説明

輪転印刷機

本発明は、印刷胴と、インキチャンバを有する、印刷胴にインキを提供するためのインキ供給部とを備えた輪転印刷機であって、インキチャンバは、インキ供給源と接続されているものに関する。インキチャンバは、スリットとして構成されたインキ流出口を備えており、インキ流出口は、印刷胴軸線に対して略平行に延在していて、かつインキが印刷胴に向かって流出できるように、印刷胴に対して位置調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷胴と、インキチャンバを有する、印刷胴にインキを供給するためのインキ供給部とを備えた輪転印刷機であって、インキチャンバは、インキ供給源と接続されているものに関する。
【0002】
背景技術
輪転印刷機、特にブックプレス機は、主に回転可能に支承された印刷胴と、印刷胴に対応して回転可能に支承された圧胴と、スクリーンと、スクイージと、印刷材料供給装置とを備えている。印刷しようとする印刷材料は、供給装置を介して、回転式の圧胴に引渡される。圧胴は、印刷胴の回転方向とは逆向きに回転するので、印刷材料は、両方の胴の間を通ってガイドされる。印刷材料の走行中に印刷胴内に存在するインキが印刷材料に塗着される。インキを塗着するために、印刷胴に連動回転しないスクイージが、スクリーンの、インキで充填されたスクリーンメッシュ(スクリーンメッシュは印刷胴の外周面の少なくとも一部を形成する)を、逆向きに回転する胴の間に位置する印刷材料に押し付ける。印刷後に、印刷材料は、圧胴により後続搬送され、排紙部に引渡される。
【0003】
このようなスクリーン印刷機は、要求に応じて多種多様の紙を加工することができる。特に連続的に延びるウェブとしての紙だけでなくシート状の紙(枚葉紙)を印刷することもできる。個々のシート用に特にグリッパ収容部が設けられており、グリッパ収容部は、紙を、圧胴に沿ってガイドする間、把持する。相応のスクイージ収容部および直線運動式のスクイージガイド(スクイージガイドは印刷中グリッパ収容部から逸れる)が、ドイツ連邦共和国特許第19949099号明細書において記載されている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許公開第10232254号明細書において、インキ容器と複数のインキ渡し口とを備えた、スクイージの近傍に配置されたインキ供給部が開示されており、ここではインキ供給部がスクイージに対して平行に延在している。前掲ドイツ連邦共和国特許第19949099号明細書とは異なって、インキは、スクリーンの各回転位置に応じて、制御弁を介して解放される。
【0005】
問題提起
公知の装置は、輪転印刷機のスクリーンに均一にインキ着けするには不適であるか、または少なくとも実用的でない。むしろ公知の方法では、ロータリースクリーンの内面に必要量を大幅に超える量のインキが塗着され、そして比較的大量の余剰インキがスクイージにより除去される。
【0006】
この問題は、ドイツ連邦共和国特許公開第10232254号明細書でも言及され、ここではスクイージの近傍で回転方向にみて上流側に、複数のインキ渡し口を備えた、インキ容器と結合され、スクイージに対して平行に延在するインキ供給部が配置されている。インキは、少なくとも1つの制御弁を介して、スクリーンのその都度の回転位置に応じて制御しながら解放されるが、複数のインキ渡し口にわたって局所的にしか解放されない。
【0007】
課題
したがって本発明の課題は、輪転印刷機用のインキ供給部を改良して、周方向でも軸方向でも、均一で無駄のないインキ供給の要求が満たされたものを提供することである。
【0008】
解決手段
この課題は、請求項1の特徴部に記載した構成手段を有する輪転印刷機によって解決される。本発明の好適な態様は、従属請求項に記載した。
【0009】
独立請求項
本発明は、印刷胴と、インキチャンバを有する、印刷胴にインキを提供するためのインキ供給部とを備えた輪転印刷機、特にロータリースクリーン印刷機である。インキチャンバは、インキ供給源と接続されている。本発明によれば、インキチャンバは、スリットとして構成されたインキ流出口を備えており、インキ流出口は、印刷胴軸線に対して略平行に延在していて、かつインキが印刷胴に向かって流出できるように、印刷胴に対して位置調整されている。
【0010】
従属請求項
