説明

軽量骨材の製法及び改質方法

【課題】コンクリートに用いられた軽量骨材からシリカが溶出するのを抑制でき、これにより、アルカリシリカゲルの発生を抑制し、アルカリシリカゲルの膨張によるコンクリートのひび割れを抑制できる軽量骨材の製法及び改質方法を提供する。
【解決手段】軽量骨材の製造方法において、軽量骨材の原料10の粉砕物11、または原料を粉砕後に造粒した場合の造粒物の表面に、原料中のシリカの溶出を抑制する特性を有する改質材14を付着させる。粉砕物等の表面に改質材14を付着させるため、表面に改質材の粉末を接触させる。または、粉砕物等を改質材14の水溶液に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨材に関し、特にアルカリ総量が多いコンクリートについて好適に使用できる軽量骨材の製法及び改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントと骨材等を混合してコンクリートを製造する場合は、できる限りアルカリ骨材反応を生じない骨材を使用することが求められる。アルカリ骨材反応とは、周知のように、コンクリートの劣化に関係する現象のひとつであり、コンクリート中のアルカリ(Na2OやK2O)と骨材中のシリカなどが反応し、吸水して膨張する性質を有する生成物が生じる結果、コンクリートを変形させたり、コンクリートにひび割れを生じさせて、静弾性係数や圧縮強度等の力学特性を低下させる現象である。
【0003】
骨材について、アルカリ反応性の評価方法で「無害でない」と判定されれば、アルカリ骨材反応に対する抑制対策を講ずる必要がある。一般的には、セメントや混和剤中のアルカリ総量を規制する方法が広く用いられる。しかし、例えば高架橋の上部工など、単位セメント量が多くなる場合には、アルカリ総量規制値を満足することが困難になることがある。このような場合は、アルカリ反応性の低い骨材を用いることが要求される。
【0004】
一方、コンクリートの軽量化を図るために従来から軽量骨材が用いられている。従来の軽量骨材は、原料となる頁岩(堆積岩の一種で、1/16mm以下の鉱物粒子(粘土)が水中で水平に堆積したものが固結したもの)、パーライト(黒曜石、真珠岩、松脂岩を焼いて仕上げた軽量の骨材)、流紋岩、河川堆積物などの鉱物を粉砕又は造粒し、これを高温で焼成することにより製造するのが一般的であった。
【特許文献1】特開2005−225717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の軽量骨材は、頁岩、パーライト、河川堆積物などの鉱物を高温で焼成する際に、アルカリと反応性を有する非晶質シリカ(Si02)が生成されるために、次のような問題が発生していた。
【0006】
すなわち、非晶質のシリカは、pHの高い(アルカリ性)水溶液に溶出しやすい特性を有する。また、この非晶質のシリカは、コンクリート材料であるセメントや混和剤などから供給されるナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリと反応して、アルカリシリ
カゲルを生成する。
【0007】
そして、このアルカリシリカゲルは、吸水することにより異常に膨張し、その結果、コンクリートにひび割れが発生するという問題があった。
また、天然骨材についても、シリカを含むものについては同様の問題があった。
上記のような問題を解決するには、コンクリートのアルカリ総量を所定値以下に規制することが必要であるが、上述したように、単位セメント量が多くなる場合には、これを満足することが困難になる。
【0008】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、コンクリートに用いる骨材からシリカが溶出するのを抑制し、アルカリシリカゲルの発生を低減させ、コンクリートにひび割れ等が発生することを防止できる骨材の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリカを含有する軽量骨材の原料を粉砕する工程と、この粉砕する工程で得られた粉砕物を焼成する工程と、を含む軽量骨材の製法において、
前記粉砕物の表面に、前記原料中のシリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させることを特徴とする。
