説明

軸継手

【課題】回転軸と軸継手との間の隙間に起因する動力伝達時の軸継手への摩耗を防止し、また組付け時のガタによる異音の発生を防止できる軸継手を提供する。
【解決手段】軸方向に貫通した切欠き41を開設し、切欠き41を開設したことにより形成される中央部42の端面43に駆動軸1のトルク伝達片11からのトルク受面および従動軸2のトルク伝達片21へのトルク授面となる凹部(45,46)を形成した金属製の継手本体4と、継手本体4の凹部(45,46)に駆動軸1および従動軸2のトルク伝達片(11,21)を係合させた後に切欠き41に予圧縮をもって圧入されるゴム状弾性体のスペーサ5とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動側回転軸と油圧ポンプの回転軸など、駆動軸と従動軸とを回転接続する軸継手に関するものである。
【0002】
従来、この種の電動モータの駆動側回転軸と油圧ポンプの回転軸等を接続する軸継手の典型的な技術としては、駆動軸と従動軸との芯ズレの吸収を目的に、例えば下記の特許文献1に記載された十字型の軸継手のものが知られている。
【特許文献1】特開平11−294479号公報
【0003】
特許文献1に記載された十字型の軸継手は、駆動軸が接続される樹脂で成形された複数の第一単位片と、従動軸が接続される樹脂で成形された複数の第二単位片とを回転中心軸線の回りに間隔を隔てて交互に配列し、前記間隔にゴム状弾性体を結合させ、全体として盤体に形成した構造を備えている。
【0004】
上記従来の技術によれば、駆動軸と従動軸との芯ズレを吸収するため、回転軸と軸継手との間に回転方向の隙間(ガタ)が設けられることにより、軸継手の回転方向の荷重面に摩耗が生じる。また、間隔を隔てて間隔を交互に配列し、その間隔にゴム状弾性体を結合させているので組付け時に隙間が発生し、異音が生じるとの不具合点が指摘されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、回転軸と軸継手との間の隙間に起因する動力伝達時の軸継手への摩耗を防止し、また組付け時のガタによる異音の発生を防止できる軸継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る軸継手は、軸方向に貫通した切欠きを開設し、該切欠きを開設したことにより形成される中央部の端面に駆動軸のトルク伝達片からのトルク受面および従動軸のトルク伝達片へのトルク授面となる凹部を形成した金属製の継手本体と、該継手本体に形成された凹部に駆動軸および従動軸のトルク伝達片を係合させた後に該切欠きに予圧縮をもって圧入されるゴム状弾性体のスペーサと、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0008】
上記構成を備えた本発明の請求項1に係る軸継手は、駆動軸のトルク伝達片からのトルク受面および従動軸のトルク伝達片へのトルク授面を形成する凹部が金属製の継手本体に形成され、しかも簡易な構造であるので、狭小な取付けスペースに装着する比較的大きな入力に耐える軸継手することができる。
【0009】
また、継手本体に形成された切欠きに圧入されるゴム状弾性体のスペーサは、予圧縮されることにより、駆動軸および受動軸のトルク伝達片への拘束力が確保されるので、部品精度のバラツキに起因する組立て時の継手本体と駆動軸および受動軸のトルク伝達片との隙間をなくすことができ、これに起因する動力伝達時の摩耗や異音発生を防止することができる。
【0010】
また、構造は簡易であるので製造原価を安価に抑えることができ、更に、スペーサはゴム状弾性体単体で成形されているので、ゴム特性のチューニングを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。
【0012】
以下、本発明に係る軸継手の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は軸継手を構成する継手本体の軸心方向から見た正面図、図2は、接続対象の駆動軸及び従動軸と共に示す図1におけるX−X断面図、図3は、軸継手を構成するスペーサの正面図(1)と側面図(2)、図4は、継手本体とスペーサとを組み立てた軸継手の正面図、図5は、図4における軸継手を駆動軸及び従動軸と共に示す説明図である。
【0013】
まず図1、図2において、参照符号1,2は、それぞれ本実施形態の軸継手の接続対象である一対の回転軸であり、1が駆動軸、2が従動軸を示している。このうち、駆動軸1は、例えばモータの駆動側回転軸であり、従動軸2は、例えば前記モータによって回転される油圧ポンプの回転軸である。両回転軸1,2は、その軸端が軸方向に互いに対向している。
【0014】
駆動軸1の軸端には、軸方向に所定の高さを有する一対のトルク伝達片(11a,11b)(図2では1個(11a)のみを示す)が直径方向に対称に突設されており、従動軸2の軸端にも同様に、軸方向に所定の高さを有するトルク伝達片(21a,21b)が直径方向に対称に突設されていて、接続時に駆動軸のトルク伝達片(11a,11b)と従動軸のトルク駆動片(21a,21b)とを互に十字状に交差させた状態で接続できるようになっている。なお、本実施形態においては、駆動軸1のトルク伝達片11と従動軸2のトルク伝達片21との形状等は同一として説明するが、同一形状に限定されるものではない。
【0015】
駆動軸1と従動軸2とを接続する本実施形態の軸継手3は、継手本体4と、スペーサ5とを備えている。
【0016】
