説明

輪転式打抜き機

【課題】 フレキシブル・ダイに付着する紙片をフレキシブル・ダイから剥がし、シリンダの陥没や曲がりあるいは軸受の破損を防止する。
【解決手段】 アンビル・シリンダ27のくわえ爪38にくわえられた枚葉紙は、対向点Bにおいてダイ・シリンダ26に装着されたフレキシブル・ダイの抜刃により切り目が付けられる。ダイ・シリンダ26が対向点Bから半分回転した位置C点から次に対向する位置B点との間に、エアノズル71、受け皿73、案内手段75が設けられている。エアノズル71から吹き出されるエア72は、ダイ・シリンダ26の周面に、ダイ・シリンダ26の略接線方向に向かって吹き出される。エアノズル71によってフレキシブル・ダイ49から剥がされた紙片は、案内手段75によって受け皿73に案内される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物やウェブ等に切り目付けを行う刃型が設けられた薄いフレキシブル・ダイをダイ・シリンダに固定する輪転式打抜き機に関し、特に、マグネット・シリンダに刃型が設けられた薄いフレキシブル・ダイを磁力で吸着固定するフレキシブル・ダイ方式の輪転式打抜き機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙、段ボール、高分子フィルム、ゴムシート等の被打抜き材から必要部分のみを打抜く輪転式打抜き機においては、打抜かれた必要部分の紙片が抜刃に付着し、そのままの状態で次の被打抜き材がダイ・シリンダとアンビル・シリンダ間に供給されると、ダイ・シリンダとアンビル・シリンダ間に被打抜き材が2枚重なった状態になり、シリンダが陥没したり曲がったり、軸受が破損する等の問題が発生する。
【0003】
この対策として、ダイ・シリンダに刃型を一体形成したソリッド・ダイ方式や、シリンダの周囲に厚い金属製の刃型(10〜20mm)をボルトで締結して定型の紙片を打抜くセグメント方式では、従来からダイ・シリンダ内に圧縮エアを噴出するエア吹き出し孔を設け、エアを噴出して紙片を剥がすエア・リジェクト装置を設けたり、ばねで外方に弾発力が付勢されたピンまたは板ばねで紙片を剥がすスプリング・リジェクト装置を設け、強制的に紙片をダイ・シリンダから剥がす装置を設けるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マグネット・シリンダに刃型が設けられた薄いフレキシブル・ダイを磁力で吸着固定するフレキシブル・ダイ方式では、一般的に種々の形状の紙片を打抜くため、マグネット・シリンダの一定位置にエア吹き出し孔を設けることができない。また、図9に示すように、フレキシブル・ダイ101の厚みは薄く、ダイ表面から刃先までの長さLは0.3〜0.7mmで、一般的な紙102の厚みtが0.1〜0.4mmであることにより、打抜き時のダイ表面と紙表面との間の間隔lを0.2〜0.6mmしか設けることができないため、ピンや板ばねを固定することができず、何の対策が採られていないのが現状であった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、フレキシブル・ダイに付着した紙片をフレキシブル・ダイから剥がし、シリンダの陥没や曲がりあるいは軸受の破損を防止するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、刃型が設けられた打抜き版を保持し、回転可能に支持されたダイ・シリンダと、このダイ・シリンダに対向して回転可能に支持され、前記打抜き版によって打抜きされる被打抜き部材を保持する保持装置が設けられた対向シリンダとを備え、前記ダイ・シリンダと前記対向シリンダとが対向する位置で、前記打抜き版によって被打抜き部材に切れ目を入れる輪転式打抜き機において、前記ダイ・シリンダが前記対向シリンダに対向する位置以外の位置で、ダイ・シリンダの周面に、当該ダイ・シリンダの回転方向下流側から上流側に向かってダイ・シリンダの接線方向に向かってエアを吹き出すエア吹き出し手段と、このエア吹き出し手段によって前記打抜き版から剥がされた被打抜き部材の一部を受ける受け手段と、前記打抜き版から剥がされた被打抜き部材の一部を受け手段に案内する案内手段とを備えたものである。
【0007】
