説明

軸封スペーサ及び軸封スペーサの取り出し治具

【課題】流体機械のグランド部から容易に取り出すことができる軸封スペーサ(ランタンリング)を提供すること。
【解決手段】ランタンリング43は、流体を流通可能に構成されたケーシング20と、ケーシング20に設けられた弁軸挿通孔22に摺動自在に支持されるプラグステム31と、弁軸挿通孔22に同軸状に設けられたパッキン収納凹部22aに収納される第1パッキン41及び第2パッキン42と、を備える調節弁10に使用される。ランタンリング43は、弁軸挿通孔22から流体が漏洩するのを抑制するために、パッキン収納凹部22aに収納された第1パッキン41の上部に配設される。ランタンリング43は、貫通孔43dが設けられた円筒状の本体部43aと、本体部43aの軸方向の一端部及び他端部に径方向に延びる鍔部43b,43cと、を有する。鍔部43bは、直径方向の両端部を貫通する一対の係合孔43e,43eを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節弁等からの流体の漏洩を封止する軸封スペーサ及び軸封スペーサの取り出し治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、火力発電プラント等で使用される蒸気等の送給系統には、調節弁やポンプ等の流体機械が設けられている。
このような流体機械は、流体が流れる流路を有する圧力容器を備えている。圧力容器は、動作可能に支持された弁軸(プラグステム)やポンプ軸等の軸部材と、圧力容器の内部から外部へ流体が漏洩するのを封止する軸封装置と、を備える。
【0003】
軸部材は、圧力容器に設けられた軸挿通孔に挿通され、圧力容器の内部から外部に貫通して設けられている。軸封装置は、この軸挿通孔の周囲(以下、グランド部と称する)に設けられている。
すなわち、軸封装置は、軸挿通孔に沿って設けられたパッキン収納凹部に、軸部材の軸方向に沿って積層配列された複数のパッキンと、これらのパッキンの略中間位置に配設される軸封スペーサ(以下、適宜、ランタンリングと称する)と、グランド部のパッキン等を押圧する押圧部材(グランド)やねじ手段を有する押圧手段と、を備える。
【0004】
このようなランタンリング等の軸封スペーサは、圧力容器の外部に設けられた装置(ルブリケータ等)から供給される封止用流体(例えば、水等)を貯留することにより、圧力容器の内部の流体が、グランド部から圧力容器の外部に漏洩するのを封止する。
【0005】
ところで、このような軸封装置を備えた調節弁等においても、プラント運転中に圧力容器の内部の流体がグランド部から圧力容器の外部に漏洩することがある。この場合の対処法としては、先ず最初に、上記ねじ手段の増し締めを行うことにより、グランド部のパッキンを押圧することが行われている。
【0006】
このような増し締めを行ってもグランド部の漏洩が止まらない場合やパッキンの増し締め代がない場合には、パッキンの劣化が考えられるため、新規なパッキンに交換する必要がある。
新規なパッキンに交換する場合、作業量を最小限に抑えるためには、圧力容器全体を分解する作業は行わず、上記押圧手段等の一部の分解作業に止めるのが得策である。
【0007】
グランド部のパッキン収納凹部に配設されたパッキンは、上述したように、軸封スペーサの上部及び下部にそれぞれ積層されている。このため、軸封スペーサの下部に配置されているパッキンを交換するには、先ず、上記押圧手段を取り外し、次に該パッキンの上部に配設されている軸封スペーサ及びパッキンをグランド部から取り出す必要がある。
【0008】
しかしながら、軸封スペーサは、一般に、嵌め合い公差が小さいパッキン収納凹部に挿入されているため、容易に取り出せないことが多い。
特に、パッキンの交換が必要なほど流体機械が長期間使用されると、腐食等によって軸封スペーサがパッキン収納凹部の内周面等と固着していることが多く、このような固着した軸封スペーサを取り出すのはきわめて困難であった。
このため、結局、圧力容器全体を分解して軸封スペーサを取り出すしかなかった。
【0009】
そこで、従来、軸封スペーサをパッキン収納凹部(パッキン箱)の内周面と固着しにくくするために、軸封スペーサとパッキン収納凹部との接触部分を少なくするようにした技術が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−65288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に係る従来技術にあっては、軸封スペーサとパッキン収納凹部との接触部分を少なくしているだけであるので、固着部分が少なくなるものの、固着を完全になくすことはできない。
