説明

輸液バッグの外袋

【課題】開封箇所を確実に,手で開封できるようにした輸液バッグの外袋を提供する。
【解決手段】一辺に輸液バッグの挿入開口を有し,他辺に2枚のフィルムが重合される開封部を有する輸液バッグの外袋であって,少なくとも,シーラント層及び基材層の2層からなり,前記シーラント層は,最内層を成すヒートシール層から成り,前記ヒートシール層は,弱シール部と,前記弱シール部より高いシール強度を有する強シール部とから成り,前記開封部は,該開封部を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部を配置し,該強シール部間に,袋内方に位置する弱シール部と,袋外方に位置する非ヒートシール部から成り,前記一辺の前記強シール部と前記非ヒートシール部の境界で,前記非ヒートシール部の少なくとも一方の端縁に,実施形態では,直線状に前記弱シール部にわずかに達する,上部ノッチを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液バッグの保管,搬送及び使用時において好適に用いられる輸液バッグの外袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,病院等で使用される輸液バッグに充填されるアミノ酸製剤,ブドウ糖製剤,脂肪乳剤等の各種の薬液は,ガス,とりわけ酸素によって変質し易い。また,ビタミン類を含む輸液に関しては,含まれるビタミン,例えばビタミンA,B2,C,K,葉酸等が光,とりわけ紫外線によって分解・変質する。
【0003】
そこで,輸液バッグ中の輸液が変質することを防止するために輸液バッグを,ガスバリア性,さらには遮光性を有する外袋で真空包装して保管,搬送することが行われている。
【0004】
また,ビタミン剤が注入された輸液を充填している輸液バッグについては,保管,搬送時のみでなく,使用時においても遮光されていることが望ましい。大気中にある酸素などのガスが輸液バッグを通り抜けて薬液中に溶け込み,輸液を変質させる場合と比較して,光は輸液バッグを比較的容易に透過し,輸液中のビタミン類を分解させてしまうので,点滴等輸液バッグの使用時においても,遮光性カバー等を輸液バッグに被せておく必要がある。
【0005】
特開平9−117489号公報には,輸液バッグである点滴用包装容器40の外袋としての袋体である汚染防止袋20に遮光性を付与することで,前記点滴用包装容器40を真空包装した後,そのまま点滴時において遮光カバーとして使用できる点滴用包装容器(輸液バッグ)40の汚染防止袋(本願発明の外袋10に対応)について開示されている。
【0006】
上記公報に開示される汚染防止袋20は,図11及び図12に示すように,逆凹形状の上辺ヒートシール部21,両側辺のサイドシール部27,27からなる三方がヒートシールされている袋であって,逆凹形の非シール部のハンガー掛止口22が点滴用包装容器40のハンガー掛止部26の取り出し口となっており,該袋の下部はヒートシールされておらず,点滴用包装容器40を袋内に挿入する挿入口23となっており,点滴用包装容器40のハンガー掛止口22上部よりやや下方に位置するサイドシール部27,27に上部Vノッチ24を設け,更に該袋に点滴用包装容器40を挿入した後真空シールする下辺ヒートシール部28よりやや上方のサイドシール部27に下部Vノッチ25を設けている。
【0007】
また,上記点滴用包装容器40の汚染防止袋20の使用法については,図11〜図15に示す点滴用包装容器(輸液バッグ)40の汚染防止袋(外袋)20に,薬液混入口29及び薬液排出口30を有し,薬液が混入された点滴用包装容器40をハンガー掛止部26を上方にして挿入口23より挿入し,該挿入口23より別工程で,内部の空気を吸引して汚染防止袋20を略真空状態にしたまま,挿入口23を真空シールし,下辺ヒートシール部28とし,完全密封して保管,搬送する。患者に薬液等を点滴するときは,上部Vノッチ24より汚染防止袋を横方向に引き裂き,ハンガー掛止口22を開封し,点滴用包装容器40のハンガー掛止部26を引き出し,ハンガー31に取り付け,次いで下部Vノッチ25より汚染防止袋を横方向に引き裂き,図15に示すように輸液排出口30に点滴用チューブ32を装着して連通し,点滴を行う。
【0008】
さらに,上記汚染防止袋20は,シール層又は中間層を,袋の引き裂き方向,すなわち幅方向に一軸延伸されているため,ハンガー掛止口22を開封する際に,前記上部Vノッチ24から幅方向に,手で容易に引き裂き可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−117489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記汚染防止袋20は,シール層又は中間層が,袋の引き裂き方向,点滴用包装容器(輸液バッグ)40幅方向に一軸延伸されていることにより,前記上部Vノッチ24から幅方向に,手で容易に引き裂き可能としているが,汚染防止袋20については,幅方向に引き裂き,ハンガー掛止口部22を開封するために,手で引き裂く引き裂き距離が長いため,引き裂き容易なフィルムであっても,手で引き裂いた場合に,同一直線状に引き裂くことは難しく,蛇行湾曲したり,略同一直線であっても幅方向にではなく,斜め方向に引き裂けてしまうことが多々ある。このような開封状態は,汚染防止袋20を幅方向に引き裂く際に,該汚染防止袋20に収容された点滴用包装容器40の荷重がかかり,引き裂き方向が変わり易いことと,一軸延伸によって,分子を延伸方向に配向しても,ヒートシールを行った際に,熱で配向が緩和ないし乱れてしまうことに起因する。
【0011】
図16に示すように,上記汚染防止袋20を手で引き裂いた場合に,力の加減により,一方の上部Vノッチから幅方向にではなく,上部に向かって斜めに引き裂いてしまい,ハンガー掛止口22から点滴用包装容器40のハンガー掛止部を取り出せる程度に開口することができず,もう一度,他方の上部Vノッチ24から手で引き裂くか又はハサミを用いて引き裂くことになり2度手間となった。また,図17に示すように,下部に向かって斜めに引き裂いてしまい,ハンガー掛止口の開口部が大きくなり過ぎた状態で,点滴用包装容器のハンガー掛止部26をハンガーに取り付けた場合に点滴用包装容器40から汚染防止袋20が落下してしまうことがあった。
【0012】
また,前記上部Vノッチ24より輸液バッグを幅方向に引き裂く場合,ヒートシール部,非シール部,ヒートシール部の順で引き裂くことになるが,非シール部においては,ヒートシールされていないフィルム2枚分を同時に引く裂くことになる。該2枚のフィルムは互いに固定されていないため,ハンガー掛止口を開封するために上部Vノッチから幅方向に引き裂く際に,前記非シール部において引っかかりが生じたり,引き裂き方向が意図した方向と異なるという煩わしさがあった。
【0013】