本発明は、前記発明において、前記ダイ・シリンダが、前記打抜き版を磁力で吸着保持するマグネット・シリンダである。
【0008】
本発明は、前記発明において、前記エア吹き出し手段、案内手段および受け手段は、前記ダイ・シリンダが前記対向シリンダに対向してから次に対向するまでのダイ・シリンダの回転方向で、半分回転した位置から次に対向シリンダに対向する位置との間に設けられている。
【0009】
本発明は、前記発明において、前記ダイ・シリンダの周面であって前記案内手段の延長線との交差点における接線と案内手段とのなす角度が45°以下である。
【0010】
本発明は、前記発明において、前記案内手段が、前記エア吹き出し手段に対して、前記ダイ・シリンダの回転方向上流側に設けられた第1の案内手段と、前記エア吹き出し手段に対して、前記ダイ・シリンダの回転方向下流側に設けられた第2の案内手段とからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダイ・シリンダが対向シリンダと対向してから次に対向するまでの間に、ダイ・シリンダの略接線方向にエアを吹き出すエア吹き手段と、エアで先端が剥がされた紙片を案内する案内手段と、案内手段によって案内される紙片を受ける受け手段を設けたことにより、フレキシブル・ダイ方式においても打抜き版に付着した紙片を打抜き版から確実に剥がすようにしたから、シリンダの陥没や曲がりあるいは軸受の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る輪転式打抜き機を適用した枚葉輪転印刷機の全体を示す側面図である。
【図2】同図(A)は本発明に係る輪転式打抜き機におけるダイ・シリンダの平面図、同図(B)は同図(A)におけるII(B)部の拡大図である。
【図3】本発明に係る輪転式打抜き機の側面図である。
【図4】同図(A)は本発明に係る輪転式打抜き機におけるフレキシブル・ダイの斜視図、同図(B)は同図(A)におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】同図(A)は本発明に係るダイ・シリンダの斜視図、同図(B)はフレキシブル・ダイの装着を説明するための斜視図である。
【図6】本発明に係る輪転式打抜き機の側面図である。
【図7】本発明に係る輪転式打抜き機の要部を拡大して示す側面図である。
【図8】本発明に係る輪転式打抜き機を適用した別の印刷機の概略の構成を示す側面図である。
【図9】フレキシブル・ダイ方式におけるダイ表面と紙表面との間の間隔を説明するためのモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図8に基づいて説明する。
【0014】
図1に全体を符号1で示す枚葉輪転印刷機は、被打抜き部材としての枚葉紙2を1枚ずつ給紙するシート状物供給部としての給紙部3と、給紙された枚葉紙2を印刷する印刷部4と、印刷された枚葉紙2をニスコーティングするコーティングユニット5と、枚葉紙2を乾燥する乾燥ユニット6と、枚葉紙2に所定のパターンに押切り加工を施すフレキシブル・ダイ方式の輪転式打抜き機としてのロータリー・ダイカッター7と、シート状物排出部としての排紙部8とによって概ね構成されている。
【0015】
給紙部3には、枚葉紙2を堆積状態で積載するシート状物積載手段としての紙積台10と、紙積台10に積載された枚葉紙2を1枚ずつ分離しフィーダーボード12に送り出すシート状物供給手段としての給紙装置11とが備えられている。
【0016】
印刷部4には4組の印刷ユニット13ないし16が備えられており、各印刷ユニット13ないし16には、インキ装置からインキが供給される版胴17と、この版胴17と対向するゴム胴18と、このゴム胴18と対向し枚葉紙2をくわえて搬送する圧胴19とが備えられている。したがって、フィーダーボード12から渡し胴20に給紙された枚葉紙2は圧胴19にくわえ替えられて搬送され、ゴム胴18との間を通過するときに1色目の印刷が行われる。1色目の印刷が行われた枚葉紙2は、渡し胴21Aないし21Cを介して順次印刷ユニット14,15,16に搬送され、2色目、3色目、4色目の印刷が行われる。
【0017】