また、パッキン収納凹部の嵌め合い公差が小さいことに変わりはなく、固着した軸封スペーサを取り出すのは困難であり、結局、圧力容器全体を分解して軸封スペーサを取り出すことを余儀なくされ、パッキンの交換作業に多大な手間を要していた。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、流体機械のグランド部から容易に取り出すことができる軸封スペーサを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、流体機械のグランド部から軸封スペーサを容易に取り出すことができる軸封スペーサの取り出し治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、以下のような軸封スペーサ及び軸封スペーサの取り出し治具を提供する。
【0015】
(1) 本発明は、流体が流通する流路及び該流路に連通する連通孔を有する圧力容器と、前記連通孔に摺動自在に挿通される軸部材と、前記連通孔の内面と前記軸部材との間に形成される空間に配置されるパッキンと、を備える流体機械の前記空間に前記パッキンと隣接して配置される軸封スペーサであって、円筒状の本体部と、前記本体部における上端側に位置する端面に設けられる複数の凹部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
(2) (1)に記載の発明においては、前記軸封スペーサの軸方向の一端部及び他端部には、径方向に延びる鍔部を有し、前記凹部は、前記鍔部の直径方向の両端部を貫通する一対の係合孔として構成されていることが好ましい。
【0017】
(3) (1)に記載の発明においては、前記軸封スペーサの軸方向の一端部及び他端部には、径方向に延びる鍔部を有し、前記凹部は、前記鍔部の直径方向の両端部を切り欠いた一対の係合切り欠き部として構成されていることが好ましい。
【0018】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の発明の前記凹部に係合させることにより、前記軸封スペーサを前記空間から取り出す軸封スペーサの取り出し治具であって、一端側に前記軸部材の直径よりも大きな内径の軸部材挿通凹部が形成された本体部と、前記本体部における他端側から突設された握り部と、前記本体部の一端側における底面から該底面に対して略垂直方向に突設された複数のアーム部と、前記アーム部の先端部から該アーム部と略直角方向に突設され、前記軸封スペーサの前記凹部に係合可能に構成された爪部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
(5) (4)に記載の発明においては、前記本体部は、板状部材又は棒状部材により略U字形状に形成されると共に、該U字形状の開口側の空間を前記軸部材挿通凹部として有し、前記握り部は、棒状部材により形成されると共に、前記本体部における他端側から該本体部の面方向に沿って突設され、前記アーム部は、棒状部材により形成されると共に、前記本体部の前記底面から一対突設され、前記爪部は、前記アーム部の先端部を該アーム部と略直角方向に折曲して形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流体機械のグランド部から容易に取り出すことができる軸封スペーサを提供することができる。
【0021】
また、本発明によれば、流体機械のグランド部から容易に取り出すことができる軸封スペーサの取り出し治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】調節弁を示す要部断面図である。
【図2】第1実施形態に係るランタンリングを示す斜視図である。
【図3】図2に示したランタンリングのA−A断面を示す断面図である。
【図4】取り出し治具を示す斜視図である。
【図5】取り出し治具の使用状態を示す平面図である。
【図6】第2実施形態に係るランタンリングを示す斜視図である。
【図7】図6に示したランタンリングのB−B断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
〔第1実施形態〕
先ず、本実施形態に係るランタンリング(軸封スペーサ)が使用される調節弁について図1を参照して説明する。図1は、調節弁を示す要部断面図である。
【0025】
<調節弁の全体構成の説明>
図1に示すように、調節弁10は、蒸気等の流体が流れる流路21と弁軸挿通孔(連通孔)22とを有するケーシング(圧力容器)20と、流路21の開度を調節するプラグ(軸部材)30と、弁軸挿通孔22に摺動自在に挿通され、プラグ30に連結されたプラグステム(軸部材)31と、弁軸挿通孔22から流体が漏洩するのを封止する軸封部40と、軸封部40に封止用の流体を供給するルブリケータ60と、プラグステム31を軸方向に進退させる駆動機構部(図示せず)と、を備える。
【0026】
ケーシング20は、開口部24aを有するボディ24と、該ボディ24に固定されるボンネット25と、を有する。
ボディ24は、ケーシング20の本体をなすものである。