そこで,本発明の目的は,輸液バッグの保管,搬送のみでなく点滴時等までにおいて使用できる従来の点滴用包装容器40に対応する輸液バッグのための,従来の汚染防止袋に対応する外袋について,保管,搬送時には密封でき,使用時において開封箇所を容易に,失敗がなく確実に,手で開けられるようにした輸液バッグの外袋を提供する。
【0014】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために,本発明の輸液バッグの外袋10は,例えば,2枚のフィルム15を重合し、又は1枚の前記フィルム15を半折して,該フィルム15の内層同士を重ね合わせて成る,一辺に輸液バッグ40の挿入開口4を有し,他辺に2枚のフィルム15が重合される開封部8を有する輸液バッグ40の外袋10であって,
少なくとも,シーラント層12及び基材層11の2層からなり,
前記シーラント層12は,最内層を成すヒートシール層12から成り,
前記ヒートシール層12は,弱シール部2と,前記弱シール部2より高いシール強度を有する強シール部3とから成り,
前記開封部8は,該開封部を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部3を配置し,
該強シール部3間に,袋内方に位置する弱シール部2と,袋外方に位置する非ヒートシール部6から成り,
前記一辺の前記強シール部3と前記非ヒートシール部6の境界で,前記非ヒートシール部6の少なくとも一方の端縁に,実施形態では,直線状に前記弱シール部2にわずかに達する,上部ノッチ5を形成したことを特徴とする(請求項1)。
【0016】
前記ヒートシール層12は,容易に剥離可能(イージーピール可能)である弱シール部2を形成するシール温度領域と,前記弱シール部2より高いシール強度を有した少なくとも前記弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されない強シール部3を形成するシール温度領域とを有するフィルムで形成することができる(請求項2)。
【0017】
また,本発明の輸液バッグの外袋10において,前記非ヒートシール部6から成る開封部8は,開封時における幅方向の長さが,収納する輸液バッグの収納時の幅方向の長さより短く形成することができる(請求項3)。
【0018】
また,開封部8を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部3を形成し,該強シール部3間に,袋内方に位置する前記弱シール部2上の袋外方に位置する非ヒートシール部6により,舌片12c,12c’を形成する(請求項4)。
【0019】
前記弱シール部2は,シール強度が1〜7N/15mmであることが好ましく,より好ましくは,3〜5N/15mmであり,前記強シール部3のシール強度は,シール強度が10N/15mm以上であることが好ましく,より好ましくは,25N/15mm以上である(請求項5)。
【0020】
前記弱シール部2は,100〜160℃のシール温度でヒートシールされていて,前記強シール部3は125℃以上のシール温度でヒートシールされていることが好ましい(請求項6)。
【0021】
前記シーラント層12及び前記基材層11は,透明性を有することが好ましい。また,前記基材層11は,ガスバリア性,遮光性(紫外線非透過性)を有することが好ましい(請求項7)。
【0022】
前記基材層11は,ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂から成り,前記シーラント層12は,エチレン系アイオノマー又はエチレンと他のモノマーとを共重合させたポリエチレン共重合体の樹脂から成るフィルムにより形成することが好ましい(請求項8)。
【0023】
前記構成の輸液バッグの外袋10は,前記シーラント層12,前記基材層11の他に,例えば,酸化アルミニウム(アルミナ),酸化珪素(シリカ)の蒸着膜から成る蒸着層13及び/又はポリプロピレン(PP)フィルム,延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム,ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム,ナイロン(Ny)フィルム,延伸ナイロン(ONy)フィルム,延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)フィルムから成る補強用フィルム層14により形成することができる(請求項9)。
【0024】
また,前記補強用フィルム層14には、遮光剤を含有するインキを塗装(印刷)して,コーティングすることができる(請求項10)。
【0025】
さらに,輸液バッグの外袋10には,上記上部ノッチ5とは別に,さらに,真空シール部7となる挿入開口4に臨み,両側辺の強シール部3に下部ノッチ9を設けることができる(請求項11)。
【発明の効果】
【0026】
本発明の構成の輸液バッグの外袋10は,前記開封部8において,前記非ヒートシール部6を開き,上部ノッチ5(,5’)を介して,弱シール部2を離間するように拡開して,剥離することで開封され,前述した従来手で,外袋上辺を幅方向に引き裂く場合の開封の煩わしさ,開封の失敗といった問題を改善することができる。
【0027】
また,本発明の輸液バッグの外袋10は,前記弱シール部2及び前記強シール部3を有する構成となっているが,一の材料で,前記弱シール部2と前記強シール部3を形成するシーラント層(ヒートシール層)12から成り,低コストで,製袋が容易である。
【0028】
なお,前記ヒートシール層12に,手で容易に剥離可能(イージーピール可能)である弱シール部2を形成するシール温度領域と,前記弱シール部2より高いシール強度を有した少なくとも前記弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されないシール強度の強シール部3を形成するシール温度領域とを有するフィルムを使用した場合は,シール温度に対するシール強度の制御をより容易にすることができ,所望のシール強度を有する弱シール部2及び強シール部3をより容易に形成することができる。
【0029】
本発明の輸液バッグの外袋10が,ガスバリア性を有する場合は,輸液バッグ40の保管,搬送時において,真空密封(真空シール)が可能な上,前記輸液バッグ40に充填されるアミノ酸製剤,ブドウ糖製剤,脂肪乳剤等の各種の薬液が,ガス,とりわけ酸素による変質を防止することが可能となる。
【0030】
また,本発明の輸液バッグの外袋10が,遮光性を有する場合は,例えば前記輸液バッグ40にビタミン剤などが含まれていたとしても,紫外線等によって前記ビタミンが分解され輸液バッグ40に充填された輸液が変質することを防止することが可能となる。
【0031】
さらに,本発明の輸液バッグの外袋10が,透明性を有する場合は,輸液バッグ40の中身の状態,残量,輸液バッグ40に記載された目盛り,文字等の視認が可能となる。
【0032】
本発明の輸液バッグの外袋10が,前記シーラント層12,前記基材層11の他に,蒸着層13及び/又は補強用フィルム層14から構成された場合,優れた強度,遮光性(紫外線非透過性),ガスバリア性,水蒸気バリア性等を付与することができる。
