説明

輸液容器用口栓体及びその製造方法、輸液容器用口部材並びに輸液容器

【課題】ゴム栓に異物などの付着物がなく、かつ充填薬液方向への微粒子や有害物質の発生がなく、更にゴム栓とゴム栓外郭支持体との間の密着力に優れる輸液容器用口栓体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】ゴム栓底面の薬液接触部側に有底円筒形状の合成樹脂製封止体を装着する。合成樹脂製封止体の装着は、合成樹脂製封止体の筒部をゴム栓の底面に設けた円筒形のガイド溝に挿入する、合成樹脂製封止体の筒部でゴム栓の胴部側面を挟持する、等の手段により行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴輸液などに用いられる合成樹脂製の輸液容器の口栓体及びその製造方法、輸液容器用口部材並びに輸液容器に関するものである。特に輸液容器の口栓体のゴム栓部分から薬液方向に微粒子その他有害物質の発生がない口栓体及びその製造方法、輸液容器用口部材並びに輸液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、点滴注射などに使用する輸液容器としては、ガラス製の容器、合成樹脂製のボトルやバッグなどが広く使用されているが、輸送、保管、使用時の耐破損性などの点で後者の合成樹脂製のものが好適とされている。
一方、輸液容器用ゴム栓に関しては、ゴム栓の外径より大きくゴム栓の薬液接触側の全面を覆う合成樹脂製薄膜を有するゴム栓が知られていた(例えば、特許文献1参照)。しかし、合成樹脂薄膜を有する特定の部材をゴム栓の薬液接触側の全面を覆うように射出成形で製造する方法や、ゴム栓の周囲を包囲する栓体と合成樹脂薄膜とが一体化した部材を射出成形して製造する方法で、合成樹脂薄膜を例えば0.3mm以下程度に安定的に製造することは困難であった。従って合成樹脂薄膜は厚くなり、また硬さがあるため、操作時に針が合成樹脂薄膜を刺通する際に破砕され、薬液が微粒子で汚染されるとの問題点があった。そこで、微粒子による汚染を低減させたゴム栓として、ゴム栓の充填薬液側には合成樹脂製フィルムがラミネートされたゴム栓が多く利用されるようになってきている。
【0003】
これらのフィルムがラミネートされたゴム栓は、側面部にインサート射出成形によりゴム栓外郭支持体を設けて、ラミネートされたゴム栓体とゴム栓外郭支持体とが一体化された口栓体とし、さらに輸液容器の口部材と融着して使用するが、点滴のための単なる針の刺通の他、他薬剤液を混合しながら点滴を行うための該薬液注入用針の刺通、点滴中止に伴う針の引き抜きなどを行っても、ゴム栓が脱落しないことが必要となる。
即ち、輸液容器用ゴム栓としての重要な特性は、充填薬液方向に微粒子や有害物質を発生させることがなく、かつゴム栓外郭支持体とゴム栓との間の密着面に針刺通時及び引き抜き時、特にその繰り返し時に大きいせん断応力を受けても脱落しない密着強度を有することが要求される。
【0004】
このような輸液容器用ゴム栓に対する要望に応えるため、各種の提案がなされている。例えば、合成樹脂製フィルムをラミネートしたゴム栓を使用し、該ラミネート部分を合成樹脂製の支持体で把持させ、かつラミネートされたゴム栓と支持体とを融着させてなる口栓体を、輸液容器本体の口部材に融着させて液漏れを防ぐ技術が開示されている(例えば、特許文献2ないし特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】実開昭56−125249号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平2−1275号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平3−205141号公報(第2頁)
【特許文献4】特開平5−84275号公報(第2頁)
【0006】
しかしながら、これらの合成樹脂製フィルムがラミネートされたゴム栓は、ゴム栓の製造時にフィルムをゴム栓周囲から切り取る必要があり、金型を用い打ち抜くことが必要となる。そのため、ゴム栓側面部のフィルムにキズが発生しやすく、かつキズに基づくフィルム屑が製品であるゴム栓に異物として付着する。