流路21は、例えば、円形断面を有する貫通孔としてボディ24内で直角に曲がるように設けられている。
開口部24aは、ボディ24の上面に開口され、流路21に連通する。
スタットボルト26は、ボディ24の開口部24aの周縁部に立設されている。スタットボルト26は、後述するボンネット25のボルト挿通孔25bに挿通され、ナット27が螺合される。これにより、ボディ24にボンネット25が固定される。
【0027】
ボンネット25は、ボディ24の開口部24aを塞ぐように構成されている。ボンネット25は、弁軸挿通孔22と、フランジ部25aと、複数のボルト挿通孔25bと、注入孔25cと、複数のスタットボルト28と、を有する。
【0028】
ボンネット25は、円筒状に形成され、該円筒の中心に弁軸挿通孔22が設けられている。
弁軸挿通孔22は、ボンネット25の中心を上下に貫通して設けられている。
弁軸挿通孔22は、プラグステム31の外径よりも大きな内径を有している。この弁軸挿通孔22の内周面とプラグステム31の外周面との間に隙間空間を形成し、この隙間空間をパッキン収納凹部(空間)22aとしている。
パッキン収納凹部22aには、後述する軸封部40の第1パッキン(パッキン)41、第2パッキン42及びランタンリング43が収納される。
【0029】
フランジ部25aは、ボンネット25の長手方向の略中間位置に鍔状に設けられている。このフランジ部25aには、スタットボルト26を挿通するボルト挿通孔25bが設けられている。
注入孔25cは、パッキン収納凹部22aに連通され、後述するルブリケータ60によってランタンリング43に封止用の流体を注入できるように設けられている。
【0030】
スタットボルト28は、ボンネット25の弁軸挿通孔45aの周縁部に立設されている。スタットボルト28は、後述するパッキンフランジ45のボルト挿通孔45bに挿通され、ナット29が螺合される。これにより、ボンネット25にパッキンフランジ45が固定される。
【0031】
プラグ30は、流路21に対して進退自在に設けられ、流路21の開度を調節する。プラグ30は、丸棒状に形成されている。
プラグステム31は、弁軸挿通孔22に摺動自在に挿通され、プラグ30と螺合により連結されている。プラグステム31は、プラグ30よりも大きな外径を有し、丸棒状に形成されている。
【0032】
ルブリケータ60は、後述する軸封部40のランタンリング43に封止用流体(例えば、水や潤滑油等)を供給する。ルブリケータ60は、ボンネット25に着脱自在に設けられている。ルブリケータ60は、ボンネット25の注入孔25cに着脱自在に接続されるニップル部61と、封止用流体の注入量を調節するアイソレートバルブ部62と、を有する。
【0033】
図示しない駆動機構部は、プラグステム31の上部に配置され、プラグステム31を軸方向(上下方向)に進退させるように構成されている。
【0034】
<軸封部の説明>
軸封部40は、弁軸挿通孔22から流体が漏洩するのを封止する。軸封部40は、第1パッキン41と、第2パッキン42と、ランタンリング43と、グランド44と、パッキンフランジ45と、を備える。
【0035】
第1パッキン41及び第2パッキン42は、ゴム等の弾性部材により円環状に形成されており、プラグステム31の外周面に装着された状態でパッキン収納凹部22aに収納される。
【0036】
具体的には、プラグステム31の所定箇所には、先ず2つの第1パッキン41が装着され、これらの第1パッキン41の上に後述するランタンリング43が配設され、更にランタンリング43の上に5つの第2パッキン42が積層されている。なお、第1パッキン41及び第2パッキン42の配設数は、確保すべきシール条件によって設定される。
【0037】
グランド44は、第2パッキン42をランタンリング43側に押圧するための部材であり、円筒状に形成されている。
グランド44の外径は、パッキン収納凹部22aに挿入できるように、パッキン収納凹部22aの内径よりも若干小さく形成されている。
グランド44の内径は、プラグステム31を挿通できるように、プラグステム31の外径よりも若干大きく形成されている。
【0038】
パッキンフランジ45は、グランド44を第2パッキン42側に押圧するための部材であり、円環状に形成されている。パッキンフランジ45は、グランド44よりも大きな外径に形成され、弁軸挿通孔45aと、複数のボルト挿通孔45bと、を有する。
【0039】
弁軸挿通孔45aは、パッキンフランジ45の中心に設けられている。弁軸挿通孔45aには、プラグステム31が挿通される。
複数のボルト挿通孔45bは、パッキンフランジ45の弁軸挿通孔45aを中心とする円周方向に設けられている。
ボルト挿通孔45bには、ボンネット25に立設されたスタットボルト28が挿通され、スタットボルト28にナット29が螺合される。これにより、ボンネット25にパッキンフランジ45が固定される。
【0040】