【0033】
また,前記輸液バッグの外袋10は,収容された輸液バッグ40の使用時において,前記弱シール部2を剥がし,前記開封部8を開封した際にハンガー43等を挿入することができ,かつ,前記輸液バッグをハンガー43等に掛けても,本発明の輸液バッグの外袋10が前記開封部8を介して輸液バッグ40からすり抜け,落下することがないので,前記輸液バッグ40を点滴用スタンドに吊り下げた場合に,クリップ等で本発明の輸液バッグの外袋10を保持する必要がなく,そのまま,目的に応じて,好適に使用することができる。
【0034】
前記開封部8が,収容される輸液バッグ40の把手用孔41に対応させた位置に設けられていると,輸液バッグの把手用孔41にハンガー43等を取り付けることが容易でる。
【0035】
さらに,輸液バッグの外袋10に,上記上部ノッチ5とは別に,さらに前記下部ノッチ9を設けることにより,前記輸液バッグの外袋10に保管されていた輸液バッグ40を点滴時等で使用する場合に,該輸液バッグ40の輸液排出口42に点滴用チューブを繋ぐために,該下部ノッチ9から引き裂いて輸液バッグの外袋10を開口することができる。
【0036】
また,前記開封部8の舌片12c,12c’を,両手の親指及び小指で両舌片をそれぞれ離間する方向へ引っ張り,前記上部ノッチ5,5’を介して,前記弱シール部2をそれぞれ剥離し,前記開封部8を開封して,ハンガー43を挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】同図(A)は,本発明の輸液バッグの外袋の概略正面図。同図(B)は,本発明の輸液バッグの外袋の同図(A)B−B線拡大断面図。
【図2】点滴時等の本発明の輸液バッグの外袋の使用状態を示す概略正面図。
【図3】本発明の輸液バッグの外袋に輸液バッグを密封した状態を示す概略正面図。
【図4】下部ノッチを設けた本発明の輸液バッグの外袋の概略正面図。
【図5】輸液バッグを密封する際,本発明の輸液バッグの外袋の真空シール部を強シールした状態を示す概略正面図。
【図6】本発明の別の実施形態における輸液バッグの外袋の概略正面図。
【図7】本発明の別の実施形態における輸液バッグの外袋の概略正面図。
【図8】本発明の別の実施形態における輸液バッグの外袋の概略正面図。
【図9】同図(A)は,本発明の別の実施形態における輸液バッグの外袋の概略正面図,同図(B)は,本発明の別の実施形態における輸液バッグの外袋の同図(A)B−B線拡大断面図。
【図10】本発明の別の実施形態における輸液バッグの外袋の使用状態を示す概略正面図。
【図11】従来の汚染防止袋(外袋)の概略正面図。
【図12】従来の汚染防止袋に点滴用包装容器(輸液バッグ)を挿入した状態を示す概略正面図。
【図13】従来の汚染防止袋に点滴用包装容器を密封した状態を示す概略正面図。
【図14】従来の汚染防止袋の使用方法を示す概略正面図。
【図15】従来の汚染防止袋を使用して点滴する使用状態を示す概略正面図。
【図16】従来の汚染防止袋の引き裂きに失敗した例を示す図。
【図17】従来の汚染防止袋の引き裂きに失敗した例を示す図。
【図18】シール温度とシール強度の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0038】
〔包装用フィルム〕
本発明に係る輸液バッグの外袋10を構成する包装用フィルム15は,少なくとも,シーラント層12及び基材層11の2層からなり,必要に応じて,蒸着層13及び/又は補強用フィルム層14を設ける。
【0039】
〔シーラント層〕
シーラント層12は,本発明の輸液バッグの外袋の最内層を成すヒートシール層である。
【0040】
本発明に使用されるシーラント層12は,シール温度を変えることによってシール強度を制御可能なフィルムから成る。より詳細には,シール温度によってシール強度を制御可能であって,一の材料で,少なくとも,手で容易に剥離可能(以下,本願明細書において,「イージーピール可能」ともいう)な弱シール部2と,前記弱シール部2より高いシール強度を有した少なくとも前記弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されない強シール部3とを形成するフィルムから成る。
【0041】
ここでは,イージーピール可能な弱シール部2を形成するシール温度領域と,前記弱シール部2より高いシール強度を有した少なくとも前記弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されない強シール部3を形成するシール温度領域とを有するフィルムから成り,シール強度を,シール温度の制御により行う。
【0042】
かように,シール温度を変化させてヒートシールすることによって,一の材料で,少なくとも,前記弱シール部2を形成するシール温度領域においてイージーピール可能な弱シール部2と,前記強シール部3を形成するシール温度領域において前記弱シール部2より高いシール強度を有した少なくとも前記弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されない強シール部3とを発現させる段階的なヒートシールが可能となる。
【0043】
前記弱シール部2の強度は,イージーピール可能であって,前記強シール部3が剥離する以前に剥離される。一方,強シール部3については,弱シール部2よりも高いシール強度であって,少なくとも弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されない程度の強度を有する。
【0044】
前述したイージーピール可能な弱シール部2の強度とは,ここでは,シール強度1〜7N/15mm程度であり,好ましくは,3〜5N/15mmであり,一方,前記強シール部3の強度としては,ここでは,シール強度約10N/15mm以上であり,より好ましくは,約25N/15mm以上であるが,弱シール部2については手で容易に剥離可能であって,一方,強シール部3については前記弱シール部3を剥離する際に同時に剥離されない強度を有すればよく,上記数値に必ずしも限定されない。
【0045】
本発明のシーラント層12に使用されるフィルムとしては,シール温度を変えることによってシール強度を制御することがでるフィルムであれば特に限定されず,具体的には,例えば,エチレン系アイオノマー,エチレンと他のモノマーとを共重合させたポリエチレン共重合体等の樹脂から成る。
【0046】
なお,輸液バッグの目盛や文字が読める程度の透明性が必要な場合には,透明性を有するシーラント層が好適に用いられるが,具体的には,前記エチレン系アイオノマー樹脂を用いたフィルムが挙げられる。
【0047】
〔基材層〕
基材層11は,本発明に係る輸液バッグの外袋10がシーラント層12及び基材層11の2層からなる場合,前記輸液バッグの外袋10の外層を成すもので,該輸液バッグの外袋10の内部に収容した輸液バッグ40を長期間にわたって好適な状態に保つべく,外部からの応力に対して耐久性等を有するよう,適度な強度を備えるほか,外部からの刺激によってピンホール等が発生することのないよう,突き刺し強度の高い材質のフィルムが用いられる。
