説明

軽量溝形鋼の切断方法および切断装置

【課題】軽量溝形鋼の切断方法において、適用範囲が広く、しかも冷間ロールフォーミング時の残留応力の影響による、切断時の各フランジの拡開を安価に且つ確実に防止できること。
【解決手段】半剪断工程〔図4(b)〕では、受圧部材21をプレス方向X1に所定量移動させ、両矯正金型15,16を拡開矯正方向Z1,Z2に駆動する。両フランジ52,53の拡開を矯正しつつ両フランジを半剪断する。全剪断工程〔図4(c)〕では、受圧部材21をさらにプレス方向X1に移動して、移動刃ブロック4の本体10の対向面14aに当接させる。移動刃ブロック4全体が、案内ブロック5,6の働きで一体的に斜め方向Z1に移動する。このとき、両矯正金型15は拡開を矯正する状態を維持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間ロールフォーミングにより形成された軽量溝形鋼の切断方法および切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溝形鋼は、ウェブと一対のフランジという複数の面要素を集合して形成されているので、垂直または水平方向から切断することが困難である。従って、切断刃を斜め方向から溝形鋼に係合させて、切断するようにしている。
通例、切断装置では、溝形鋼が貫通できる孔型をそれぞれ設けた固定刃および移動刃を用いて切断している(いわゆるシャー切断)。各孔型と溝形鋼との間には、通材性を良くするために、所定量の隙間(ギャップ)が設けられている。しかし、上記の隙間があるため、溝形鋼を切断するときに、切断に伴う変形が生ずる。
【0003】
一方、特許文献1では、一般的な溝形鋼(重量溝形鋼)を切断する技術において、固定刃および移動刃に関して、フランジ方向への両刃の相対移動を、ウェブ方向への両刃の相対移動よりも先行させることにより、フランジの剪断の始まりをウェブの剪断の始まりに合わせるか、或いは、それよりも早める技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−43929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ウェブよりも厚肉のフランジを有することを前提としており、適用範囲が狭い。また、特許文献1では、冷間ロールフォーミングにより形成された軽量溝形鋼(軽溝形鋼、リップ溝形鋼)の切断に適用した場合、フランジの拡がりを防止できない。
すなわち、冷間ロールフォーミングにより形成された軽量溝形鋼(軽溝形鋼、リップ溝形鋼)の場合、薄い鋼板を冷間で折り曲げて形成するため、流れ方向の後端側(上流側)にいくほど折り曲げ時の残留応力が大きい。その残留応力が切断時に開放されることにより、ウェブに対してフランジが拡がるという問題がある。切断後に、フランジの拡がりを二次加工により矯正することが行われているが、手間と時間がかかり、製造コストが高くなる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、適用範囲が広く、しかも冷間ロールフォーミング時の残留応力の影響による、切断時の各フランジの拡開を安価に且つ確実に防止することができる軽量溝形鋼の切断方法および切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、冷間ロールフォーミングにより形成された軽量溝形鋼(50)が挿通される溝形のキャビティ(7,9)をそれぞれ有する固定刃ブロック(3)および移動刃ブロック(4)を用い、移動刃ブロックを斜め方向(Y1)に移動させて上記軽量溝形鋼を切断する軽量溝形鋼の切断方法において、上記軽量溝形鋼の各フランジ(52,53)の外側面にそれぞれ対向して移動刃ブロックのキャビティの一部を区画する第1および第2の矯正金型(15,16;115,116)を、それぞれ対応するフランジの拡開矯正方向(Z1,Z2)に移動させて、両フランジの拡開を矯正しつつ両フランジを半剪断する半剪断工程と、両フランジの拡開を矯正した状態の両矯正金型を含む移動刃ブロックを、上記斜め方向に一体移動させて、軽量溝形鋼を全剪断する全剪断工程と、を含む軽量溝形鋼の切断方法を提供する。
【0008】
