輸液ポンプ
【課題】輸液チューブのへたりを抑えることができ、輸液の流量誤差を抑制する輸液の流量精度の誤差を抑制することが可能な輸液ポンプを提供する。
【解決手段】輸液チューブTを押圧する押圧フィンガ21を有する輸液ポンプにおいて、押圧フィンガ21が最前進位置にあるときに、その押圧フィンガ21の押圧突部21bにて輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、チューブ両端部が押圧されないようにする。このような構成により、輸液チューブTの両端部に生じる応力やひずみを小さくすることができ、輸液チューブTのへたりを抑制することができる。しかも、押圧フィンガ21にて輸液チューブの中央部を完全に圧閉する構成であるので、押圧フィンガ21のストロークに誤差があっても、そのストローク誤差は押圧板(緩衝板)6にて吸収されるので、輸液の流量誤差を抑制することができる。
【解決手段】輸液チューブTを押圧する押圧フィンガ21を有する輸液ポンプにおいて、押圧フィンガ21が最前進位置にあるときに、その押圧フィンガ21の押圧突部21bにて輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、チューブ両端部が押圧されないようにする。このような構成により、輸液チューブTの両端部に生じる応力やひずみを小さくすることができ、輸液チューブTのへたりを抑制することができる。しかも、押圧フィンガ21にて輸液チューブの中央部を完全に圧閉する構成であるので、押圧フィンガ21のストロークに誤差があっても、そのストローク誤差は押圧板(緩衝板)6にて吸収されるので、輸液の流量誤差を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の薬液を体内に注入する場合などに用いる輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプとしては、フィンガ式(ペリスタルティック式)の輸液ポンプがある。フィンガ式輸液ポンプは、例えば、複数のフィンガと押圧板との間に輸液チューブを配置した状態で、各フィンガを輸液チューブに対して進退駆動させ、各フィンガで輸液チューブを順次押しつぶしていくことにより輸液を送り出す方式の輸液ポンプである。
【0003】
輸液ポンプとしては、上記したフィンガ式の輸液ポンプなどのように、フィンガで輸液チューブを完全に圧閉する方式(フルプレス方式)の輸液ポンプがある(例えば、図18(A)参照)。
【0004】
また、送液を行うフィンガで輸液チューブを完全に圧閉しない中間圧閉方式(半閉塞方式)の輸液ポンプが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。半閉塞方式の輸液ポンプは、例えば、輸液チューブを完全につぶさずに送液を行う押圧フィンガ(例えば、図18(B)参照)と、この押圧フィンガの輸液送り方向の上流側と下流側にそれぞれ配置され、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う上流側バルブフィンガ及び下流側バルブフィンガなどを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3595136号公報
【特許文献2】特開昭55−005485号公報
【特許文献3】特開2008−113726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、輸液ポンプにあっては、送液を行うフィンガのストロークに誤差が生じる場合がある。フィンガスロークの誤差は送液の流量誤差の要因となるが、フルプレス方式の輸液ポンプの場合、押圧板(緩衝板;図18(A)参照)によってフィンガスローク誤差を吸収することができるので、輸液流量の誤差が生じにくい。ただし、フルプレス方式の輸液ポンプでは、チューブ圧閉の際に輸液チューブの両端部(幅方向の両端部)に大きな応力がかかるため、輸液チューブのへたり(輸液チューブの扁平状の変形)が生じやすいという課題がある。
【0007】
これに対し、半閉塞方式の輸液ポンプでは、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して輸液チューブのへたりを低減することができるものの、フィンガストロークの誤差に起因する輸液流量の誤差が生じやすい。すなわち、半閉塞方式の輸液ポンプでは、押圧フィンガで輸液チューブを完全に圧閉するのではなく、押圧フィンガを途中で止めているので(図18(B)参照)、フィンガストロークに誤差があると、押圧フィンガにて押しつぶされる輸液チューブの断面積の変化量が異なってしまい、輸液流量に誤差が生じる場合がある。具体的に説明すると、図17(A)及び(B)に示すように、押圧フィンガにて輸液チューブが押しつぶされる量(フィンガストローク)をΔdとすると、押しつぶされた輸液チューブの断面積(肉厚含む)の変化量は[πΔd2/4]となり(図17に記載の計算式参照)、押しつぶし量Δd(フィンガストローク)に2乗に比例する。したがって、押圧フィンガのストロークに誤差があると、チューブ断面積の変化量は、ストローク誤差の2乗に比例して変動することになり、送液流量に大きな誤差が生じるようになる。
【0008】
また、半閉塞方式の輸液ポンプは、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して吸引力が弱いため、輸液(薬液)の粘度による影響を受けやすい。つまり、輸液の粘度が高くなると、輸液の流量が低下しやすくなる傾向がある。
【0009】
以上のように、フルプレス方式の輸液ポンプでは、輸液チューブのへたりが生じやすいという課題があり、半閉塞方式の輸液ポンプでは、フィンガストロークの誤差等に起因する輸液の流量誤差が生じやすいという課題がある。
【0010】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、輸液チューブのへたりを抑えることができ、輸液の流量誤差を抑制することが可能な輸液ポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、輸液チューブを押圧して当該輸液チューブ内の輸液を送液するポンプ機構を備えた輸液ポンプにおいて、前記ポンプ機構は、輸液チューブに対して進退移動が可能に設けられ、その前進移動の際に輸液チューブを押圧する押圧フィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の上流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う上流側バルブフィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の下流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う下流側バルブフィンガとを備えている。そして、前記押圧フィンガには、輸液送り方向(輸液チューブの長手方向)に沿って延びる押圧部(押圧突部)が設けられており、当該押圧フィンガが最前進位置にあるときに前記押圧部にて輸液チューブの幅方向の中央部のみが完全に圧閉されるように構成されていることを技術的特徴としている。
【0012】
本発明によれば、押圧フィンガの押圧部によって輸液チューブの幅方向の中央部のみを完全に圧閉するようにしているので、輸液チューブを押しつぶす際に、応力が集中しやすいチューブ両端部が押圧されなくなる。これにより、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して、輸液チューブの両端部に生じる応力やひずみを小さくすることができ、輸液チューブのへたりを抑制することができる。しかも、押圧フィンガにて輸液チューブの中央部のみを完全に圧閉する方式であるので、フィンガストロークに誤差があっても、そのストローク誤差は押圧板(緩衝板)にて吸収される。これによって輸液の流量誤差を抑制することができる。
【0013】
本発明において、押圧フィンガの押圧部(押圧突部)の中心と輸液チューブの幅方向の中心とを位置合せする位置合せ手段を設けておくことが好ましい。
【0014】
その位置合せ手段の具体的な例として、押圧フィンガに設けられた傾斜面と、押圧フィンガの進退移動の方向に対して直交する一方向のみに進退移動が可能な従フィンガとを備え、前記押圧フィンガの傾斜面を、前記進退移動方向に対して斜めに傾斜する傾斜面とするとともに、前記従フィンガには、前記押圧フィンガの傾斜面との摺動が可能であって、その押圧フィンガの傾斜面との摺動により当該従フィンガを前記直交一方向に移動する傾斜面を設ける。そして、押圧フィンガが進退移動するときに、その押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動し、従フィンガが押圧フィンガの移動に連動して、前記直交一方向に移動するという構成の位置合せ機構を挙げることができる。
【0015】
この位置合せ機構において、押圧フィンガが最後退位置にあるときに、その押圧フィンガの先端が輸液チューブ(真円状態)の外周面に対応する位置(チューブ外周面に接触する位置)に配置されるとともに、従フィンガの先端が輸液チューブの外周面に対応する位置(チューブ外周面に接触する位置)に配置されるように構成することが好ましい。
【0016】
そして、このような位置合せ機構を設けることにより、押圧フィンガの押圧部(押圧突部)の中心と輸液チューブの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。この点について以下に説明する。
【0017】
まず、図15(A)に示すように、真円状態の輸液チューブTの外径(直径)dとすると、その円周長はdπとなる。一方、図15(B)に示すように、輸液チューブTが押しつぶされ、その押しつぶし量をΔdとすると、輸液チューブTの円弧部長は[(d−Δd)π]となり、輸液チューブTの直線部長W1は、
W1=[dπ−(d−Δd)π]/2=Δdπ/2となる。そして、輸液チューブTの全幅W2は、
W2=Δdπ/2+(d−Δd)
=(π/2−1)Δd+d ・・・(1)
となる。この式(1)から明らかなように、輸液チューブTの全幅W2は、押しつぶし量Δdに比例する(輸液チューブの周長が変わらないと仮定)。つまり、押圧フィンガの最後退位置に対する移動位置(押しつぶし量)と、その押圧フィンガにて変形する輸液チューブTの全幅(従フィンガの先端を合わせる部分の幅)とは比例関係にある。このような点に着目して、本発明では、押圧フィンガの進退移動にて変形する輸液チューブの全幅変化に連動して従フィンガが進退移動するようにしている。
【0018】
具体的には、押圧フィンガに、進退移動方向に対して斜めに傾斜する傾斜面(上記式(1)の関係を考慮した傾斜角度の傾斜面)を設けるとともに、従フィンガには、押圧フィンガの傾斜面との摺動が可能な傾斜面を設ける。そして、押圧フィンガが前進移動する際に、従フィンガが輸液チューブの全幅の変化(増大)に比例して後退移動し、押圧フィンガが後退移動する際に、従フィンガが輸液チューブの全幅の変化(縮小)に比例して前進移動するように構成している。このような構成により、押圧フィンガの進退移動過程において、従フィンガの先端が輸液チューブの外周面(側面)に対応する位置に配置されるようになる。これにより、押圧フィンガによる輸液チューブの押圧過程において、輸液チューブの位置が従フィンガの先端によって規制(位置決め)されるので、押圧フィンガの押圧部(押圧突部)の中心と輸液チューブの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。
【0019】
このような位置合せ機構を設ける場合、1つの押圧フィンガに対して一対の従フィンガを設けておくことが好ましい。この場合、押圧フィンガに、進退移動方向に対して互いに逆向きに傾斜するテーパ状の一対の傾斜面を設けるとともに、その押圧フィンガの各傾斜面との摺動が可能な傾斜面を有する一対の従フィンガを設けるという構成を採用する。
【0020】
ここで、上記位置合せ機構において、従フィンガの傾斜面を、押圧フィンガの傾斜面に押圧する弾性部材(例えば圧縮コイルばね)を設け、押圧フィンガが後退する際に、前記弾性部材の弾性力によって、従フィンガの傾斜面が押圧フィンガの傾斜面に押圧されて、押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動するように構成してもよい。
【0021】
また、押圧フィンガと従フィンガとを摺動自在に連結する連結手段を設け、押圧フィンガが後退移動する際に、前記連結手段の連結により押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動するように構成してもよい。この場合、連結手段としては、T溝とT型スライダとを組み合わせた機構や、蟻溝と蟻型スライダとを組み合わせた機構などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、輸液チューブを押しつぶす際に、押圧フィンガの押圧部にて輸液チューブの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、チューブ両端部が押圧されないように構成しているので、輸液チューブのへたりを抑えることができ、輸液の流量誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の輸液ポンプの一例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の輸液ポンプの一例を示す概略構成図である。この図2では輸液ポンプの扉を開いた状態を示している。
【図3】図1の輸液ポンプに適用するポンプ機構の正面図である。
【図4】図3のX−X矢視図である。なお、図4では一部を切断して示している。
【図5】ポンプ機構を構成する上流側バルブ部、センタープレス部及び下流側バルブの側面図である。
【図6】センタープレス部を構成する押圧フィンガ及び従フィンガのみを抽出して示す斜視図である。
【図7】図5に示すポンプ機構の動作説明図である。
【図8】図5に示すポンプ機構の動作説明図である。
【図9】図4に示すセンタープレス部の位置合せ機構の動作説明図である。
【図10】図4に示すセンタープレス部の位置合せ機構の動作説明図である。
【図11】輸液チューブを押しつぶした際のチューブ断面積の変化と応力との関係を示すグラフ(A)、及び、チューブ断面積の変化とひずみとの関係を示すグラフ(B)を併記して示す図である。
【図12】押圧フィンガと従フィンガとを摺動自在に連結する連結手段の例を示す断面図である。
【図13】位置合せ手段の一例を示す縦断面図である。
【図14】位置合せ手段の他の例を示す縦断面図である。
【図15】輸液チューブの押しつぶし量Δdと全幅W2との関係の説明図である。
【図16】図4に示すセンタープレス部の押圧フィンガ及び従フィンガの傾斜面の傾斜角度の説明図である。
【図17】輸液チューブの押しつぶし量Δdと輸液チューブの断面積の変化量との関係の説明図である。
【図18】フルプレス方式の輸液ポンプの一例を部分的に示す図(A)、及び、半閉塞方式の輸液ポンプの一例を部分的に示す図(B)を併記して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明の輸液ポンプの一例について図1〜図10を参照して説明する。
【0026】
この例の輸液ポンプ1は、センタープレス方式の輸液ポンプであって、ポンプ本体(ケーシング)11と、このポンプ本体11の前面側(チューブ取付位置)を閉鎖する扉12とを備えている。扉12はヒンジ13,13を介してポンプ本体11に揺動自在(回転自在)に支持されており、ポンプ本体11の前面側を完全に閉鎖する位置から、完全開放位置(例えば、180°開く位置)までの間において揺動可能となっている。
【0027】
ポンプ本体11及び扉12には、扉12を閉めたときに、その閉塞状態を保持するための扉ロック機構14が設けられている。扉ロック機構14は、ドアロックレバー141及びフック142などによって構成されており、扉12を閉鎖した状態でドアロックレバー141を回動操作してフック142に引っ掛けることによって扉12を閉鎖状態にロックすることができる。