インキ、特に輪転印刷機用のインキは、加工に関する多くの性質を有してよい。主要な性質の幾つかは、粘性、密度およびインキ顔料の粒度である。したがってインキ流出口の形状および大きさを変化させることは有意義である。したがって好適な構成では、インキチャンバのスリットが、絞りによって、形状および大きさに関して調節可能である。好適には、絞りは、急動手段によって、たとえばスピンドルによって制御および/または調整可能である。特に絞りは、スピンドルの並進運動により、インキ流出口の内側もしくは外側へ移動可能であり、したがってインキ流出口の横断面を縮小する。周期的に変化するインキ分配のために、絞りの長さにわたって特別な形状付与、たとえば波形または鋸歯形の輪郭を有する絞りも考えられる。
【0011】
スリットの長さにわたって特に均一なインキ流出を実現するために、インキチャンバは、流れガイドを備えている。このためにたとえばブリッジ(隆起部)またはリブが適切であり、ブリッジまたはリブは、インキチャンバ内のインキ流れを少なくとも部分的に分岐し、かつ/またはインキ流れをインキチャンバの、流れガイドが存在しないと通流しないかまたはほとんど通流しない部分にガイドもしくは導入する。
【0012】
別の好適な態様では、インキチャンバは、着脱可能に、インキ供給部の残りの構成要素に取付けることができる。このためにインキ供給部は、少なくとも1つの収容部を備えてよく、収容部は、インサートとして構成されたインキチャンバを収容する。さらに収容部とインサートとの間に、シール、特にシリコーンシールを配置してもよい。さらに複数のインキチャンバは、着脱可能に、インキ供給部の残りの単数および/または場合によっては複数の構成要素に取付けることができる。別の好適な態様では、複数のインキチャンバのうちの少なくとも1つは、着脱可能に、個別的にまたは幾つかまとめてインキ供給部の残りの構成要素に取付けることができる。取付けは、少なくとも1つのインキチャンバが、急動緊締手段によって、インキ供給部の残りの構成要素に交換可能に取付けられていることにより行うことができる。着脱可能なインキチャンバの精確もしくは明確な位置決めを実現するために、たとえばキー溝構成をしたガイドを設けることができ、ガイドにより、インキ収容部の残りの部分に対して相対的なインキチャンバの精確な位置決めが実現される。
【0013】
輪転印刷機は付加的に圧力供給源を備えることができ、圧力供給源から、インキチャンバに個別にまたはまとめて供給が行われる。したがってたとえば各チャンバに、個々の圧力供給源から圧力を提供することができ、または、圧力供給源は、複数のインキチャンバに、供給チャンバを用いて、まとめて略同じ圧力を供給することができる。このために圧力供給部は、追加的にポンプ、特にスクリューポンプまたはシリンダピストン装置を有するポンプを備えることができる。好適な態様では、圧力供給部は、インキチャンバ内の圧力に応じて調整される。輪転印刷機がたとえば複数の同形のインキチャンバを備えている場合、圧力供給部の調整により、インキチャンバに同じ圧力を加えることができる。インキチャンバの周囲条件、特に絞りの調節を時間に応じて変化させると有利である。したがって絞りにより印刷運転中にスリットの形状および/または大きさが変化する場合でも、たとえば調整装置が、チャンバおよび/または圧力供給部などにおける圧力を一定に維持するという要求を保証することができる。
【0014】
さらに輪転印刷機は、好適には同じ圧力要求を有するが、異なる体積流量要求を有する様々なインキチャンバを備えることができる。ここでも相応の調整装置によって、インキチャンバ内の圧力がたとえば一定の圧力供給の要求に応じるように圧力供給を行うことができる。前述の調整装置の入力値は、圧力センサ、温度センサおよび/または流れ速度センサの信号であってよい。調整装置の出力値は、調節装置、たとえば制御可能な弁、減圧器に関する調節値および/またはモータ、特に圧力供給部の駆動ユニットのモータの電圧であってよい。
【0015】
圧力供給部は、好適な構成では、印刷胴の回転位置に応じて制御することができる。さらにスリットからの体積流量を、印刷胴の回転位置に応じて、好適には少なくとも1つの弁および/または絞りを介して制御および/または調整することもできる。制御装置または調整装置(開ループ制御装置または閉ループ制御装置)の考えられる入力値は、たとえば印刷胴と結合され、したがって連動回転する制御ディスクの半径方向輪郭であってよい。半径方向輪郭は、連動回転せず、半径方向に可動の、好適にはローラで半径方向輪郭を追いかける検出器によって、調整装置および/または制御装置に伝達することができる。
【0016】
たとえばスリットの形状および大きさを変化させることができる絞りの他に、インキチャンバに向かう体積流量、ひいてはスリットからの体積流量を、それぞれ弁によって制御または調整することも、複数のチャンバに向かうインキ体積流量を弁によって制御または調整することもできる。