または、シリカを含有する軽量骨材の原料を粉砕後に造粒する工程と、この造粒する工程で得られた造粒物を焼成する工程と、を含む軽量骨材の製法において、
前記造粒物の表面に、前記原料中のシリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させることを特徴とする。
【0010】
本発明では、シリカを含有する人工軽量骨材又は天然軽量骨材を、コンクリート中のシリカと反応しにくい骨材に改質するものである。これらの改質された人工軽量骨材又は天然軽量骨材を用いてコンクリートを製造することで、アルカリシリカゲルの発生を抑制できる。
【0011】
上記軽量骨材の原料としては、頁岩、パーライト、河川堆積物、石炭灰などを例示できるが、本発明は、シリカを含む原料について幅広く適用可能である。
前記粉砕物または造粒物の表面に、前記改質材の粉末を接触させて、前記表面に前記改質材を付着させることができる。
【0012】
改質材の粉末を接触させる方法には、粉砕物または造粒物の表面に前記改質材の粉末を振りかける、または吹き付ける等の方法を含み、これらによって、前記表面に改質材を付着させることができる。ここで、「振りかける」とは、例えば、粉末状の改質材を、粉砕物等の表面に向けて粉砕物等の上方から散らすことである。「吹き付ける」場合は、空気流にのせた粉末状の改質材を、粉砕物または造粒物の表面に衝突させるようにすればよい。
原料が脱水・乾燥後に粉砕された粉砕物、または造粒されて所定の大きさの塊状に形成された造粒物の表面に改質材が付着すると、その表面が改質材によって覆われる。
【0013】
また、前記粉砕物または造粒物の表面に、前記改質材の水溶液を接触させて、前記表面に前記改質材を付着させることが可能である。この場合は、粉砕後または造粒後における前記粉砕物または造粒物を、前記改質材の水溶液中に浸漬するか、またはこれらの表面に水溶液を噴霧することにより、粉砕物または造粒物等の表面に前記改質材を付着させることができる。「噴霧」する場合は、霧状の水溶液を空気流にのせて、粉砕物または造粒物の表面に衝突させるようにすればよい。
このようにすれば、製造すべき軽量骨材とほぼ同じ大きさに粉砕または造粒された塊状の原料の表面に、改質材を容易に付着させることができる。
【0014】
前記焼成工程で、前記粉砕物または造粒物の表面にシリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させることもできる。この場合は、前記粉砕物または造粒物を焼成する工程において、粉砕物または造粒物の表面に、前記改質材を接触させることで、改質材を付着させることが好ましい。改質材を接触させるには、改質材の粉末を振りかけるか、または吹き付ける方法が採用できる。
【0015】
上記のいずれかの原料を用いて得られた軽量骨材は、コンクリートの製造において使用された際、原料の表面を覆う改質材によって軽量骨材からのシリカの溶出が抑制される。そのため、骨材から溶出したシリカと、コンクリート中のナトリウムやカリウムなどのアルカリとが反応して生成されるアルカリシリカゲルの発生が減少する。
【0016】
前記改質材は、アルミナ(酸化アルミニウム(Al2O3))、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、ムライト、カオリン、ボーキサイト、バンド頁岩等のハイアルミナ含有鉱物のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。これらの改質材は、粉砕または造粒された塊状の原料の表面に付着しやすい特性を有している。前記改質材は、一種類又は複数種類を混合して供給することができる。
【0017】
本発明の軽量骨材の改質方法は、既存の人工軽量骨材または天然軽量骨材の表面に、シリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させることを特徴とする。
【0018】
すなわち、シリカを含有する既存の人工軽量骨材の表面に、前記改質材の粉末を接触させることにより改質材を付着させることができる。
また、既存の人工軽量骨材または天然軽量骨材を、前記改質材の水溶液に接触させることにより、前記人工軽量骨材または天然軽量骨材の表面に前記改質材を付着させることができる。
【0019】
