説明

輪転機用除電装置

【課題】
印刷機、コーター、ラミネーターなどの輪転機のフレームに対して回転軸の位置が変位する可動ロールの上流側、及び/又は、下流側で、可動ロールの動作に伴ってパスラインが変化しても除電器とウェブの位置関係が変化せず除電の最適位置が維持される除電装置を提供する。
【解決手段】
可動ロールでウェブを搬送して加工する輪転機の、前記可動ロールの上流側、及び/又は、下流側で前記ウェブに帯電した静電気を除電する除電装置であって、該除電装置の除電器は、前記可動ロールの軸と前記可動ロールと隣接するロールの軸を連結し、前記可動ロールの軸と前記可動ロールと隣接するロールの軸を通る直線と平行な方向に伸縮する機構を有する支持アームで支持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輪転機で加工するウェブに帯電した静電気を除電する除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輪転機(例えばグラビア輪転印刷機)では、ウェブが版胴やロールと摩擦・剥離することにより帯電し、ある一定の帯電電位を超えることで、原反付近に存在する帯電物と電位差のある導体間で気中放電する。気中放電が発生した場合にはウェブ原反に穴が空くなどの品質不良が発生する問題がある。また、気中放電が発生した箇所に、酸素と揮発した有機溶剤が一定の割合で存在すると放電の火花で着火し火災が発生する危険性がある。従来の対策として、原反が不導体単層の場合には自己放電型除電器(特許文献1)やイオナイザー(特許文献2)などを設置し除電していた。特に火災予防として、酸素と揮発した有機溶剤が一定の割合で存在する可能性の高い印刷ユニット内の版胴周辺では、除電を確実に実施する必要があった。
【0003】
図3は従来技術による除電器の設置の一例を示す側面図であるが、印刷機のフレームに対して回転軸の位置が固定された上流側固定ロール3、印刷機のフレームに対して回転軸の位置が変位して版胴1に対して着脱動作を行う圧胴2、下流側固定ロール4の順にウェブが巻き付いて搬送される。このウェブに対して除電器8は印刷機のフレームに対して固定された位置に設置されているため、破線で示した圧胴2が版胴1に接している印刷時のウェブのパスライン(走行位置)10と、圧胴2と版胴1が離れた時のパスライン9とでは除電器8とウェブの距離が変化し最適な除電効果を維持することができない。また、印刷する製品の品種が変更されて版胴1の直径が変わる場合も同様な問題が発生する。
このように、輪転印刷機では、版胴1に対する圧胴2の着脱動作および、品種変更により版胴1の直径が変わる際にパスラインが変わるため、最適な除電効果を得ようとすると、パスラインが変化する度に除電器の位置を変更する作業が必要となり生産性を低下させる要因となっていた。
【0004】
この課題を解決するべく、静電除去装置付印刷ユニット(特許文献3)なども考案されたが、圧胴が旋回可能なアームに支持され、アームの旋回により圧胴の着脱を行う機構の輪転機に関するものであり、圧胴の着脱を上下方向の直線動作により行う機構の輪転機には適用できなかった。また、搬送中に帯電した原反を除電するために圧胴入口側、および圧胴出口側の両方で除電する必要があるにも関わらず、片側のみにしか適用することができなかった。
【0005】
また、除電器設置位置の自動調整装置および除電装置(特許文献4)なども考案されたが、この方法では設置したい除電器の圧胴昇降にともなう軌道からリニアガイドの設置角度およびガイドブロックの角度を割り出す作業が必要となるなど煩雑であるため、設計に時間がかかるという問題があった。また、既存の印刷機に設置する場合にはリニアガイドおよびガイドブロックを所定の角度で固定することが難しく実現が困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−258890
【特許文献2】特開昭62−105398
【特許文献3】実開昭62−79749
【特許文献4】特開2006−49217
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況を鑑みてなされたもので、輪転機の可動ロールの上流側、及び/又は、下流側で、可動ロールの動作に伴ってパスラインが変化しても除電器とウェブの位置関係が変化せず除電の最適位置が維持される除電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の輪転機用除電装置は、輪転機のフレームに対して回転軸の位置が変位する可動ロールでウェブを搬送して加工する輪転機の、前記可動ロールの上流側、及び/又は、下流側で前記ウェブに帯電した静電気を除電する除電装置であって、該除電装置の除電器は、前記可動ロールの軸と前記可動ロールと隣接するロールの軸を連結し、前記可動ロールの軸と前記可動ロールと隣接するロールの軸を通る直線と平行な方向に伸縮する機構を有する支持アームで支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の輪転機用除電装置によれば、単純な支持構造で除電器を支持するだけで除電器がパスラインの変位に追従して最適位置が維持されるため、可動ロールを動作させる度に必要な準備作業が不要で生産性を低下させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