このような合成樹脂製フィルムをラミネートしたゴム栓を用いてインサート射出成形により輸液容器用口栓体とする際、このフィルム屑に起因する付着物は、インサート射出成形前に洗浄を十分行っても完全に除去することができないため、射出成形時の熱などにより表面付着力が変化し、実使用時に付着物が充填液中に混入する可能性が有るという問題が指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題はゴム栓に異物などの付着物がなく、かつ充填薬液方向への微粒子や有害物質の発生がなく、さらにゴム栓とゴム栓外郭支持体との間の密着力に優れる輸液容器用口栓体及びその製造方法を提供するものである。また、本発明は、該輸液容器用口栓体を用いた輸液容器用口部材及び輸液容器を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、ゴム栓底面の薬液接触部側にゴム栓の径より小さな径の有底円筒形状の合成樹脂製封止体を装着することにより、充填薬液中への微粒子及び有害物質の発生がなく、針の刺通時に充填薬液の液漏れがないことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)に示される輸液容器用口栓体及びその製造方法に関する。
(1)合成樹脂製輸液容器の本体開口部に取りつけられる、円柱状のゴム栓とゴム栓外郭支持体とを有する口栓体において、ゴム栓が底面にゴム栓の外径より小さい径の厚み方向に伸びる円筒形のガイド溝を有し、該ゴム栓底面の薬液接触部側には有底円筒形状の合成樹脂製封止体が該合成樹脂製封止体の筒部をガイド溝に挿入することにより装着されていることを特徴とする輸液容器用口栓体。
(2)合成樹脂製封止体の筒部に突起部を設けると共に、ゴム栓内部の該突起部に当接する部分に係止部を設け、該係止部と該突起部とを嵌合することを特徴とする上記(1)の輸液容器用口栓体。
(3)ゴム栓が、胴部側面中央に、天面及び底面の径よりも大きい径の突出部を有することを特徴とする上記(1)または(2)の輸液容器用口栓体。
(4)合成樹脂製封止体とゴム栓外郭支持体とが合成樹脂製封止体の筒部において及び/又は底部の周端において融着していることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかの輸液容器用口栓体。
(5)ゴム栓外郭支持体がゴム栓天面周縁部を覆っていることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかの輸液容器用口栓体。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかの輸液容器用口栓体を製造する方法であって、合成樹脂製封止体が装着されたゴム栓を金型内に設置した後、合成樹脂を射出して該ゴム栓の側面部にゴム栓外郭支持体を形成するインサート射出成形法を用いることを特徴とする輸液容器用口栓体の製造方法。
【0010】
本発明はまた、以下の(7)及び(8)に示される輸液容器用口部材及び輸液容器に関する。
(7)上記(1)ないし(5)のいずれかの輸液容器用口栓体を具備することを特徴とする輸液容器用口部材。
(8)上記(1)ないし(5)のいずれかの輸液容器用口栓体を具備することを特徴とする輸液容器。
なお、本発明の輸液容器用口栓体において、「天面」及び「底面」は各々、「輸液容器の外側」及び「輸液容器の充填液側」を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、輸液容器用口栓体として、ゴム栓に合成樹脂製封止体を設置した後、ゴム栓とゴム栓外郭支持体とをインサート射出成形により一体化することにより得られた口栓体を用い、輸液容器受け口と融着された輸液容器では、充填薬液中に微粒子及び有害物質の発生がなく、かつ針の刺通時に充填液の液漏れがないため、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき説明する。