【0028】
ポンプ本体11にはチューブ装着ガイド(ガイド溝)111が設けられている。チューブ装着ガイド111は、輸液送り方向の上流側から順に、上流側ガイド部111a、この上流側ガイド部111aから矩形状に拡大したポンプ部111b、及び、下流側ガイド部111cを備えている。ポンプ部111bには、後述するポンプ機構2の上流側バルブフィンガ31、押圧フィンガ21、一対の従フィンガ23,23、及び、下流側バルブフィンガ41が臨んでいる。なお、ポンプ本体11の前面壁110には、押圧フィンガ21及び一対の従フィンガ23,23に対応する位置に開口部110aが設けられており、また、上流側バルブフィンガ31及び下流側バルブフィンガ41に対応する位置にそれぞれ開口部110b,110cが設けられている。
【0029】
チューブ装着ガイド111の上流側ガイド部111aは、横方向に湾曲した形状(曲り形状)に形成されている。また、ポンプ部111bの下流側の下流側ガイド部111cは上下方向に直線状に延びる形状に形成されている。上流側ガイド部111aの溝幅及び下流側の下流側ガイド部111cの溝幅は、それぞれ、薬液バッグに接続される輸液チューブ(例えば、ポリ塩化ビニルやポリブタジエン製)Tの外径に対応する大きさとなっており、これら上流側ガイド部111a及び下流側ガイド部111cに輸液チューブTを嵌め込むことによって、輸液ポンプ1に輸液チューブTを装着することができる。
【0030】
上流側ガイド部111aにはチューブクランプ112が設けられている。チューブクランプ112は、輸液ポンプ1へのチューブ装着時に、輸液チューブTを一時的に保持する部材であり、チューブ装着後に扉12を閉じた際に自動的にクランプが解除されるようになっている。なお、チューブクランプ112の近傍には、クランプレバー(図示せず)が設けられており、輸液チューブTの装着の際に、そのクランクレバーを操作することによりチューブクランプ112を開放状態にすることができる。
【0031】
扉12の内面側には押圧板6が設けられている。押圧板6は、ポンプ機構2(上流側バルブフィンガ31、押圧フィンガ21及び下流側バルブフィンガ41等)に対応する位置に配置されている。この押圧板6は、扉12を閉じた状態で、最後退位置にある状態の押圧フィンガ21及び各バルブフィンガ31,41の先端に対して、輸液チューブTの外径に対応する間隔をあけて対向するようになっている。なお、押圧板6は、ベース板62に緩衝シート61を介して保持されており(図4等参照)、緩衝板として機能する。
【0032】
以上の構成の輸液ポンプ1に輸液チューブTをセットする際には、扉12を開き、薬液バッグに接続された輸液チューブTを、[上流側ガイド部111a]→[チューブクランプ112]→[ポンプ部111b]→[下流側ガイド部111c]の順に嵌め込むことによって輸液チューブTを装着する。このようなチューブ装着が終了した後に、扉12を閉め、扉ロック機構14によって扉12を閉鎖状態にロックすることにより、輸液チューブTのセッティングを完了する。なお、この例では、上述したように、扉12を閉塞した状態では、上流側ガイド部111aのチューブクランプ112は開放される。また、輸液完了後などにおいて、扉12を開いたときには、チューブクランプ112によって輸液チューブTが閉塞され、輸液の自由落下であるフリーフローが防止される。
【0033】
−ポンプ機構−
次に、ポンプ機構2の具体的な例について図3〜図6を参照して説明する。
【0034】
ポンプ機構2は、センタープレス部20、上流側バルブ部30、及び、下流側バルブ部40などを備えている。
【0035】
センタープレス部20は、押圧フィンガ(主フィンガ)21、アクチュエータ22、左右一対の従フィンガ23,23、スライド支持部材24,24、及び、圧縮コイルばね25,25などによって構成されている。
【0036】
押圧フィンガ21は、断面矩形の部材であって、左右の側面に一対の傾斜面21a,21aが設けられている。この一対の傾斜面21a,21aは、押圧フィンガ21の進退移動方向(中心軸CL1方向)に対して互いに逆向きに傾斜する傾斜面であって、押圧フィンガ21の先端に向かうにしたがって二面間距離が縮小するテーパ状の傾斜面である。この押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aは互いに逆向きの傾斜面であるが、これら傾斜角度(中心軸CL1に対する傾斜角度)は同じである。傾斜面21a,21aの傾斜角度については後述する。
【0037】
押圧フィンガ21は、その中心軸CL1が、上記ポンプ本体11の前後方向(ポンプ本体11に装着した輸液チューブTの長手方向と直交する方向(ポンプ本体11の前面壁110と直交する方向))に沿って配置されている。押圧フィンガ21は、ガイド部材5(図5参照)にスライド自在に支持されており、上記ポンプ本体11の前後方向に進退移動が可能となっている。ガイド部材5はポンプ本体11に支持固定されている。
【0038】
押圧フィンガ21の先端部には押圧突部21bが設けられている。押圧突部21bは、輸液送り方向(ポンプ本体11に装着した輸液チューブTの長手方向)に沿って一様幅(一様断面)で延びる突部であり、先端がアール形状(断面半円形状)に形成されている。押圧突部21bの幅方向(図4に示すCL2方向)の中心は、押圧フィンガ21の中心軸CL1と一致しており、図4及び図9(A)に示すように、上記ポンプ本体1に装着した輸液チューブTの幅方向の中心と一致するようになっている。
【0039】
押圧フィンガ21の後端部にはアクチュエータ22が連結されている。このアクチュエータ22の駆動によって押圧フィンガ21が進退移動(前進移動または後退移動)され、押圧フィンガ21が最後退位置にあるときには、図4及び図5などに示すように、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端が上記ポンプ本体11に装着された輸液チューブT(真円状態)の外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、この状態(最後退位置にある状態)から、押圧フィンガ21が前進移動すると、その前進移動過程で輸液チューブTが押圧される。
【0040】
そして、押圧フィンガ21が最前進位置にある状態のときに、図8(A)及び図9(C)に示すように、その押圧フィンガ21の押圧突部21bによって輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉されるように、アクチュエータ22による押圧フィンガ21の進退移動のストロークが設定されている。具体的には、押圧フィンガ21が最前進位置(チューブ中央部を完全に圧閉する位置)にある状態のときに、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端と押圧板6の前面との間の間隔Gaが、輸液チューブTの肉厚tの2倍よりも所定量だけ小さい寸法(Ga<2t)となるように、押圧フィンガ21のストロークが設定されている。より詳細には、押圧フィンガ21のストロークのばらつき(ストローク誤差)、及び、扉12を閉じた状態(扉ロック状態)での押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端と押圧板6(前面)との間隔のばらつきなどを考慮して、上記間隔Gaが常に[Ga<2t]を満足するように押圧フィンガ21のストロークが設定されている。
【0041】
押圧フィンガ21を進退移動するアクチュエータ22としては、例えば、押圧フィンガ21を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた公知の機構や、電動モータと回転−並進機構(例えばラックアンドピニオン)とを組み合わせた公知の機構を挙げることができる。また、ソレノイドを駆動源とするアクチュエータなどを挙げることができる。
【0042】
一対の従フィンガ23,23は、押圧フィンガ21の側方(押圧フィンガ21を挟んだ両側)に配置されている。一対の従フィンガ23,23は、同一の形状・寸法であって、左右対称に配置されている。各従フィンガ23,23は断面矩形の部材であり、その先端部(押圧フィンガ21側の端部)に、上記押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと摺動する傾斜面23a,23aが設けられている。この従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aの傾斜角度についても後述する。
【0043】
従フィンガ23,23は、その各中心軸CL2が、上記押圧フィンガ21の中心軸CL1と直交する方向(ポンプ本体11の前面壁110と平行な方向)に沿って配置されている。また、従フィンガ23,23には、中心軸CL2に沿って延びるガイド穴23c,23cが設けられている。この各ガイド穴23c,23cの内径は、後述するガイドロッド242,242の外径よりも所定量だけ大きく設定されており、従フィンガ23,23がガイドロッド242,242に対してスライド可能となっている。各ガイド穴23,23には、後述するスライドキー243,243がスライド可能なキー溝23d,23dが設けられている。
【0044】
従フィンガ23,23は、スライド支持部材24,24にスライド自在に支持されている。スライド支持部材24,24は、ベース部材241,241とガイドロッド242,242とが一体的に設けられている。ガイドロッド242,242の中心は、中心軸CL2に沿っている。ベース部材241,241はポンプ本体11に支持固定されている。
【0045】
ガイドロッド242,242には、キー溝242a,242aが加工されており、そのキー溝242a,242aにスライドキー243,243が嵌め込まれている。ガイドロッド242,242は、上記従フィンガ23,23のガイド穴23c,23cに挿入されており、さらに、ガイドロッド242,242のスライドキー243,243が、ガイド穴23c,23cのキー溝23d,23dに挿入されている。これにより、従フィンガ23,23のガイドロッド242,242の軸回りの移動(回転)が規制され、従フィンガ23,23が、ガイドロッド242,242の軸方向つまり押圧フィンガ21の進退移動の方向(チューブ押圧方向)に対して直交する一方向のみにスライド移動(進退移動)可能となっている。
【0046】
そして、以上の従フィンガ23,23の後端面とベース部材241,241との間に圧縮コイルばね(弾性部材)25,25が挟み込まれており、その圧縮コイルばね25,25の弾性力によって従フィンガ23,23が押圧フィンガ21に向けて押圧され、その従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aが、それぞれ押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aに押圧された状態で当接している。
【0047】
このようにして圧縮コイルばね25,25にて従フィンガ23,23を押圧することにより、押圧フィンガ21が最後退位置と最前進位置との間を進退移動する過程において、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが接触した状態で摺動し、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aから従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aが離れることがなく、押圧フィンガ21の進退移動に連動して従フィンガ23,23が移動する。
【0048】
具体的には、押圧フィンガ21が前進移動するときに、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動し、各従フィンガ23,23が押圧フィンガ21の移動に連動して後退(一対の従フィンガ23,23が互いに離反する向きに移動)する。一方、押圧フィンガ21が後退移動するときに、圧縮コイルばね25の弾性力によって従フィンガ23,23が押圧フィンガ21に向けて押され、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動して、各従フィンガ23,23が押圧フィンガ21の移動に連動して前進(一対の従フィンガ23,23が互いに接近する向きに移動)する。
【0049】
なお、上記した押圧フィンガ21の傾斜面21a,21a、従フィンガ23,23、従フィンガ23,23の傾斜面23a,23a、スライド支持部材24,24、及び、圧縮コイルばね25,25などによって、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心(CL1)と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せ行う位置合せ機構(位置合せ手段)が構成されている。
【0050】
−フィンガ傾斜面の傾斜角度について−
次に、上記押圧フィンガ21の傾斜面21a及び従フィンガ23の傾斜面23aの傾斜角度について図16を参照して説明する。
【0051】
まず、真円状態の輸液チューブTの外径(直径)dとし、輸液チューブTの押しつぶし量をΔdとすると、上述したように、輸液チューブTの全幅W2は、[W2=(π/2−1)Δd+d]となる。また、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aの傾斜角度(中心軸CL1に対する傾斜角度)θ1は[tanθ1=s1/Δd]と表すことができる。
【0052】
ここで、
s1=W2/2−d/2=[(π/2−1)Δd+d]/2−d/2
=(π/2−1)Δd/2
であり、tanθ1は、
tanθ1=[(π/2−1)Δd/2・/Δd=π/4−1/2
となる。そして、θ1は、
θ1=tan-1(π/4−1/2)
=15.9°
となる。この計算結果から、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aの傾斜角度を「15.9°」とし、この押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと摺動する従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aの傾斜角度(押圧フィンガ21の中心軸CL1に対する傾斜角度)についても「15.9°」とすることにより、押圧フィンガ21による進退移動にて変形する輸液チューブTの全幅の変化[(π/2−1)Δd+d]に比例して従フィンガ23,23が移動(CL2方向に移動)に移動するようになり、押圧フィンガ21の進退移動過程において、従フィンガ23,23の先端面23b,23bと輸液チューブTの外周面との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0053】
これによって、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの位置が一対の従フィンガ23,23の先端面23b,23bによって規制(位置決め)されるので、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行うことができる。特に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧初期において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置ずれが生じやすいが、このような従フィンガ23,23などによって構成される位置合せ機構(位置合せ手段)を設けておくことにより、その押圧初期の位置合せを確実に行うことができる。なお、左右一対の従フィンガ23,23の進退移動の移動量Δαは同じであり、その2倍の移動量(2×Δα)が輸液チューブTの全幅の変化[(π/2−1)Δd+d]と比例する。
【0054】