【0048】
さらに,透明性,ガスバリア性,水蒸気バリア性又は遮光性等を有するフィルムが基材層11として好適に使用される。
【0049】
前記基材層11に使用可能なフィルムとしては,ポリアミド系樹脂,ポリエステル系樹脂等を用いたフィルムを挙げることができる。
【0050】
前記基材層11に使用可能なフィルムとしての,ポリアミド系樹脂としては,特に限定されず,各種ポリアミド(ナイロン)を使用でき,例えばポリアミド46(ナイロン46),ポリアミド6(ナイロン6),ポリアミド66(ナイロン66),ポリアミド610(ナイロン610),ポリアミド612(ナイロン612),ポリアミド6/66(ナイロン6/66),ポリアミド6/12(ナイロン6/12),ポリアミド6T(ナイロン6T),ポリアミド11(ナイロン11),ポリアミド12(ナイロン12),ポリアミド1212(ナイロン1212),ナイロンMXD6(ポリアミドMXD6),ポリアミドイミド,スーパータフナイロン,非晶ナイロン,Kコートナイロン(PVDCコートナイロン),非塩素・非金属系素材をコーティングしたバリアコートナイロン等が使用できる。特に,ナイロンMXD6(ポリアミドMXD6),非晶ナイロン,Kコートナイロン(PVDCコートナイロン)及び非塩素・非金属系素材をコーティングしたバリアコートナイロンは水蒸気バリア性及びガスバリア性を有するため,好適に用いられる。また,輸液バッグの目盛や文字が読める程度の透明性が必要な場合は,上述した各種ポリアミドのうち透明性を有するものが,好適に用いられる。
【0051】
また,水蒸気バリア性,ガスバリア性を有しない各種ポリアミド系樹脂であっても,後述するように,ポリアミド系樹脂からなる基材層11に無機酸化物等を蒸着させた蒸着層を設けることにより,酸素・水蒸気等のガスバリア性を付与することができる。
【0052】
さらに,前記ポリアミド系樹脂は紫外線透過率が高いが,本発明の輸液バッグの外袋10によって収容される輸液バッグ40に充填された輸液中にビタミン剤が含まれている等,紫外線により内容物が分解するなど輸液が変質してしまう場合は,ポリアミド系樹脂からなる基材層11に遮光性を付与する。
【0053】
一方,基材層11として前記ポリエステル系樹脂を用いたフィルムを使用した場合,前記ポリエステル系樹脂は透明性が高く,強度,耐熱性,ガスバリア性及び紫外線非透過性を有するので,好適に用いられる。前記ポリエステル系樹脂として,具体的には,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),又はポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)を混合・配合したものであることが好ましい。
【0054】
なお,前記ポリエチレンナフタレート(PEN)は,ポリエチレンテレフタレート(PET)よりも透明性,紫外線非透過性及びガスバリア性に優れている。
【0055】
また,僅かな割合でポリエチレンナフタレート(PEN)をポリエチレンテレフタレート(PET)に混合・配合するだけでも,優れた紫外線(UV)カット効果が得られる。
【0056】
なお,前記ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂に遮光性を付与することで,より一層の紫外線(UV)カット効果を得るようにする。前記,前記ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂に遮光性を付与する方法として,遮光剤を含有するインキを塗装(印刷)して,コーティングする方法,前記遮光剤を前記ポリアミド系樹脂及び前記ポリエステル系樹脂に添加する方法等が挙げられる。
【0057】
前記遮光剤として,従来公知の種々のものが挙げられる。また,輸液バッグ40の目盛や文字が読める程度の透明性が必要な場合は,同程度の透明性が得られる遮光剤を用いればよい。例えば,ヒドロキシベンゾフェノン,ベンゾトリアゾール等の無色の遮光剤や,黄色系遮光剤,赤色系遮光剤等が挙げられる。
【0058】
前記ポリエステル系樹脂についても,前記ポリアミド系樹脂の場合と同様,後述するように,無機酸化物等を蒸着させることにより,ガスバリア性を付与することができる。
【0059】
なお,上述した基材層11として,易裂性を有するフィルムについても好適に使用できる。一軸延伸ポリアミド系フィルム,二軸延伸ポリアミド系フィルムの他,一軸延伸ポリエステル系フィルム,二軸延伸ポリエステル系フィルム等が挙げられるが,易裂性を有していれば,これらに限定されず,また,未延伸のフィルムであってもよい。
【0060】
〔蒸着層〕
蒸着層13は,特に本発明の輸液バッグの外袋10によって収容される輸液バック40に充填された輸液が容易に酸化されやすいために高いガスバリア性が必要とされる場合に,必要に応じて,前記ポリアミド系樹脂又は前記ポリエステル系樹脂からなる基材層11に蒸着し形成するもので,高いガスバリア性が必要とされない場合,及び前述の基材層11によって必要なガスバリア性を得ることができる場合にはこれを省略することができる。
【0061】
本発明において使用される蒸着層13としては,透明性を有しかつ酸素等のガスバリア性,水蒸気バリア性を有するものであればよく,これらの条件を満たすものとして,例えば,酸化アルミニウム(アルミナ),酸化珪素(シリカ),あるいはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着膜が好適に用いられる。なお,透明性より遮光性が重視される場合等においては,アルミニウム箔等の金属箔又はアルミニウム等の金属の蒸着層13を設けることも可能である。
【0062】
蒸着層13を形成する手段としては各種手段を用いることができ,例えば,真空蒸着法により形成することができる。また,この真空蒸着法以外にも,スパッタリング法,プラズマ気相成長法,イオンプレーティング法等を用いてもよい。なお,無機酸化物薄膜層の透明性を上げるために蒸着の際,酸素ガスを吹き込む反応蒸着を行うこともできる。
【0063】
〔補強用フィルム層〕
本発明の輸液バッグの外袋10は,前記基材層11及び前記シーラント層12の2層を積層して構成すること,又は前記基材層11及び前記シーラント層12の2層を積層し前記基材層11に蒸着層13を形成して構成することができるが,必要に応じてさらに補強用フィルム層14を備えた構成とすることができる。
【0064】
補強用フィルム層14は,輸液バッグの外袋として強度,防湿性,耐熱性等が必要とされる場合に必要に応じて設けるもので,高い強度,防湿性,耐熱性等が必要とされない場合,及び前述した基材層11によって必要な強度,防湿性,耐熱性等を得ることができる場合にはこれを省略することができる。
【0065】