さらに、前記軽量骨材の表面に改質材を含むコーティング層を形成することもできる。このコーティング層は、樹脂材料により形成することも可能である。
【0020】
軽量骨材表面にコーティング層を形成することで、骨材表面にアルカリとの反応性を示すシリカ鉱物などが露出している場合でも、このシリカ鉱物などがコーティングによって覆われるので、シリカとコンクリート中のアルカリ成分とが直接に接することが防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シリカの溶出を防ぐ改質材が軽量骨材自体の表面に付着するので、軽量骨材中のシリカが外部に溶出することを抑えることができる。
【0022】
したがって、コンクリート中のアルカリ総量が多い場合であっても軽量骨材中のシリカ鉱物がアルカリと反応することを抑制でき、アルカリシリカゲルの発生、ひいてはコンクリートのひび割れを大幅に減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明に係る軽量骨材の製造方法及び改質方法について詳細に説明する。
【0024】
〈第1の実施の形態〉
[粉砕後または造粒後における原料表面への改質材の付着]
図1は、本発明に係る軽量骨材の製造工程を示す図であり、粉砕工程11において改質材を加える例を示す。
この軽量骨材の製造工程は、原料10の粉砕工程11と、粉砕された前記原料を脱水・乾燥後に造粒する造粒工程26と、この造粒工程26で製造された造粒物を焼成する焼成工程12と、を含んでいる。
【0025】
上記原料10としては、軽量骨材として使用できるがシリカを含有するもの、例えば頁岩、パーライト、河川堆積物等が例示できる。また、粉砕工程11と造粒工程26では、粉砕された原料10が、最終的な軽量骨材の大きさの塊状に形成される。
【0026】
この例では上記粉砕工程11において、粉砕物の表面に付着して、シリカ(SiO2)の溶出を抑制する改質材14が供給される。この改質材14としては、アルミナ(Al2O3)、
水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、ムライト、カオリン、ボーキサイト、バンド頁岩等の
ハイアルミナ含有物などを例示できる。
【0027】
なお、図3に示すように、前記改質材14を、造粒工程で供給するようにしてもよい。この場合は、原料10の粉砕工程11でなく、粉砕された前記原料を脱水・乾燥後に造粒する造粒工程26において、前記改質材14が供給される。
これらの改質材14は、粉末状を呈している。また、前記改質材14は、一種類又は複数種類を混合して供給することができる。
【0028】
なお、前記改質材が、粉砕物または造粒物の表面に隙間無く付着して表層を形成する状態が最も好ましいが、粉砕物または造粒物の表面に付着した改質材の粒子間に隙間があり、粉砕物または造粒物の表面が改質材により完全に覆われていなくても有効である。この場合でも、改質材が付着している部分ではシリカの溶出が抑制されるので、アルカリシリカゲルの発生が減少する。
【0029】
従って、この軽量骨材13を用いてコンクリートを製造した場合、セメントなどに含まれるアルカリ成分により、pH値の高い(アルカリ性)水溶液が生じる場合でも、軽量骨材13からシリカが溶出するのを抑制できる。
【0030】
したがって、シリカとコンクリート中のアルカリとが反応して生成されるアルカリシリカゲルの発生を抑制できる。よって、このアルカリシリカゲルが吸水して膨張することにより発生するコンクリートのひび割れを低減させることができる。
【0031】
さらに、使用セメント量が多いプレストレストコンクリート(PC)部材等では、アルカリ総量の規制値(「JIS A 5308の附属書6」では、Na2eq換算で3.0kg/m3
下)を満たすことが困難な場合がある。このようなとき、従来は、いわゆるアルカリ骨材反応を起こすケースがあった。そして、アルカリ分と反応しやすい骨材中の微細なシリカ(SiO2)が、アルカリと反応してアルカリシリカゲルが生成され、このアルカリシリカゲルが吸水して膨張することにより、コンクリートにひび割れが発生する虞があった。
【0032】
これに対して、本発明の軽量骨材13を用いたコンクリート構造物は、規制値以上のアルカリが供給される場合であっても、軽量骨材13中のシリカの溶出を抑えることができるので、アルカリ骨材反応により発生したアルカリシリカゲルの膨張によるコンクリートのひび割れを有効に抑制できる。