【0017】
本発明は、輪転印刷機、特にロータリースクリーン印刷機であって、印刷胴を備え、印刷胴の円筒外周面は、少なくとも部分的に金属スリーブから形成されている。
【0018】
本発明のこのような特徴および別の特徴ならびに利点は、図面ならびに本発明の実施の形態の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】輪転印刷機の構成要素を示す図である。
【図2】インキ供給部を概略的に示す図である。
【図3】流れガイドを示す図である。
【図4】印刷胴を示す図である。
【図5】スクリーンフレームおよびスクリーンを示す図である。
【図6】インキチャンバを示す図である。
【0020】
次に図面に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0021】
図1は、輪転印刷機の構成要素、特に印刷胴1、およびインキチャンバ3を備えたインキ供給部2を示す。特に図1から看取されるように、インキ供給部2は、印刷胴の内側に配置されている。インキチャンバ3は、図示のように、スリット12として構成されたインキ流出口4を備えており、スリット12は、印刷胴軸線に対して略平行に延在していて、かつインキが流出口4から印刷胴1に向かって特にスクイージ5の手前で流出できるように、印刷胴1に対して位置決めされている。好適な態様では、スクイージ5は、印刷胴軸線に対して略平行に、印刷胴の回転方向6にみてインキチャンバの下流側に延在している。図1に示すように、インキは、スクイージ5の直前で、印刷胴上に位置決めすることができる。インキ供給部2とスクイージ5とを近傍に配置するために、インキ供給部2は、特にねじ結合部8によって、スクイージホルダ10に、ひいてはスクイージ5自体と接触して取付けられている。さらにインキ供給部2は、追加的または択一的にレールガイドを介してスクイージホルダ10に取付けることができるので、スピンドルによってガイドされる、インキ供給部とスクイージホルダとの、レール平面に沿った相対運動が実現される。レールガイドは、インキ供給部2および特にインキ流出口4がスクイージ5により緊密に接近運動するか、またはスクイージ5から離間運動するように配置することができ、かつ/またはインキ流出口4と印刷胴1の外周面との間の間隔が変化させられる。たとえばインキ流出口4は、印刷胴1に対して僅かな間隔で配置することができ、それも、吸込作用が胴外周面26から出発してインキを介してインキ供給部2のインキ流出口4まで、特にインキチャンバ3まで及ぼされるような僅かな間隔で、配置することができる。
【0022】
図2は、インキ供給部2を概略的に示す。インキ供給部2は、たとえば印刷胴の全幅にわたって延在することができる。インキ供給部2は、スリット12として構成されたインキ流出口4をそれぞれ備えた複数のインキチャンバ3を有している。図2に示すように、個々のインキチャンバ3は、互いに整合して、つまり1直線上に位置決めされている。つまり、インキチャンバ3は、特に印刷胴1の回転軸線に対して平行に整合するか、または胴外周面上に位置する1直線を成して整合することができる。複数のインキチャンバ3のスリット12が、図2に示すように、直接に隣接して配置されている場合、個々のスリット4は、略連続するスリット14を形成することができる。好適な態様では、囲いまたは絞りが、特に機械式の結合または調整によって、相互に連結可能であり、それも、個々のスリット12ひいては連続的なスリット14の形状および開口が一定であるか、もしくは連続的に延びて、したがって均一に延びるように、連結可能である。同様に図2には、インキチャンバ3の輪郭16を示しており、輪郭16は、流入口18からスリット12に向かって拡張している
【0023】
図3には、流れガイド20、特にブリッジおよび/またはリブを示す。流れガイド20は、少なくとも部分的にインキをインキ流入口18からスリット12にガイドし、これによりスリット12の長さにわたって、もしくは実質的に連続的に延びるスリット14の長さにわたって均一なインキ流出が得られる。
【0024】