本切断方法によれば、両矯正金型によって両フランジの拡開を矯正しつつ両フランジを半剪断した後、両フランジの拡開を矯正した状態の両矯正金型を含む移動刃ブロックの全体を一体移動させて、両フランジの拡開を矯正した状態で軽量溝形鋼を全剪断する。したがって、軽量溝型鋼の切断端部において、冷間ロールフォーミング工程での折り曲げ時の残留応力が切断時に開放されてフランジが拡開することを確実に防止することができる。切断後に、拡開矯正のための二次加工が不要であり、製造コストを安くすることができる。また、フランジとウェブの肉厚の相違に拘らず適用可能であり、適用範囲が広い。
【0009】
また、請求項2のように、上記半剪断工程では、各フランジの先端(52a,53a)に向かうにしたがって半剪断量(CA)が大きくされている場合がある(請求項2)。一般に、冷間ロールフォーミングにより折り曲げ成形される軽量溝形鋼では、各フランジの先端側ほど拡がり量が大きくなる傾向にある。これに対して、本発明では、半剪断工程において、各フランジの先端に向かうにしたがって半剪断量を大きくしているので、各フランジの拡開をより確実に矯正することができる。
【0010】
また、請求項3の発明は、冷間ロールフォーミングにより形成された軽量溝形鋼(50)が挿通される溝形のキャビティ(7,9)をそれぞれ有する固定刃ブロック(3)および移動刃ブロック(4)を用い、移動刃ブロックを斜め方向(Y1)に移動させて上記軽量溝形鋼を切断する軽量溝形鋼の切断装置(1)において、上記移動刃ブロックを固定刃ブロックに対して上記斜め方向に案内する案内機構(5,6)を備え、上記移動刃ブロックは、上記案内機構によって上記斜め方向に案内される本体(10;110)と、軽量溝形鋼の各フランジ(52,53)の外側面にそれぞれ対向してキャビティの一部を区画し、上記本体によってそれぞれ対応するフランジの拡開矯正方向(Z1,Z2)に移動可能に支持された第1および第2の矯正金型(15,16;115,116)と、上記第1および第2の矯正金型をそれぞれ対応する拡開矯正方向に駆動する第1および第2の駆動機構(17,18)と、を含む軽量溝形鋼の切断装置を提供する。
【0011】
本発明の切断装置によれば、各矯正金型を各フランジのスプリングバックによる拡開を矯正する拡開矯正方向へ移動させて、拡開を矯正しつつ各フランジを半剪断した後、拡開矯正を維持した状態の矯正金型を含む移動刃ブロックの全体を上記斜め方向に一体移動させることにより、軽量溝形鋼を全剪断することができる。したがって、軽量溝型鋼の切断端部において、冷間ロールフォーミング工程での折り曲げ時の残留応力が切断時に開放されてフランジが拡開することを確実に防止することができる。切断後に、拡開矯正のための二次加工が不要であり、製造コストを安くすることができる。また、フランジとウェブの肉厚の相違に拘らず適用可能であり、適用範囲が広い。
【0012】
また、請求項4のように、上記第1および第2の駆動機構は、軽量溝形鋼のウェブと直交するプレス荷重を受けてプレス方向(X1)に移動可能に上記本体によって支持された受圧部材(21)の移動に伴って、第1および第2の矯正金型をそれぞれ対応する拡開矯正方向に駆動する第1および第2のカム機構(22,23)をそれぞれ含む場合がある。この場合、プレス荷重を受けた受圧部材がプレス方向に移動するのに伴って、各矯正金型を、それぞれ対応するフランジの拡開矯正方向に駆動することができる。その結果、各フランジの拡開を確実に矯正することができる。
【0013】
また、請求項5のように、上記第1および第2のカム機構のそれぞれは、上記受圧部材と上記プレス方向に一体移動可能なカム(26,29)に設けられたカム面(24,27)と、カムフォロワとしての対応する矯正金型に設けられたカムフォロワ面(25,28)と、を含む場合がある。この場合、受圧部材と上記プレス方向に一体移動可能なカムを設け、各矯正金型にカムフォロア面を設ける簡単な構成によって、フランジの拡開を確実に矯正することができる。
【0014】
また、請求項6のように、上記受圧部材が上記本体の所定部(14a)と当接することにより、上記本体が上記案内機構によって案内されて、移動刃ブロックが、上記斜め方向に駆動されるように構成され、上記受圧部材および上記本体の上記所定部を互いに離隔する方向に付勢する付勢部材(30)を備える場合がある。この場合、プレス荷重を受圧部材に負荷すると、付勢部材に抗して、受圧部材が上記本体の上記所定部に当接し、その結果、移動刃ブロックを上記斜め方向に駆動することができる。プレス荷重を取り除くと、付勢部材によって、受圧部材と上記本体の上記所定部とが離隔し、自動的に次の切断の準備がされることになる。したがって、効率良く切断を繰り返すことができる。