図1は本発明の第1の形態を示す概略側面図で、版胴1に対して、圧胴2はリニアガイド等で上下方向に案内され、エアーシリンダー7で駆動されて上昇、下降動作を行う。ウェブは上流側搬送ロール3、圧胴2、下流側搬送ロール4の順に各ロールに巻き付いた状態で搬送される。除電器8は支持アーム5で支持されウェブのパスライン9と所定の距離、離した位置関係を持つ。支持アーム5の両端は圧胴2と上流側搬送ロール3および、下流側搬送ロール4の回転軸と回動可能に接続され、中間に伸縮機構6が設けられている。
【0011】
上記構成の印刷ユニットで、印刷時は破線で示す様に圧胴2を下降させてウェブを版胴1に加圧し、非印刷時には圧胴2を上昇させる。これらの動作において、圧胴2と上流側搬送ロール3および、下流側搬送ロール4の回転軸の距離は変化するが支持アーム5は伸縮機構6を持つため支持アーム5の姿勢は常時圧胴2と上流側搬送ロール3および下流側搬送ロール4の回転軸を結ぶ直線上にあり、支持アーム5で支持される除電器8とウェブの位置関係は変化せず、印刷時のパスライン10と圧胴2上昇時のパスライン9で一定となる。
【0012】
図2は本発明の第2の形態を示す概略側面図で、圧胴2は圧胴2と下流側搬送ロール4の回転軸を連結した圧胴支持アーム11で支持され、圧胴支持アーム11が下流側搬送ロール4の回転軸で回動することで版胴1に対する上昇、下降動作を行う。圧胴支持アーム11で支持された除電器8とウェブのパスライン9との位置関係を変化させずに圧胴2を動作させることができる。これに対し上流側は上流側搬送ロール3と圧胴2の軸間距離が変化するから圧胴支持アーム11は採用できないが、この場合でも本発明の伸縮機構6を持つ支持アーム5は適用することができる。
【0013】
本発明で使用する除電器には、自己放電型除電器やイオナイザー、導電性のモールや紐などが利用可能である。伸縮機構6には図1のようなパイプ状部材とそのパイプに嵌合する部材で構成した機構のほか市販の機構部材であるスプライン機構やリニアガイドを用いた直線案内機構などが適用可能である。また、図では支持アームが、隣接するロール軸の中心を結ぶ線上に位置しているが、支持アーム自体はオフセットした位置に設定しても伸縮機構の伸縮動作の方向が隣接するロール軸の中心を結ぶ線と平行であれば同様な効果を得ることができる。
以上説明した様に、本発明によれば印刷機やコーター、ラミネーターなどウェブを搬送ロールで搬送しながら加工する輪転機において、上述の印刷機の圧胴やウェブの張力制御に用いられるダンサロールなどの可動ロールの上流側、及び/又は、下流側のウェブの除電を行うにあたって、除電器の位置調整作業が不要となり生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の形態を示す概略側面図。
【図2】本発明の第2の形態を示す概略側面図。
【図3】従来技術の除電器設置の一例を示す側面図
【符号の説明】
【0015】
1 版胴
2 圧胴
3 上流側搬送ロール
4 下流側搬送ロール
5 本発明に係る支持アーム
6 支持アームの伸縮機構
7 エアーシリンダー
8 除電器
9 パスライン
10 圧胴下降時のパスライン
11 圧胴支持アーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪転機のフレームに対して回転軸の位置が変位する可動ロールでウェブを搬送して加工する輪転機の、前記可動ロールの上流側、及び/又は、下流側で前記ウェブに帯電した静電気を除電する除電装置であって、該除電装置の除電器は、前記可動ロールの軸と前記可動ロールと隣接するロールの軸を連結し、前記可動ロールの軸と前記可動ロールと隣接するロールの軸を通る直線と平行な方向に伸縮する機構を有する支持アームで支持されていることを特徴とする輪転機用除電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−153052(P2010−153052A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326868(P2008−326868)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】