説明

軸継手

【課題】第1継手と第2継手の間の軸ずれを吸収しながらも、耐久性能の向上を図ることができる軸継手を提供すること。
【解決手段】本発明の軸継手30では、第1継手31と、第2継手32と、第1コマ部材33と、第2コマ部材34と、弾性支持機構35と、を備える。そして、第1継手31の動力伝達面313に第1凹部315を形成し、第2継手32の動力受面323に第2凹部325を形成し、第1コマ部材33を第1凹部315内に配置すると共に、第1コマ部材33の回転方向側面332に当接する回転方向側面342を有する第2コマ部材34を第2凹部325内に配置する。さらに、弾性支持機構35により、第1コマ部材33及び第2コマ部材34を、互いの回転方向側面332,342が当接した状態で、第1継手31及び第2継手32の径方向に沿って移動可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いの端面を噛み合わせて、一方の軸から他方の軸へ動力を伝達する軸継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、凹凸を有する互いの軸端面を回転方向に間隙をあけた状態で嵌め合せると共に、嵌め合った凹凸の外周に弾力性を持ったベルトを嵌合し、このベルトの内周面と凹凸の外周面を噛合させることで、ベルトを介して回転力を伝達する軸継手が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この軸継手では、金属体である軸端面の凹凸同士が直接接触していないため、金属同士が当たることで発生する騒音の発生を防止する。また、ベルトの働きにより回転軸の軸ずれが吸収され、回転力伝達を円滑に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-259876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の軸継手では、回転力伝達中は、常にベルトに力がかかっている状態である。また、回転軸の軸ずれが発生したときには、さらにベルトにかかる力が強くなる。そのため、軸継手の耐久性能は凹凸の外周に嵌合して軸ずれを吸収するベルトに依存しなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、軸ずれを吸収しながらも、耐久性能の向上を図ることができる軸継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の軸継手では、第1継手と、第2継手と、第1コマ部材と、第2コマ部材と、弾性支持機構と、を備える。
前記第1継手は、動力伝達面に第1凹部が形成されている。
前記第2継手は、第1継手から動力が入力する動力受面に第2凹部が形成されている。
前記第1コマ部材は、第1凹部内に配置されている。
前記第2コマ部材は、第2凹部内に配置されると共に、第1コマ部材の回転方向側面に当接する回転方向側面を有している。
前記弾性支持機構は、第1コマ部材及び第2コマ部材を、互いの回転方向側面が当接した状態で、第1継手及び第2継手の径方向に沿って移動可能に支持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軸継手にあっては、第1継手の動力伝達面に形成された第1凹部内に配置された第1コマ部材と、第2継手の動力受面に形成された第2凹部内に配置された第2コマ部材が、互いの回転方向側面が当接した状態で第1継手及び第2継手の径方向に沿って移動可能に支持されている。
すなわち、第1継手の動力伝達面に第1コマ部材が接触し、第2継手の動力受面に第2コマ部材が接触し、この第1コマ部材と第2コマ部材の互いの回転方向側面が当接する。
そのため、第1継手から第2継手への動力伝達時、動力は、第1継手の動力伝達面から第1コマ部材へと伝達され、この第1コマ部材の回転方向側面から第2コマ部材の回転方向側面へと伝達され、この第2コマ部材から第2継手の動力受面へと伝達される。つまり、動力伝達は、弾性支持機構を介することなく行われる。そのため、軸継手の耐久性能は耐久性の低い弾性支持機構に依存することがない。
一方、第1継手と第2継手の軸ずれが生じた場合には、第1コマ部材及び第2コマ部材が、互いの回転方向側面が当接した状態で第1継手及び第2継手の径方向に沿って移動し、そのずれを吸収する。
この結果、軸ずれを吸収しながらも、耐久性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の軸継手が適用されたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
【図2】実施例1の軸継手を示す側面図である。
【図3】実施例1の軸継手を示す縦断面図である。
【図4】実施例1の軸継手を示す分解斜視図である。
【図5】第1継手を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)における矢印A方向からの平面図であり、(c)は要部拡大斜視図である。
【図6】実施例1の第2継手を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)における矢印B方向からの平面図であり、(c)は要部拡大斜視図である。
【図7】実施例1の第1コマ部材を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)における矢印C方向からの側面図であり、(c)は(a)における矢印D方向からの側面図である。
【図8】実施例1の第2コマ部材を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)における矢印E方向からの側面図であり、(c)は(a)における矢印F方向からの側面図である。
【図9】実施例1の軸継手を示す横断面図であり、(a)は図2におけるG−G断面図を示し、(b)は図2におけるH−H断面図を示す。
【図10】実施例1の軸継手において、第1,第2継手と第1,第2コマ部材の互いの接触位置を示す要部を周方向に沿って展開した断面図である。
【図11】実施例1の軸継手における動力伝達時の、動力伝達経路を示す説明図である。
【図12】実施例1の軸継手における軸ずれ発生時を示す説明図である。
【図13】実施例1の軸継手において軸ずれ吸収作用を説明する模式図である。