本発明の輸液容器用口栓体においては、円柱状のゴム栓は底面の薬液接触部側に有底円筒形状の合成樹脂製封止体が装着されている。
図1は、ゴム栓に合成樹脂製封止体が装着された状態の1態様を示す縦断面図であり、図2は、図1における合成樹脂製封止体の斜視図である。図1において、1は円柱状のゴム栓であり、1a、1b及び1cは、各々、ゴム栓の天面、底面及び胴部側面である。図1及び図2において、2は合成樹脂製封止体であり、2a及び2bは、各々、合成樹脂製封止体の筒部及び底部である。
【0013】
また、図3で縦断面図として示したように、合成樹脂製封止体の筒部内側に突起部2cを設けると共に、ゴム栓内部の該突起部に当接する部分に係止部を設け、該係止部と該突起部とを嵌合する形にすれば、装着をより確実にすることができる。なお、第3図の場合は、突起部2cは筒部の上端内向きに設けているが、上端と下端との中間に設けても良い。また上端外向6v5きでもよい。
【0014】
また、図1は、ゴム栓にガイド溝を設け、合成樹脂製封止体の筒部を該ガイド溝に挿入することにより合成樹脂製封止体が装着されている。
また、図4は、ガイド溝を設けたゴム栓の他の一例を示す縦断面図であり、ゴム栓1には、ゴム栓の外径より小さい径の、底面1bから厚み方向に伸びる円筒形のガイド溝1eが設けられている。
図5は、図4に示したガイド溝を設けたゴム栓に使用する合成樹脂製封止体の縦断面図であり、(A)として示したような、図1、図2に示した合成樹脂製封止体と同様の形状の他、(B)として示したような、底部を筒部の径より大きくした形状であってもよい。また、図4に示したガイド溝を設けたゴム栓への装着、即ち、合成樹脂製封止体の筒部をゴム栓のガイド溝へ挿入するのを容易にするために、筒部の下端近傍に、空気抜きの小孔を設けても良い。
図6は、図4に示したゴム栓に図5で示した合成樹脂製封止体を装着した状態を示す縦断面図であり、ゴム栓1に設けられたガイド溝1eの中に合成樹脂製封止体2の筒部2aが挿入されている。図6の円で囲んだ部分は、合成樹脂製封止体が図5の(A)の形状である場合は、(A)の如くとなるが、合成樹脂製封止体が図5の(B)の形状である場合は、(B)又は(B')の何れであっても良い。
ガイド溝の深さは、ゴム栓の厚みが5〜15mmのときは、3〜12mmとすることが好ましい。
【0015】
ゴム栓は、種々の形状をとることができ、図1に示したような円柱状の他、図4及び図6に示したような胴部側面中央に天面及び底面の径より大きい外径を有する所望幅の突出部1dを全周に設けた形状などを例示することができる。
前記したように、ゴム栓とゴム栓外郭支持体との密着面は注射針の刺通時または引き抜き時にせん断応力を受けるが、図4及び図6に示した、突出部1dを設けた形状の場合は、機械的一体化が図られ、このせん断応力に対し、より確実に耐えることができるので、好ましい形状である。なおここにいう胴部側面中央とは、該突出部の中央がほぼ胴部側面の中央近辺にあることを意味し、正確な中心位置である必要はない。また突出部の幅、高さは特に限定されるものではないが、断面台形状の突出部であることが耐せん断応力の点では特に好ましい。
【0016】
ゴム栓の材質は、従来輸液容器の口栓に使用されてきたものを含め、容器内の充填薬液に対する耐性があれば十分であるが、日本薬局方に係わる輸液用プラスチック容器試験法及び輸液用ゴム栓試験法の規格に適合したものが実用上使用される。またゴムの代りに熱可塑性エラストマーを用いたものであってもよい。
【0017】
本発明に使用される有底円筒状の合成樹脂製封止体においては、筒部の厚みは0.1〜0.5mmが適当であり、底部の厚みは0.03〜0.3mmが適当である。
筒部の厚みが、0.1mm未満の肉厚では、ゴム栓に装着することが困難となり、また、安定して大量に成形することにも困難が伴う。一方筒部の厚みが0.5mmを超えると、ゴム栓のガイド溝の幅が広くなり、図4に示すようなゴム栓を製造することが困難になる。
底部の厚みが0.03mm未満では、インサート射出成形などの成形時に破れたり、溶融したりして穴明きが発生し易くなる。一方底部の厚みが0.3mmを超えると針刺し抵抗が大きくなる傾向がある。