【0033】
[改質材の付着方法]
上記粉砕工程では、図2に示すように、脱水・乾燥された原料の塊が粉砕され、所定の大きさを有する塊状の粉砕物34が形成される。また、上記造粒工程26では、図4に示すように、原料10が粉砕後に造粒され、所定の大きさを有する塊状の造粒物27が形成される。この粉砕物34及び造粒物27は、それぞれ焼成前のものである。
【0034】
一方、図5に示すように、上記改質材14を水28に溶解して、改質材14の水溶液29を調整する。この改質材14の水溶液29は、例えば水槽30などに溜められている。
なお、水溶液29中における改質材14の濃度は、ある程度高いことが好ましい。
【0035】
上記塊状の造粒物27または粉砕物34は、図6に示すように前記水溶液29内に浸漬されることで、表面に改質材14が付着する。すると、図7に示すように、改質材14が骨材の表面27aの全体に付着した塊状の造粒物27が得られる。粉砕物34についても同様に、前記水溶液に浸漬することで、その表面34aの全体に改質材14が付着した塊状の粉砕物34が得られる。
【0036】
改質材14を付着させる別の方法として、前記水溶液を噴霧することで、塊状の造粒物
27または粉砕物34の表面に改質材を付着させることができる。
上記のように、造粒物27または粉砕物34に、改質材14の水溶液29を接触させることで、造粒物27の表面27a、または粉砕物34の表面34aに、改質材14を容易に付着させることができる。
【0037】
なお、改質材を付着させるさらに別の方法としては、改質材14を造粒物27に粉末状の改質材14を振りかけることで、改質材14を造粒物27の表面27a、または粉砕物34の表面34aに、これを付着させることができる。
【0038】
〈第2の実施の形態〉
[焼成工程における粉砕物または造粒物表面への改質材の付着]
上記の実施の形態では、図3に示す造粒工程26で、粉砕物34または造粒物27に対して改質材14を供給したが、本実施の形態では、図8に示すように、粉砕物または造粒物の焼成工程12で、粉砕物または造粒物に改質材14を供給する。
【0039】
前記焼成工程では、例えばキルンなどの焼成装置によって塊状の粉砕物または造粒物を焼成するが、これらの粉砕物または造粒物中のシリカは、アルカリ性の水溶液中で溶出しやすい性質を有している。そこで、前記焼成工程中に、キルンなどの焼成装置内の粉砕物または造粒物に粉末状の改質材を吹き付けるなどの方法で改質材を供給する。このようにして、塊状の粉砕物または造粒物の表面に改質材を付着させ、この改質材によって上記シリカの溶出を抑制することができる。
【0040】
〈第3の実施の形態〉
[改質材を含むコーティング層の形成]
図14は、本発明に係る第3の実施の形態の軽量骨材20を示す。この軽量骨材20は、既に製造された人工軽量骨材または天然軽量骨材21の表面21aに、シリカの溶出を抑制するべく、改質材14を含むコーティングを施すことでコーティング層22を形成して改質されたものである。
【0041】
このコーティング層22の材料としては、上記改質材14と同様に、アルミナ、水酸化アルミニウム、ムライト、カオリン、ボーキサイト、バンド頁岩等のハイアルミナ含有鉱物が好ましい。また、これ以外にも、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等のコンクリートに対して付着性がよい樹脂材料であって、シリカの溶出を抑制できるものであれば、コーティング材として任意に選択することができる。
【0042】
コーティングの方法としては、上記コーティング層22をの材料を水でスラリー状にして、この中に既に完成している人工軽量骨材又は天然軽量骨材21を入れる方法、あるいは、上記コーティング材を人工軽量骨材又は天然軽量骨材21に吹き付ける方法、等を例示することができる。
【0043】
このようにして製造された軽量骨材20を用いてコンクリートを製造した場合は、コーティング層22の作用によって、軽量骨材20からシリカが溶出するのを抑制できる。すなわち、シリカは、コーティング層22に含まれる改質材14と結合する。従って、シリカとアルカリとの反応を抑制し、アルカリシリカゲルの発生及びこのアルカリシリカゲルの吸水膨張によるコンクリートのひび割れを抑制できる。