なお、上記押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端が当たっている部分の輸液チューブTに、へこみが生じると、輸液チューブTの全幅W2が上記変化量[(π/2−1)Δd+d]よりも僅かに小さくなり、実際の輸液チューブTの外周面(側面)に対して、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端の位置が多少ずれる場合があるが、輸液チューブTにへこみが生じた状態では、輸液チューブTが扁平しており、また、そのへこみ部と押圧突部21bの先端部とによって輸液チューブTが位置決めされるので問題はない。
【0055】
ここで、この例において、押圧フィンガ21の傾斜面21a及び従フィンガ23の傾斜面23aの傾斜角度は、正確に「15.9°」としてもよいし、また、例えば、16°±β(βは公差)としてもよい。
【0056】
−バルブ部−
次に、上流側バルブ部30及び下流側バルブ部40について図3及び図5などを参照して説明する。
【0057】
まず、上流側バルブ部30は、上流側バルブフィンガ31及びアクチュエータ32などによって構成されている。
【0058】
上流側バルブフィンガ31は、上記押圧フィンガ21の輸液送り方向の上流側に設けられている。上流側バルブフィンガ31は断面矩形の部材であり、上記押圧フィンガ21の中心軸CL1と平行な方向に沿って配置されている。また、上流側バルブフィンガ31の先端部分には押圧突部31aが設けられている。この上流側バルブフィンガ31の押圧突部31aは、輸液送り方向(輸液チューブTの長手方向)と直交する方向に沿って一様幅(一様断面)で延びる突部である。
【0059】
上流側バルブフィンガ31は、ガイド部材5(押圧フィンガ21と同じガイド部材)にスライド自在に支持されており、上記押圧フィンガ21と同様にポンプ本体11の前後方向(ポンプ本体11の前面壁110と直交する方向)に進退移動が可能となっている。
【0060】
上流側バルブフィンガ31の後端部にはアクチュエータ32が連結されている。このアクチュエータ32の駆動によって上流側バルブフィンガ31が進退移動(前進移動または後退移動)され、上流側バルブフィンガ31が最後退位置にあるときには、図5及び図7(A)に示すように、上流側バルブフィンガ31の先端(押圧突部31aの先端)が上記ポンプ本体11に装着された輸液チューブT(真円状態)の外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、この状態(最後退位置にある状態)から、上流側バルブフィンガ31が前進移動すると、その前進移動過程で輸液チューブTが押圧され、図7(B)に示すように、上流側バルブフィンガ31が最前進位置に到達した状態で、押圧突部31aにて輸液チューブTが完全に圧閉される。
【0061】
この上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32としても、例えば、上流側バルブフィンガ31を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた公知の機構や、電動モータと回転−並進機構(例えばラックアンドピニオン)とを組み合わせた公知の機構を挙げることができる。また、ソレノイドを駆動源とするアクチュエータなどを挙げることができる。
【0062】
下流側バルブ部40は、下流側バルブフィンガ41及びアクチュエータ42などによって構成されている。
【0063】
下流側バルブフィンガ41は、上記押圧フィンガ21の輸液送り方向の下流側に設けられている。下流側バルブフィンガ41は断面矩形の部材であり、上記押圧フィンガ21の中心軸CL1と平行な方向に沿って配置されている。また、下流側バルブフィンガ41の先端部分には押圧突部41aが設けられている。この下流側バルブフィンガ41の押圧突部41aは、輸液送り方向(輸液チューブTの長手方向)と直交する方向に沿って一様幅(一様断面)で延びる突部である。
【0064】
下流側バルブフィンガ41は、ガイド部材5(押圧フィンガ21と同じガイド部材)にスライド自在に支持されており、上記押圧フィンガ21と同様にポンプ本体11の前後方向(ポンプ本体11の前面壁110と直交する方向)に進退移動が可能となっている。
【0065】
下流側バルブフィンガ41の後端部にはアクチュエータ42が連結されている。このアクチュエータ42の駆動によって下流側バルブフィンガ41が進退移動(前進移動または後退移動)され、下流側バルブフィンガ41が最後退位置にあるときには、図7(C)に示すように、下流側バルブフィンガ41の先端(押圧突部41aの先端)が上記ポンプ本体11に装着された輸液チューブT(真円状態)の外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、この状態(最後退位置にある状態)から、下流側バルブフィンガ41が前進移動すると、その前進移動過程で輸液チューブTが押圧され、図8(B)に示すように、下流側バルブフィンガ41が最前進位置に到達した状態で、押圧突部41aにて輸液チューブTが完全に圧閉される。
【0066】
この下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42としても、例えば、下流側バルブフィンガ41を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた公知の機構や、電動モータと回転−並進機構(例えばラックアンドピニオン)とを組み合わせた公知の機構を挙げることができる。また、ソレノイドを駆動源とするアクチュエータなどを挙げることができる。
【0067】
以上の押圧フィンガ21のアクチュエータ22、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32、及び、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42の各駆動は、制御部7によって制御される。なお、各アクチュエータ22、32、42(電動モータ等)には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
【0068】
ここで、押圧フィンガ21のアクチュエータ22、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32、及び、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42を、各フィンガ21,31,32を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた機構とする場合、各アクチュエータ22,32,42のカム軸を共通の軸として、そのカム軸を1つの電動モータで回転駆動するようにしてもよい。
【0069】
−制御部−
制御部7は、マイクロコンピュータ等を主体として構成されている。制御部7には、図示はしないが、ポンプ本体11の装着された輸液チューブT内に混入した気泡を検出する気泡センサ(例えば、超音波センサ)、扉12の閉鎖状態などを検出する開閉センサ、距離センサなどが接続されており、その各センサの出力信号が制御部7に入力される。
【0070】
なお、上記距離センサは、扉12の閉鎖状態において最後退位置にある押圧フィンガ21の先端と扉12側の押圧板6との間の間隔(距離)を検出するセンサである。距離センサとしては、例えば、反射型の光電センサや、静電容量センサや超音波センサなどを挙げることができる。
【0071】
制御部7は、表示操作部120の操作パネル122(図1参照)の操作にて設定(入力)された輸液流量(単位時間当たりの輸液の送り量)の設定値に応じて、ポンプ機構2の各アクチュエータ22,32,42を後述する動作で制御するとともに、その送液サイクルの周期(後述する)を制御することにより輸液流量を可変に調整する。この例では、例えば輸液流量を1mL/h〜1200mL/hの範囲内において、[1mL/h]単位で設定することができる。
【0072】
さらに、制御部7は、表示操作部120の表示パネル121に、「輸液流量(注入量)」や「注入積算時間」などの動作情報を表示し、また、「気泡混入異常」や「扉オープン」などを含む各種警告を表示するとともに、警告ブザー装置を作動するように構成されている。
【0073】
−ポンプ機構の動作説明−
次に、ポンプ機構2の動作について図7及び図8を参照して説明する。なお、図7及び図8において、各フィンガについては切断しないで表記している。
【0074】
[S1]まず、図7(A)の状態は、輸液チューブTをポンプ本体11に装着し、扉12を閉じた状態(初期状態)を示す図である。この初期状態では、下流側バルブ部40の下流側バルブフィンガ41のみが最前進位置にあり、その下流側バルブフィンガ41の押圧突部41aにて輸液チューブTが完全に圧閉されている。
【0075】
[S2]図7(A)の状態から、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32を駆動し、上流側バルブフィンガ31を最前進位置に移動して、センタープレス部20の押圧フィンガ21の上流側(輸液送り方向の上流側)の輸液チューブTを、上流側バルブフィンガ31の押圧突部31aにて完全に圧閉する(図7(B))。
【0076】
[S3]図7(C)に示すように、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42を駆動し、最前進位置にある下流側バルブフィンガ41を最後退位置に移動して、押圧フィンガ21の下流側(輸液送り方向の下流側)の輸液チューブTを開放する。
【0077】
[S4]図7(C)に示す状態から、押圧フィンガ21のアクチュエータ22を駆動し、押圧フィンガ21を前進させて輸液チューブTを押圧する(図8(A))。この押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧によって、輸液チューブT内の輸液が下流側に送り出される。ここで、この例の輸液ポンプ1はセンタープレス方式であるので、押圧フィンガ21が最前進位置にあるときに、図9(C)に示すように、押圧フィンガ21の押圧突部21bによって、輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、その両端部については押圧されない状態となる。
【0078】
[S5]図8(A)の状態から、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42を駆動し、下流側バルブフィンガ41を最前進位置に移動して、押圧フィンガ21の下流側の輸液チューブTを、下流側バルブフィンガ41の押圧突部41aにて完全圧閉する(図8(B))。
【0079】
[S6])図8(B)の状態から、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32を駆動し、上流側バルブフィンガ31を最後退位置に移動して、押圧フィンガ21の上流側の輸液チューブTを開放する(図8(C))。
【0080】
[S7]図8(C)の状態から、押圧フィンガ21のアクチュエータ22を駆動(前進時とは逆向きに駆動)し、押圧フィンガ21を最後退位置に移動して、図7(A)に示す初期状態に戻る。
【0081】
以上の動作で送液の1サイクルが完了し、このようなサイクルを順次繰り返していくことにより、輸液チューブT内の輸液を下流側に連続して送り出すことができる。そして、その輸液流量は、上記送液サイクルの周期を制御することによって可変に調整することができる。
【0082】
−位置合せ機構の動作説明−
次に、上記した位置合せ機構の動作について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9及び図10において、押圧フィンガ21等については切断しないで表記している。
【0083】
[S11]まず、図9(A)に示すように、押圧フィンガ21が最後退位置(初期位置)にあるときには、その押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端、及び、一対の従フィンガ23,23の先端面23b,23bが、輸液チューブTの外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、押圧フィンガ21の押圧突部21bの幅方向の中心(CL1)は輸液チューブTの幅方向の中心に一致している。さらに、輸液チューブTの外周面に押圧板6が接触している。
【0084】
[S12]図9(A)の状態から、アクチュエータ22(図4参照)の駆動により押圧フィンガ21が前進すると、輸液チューブTが押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端にて押圧され、輸液チューブTが押しつぶされていく(図9(B))。また、押圧フィンガ21の前進過程において、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと各従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとの摺動により、各従フィンガ23,23が、チューブ押圧方向と直交する方向(図4に示す中心軸CL2方向)に圧縮コイルばね25,25の弾性力に抗して移動(後退)する。このとき、一対の従フィンガ23,23は、上述したように、押圧フィンガ21による前進移動にて変形する輸液チューブTの全幅(図16に示す全幅:(π/2−1)Δd+d)の変化(増大)に比例して移動(後退)するので、押圧フィンガ21の前進移動過程において従フィンガ23,23の先端面23b,23bは、輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に常に配置される。これにより、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの位置が一対の従フィンガ23,23の先端面23b,23bによって規制(位置決め)されるので、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心とがずれることがなく、それら中心の位置合せを確実に行うことができる。
【0085】
[S13]図9(B)の状態から、押圧フィンガ21が更に前進して最前進位置に到達すると、輸液チューブTが更に押圧されて図9(C)に示す状態になる。つまり、押圧フィンガ21の押圧突部21bによって輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、応力集中が生じやすいチューブ両端部が押圧されない状態となる。これにより輸液チューブTのへたりを抑制することができる。また、こうした押圧フィンガ21の最前進位置への移動の過程においても、一対の従フィンガ23,23が輸液チューブTの全幅の変化(増大)に比例して移動(後退)するので、押圧フィンガ21の最前進位置に達した状態で、各従フィンガ23,23の先端面23b,23bは、押しつぶされた輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に配置される。
【0086】
なお、[S12]及び[S13]の工程(押圧フィンガ21の前進移動)は、上記した工程[S4]に対応する。
【0087】
[S14]図9(C)の状態(最前進位置)から、押圧フィンガ21が後退すると、この押圧フィンガ21の後退移動にともなって、押しつぶされた状態の輸液チューブTが、そのチューブ自体の復元力(弾性力)によって元の形状に戻っていく(図10(A))。
【0088】
ここで、従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aは、圧縮コイルばね25,25の弾性力によって、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aに押圧されており、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと摺動状態が維持されるので、押圧フィンガ21が後退移動すると、一対の従フィンガ23,23が圧縮コイルばね25,25の弾性力によって移動(前進)する。このとき、一対の従フィンガ23,23は、押圧フィンガ21の後退移動にて変形(復元)する輸液チューブTの全幅(図16に示す全幅:(π/2−1)Δd+d)の変化(縮小)に比例して前進するので、押圧フィンガ21の後退移動過程において、従フィンガ23,23の先端面23b,23bが、復元過程の輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に常に配置される。これにより、輸液チューブTの復元状態が良好でない状況であっても、その輸液チューブTの側面が従フィンガ23,23にて押圧されるので、輸液チューブTが復元していく。