また、本発明に使用される有底円筒状の合成樹脂封止体においては、円筒部の径は、特に限定されるものではないが、円筒状のゴム栓の直径の95%〜50%が適当である。円筒部の径が95%を超えると、底部の面積が広くなるため前述の厚みを有する底部の成形の難易度が高くなる。50%未満の径では、ゴム栓を針が刺通する際に筒部に針が当たり易くなるため、使用者が戸惑うことがある。
【0018】
このような合成樹脂製封止体は、合成樹脂の成形加工分野で一般的に用いられている射出成形法または熱成形法により容易に成形できる。熱成形法では、まず所定厚みのフィルムまたはシートを成形した後、フィルムまたはシートを加熱し、真空・圧空力により型に押し付けることにより賦形する。この場合、円筒状封止体は打ち抜き型を用いて、打ち抜かれる。射出成形法では、円筒形状金型中に溶融樹脂を加圧充填し冷却することにより円筒状封止体を得ることができる。
本発明における円筒状封止体は、ゴム栓の径に比べて小さな径であるから、ゴム栓の薬液接触側の全面を覆うだけの面積を薄膜とする必要が無く、射出成形法であっても薬液接触側となる円筒状封止体の底部厚みを薄くすることが可能である。
【0019】
合成樹脂製封止体の材質は、ゴム栓外郭支持体との融着性を有することや、充填薬液に対して耐性を有することが求められるが、前者の融着性が特に求められる場合は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系重合体などが例示でき、後者の耐薬品性が特に求められる場合は、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンなどが好適に使用できる。両者が特に求められる場合は、ポリエチレン、ポリプロピレンなど炭化水素からなるポリオレフィン重合体が特に好適である。
また、合成樹脂封止体は太い針を用いて刺通する際に、底部が破壊し易くなる傾向があるため、合成樹脂の柔らかさ等も勘案すると、ポリエチレンでは密度0.95g/cm3以下のエチレン単独重合体、エチレンと他のオレフィンとの共重合体及エチレンと酢酸ビニルなどとの共重合体が好ましく、またポリプロピレンでは、エチレンとのランダム共重合体が好ましい。
【0020】
本発明の口栓体は、以上の如き合成樹脂製封止体を装着した円柱状のゴム栓とゴム栓外郭支持体とを構成要素とするものである。
図7は、図6に示した形状〔但し、円内の形状は(A)で示した形状である〕の合成樹脂製封止体を装着したゴム栓とゴム栓外郭支持体とからなる口栓体の縦断面図である。
図7においては、ゴム栓1の胴部側面から合成樹脂製封止体2の底部周端に沿ってゴム栓外郭支持体3が成形されて口栓体4を形成している。
ゴム栓外郭支持体は、ゴム栓を胴部側面から保持するものであり、ゴム栓の天面及び底面の周縁部及び胴部全側面のうち少なくとも胴部全側面はゴム栓外郭保持体と密着して接していることが好ましい。また、ゴム栓に装着された合成樹脂製封止体とゴム栓外郭支持体とは融着しているのが好ましく、従って、ゴム栓外郭支持体と接する位置まで形成されていることが好ましい。
【0021】
図7に示した態様では、ゴム栓外郭支持体3は、ゴム栓の底面周縁の合成樹脂製封止体底部周端に至る部分にわたり密着して形成されており、この部分においてゴム栓外郭支持体と合成樹脂製封止体とを融着することが可能となる。
更に、図7における円内の形状を(B)で示した形状とした態様では、ゴム栓天面の周縁部にわたり密着して形成されて形成されている。
これにより、ゴム栓、ゴム栓外郭支持体及び合成樹脂製封止体の一体化が図られて、薬液注入または排出用針の刺通時、引き抜き時またはこれらの繰り返し時にも液漏れのない口栓体となる。
また、ゴム栓外郭支持体が、ゴム栓天面の外周縁部を覆う形状とすることは、ゴム栓から針を引抜く際のゴム栓の脱落防止の面から好ましい。
また、ゴム栓外郭支持体3は、後記するように、口栓体受け口との液密シールに寄与する部分として、上方に伸びた伸長部3aを設けるのが好ましい。、
合成樹脂製封止体とゴム栓外郭支持体とを融着させれば、合成樹脂製封止体の脱落を防止することが可能となる。
【0022】