コーティングユニット5には、ニス供給装置からニスを供給されるニス胴22と、このニス胴22と対向し枚葉紙2を搬送する圧胴23とが備えられており、印刷部4で印刷され渡し胴21Dから圧胴23にくわえ替えられる枚葉紙2は、圧胴23とニス胴22との間を通過するときに表面にニスがコーティングされる。
【0018】
乾燥ユニット6には、印刷部4で印刷されたインキおよびコーティングユニット5でコーティングされたニスを乾燥するUVランプ25と、渡し胴21Eから枚葉紙2をくわえ替えし搬送する渡し胴24とが備えられている。
【0019】
ロータリー・ダイカッター7には、周面に後述する打抜き版としてのフレキシブル・ダイ49が装着されているマグネット・シリンダとしてのダイ・シリンダ26と、このダイ・シリンダ26と対向し枚葉紙2を搬送する対向シリンダとしてのアンビル・シリンダ27とが備えられている。
【0020】
排紙部8には、ロータリー・ダイカッター7のアンビル・シリンダ27と対向する排紙胴28と同軸上に回転自在に支持されたスプロケット29と、排紙フレーム30の後端部に回転自在に支持されたスプロケット31と、これらスプロケット29,31間に張架され排紙爪(図示せず)が支架され排紙爪と共に搬送保持手段を構成する排紙チェーン32とが備えられている。したがって、アンビル・シリンダ27から排紙チェーン32の排紙爪にくわえ替えられた枚葉紙2は、排紙チェーン32の走行により搬送され、排紙パイル33の上方で排紙爪から解放され排出手段としての排紙パイル33上に積載される。
【0021】
次に、図2および図3を用いて、本発明に係るロータリー・ダイカッター7のダイ・シリンダ26について説明する。ダイ・シリンダ26は、図2に示すように両端に端軸35,35が突設されており、これら端軸35,35が左右のフレーム(図示せず)に回転自在に支持される。36は帯状に形成された磁石部であって、ダイ・シリンダ26の外周部に軸線方向に延在する溝(図示せず)に接着剤を介して取り付けられており、ダイ・シリンダ26の円周方向に多数列設けられている。
【0022】
この磁石部36は、同図(B)に示すように共に多数のマグネット36aとヨーク36bとによって構成されており、これらマグネット36aとヨーク36bとは、互いに隣接してダイ・シリンダ26の軸線方向に交互に設けられるように接着剤によって一体化されている。
【0023】
マグネット36aは図示するように互いに同じ磁極(N,S)が向かい合うように配列され、ヨーク36bはそのマグネット36a,36aの間に介在することにより磁化されており、この磁化されたヨーク36bによって後述するフレキシブル・ダイ49がダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着される。
【0024】
この磁石部36は、ダイ・シリンダ26の軸線方向に6本並べられた後述する基準ピン40間にも設けられ、かつダイ・シリンダ26の軸線方向において基準ピン40を挟むように設けられている。37はアンビル・シリンダ27に設けられた保持手段としてのくわえ爪38,38に対向する箇所に矩形状に形成された凹部であって、アンビル・シリンダ27の軸線方向に間隔をおいて並設されているくわえ爪38に対応して、ダイ・シリンダ26の軸線方向に一列に多数個並設されている。
【0025】
40(40Aないし40F)は、後述するフレキシブル・ダイ49の係合孔52に係入される基準ピンであって、6本の基準ピン40Aないし40Fがダイ・シリンダ26の軸線方向に一列に設けられている。
【0026】
次に、図4を用いてダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着されるフレキシブル・ダイ49について説明する。同図に全体を符号49で示すフレキシブル・ダイは、ダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着される金属製の本体50と、この本体50の天地方向の一方の端部(尻側端部)50bに設けられた非磁性体部としての非磁性体シート55と、この非磁性体シート55を介してダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着されてこの非磁性体シート55をダイ・シリンダ26の外周面に対接させる磁性片56とを備えている。