補強用フィルム層14には,一例としてポリプロピレン(PP),延伸ポリプロピレン(OPP)が用いられるが,これに限定されない。前記延伸ポリプロピレン(OPP)は防湿性,耐熱性,さらに,強度を有するため好適に用いられる。前記延伸ポリプロピレン(OPP)以外にも,ナイロン(Ny),ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらについて延伸処理を施した延伸ナイロン,延伸ポリエチレンテレフタレート等が使用可能である。
【0066】
なお,上記ポリプロピレン(PP),延伸ポリプロピレン(OPP),ポリエチレンテレフタレート(PET),ナイロン(Ny),延伸ナイロン(ONy)及び延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)は透明性を有するため,本発明の輸液バッグの外袋に透明性が必要である場合にも,好適に用いられる。
【0067】
また,本発明の輸液バッグの外袋10に補強用フィルム層14を設ける場合,上述した基材層11に代えて,この補強用フィルム層14に遮光剤を含有するインキをコーティングすることで,本発明に係る輸液バッグの外袋10に,遮光性を付与することも可能である。
【0068】
〔積層〕
上述した各層を積層して前記包装用フィルム15を形成する方法は,既知の各種の方法を使用して行うことができる。上述のように直接蒸着等によって他の層に積層する場合を除き,例えば,有機溶剤に溶解した接着剤を表面に塗布し,熱風又は加熱によって乾燥させた後,積層対象を重ねて加熱圧着するドライラミネート法,押出機を用い,加熱溶融した樹脂をフィルム状に押し出し,該フィルムが溶融状態にあるうちに他のフィルムと圧着する押出ラミネート法など,既知の各種積層方法を用いることができる。
【0069】
なお,上述した各種積層方法によって,接着層を形成する接着剤に,前記遮光剤を添加することも可能である。
【0070】
積層する順序については,本発明の輸液バッグの外袋10のヒートシール層12として機能するシーラント層12が最内層となるように積層し,前述の基材層11,蒸着層13,補強用フィルム層14の形成順は,特に限定されず,適宜変更することが可能であり,前記蒸着層13及び前記補強用フィルム層14については,前述した通り,必要に応じて設けることができ,又省略することも可能である。
【0071】
〔製袋〕
輸液バッグ40を収容することができる,本発明の輸液バッグの外袋10は,少なくとも,最内層を成す前記シーラント層12,及び前記基材層11の2層から成る前記包装用フィルム15を用いて,2枚の該包装用フィルム15を重合し,又は1枚の該包装用フィルム15を半折して,該包装用フィルム15の内層同士を重ね合わせて,必要周縁部をヒートシールすることで形成する。
【0072】
特に,前記ヒートシールに際しては,一辺をヒートシールせずに,輸液バッグ40の挿入開口4として残し,部分的にシール温度を変えてヒートシールすることで,他辺に2枚のフィルムが重合される開封部8を形成し,該開封部8を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部3を形成し,該強シール部3間に,袋内方に位置する前記弱シール部2上の袋外方に位置する非ヒートシール部6により,舌片12c,12c’を形成する。
【0073】
前記開封部8は,前記非ヒートシール部6の舌片12c,12c’を指で把持して離間する方向に引っ張り,上部ノッチ5,5’を引き裂きの契機として,弱シール部2を剥離することで開封される。
【0074】
前記開封部8の形状,大きさ,位置は任意であるが,輸液バッグ40の使用時においても遮光カバー等として使用できるよう適宜決定する。すなわち,開封部8を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部3を形成し,該強シール部3間に,袋内方に位置する前記弱シール部2上の袋外方に位置する非ヒートシール部6により,舌片12c,12c’を形成する。これにより,前記開封部8の前記非ヒートシール部6の舌片12c,12c’が指で容易に把持できる程度の長さを備える。
【0075】
さらに,本発明の輸液バッグの外袋10に収容された輸液バッグ40の使用時において,前記弱シール部2を剥がし,前記開封部8を開封した際にハンガー43等を挿入することができ,かつ,前記非ヒートシール部6から成る開封部8の開封時における幅方向の長さが,収納する輸液バッグの収納時の幅方向の長さより短く形成し,前記輸液バッグをハンガー43等に掛けても,本発明の輸液バッグの外袋10が前記開封部8を介して輸液バッグ40からすり抜けて落下しないよう形成することができる。
【0076】
これにより,輸液バッグ40を点滴用スタンドに吊り下げた場合に,クリップ等で本発明の輸液バッグの外袋10を保持する必要がなく,そのまま遮光カバー等として使用することができる。
【0077】
また,前記開封部8が,収容される輸液バッグ40の把手用孔41に対応させた位置に設けると,輸液バッグの把手用孔41にハンガー43等を取り付けることが容易となり好ましい。
【0078】
さらに,本発明の輸液バッグの外袋10は,開封部8の開封を容易にするために,前記強シール部3と前記非ヒートシール部6との境界で,前記非ヒートシール部6端縁に舌片12c,12c’の延長線上に上部ノッチ5を形成する。前記上部ノッチ5は,直線状(I字状),U字状,V字状など種々の形状でよいが,ここでは,サイドシール部の一辺の前記強シール部3と前記非ヒートシール部6の境界で,前記非ヒートシール部6の両端縁すなわち舌片12c,12c’に,直線状に前記弱シール部2にわずかに達する,5,5を形成する。
【0079】
また,輸液バッグの外袋10には,保管していた輸液バッグ40を点滴時等で使用する場合に,該輸液バッグ40の輸液排出口42に点滴用チューブを繋ぐために,輸液バッグの外袋10を開口するための下部ノッチ9を上記上部ノッチ5とは別に適宜設ける。
【0080】
前記下部ノッチ9の位置は特に限定されず,収容する輸液バッグ40の輸液排出口42の位置を考慮して適宜に決めることができる。
【0081】
上述より,本発明の輸液バッグの外袋10は,前記弱シール部2がイージーピール可能であり,また,前記上部ノッチ5を設けることで,前記非ヒートシール部6に指を入れ,摘みやすく,前記弱シール部2の剥離が容易なので,前記開封部8を手で容易かつ失敗なく開封することが可能である。
【実施例】
【0082】
本発明の輸液バッグの外袋10の具体例について,図面により詳細に説明する。
【0083】
図1(A)及び図1(B)に示す輸液バッグの外袋10は,上述したシール温度によってシール強度の制御が可能であって透明性を有するフィルムから成るシーラント層12,及び,上述した透明性,遮光性及びガスバリア性を有するフィルムから成る基材層11の2層から成る包装用フィルム2枚(包装用フィルム15,15’)を前記シーラント層が内層となるように重合し,一辺を輸液バッグ40を挿入するための挿入開口4として残して,3辺についてシール温度を部分的に変えてヒートシールすることにより,サイドシール部27,27の強シール部3,3’及び弱シール部2,2’からなる開封部8が形成される。