図8は、図7に示した口栓体4を輸液容器の口部材5の上方拡径部に設けた口栓体受け口5aに嵌挿した輸液容器用口部材の製造工程の一例を示す縦断面図であり、該口栓体受け口5aはその下端に受け部5bを、上方にゴム栓外郭支持体の環状凸部3aよりもさらに長く伸びた伸長部5cを有している。
該伸長部5cは上記環状凸部3aとともに、口栓体と口栓体受け口との液密シールに寄与する部分であり、図8に示すように、上方に配置され、矢印方向に移動可能な溶融シーラー6をこの部分に押しあてることにより、口栓体と口部材が口栓体受け口で液密にシールされ、輸液容器用口部材となる。
溶融シーラー6はヒーター6aを有するが、口栓体側にはゴム栓外郭支持体及び口栓体受け口を溶融一体化するための凹部を有し、該凹部は底部6bと傾斜した側面6cとからなり、シーラーの押し当て方により、口栓体受け口の伸長部5cは、内方に溶融状態で流動し、一方、外郭支持体環状凸部3aも溶融状態になり、両者は溶融部分7(図9)を形成する。
【0023】
図9は、融着溶融部分7が形成された輸液容器用口部材を示す縦断面図であり、同図において、1はゴム栓、2は合成樹脂製封止体、3は外郭支持体、5は口部材、5aは口栓体受け口、5bは受け部、7は融着部分をそれぞれ示す。
本発明に係わる輸液容器用口栓体は、合成樹脂製封止体が設けられたゴム栓とゴム栓外郭支持体を構成要素とするが、ゴム栓外郭支持体はゴム栓の胴部側面に沿って底面からさらに伸長させ、その先端には外方に突出する環状リブをフランジとして形成した構造にしておけば、合成樹脂製輸液容器本体開口部にもフランジを設けることにより、両者の結合は容易になる。
【0024】
両者(ゴム栓外郭支持体のフランジと合成樹脂製輸液容器本体開口部のフランジ)の結合には超音波溶着その他、合成樹脂成形体において通常行われる融着方法が適用できる。さらに、上記のようにゴム栓外郭支持部を伸長させることなく、ゴム栓の胴部側面から合成樹脂製封止体底縁部に沿ってゴム栓外郭支持体を形成しておくこともできる。この場合は、該口栓体を合成樹脂製輸液本体開口部に予め形成された口部材の口栓体受け部に嵌挿し、両者間を公知の各種熱融着手段により液密に融着する方法が効果的な方法として採用することができる。
【0025】
本発明はまた、ゴム栓にゴム栓外郭支持体を形成させた口栓体の製造方法をも提供する。この方法は、ゴム栓を金型内に予めインサートしておき、ゴム栓外郭支持体を射出成形するものである。
図10は、本発明に係る口栓体(図7に示す口栓体に類似するもの)を製造する方法の他の一例を示すものである。
割金型A,B,C及びDから構成されたインサート射出成形金型に、合成樹脂製封止体が設けられたゴム栓1がインサートされ、キャビティCb内に射出ゲートCcより樹脂が射出され、ゴム栓外郭支持体が形成される。
ゴム栓を金型内に予めインサートし、ゴム栓の位置決めをするためにその天面または底面を金型表面に仮固定するが、この位置決めのための仮固定の方法としては、ゴム栓の天面または底面の相対する金型B、Dに設けられた、ベント孔Ba、Daを利用して、ゴム栓を該金型表面の所定位置において吸引固定する方法などを採ることができる。
その他、例えば特開平8−317961号公報に記載された方法を用いて、口栓体を製造することができる。
【0026】
本発明の輸液容器は、輸液容器用口部材と輸液容器本体からなるものである。
輸液容器本体は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる合成樹脂製からなる充填液を視認することのできる透明な容器であり、輸液ボトル、輸液バッグなどが例として挙げられる。輸液バッグの場合には容器本体開口部に輸液容器用口部材が融着されている。輸液容器用口部材には上述の輸液容器用口栓体が具備されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】合成樹脂製封止体を装着した状態のゴム栓の1態様を示す縦断面図である。
【図2】図1における合成樹脂製封止体の斜視図である。
【図3】筒部内部に突起部を設けた合成樹脂製封止体が装着された状態のゴム栓の1態様を示す縦断面図である。
【図4】ガイド溝が設けられたゴム栓の1態様を示す縦断面図である。