【0015】
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態の軽量溝形鋼の切断装置の概略構成を示す一部破断正面図である。
【図2】固定刃ブロックの正面図である。
【図3】各カムと対応する矯正金型の係合状態を示す概略図である。
【図4】(a)〜(c)は軽量溝形鋼の切断方法の工程を順次に示す概略図である。
【図5】半剪断工程でのフランジと矯正面との関係を示す概略図である。
【図6】本発明の別の実施の形態の軽量溝形鋼の切断装置の概略構成を示す一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい態様を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の軽量溝形鋼の切断装置の概略図である。図1に示すように、切断装置1は、ハウジング2内に収容された固定刃ブロック3および移動刃ブロック4を備えている。固定刃ブロック3はハウジング2に固定されている。移動刃ブロック4は、プレス方向X1にプレス荷重を受けたときに、そのプレス方向X1に対して傾斜した斜め方向Y1に移動できるように、固定刃ブロック3に設けられた案内機構としての第1および第2の案内ブロック5,6によって支持されている。
【0018】
図2に示すように、固定刃ブロック2は、図4(a)に示すような軽量溝形鋼50が挿通される溝形のキャビティ7が形成された矩形板8を有している。第1および第2の案内ブロック5,6は、矩形板8の相対向する角部に形成され、矩形板8の一の面から突出する一対の三角形状のブロックである。第1および第2の案内ブロック5,6の対向面が、移動刃ブロック3を斜め方向Y1に案内する互いに平行な第1および第2の案内面5a,6aを構成している。
【0019】
図1に示すように、移動刃ブロック4は、図4(a)に示すような軽量溝形鋼50が挿通される溝形のキャビティ9を有している。具体的には、移動刃ブロック4は、本体10を有している。本体10の相対向する一対の角部には、第1および第2の案内面5a,6aにそれぞれ沿う第1および第2の被案内面11,12が設けられている。
本実施の形態では、軽量溝形鋼50がリップ溝形鋼である場合に則して説明するが、リップのない軽溝形鋼にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【0020】
本体10は、キャビティ9内に挿入された軽量溝形鋼50のウェブ51の内面および両フランジ52,53(本実施の形態ではリップ付きフランジ)の内側面に対向する内型部13と、キャビティ9内に挿入された軽量溝形鋼50のウェブ51の外面に対向する外型部14とを単一の材料で一体に形成している。
移動刃ブロック4は、キャビティ9内に挿入された軽量溝形鋼50の各フランジ52,53の外側面にそれぞれ対向してキャビティ9の一部を区画する第1および第2の矯正金型15,16と、第1および第2の矯正金型15,16をそれぞれ対応するフランジ52,53の拡開を矯正する拡開矯正方向Z1,Z2に駆動する第1および第2の駆動機構17,18とを備えている。
【0021】
また、本体10には、内向き傾斜状の一対の第1溝部19,20が形成されており、各矯正金型15,16は、それぞれ対応する第1溝部19,20によって、それぞれ対応する拡開矯正方向Z1,Z2へ移動可能に支持されている。第1および第2の矯正金型15,16は、それぞれ、内型部13に対向する第1および第2の矯正面15a,16aを有している。
【0022】
第1の駆動機構17は、プレス荷重Wを受けてプレス方向X1に移動可能に本体10によって支持された板状の受圧部材21と、受圧部材21のプレス方向X1への移動に伴って、第1の矯正金型15を対応する拡開矯正方向Z1に駆動する第1のカム機構22とを備えている。