【0089】
[S15]図10(A)の状態から押圧フィンガ21が更に後退して最後退位置に到達すると、図10(B)に示す状態となる。つまり、輸液チューブTが元の形状(略真円形状)に完全に復元する。また、こうした押圧フィンガ21の最後退位置への移動の過程においても、一対の従フィンガ23,23が輸液チューブTの全幅の変化(縮小)に比例して移動するので、押圧フィンガ21が最後退位置に達した状態で、従フィンガ23,23の先端面23b,23bは、復元した輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に配置される。これにより、輸液チューブTの復元状態が良好でない状況であっても、その輸液チューブTの側面が従フィンガ23,23にて強制的に押圧されるので、輸液チューブTを略真円状態に復元させることができる。なお、[S14]及び[S15]の工程(押圧フィンガ21の後退移動)は、上記した工程[S7]に対応する。
【0090】
なお、以上の例において、押圧フィンガ21と従フィンガ23,23との位置ずれ(ポンプ本体11に装着した輸液チューブTの長手方向における位置ずれ(図3の上下方向の位置ずれ))が生じないようにガイド部材を設けておいてもよい。
【0091】
−作用・効果−
この例の輸液ポンプ1によれば、押圧フィンガ21の押圧突部21bによって、輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉するようにしているので、押圧フィンガ21にて輸液チューブTを押圧する際に、応力集中が生じやすいチューブ両端部が押圧されない。これにより、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して、輸液チューブTの両端部に生じる応力やひずみを小さくすることができる。しかも、押圧フィンガ21にて輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉する方式であるので、フィンガストロークに誤差があっても、そのストローク誤差は押圧板6(緩衝板)にて吸収される。これによって輸液の流量誤差を抑制することができる。
【0092】
(実施例)
ここで、センタープレス方式の輸液ポンプを用いて、輸液チューブTを押しつぶした場合の輸液チューブTの変形について解析を行い、その輸液チューブTの押圧初期から幅方向の中央部のみを完全に圧閉する状態に至るまでの間について、輸液チューブTの断面積(mm2:チューブ肉厚も含む)の変化と輸液チューブTの端部(図14参照)に生じる応力(MPa)との関係を調べたところ、図11(A)に示す結果(実線)が得られた。また、同様にして、輸液チューブTの断面積の変化と輸液チューブTの端部に生じるひずみとの関係を調べたところ、図11(B)に示す結果(実線)が得られた。
【0093】
なお、この実施例では、図4及び図5に示す押圧フィンガ21及びアクチュエータ22等を用いて、後述する図14の形態で輸液チューブTの押圧(押しつぶし)を行った。
【0094】
(比較例)
フルプレス方式の輸液ポンプを用いて、輸液チューブTを押しつぶした場合(図18(A)参照)の輸液チューブTの変形について解析を行い、その輸液チューブTの押圧初期から完全に圧閉する状態に至るまでの間について、輸液チューブTの断面積(mm2:チューブ肉厚も含む)の変化と輸液チューブTの端部(図18(A)参照)に生じる応力(MPa)との関係を調べたところ、図11(A)に示す結果(1点鎖線)が得られた。また、同様にして、輸液チューブTの断面積の変化と輸液チューブTの端部に生じるひずみとの関係を調べたしたところ、図11(B)に示す結果(1点鎖線)が得られた。なお、この比較例に用いた輸液ポンプ(フルプレス方式)については、押圧フィンガの先端部の形状及び押圧板の形状等を変更したこと以外は、上記実施例(センタープレス方式の輸液ポンプ)と同じ仕様とした。
【0095】
また、半閉塞方式の輸液ポンプを用いて、輸液チューブTを押しつぶした場合(図18(B)参照)の輸液チューブTの変形について解析を行い、その輸液チューブTの押圧初期から半閉塞状態(フィンガ最前進位置)に至るまでの間について、輸液チューブTの断面積(mm2:チューブ肉厚も含む)の変化と輸液チューブTの端部(図18(B)参照)に生じる応力(MPa)との関係を調べたところ、図11(A)に示す結果(破線)が得られた。また、同様にして、輸液チューブTの断面積の変化と輸液チューブTの端部に生じるひずみとの関係を調べたところ、図11(B)に示す結果(破線)が得られた。なお、この比較例に用いた輸液ポンプ(半閉塞方式)については、押圧フィンガの先端部の形状、フィンガストローク、及び、押圧板の形状等を変更したこと以外は、上記実施例(センタープレス方式の輸液ポンプ)と同じ仕様とした。
【0096】
以上の図11(A)及び(B)の結果から明らかなように、センタープレス方式の輸液ポンプにあっては、輸液チューブTの断面積が同じである場合(送液効率が同じである場合)、フルプレス方式の輸液ポンプや半閉塞方式の輸液ポンプと比較して、輸液チューブTの両端部に生じる応力やひずみを低減することができ、輸液チューブTのへたりによる輸液の流量誤差を抑制することが可能であることが確認できた。
【0097】
なお、上記輸液チューブTの端部の解析は有限要素法を用いて行った。
【0098】
−他の実施形態−
本発明において、押圧フィンガの形状は、図4及び図6等に示す形状に限定されず、輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉することが可能であれば、他の形状であってもよい。例えば、押圧フィンガの先端中央部の高さ(輸液チューブT側への突出量)が最大で、その中央部から両端部に向かうにしたがって高さが低くなる断面山形状(中高形状)または断面略三角形状の押圧フィンガなどであってもよい。また、押圧フィンガを輸液送り方向(輸液チューブの長手方向)に沿って延びる板状の部材(突部のない部材)とし、その先端部(押圧部)をアール形状(断面半円形状)に形成したものを用いてもよい。
【0099】
以上の例では、上流側バルブフィンガ31と下流側バルブフィンガ41との間に1つの押圧フィンガ21を設けているが、本発明はこれに限られることなく、上流側バルブフィンガ31と下流側バルブフィンガ41との間に複数の押圧フィンガ21・・21を設けておいてもよい。上流側バルブフィンガ31と下流側バルブフィンガ41との間に複数の押圧フィンガ21を配置しておくと、送液時に発生する脈動を低減することが可能になる。
【0100】
以上の例では、押圧フィンガ21が後退移動する際に、圧縮コイルばね25の弾性力によって、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動するように構成しているが、これに替えて、押圧フィンガ21と従フィンガ23,23とを摺動自在に連結する連結手段を設け、押圧フィンガ21が後退移動する際に、押圧フィンガの傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動するように構成してもよい。
【0101】
その連結手段の具体的な構成としては、例えば、図12(A)に示すように、押圧フィンガ21にT溝21fを形成するとともに、従フィンガ23にT型スライダ23fを設け、押圧フィンガ21と従フィンガ23とを摺動自在に連結するという構成を挙げることができる。この場合、従フィンガ23側にT溝を設け押圧フィンガ21側にT型スライダを設けておいてもよい。また、図12(B)に示すように、押圧フィンガ21に蟻溝21gを形成するとともに、従フィンガ23に蟻型スライダ23gを設け、押圧フィンガ21と従フィンガ23とを摺動自在に連結するという構成を挙げることができる。この場合、従フィンガ23側に蟻溝を設け押圧フィンガ21側に蟻型スライダを設けておいてもよい。
【0102】
また、従フィンガ23をポンプ本体11に対してスライド移動(中心軸CL2の方向のスライド移動)を可能にする構造としては、図4の構造に限られることなく、他の構造を採用してもよい。例えば、ガイドロッド242にスプラインを加工した構造、あるいは、図12に示す連結機構(T溝とT型スライダとを組み合わせた連結機構、蟻溝と蟻型スライダとを組み合わせた転結機構)を利用して従フィンガ23をポンプ本体11にスライド自在に支持するという構造を挙げることができる。
【0103】
以上の例では、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21a、従フィンガ23,23(傾斜面23a,23a)などによって構成される位置合せ機構(位置合せ手段)によって、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行っているが、このような機構に替えて、他の位置合せ手段を適用してもよい。その一例を図13及び図14に示す。
【0104】
図13に示す例では、押圧板6に位置合せ部601を一体形成している。この位置合せ部601は、押圧フィンガ21の押圧突部21bに対応する位置に設けられており、内部に、輸液チューブTを位置決めする位置決め凹部601aが形成されている。この位置決め凹部601aには規制面(傾斜面)601b,601bが設けられている。これら規制面(傾斜面)601b,601bの傾斜角度は、上記した実施形態の押圧フィンガ21の傾斜面21a,21a及び一対の従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aと同様に、押しつぶされる輸液チューブTの全幅の変化を考慮して決定されており、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの両端部の位置が規制面(傾斜面)601b,601bによって規制されるようになっている。
【0105】
このような位置合せ部601を押圧板6に設けておくことにより、押圧フィンガ21の押圧突部21bの幅方向の中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行うことができる。特に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧初期において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。
【0106】
なお、図13の例においては、ポンプ本体11に輸液チューブTを装着した状態で、扉12を閉じた際に、ポンプ本体11のポンプ部11bの前面壁110(図2参照)によって、輸液チューブTが押圧板6の位置合せ部601の内部(位置決め凹部601a内)に強制的に押し込まれて輸液チューブTが図13の2点鎖線で示す状態に配置される。
【0107】
図14に示す例においても、押圧板6に位置合せ部602が一体形成されており、この位置合せ部602に、上記図13の例と同様に、規制面(傾斜面)602b,602bを有する位置決め凹部602aが設けられている。この図14の例においても、図13の例と同様に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの両端部の位置が規制面(傾斜面)602b,602bによって規制されるので、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行うことができる。特に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧初期において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。
【0108】
しかも、この図14の例では、位置合せ部602の下部中央部に突部603cを設けているので、押圧フィンガ21の押圧突部21bにて輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉した状態で、輸液チューブTの断面形状が[横向きの「8の字」の形状(「無限大記号」形状)]となるように構成されている。このような断面形状とすることにより、輸液チューブTの端部に集中する応力やひずみを、より緩和することができ、輸液チューブTのへたりを更に抑制することができる。
【0109】
なお、この図14の例においても、ポンプ本体11に輸液チューブTを装着した状態で扉12を閉じた際に、ポンプ本体11のポンプ部11bの前面壁110(図2参照)によって、輸液チューブTが押圧板6の位置合せ部602の内部(位置決め凹部602a内)に強制的に押し込まれて輸液チューブTが図14の2点鎖線で示す状態に配置される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、医療用の薬液を体内に注入する場合などに用いる輸液ポンプに利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 輸液ポンプ
11 ポンプ本体
12 扉
2 ポンプ機構
20 センタープレス部
21 押圧フィンガ
21a 傾斜面(摺動面)
22 アクチュエータ
23 従フィンガ
23a 傾斜面(摺動面)
24 スライド支持部材
25 圧縮コイルばね(弾性部材)
30 上流側バルブ部
31 上流側バルブフィンガ
32 アクチュエータ
40 下流側バルブ部
41 下流側バルブフィンガ
42 アクチュエータ
6 押圧板
601,602 位置合せ部(位置合せ手段)
7 制御部
T 輸液チューブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の薬液を体内に注入する場合などに用いる輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプとしては、フィンガ式(ペリスタルティック式)の輸液ポンプがある。フィンガ式輸液ポンプは、例えば、複数のフィンガと押圧板との間に輸液チューブを配置した状態で、各フィンガを輸液チューブに対して進退駆動させ、各フィンガで輸液チューブを順次押しつぶしていくことにより輸液を送り出す方式の輸液ポンプである。
【0003】
輸液ポンプとしては、上記したフィンガ式の輸液ポンプなどのように、フィンガで輸液チューブを完全に圧閉する方式(フルプレス方式)の輸液ポンプがある(例えば、図18(A)参照)。
【0004】
また、送液を行うフィンガで輸液チューブを完全に圧閉しない中間圧閉方式(半閉塞方式)の輸液ポンプが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。半閉塞方式の輸液ポンプは、例えば、輸液チューブを完全につぶさずに送液を行う押圧フィンガ(例えば、図18(B)参照)と、この押圧フィンガの輸液送り方向の上流側と下流側にそれぞれ配置され、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う上流側バルブフィンガ及び下流側バルブフィンガなどを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3595136号公報
【特許文献2】特開昭55−005485号公報
【特許文献3】特開2008−113726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、輸液ポンプにあっては、送液を行うフィンガのストロークに誤差が生じる場合がある。フィンガスロークの誤差は送液の流量誤差の要因となるが、フルプレス方式の輸液ポンプの場合、押圧板(緩衝板;図18(A)参照)によってフィンガスローク誤差を吸収することができるので、輸液流量の誤差が生じにくい。ただし、フルプレス方式の輸液ポンプでは、チューブ圧閉の際に輸液チューブの両端部(幅方向の両端部)に大きな応力がかかるため、輸液チューブのへたり(輸液チューブの扁平状の変形)が生じやすいという課題がある。
【0007】