【図14】実施例1の軸継手における傾角発生時を示す説明図である。
【図15】実施例2の軸継手を示す図であり、(a)は第1継手を示す平面図であり、(b)は図15(a)における要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の軸継手を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、本発明の軸継手における構成を、「軸継手適用例の構成」、「軸継手の全体構成」、「第1継手の構成」、「第2継手の構成」、「第1コマ部材の構成」、「第2コマ部材の構成」、「弾性支持機構の構成」、「軸継手の噛み合い構成」に分けて説明する。
【0011】
[軸継手適用例の構成]
図1は、実施例1の軸継手が適用されたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
【0012】
図1において、1はインホイールモータユニットMUのハウジング本体を示し、2はこのハウジング本体1のリヤカバーを示している。そして、このハウジング本体1及びリヤカバー2で、インホイールモータユニットMUのハウジング3を構成する。
【0013】
図1に示すインホイールモータユニットMUは、ハウジング3内に電動モータ4及び遊星歯車組式減速機5(以下、単に「減速機」と言う)を収納して構成し、これら電動モータ4及び減速機5を同軸に対向配置する。
【0014】
前記電動モータ4は、ハウジング本体1の内周に嵌合して固設した円環状の外周ステータ(以下、単に「ステータ」と言う)6と、このステータ6の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配した内周ロータ(以下、単に「ロータ」と言う)7とを有する。
【0015】
前記減速機5は、同軸に対向させて配置した入力軸8及び出力軸9と、サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し軸線方向へずらせて同心配置したリングギヤ12と、これらサンギヤ11及びリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するキャリア14とを有する。
【0016】
前記入力軸8は、外周面にサンギヤ11を一体成形して具え、このサンギヤ11からリヤカバー2に向かって延在されて、電動モータ結合部材7aを介してロータ7と一体回転可能に支持されている。
【0017】
前記出力軸(第2継手)9は、一端が軸継手30を介して減速機5の出力メンバであるキャリア(第1継手)14に接続され、他端がハウジング本体1に形成した開口から突出して車輪10が結合される。なお、ハウジング本体1に形成した開口内側には、前記リングギヤ12が回転止め且つ抜け止めして固設されている。また、この開口の軸方向外側には、キャリア14を回転可能に支持する延長ハウジング1aが固定されている。
【0018】
前記段付きプラネタリピニオン13は、サンギヤ11に噛合する大径ギヤ部13a、及び、リングギヤ12に噛合する小径ギヤ部13bを一体に有している。なお、段付きプラネタリピニオン13は、ここでは1個のみを図示しているが、3個一組として円周方向に等間隔に配置され、キャリア14により、円周方向等間隔配置を保って回転自在に支持されている。
【0019】
前記キャリア14は、減速機5の出力回転メンバであり、入力軸8と出力軸9の間で、この両軸8,9と同軸位置に配置される。また、このキャリア14の外周面は、延長ハウジング1aの内側に設けられたベアリング1bによって回転可能に支持される。また、このキャリア14の内側端14aには、ベアリング15を介して入力軸8の突合せ端部8aが相対回転可能に軸受け挿入されている。
【0020】
このように、入出力軸8,9は、相対回転可能な軸ユニットを構成し、この軸ユニットは同時にキャリア14及び段付きプラネタリピニオン13をも、同一ユニットとして具えている。このようにユニット化させた入出力軸8,9の軸ユニットを、ハウジング3に対して回転自在に支承するに際しては、軸線方向に離間した2箇所でベアリング17,18を用いている。
ここで、ベアリング17,18のうち、電動モータ側ベアリング17は、リヤカバー2と略同じ軸線方向位置において当該リヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在させる。また、車輪側ベアリング18は、ハウジング本体1に固定した延長ハウジング1aの開口を塞ぐ端蓋19に取着したベアリングサポート21の内周と、ハウジング本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在させる。
【0021】
なお、出力軸9に対して車輪10を結合するには、まず、ホイールハブ22に同心に、ブレーキドラム24を一体結合して設け、これらホイールハブ22及びブレーキドラム24を貫通して軸線方向に突出するよう複数個のホイールボルト25を植設する。
そして、車輪10のホイールディスク10aに穿ったボルト孔(図示せず)にホイールボルト25が貫通するようホイールディスク10aをブレーキドラム24の側面に密接させ、この状態でホイールボルト25にホイールナット26を緊締螺合させることにより、出力軸9に対して車輪10の取り付けを行う。
【0022】
[軸継手の全体構成]
図2は、実施例1の軸継手を示す側面図である。図3は、実施例1の軸継手を示す縦断面図である。図4は、実施例1の軸継手を示す分解斜視図である。
【0023】
上述のように、実施例1の軸継手30は、キャリア14と出力軸9の間を繋ぎ、キャリア14から出力軸9へ動力を伝達する。
この軸継手30は、軸中心O回りに回転して動力を伝達する駆動軸となる第1継手31(図1に示すインホイールモータユニットMUではキャリア14に相当)と、軸中心O回りに回転して動力が伝達される従動軸となる第2継手32(図1に示すインホイールモータユニットMUでは出力軸9に相当)と、第1,第2継手31,32の間に配置される複数の第1コマ部材33,…と、第1,第2継手31,32の間に配置されると共に複数の第1コマ部材33,…と互い違いに配置される複数の第2コマ部材34,…と、第1,第2コマ部材33,34を径方向に沿って移動可能に支持する弾性支持機構35と、を備えている。
ここで、第1,第2継手31,32は同一形状となっており、第1,第2コマ部材33,34は同一形状となっている。