【図5】図4に示したゴム栓に使用する合成樹脂製封止体の例を示す縦断面図である。
【図6】図4に示したゴム栓に図5に示した合成樹脂製封止体を装着した状態を示す縦断面図である。
【図7】合成樹脂製封止体を装着したゴム栓と外郭支持体とからなる口栓体の1態様を示す縦断面図である。
【図8】図7の口栓体を輸液容器の口部材の開口部に嵌挿し、シーラーを配置した状態の縦断面図である。
【図9】図8に示した方法により口栓体を溶融一体化した輸液容器用口部材の縦断面図である。
【図10】本発明の口栓体を製造するための、インサート射出成形装置の1例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…ゴム栓
1a…ゴム栓天面
1b…ゴム栓底面
1c…ゴム栓胴部側面
1d…ゴム栓胴部突出部
1e…ガイド溝
2…合成樹脂製封止体
2a…合成樹脂製封止体筒部
2b…合成樹脂製封止体底部
2c…合成樹脂製封止体突起部
3…ゴム栓外郭支持体
3a…環状凸部
4…口栓体
5…口部材
5a…口栓体受け口
5b…受け部
5c…伸長部
6…溶融シーラー
6a…溶融シーラーヒーター
6b…溶融シーラー凹部底面
6c…溶融シーラー凹部側面
7…溶融部分
A,B,C,D…割金型
Cb…キャビティ
Cc…射出ゲート
Ba,Da…ベント孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製輸液容器の本体開口部に取りつけられる、円柱状のゴム栓とゴム栓外郭支持体とを有する口栓体において、ゴム栓が底面にゴム栓の外径より小さい径の厚み方向に伸びる円筒形のガイド溝を有し、該ゴム栓底面の薬液接触部側には有底円筒形状の合成樹脂製封止体が該合成樹脂製封止体の筒部をガイド溝に挿入することにより装着されていることを特徴とする輸液容器用口栓体。
【請求項2】
合成樹脂製封止体の筒部に突起部を設けると共に、ゴム栓内部の該突起部に当接する部分に係止部を設け、該係止部と該突起部とを嵌合することを特徴とする請求項1に記載の輸液容器用口栓体。
【請求項3】
ゴム栓が、胴部側面中央に、天面及び底面の径よりも大きい径の突出部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の輸液容器用口栓体。
【請求項4】
合成樹脂製封止体とゴム栓外郭支持体とが合成樹脂製封止体の筒部において及び/又は底部の周端において融着していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の輸液容器用口栓体。
【請求項5】
ゴム栓外郭支持体がゴム栓天面周縁部を覆っていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の輸液容器用口栓体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の輸液容器用口栓体を製造する方法であって、合成樹脂製封止体が装着されたゴム栓を金型内に設置した後、合成樹脂を射出して該ゴム栓の側面部にゴム栓外郭支持体を形成するインサート射出成形法を用いることを特徴とする輸液容器用口栓体の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の輸液容器用口栓体を具備することを特徴とする輸液容器用口部材。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれかに記載の輸液容器用口栓体を具備することを特徴とする輸液容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−254932(P2006−254932A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72241(P2005−72241)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(595159530)昭和電工プラスチックプロダクツ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】