インキチャンバ3の少なくとも1つの側壁22が、インキ供給部2の残りの構成要素によって形成されている。後方の側壁22のみならず前方の側壁24も、図3に示すように、インキ供給部2の残りの少なくとも1つの構成要素によって形成してよい。側壁22,24の他に、インキチャンバ3は、図3に示すように、輪郭16とスリット12とによって形成される。輪郭16は、好適には側壁22,24と同様に、インキ通流部の残りの少なくとも1つの構成要素によって形成することができる。択一的に、インキチャンバは、インサートとして形成してもよい。考えられるそのような態様では、インサートは、好適には、立設して延在する側壁24と輪郭16とスリット12とによって形成される。インサートは、特に側壁22を備えていない。なぜならば側壁22は、インキ供給部2にインサートを取付けることによって、インキ供給部の少なくとも1つの構成要素から形成されるからである。同様にインキ供給部2は、収容部を備えることができ、収容部に、インサートを挿入することができ、挿入と同時にインキチャンバ3および/またはスリット12の所定の位置決めが実現される。
【0025】
インキ流入口18は、図3に示すように、インキチャンバの側壁22に配置されている。同様にインキチャンバ3の別の側壁、特に側壁24にインキ流入口18を配置してもよい。特に好適には、インキ供給部の残りの少なくとも1つの構成要素から形成された、インキチャンバの前述した側壁の1つにインキ流入口18が配置されている。したがって着脱可能に取付けられたインキチャンバ3は、インキ流入口18に影響を及ぼすことなく交換もしくは取付けまたは脱着、分離することができる。特に好適な態様では、インキチャンバインサートの輪郭としての側壁16が、インキ流入口18を越えてスライド可能であるので、インキ流入口18は、インキチャンバ3に向かって、かつ/またはインキチャンバ3内に設置されている。インキチャンバの壁の間、特にインキ供給部2の少なくとも1つの構成要素によって形成される壁と残りの壁との間の考えられる接触面は、特にシリコーンシールによりシールされている。
【0026】
図4には、輪転印刷機、特にロータリースクリーン印刷機の印刷胴1を断面斜視図で示す。印刷胴1の胴外周面26は、少なくとも部分的に金属製のスクリーン28によって形成されている。印刷胴1の外周面26は、セグメント状の特に矩形の開口部29を備えており、開口部29は、スクリーン28によってカバーされるので、スクリーン28またはスクリーン28を備えたスクリーンフレーム32を印刷胴1の外周面26に取付ける際に、印刷胴1の外径はほとんど拡張されない。別の好適な態様では、印刷胴1は、凹み27、特に周方向に延びる凹み27を備えており、凹み27は、特にセグメント状の開口部29に接続している。スクリーン28またはスクリーン28を備えたスクリーンフレーム32は、凹所27の部分で印刷胴1に取付けることができるので、外径は、印刷胴1の周にわたって略同じであり、特に開口部29の部分で増加しない。
【0027】
スクリーン28が胴外周面26の周方向の輪郭および軸方向の輪郭をカバーして輪郭に追従して延在できるようにするために、好適には、スクリーン28は、金属糸30で編まれている。糸30の編成は、たとえば軸方向および周方向に交差して行うことができる。択一的または補足的な金属糸は、たとえば直交して、または別の任意の角度で延びるようにし、かつ/または配置することができるので、特に印刷中にスクイージ5とスクリーン28との間に生じる摩擦抵抗が僅かである。特にスクイージ5によるスクリーン28の機械負荷に対抗するために、スクリーンは、少なくとも部分的に電気めっきにより製作されている。別の好適な態様では、スクリーン28は、たとえば六角形の孔を備えた孔付薄板として形成することができる。
【0028】
スクリーン28を、簡単な操作で、印刷胴1の外周面26に特に直接に取付けるために、スクリーン28は、スクリーンフレーム32に取付けられる。スクリーンフレーム32自体は着脱可能に印刷胴26に取付けることができる。特にスクリーン28および/またはスクリーンフレーム32は、印刷胴26に取付けるまえでは略平らである。
【0029】
さらにスクリーンフレーム32は、好適には専ら周方向に撓曲可能であるので、スクリーンフレーム32およびスクリーンフレーム32と結合されたスクリーン28は、図5に示すように、丸み輪郭34に適合することができる。このためにスクリーンフレーム32は、特にねじ結合または別種の急動緊締手段、たとえばクリップまたはクランプによって着脱可能に印刷胴1に取付けることができる。スクリーン28は、印刷胴1の丸み輪郭とは異なり、印刷胴1よりも僅かに大きな半径を有している。この差は、略平らなスクリーンフレーム32が、特に印刷胴1が凹所27を有してない場合に、外側から印刷胴1に取付けられていることにより、生じる。スクリーンフレーム32の厚さが均一な場合、スクリーン28は、胴外周面26もしくは印刷胴1と同じ回転軸線を有している。
【0030】