【0084】
図1(A)及び図1(B)に示すように,前記強シール部3,3’は,前記輸液バッグ10の両側辺から上辺の一部に跨って形成され,前記開封部8は,幅方向両側縁を前記強シール部3,3’に挟まれていて,袋外方に非ヒートシール部6及び袋内方に弱シール部2から成る開封部として形成されている。
【0085】
この輸液バッグの外袋10は,前記弱シール部2はイージーピール可能であって,前記強シール部3,3’は前記弱シール部2より高いシール強度を有した少なくとも前記弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されない強度を有するように段階ヒートシールされている。
【0086】
また,前記開封部8は,前記非ヒートシール部6を指で摘んで,弱シール部2を剥離することで開封される。すなわち,開封部8を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部3を形成し,該強シール部3間に,袋内方に位置する前記弱シール部2上の袋外方に位置する非ヒートシール部6により,舌片12c,12c’を形成する。そして,図1(A)に示すように,非ヒートシール部6と強シール部3,3’との境界の舌片端縁の延長線上に,直線状の上部ノッチ5,5’を設けている。
【0087】
図1(B)において,11,11’は基材層,12,12’はシーラント層で,前記シーラント層12のうち,12a,12a’は強シール部,12b,12b’は弱シール部,また12c,12c’は非ヒートシール部から成る舌片であり,該強シール部と該弱シール部において前記2枚の前記包装用フィルム15,15’を重合接着している。
【0088】
さらに,図1(A)に示す輸液バッグの外袋10の前記開封部8の長手方向距離,すなわち弱シール部2の長手方向距離は,図2に示すように,輸液バッグ40の使用時において,前記弱シール部2を剥がして開封部8を開封して輸液バッグ40の把手用孔41をハンガー43に容易に取り付けることができる程度の距離を有し,ハンガー43に掛けても,本発明の輸液バッグの外袋10が輸液バッグ40からすり抜けて落下しないように規定されている。
【0089】
また,前記非ヒートシール部6は,指を入れて容易に摘むことができる程度の幅方向距離を有するように形成されている。
【0090】
以上により,前記輸液バッグの外袋10は,保管時において収容された輸液バッグ40を点滴時等に使用する際,前記弱シール部2の外側に位置する上部非ヒートシール部6の舌片12c,12c’を指をはさみ,図2に示すように,前記弱シール部2を手で剥がしながら開封部8を開封して,該開封部8を介して輸液バッグ40の把手用孔41をハンガー43に取り付けることができ,外袋保持用のクリップ等を使用せずとも,前記輸液バッグの外袋10をそのまま遮光カバー等として好適に使用することができる。
【0091】
また,この輸液バッグの外袋10は,透明性を有する前記包装用フィルム15,15’から構成されているので,輸液バッグ40の保管,搬送時,使用時においても,酸素,紫外線などによって前記輸液バッグ40に充填された輸液は変質せず,前記輸液バッグの外袋10によって収容又はカバーされた該輸液バッグ40の中身の状態,残量,輸液バッグ40に記載された目盛り,文字等を視認することが可能である。
【0092】
〔シーラント層12〕
本発明の輸液バッグの外袋10を構成するシーラント層12として使用が可能なフィルムとして,一例として,前記エチレン系アイオノマーを用いた三井・デュポンポリケミカル(株)製「AD8273」が挙げられる。
【0093】
三井・デュポンポリケミカル(株)製「AD8273」をシーラント層12として使用してシール温度を変化させてヒートシールすると,弱シール部2を形成するシール温度領域では,イージーピール性を示し,強シール部3を形成するシール温度領域では,前記弱シール部2より高いシール強度が発現される。
【0094】
三井・デュポンポリケミカル(株)製「AD8273」についてのシール温度とシール強度の関係を示すものを図18のグラフ(Dai Nippon Printig Co., Ltd 「展示会レポート : 東京パック展2006」〈http://packaging.jp/modules/exhibition/category-1.html〉から引用)に示す。グラフでは,三井・デュポンポリケミカル(株)製「AD8273」が,イージーピール可能な弱シール温度領域2aと,前記弱シール温度領域2aより高いシール強度を有する強シール温度領域3aの二つのシール強度の安定域を有することを示している。
【0095】
換言すると,一の材料で,イージーピール可能な弱シール部2を形成する弱シール温度領域と,前記弱シール部2より高いシール強度を有する強シール部3を形成する強シール温度領域を有しているので,弱シールと強シールの段階ヒートシールが可能で,シール強度に対応するシール温度の制御が可能である。
【0096】
なお,弱シール温度領域と強シール温度領域の中間もしくは競合する温度領域は本発明の強弱シールの温度領域に含み多段階のシール強度が実現できる。
【0097】
前記エチレン系アイオノマー樹脂を用いたフィルムとしては,上述した三井・デュポンポリケミカル(株)製「AD8273」の他に,例えば,三井・デュポンポリケミカル(株)製「ハイミラン(登録商標)NT07018」等が,上述した通り,少なくとも,容易に剥離可能(イージーピール可能)な弱シール温度領域2aと前記弱シール温度領域2aより高いシール強度を有する強シール温度領域3aとの二以上のシール強度の安定域及びこれに対応するシール温度領域を有し,シール温度に対するシール強度の制御がより容易であるので,好適に用いられるが,前記シール強度安定域またこれに対応するシール温度領域を有していなくとも,少なくともシール温度を変えることによってシール強度を制御することが可能であれば,これに限定されない。
【0098】
〔基材層〕
また,前記基材層11に使用可能なフィルムとしての,ポリアミド系樹脂としては,特に限定されず,各種ポリアミド(ナイロン)を使用でき,例えばポリアミド46(ナイロン46),ポリアミド6(ナイロン6),ポリアミド66(ナイロン66),ポリアミド610(ナイロン610),ポリアミド612(ナイロン612),ポリアミド6/66(ナイロン6/66),ポリアミド6/12(ナイロン6/12),ポリアミド6T(ナイロン6T),ポリアミド11(ナイロン11),ポリアミド12(ナイロン12),ポリアミド1212(ナイロン1212),ナイロンMXD6(ポリアミドMXD6),ポリアミドイミド,スーパータフナイロン,非晶ナイロン,Kコートナイロン(PVDCコートナイロン),非塩素・非金属系素材をコーティングしたバリアコートナイロン等が使用できる。特に,ナイロンMXD6(ポリアミドMXD6),非晶ナイロン,Kコートナイロン(PVDCコートナイロン)及び非塩素・非金属系素材をコーティングしたバリアコートナイロンは水蒸気バリア性及びガスバリア性を有するため,好適に用いられる。また,輸液バッグの目盛や文字が読める程度の透明性が必要な場合は,上述した各種ポリアミドのうち透明性を有するものが,好適に用いられる。