これに対し、半閉塞方式の輸液ポンプでは、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して輸液チューブのへたりを低減することができるものの、フィンガストロークの誤差に起因する輸液流量の誤差が生じやすい。すなわち、半閉塞方式の輸液ポンプでは、押圧フィンガで輸液チューブを完全に圧閉するのではなく、押圧フィンガを途中で止めているので(図18(B)参照)、フィンガストロークに誤差があると、押圧フィンガにて押しつぶされる輸液チューブの断面積の変化量が異なってしまい、輸液流量に誤差が生じる場合がある。具体的に説明すると、図17(A)及び(B)に示すように、押圧フィンガにて輸液チューブが押しつぶされる量(フィンガストローク)をΔdとすると、押しつぶされた輸液チューブの断面積(肉厚含む)の変化量は[πΔd2/4]となり(図17に記載の計算式参照)、押しつぶし量Δd(フィンガストローク)に2乗に比例する。したがって、押圧フィンガのストロークに誤差があると、チューブ断面積の変化量は、ストローク誤差の2乗に比例して変動することになり、送液流量に大きな誤差が生じるようになる。
【0008】
また、半閉塞方式の輸液ポンプは、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して吸引力が弱いため、輸液(薬液)の粘度による影響を受けやすい。つまり、輸液の粘度が高くなると、輸液の流量が低下しやすくなる傾向がある。
【0009】
以上のように、フルプレス方式の輸液ポンプでは、輸液チューブのへたりが生じやすいという課題があり、半閉塞方式の輸液ポンプでは、フィンガストロークの誤差等に起因する輸液の流量誤差が生じやすいという課題がある。
【0010】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、輸液チューブのへたりを抑えることができ、輸液の流量誤差を抑制することが可能な輸液ポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、輸液チューブを押圧して当該輸液チューブ内の輸液を送液するポンプ機構を備えた輸液ポンプにおいて、前記ポンプ機構は、輸液チューブに対して進退移動が可能に設けられ、その前進移動の際に輸液チューブを押圧する押圧フィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の上流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う上流側バルブフィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の下流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う下流側バルブフィンガとを備えている。そして、前記押圧フィンガには、輸液送り方向(輸液チューブの長手方向)に沿って延びる押圧部(押圧突部)が設けられており、当該押圧フィンガが最前進位置にあるときに前記押圧部にて輸液チューブの幅方向の中央部のみが完全に圧閉されるように構成されていることを技術的特徴としている。
【0012】
本発明によれば、押圧フィンガの押圧部によって輸液チューブの幅方向の中央部のみを完全に圧閉するようにしているので、輸液チューブを押しつぶす際に、応力が集中しやすいチューブ両端部が押圧されなくなる。これにより、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して、輸液チューブの両端部に生じる応力やひずみを小さくすることができ、輸液チューブのへたりを抑制することができる。しかも、押圧フィンガにて輸液チューブの中央部のみを完全に圧閉する方式であるので、フィンガストロークに誤差があっても、そのストローク誤差は押圧板(緩衝板)にて吸収される。これによって輸液の流量誤差を抑制することができる。
【0013】
本発明において、押圧フィンガの押圧部(押圧突部)の中心と輸液チューブの幅方向の中心とを位置合せする位置合せ手段を設けておくことが好ましい。
【0014】
その位置合せ手段の具体的な例として、押圧フィンガに設けられた傾斜面と、押圧フィンガの進退移動の方向に対して直交する一方向のみに進退移動が可能な従フィンガとを備え、前記押圧フィンガの傾斜面を、前記進退移動方向に対して斜めに傾斜する傾斜面とするとともに、前記従フィンガには、前記押圧フィンガの傾斜面との摺動が可能であって、その押圧フィンガの傾斜面との摺動により当該従フィンガを前記直交一方向に移動する傾斜面を設ける。そして、押圧フィンガが進退移動するときに、その押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動し、従フィンガが押圧フィンガの移動に連動して、前記直交一方向に移動するという構成の位置合せ機構を挙げることができる。
【0015】
この位置合せ機構において、押圧フィンガが最後退位置にあるときに、その押圧フィンガの先端が輸液チューブ(真円状態)の外周面に対応する位置(チューブ外周面に接触する位置)に配置されるとともに、従フィンガの先端が輸液チューブの外周面に対応する位置(チューブ外周面に接触する位置)に配置されるように構成することが好ましい。
【0016】
そして、このような位置合せ機構を設けることにより、押圧フィンガの押圧部(押圧突部)の中心と輸液チューブの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。この点について以下に説明する。
【0017】
まず、図15(A)に示すように、真円状態の輸液チューブTの外径(直径)dとすると、その円周長はdπとなる。一方、図15(B)に示すように、輸液チューブTが押しつぶされ、その押しつぶし量をΔdとすると、輸液チューブTの円弧部長は[(d−Δd)π]となり、輸液チューブTの直線部長W1は、
W1=[dπ−(d−Δd)π]/2=Δdπ/2となる。そして、輸液チューブTの全幅W2は、
W2=Δdπ/2+(d−Δd)
=(π/2−1)Δd+d ・・・(1)
となる。この式(1)から明らかなように、輸液チューブTの全幅W2は、押しつぶし量Δdに比例する(輸液チューブの周長が変わらないと仮定)。つまり、押圧フィンガの最後退位置に対する移動位置(押しつぶし量)と、その押圧フィンガにて変形する輸液チューブTの全幅(従フィンガの先端を合わせる部分の幅)とは比例関係にある。このような点に着目して、本発明では、押圧フィンガの進退移動にて変形する輸液チューブの全幅変化に連動して従フィンガが進退移動するようにしている。
【0018】
具体的には、押圧フィンガに、進退移動方向に対して斜めに傾斜する傾斜面(上記式(1)の関係を考慮した傾斜角度の傾斜面)を設けるとともに、従フィンガには、押圧フィンガの傾斜面との摺動が可能な傾斜面を設ける。そして、押圧フィンガが前進移動する際に、従フィンガが輸液チューブの全幅の変化(増大)に比例して後退移動し、押圧フィンガが後退移動する際に、従フィンガが輸液チューブの全幅の変化(縮小)に比例して前進移動するように構成している。このような構成により、押圧フィンガの進退移動過程において、従フィンガの先端が輸液チューブの外周面(側面)に対応する位置に配置されるようになる。これにより、押圧フィンガによる輸液チューブの押圧過程において、輸液チューブの位置が従フィンガの先端によって規制(位置決め)されるので、押圧フィンガの押圧部(押圧突部)の中心と輸液チューブの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。
【0019】
このような位置合せ機構を設ける場合、1つの押圧フィンガに対して一対の従フィンガを設けておくことが好ましい。この場合、押圧フィンガに、進退移動方向に対して互いに逆向きに傾斜するテーパ状の一対の傾斜面を設けるとともに、その押圧フィンガの各傾斜面との摺動が可能な傾斜面を有する一対の従フィンガを設けるという構成を採用する。
【0020】
ここで、上記位置合せ機構において、従フィンガの傾斜面を、押圧フィンガの傾斜面に押圧する弾性部材(例えば圧縮コイルばね)を設け、押圧フィンガが後退する際に、前記弾性部材の弾性力によって、従フィンガの傾斜面が押圧フィンガの傾斜面に押圧されて、押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動するように構成してもよい。
【0021】
また、押圧フィンガと従フィンガとを摺動自在に連結する連結手段を設け、押圧フィンガが後退移動する際に、前記連結手段の連結により押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動するように構成してもよい。この場合、連結手段としては、T溝とT型スライダとを組み合わせた機構や、蟻溝と蟻型スライダとを組み合わせた機構などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、輸液チューブを押しつぶす際に、押圧フィンガの押圧部にて輸液チューブの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、チューブ両端部が押圧されないように構成しているので、輸液チューブのへたりを抑えることができ、輸液の流量誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の輸液ポンプの一例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の輸液ポンプの一例を示す概略構成図である。この図2では輸液ポンプの扉を開いた状態を示している。
【図3】図1の輸液ポンプに適用するポンプ機構の正面図である。
【図4】図3のX−X矢視図である。なお、図4では一部を切断して示している。
【図5】ポンプ機構を構成する上流側バルブ部、センタープレス部及び下流側バルブの側面図である。
【図6】センタープレス部を構成する押圧フィンガ及び従フィンガのみを抽出して示す斜視図である。
【図7】図5に示すポンプ機構の動作説明図である。
【図8】図5に示すポンプ機構の動作説明図である。
【図9】図4に示すセンタープレス部の位置合せ機構の動作説明図である。
【図10】図4に示すセンタープレス部の位置合せ機構の動作説明図である。
【図11】輸液チューブを押しつぶした際のチューブ断面積の変化と応力との関係を示すグラフ(A)、及び、チューブ断面積の変化とひずみとの関係を示すグラフ(B)を併記して示す図である。
【図12】押圧フィンガと従フィンガとを摺動自在に連結する連結手段の例を示す断面図である。
【図13】位置合せ手段の一例を示す縦断面図である。
【図14】位置合せ手段の他の例を示す縦断面図である。
【図15】輸液チューブの押しつぶし量Δdと全幅W2との関係の説明図である。
【図16】図4に示すセンタープレス部の押圧フィンガ及び従フィンガの傾斜面の傾斜角度の説明図である。
【図17】輸液チューブの押しつぶし量Δdと輸液チューブの断面積の変化量との関係の説明図である。
【図18】フルプレス方式の輸液ポンプの一例を部分的に示す図(A)、及び、半閉塞方式の輸液ポンプの一例を部分的に示す図(B)を併記して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明の輸液ポンプの一例について図1〜図10を参照して説明する。
【0026】
この例の輸液ポンプ1は、センタープレス方式の輸液ポンプであって、ポンプ本体(ケーシング)11と、このポンプ本体11の前面側(チューブ取付位置)を閉鎖する扉12とを備えている。扉12はヒンジ13,13を介してポンプ本体11に揺動自在(回転自在)に支持されており、ポンプ本体11の前面側を完全に閉鎖する位置から、完全開放位置(例えば、180°開く位置)までの間において揺動可能となっている。
【0027】
ポンプ本体11及び扉12には、扉12を閉めたときに、その閉塞状態を保持するための扉ロック機構14が設けられている。扉ロック機構14は、ドアロックレバー141及びフック142などによって構成されており、扉12を閉鎖した状態でドアロックレバー141を回動操作してフック142に引っ掛けることによって扉12を閉鎖状態にロックすることができる。
【0028】
ポンプ本体11にはチューブ装着ガイド(ガイド溝)111が設けられている。チューブ装着ガイド111は、輸液送り方向の上流側から順に、上流側ガイド部111a、この上流側ガイド部111aから矩形状に拡大したポンプ部111b、及び、下流側ガイド部111cを備えている。ポンプ部111bには、後述するポンプ機構2の上流側バルブフィンガ31、押圧フィンガ21、一対の従フィンガ23,23、及び、下流側バルブフィンガ41が臨んでいる。なお、ポンプ本体11の前面壁110には、押圧フィンガ21及び一対の従フィンガ23,23に対応する位置に開口部110aが設けられており、また、上流側バルブフィンガ31及び下流側バルブフィンガ41に対応する位置にそれぞれ開口部110b,110cが設けられている。
【0029】
チューブ装着ガイド111の上流側ガイド部111aは、横方向に湾曲した形状(曲り形状)に形成されている。また、ポンプ部111bの下流側の下流側ガイド部111cは上下方向に直線状に延びる形状に形成されている。上流側ガイド部111aの溝幅及び下流側の下流側ガイド部111cの溝幅は、それぞれ、薬液バッグに接続される輸液チューブ(例えば、ポリ塩化ビニルやポリブタジエン製)Tの外径に対応する大きさとなっており、これら上流側ガイド部111a及び下流側ガイド部111cに輸液チューブTを嵌め込むことによって、輸液ポンプ1に輸液チューブTを装着することができる。
【0030】
上流側ガイド部111aにはチューブクランプ112が設けられている。チューブクランプ112は、輸液ポンプ1へのチューブ装着時に、輸液チューブTを一時的に保持する部材であり、チューブ装着後に扉12を閉じた際に自動的にクランプが解除されるようになっている。なお、チューブクランプ112の近傍には、クランプレバー(図示せず)が設けられており、輸液チューブTの装着の際に、そのクランクレバーを操作することによりチューブクランプ112を開放状態にすることができる。
【0031】
扉12の内面側には押圧板6が設けられている。押圧板6は、ポンプ機構2(上流側バルブフィンガ31、押圧フィンガ21及び下流側バルブフィンガ41等)に対応する位置に配置されている。この押圧板6は、扉12を閉じた状態で、最後退位置にある状態の押圧フィンガ21及び各バルブフィンガ31,41の先端に対して、輸液チューブTの外径に対応する間隔をあけて対向するようになっている。なお、押圧板6は、ベース板62に緩衝シート61を介して保持されており(図4等参照)、緩衝板として機能する。
【0032】
以上の構成の輸液ポンプ1に輸液チューブTをセットする際には、扉12を開き、薬液バッグに接続された輸液チューブTを、[上流側ガイド部111a]→[チューブクランプ112]→[ポンプ部111b]→[下流側ガイド部111c]の順に嵌め込むことによって輸液チューブTを装着する。このようなチューブ装着が終了した後に、扉12を閉め、扉ロック機構14によって扉12を閉鎖状態にロックすることにより、輸液チューブTのセッティングを完了する。なお、この例では、上述したように、扉12を閉塞した状態では、上流側ガイド部111aのチューブクランプ112は開放される。また、輸液完了後などにおいて、扉12を開いたときには、チューブクランプ112によって輸液チューブTが閉塞され、輸液の自由落下であるフリーフローが防止される。
【0033】
−ポンプ機構−
次に、ポンプ機構2の具体的な例について図3〜図6を参照して説明する。
【0034】
ポンプ機構2は、センタープレス部20、上流側バルブ部30、及び、下流側バルブ部40などを備えている。
【0035】
センタープレス部20は、押圧フィンガ(主フィンガ)21、アクチュエータ22、左右一対の従フィンガ23,23、スライド支持部材24,24、及び、圧縮コイルばね25,25などによって構成されている。
【0036】