本発明は、コンクリートの製造において広範に用いることができるが、特に単位セメント量が多くアルカリ総量が多くなる傾向にあるコンクリート構造物、例えば、橋梁や高架橋の上部工、防波堤、岸壁用のケーソン等の海洋構造物等について好適に用いることができる。
【0044】
(実施例)
粉砕した頁岩(以下、原料という)を1,000kgを焼成する際、原料に対して3重量%の改質材14を加えて人工軽量骨材を製造した。
原料10の焼成工程12では、図9に示すようなキルン15を用いた。このキルン15は、周知のように、耐火物を内張した円筒状の横型炉であり、この横型炉の傾斜と回転により原料10を移動させて攪拌し、乾燥、着火、燃焼させることによって人工軽量骨材を焼成するものである。なお、図9中の符号16はバーナー、17はローラ、18はローラ受けである。
【0045】
本実施形態では、前記キルン15により原料10を、約1,100℃で40分間、横型
炉を回転させながら加熱した。このとき、アルミナ(Al2O3)を含む鉱物を微粉砕した改質材14を、圧縮空気でキルン15内の粉砕物34に噴射して供給した。これによって改質材(アルミナ)14は、図10に示すように、焼成された軽量骨材13の表面13aに付着した。
【0046】
このようにして製造された軽量骨材13の骨材表面13aと、骨材内部13bとにおけるシリカ(SiO2)、改質材14であるアルミナ(Al2O3)などの含有量を、図11に示す。
【0047】
図11に示されるように、軽量骨材表面13aにおけるシリカの含有量は、骨材内部13bにおけるシリカの含有量よりも少なかった。これは、軽量骨材表面13aのシリカが、改質材によりコーティングされたからである。
【0048】
また、軽量骨材表面13aにおけるアルミナの含有量は、軽量骨材内部13bにおけるアルミナ14の含有量よりも多い。これは、軽量骨材表面13aにアルミナが付着しているからである。
【0049】
また、図12は、軽量骨材13の表面13aから採取した試料S1と、軽量骨材13の内部13bから採取した試料S2を用いて行った溶解シリカ量Scの測定結果を示す。
【0050】
図12から明らかなように、軽量骨材表面13aから採取した試料S1における溶解シリカ量Scの方が、軽量骨材内部13bから採取した試料S2における溶解シリカ量Scよりも少なくなっている。
【0051】
この測定結果からも、アルミナなどの改質材14を骨材表面13aに付着させることによって、軽量骨材からのシリカの溶出を減少させることができ、アルカリシリカゲルの発生を抑制できる。
【0052】
さらに、図13は、本発明の軽量骨材13を用いてコンクリート供試体を形成し、このコンクリート供試体を用いてアルカリ骨材反応試験を行った結果を示す。
【0053】
図13から理解されるように、アルカリ量が2.78kg/m3と多い場合でも、測定
材齢が6月のときに膨張率が0.1%を超える場合はなかった。
【0054】
このように、本発明の軽量骨材13は、「コンクリートのアルカリシリカ反応性判定試験(JCI-AAR-3-1987)」に規定されるアルカリ量(2.4kg/m3)より多いアルカリ量
であっても、「反応性有り」と判定されるアルカリ骨材反応による膨張を生じないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の軽量骨材の製法を示す工程図である。
【図2】骨材の原料の粉砕処理を示す図である。
【図3】本発明の軽量骨材の別の製法を示す工程図である。
【図4】骨材の原料の造粒処理を示す図である。
【図5】骨材の表面に付着させる改質材の水溶液を示す図である。
【図6】骨材を水溶液に浸漬して改質材を付着させる状態を説明する図である。
【図7】表面に改質材が付着した塊状の原料を示す図である。
【図8】焼成工程で骨材の表面に改質材を付着させる軽量骨材の製法を示す工程図である。
【図9】キルン内の原料に改質材を噴射する方法を示す図である。
【図10】表面に改質材が付着した軽量骨材を示す図である。
【図11】本発明の軽量骨材の骨材表面と骨材内部のシリカやアルミナなどの含有量を示す図である。
【図12】軽量骨材の熔解シリカ量を示す図である。
【図13】軽量骨材を用いたコンクリートによるアルカリシリカ反応性判定試験結果を示す図である。