たとえばプラスチックから製作される従来慣用のスクリーンに対して、本発明による好適な金属スクリーン28は、極めて高い安定性、特に固有安定性を有している。スクリーン28の全体安定性は、スクリーン28がスクリーンフレーム32と固く結合されていることにより、さらに高められる。このためには抵抗溶接方法または接着によりスクリーンフレーム32に取付けることができるスクリーンが特に適切である。その格別な利点によれば、スクリーン28からスクリーンフレーム32への力伝達は、たとえばスクイージ5により荷重を掛けながら、フレームの略接触面全体にわたって行うことができる。さらにスクリーン28は、印刷胴26および/またはスクリーンフレーム32にほとんど張力を掛けることなく取付けられている。スクリーンフレーム32もしくは印刷胴26は、単にスクリーンの形状を規定するだけである。スクリーン28がスクリーンフレーム32に取付けられている場合、好適には、印刷胴26およびスクリーンフレーム32が、たとえばキー溝として構成された位置決めガイドを備えているので、スクリーンフレーム32は、できるだけ精確に印刷胴26上に位置決めされることになる。できるだけ僅かな許容誤差で位置決めするためにねじ結合も考えられる。特にスクリーンに掛かる不均一なプレロードに起因する、スクリーンの通常所望されない捻れを回避するために、スクリーン28は、印刷胴26および/またはスクリーンフレーム32に実質的に軸方向および/または接線方向の力を掛けずに取付けられている。
【0031】
図6には、インキチャンバ3がどのように組付け状態で印刷胴の内側に位置するのかを示す。両方のインキチャンバ半部3a,3bの拡開により、インキチャンバの下位部分で、ギャップ状のインキ流出口4が解放される。側方では、インキチャンバ3は、単数または複数のシールエレメント38によりシールされている。インキチャンバの下側もしくは下縁をスクイージ5が形成しており、スクイージ5は、組付け状態で、内側からスクリーンに押し付けられ、スクリーンへのインキの均一な分配を保証する。
【0032】
両方のインキチャンバ面の支承は、ヒンジ36により実現される。好適に支承するために、広く流通しているニードルころ軸受または玉軸受の使用が提案される。一方では、そのような軸受は、個々の構成要素よりも安価に購入可能であり、他方では、購入により製造コストが削減される。これにより製造および製作に起因するエラーを回避することができる。
【0033】
インキチャンバの開放は、一般的にシステム圧、つまりインキチャンバ内でインキに掛かる圧力の調節を介して制御される。閉鎖過程は、好適には少なくとも1つのばねにより実現され、ばねは、無圧の材料供給時において割合高い圧力を及ぼし、両方のインキチャンバ半部を押し合わせて、したがって閉鎖する。好適には少なくとも1つのばねが、ばね力を調節可能に構成されている。プレロードの存在により、インキチャンバの開放に、先ず正圧が必要である。これにより材料供給部もしくはインキチャンバにおける圧力が閉鎖圧を下回る値に低下したあとで、インキチャンバは遅延なく閉鎖する。閉鎖過程は、既に圧力低下時時点で始まり、したがって比較的迅速に完了する。
【0034】
インキチャンバの選択的な態様では、少なくとも1つのばねの代わりに、空気力式または液力式に駆動される調節手段が設けられており、調節手段により、インキチャンバ、特にインキ流出口の開閉が所望に制御可能である。このようにしてインキ流出口の開閉は高い精度で実現される。インキチャンバの開放角度αは、システム圧力(システム圧力下でインキチャンバ内にインキが存在する)と同様に、インキ体積流量に影響を及ぼす要因である。開放角度によって、スクリーンに伝達されるインキの量が特定される。所望しない印刷結果を実質的に排除するために、ロータリースクリーン印刷用のインキチャンバの構造において、開放角度αを制限するのが望ましい。インキチャンバ3の開放時にばらついた開放角度しか実現されない場合では、インキ体積流量は、専ら調節可能な値、つまりインキチャンバおよび/または材料貯蔵容器内のシステム圧によって特定される。これによりインキ体積流量を問題なく変化させて、微調整可能で適切な圧力調整弁の使用により、印刷過程に必要なインキ量を精確に調整することができる。消費量に応じた精確なインキ調量を実現するために、インキチャンバ3からインキ流出口4において均一なインキ流を保証する必要がある。均一なインキ流を達成するために、インキチャンバ3の特別な構成が設けられ、両方のインキチャンバ内面にリブが形成されている。一方では、この構造により、インキチャンバ3の形状安定性が大幅に高められ、他方では、リブの使用により、操作制御可能なインキ流出が保証される。
【0035】