【0027】
本体50は、可撓性を有し薄板状の磁性材によって長方形に形成されており、表面に平面視長方形を呈する6個の刃型としての抜刃51が設けられ、くわえ側端部50aの幅方向両端部には、上記した基準ピン40が係入される基準係合部としての一対の係合孔52,52が設けられている。
【0028】
この本体50は、抜刃51が所定の高さに形成されるように、抜刃51に対応する部位以外の部分をエッチングで処理することによって、同図(B)に二点鎖線で示す台形状の凸部53を形成する。次いで、NC(Numerical Control) 加工機によって凸部53に断面三角形の抜刃51を形成する。
【0029】
非磁性体シート55は可撓性を有する薄板状のプラスチックによって平坦状に形成されており、本体50の幅と同じ幅に形成され、本体50の尻側端部50bの裏面の幅方向全体にわたって接合されることにより、この非磁性体シート55の略半分はフレキシブル・ダイ50の尻側端部50bから突出され突出部55aを形成している。磁性片56は強磁性材によって細長い長方形に形成されており、非磁性体シート55の幅よりも大きい幅に形成されている。
【0030】
後述するようにフレキシブル・ダイ49をダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着するときに、この磁性片56を非磁性体シート55の突出部55a上に被せ、ダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着することにより、非磁性体シート55の突出部55aが、この磁性片56とダイ・シリンダ26の外周面とで挟持される。したがって、非磁性体シート55はダイ・シリンダ26の外周面に沿って湾曲し、ダイ・シリンダ26の外周面に密着する。
【0031】
図5に全体を符号60で示す案内手段は、ダイ・シリンダ26の軸線方向に並設された4つの案内片61と、これら案内片61に取り付けられダイ・シリンダ26の軸線方向に延在する案内板62とによって概ね構成されている。4つの案内片61は、左右のフレーム(図示せず)に横架された2本のバー63,63によって支持されている。
【0032】
このような構成において、12本の基準ピン40A,40Fをダイ・シリンダ26の外周面から突出させる。次いで、フレキシブル・ダイ49を把持し、図5(B)に示すようにくわえ側端部50aがダイ・シリンダ26側を指向するように案内片61上および案内板62上に載置する。この状態で、フレキシブル・ダイ49の一対の係合孔52,52を、基準ピン40A,40Fに係入する。係合孔52,52を基準ピン40A,40Fに係入したら、ダイ・シリンダ26を装着方向、すなわち図5(B)中時計方向に回転させる。
【0033】
この回転によって、フレキシブル・ダイ49が案内片61と案内板62とに案内されながら、くわえ側端部52a側から順次ダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着される。フレキシブル・ダイ49の尻側端部50bをダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着したら、図4(A)に示すように、磁性片56を非磁性体シート55の突出部55a上に被せるようにして磁性片56をダイ・シリンダ26の外周面に磁気的に装着する。
【0034】
磁性片56を装着することにより、突出部55aが磁性片56とダイ・シリンダ26の外周面とによって挟持され、突出部55aはダイ・シリンダ26の外周面に沿って湾曲し、ダイ・シリンダ26の外周面に密着される。フレキシブル・ダイ49のダイ・シリンダ26への装着が終了したら、基準ピン40A,40Fをダイ・シリンダ26の外周面から凹部45内に没入させる。
【0035】
この状態で、枚葉輪転印刷機1を駆動すると、図3において渡し胴21Fからアンビル・シリンダ27にくわえ替えられた枚葉紙2は、ダイ・シリンダ26との対向点を通過するときに、フレキシブル・ダイ49の抜刃51によって所定の輪郭線に沿って切れ目が付けられる。
【0036】
次に、図6および図7を用いて、本発明の特徴であるダイ・シリンダ26に付着した紙片を剥がす紙片剥がし装置70について説明する。なお、図6および図7には、説明の都合上、案内片61および案内板62は図示を省略している。