継手本体4は、外形が円筒形状を呈し、剛性の金属材料からなり、軸方向に貫通した一対の三日月形状の切欠き(41a,41b)が径方向に対称に開設されている。切欠き41を開設したことにより形成される中央部42の端面(43a,43b)には、一の面43aに一対の凹部(45a,46a)が形成され、他の面43bにも一対の凹部(45b,46b)が形成されている。該一対の凹部(45,46)は、時計回りの回転軸に装着する軸継手3として用いる場合には、図1における矢印Y方向から見た左側に形成されている左凹部45が、駆動軸1のトルク伝達片11のトルク受面として機能し、右側に形成されている右凹部46が、従動軸2のトルク伝達片21へのトルク授面として機能するようになっている。したがって、トルク受面として機能する一対の左凹部(45a,45b)は直径方向に対称に形成され、トルク授面として機能する一対の右凹部(46a,46b)も直径方向に対称に形成されているので、互に十文字に交差させたような状態になっている。逆に、反時計回りの回転軸に装着する軸継手3として用いる場合には、上記とは反対に、左側に形成されている左凹部45が、従動軸2のトルク伝達片21へのトルク授面として機能し、右側に形成されている右凹部46が、駆動軸1のトルク伝達片11へのトルク受面として機能するようになっている。なお、この場合においても、トルク授面として機能する左凹部45とトルク受面として機能する右凹部46は、互に十文字に交差させたような状態になっている。
【0017】
スペーサ5は、ゴム状弾性体で成形されていて、図3に示すように、継手本体4に開設されている切欠き41に圧入できるような三日月形状であって、圧入時にスペーサ5に予圧縮を与えることができるように継手本体4の切欠き41の大きさより僅かに大きい形状となっている。なお、円弧状の両端部(54,55)は、スペーサ5圧入時の作業性を考慮してR形状に処理されているが、後述するように駆動軸1および従動軸2のトルク伝達片(11,21)を拘束することができる範囲内で種種の形状とすることができる。
【0018】
また、スペーサ5の弦側端面51には、継手本体4の切欠き41に圧入したときに、継手本体4に形成されている一対の凹部(45,46)と対向するように、一対の凹部(52,53)が形成されている。したがって、時計回りの回転軸に装着する軸継手として用いる場合、スペーサ5を図3における矢印Z方向から見たときの右凹部52と継手本体4の左凹部45とで駆動軸1のトルク伝達片11への拘束力を確保し、スペーサ5の左凹部53と継手本体4の右凹部46とで従動軸2のトルク伝達片21への拘束力を確保するようになっている。
【0019】
以上のように構成された軸継手3を、軸方向に互いに対向する駆動軸1と従動軸2とに接続するには、時計回りの回転軸に装着する軸継手として用いる場合であれば、初めに、駆動軸1のトルク伝達片11を継手本体4の左凹部45に係合させ、次いで、軸方向反対側から従動軸2のトルク伝達片21を継手本体4の右凹部46に係合させ、その後に、2個のスペーサ5を継手本体4に開設されている三日月状の切欠き(41a,41b)に順次圧入することにより行う。
【0020】
このとき、駆動軸1と従動軸2の軸心が僅かにずれていたり、あるいは部品精度のバラツキがあっても、切欠き41に圧入されるゴム状弾性体のスペーサ5に予圧縮が与えられているので、継手本体4と伝達片(11,21)とのガタをなくすことができ、動力伝達時の継手本体4の摩耗を防止することができると共に異音の発生を防止することが可能となる。
【0021】
また、構造は簡易であるので製造原価を安価に抑えることができ、更に、スペーサ5はゴム状弾性体のみの単体で成形されているので形状の変更が容易であると共に、使用条件に適合させたゴム特性のチューニングを容易にすることができる。
【0022】
なお、本実施例において、スペーサ5に凹部(52,53)を形成した場合について説明したが、継手本体4に形成される凹部(45,46)の形状と、駆動軸1および従動軸2のトルク伝達片(11,21)の形状との関係によっては、凹部を形成しない場合であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る軸継手を構成する継手本体の軸心方向から見た正面図
【図2】接続対象の駆動軸及び従動軸と共に示す図1におけるX−X断面図
【図3】軸継手を構成するスペーサの正面図(1)と側面図(2)
【図4】継手本体とスペーサとを組み立てた軸継手の正面図
【図5】図4における軸継手を駆動軸及び従動軸と共に示す説明図
【符号の説明】
【0024】
1 駆動軸
11,21 トルク伝達片
2 従動軸
3 軸継手
4 継手本体
41 切欠き
42 中央部
43,51 端面
45,46,52,53 凹部
5 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通した切欠きを開設し、該切欠きを開設したことにより形成される中央部の端面に駆動軸のトルク伝達片からのトルク受面および従動軸のトルク伝達片へのトルク授面となる凹部を形成した金属製の継手本体と、該継手本体に形成された凹部に駆動軸および従動軸のトルク伝達片を係合させた後に該切欠きに予圧縮をもって圧入されるゴム状弾性体のスペーサと、を備えることを特徴とする軸継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−247707(P2007−247707A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69237(P2006−69237)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)