公知の技術的な構成では、貯蔵容器および/またはインキチャンバ内の材料圧力に関して、インキチャンバの開放過程ひいては開放角度が特定され、ならびに強制的にインキ体積流量が特定される。本発明に従って形成されたロータリースクリーン印刷機のインキチャンバの別の態様では、インキチャンバおよび/または貯蔵容器内のシステム圧力に関して、インキ体積流量だけが調節される。インキチャンバの開放角度を機械式に制限する他に、電気式、空気力式または液力式に調節可能な調節手段を用いた技術により、開閉過程をインキ体積流量から分離することが提案される。インキチャンバの開閉は、調節ユニットが、インキ体積流量の調整とは無関係にこの課題を満たすように行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷胴と、インキチャンバを有する、該印刷胴にインキを提供するためのインキ供給部とを備えた輪転印刷機であって、該インキチャンバは、インキ供給源と接続されているものにおいて、
インキチャンバは、スリットとして構成されたインキ流出口を備えており、該インキ流出口は、印刷胴軸線に対して略平行に延在していて、かつインキが印刷胴に向かって流出できるように、印刷胴に対して位置調整されていることを特徴とする、輪転印刷機。
【請求項2】
輪転印刷機が、ロータリースクリーン印刷機である、請求項1記載の輪転印刷機。
【請求項3】
インキ供給部が、印刷胴の内側に配置されている、請求項1または2記載の輪転印刷機。
【請求項4】
スクイージが、印刷胴軸線に対して略平行に、印刷胴の回転方向にみてインキチャンバの下流側に延在している、請求項1から3までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項5】
スリットの構成をしたインキ流出口をそれぞれ備えた複数のインキチャンバが設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項6】
複数のインキチャンバのスリットが、1直線上に位置するように相互に調整されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項7】
複数のインキチャンバのスリットが、直接に相互に隣接していて、実質的に連続的に延びるスリットを形成している、請求項1から6までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項8】
インキチャンバが、略扁平であり、インキ流入口からスリットに向かって拡張する輪郭を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項9】
インキチャンバのスリットが、絞りによって、形状および大きさに関して調節可能であり、特に急動調節手段によって、好適にはスピンドルによって、制御および/または調整されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項10】
インキ供給部が、特に着脱可能に、スクイージおよび/またはスクイージホルダに取付けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項11】
インキチャンバが、流れガイド、特にブリッジまたはリブを備えており、スリットの長さにわたって均一なインキ流出が実現されるようになっている、請求項1から10までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項12】
インキチャンバが、着脱可能に、インキ供給部の残りの構成要素に取付けられている、請求項1から11までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項13】
複数のインキチャンバのうちの少なくとも1つが、個別的にまたは幾つかまとめて着脱可能に、インキ供給部の残りの構成要素に取付けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項14】
少なくとも1つのインキチャンバが、急動緊締手段によって、インキ供給部の残りの構成要素に交換可能に取付けられている、請求項1から13までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項15】
インキチャンバの少なくとも1つの側壁が、インキ供給部の残りの構成要素によって形成されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項16】
インキ流入口が、インキチャンバの側壁に、特にインキ供給部の残りの少なくとも1つの構成要素によって形成された側壁に配置されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項17】