<ランタンリングの説明>
次に、ランタンリング43について図2及び図3を参照して更に詳しく説明する。
図2は、第1実施形態に係るランタンリングを示す斜視図である。図3は、図2に示したランタンリングのA−A断面を示す断面図である。
【0041】
ランタンリング43は、ルブリケータ60から供給される封止用流体を貯留することにより、調節弁10を流通する流体(流路21を流通する蒸気等)が弁軸挿通孔22からボンネット25の外部に漏洩するのを封止する部材である。
【0042】
図2及び図3に示すように、ランタンリング43は、円筒状に形成された本体部43aと、本体部43aの軸方向の一端部に径方向に突設された鍔部43bと、本体部43aの軸方向の他端部に径方向に突設された鍔部43cと、を備える。ランタンリング43は、例えば、ステンレス素材からなる。
【0043】
本体部43aの軸心部は、プラグステム31が挿通される弁軸挿通孔433として形成されている。本体部43aの側面には、貫通孔43dが設けられている。
【0044】
鍔部43bには、鍔部43bを貫通する凹部としての係合孔43eが該鍔部43bの直径方向に2つ設けられている。この係合孔43eは、円形の貫通孔である。
なお、係合孔43eの一部が本体部43aにも設けられているが、係合孔43eの径と鍔部43bの突出長さに応じて、係合孔43eを鍔部43bのみに設けてもよい。
【0045】
<取り出し治具の説明>
次に、取り出し治具について図4及び図5を参照して説明する。
図4は、取り出し治具を示す斜視図である。図5は、取り出し治具の使用状態を示す平面図である。
【0046】
取り出し治具70は、パッキン収納凹部22aに配設されているランタンリング43を該パッキン収納凹部22aから外部に取り出す際に使用される。
図4に示すように、取り出し治具70は、本体部71と、握り部72と、一対のアーム部73,73と、一対の爪部74,74と、を備える。
取り出し治具70は、所定の強度を有する鉄等の金属により一体的に構成されている。
【0047】
本体部71は、板状部材により略U字形状に形成されている。本体部71は、該U字形状の開口側の空間を、弁軸用スペース(軸部材挿通凹部)71aとして有する。
弁軸用スペース71aは、プラグステム31の直径よりも大きな内径を有し、プラグステム31を配置可能に形成されている。
【0048】
握り部72は、作業者が把持する部分である。握り部72は、棒状部材により形成され、本体部71の他端部から該本体部71の面方向に沿って突設されている。
【0049】
一対のアーム部73,73は、棒状部材により形成され、本体部71の底面から該底面に対して略垂直方向に突設されている。アーム部73の長さは、ランタンリング43がパッキン収納凹部22aに配設された状態において、ボンネット25の上面からランタンリング43の上面までの距離よりも大きく形成されている。
【0050】
爪部74は、アーム部73の先端部を該アーム部73と略直角方向に折曲して形成されている。爪部74は、ランタンリング43の係合孔43eに挿通可能に形成されている。また、爪部74は、ランタンリング43の係合孔43eに挿通した後、鍔部43bの裏面に引っ掛けることができるように形成されている。
【0051】
これらアーム部73及び爪部74は、取り出し治具70を回動する際の捻り力と、引き上げる際の引張り力に耐えられる強度を有している。
【0052】
<ランタンリングの取り出し方法及びパッキンの取り替え方法の説明>
次に、取り出し治具70を用いてランタンリング43をパッキン収納凹部22aから取り出し、第1パッキン41を取り替える方法について図1及び図5を参照して説明する。
なお、下記作業に先立って、プラグステム31の上端部は、図示しない駆動機構部との連結を解除され、プラグステム31に装着されている各部材(パッキンフランジ45、グランド44、第2パッキン42等)を該上端部から取り外せるように予め準備しておくものとする。
【0053】
先ず、ボンネット25に取り付けられているルブリケータ60(図1参照)を取り外し、図示しない加圧用空気配管を取り付ける。
次に、スタットボルト28からナット29を取り外し、パッキンフランジ45及びグランド44を取り外す。
【0054】
そして、ランタンリング43の上部側に配設されている第2パッキン42をパッキン収納凹部22aから抜き出す。
続いて、ランタンリング43を取り出し易くするために、パッキン収納凹部22aの内周面の清掃(内周面に付着した錆、ゴミ等の除去)を行う。
【0055】
次に、上記加圧用空気配管(図示せず)から注入孔25cを介してパッキン収納凹部22aのランタンリング43に加圧空気を供給し、パッキン収納凹部22aを加圧する。
このように加圧すると、ランタンリング43とプラグステム31との隙間や、ランタンリング43とパッキン収納凹部22aとの隙間に加圧空気が入り、その空気圧によってランタンリング43が押されて取り出し易くなるからである。