【0099】
さらに,基材層として,出光石油化学(株)製「ユニアスロンTB1000」,ユニチカ(株)製「エンブレムNC」等の二軸延伸ポリアミド系フィルムの他,一軸延伸ポリエステル系フィルム,ユニチカ(株)製「エンブレットPC」等の二軸延伸ポリエステル系フィルム等が挙げられるが,易裂性を有する未延伸のフィルムでもよい。
【0100】
〔使用方法〕
次に,前記輸液バッグの外袋10の使用方法の一例について説明する。前記輸液バッグの外袋10に輸液バッグ40を収容して保管,搬送する際は,図1(A)及び図1(B)に示す輸液バッグの外袋10に,図3に示すように,輸液バッグ40の把手用孔41を上にして挿入開口4より図3のように挿入し,該挿入開口4より吸引して本発明の輸液バッグの外袋10内を真空状態にして,該挿入開口4を真空シールし,完全密封して保管,搬送する。
【0101】
これにより,前記輸液バッグ10に収容された前記輸液バッグ40は,酸素や紫外線(UV)によって前記輸液バッグに充填された輸液が変質されず,好適に保管,搬送される。
【0102】
なお,真空シール部7については,シール温度を適宜変えてヒートシールすることによってイージーピール可能なシール,または完全シールとすることもでき,特に限定されない。
【0103】
前記真空シール部7が,手で剥離することができない程度の強度を有する場合は,図4に示すように,あらかじめ輸液バッグの外袋10の両側辺の下部に下部ノッチ9を設け,該下部ノッチから手で引き裂く構成とすることができる。この場合,基材層11には,易裂性を有するフィルムが使用される。
【0104】
前記下部ノッチ9の位置は,図5では,真空シール部7の位置よりやや上部に設けられているが,前記下部ノッチ9から引き裂いた後,輸液バッグの外袋10が,図5に示す輸液バッグ10の縦方向全体をカバーできる程度の長さを確保できる位置であれば,特に限定されない。
【0105】
そして,点滴時など保管した輸液バッグ40を使用する際には,図2に示すように,手で弱シール部2を剥がして開封し,前記輸液バッグ40の把手用孔41をハンガー43に取り付け,次いで,真空シール部7を,剥離又は引き裂いて開口し,図示せざる点滴チューブを輸液バッグ40の輸液排出口42に繋いで点滴を行う。
【0106】
本発明の輸液バッグの外袋10の別の実施形態は,図6に示すように,輸液バッグ40の把手用孔41が中央ではなく両端部いずれかにある場合に,好適に使用できるように,輸液バッグの外袋10の弱シール部2の位置を輸液バッグ40の把手用孔41に対応させた位置に適宜設けることができる。
【0107】
本発明の輸液バッグの外袋10の別の実施形態は,図7に示すように,1枚の包装用フィルム15を半折して,該包装用フィルム15の内層同士を重ね合わせて,必要周辺部を前記段階ヒートシールすることによって,弱シール部2及び非ヒートシール部6から成る開封部8,及び強シール部3が形成されたもので,この実施形態にかかる輸液バッグの外袋10は,挿入開口4の位置が,該輸液バッグの外袋10の下辺に設けられている。
【0108】
本発明の輸液バッグの外袋10の別の実施形態は,図8に示すように,輸液バッグの外袋10の形状が矩形状ではなく,略円形である。
【0109】
図9(A)は,本発明の輸液バッグの外袋10の別の実施形態を示す図で,図9(B)は図9(A)におけるB−B線の断面図である。本発明の輸液バッグの外袋10の別の実施形態は,図9(B)に示すように,輸液バッグの外袋10を構成する包装用フィルム15が,上述したシール温度によってシール強度の制御が可能であって透明性を有するフィルムから成るシーラント層12,及び,上述した透明性,遮光性及びガスバリア性を有するフィルムから成る基材層11,該基材層11に上記酸化アルミニウム(アルミナ)等を蒸着した透明性を有する蒸着層13,上記延伸ポリプロピレン等を使用した透明性を有する補強用フィルム層14から成り,シーラント層12,基材層11,蒸着層13,補強用フィルム層14の順序で積層して形成されていて,透明性を有しながらも,優れた強度,遮光性,ガスバリア性,水蒸気バリア性,耐熱性等を有している。
【0110】
また,前記輸液バッグの外袋10は,前記4層から成る包装用フィルム2枚(包装用フィルム15,15’)を前記シーラント層12が内層となるように重合し,一辺を輸液バッグ40を挿入するための挿入開口4として残して,3周辺部についてシール温度を部分的に変えてヒートシールすることにより,強シール部3,3’及び開封部8が形成されている。
【0111】
図1(A)及び図1(B)に示すように,前記強シール部3,3’は,前記輸液バッグの外袋10の両側辺から上辺の一部に跨って形成され,前記開封部8は,幅方向両側縁を前記強シール部3,3’に挟まれていて,袋外方に非ヒートシール部6及び袋内方に弱シール部2から成る開封部として形成されている。
【0112】
この輸液バッグの外袋10は,前記弱シール部2はイージーピール可能であって,前記強シール部3,3’は少なくとも前記弱シール部2を剥離する際に同時に剥離されない強度を有するよう段階ヒートシールされている。また,前記開封部8は,前記非ヒートシール部を指で摘んで,弱シール部2を剥離することで開封される。
【0113】
図9(B)は,上述したように,図9(A)におけるB−B線の断面図である。11,11’は基材層,12,12’はシーラント層,13,13’は蒸着層,14,14’は補強用フィルム層である。また,前記シーラント層12のうち,12a,12a’は強シール部,12b,12b’は弱シール部,また12c,12c’は非ヒートシール部から成り,該強シール部と該弱シール部において前記2枚の前記包装用フィルム15,15’が重合接着されている。
【0114】
また,図9(A)に示すように,この輸液バッグの外袋10には,前記弱シール部2の外側に位置する非ヒートシール部6と強シール部3,3’との境界に,線上(I字状)の上部ノッチ5,5’を設けている。
【0115】
さらに,図9(A)に示す輸液バッグの外袋10の前記開封部8の長手方向距離,すなわち弱シール部2の長手方向距離は,図10に示すように,輸液バッグ40の使用時において,前記弱シール部2を剥がして開封部8を開封して輸液バッグ40の把手用孔41をハンガー43に容易に取り付けることできる程度の距離を有し,ハンガー43に掛けても,本発明の輸液バッグの外袋10が輸液バッグ40からすり抜けて落下しないように規定されている。
【0116】
また,前記非ヒートシール部6は,指を入れて容易に摘むことができる程度の幅方向の距離を有するように形成されている。
【0117】