インキ供給源が設けられており、該インキ供給源から、インキチャンバに、個別に、または供給源チャンバによってまとめて、好適には略同じ圧力が供給される、請求項1から16までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項18】
圧力供給源が、ポンプ、特にスクリューポンプまたはシリンダピストン装置を有するポンプを備えている、請求項1から17までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項19】
圧力供給源が、印刷胴の回転位置に応じて制御される、請求項1から18までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項20】
圧力供給源が、インキチャンバ内の圧力に応じて調整される、請求項1から19までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項21】
スリットからのインキ体積流量が、印刷胴の回転位置に応じて、好適には少なくとも1つの弁および/または絞りを介して制御または調整される、請求項1から20までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項22】
印刷胴の胴外周面が、少なくとも部分的に金属スクリーンによって形成されている、請求項1から21までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項23】
印刷胴の胴外周面が、少なくとも部分的に金属スクリーンにより形成されている、印刷胴を備えた輪転印刷機。
【請求項24】
スクリーンが、金属糸から編成されている、請求項1から23までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項25】
スクリーンは、少なくとも部分的に電気めっきにより製作されている、請求項1から24までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項26】
スクリーンが、スクリーンフレームに取付けられている、請求項1から25までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項27】
スクリーンおよび/またはスクリーンフレームが、印刷胴に取付けるまえには略扁平である、請求項1から26までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項28】
スクリーンフレームが、撓曲可能であり、撓曲する以外は形状安定性を有しているか、または印刷胴と同じ丸み輪郭を有している、請求項1から27までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項29】
スクリーンフレームが、着脱可能に印刷胴に取付けられている、請求項1から28までのいずれか1項記載の輪転印刷機。
【請求項30】
スクリーンが、印刷胴および/またはスクリーンフレームに、実質的にプレロードを掛けられることなく、特に軸方向および/または接線方向の力を掛けられることなく取付けられている、請求項1から29までのいずれか1項記載の輪転印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−520673(P2011−520673A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510853(P2011−510853)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002784
【国際公開番号】WO2009/149786
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(508375550)ザイラス ベタイリグングスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー パテンテ イー コマンディートゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】ZYRUS Beteiligungsgesellschaft mbH & Co. Patente I KG
【住所又は居所原語表記】Berliner Str. 1, D−12529 Schoenefeld/Waltersdorf, Germany
【Fターム(参考)】