【0056】
次に、取り出し治具70を用いてランタンリング43をパッキン収納凹部22aから取り出す作業を行う。
すなわち、図5に示すように、作業者は、取り出し治具70の握り部72を把持し、本体部71をランタンリング43の上方に配置する。
【0057】
そして、爪部74,74をランタンリング43の係合孔43eに係合させ、例えば、図5に示す矢印方向に握り部72を回動し、ランタンリング43を回動する。
これにより、ランタンリング43がパッキン収納凹部22aの内周面や第1パッキン41等と固着していても、ランタンリング43をその固着面から容易に引き剥がすことができる。
【0058】
次に、ランタンリング43の係合孔43eに係合している爪部74,74を、鍔部43bの裏面に引っ掛け、取り出し治具70を持ち上げることにより、ランタンリング43をパッキン収納凹部22aから容易に引き上げて取り出すことができる。
【0059】
ランタンリング43を取り出した後、上記加圧用空気配管からの加圧空気の供給を止める。そして、第1パッキン41を抜き出し、パッキン収納凹部22aの内周面の清掃(内周面に付着した錆、ゴミ等の除去)を行う。
【0060】
次に、新規な第1パッキン41及び第2パッキン42の取り付け作業を行う。この取り付け作業は、上記取り外し作業と逆の工程を経ればよい。すなわち、第1パッキン41を組み付けた後にランタンリング43を組み付け、第2パッキン42を組み付ける。
【0061】
そして、第2パッキン42の上にグランド44を組み付け、更にパッキンフランジ45をスタットボルト28に組み付けて、スタットボルト28にナット29を締結する。
なお、上記加圧用空気配管は、ボンネット25から取り外し、ルブリケータ60を取り付ける。
【0062】
以上のように、この第1実施形態によれば、ランタンリング43に係合孔43eを備えたので、ボディ24からボンネット25を取り外す等の大掛かりな分解を行うことなく、取り出し治具70を用いて容易かつ迅速にパッキン収納凹部22aからランタンリング43を取り出すことができ、第1パッキン41を新規なものと容易に交換することができる。
【0063】
なお、上記第1実施形態においては、ランタンリング43の凹部としての係合孔43eを鍔部43bに設けるものとして説明したが、これに限定されず、係合孔43eを鍔部43b及び鍔部43cに設けてもよい。
これにより、作業者は、ランタンリング43の上下を区別することなく、該ランタンリング43をパッキン収納凹部22aに配置することができる。
【0064】
また、上記第1実施形態においては、取り出し治具70の本体部71を板状部材により略U字形状に形成するものとして説明したが、プラグステム31がボンネット25に組み付けられた状態で取り出し治具70を使用する場合において、本体部71がプラグステム31と干渉しなければ、U字状の形状に限定されず、コ字状等その他の形状であってもよい。
また、本体部71を板状部材により形成するものとして説明したが、棒状部材により形成してもよい。
【0065】
また、上記第1実施形態においては、取り出し治具70の爪部74は、アーム部73の先端部を折曲して形成されているものとして説明したが、これに限定されず、爪部74をアーム部73の先端部に溶接等により設けてもよい。
【0066】
〔第2実施形態〕
図6、第2実施形態に係るランタンリングを示す斜視図である。図7は、図6に示したランタンリングのB−B断面を示す断面図である。
なお、以下の説明において、既に説明した部材と同一若しくは相当する部材には、同一の符号を付して重複説明を省略又は簡略化する。
【0067】
上記第1実施形態では、取り出し治具70の爪部74,74を係合させる部分として、ランタンリング43の鍔部43bに凹部としての係合孔43eを設けたが、第2実施形態に係るランタンリング43は、係合孔43eの代わりに、凹部としての係合切り欠き部43fを設けたものである。
【0068】
すなわち、図6及び図7に示すように、鍔部43bの直径方向の2箇所には、係合切り欠き部43fが設けられている。係合切り欠き部43fは、取り出し治具70の爪部74を挿通可能な大きさに切り欠いて形成されている。係合切り欠き部43fは、例えば、矩形形状に切り欠いて形成されている。
【0069】
なお、その他の構成と、パッキン収納凹部22aからのランタンリング43の取り出し方法及び第1パッキン41の取り替え方法は、上記第1実施形態の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0070】
以上のように、この第2実施形態によれば、ランタンリング43に係合切り欠き部43fを備えたので、ボディ24からボンネット25を取り外す等の大掛かりな分解を行うことなく、取り出し治具70を用いて容易かつ迅速にパッキン収納凹部22aからランタンリング43を取り出すことができ、第1パッキン41を新規なものと容易に交換することができる。