【0024】
[第1継手の構成]
図5は、第1継手を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)における矢印A方向からの平面図であり、(c)は要部拡大斜視図である。
【0025】
前記第1継手31は、一般的な機械構造用に用いられる金属で形成され、回転軸311と、この回転軸311に一体的に設けられたフランジ部312と、を有している。
【0026】
前記回転軸311は、回転動力源(実施例1では電動モータ4)により回転させられる軸であり、軸中心Oに沿って延びている。なお、この回転軸311は、図1ではキャリア14の中心部分に相当する。
【0027】
前記フランジ部312は、回転軸311の第2継手32側の端部に、この回転軸311と同軸に設けられた円盤形状を呈し、動力伝達面313と、環状壁314と、複数の第1凹部315,…と、を有している。なお、このフランジ部312は、強度剛性、耐摩耗性を考慮した場合、高周波焼入れや窒化処理等の表面処理を実施することが望ましい。
【0028】
前記動力伝達面313は、第2継手32に臨む前記フランジ部312の端面であり、軸中心Oに対して直交する平坦な面である。この動力伝達面313には、第2コマ部材34が当接する。
【0029】
前記環状壁314は、前記フランジ部312の周囲から動力伝達面313を囲むように立ち上がった環状の壁面である。
【0030】
前記第1凹部315は、動力伝達面313に形成された凹部であり、内側に第1コマ部材33が配置される。この第1凹部315は、ここでは軸中心Oを中心に回転方向に沿って等間隔をあけて4箇所設けられている。そして、各第1凹部315は、動力伝達面313よりもへこんだ底面315aと、回転方向に対向する一対の回転方向内側面315b,315bと、底面315aから立ち上がって環状壁314と一体になった径方向内周面315cと、を有している。
また、各第1凹部315は、一対の回転方向内側面315b,315bの間隔である回転方向幅W2が、径方向内周面315cから軸中心Oに向かって次第に狭くなる扇形のへこみとなっており、角部はすべてR形状となっている。また、径方向内周面315cの回転方向中央位置には、段差部315dが形成されると共に、径方向に貫通したねじ孔316が形成されている。
そして、各第1凹部315の内径寸法は、第1コマ部材33の外径寸法よりも径方向及び回転方向のいずれにおいても大きい寸法となっている。すなわち、第1凹部315の径方向中心寸法W1は、第1コマ部材33の径方向中心寸法W7(図7参照)よりも大きい。これにより、第1凹部315内に第1コマ部材33を配置したとき、第1凹部315の径方向内周面315cと、この径方向内周面315cに対向する第1コマ部材33の径方向外周面333との間には、第1間隙部38が生じる(図9参照)。
また、第1凹部315の一対の回転方向内側面315b,315bの間隔である回転方向幅W2は、第1コマ部材33の回転方向幅W8(図7参照)よりも大きい。
一方、第1凹部315の深さである第1凹部315の底面315aから動力伝達面313までの寸法H1は、第1コマ部材33の軸方向寸法H2(図7参照)よりも小さい。これにより、第1凹部315内に第1コマ部材33を配置すると、この第1凹部315から第1コマ部材33は突出する。
さらに、隣接する第1凹部315同士の間隔寸法W3は、第2コマ部材34の回転方向幅W10よりも小さくなっている。
【0031】
[第2継手の構成]
図6は、実施例1の第2継手を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は(a)における矢印B方向からの平面図であり、(c)は要部拡大斜視図である。
【0032】
前記第2継手32は、一般的な機械構造用に用いられる金属で形成され、回転軸321と、この回転軸321に一体的に設けられたフランジ部322と、を有している。
【0033】
前記回転軸321は、第1継手31により回転させられる軸であり、軸中心Oに沿って延びている。なお、この回転軸321は、図1では出力軸9に相当する。
【0034】
前記フランジ部322は、回転軸321の第1継手31側の端部に、この回転軸321と同軸に設けられた円盤形状を呈し、動力受面323と、環状壁324と、複数の第2凹部325,…と、を有している。なお、このフランジ部322は、強度剛性、耐摩耗性を考慮した場合、高周波焼入れや窒化処理等の表面処理を実施することが望ましい。
【0035】
前記動力受面323は、第1継手31に臨む前記フランジ部322の端面であり、軸中心Oに対して直交する平坦な面である。この動力受面323には、第1コマ部材33が当接する。
【0036】
前記環状壁324は、前記フランジ部322の周囲から動力受面323を囲むように立ち上がった環状の壁面である。
【0037】
前記第2凹部325は、動力受面323に形成された凹部であり、内側に第2コマ部材34が配置される。この第2凹部325は、ここでは軸中心Oを中心に回転方向に沿って等間隔をあけて4箇所設けられている。そして、各第2凹部325は、動力受面323よりもへこんだ底面325aと、回転方向に対向する一対の回転方向内側面325b,325bと、底面325aから立ち上がって環状壁324と一体になった径方向内周面325cと、を有している。
また、各第2凹部325は、一対の回転方向内側面325b,325bの間隔である回転方向幅W5が、径方向内周面325cから軸中心Oに向かって次第に狭くなる扇形のへこみとなっており、角部はすべてR形状となっている。また、径方向内周面325cの回転方向中央位置には、段差部325dが形成されると共に、径方向に貫通したねじ孔326が形成されている。
そして、各第2凹部325の内径寸法は、第2コマ部材34の外径寸法よりも径方向及び回転方向のいずれにおいても大きい寸法となっている。すなわち、第2凹部325の径方向中心寸法W4は、第2コマ部材34の径方向中心寸法W9(図8参照)よりも大きい。これにより、第2凹部325内に第2コマ部材34を配置したとき、第2凹部325の径方向内周面325cと、この径方向内周面325cに対向する第2コマ部材34の径方向外周面343との間には、第2間隙部39が生じる(図9参照)。
また、第2凹部325の一対の回転方向内側面325b,325bの間隔である回転方向幅W5は、第2コマ部材34の回転方向幅W10(図8参照)よりも大きい。