第2の駆動機構18は、上記受圧部材21と、受圧部材21のプレス方向X1への移動に伴って、第2の矯正金型16を対応する拡開矯正方向Z2に駆動する第2のカム機構23とを備えている。このように、第1および第2の駆動機構17,18は、共通の受圧部材21を有している。
【0023】
第1のカム機構22は、互いに沿わされた第1カム面24および第1カムフォロア面25を有している。第1カム面24は、受圧部材21とプレス方向X1に一体移動可能な第1カム26にそれぞれ設けられており、プレス方向X1に対して傾斜している。第1カムフォロワ面25は、カムフォロアとしての第1の矯正金型15に設けられている。
第2のカム機構23は、互いに沿わされた第2カム面27および第2カムフォロア面28を有している。第2カム面27は、受圧部材21とプレス方向X1に一体移動可能な第2カム29にそれぞれ設けられており、プレス方向X1に対して傾斜している。第2カムフォロワ面28は、カムフォロアとしての第2の矯正金型16に設けられている。
【0024】
受圧部材21は、本体10の外型部14の対向面14a(所定部に相当)とプレス方向X1に対向している。受圧部材18と上記対向面14aとの間には、両者を離隔する方向に付勢する例えば圧縮コイルばねからなる複数の付勢部材30が、介在している。各付勢部材30は、受圧部材21または外型部14に形成された対応する収容孔に、一部または全部が収容されるようになっている。受圧部材21が対向面14aに当接したときには、各付勢部材30の全部が対応する収容孔に収容される。
【0025】
受圧部材21と各カム26,29とは、凹凸係合を用いて、プレス方向X1に一体移動可能に連結されている。また、本体10には、プレス方向X1に延びる一対の第2溝部31,32が形成されており、各カム26,29は、それぞれ対応する第2溝部31,32によりプレス方向X1に移動可能に支持されている。受圧部材21は、ハウジング2に形成された開口33に臨んでいる。受圧部材18に対して開口33を通してプレス荷重Wを負荷できるようになっている。
【0026】
ハウジング2は、移動刃ブロック4の斜め方向Y1への移動に伴って、プレス方向X1とは直交するスライド方向W1に移動する、ノック用のスライドブロック34を保持している。スライドブロック34は、移動刃ブロック4の本体10の傾斜状の被駆動面35に沿う傾斜状の駆動面36を有する三角形状のブロックである。傾斜状の被駆動面35および駆動面36は、斜め方向Y1に対して直交する面である。
【0027】
スライドブロック34は、例えば圧縮コイルばねからなる付勢部材37によって、スライド方向W1に付勢されることにより、移動刃ブロック4をプレス方向X1の反対方向X2にノックアウトする機能を果たす。
図3に示すように、第1の矯正金型15に設けられたスライダ38が、第1カム26に設けられたスライド溝39に、スライド可能に係合している。これにより、第1カム面24と第1カムフォロワ面25の摺接が可能とされている。また、付勢部材30が、受圧部材21を介して、第1カム26をプレス方向X1の反対方向Y2へ駆動するときに、これに連動して、第1の矯正金型15が、対応する拡開矯正方向Z1の反対方向へスライドされるようになっている。
【0028】
また、第2の矯正金型16に設けられたスライダ40が、第2カム29に設けられたスライド溝41に、スライド可能に係合している。これにより、第1カム面24と第1カムフォロワ面25の摺接が可能とされている。また、付勢部材30が、受圧部材21を介して、第2カム29をプレス方向X1の反対方向Y2へ駆動するときに、これに連動して、第2の矯正金型16が、対応する拡開矯正方向Z2の反対方向へスライドされるようになっている。
【0029】
次いで、図4(a)〜(c)を参照して、切断装置1を用いた軽量溝形鋼50の切断方法を説明する。
図4(a)に示すように、冷間ロールフォーミング工程の送り方向に沿って送られてきた軽量溝形鋼50が、切断装置1の固定刃ブロック3のキャビティ7〔図4(a)では示されていない〕を介して、移動刃ブロック4のキャビティ9内に挿入され、さらに、所定長さ送られた後、停止する。
【0030】
次いで、図4(b)に示す半剪断工程では、受圧部材21にプレス荷重Wを付与し、付勢部材30を縮めさせて、受圧部材21をプレス方向X1に所定量変位させる。これに伴って、各カム26,29がプレス方向X1に同行移動するので、各カム機構22,23の働きで、各矯正金型15,16が、各フランジ52,53の拡開方向とは反対方向である拡開矯正方向Z1,Z2にそれぞれ駆動される。その結果、各フランジ52,53の拡開を矯正しつつ各フランジ52,53を半剪断することができる。