【0037】
紙片剥がし装置70は、図7に示すように、エア72を吹き出すエア吹き手段としてのエアノズル71と、このエアノズル71によってフレキシブル・ダイ49から剥がされた紙片を受ける受け手段としての受け皿73と、フレキシブル・ダイ49から剥がされた紙片を受け皿73に案内する案内手段75とからなる。これらエアノズル71、受け皿73、案内手段75は、ダイ・シリンダ26がアンビル・シリンダ27に対向点Bにおいて対向してから次に対向するまでのダイ・シリンダ26の回転方向(矢印A方向)で、半分回転した位置C点から次にアンビル・シリンダ27に対向する位置B点との間に設けられている。
【0038】
エアノズル71は、ダイ・シリンダ26がアンビル・シリンダ27に対向する位置B点以外の位置に設けられ、全長がダイ・シリンダ26の胴軸方向の長さと略同じ長さに形成され両端部が左右のフレーム(図示せず)に支持されている。このエアノズル71から吹き出されるエア72は、ダイ・シリンダ26の周面に、当該ダイ・シリンダ26の回転方向下流側から上流側に向かってダイ・シリンダ26の略接線方向に向かって吹き出される。
【0039】
受け皿73は、全長がダイ・シリンダ26の胴軸方向の長さ、すなわち後述する第1および第2のブレード76,77と略同じ長さに形成され両端部が左右のフレーム(図示せず)に支持されており、ダイ・シリンダ26側の一端部に後述する第2のブレード77が固定されている。
【0040】
案内手段75は、エアノズル71に対してダイ・シリンダ26の回転方向(矢印A方向)上流側に設けられた第1の案内手段としての第1のブレード76と、エアノズル71に対して、ダイ・シリンダ26の回転方向(矢印A方向)下流側に設けられた第2の案内手段としての第2のブレード77からなる。第1および第2のブレード76,77は、全長がダイ・シリンダ26の胴軸方向の長さと略同じ長さに形成され、先端部がダイ・シリンダ26の周面からわずかに離間した位置に設けられ、第1のブレード76は両端部が左右のフレーム(図示せず)に支持されている。
【0041】
ダイ・シリンダ26の周面であって第1のブレード76の延長線との交差点Dにおける接線と第1のブレード76とのなす角度αは45°以下に設定されている。ダイ・シリンダ26の周面であって第2のブレード77の延長線との交差点Eにおける接線と、第2のブレード77とのなす角度βは45°以下に設定されている。
【0042】
このような構成において、渡し胴21Eからアンビル・シリンダ27のくわえ爪38にくわえ替えられ、ダイ・シリンダ26の対向点Bに搬送された枚葉紙2は、対向点Bにおいてダイ・シリンダ26の周面に装着されたフレキシブル・ダイ49の抜刃51によって切り目が付けられる。このとき、枚葉紙2の一部である紙片が抜刃51に付着した場合は、この紙片はダイ・シリンダ26によって搬送され、対向点Bからダイ・シリンダ26が半分回転した位置C点を過ぎると、エアノズル71からのエア72が紙片に吹き付けられるため、紙片がダイ・シリンダ26から剥がされる。ダイ・シリンダ26から剥がされた紙片は、第1および第2のブレード76,77によって受け皿73に案内され、受け皿73に受けられる。
【0043】
このとき、第1および第2のブレード76,77と、D点およびE点における接線とのなす角度α、βが45°以内に設定されていることにより、ダイ・シリンダ26から先端が剥がされた紙片に対して第1および第2のブレード76,77が鋭角状に当たるため、紙片をダイ・シリンダ26から円滑に剥がすことができるとともに、受け皿73に確実に案内することが可能になる。
【0044】
このように、ダイ・シリンダ26がアンビル・シリンダ27と対向してから次に対向するまでの間に、ダイ・シリンダ26のほぼ接線方向にエアを吹き出すエアノズル71と、エアで先端が剥がされた紙片を案内する第1および第2のブレード76,77と、これら第1および第2のブレード76,77によって案内される紙片を受ける受け皿73を設けたことにより、フレキシブル・ダイ方式においてもフレキシブル・ダイ49に付着した紙片をフレキシブル・ダイ49から確実に剥がすようにしたから、シリンダの陥没や曲がりあるいは軸受の破損を防止することができる。