一方、第2凹部325の深さである第2凹部325の底面325aから動力受面323までの寸法H3は、第2コマ部材34の軸方向寸法H4(図8参照)よりも小さい。これにより、第2凹部325内に第2コマ部材34を配置すると、この第2凹部325から第2コマ部材34は突出する。
さらに、隣接する第2凹部325同士の間隔寸法W6は、第1コマ部材33の回転方向幅W8よりも小さくなっている。
【0038】
[第1コマ部材の構成]
図7は、実施例1の第1コマ部材を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)における矢印C方向からの側面図であり、(c)は(a)における矢印D方向からの側面図である。
【0039】
前記第1コマ部材33は、一般的な機械構造用に用いられる金属製のブロック形状を呈する動力伝達部材であり、第1凹部315内に配置される。この第1コマ部材33は、底面331と、一対の回転方向側面332,332と、径方向外周面333と、径方向内周面334と、軸方向外端面335と、を有している。なお、この第1コマ部材33は、強度剛性、耐摩耗性を考慮した場合、高周波焼入れや窒化処理等の表面処理を実施することが望ましい。
【0040】
前記底面331は、第1凹部315内に第1コマ部材33を配置した際に、この第1凹部315の底面315aと接触する面である。
【0041】
前記回転方向側面332は、底面331から立ち上がり、第1凹部315内に第1コマ部材33を配置した際に、第1凹部315の回転方向内側面315bと対向する面である。また、この回転方向側面332は第1凹部315から突出し、この突出した部分が、第1コマ部材33と第2コマ部材34が互い違いに配置された際に、隣接する第2コマ部材34の回転方向側面342と当接する。
そして、一対の回転方向側面332,332は、径方向外周面333からこの径方向外周面333に対向する径方向内周面334に向かって、次第にその間隔が狭まっている。すなわち、この第1コマ部材33は、径方向内周面334に向かって先細り形状となった扇形状となっている。
また、上述の第1コマ部材33の回転方向幅W8とは、この一対の回転方向側面332,332の間隔寸法である。
【0042】
前記径方向外周面333は、底面331から立ち上がり、第1凹部315内にこの第1コマ部材33を配置した際に、第1凹部315の径方向内周面315cと対向する面である。ここで、径方向外周面333は、径方向内周面315cに沿って湾曲している。そして、この径方向外周面333には、後述するスプリング収納凹部42が形成されている。
なお、上述の第1コマ部材33の径方向中心寸法W7とは、この径方向外周面333の径方向中心位置と、これに対向する径方向内周面334の径方向中心位置までの寸法である。
【0043】
前記軸方向外端面335は、底面331に対向する面であり、第1凹部315内にこの第1コマ部材33を配置すると共に、第1継手31と第2継手32を組み合わせた際に、第2継手32の動力受面323に当接する面である。この軸方向外端面335は、R形状となっており、底面331から軸方向外端面335までの寸法H2は、径方向外周面333側から径方向内周面334側に向けて次第に大きくなる。
なお、上述の第1コマ部材33の軸方向寸法H2とは、第1コマ部材33の高さであり、底面331から軸方向外端面335までの寸法である。
【0044】
[第2コマ部材の構成]
図8は、実施例1の第2コマ部材を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)における矢印E方向からの側面図であり、(c)は(a)における矢印F方向からの側面図である。
【0045】
前記第2コマ部材34は、一般的な機械構造用に用いられる金属製のブロック形状を呈する動力伝達部材であり、第2凹部325内に配置される。この第2コマ部材34は、底面341と、一対の回転方向側面342,342と、径方向外周面343と、径方向内周面344と、軸方向外端面345と、を有している。なお、この第2コマ部材34は、強度剛性、耐摩耗性を考慮した場合、高周波焼入れや窒化処理等の表面処理を実施することが望ましい。
【0046】
前記底面341は、第2凹部325内に第2コマ部材34を配置した際に、この第2凹部325の底面325aと接触する面である。
【0047】
前記回転方向側面342は、底面341から立ち上がり、第2凹部325内に第2コマ部材34を配置した際に、第2凹部325の回転方向内側面325bと対向する面である。また、この回転方向側面342は第2凹部325から突出し、この突出した部分が、第1コマ部材33と第2コマ部材34が互い違いに配置された際に、隣接する第1コマ部材33の回転方向側面332と当接する。
そして、一対の回転方向側面342,342は、径方向外周面343からこの径方向外周面343に対向する径方向内周面344に向かって、次第にその間隔が狭まっている。すなわち、この第2コマ部材34は、径方向内周面344に向かって先細り形状となった扇形状となっている。
また、上述の第2コマ部材34の回転方向幅W10とは、この一対の回転方向側面342,342の間隔寸法である。
【0048】
前記径方向外周面343は、底面341から立ち上がり、第2凹部325内にこの第2コマ部材34を配置した際に、第2凹部325の径方向内周面325cと対向する面である。ここで、径方向外周面343は、径方向内周面325cに沿って湾曲している。そして、この径方向外周面343には、後述するスプリング収納凹部46が形成されている。
なお、上述の第2コマ部材34の径方向中心寸法W9とは、この径方向外周面343の径方向中心位置と、これに対向する径方向内周面344の径方向中心位置までの寸法である。
【0049】
前記軸方向外端面345は、底面341に対向する面であり、第2凹部325内にこの第2コマ部材34を配置すると共に、第1継手31と第2継手32を組み合わせた際に、第1継手31の動力伝達面313に当接する面である。この軸方向外端面345は、R形状となっており、底面341から軸方向外端面345までの寸法H4は、径方向外周面343側から径方向内周面344側に向けて次第に大きくなる。
なお、上述の第2コマ部材34の軸方向寸法H4とは、第2コマ部材34の高さであり、底面341から軸方向外端面345までの寸法である。
【0050】
[弾性支持機構の構成]