【0031】
このとき、受圧部材21は、移動刃ブロック4の対向面14aに近接するか、ちょうど当接する状態になるが、移動刃ブロック4の本体10は、まだ斜め方向Y1へは変位していない。
次いで、図4(c)に示す全剪断工程では、受圧部材21をさらにプレス方向X1に押圧する。受圧部材21が移動刃ブロック4の本体10の対向面14aに当接し、その結果、移動刃ブロック4全体が、案内ブロック5,6の働きで、一体的に斜め方向Y1に移動し、軽量溝形鋼50の全体を切断することができる。移動刃ブロック4の全体が斜め方向Y1に移動するときに、両矯正金型15,16は拡開矯正位置に保持された状態にある。したがって、各フランジ52,53の拡開を矯正した状態で軽量溝形鋼50を全切断することができる。
【0032】
本実施の形態の切断方法および切断装置1によれば、両矯正金型15,16によって両フランジ52,53の拡開を矯正しつつ両フランジ52,53を半剪断した後、両フランジ52,53の拡開を矯正した状態の両矯正金型15,16を含む移動刃ブロック4の全体を一体移動させて、両フランジ52,53の拡開を矯正した状態で軽量溝形鋼50を全剪断する。したがって、軽量溝型鋼50の切断端部において、冷間ロールフォーミング工程での折り曲げ時の残留応力が切断時に開放されてフランジ52,53が拡開することを確実に防止することができる。切断後に、拡開矯正のための二次加工が不要であり、製造コストを安くすることができる。また、フランジ52,53とウェブ51の肉厚の相違に拘らず適用可能であり、適用範囲が広い。
【0033】
また、図5に示すように、プレス成形される軽量溝形鋼50では、各フランジ52,53の先端52a,53a側ほど拡がり量が大きくなる傾向にある。したがって、半剪断工程において、各矯正面15a,16aと対応するフランジ52,53の関係においては、フランジ52,53の先端52a,53aに向かうにしたがって半剪断量CAを大きくなることになる。これにより、各フランジ52,53の拡開をより確実に矯正することができる。
【0034】
また、各駆動機構17,18が、プレス方向X1に移動可能な受圧部材21の移動に伴って、各矯正金型15,16をそれぞれ対応する拡開矯正方向Z1,Z2に駆動するカム機構22,23をそれぞれ含む。したがって、カム機構22,23を用いた簡単な構造で、各フランジ52,53の拡開を確実に矯正することができる。
また、各カム機構22,23が、受圧部材21とプレス方向X1に一体移動可能なカム26,29に設けられカム面24,27と、カムフォロワとしての各矯正金型15,16に設けられたカムフォロア面25,28とを設ける簡単な構成である。このような簡単な構成のカム機構22,23によって、フランジ52,53の拡開を確実に矯正することができる。
【0035】
また、受圧部材21が、本体10の対向部14aと当接することにより、本体10が案内ブロック5,6によって案内されて、移動刃ブロック4が斜め方向Y1に駆動されるように構成されている。また、受圧部材21および本体10の対向部14aを互いに離隔する方向に付勢する付勢部材30が設けられている。したがって、プレス荷重を受圧部材21に負荷すると、付勢部材30に抗して、受圧部材21が本体10の対向部14aに当接し、その結果、移動刃ブロック4の全体を斜め方向Y1に駆動することができる。一方、プレス荷重を取り除くと、付勢部材30によって、受圧部材21と本体10の対向部14aとが離隔し、自動的に次の切断の準備がされることになる。したがって、効率良く切断を繰り返すことができる。
【0036】
上記の実施の形態では、軽量溝形鋼50のフランジ52,53がプレス方向に延びていたが、これに限らず、図6に示すように、切断装置100において、軽量溝形鋼50のフランジ52,53がプレス方向X1の反対方向Y2に延びるように、キャビティ109を設けてもよい。本体110において、プレス方向X1の反対側に内型部113が設けられ、プレス方向X1側に外型部114が設けられる。また、第1の矯正金型115と第2の矯正金型116が設けられ、各矯正金型115,116の矯正面115a,116bが内型部113に対向することになる。本実施の形態においても、図1の実施の形態と同じ効果を奏することができる。