以上により,前記輸液バッグの外袋10は,保管,搬送時において収容された輸液バッグ40を点滴時等に使用する際,前記弱シール部2の外側に位置する上部非ヒートシール部6に指を入れて摘み,図10に示すように,前記弱シール部2を手で剥がしながら開封部8を開封して,該開封部8を介して輸液バッグ40の把手用孔41をハンガー43に取り付けることができ,外袋保持用のクリップ等を使用せずとも,前記輸液バッグの外袋10をそのまま遮光カバー等として好適に使用することができる。
【0118】
また,この輸液バッグの外袋10は,透明性を有しながらも,優れた強度,遮光性(紫外線非透過性),ガスバリア性,水蒸気バリア性,耐熱性等を有する包装用フィルム15,15’から構成されているので,輸液バッグ40の保管,搬送,使用時においても,酸素,紫外線などによって前記輸液バッグ40に充填された輸液は変質せず,さらに,前記輸液バッグの外袋10によって収容又はカバーされた該輸液バッグ40の状態,目盛及び文字等を視認することが可能である。
【符号の説明】
【0119】
2 弱シール部
2a 弱シール温度領域
3 強シール部
3a 強シール温度領域
4 挿入開口(非シール部)
5 上部ノッチ
6 非ヒートシール部
7 真空シール部
8 開封部
9 下部ノッチ
10 輸液バッグ40の外袋
11 基材層
11’ 基材層
12 シーラント層(ヒートシール層)
12’ シーラント層(ヒートシール層)
12a 強シール部
12a’強シール部
12b 弱シール部
12b’ 弱シール部
12c 舌片(非ヒートシール部)
12c’ 舌片(非ヒートシール部)
13 蒸着層
13’ 蒸着層
14 補強用フィルム層
14’ 補強用フィルム層
15 包装用フィルム(フィルム)
15’ 包装用フィルム(フィルム)
20 従来の汚染防止袋(本願の外袋10に対応)
21 上辺ヒートシール部
22 ハンガー掛止口
23 挿入口
24 上部Vノッチ
25 下部Vノッチ
26 ハンガー掛止部
27 サイドシール部
28 下辺ヒートシール部
29 薬液混入口
30 薬液排出口
31 ハンガー
32 点滴用チューブ
40 輸液バッグ(点滴用包装容器)
41 把手用孔
42 輸液排出口
43 ハンガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺に輸液バッグの挿入開口を有し,他辺に2枚のフィルムが重合される開封部を有する輸液バッグの外袋において,
少なくとも,シーラント層及び基材層の2層からなり,
前記シーラント層は,最内層を成すヒートシール層から成り,
前記ヒートシール層は,弱シール部と,前記弱シール部より高いシール強度を有する強シール部とから成り,
前記開封部は,該開封部を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部を配置し,
前記強シール部間に,袋内方に位置する弱シール部と,袋外方に位置する非ヒートシール部から成り,
前記一辺の前記強シール部と前記非ヒートシール部の境界で,前記非ヒートシール部の少なくとも一方の端縁に,上部ノッチを形成したことを特徴とする輸液バッグの外袋。
【請求項2】
前記ヒートシール層は,弱シール部を形成するシール温度領域と,前記弱シール部より高いシール強度を有した少なくとも前記弱シール部を剥離する際に同時に剥離されない強シール部を形成するシール温度領域とを有するフィルムで形成したことを特徴とする請求項1記載の輸液バッグの外袋。
【請求項3】
前記非ヒートシール部から成る開封部は,開封時における幅方向の長さが,収納する輸液バッグの収納時の幅方向の長さより短く形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の輸液バッグの外袋。
【請求項4】
前記開封部を成す一辺の幅方向両側縁に前記強シール部を形成し,該強シール部間に,袋内方に位置する前記弱シール部上の袋外方に位置する非ヒートシール部により,舌片を形成したことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の輸液バッグの外袋。
【請求項5】
前記弱シール部は,シール強度が1〜7N/15mmであり,前記強シール部のシール強度は,シール強度が10N/15mm以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の輸液バッグの外袋。
【請求項6】
前記弱シール部は,100〜160℃のシール温度でヒートシールされていて,前記強シール部は125℃以上のシール温度でヒートシールされていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の輸液バッグの外袋。
【請求項7】
前記シーラント層及び前記基材層は,透明性を有し,前記基材層は,ガスバリア性,遮光性(紫外線非透過性)を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の輸液バッグの外袋。
【請求項8】
前記基材層は,ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂から成り,前記シーラント層は,エチレン系アイオノマー又はエチレンと他のモノマーとを共重合させたポリエチレン共重合体の樹脂から成るフィルムにより形成することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の輸液バッグの外袋。
【請求項9】
前記基材層に,酸化アルミニウム(アルミナ),酸化珪素(シリカ)の蒸着膜から成る蒸着層及び/又はポリプロピレン(PP)フィルム,延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム,ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム,ナイロン(Ny)フィルム,延伸ナイロン(ONy)フィルム,延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)フィルムから成る補強用フィルム層を設けたことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の輸液バッグの外袋。
【請求項10】
前記補強用フィルム層には、遮光剤を含有するインキをコーティングすることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の輸液バッグの外袋。
【請求項11】
前記挿入開口に臨み,両側辺の強シール部に下部ノッチを設けることを特徴とする請求項1記載の輸液バッグの外袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−143111(P2011−143111A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7286(P2010−7286)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(390004709)カイト化学工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】