図9は、実施例1の軸継手を示す横断面図であり、(a)は図2におけるG−G断面図を示し、(b)は図2におけるH−H断面図を示す。
【0051】
前記弾性支持機構35は、複数の第1コマ部材33,…を前記第1継手31に対して個別に弾性支持する第1支持機構36と、複数の第2コマ部材34,…を前記第2継手32に対して個別に弾性支持する第2支持機構37と、から構成されている。
【0052】
前記第1支持機構36は、第1コマ部材33の径方向外周面333と第1凹部315の径方向内周面315cの間に生じた第1間隙部38と、この第1間隙部38に配置された第1付勢部材40と、を有している。
【0053】
ここで、前記第1付勢部材40は、第1コマ部材33を軸中心Oに向かって付勢すると共に、第1間隙部38内での第1コマ部材33の径方向に沿った移動を吸収する圧縮性を有している。また、この第1付勢部材40は、コイルスプリング41と、スプリング収納凹部42と、固定ボルト(固定部)43と、を有している。
【0054】
前記コイルスプリング41は、第1間隙部38内に配置され、径方向に沿って伸縮する。このとき、このコイルスプリング41は第1凹部315の径方向内周面315cに形成された段差部315dに嵌合する。
【0055】
前記スプリング収納凹部42は、第1コマ部材33の径方向外周面333に形成され、第1凹部315の径方向内周面315cに向けて開放した凹部であり、コイルスプリング41の一端を収容する。
【0056】
前記固定ボルト43は、第1凹部315の径方向内周面315cの外側からねじ孔316に螺合され、このねじ孔316から段差部315dの内側に突出した先端に、コイルスプリング41の他端が巻きつき固定される。すなわち、この固定ボルト43は、コイルスプリング41の他端を第1凹部315の径方向内周面315cに対して固定する。なお、この固定ボルト43の先端は、第1隙間部38内に突出しない。
【0057】
前記第2支持機構37は、第2コマ部材34の径方向外周面343と第2凹部325の径方向内周面325cの間に生じた第2間隙部39と、この第2間隙部39に配置された第2付勢部材44と、を有している。
【0058】
ここで、前記第2付勢部材44は、第2コマ部材34を軸中心Oに向かって付勢すると共に、第2間隙部39内での第2コマ部材34の径方向に沿った移動を吸収する圧縮性を有している。また、この第2付勢部材44は、コイルスプリング45と、スプリング収納凹部46と、固定ボルト(固定部)47と、を有している。
【0059】
前記コイルスプリング45は、第2間隙部39内に配置され、径方向に沿って伸縮する。このとき、このコイルスプリング45は第2凹部325の径方向内周面325cに形成された段差部325dに嵌合する。
【0060】
前記スプリング収納凹部46は、第2コマ部材34の径方向外周面343に形成され、第2凹部325の径方向内周面325cに向けて開放した凹部であり、コイルスプリング45の一端を収容する。
【0061】
前記固定ボルト47は、第2凹部325の径方向内周面325cの外側からねじ孔326に螺合され、このねじ孔326から段差部325d内に突出した先端に、コイルスプリング45の他端が巻きつき固定される。すなわち、この固定ボルト47は、コイルスプリング45の他端を第2凹部325の径方向内周面325cに対して固定する。なお、この固定ボルト47の先端は、第2隙間部39内に突出しない。
【0062】
[第1,第2継手の噛み合い構成]
図10は、実施例1の軸継手において、第1,第2継手と第1,第2コマ部材の互いの接触位置を示す要部を周方向に沿って展開した断面図である。
【0063】
実施例1の軸継手30は、第1継手31の複数の第1凹部315,…のそれぞれに第1コマ部材33が配置され、第2継手32の複数の第2凹部325,…のそれぞれに第2コマ部材34が配置される。そして、第1継手31の動力伝達面313と第2継手32の動力受面323が対向する。
【0064】
このとき、複数の第1コマ部材33,…と複数の第2コマ部材34,…は交互に噛み合うと共に、第1コマ部材33の軸方向外端面335が動力受面323に当接し、第2コマ部材34の軸方向外端面345が動力伝達面313に当接する。さらに、第1凹部315から突出した部分の回転方向側面332と、第2凹部325から突出した部分の回転方向側面342が互いに当接する。
【0065】
なお、第1,第2凹部315,325は、それぞれの回転方向幅W2,W5が、第1,第2コマ部材33,34の回転方向幅W8,W10よりも大きい。さらに、隣接する第1凹部315同士の間隔寸法W3は第2コマ部材34の回転方向幅W10よりも小さく、隣接する第2凹部325同士の間隔寸法W6は第1コマ部材33の回転方向幅W8よりも大きい。
そのため、図9に示すように、第1,第2凹部315,325の回転方向中央位置と、第1,第2コマ部材33,34の回転方向中央位置とが一致した状態で、第1,第2コマ部材33,34が噛み合うと、図10に示すように、第1コマ部材33の回転方向側面332と第1凹部315の回転方向内側面315bとの間には間隙K1が生じ、第2コマ部材34の回転方向側面342と第2凹部325の回転方向内側面325bとの間には間隙K2が生じる。
【0066】
次に、実施例1の軸継手における作用を「動力伝達作用」、「軸ずれ吸収作用」、「傾角吸収作用」に分けて説明する。
【0067】
[動力伝達作用]
図11は、実施例1の軸継手における動力伝達時の、動力伝達経路を示す説明図である。
【0068】
実施例1の軸継手30において、第1継手31から第2継手32へと回転動力を伝達するには、まず、回転動力源(実施例1では電動モータ4)の回転力で第1継手31が回転する(図11において下向き方向)。これにより、動力伝達面313に形成された第1凹部315が回転方向に移動し、この第1凹部315の回転方向内側面315bが第1コマ部材33の回転方向側面332に当接して、図11において矢印Fで示すように、回転方向内側面315bから第1コマ部材33に回転動力が伝達される。
【0069】
ここで、第1コマ部材33は、第1凹部315から突出すると共に、この突出した部分の回転方向側面332が第2コマ部材34の回転方向側面342に当接している。そのため、この互いに当接した回転方向側面332,342を介して、図11において矢印Fで示すように、第1コマ部材33から第2コマ部材34へと回転動力が伝達され、第1,第2コマ部材33,34は一体的に噛み合った状態で回転する。