押圧フィンガ21は、断面矩形の部材であって、左右の側面に一対の傾斜面21a,21aが設けられている。この一対の傾斜面21a,21aは、押圧フィンガ21の進退移動方向(中心軸CL1方向)に対して互いに逆向きに傾斜する傾斜面であって、押圧フィンガ21の先端に向かうにしたがって二面間距離が縮小するテーパ状の傾斜面である。この押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aは互いに逆向きの傾斜面であるが、これら傾斜角度(中心軸CL1に対する傾斜角度)は同じである。傾斜面21a,21aの傾斜角度については後述する。
【0037】
押圧フィンガ21は、その中心軸CL1が、上記ポンプ本体11の前後方向(ポンプ本体11に装着した輸液チューブTの長手方向と直交する方向(ポンプ本体11の前面壁110と直交する方向))に沿って配置されている。押圧フィンガ21は、ガイド部材5(図5参照)にスライド自在に支持されており、上記ポンプ本体11の前後方向に進退移動が可能となっている。ガイド部材5はポンプ本体11に支持固定されている。
【0038】
押圧フィンガ21の先端部には押圧突部21bが設けられている。押圧突部21bは、輸液送り方向(ポンプ本体11に装着した輸液チューブTの長手方向)に沿って一様幅(一様断面)で延びる突部であり、先端がアール形状(断面半円形状)に形成されている。押圧突部21bの幅方向(図4に示すCL2方向)の中心は、押圧フィンガ21の中心軸CL1と一致しており、図4及び図9(A)に示すように、上記ポンプ本体1に装着した輸液チューブTの幅方向の中心と一致するようになっている。
【0039】
押圧フィンガ21の後端部にはアクチュエータ22が連結されている。このアクチュエータ22の駆動によって押圧フィンガ21が進退移動(前進移動または後退移動)され、押圧フィンガ21が最後退位置にあるときには、図4及び図5などに示すように、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端が上記ポンプ本体11に装着された輸液チューブT(真円状態)の外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、この状態(最後退位置にある状態)から、押圧フィンガ21が前進移動すると、その前進移動過程で輸液チューブTが押圧される。
【0040】
そして、押圧フィンガ21が最前進位置にある状態のときに、図8(A)及び図9(C)に示すように、その押圧フィンガ21の押圧突部21bによって輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉されるように、アクチュエータ22による押圧フィンガ21の進退移動のストロークが設定されている。具体的には、押圧フィンガ21が最前進位置(チューブ中央部を完全に圧閉する位置)にある状態のときに、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端と押圧板6の前面との間の間隔Gaが、輸液チューブTの肉厚tの2倍よりも所定量だけ小さい寸法(Ga<2t)となるように、押圧フィンガ21のストロークが設定されている。より詳細には、押圧フィンガ21のストロークのばらつき(ストローク誤差)、及び、扉12を閉じた状態(扉ロック状態)での押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端と押圧板6(前面)との間隔のばらつきなどを考慮して、上記間隔Gaが常に[Ga<2t]を満足するように押圧フィンガ21のストロークが設定されている。
【0041】
押圧フィンガ21を進退移動するアクチュエータ22としては、例えば、押圧フィンガ21を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた公知の機構や、電動モータと回転−並進機構(例えばラックアンドピニオン)とを組み合わせた公知の機構を挙げることができる。また、ソレノイドを駆動源とするアクチュエータなどを挙げることができる。
【0042】
一対の従フィンガ23,23は、押圧フィンガ21の側方(押圧フィンガ21を挟んだ両側)に配置されている。一対の従フィンガ23,23は、同一の形状・寸法であって、左右対称に配置されている。各従フィンガ23,23は断面矩形の部材であり、その先端部(押圧フィンガ21側の端部)に、上記押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと摺動する傾斜面23a,23aが設けられている。この従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aの傾斜角度についても後述する。
【0043】
従フィンガ23,23は、その各中心軸CL2が、上記押圧フィンガ21の中心軸CL1と直交する方向(ポンプ本体11の前面壁110と平行な方向)に沿って配置されている。また、従フィンガ23,23には、中心軸CL2に沿って延びるガイド穴23c,23cが設けられている。この各ガイド穴23c,23cの内径は、後述するガイドロッド242,242の外径よりも所定量だけ大きく設定されており、従フィンガ23,23がガイドロッド242,242に対してスライド可能となっている。各ガイド穴23,23には、後述するスライドキー243,243がスライド可能なキー溝23d,23dが設けられている。
【0044】
従フィンガ23,23は、スライド支持部材24,24にスライド自在に支持されている。スライド支持部材24,24は、ベース部材241,241とガイドロッド242,242とが一体的に設けられている。ガイドロッド242,242の中心は、中心軸CL2に沿っている。ベース部材241,241はポンプ本体11に支持固定されている。
【0045】
ガイドロッド242,242には、キー溝242a,242aが加工されており、そのキー溝242a,242aにスライドキー243,243が嵌め込まれている。ガイドロッド242,242は、上記従フィンガ23,23のガイド穴23c,23cに挿入されており、さらに、ガイドロッド242,242のスライドキー243,243が、ガイド穴23c,23cのキー溝23d,23dに挿入されている。これにより、従フィンガ23,23のガイドロッド242,242の軸回りの移動(回転)が規制され、従フィンガ23,23が、ガイドロッド242,242の軸方向つまり押圧フィンガ21の進退移動の方向(チューブ押圧方向)に対して直交する一方向のみにスライド移動(進退移動)可能となっている。
【0046】
そして、以上の従フィンガ23,23の後端面とベース部材241,241との間に圧縮コイルばね(弾性部材)25,25が挟み込まれており、その圧縮コイルばね25,25の弾性力によって従フィンガ23,23が押圧フィンガ21に向けて押圧され、その従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aが、それぞれ押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aに押圧された状態で当接している。
【0047】
このようにして圧縮コイルばね25,25にて従フィンガ23,23を押圧することにより、押圧フィンガ21が最後退位置と最前進位置との間を進退移動する過程において、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが接触した状態で摺動し、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aから従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aが離れることがなく、押圧フィンガ21の進退移動に連動して従フィンガ23,23が移動する。
【0048】
具体的には、押圧フィンガ21が前進移動するときに、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動し、各従フィンガ23,23が押圧フィンガ21の移動に連動して後退(一対の従フィンガ23,23が互いに離反する向きに移動)する。一方、押圧フィンガ21が後退移動するときに、圧縮コイルばね25の弾性力によって従フィンガ23,23が押圧フィンガ21に向けて押され、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動して、各従フィンガ23,23が押圧フィンガ21の移動に連動して前進(一対の従フィンガ23,23が互いに接近する向きに移動)する。
【0049】
なお、上記した押圧フィンガ21の傾斜面21a,21a、従フィンガ23,23、従フィンガ23,23の傾斜面23a,23a、スライド支持部材24,24、及び、圧縮コイルばね25,25などによって、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心(CL1)と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せ行う位置合せ機構(位置合せ手段)が構成されている。
【0050】
−フィンガ傾斜面の傾斜角度について−
次に、上記押圧フィンガ21の傾斜面21a及び従フィンガ23の傾斜面23aの傾斜角度について図16を参照して説明する。
【0051】
まず、真円状態の輸液チューブTの外径(直径)dとし、輸液チューブTの押しつぶし量をΔdとすると、上述したように、輸液チューブTの全幅W2は、[W2=(π/2−1)Δd+d]となる。また、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aの傾斜角度(中心軸CL1に対する傾斜角度)θ1は[tanθ1=s1/Δd]と表すことができる。
【0052】
ここで、
s1=W2/2−d/2=[(π/2−1)Δd+d]/2−d/2
=(π/2−1)Δd/2
であり、tanθ1は、
tanθ1=[(π/2−1)Δd/2・/Δd=π/4−1/2
となる。そして、θ1は、
θ1=tan-1(π/4−1/2)
=15.9°
となる。この計算結果から、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aの傾斜角度を「15.9°」とし、この押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと摺動する従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aの傾斜角度(押圧フィンガ21の中心軸CL1に対する傾斜角度)についても「15.9°」とすることにより、押圧フィンガ21による進退移動にて変形する輸液チューブTの全幅の変化[(π/2−1)Δd+d]に比例して従フィンガ23,23が移動(CL2方向に移動)に移動するようになり、押圧フィンガ21の進退移動過程において、従フィンガ23,23の先端面23b,23bと輸液チューブTの外周面との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0053】
これによって、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの位置が一対の従フィンガ23,23の先端面23b,23bによって規制(位置決め)されるので、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行うことができる。特に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧初期において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置ずれが生じやすいが、このような従フィンガ23,23などによって構成される位置合せ機構(位置合せ手段)を設けておくことにより、その押圧初期の位置合せを確実に行うことができる。なお、左右一対の従フィンガ23,23の進退移動の移動量Δαは同じであり、その2倍の移動量(2×Δα)が輸液チューブTの全幅の変化[(π/2−1)Δd+d]と比例する。
【0054】
なお、上記押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端が当たっている部分の輸液チューブTに、へこみが生じると、輸液チューブTの全幅W2が上記変化量[(π/2−1)Δd+d]よりも僅かに小さくなり、実際の輸液チューブTの外周面(側面)に対して、押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端の位置が多少ずれる場合があるが、輸液チューブTにへこみが生じた状態では、輸液チューブTが扁平しており、また、そのへこみ部と押圧突部21bの先端部とによって輸液チューブTが位置決めされるので問題はない。
【0055】
ここで、この例において、押圧フィンガ21の傾斜面21a及び従フィンガ23の傾斜面23aの傾斜角度は、正確に「15.9°」としてもよいし、また、例えば、16°±β(βは公差)としてもよい。
【0056】
−バルブ部−
次に、上流側バルブ部30及び下流側バルブ部40について図3及び図5などを参照して説明する。
【0057】
まず、上流側バルブ部30は、上流側バルブフィンガ31及びアクチュエータ32などによって構成されている。
【0058】
上流側バルブフィンガ31は、上記押圧フィンガ21の輸液送り方向の上流側に設けられている。上流側バルブフィンガ31は断面矩形の部材であり、上記押圧フィンガ21の中心軸CL1と平行な方向に沿って配置されている。また、上流側バルブフィンガ31の先端部分には押圧突部31aが設けられている。この上流側バルブフィンガ31の押圧突部31aは、輸液送り方向(輸液チューブTの長手方向)と直交する方向に沿って一様幅(一様断面)で延びる突部である。
【0059】
上流側バルブフィンガ31は、ガイド部材5(押圧フィンガ21と同じガイド部材)にスライド自在に支持されており、上記押圧フィンガ21と同様にポンプ本体11の前後方向(ポンプ本体11の前面壁110と直交する方向)に進退移動が可能となっている。
【0060】
上流側バルブフィンガ31の後端部にはアクチュエータ32が連結されている。このアクチュエータ32の駆動によって上流側バルブフィンガ31が進退移動(前進移動または後退移動)され、上流側バルブフィンガ31が最後退位置にあるときには、図5及び図7(A)に示すように、上流側バルブフィンガ31の先端(押圧突部31aの先端)が上記ポンプ本体11に装着された輸液チューブT(真円状態)の外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、この状態(最後退位置にある状態)から、上流側バルブフィンガ31が前進移動すると、その前進移動過程で輸液チューブTが押圧され、図7(B)に示すように、上流側バルブフィンガ31が最前進位置に到達した状態で、押圧突部31aにて輸液チューブTが完全に圧閉される。
【0061】
この上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32としても、例えば、上流側バルブフィンガ31を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた公知の機構や、電動モータと回転−並進機構(例えばラックアンドピニオン)とを組み合わせた公知の機構を挙げることができる。また、ソレノイドを駆動源とするアクチュエータなどを挙げることができる。
【0062】
下流側バルブ部40は、下流側バルブフィンガ41及びアクチュエータ42などによって構成されている。
【0063】
下流側バルブフィンガ41は、上記押圧フィンガ21の輸液送り方向の下流側に設けられている。下流側バルブフィンガ41は断面矩形の部材であり、上記押圧フィンガ21の中心軸CL1と平行な方向に沿って配置されている。また、下流側バルブフィンガ41の先端部分には押圧突部41aが設けられている。この下流側バルブフィンガ41の押圧突部41aは、輸液送り方向(輸液チューブTの長手方向)と直交する方向に沿って一様幅(一様断面)で延びる突部である。
【0064】
下流側バルブフィンガ41は、ガイド部材5(押圧フィンガ21と同じガイド部材)にスライド自在に支持されており、上記押圧フィンガ21と同様にポンプ本体11の前後方向(ポンプ本体11の前面壁110と直交する方向)に進退移動が可能となっている。
【0065】