【0045】
図8に示すものは、被打抜き部材をウェブ82とした場合を示したものであり、この場合も、対向点Bにおいてウェブ82の一部がダイ・シリンダ26のフレキシブル・ダイ49に付着しても、上述した枚葉紙2の場合と同様に、紙片剥がし装置70によってフレキシブル・ダイ49に付着した紙片が剥がされ受け皿73に受け採られる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、ダイ・シリンダ26としてマグネット・シリンダを用いた例を説明したが、フレキシブル・ダイをダイ・シリンダに固定する構造はこれに限定されることはなく、種々の設計変更が可能である。例えば、米国特許公報第7565856号の図3〜図6に示すように、回動中心から偏心した位置にボルト孔が設けられたショルダーを備え、ボルト孔に、フレキシブル・ダイの天地方向の端部に設けた挿通孔に挿通させたボルトをねじ込んだ後、ショルダーを回動させることにより、フレキシブル・ダイを引っ張ってダイ・シリンダに機械的に保持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…枚葉輪転印刷機、2…枚葉紙(被打抜き部材)、7…ロータリー・ダイカッター(輪転式打抜き機)、26…ダイ・シリンダ(マグネット・シリンダ)、27…アンビル・シリンダ(対向シリンダ)、36…磁石部、38…くわえ爪(保持装置)49…フレキシブル・ダイ(打抜き版)、51…抜刃(刃型)、70…紙片剥がし装置、71…エアノズル(エア吹き出し手段)、72…エア、73…受け皿(受け手段)、75…案内手段、76…第1のブレード(第1の案内手段)、77…第2のブレード(第2の案内手段)、82…ウェブ(被打抜き部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃型が設けられた打抜き版を保持し、回転可能に支持されたダイ・シリンダと、
このダイ・シリンダに対向して回転可能に支持され、前記打抜き版によって打抜きされる被打抜き部材を保持する保持装置が設けられた対向シリンダとを備え、
前記ダイ・シリンダと前記対向シリンダとが対向する位置で、前記打抜き版によって被打抜き部材に切れ目を入れる輪転式打抜き機において、
前記ダイ・シリンダが前記対向シリンダに対向する位置以外の位置で、ダイ・シリンダの周面に、当該ダイ・シリンダの回転方向下流側から上流側に向かってダイ・シリンダの接線方向に向かってエアを吹き出すエア吹き出し手段と、
このエア吹き出し手段によって前記打抜き版から剥がされた被打抜き部材の一部を受ける受け手段と、
前記打抜き版から剥がされた被打抜き部材の一部を受け手段に案内する案内手段と、
を備えたことを特徴とする輪転式打抜き機。
【請求項2】
前記ダイ・シリンダが、前記打抜き版を磁力で吸着保持するマグネット・シリンダであることを特徴とする請求項1記載の輪転式打抜き機。
【請求項3】
前記エア吹き出し手段、案内手段および受け手段は、前記ダイ・シリンダが前記対向シリンダに対向してから次に対向するまでのダイ・シリンダの回転方向で、半分回転した位置から次に対向シリンダに対向する位置との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の輪転式打抜き機。
【請求項4】
前記ダイ・シリンダの周面であって前記案内手段の延長線との交差点における接線と案内手段とのなす角度が45°以下であることを特徴とする請求項1記載の輪転式打抜き機。
【請求項5】
前記案内手段が、前記エア吹き出し手段に対して、前記ダイ・シリンダの回転方向上流側に設けられた第1の案内手段と、
前記エア吹き出し手段に対して、前記ダイ・シリンダの回転方向下流側に設けられた第2の案内手段と、
からなることを特徴とする請求項1記載の輪転式打抜き機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−161859(P2012−161859A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22691(P2011−22691)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】