【0071】
なお、上記第2実施形態においては、ランタンリング43の鍔部43bの直径方向両端部に係合切り欠き部43fを2つ設けるものとして説明したが、3つ以上設けてもよい。この場合、作業者は、3つ以上の係合切り欠き部43fのうち、任意の2つの係合切り欠き部43fを選択し、取り出し治具70を用いて取り外せばよい。また、取り出し治具70に3つ以上のアーム部73及び爪部74を設けてもよい。
【0072】
また、上記第2実施形態においては、ランタンリング43の凹部としての係合切り欠き部43fを鍔部43bに設けるものとして説明したが、これに限定されず、係合切り欠き部43fを鍔部43b及び鍔部43cに設けてもよい。
これにより、作業者は、ランタンリング43の上下を区別することなく、該ランタンリング43をパッキン収納凹部22aに配置することができる。
【0073】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態においては、調節弁10に使用されるランタンリング43を例にして説明したが、軸部材の周囲からの流体漏洩を防止する封止部材を備えた流体機械であれば、調節弁に限定されず、例えば、ポンプ等の流体機械に本発明を適用してもよい。
この場合も上述した効果と同様の効果を期待できる。
【0074】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態においては、軸封スペーサとして、封止用流体を貯留可能なランタンリング43を例にして説明したが、封止用流体を貯留可能に構成されていない軸封スペーサに本発明を適用してもよい。
この場合も上述した効果と同様の効果を期待できる。
【符号の説明】
【0075】
10 調節弁(流体機械)
20 ケーシング(圧力容器)
22 弁軸挿通孔(連通孔)
22a パッキン収納凹部(空間)
30 プラグ(軸部材)
31 プラグステム(軸部材)
41 第1パッキン(パッキン)
43 ランタンリング(軸封スペーサ)
43b 鍔部
43e 係合孔(凹部)
43f 係合切り欠き部(凹部)
70 取り出し治具
71 本体部
71a 弁軸用スペース(軸部材挿通凹部)
72 握り部
73 アーム部
74 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路及び該流路に連通する連通孔を有する圧力容器と、
前記連通孔に摺動自在に挿通される軸部材と、
前記連通孔の内面と前記軸部材との間に形成される空間に配置されるパッキンと、
を備える流体機械の前記空間に前記パッキンと隣接して配置される軸封スペーサであって、
円筒状の本体部と、
前記本体部における上端側に位置する端面に設けられる複数の凹部と、
を備えることを特徴とする軸封スペーサ。
【請求項2】
前記軸封スペーサの軸方向の一端部及び他端部には、径方向に延びる鍔部を有し、
前記凹部は、前記鍔部の直径方向の両端部を貫通する一対の係合孔として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸封スペーサ。
【請求項3】
前記軸封スペーサの軸方向の一端部及び他端部には、径方向に延びる鍔部を有し、
前記凹部は、前記鍔部の直径方向の両端部を切り欠いた一対の係合切り欠き部として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸封スペーサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の前記軸封スペーサの前記凹部に係合させることにより、該軸封スペーサを前記空間から取り出す軸封スペーサの取り出し治具であって、
一端側に前記軸部材の直径よりも大きな内径の軸部材挿通凹部が形成された本体部と、
前記本体部における他端側から突設された握り部と、
前記本体部の一端側における底面から該底面に対して略垂直方向に突設された複数のアーム部と、
前記アーム部の先端部から該アーム部と略直角方向に突設され、前記軸封スペーサの前記凹部に係合可能に構成された爪部と、
を備えることを特徴とする軸封スペーサの取り出し治具。
【請求項5】
前記本体部は、板状部材又は棒状部材により略U字形状に形成されると共に、該U字形状の開口側の空間を前記軸部材挿通凹部として有し、
前記握り部は、棒状部材により形成されると共に、前記本体部における他端側から該本体部の面方向に沿って突設され、
前記アーム部は、棒状部材により形成されると共に、前記本体部の前記底面から一対突設され、
前記爪部は、前記アーム部の先端部を該アーム部と略直角方向に折曲して形成されることを特徴とする請求項4に記載の軸封スペーサの取り出し治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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