軸受鋼。
0.60≦[C]×([Si]+[Mo])≦1.00 …(1)
なお、式中、[ ]は、鋼に含まれる各元素の量(%)を示している。
【請求項2】
更に他の元素として、
Cu:0.5%以下(0%を含まない)、
Ni:0.5%以下(0%を含まない)、および
V :0.05%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の軸受鋼。
【請求項3】
更に他の元素として、
Al:0.04%以下(0%を含まない)および/または
N :0.015%以下(0%を含まない)
を含有する請求項1または2に記載の軸受鋼。
【請求項4】
更に他の元素として、
P :0.03%以下(0%を含まない)、
S :0.03%以下(0%を含まない)、
Ti:0.005%以下(0%を含まない)、および
O :0.002%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の軸受鋼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−113034(P2007−113034A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303338(P2005−303338)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)