【0037】
その他、本発明は、請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0038】
1;100…切断装置、2…ハウジング、3…固定刃ブロック、4…移動刃ブロック、5,6…案内ブロック、7,9;109…キャビティ、10;110…本体、15;115…第1の矯正金型、16;116…第2の矯正金型、17…第1の駆動機構、18…第2の駆動機構、21…受圧部材、22…第1のカム機構、23…第2のカム機構、24…第1カム面、25…第1カムフォロワ面、26…第1カム、27…第2カム面、28…第2カムフォロワ面、29…第2カム、30…付勢部材、50…軽量溝形鋼、51…ウェブ、52,53…フランジ、52a,53a…先端、CA…半剪断量、X1…プレス方向、Y1…斜め方向、Z1,Z2…拡開矯正方向、Z1…スライド方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間ロールフォーミングにより形成された軽量溝形鋼が挿通される溝形のキャビティをそれぞれ有する固定刃ブロックおよび移動刃ブロックを用い、移動刃ブロックを斜め方向に移動させて上記溝形鋼を切断する軽量溝形鋼の切断方法において、
上記軽量溝形鋼の各フランジの外側面にそれぞれ対向して移動刃ブロックのキャビティの一部を区画する第1および第2の矯正金型を、それぞれ対応するフランジの拡開矯正方向に移動させて、両フランジの拡開を矯正しつつ両フランジを半剪断する半剪断工程と、 両フランジの拡開を矯正した状態の両矯正金型を含む移動刃ブロックを、上記斜め方向に一体移動させて、軽量溝形鋼を全剪断する全剪断工程と、を含む軽量溝形鋼の切断方法。
【請求項2】
請求項1において、上記半剪断工程では、各フランジの先端に向かうにしたがって半剪断量が大きくされている軽量溝形鋼の切断方法。
【請求項3】
冷間ロールフォーミングにより形成された軽量溝形鋼が挿通される溝形のキャビティをそれぞれ有する固定刃ブロックおよび移動刃ブロックを用い、移動刃ブロックを斜め方向に移動させて上記軽量溝形鋼を切断する軽量溝形鋼の切断装置において、
上記移動刃ブロックを固定刃ブロックに対して上記斜め方向に案内する案内機構を備え、
上記移動刃ブロックは、上記案内機構によって上記斜め方向に案内される本体と、軽量溝形鋼の各フランジの外側面にそれぞれ対向してキャビティの一部を区画し、上記本体によってそれぞれ対応するフランジの拡開矯正方向に移動可能に支持された第1および第2の矯正金型と、上記第1および第2の矯正金型をそれぞれ対応する拡開矯正方向に駆動する第1および第2の駆動機構と、を含む軽量溝形鋼の切断装置。
【請求項4】
請求項3において、上記第1および第2の駆動機構は、軽量溝形鋼のウェブと直交するプレス荷重を受けてプレス方向に移動可能に上記本体によって支持された受圧部材の移動に伴って、第1および第2の矯正金型をそれぞれ対応する拡開矯正方向に駆動する第1および第2のカム機構をそれぞれ含む軽量溝形鋼の切断装置。
【請求項5】
請求項4において、上記第1および第2のカム機構のそれぞれは、上記受圧部材と上記プレス方向に一体移動可能なカムに設けられたカム面と、カムフォロワとしての対応する矯正金型に設けられたカムフォロワ面と、を含む軽量溝形鋼の切断装置。
【請求項6】
請求項5において、上記受圧部材が上記本体の所定部と当接することにより、上記本体が上記案内機構によって案内されて、移動刃ブロックが、上記斜め方向に駆動されるように構成され、
上記受圧部材および上記本体の上記所定部を互いに離隔する方向に付勢する付勢部材を備える軽量溝形鋼の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−139744(P2012−139744A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292464(P2010−292464)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(511002744)有限会社合志精巧 (1)
【Fターム(参考)】