下流側バルブフィンガ41の後端部にはアクチュエータ42が連結されている。このアクチュエータ42の駆動によって下流側バルブフィンガ41が進退移動(前進移動または後退移動)され、下流側バルブフィンガ41が最後退位置にあるときには、図7(C)に示すように、下流側バルブフィンガ41の先端(押圧突部41aの先端)が上記ポンプ本体11に装着された輸液チューブT(真円状態)の外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、この状態(最後退位置にある状態)から、下流側バルブフィンガ41が前進移動すると、その前進移動過程で輸液チューブTが押圧され、図8(B)に示すように、下流側バルブフィンガ41が最前進位置に到達した状態で、押圧突部41aにて輸液チューブTが完全に圧閉される。
【0066】
この下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42としても、例えば、下流側バルブフィンガ41を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた公知の機構や、電動モータと回転−並進機構(例えばラックアンドピニオン)とを組み合わせた公知の機構を挙げることができる。また、ソレノイドを駆動源とするアクチュエータなどを挙げることができる。
【0067】
以上の押圧フィンガ21のアクチュエータ22、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32、及び、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42の各駆動は、制御部7によって制御される。なお、各アクチュエータ22、32、42(電動モータ等)には、輸液ポンプ1に内蔵の電池または商用電源からの電力が供給されるようになっている。
【0068】
ここで、押圧フィンガ21のアクチュエータ22、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32、及び、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42を、各フィンガ21,31,32を進退駆動するカムとそのカム軸を回転駆動する電動モータとを組み合わせた機構とする場合、各アクチュエータ22,32,42のカム軸を共通の軸として、そのカム軸を1つの電動モータで回転駆動するようにしてもよい。
【0069】
−制御部−
制御部7は、マイクロコンピュータ等を主体として構成されている。制御部7には、図示はしないが、ポンプ本体11の装着された輸液チューブT内に混入した気泡を検出する気泡センサ(例えば、超音波センサ)、扉12の閉鎖状態などを検出する開閉センサ、距離センサなどが接続されており、その各センサの出力信号が制御部7に入力される。
【0070】
なお、上記距離センサは、扉12の閉鎖状態において最後退位置にある押圧フィンガ21の先端と扉12側の押圧板6との間の間隔(距離)を検出するセンサである。距離センサとしては、例えば、反射型の光電センサや、静電容量センサや超音波センサなどを挙げることができる。
【0071】
制御部7は、表示操作部120の操作パネル122(図1参照)の操作にて設定(入力)された輸液流量(単位時間当たりの輸液の送り量)の設定値に応じて、ポンプ機構2の各アクチュエータ22,32,42を後述する動作で制御するとともに、その送液サイクルの周期(後述する)を制御することにより輸液流量を可変に調整する。この例では、例えば輸液流量を1mL/h〜1200mL/hの範囲内において、[1mL/h]単位で設定することができる。
【0072】
さらに、制御部7は、表示操作部120の表示パネル121に、「輸液流量(注入量)」や「注入積算時間」などの動作情報を表示し、また、「気泡混入異常」や「扉オープン」などを含む各種警告を表示するとともに、警告ブザー装置を作動するように構成されている。
【0073】
−ポンプ機構の動作説明−
次に、ポンプ機構2の動作について図7及び図8を参照して説明する。なお、図7及び図8において、各フィンガについては切断しないで表記している。
【0074】
[S1]まず、図7(A)の状態は、輸液チューブTをポンプ本体11に装着し、扉12を閉じた状態(初期状態)を示す図である。この初期状態では、下流側バルブ部40の下流側バルブフィンガ41のみが最前進位置にあり、その下流側バルブフィンガ41の押圧突部41aにて輸液チューブTが完全に圧閉されている。
【0075】
[S2]図7(A)の状態から、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32を駆動し、上流側バルブフィンガ31を最前進位置に移動して、センタープレス部20の押圧フィンガ21の上流側(輸液送り方向の上流側)の輸液チューブTを、上流側バルブフィンガ31の押圧突部31aにて完全に圧閉する(図7(B))。
【0076】
[S3]図7(C)に示すように、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42を駆動し、最前進位置にある下流側バルブフィンガ41を最後退位置に移動して、押圧フィンガ21の下流側(輸液送り方向の下流側)の輸液チューブTを開放する。
【0077】
[S4]図7(C)に示す状態から、押圧フィンガ21のアクチュエータ22を駆動し、押圧フィンガ21を前進させて輸液チューブTを押圧する(図8(A))。この押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧によって、輸液チューブT内の輸液が下流側に送り出される。ここで、この例の輸液ポンプ1はセンタープレス方式であるので、押圧フィンガ21が最前進位置にあるときに、図9(C)に示すように、押圧フィンガ21の押圧突部21bによって、輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、その両端部については押圧されない状態となる。
【0078】
[S5]図8(A)の状態から、下流側バルブフィンガ41のアクチュエータ42を駆動し、下流側バルブフィンガ41を最前進位置に移動して、押圧フィンガ21の下流側の輸液チューブTを、下流側バルブフィンガ41の押圧突部41aにて完全圧閉する(図8(B))。
【0079】
[S6])図8(B)の状態から、上流側バルブフィンガ31のアクチュエータ32を駆動し、上流側バルブフィンガ31を最後退位置に移動して、押圧フィンガ21の上流側の輸液チューブTを開放する(図8(C))。
【0080】
[S7]図8(C)の状態から、押圧フィンガ21のアクチュエータ22を駆動(前進時とは逆向きに駆動)し、押圧フィンガ21を最後退位置に移動して、図7(A)に示す初期状態に戻る。
【0081】
以上の動作で送液の1サイクルが完了し、このようなサイクルを順次繰り返していくことにより、輸液チューブT内の輸液を下流側に連続して送り出すことができる。そして、その輸液流量は、上記送液サイクルの周期を制御することによって可変に調整することができる。
【0082】
−位置合せ機構の動作説明−
次に、上記した位置合せ機構の動作について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9及び図10において、押圧フィンガ21等については切断しないで表記している。
【0083】
[S11]まず、図9(A)に示すように、押圧フィンガ21が最後退位置(初期位置)にあるときには、その押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端、及び、一対の従フィンガ23,23の先端面23b,23bが、輸液チューブTの外周面に接触する位置(輸液チューブTの外周面に対応する位置)に配置される。また、押圧フィンガ21の押圧突部21bの幅方向の中心(CL1)は輸液チューブTの幅方向の中心に一致している。さらに、輸液チューブTの外周面に押圧板6が接触している。
【0084】
[S12]図9(A)の状態から、アクチュエータ22(図4参照)の駆動により押圧フィンガ21が前進すると、輸液チューブTが押圧フィンガ21の押圧突部21bの先端にて押圧され、輸液チューブTが押しつぶされていく(図9(B))。また、押圧フィンガ21の前進過程において、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと各従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとの摺動により、各従フィンガ23,23が、チューブ押圧方向と直交する方向(図4に示す中心軸CL2方向)に圧縮コイルばね25,25の弾性力に抗して移動(後退)する。このとき、一対の従フィンガ23,23は、上述したように、押圧フィンガ21による前進移動にて変形する輸液チューブTの全幅(図16に示す全幅:(π/2−1)Δd+d)の変化(増大)に比例して移動(後退)するので、押圧フィンガ21の前進移動過程において従フィンガ23,23の先端面23b,23bは、輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に常に配置される。これにより、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの位置が一対の従フィンガ23,23の先端面23b,23bによって規制(位置決め)されるので、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心とがずれることがなく、それら中心の位置合せを確実に行うことができる。
【0085】
[S13]図9(B)の状態から、押圧フィンガ21が更に前進して最前進位置に到達すると、輸液チューブTが更に押圧されて図9(C)に示す状態になる。つまり、押圧フィンガ21の押圧突部21bによって輸液チューブTの幅方向の中央部のみが完全に圧閉され、応力集中が生じやすいチューブ両端部が押圧されない状態となる。これにより輸液チューブTのへたりを抑制することができる。また、こうした押圧フィンガ21の最前進位置への移動の過程においても、一対の従フィンガ23,23が輸液チューブTの全幅の変化(増大)に比例して移動(後退)するので、押圧フィンガ21の最前進位置に達した状態で、各従フィンガ23,23の先端面23b,23bは、押しつぶされた輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に配置される。
【0086】
なお、[S12]及び[S13]の工程(押圧フィンガ21の前進移動)は、上記した工程[S4]に対応する。
【0087】
[S14]図9(C)の状態(最前進位置)から、押圧フィンガ21が後退すると、この押圧フィンガ21の後退移動にともなって、押しつぶされた状態の輸液チューブTが、そのチューブ自体の復元力(弾性力)によって元の形状に戻っていく(図10(A))。
【0088】
ここで、従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aは、圧縮コイルばね25,25の弾性力によって、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aに押圧されており、その押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと摺動状態が維持されるので、押圧フィンガ21が後退移動すると、一対の従フィンガ23,23が圧縮コイルばね25,25の弾性力によって移動(前進)する。このとき、一対の従フィンガ23,23は、押圧フィンガ21の後退移動にて変形(復元)する輸液チューブTの全幅(図16に示す全幅:(π/2−1)Δd+d)の変化(縮小)に比例して前進するので、押圧フィンガ21の後退移動過程において、従フィンガ23,23の先端面23b,23bが、復元過程の輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に常に配置される。これにより、輸液チューブTの復元状態が良好でない状況であっても、その輸液チューブTの側面が従フィンガ23,23にて押圧されるので、輸液チューブTが復元していく。
【0089】
[S15]図10(A)の状態から押圧フィンガ21が更に後退して最後退位置に到達すると、図10(B)に示す状態となる。つまり、輸液チューブTが元の形状(略真円形状)に完全に復元する。また、こうした押圧フィンガ21の最後退位置への移動の過程においても、一対の従フィンガ23,23が輸液チューブTの全幅の変化(縮小)に比例して移動するので、押圧フィンガ21が最後退位置に達した状態で、従フィンガ23,23の先端面23b,23bは、復元した輸液チューブTの外周面(側面)に対応する位置に配置される。これにより、輸液チューブTの復元状態が良好でない状況であっても、その輸液チューブTの側面が従フィンガ23,23にて強制的に押圧されるので、輸液チューブTを略真円状態に復元させることができる。なお、[S14]及び[S15]の工程(押圧フィンガ21の後退移動)は、上記した工程[S7]に対応する。
【0090】
なお、以上の例において、押圧フィンガ21と従フィンガ23,23との位置ずれ(ポンプ本体11に装着した輸液チューブTの長手方向における位置ずれ(図3の上下方向の位置ずれ))が生じないようにガイド部材を設けておいてもよい。
【0091】
−作用・効果−
この例の輸液ポンプ1によれば、押圧フィンガ21の押圧突部21bによって、輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉するようにしているので、押圧フィンガ21にて輸液チューブTを押圧する際に、応力集中が生じやすいチューブ両端部が押圧されない。これにより、フルプレス方式の輸液ポンプと比較して、輸液チューブTの両端部に生じる応力やひずみを小さくすることができる。しかも、押圧フィンガ21にて輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉する方式であるので、フィンガストロークに誤差があっても、そのストローク誤差は押圧板6(緩衝板)にて吸収される。これによって輸液の流量誤差を抑制することができる。
【0092】
(実施例)
ここで、センタープレス方式の輸液ポンプを用いて、輸液チューブTを押しつぶした場合の輸液チューブTの変形について解析を行い、その輸液チューブTの押圧初期から幅方向の中央部のみを完全に圧閉する状態に至るまでの間について、輸液チューブTの断面積(mm2:チューブ肉厚も含む)の変化と輸液チューブTの端部(図14参照)に生じる応力(MPa)との関係を調べたところ、図11(A)に示す結果(実線)が得られた。また、同様にして、輸液チューブTの断面積の変化と輸液チューブTの端部に生じるひずみとの関係を調べたところ、図11(B)に示す結果(実線)が得られた。
【0093】
なお、この実施例では、図4及び図5に示す押圧フィンガ21及びアクチュエータ22等を用いて、後述する図14の形態で輸液チューブTの押圧(押しつぶし)を行った。
【0094】
(比較例)
フルプレス方式の輸液ポンプを用いて、輸液チューブTを押しつぶした場合(図18(A)参照)の輸液チューブTの変形について解析を行い、その輸液チューブTの押圧初期から完全に圧閉する状態に至るまでの間について、輸液チューブTの断面積(mm2:チューブ肉厚も含む)の変化と輸液チューブTの端部(図18(A)参照)に生じる応力(MPa)との関係を調べたところ、図11(A)に示す結果(1点鎖線)が得られた。また、同様にして、輸液チューブTの断面積の変化と輸液チューブTの端部に生じるひずみとの関係を調べたしたところ、図11(B)に示す結果(1点鎖線)が得られた。なお、この比較例に用いた輸液ポンプ(フルプレス方式)については、押圧フィンガの先端部の形状及び押圧板の形状等を変更したこと以外は、上記実施例(センタープレス方式の輸液ポンプ)と同じ仕様とした。
【0095】