【0070】
そして、第2コマ部材34が回転することで、この第2コマ部材34の回転方向側面342が第2凹部325の回転方向内側面325bに当接し、図11において矢印Fで示すように、第2凹部325へと回転動力が伝達される。ここで、第2凹部325は、動力受面323に形成されているため、この動力受面323に動力伝達されることとなり、第2継手32が回転する。
【0071】
このように、実施例1の軸継手30では、第1継手31から第2継手32への動力伝達は、比較的耐久性の高い金属を介して行われ、金属よりも耐久性が低い弾性支持機構35を介することがない。そのため、軸継手30の耐久性能は、耐久性の低い弾性支持機構35に依存することがなくなり、耐久性能の向上を図ることができる。また、金属を介して動力伝達を行うことで動力の伝達ロスを抑え、動力伝達の円滑性が確保される。
【0072】
また、動力伝達は、第1凹部315の回転方向内側面315bと第1コマ部材33の回転方向側面332との間、第1コマ部材33の回転方向側面332と第2コマ部材34の回転方向側面342との間、第2コマ部材34の回転方向側面342と第2凹部325の回転方向内側面325bとの間で、それぞれで行われる。そのため、各面の接触面積を径方向で確保することにより、動力伝達に必要な面積を確保すると共に、第1,第2凹部315,325の深さである寸法H1,H3や、第1,第2コマ部材33,34の軸方向寸法H2,H4を抑えることができる。この結果、軸継手30の軸方向寸法の増大を軽減することができる。
【0073】
なお、第1,第2コマ部材33,34は、それぞれ弾性支持機構35により軸中心O,Oに向かって付勢されている。そのため、動力伝達中では、第1,第2コマ部材33,34は第1,第2凹部315,325に密着してがたつきが生じることはない。これにより、騒音の発生防止を図ると共に、第1,第2凹部315,325や第1,第2コマ部材33,34の摩耗を抑えることができる。
【0074】
さらに、実施例1の軸継手30では、上述のように第1,第2凹部315,325や第1,第2コマ部材33,34の摩耗を抑えることができるため、これらの接触部分の剛性を低く抑えることができる。そのため、フランジ部312,322や第1,第2コマ部材33,34を一般的な機械構造用に用いられる金属により形成することができて、安価に製作することができる。
【0075】
そして、実施例1の軸継手30では、第1,第2継手31,32は同一形状となっており、第1,第2コマ部材33,34は同一形状となっている。これにより、部品点数が増大せず、製造コストの更なる抑制を図ることができる。
【0076】
[軸ずれ吸収作用]
図12は、実施例1の軸継手における軸ずれ発生時を示す説明図である。図13は、実施例1の軸継手において軸ずれ吸収作用を説明する模式図である。
【0077】
実施例1の軸継手30において、第1継手31の軸中心Oと第2継手32の軸中心Oの位置が平行してずれた場合、図12に示すように、弾性支持機構35のコイルスプリング41,45が伸縮及び変形する。これにより、第1コマ部材33及び第2コマ部材34は、互いの回転方向側面332,342が当接した状態で、第1継手31及び第2継手32の径方向に沿って移動する。
【0078】
すなわち、第1付勢部材40のコイルスプリング41は、第1間隙部38内での第1コマ部材33の移動を吸収する圧縮性を有しており、第2付勢部材44のコイルスプリング45は、第2間隙部39内での第2コマ部材34の移動を吸収する圧縮性を有している。一方、第1凹部315の内径寸法は、第1コマ部材33の外径寸法よりも径方向及び回転方向のいずれにおいても大きい寸法となっている。また、第2凹部325の内径寸法は、第2コマ部材34の外径寸法よりも径方向及び回転方向のいずれにおいても大きい寸法となっている。
【0079】
このため、図13に模式的に示すように、第1,第2コマ部材33,34は、第1,第2凹部315,325内において、径方向にフロート支持された状態となっている。これにより、第1継手31の軸中心Oと第2継手32の軸中心Oの位置がずれた場合、コイルスプリング41,45が変形して第1,第2隙間部38,39の大きさが変化し、第1,第2コマ部材33,34は噛み合ったまま軸ずれを吸収して動力伝達を継続することができる。
【0080】
さらに、実施例1の軸継手30では、複数の第1コマ部材33,…は、それぞれ第1付勢部材40により、軸中心Oに向かって付勢されている。また、複数の第2コマ部材34は、第2付勢部材44により、軸中心Oに向かって付勢されている。そのため、それぞれの第1,第2コマ部材33,34には常に軸中心O,Oに戻ろうとする力が作用し、軸ずれを緩和することができる。
【0081】
そして、実施例1の軸継手30では、動力伝達は弾性支持機構35を介することなく行うので、軸ずれの発生の有無に拘わらず弾性支持機構35に負荷が作用することはない。そのため、耐久性能が軸ずれによって損なわれることがなく、軸ずれを吸収しながらも、耐久性能の向上を図ることができる。
【0082】
[傾角吸収作用]
図14は、実施例1の軸継手における傾角発生時を示す説明図である。
【0083】
実施例1の軸継手30において、第1継手31の軸中心Oと第2継手32の軸中心Oの軸方向がずれると、この軸中心O,Oの間に傾角が発生する。この場合、図14に示すように、第1継手31の動力伝達面313に対する第2コマ部材34の軸方向外端面345の接触位置が変化し、第2継手32の動力受面323に対する第1コマ部材33の軸方向外端面335の接触位置が変化する。これにより、第1コマ部材33及び第2コマ部材34は、互いの回転方向側面332,342が当接した状態で、軸中心O,Oに対して傾く。
【0084】
すなわち、第1,第2コマ部材33,34の軸方向外端面335,345がR形状となっていることで、軸中心O,Oの間に生じた傾角に合わせて、動力伝達面313との接触位置及び動力受面323との接触位置を円滑に変化させることができる。これにより、傾角を吸収しつつ、動力伝達を継続することができる。
【0085】
なお、第1コマ部材33及び第2コマ部材34が軸中心O,Oに対して傾くことで、互いの回転方向側面332,342における当接面積は減少するが、この噛み合い代が維持できるまでは動力伝達を確保することができる。
【0086】
次に、効果を説明する。