【図14】軽量骨材の表面にコーティング層を形成した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 軽量骨材の原料
11 粉砕工程
12 焼成工程
13 軽量骨材
14 改質材
15 キルン
20 軽量骨材
21 人工軽量骨材又は天然軽量骨材
22 コーティング層
26 造粒工程
27 造粒物
29 改質材の水溶液
30 水槽
34 粉砕物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含有する軽量骨材の原料を粉砕する工程と、この粉砕する工程で得られた粉砕物を焼成する工程と、を含む軽量骨材の製法において、
前記粉砕物の表面に、前記原料中のシリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させることを特徴とする軽量骨材の製法。
【請求項2】
シリカを含有する軽量骨材の原料を粉砕後に造粒する工程と、この造粒する工程で得られた造粒物を焼成する工程と、を含む軽量骨材の製法において、
前記造粒物の表面に、前記原料中のシリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させることを特徴とする軽量骨材の製法。
【請求項3】
前記表面に前記改質材の粉末を接触させて、前記表面に前記改質材を付着させることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量骨材の製法。
【請求項4】
前記表面に前記改質材の水溶液に接触させて、前記表面に前記改質材を付着させることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量骨材の製法。
【請求項5】
前記焼成工程で、前記表面にシリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させること特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軽量骨材の製法。
【請求項6】
前記焼成工程で、前記表面に前記改質材の粉末を接触させることにより前記表面に改質材を付着させることを特徴とする請求項5に記載の軽量骨材の製法。
【請求項7】
前記改質材は、アルミナ、水酸化アルミニウム、ムライト、カオリン、ボーキサイト、バンド頁岩のハイアルミナ含有鉱物のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の軽量骨材の製法。
【請求項8】
シリカを含有する既存の人工軽量骨材または天然軽量骨材を含む天然骨材の表面に、シリカの溶出を抑制する特性を有する改質材を付着させることを特徴とする軽量骨材の改質方法。
【請求項9】
シリカを含有する既存の人工軽量骨材の表面に、前記改質材の粉末を接触させることにより改質材を付着させることを特徴とする請求項8に記載の軽量骨材の改質方法。
【請求項10】
既存の人工軽量骨材または天然軽量骨材を、前記改質材の水溶液に接触させることにより、前記人工軽量骨材または天然軽量骨材の表面に前記改質材を付着させることを特徴とする請求項8に記載の軽量骨材の改質方法。
【請求項11】
前記軽量骨材の表面に改質材を含むコーティング層を形成したことを特徴とする請求項8に記載の軽量骨材の改質方法。
【請求項12】
前記コーティング層は、樹脂材料により形成したことを特徴とする請求項11に記載の軽量骨材の改質方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−110887(P2008−110887A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294119(P2006−294119)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本コンクリート工学協会 コンクリート工学年次論文集 第28巻(2006) 第1517頁〜1522頁 「論文 高性能軽量コンクリートのアルカリ骨材反応抑制手法に関する実験的研究」 平成18年6月15日発行
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(502047279)株式会社ネオマテリアル (2)
【Fターム(参考)】