また、半閉塞方式の輸液ポンプを用いて、輸液チューブTを押しつぶした場合(図18(B)参照)の輸液チューブTの変形について解析を行い、その輸液チューブTの押圧初期から半閉塞状態(フィンガ最前進位置)に至るまでの間について、輸液チューブTの断面積(mm2:チューブ肉厚も含む)の変化と輸液チューブTの端部(図18(B)参照)に生じる応力(MPa)との関係を調べたところ、図11(A)に示す結果(破線)が得られた。また、同様にして、輸液チューブTの断面積の変化と輸液チューブTの端部に生じるひずみとの関係を調べたところ、図11(B)に示す結果(破線)が得られた。なお、この比較例に用いた輸液ポンプ(半閉塞方式)については、押圧フィンガの先端部の形状、フィンガストローク、及び、押圧板の形状等を変更したこと以外は、上記実施例(センタープレス方式の輸液ポンプ)と同じ仕様とした。
【0096】
以上の図11(A)及び(B)の結果から明らかなように、センタープレス方式の輸液ポンプにあっては、輸液チューブTの断面積が同じである場合(送液効率が同じである場合)、フルプレス方式の輸液ポンプや半閉塞方式の輸液ポンプと比較して、輸液チューブTの両端部に生じる応力やひずみを低減することができ、輸液チューブTのへたりによる輸液の流量誤差を抑制することが可能であることが確認できた。
【0097】
なお、上記輸液チューブTの端部の解析は有限要素法を用いて行った。
【0098】
−他の実施形態−
本発明において、押圧フィンガの形状は、図4及び図6等に示す形状に限定されず、輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉することが可能であれば、他の形状であってもよい。例えば、押圧フィンガの先端中央部の高さ(輸液チューブT側への突出量)が最大で、その中央部から両端部に向かうにしたがって高さが低くなる断面山形状(中高形状)または断面略三角形状の押圧フィンガなどであってもよい。また、押圧フィンガを輸液送り方向(輸液チューブの長手方向)に沿って延びる板状の部材(突部のない部材)とし、その先端部(押圧部)をアール形状(断面半円形状)に形成したものを用いてもよい。
【0099】
以上の例では、上流側バルブフィンガ31と下流側バルブフィンガ41との間に1つの押圧フィンガ21を設けているが、本発明はこれに限られることなく、上流側バルブフィンガ31と下流側バルブフィンガ41との間に複数の押圧フィンガ21・・21を設けておいてもよい。上流側バルブフィンガ31と下流側バルブフィンガ41との間に複数の押圧フィンガ21を配置しておくと、送液時に発生する脈動を低減することが可能になる。
【0100】
以上の例では、押圧フィンガ21が後退移動する際に、圧縮コイルばね25の弾性力によって、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動するように構成しているが、これに替えて、押圧フィンガ21と従フィンガ23,23とを摺動自在に連結する連結手段を設け、押圧フィンガ21が後退移動する際に、押圧フィンガの傾斜面21a,21aと従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aとが摺動するように構成してもよい。
【0101】
その連結手段の具体的な構成としては、例えば、図12(A)に示すように、押圧フィンガ21にT溝21fを形成するとともに、従フィンガ23にT型スライダ23fを設け、押圧フィンガ21と従フィンガ23とを摺動自在に連結するという構成を挙げることができる。この場合、従フィンガ23側にT溝を設け押圧フィンガ21側にT型スライダを設けておいてもよい。また、図12(B)に示すように、押圧フィンガ21に蟻溝21gを形成するとともに、従フィンガ23に蟻型スライダ23gを設け、押圧フィンガ21と従フィンガ23とを摺動自在に連結するという構成を挙げることができる。この場合、従フィンガ23側に蟻溝を設け押圧フィンガ21側に蟻型スライダを設けておいてもよい。
【0102】
また、従フィンガ23をポンプ本体11に対してスライド移動(中心軸CL2の方向のスライド移動)を可能にする構造としては、図4の構造に限られることなく、他の構造を採用してもよい。例えば、ガイドロッド242にスプラインを加工した構造、あるいは、図12に示す連結機構(T溝とT型スライダとを組み合わせた連結機構、蟻溝と蟻型スライダとを組み合わせた転結機構)を利用して従フィンガ23をポンプ本体11にスライド自在に支持するという構造を挙げることができる。
【0103】
以上の例では、押圧フィンガ21の傾斜面21a,21a、従フィンガ23,23(傾斜面23a,23a)などによって構成される位置合せ機構(位置合せ手段)によって、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行っているが、このような機構に替えて、他の位置合せ手段を適用してもよい。その一例を図13及び図14に示す。
【0104】
図13に示す例では、押圧板6に位置合せ部601を一体形成している。この位置合せ部601は、押圧フィンガ21の押圧突部21bに対応する位置に設けられており、内部に、輸液チューブTを位置決めする位置決め凹部601aが形成されている。この位置決め凹部601aには規制面(傾斜面)601b,601bが設けられている。これら規制面(傾斜面)601b,601bの傾斜角度は、上記した実施形態の押圧フィンガ21の傾斜面21a,21a及び一対の従フィンガ23,23の傾斜面23a,23aと同様に、押しつぶされる輸液チューブTの全幅の変化を考慮して決定されており、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの両端部の位置が規制面(傾斜面)601b,601bによって規制されるようになっている。
【0105】
このような位置合せ部601を押圧板6に設けておくことにより、押圧フィンガ21の押圧突部21bの幅方向の中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行うことができる。特に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧初期において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。
【0106】
なお、図13の例においては、ポンプ本体11に輸液チューブTを装着した状態で、扉12を閉じた際に、ポンプ本体11のポンプ部11bの前面壁110(図2参照)によって、輸液チューブTが押圧板6の位置合せ部601の内部(位置決め凹部601a内)に強制的に押し込まれて輸液チューブTが図13の2点鎖線で示す状態に配置される。
【0107】
図14に示す例においても、押圧板6に位置合せ部602が一体形成されており、この位置合せ部602に、上記図13の例と同様に、規制面(傾斜面)602b,602bを有する位置決め凹部602aが設けられている。この図14の例においても、図13の例と同様に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧過程において、輸液チューブTの両端部の位置が規制面(傾斜面)602b,602bによって規制されるので、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを行うことができる。特に、押圧フィンガ21による輸液チューブTの押圧初期において、押圧フィンガ21の押圧突部21bの中心と輸液チューブTの幅方向の中心との位置合せを確実に行うことができる。
【0108】
しかも、この図14の例では、位置合せ部602の下部中央部に突部603cを設けているので、押圧フィンガ21の押圧突部21bにて輸液チューブTの幅方向の中央部のみを完全に圧閉した状態で、輸液チューブTの断面形状が[横向きの「8の字」の形状(「無限大記号」形状)]となるように構成されている。このような断面形状とすることにより、輸液チューブTの端部に集中する応力やひずみを、より緩和することができ、輸液チューブTのへたりを更に抑制することができる。
【0109】
なお、この図14の例においても、ポンプ本体11に輸液チューブTを装着した状態で扉12を閉じた際に、ポンプ本体11のポンプ部11bの前面壁110(図2参照)によって、輸液チューブTが押圧板6の位置合せ部602の内部(位置決め凹部602a内)に強制的に押し込まれて輸液チューブTが図14の2点鎖線で示す状態に配置される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、医療用の薬液を体内に注入する場合などに用いる輸液ポンプに利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 輸液ポンプ
11 ポンプ本体
12 扉
2 ポンプ機構
20 センタープレス部
21 押圧フィンガ
21a 傾斜面(摺動面)
22 アクチュエータ
23 従フィンガ
23a 傾斜面(摺動面)
24 スライド支持部材
25 圧縮コイルばね(弾性部材)
30 上流側バルブ部
31 上流側バルブフィンガ
32 アクチュエータ
40 下流側バルブ部
41 下流側バルブフィンガ
42 アクチュエータ
6 押圧板
601,602 位置合せ部(位置合せ手段)
7 制御部
T 輸液チューブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液チューブを押圧して当該輸液チューブ内の輸液を送液するポンプ機構を備えた輸液ポンプであって、
前記ポンプ機構は、輸液チューブに対して進退移動が可能に設けられ、その前進移動の際に輸液チューブを押圧する押圧フィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の上流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う上流側バルブフィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の下流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う下流側バルブフィンガとを備えているとともに、
前記押圧フィンガには、輸液送り方向に沿って延びる押圧部が設けられており、当該押圧フィンガが最前進位置にあるときに前記押圧部にて輸液チューブの幅方向の中央部のみが完全に圧閉されるように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の輸液ポンプにおいて、
前記押圧フィンガの押圧部の中心と輸液チューブの幅方向の中心とを位置合せする位置合せ手段を備えていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項3】
請求項2記載の輸液ポンプにおいて、
前記位置合せ手段は、前記押圧フィンガに設けられた傾斜面と、前記押圧フィンガの進退移動の方向に対して直交する一方向のみに進退移動が可能な従フィンガとを有するとともに、前記押圧フィンガの傾斜面は、前記進退移動方向に対して斜めに傾斜する傾斜面であり、前記従フィンガには、前記押圧フィンガの傾斜面との摺動が可能であって、その押圧フィンガの傾斜面との摺動により当該従フィンガを前記直交一方向に移動する傾斜面が設けられており、
前記押圧フィンガが進退移動するときに、その押圧フィンガの傾斜面と前記従フィンガの傾斜面とが摺動し、前記従フィンガが前記押圧フィンガの移動に連動して、前記直交一方向に移動するように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項4】
請求項3記載の輸液ポンプにおいて、
前記押圧フィンガが最後退位置にあるときに、その押圧フィンガの先端が輸液チューブの外周面に対応する位置に配置されるとともに、前記従フィンガの先端が輸液チューブの外周面に対応する位置に配置されるように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項5】
請求項3または4記載の輸液ポンプにおいて、
前記従フィンガの傾斜面を、前記押圧フィンガの傾斜面に押圧する弾性部材を備え、前記押圧フィンガが後退する際に、前記弾性部材の弾性力によって前記押圧フィンガの傾斜面と前記中フィンガの傾斜面とが摺動するように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項6】
請求項3または4記載の輸液ポンプにおいて、
前記押圧フィンガと前記従フィンガとを摺動自在に連結する連結手段を備え、前記押圧フィンガが後退移動する際に、前記連結手段の連結により押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動するように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項1】
輸液チューブを押圧して当該輸液チューブ内の輸液を送液するポンプ機構を備えた輸液ポンプであって、
前記ポンプ機構は、輸液チューブに対して進退移動が可能に設けられ、その前進移動の際に輸液チューブを押圧する押圧フィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の上流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う上流側バルブフィンガと、前記押圧フィンガの輸液送り方向の下流側に設けられ、輸液チューブの完全圧閉と開放とを行う下流側バルブフィンガとを備えているとともに、
前記押圧フィンガには、輸液送り方向に沿って延びる押圧部が設けられており、当該押圧フィンガが最前進位置にあるときに前記押圧部にて輸液チューブの幅方向の中央部のみが完全に圧閉されるように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の輸液ポンプにおいて、
前記押圧フィンガの押圧部の中心と輸液チューブの幅方向の中心とを位置合せする位置合せ手段を備えていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項3】
請求項2記載の輸液ポンプにおいて、
前記位置合せ手段は、前記押圧フィンガに設けられた傾斜面と、前記押圧フィンガの進退移動の方向に対して直交する一方向のみに進退移動が可能な従フィンガとを有するとともに、前記押圧フィンガの傾斜面は、前記進退移動方向に対して斜めに傾斜する傾斜面であり、前記従フィンガには、前記押圧フィンガの傾斜面との摺動が可能であって、その押圧フィンガの傾斜面との摺動により当該従フィンガを前記直交一方向に移動する傾斜面が設けられており、
前記押圧フィンガが進退移動するときに、その押圧フィンガの傾斜面と前記従フィンガの傾斜面とが摺動し、前記従フィンガが前記押圧フィンガの移動に連動して、前記直交一方向に移動するように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項4】
請求項3記載の輸液ポンプにおいて、
前記押圧フィンガが最後退位置にあるときに、その押圧フィンガの先端が輸液チューブの外周面に対応する位置に配置されるとともに、前記従フィンガの先端が輸液チューブの外周面に対応する位置に配置されるように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項5】
請求項3または4記載の輸液ポンプにおいて、
前記従フィンガの傾斜面を、前記押圧フィンガの傾斜面に押圧する弾性部材を備え、前記押圧フィンガが後退する際に、前記弾性部材の弾性力によって前記押圧フィンガの傾斜面と前記中フィンガの傾斜面とが摺動するように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項6】
請求項3または4記載の輸液ポンプにおいて、
前記押圧フィンガと前記従フィンガとを摺動自在に連結する連結手段を備え、前記押圧フィンガが後退移動する際に、前記連結手段の連結により押圧フィンガの傾斜面と従フィンガの傾斜面とが摺動するように構成されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−70705(P2013−70705A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209736(P2011−209736)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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