実施例1の軸継手にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
【0087】
(1) 動力伝達面313に第1凹部315が形成された第1継手31と、
前記第1継手31から動力が入力する動力受面323に第2凹部325が形成された第2継手32と、
前記第1凹部315内に配置された第1コマ部材33と、
前記第2凹部325内に配置されると共に、前記第1コマ部材33の回転方向側面332に当接する回転方向側面342を有する第2コマ部材34と、
互いの回転方向側面332,342が当接した状態で、前記第1コマ部材33及び前記第2コマ部材34を、前記第1継手31及び前記第2継手32の径方向に沿って移動可能に支持する弾性支持機構35と、
を備えた構成とした。
このため、第1継手31と第2継手32の間の軸ずれを吸収しながらも、耐久性能の向上を図ることができる。また、動力伝達のための接触面積を径方向で確保することにより、軸継手30の軸方向寸法の増大を軽減することができる。
【0088】
(2) 前記弾性支持機構35は、
前記第1コマ部材33の径方向外周面333と、前記第1凹部315の径方向内周面315cの間に設けた第1間隙部38と、前記第1間隙部38に配置し、前記第1コマ部材33を前記第1継手31の軸中心Oに向かって付勢すると共に前記第1間隙部38内での前記第1コマ部材33の移動を吸収する圧縮性を有する第1付勢部材40と、を有する第1支持機構36と、
前記第2コマ部材34の径方向外周面343と、前記第2凹部325の径方向内周面325cの間に設けた第2間隙部39と、前記第2間隙部39に配置し、前記第2コマ部材34を前記第2継手32の軸中心Oに向かって付勢すると共に前記第2間隙部39内での前記第2コマ部材34の移動を吸収する圧縮性を有する第2付勢部材44と、を有する第2支持機構37と、
から構成されるとした。
このため、動力伝達中に、第1,第2コマ部材33,34は第1,第2凹部315,325に密着してがたつきが生じず、騒音の発生防止を図ると共に、摩耗を抑えることができる。また、第1,第2コマ部材33,34には常に軸中心O,Oに戻ろうとする力が作用し、軸ずれを緩和することができる。
【0089】
(3) 前記第1付勢部材40又は前記第2付勢部材44の少なくとも一方は、
コイルスプリング41,45と、
前記第1コマ部材33又は前記第2コマ部材34の前記径方向外周面333,343に形成されて、前記コイルスプリング41,45の一端を収容するスプリング収納凹部42,46と、
前記コイルスプリング41,45の他端を、前記第1凹部315又は前記第2凹部325の径方向内周面315c,325cに対して固定する固定部(固定ボルト)43,47と、
を有する構成とした。
このため、簡易な構成で第1,第2コマ部材33,34を弾性支持することができて、安価に製造することができる。
【0090】
(4) 前記第1コマ部材33又は前記第2コマ部材34の少なくとも一方は、動力伝達面313又は動力受面323に当接する軸方向外端面335,345を、R形状とする構成とした。
このため、第1継手31と第2継手32の間に傾角が生じても、この傾角を吸収しつつ、動力伝達を継続することができる。
【実施例2】
【0091】
実施例2の軸継手は、弾性支持機構における第1,第2付勢部材を、板バネとこれを各コマ部材に固定する固定部により構成したものである。以下、この第1,第2付勢部材の構成を詳述する。なお、第1,第2付勢部材は同一形状であるため、ここでは第1付勢部材についてのみ説明する。
【0092】
図15は、実施例2の軸継手を示す図であり、(a)は第1継手を示す平面図であり、(b)は図15(a)における要部拡大図である。
【0093】
実施例2の軸継手では、第1付勢部材51として、板バネ52と、固定ビス(固定部)53と、を有している。
【0094】
前記板バネ52は、第1コマ部材33の径方向外周面333と第1凹部315の径方向内周面315cの間に生じた第1間隙部38に配置され、第1コマ部材33を軸中心Oに向かって付勢している。またこの板バネ52は、第1コマ部材33の径方向へ移動を吸収する圧縮性を有している。
【0095】
前記固定ビス53は、板バネ52を、第1コマ部材33の径方向外周面333に対して固定し、板バネ53の脱落を防止する。また、この固定ビス53は、板バネ52の回転方向中心位置を径方向外周面333の回転方向中心位置に固定し、板バネ52の回転方向両端部を自由端としている。
【0096】
さらに、この実施例2では、第1凹部315の径方向内周面315cにビス逃げ凹部54を形成している。このビス逃げ凹部54は、固定ビス53が挿入可能な大きさとなっている。
【0097】
このように、板バネ52を活用した場合であっても、軸ずれ発生には、この板バネ52が伸縮して、第1コマ部材33が図示しない第2コマ部材と噛み合った状態で径方向に移動し、軸ずれを吸収しながらも動力伝達を継続することができる。
【0098】
さらに、この板バネ52を活用することで、実施例1のようにコイルスプリングを用いる場合と比較して、第1継手31の環状壁314の外側に固定ボルトが突出しない分、第1継手31の直径を小さくすることができる。そのため、実施例1の軸継手と同じ直径にする場合には、第1凹部315や第1コマ部材33の径方向寸法を大きく確保することができ、その分軸方向の寸法を抑えることができる。また、軸方向寸法を実施例1の軸継手と同じ大きさにすれば、径方向寸法が抑えられ、軸継手の周囲レイアウトに制限がある場合に有効である。
【0099】
また、実施例1の軸継手と比較して、環状壁314にねじ孔316を形成する工程等が不要となるため、加工工程が少なくなってさらに安価に製作することができる。
【0100】
さらに、径方向内周面315cにビス逃げ凹部54を形成することで、軸ずれの発生によって板バネ52が圧縮されたときに、固定ビス53が径方向内周面315cと干渉して、この固定ビス53による乗り上げを回避することができる。
【0101】
なお、板バネ52の回転方向両端部が自由端となっていることで、圧縮された板バネ52の回転方向両端部が広がっても、径方向内周面315cと干渉することを防止できる。
【0102】
なお、実施例2の軸継手では、第1間隙部38に板バネ52及び固定ビス53を配置することで、第1間隙部38の空間寸法を狭めてしまう。この結果、第1コマ部材33の径方向に沿った可動寸法を狭めることとなる。そのため、実施例1のコイルスプリングを用いる軸継手と、実施例2の板バネを用いる軸継手との使い分けは、軸継手における軸ずれ許容量や周辺レイアウトの制限によって判断することが望ましい。
【0103】
次に、効果を説明する。
実施例2の軸継手にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
【0104】
(5) 前記第1付勢部材51又は前記第2付勢部材の少なくとも一方は、
前記第1間隙部38又は前記第2間隙部39に配置される板バネ52と、
前記板バネ52を、前記第1コマ部材33又は前記第2コマ部材34の前記径方向外周面333,343に対して固定する固定部(固定ビス)53と、
を有する構成とした。
このため、簡易な構成で第1,第2コマ部材33,34を弾性支持することができて、安価に製造することができる。
【0105】
以上、本発明の軸継手を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0106】
実施例1,2では、第1継手31及び第2継手32の間に配置される第1,第2コマ部材3,34をそれぞれ4個ずつとし、第1,第2継手31,32の合計で回転方向に8分割したものとなっている。しかしながら、これに限らず、コマ部材は、第1,第2継手31,32の合計で回転方向に6分割したものや、10分割したものであってもよい。
【0107】
分割数、すなわちコマ部材の数が多いと軸ずれを吸収する際の径方向移動が柔軟になり、滑らかに回転動作を継続することができる。しかしながら、コマ部材の数が増えることで部品点数が増加してしまうと共に、軸中心側の先端角が鋭角になり、コマ部材の強度が低下する。一方、コマ部材の数が少ないと部品点数が低減するため、安価に製造することができると共に、コマ部材の先端角が大きくなって剛性が向上する。しかし、軸ずれ時の動作の滑らかさは低下する。そのため、コマ部材の数の設定は、使用環境下や目的に応じて選択する必要がある。
【0108】
また、実施例1では、第1,第2付勢部材40,44が共にコイルスプリング41,45を用いるものであり、実施例2では、第1付勢部材51,第2付勢部材(図示せず)が共に板バネ52を用いるものとなっている。しかしながら、第1付勢部材と第2付勢部材が異なる構成であってもよい。つまり、例えば第1付勢部材がコイルスプリングを用いるものであり、第2付勢部材が板バネを用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0109】
30 軸継手
31 第1継手
311 回転軸
312 フランジ部
313 動力伝達面
314 環状壁
315 第1凹部
315b 回転方向内側面
315c 径方向内周面
316 ねじ孔
32 第2継手
321 回転軸
322 フランジ部
323 動力受面
324 環状壁
325 第2凹部
325b 回転方向内側面
325c 径方向内周面
326 ねじ孔
33 第1コマ部材
332 回転方向側面
333 径方向外周面
335 軸方向外端面
34 第2コマ部材
342 回転方向側面
343 径方向外周面
345 軸方向外端面
35 弾性支持機構
36 第1支持機構
37 第2支持機構
38 第1間隙部
39 第2間隙部
40 第1付勢部材
41 コイルスプリング
42 スプリング収納凹部
43 固定ボルト(固定部)
44 第2付勢部材
45 コイルスプリング
46 スプリング収納凹部
47 固定ボルト(固定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達面に第1凹部が形成された第1継手と、
前記第1継手から動力が入力する動力受面に第2凹部が形成された第2継手と、
前記第1凹部内に配置された第1コマ部材と、
前記第2凹部内に配置されると共に、前記第1コマ部材の回転方向側面に当接する回転方向側面を有する第2コマ部材と、
前記第1コマ部材及び前記第2コマ部材の互いの回転方向側面が当接した状態で、前記第1継手及び前記第2継手の径方向に沿って移動可能に支持する弾性支持機構と、
を備えたことを特徴とする軸継手。
【請求項2】
請求項1に記載された軸継手において、
前記弾性支持機構は、
前記第1コマ部材の径方向外周面と、前記第1凹部の径方向内周面の間に設けた第1間隙部と、前記第1間隙部に配置し、前記第1コマ部材を前記第1継手の軸中心に向かって付勢すると共に前記第1間隙部内での前記第1コマ部材の移動を吸収する圧縮性を有する第1付勢部材と、を有する第1支持機構と、
前記第2コマ部材の径方向外周面と、前記第2凹部の径方向内周面の間に設けた第2間隙部と、前記第2間隙部に配置し、前記第2コマ部材を前記第2継手の軸中心に向かって付勢すると共に前記第2間隙部内での前記第2コマ部材の移動を吸収する圧縮性を有する第2付勢部材と、を有する第2支持機構と、
から構成されることを特徴とする軸継手。
【請求項3】
請求項2に記載された軸継手において、
前記第1付勢部材又は前記第2付勢部材の少なくとも一方は、
コイルスプリングと、
前記第1コマ部材又は前記第2コマ部材の前記径方向外周面に形成されて、前記コイルスプリングの一端を収容するスプリング収納凹部と、
前記コイルスプリングの他端を、前記第1凹部又は前記第2凹部の径方向内周面に対して固定する固定部と、
を有することを特徴とする軸継手。
【請求項4】
請求項2に記載された軸継手において、
前記第1付勢部材又は前記第2付勢部材の少なくとも一方は、
前記第1間隙部又は前記第2間隙部に配置される板バネと、
前記板バネを、前記第1コマ部材又は前記第2コマ部材の前記径方向外周面に対して固定する固定部と、
を有することを特徴とする軸継手。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された軸継手において、
前記第1コマ部材又は前記第2コマ部材の少なくとも一方は、動力伝達面又は動力受面に当接する軸方向外端面を、R形状としたことを特徴とする軸継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−2504(P2013−2504A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132501(P2011−132501)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)