説明

輸液注入ポンプ上流にある流体サプライに関連付けられた通気孔の状態を検出するためのシステム

【課題】ポンピングによって流体ラインおよび流体容器から流体を引き出す際に、適切な通気の欠如により輸液注入ポンプの上流での流体ライン内の圧力が低くなったかどうかを判定するためのシステムを提供すること。
【解決手段】本発明のシステムによれば、初期圧力が、注入の開始時に上流圧力センサによって感知される。注入時間または完了したポンプ・サイクルの回数を監視することによって決定される場合がある期間の後、第2の圧力がサンプルされ、初期圧力と比較される。上流の圧力または傾向を求めるために、感知された圧力に様々な解析方法を適用することができる。上流圧力読取値が適切な通気の欠如を示す場合、警報信号が提供される。上流の圧力または傾向を求めるために、継続的な監視を行うことができ、後続のサンプルが先行のサンプルと比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義の概念では、患者への輸液の投与中に、輸液注入ポンプの上流の注入ラインまたは容器内に負に進行する圧力(negative−going pressure)が存在する時を検出するためのシステムおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、流体ライン内部の圧力の負に進行する変化を感知するため、および容器側圧力を監視するための圧力センサを組み込んだシステムであって、それによって未開放の通気孔または閉鎖された通気孔のせいで負に進行する圧力が進展するのを防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者への治療流体の注入の際の一般的な問題は、注入する流体がビュレット、ボトル、または他の非可撓性もしくは部分的に可撓性の容器内に収容されている場合に生じる。これらのような容器を流体リザーバとして使用するとき、注入の進行中に容器を通気しなければならない。ボトル、ビュレット、または他の比較的剛性の高い容器から流体を排出するとき、容器を通気しないと、容器内部に負の圧力が生じる。この負の圧力は、流れの低下をもたらす場合があり、これは治療流体の不正確な送達につながる。
【0003】
治療流体を注入するために輸液注入ポンプを使用する場合、容器内部に生じる負の圧力は、輸液注入ポンプの負担を増大することもあり、また所望の流体注入速度を維持することができない場合にポンプにアラームを発生させることがある。生じ得る別の問題は、特に注入ラインが輸液注入ポンプに入る前の注入ラインの接合部において、負の圧力がシステムへの空気進入をもたらす場合があることである。これにより、空気が治療流体中に連行され、続いて患者に注入される場合がある。多くの輸液注入ポンプは、そのような連行される空気を検出して、患者に危害を加える可能性がある量の空気が患者に注入される前に注入を止めるため、あるいは介護者による注意を求めるアラームを発するために様々なライン内空気センサを採用するが、そのような事象の発生を防止するほうが、より費用対効果が高く、また効率的である。さらに、壁が薄く、しかし剛性の高い容器を使用する場合、負の圧力は、薄い壁の容器を潰す程度まで、また場合によってはその内容物をこぼす程度まで増大することがある。
【0004】
典型的には、ボトル、ビュレット、または他の剛体もしくは半剛体容器から流体を注入するシステム内に通気孔を使用することにより、流体が容器から排出されるときに負の圧力の発生を防止する。しかし、介護者が通気孔を開くのを忘れた場合、または注入する特定の薬物または薬物の組み合わせが通気孔を濡らしている場合には、通気孔が空気の通過を可能にせず、ポンプが容器から流体を引き出そうとするときに容器および流体ライン内で徐々に増大する負の圧力がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要とされており、且つ従来利用可能でないものは、通気が適切に機能することを必要とする容器が、適切に通気されない時を求めるためのシステムおよび方法である。そのようなシステムは、注入が不正確になる前、またはポンプに損傷が生じる前に介護者に信号を提供することができるよう、十分に早期に負の圧力の発生を検出することができる。さらに、そのようなシステムは、吸込口圧力すなわち容器側圧力が長い時間にわたって変化していないかどうか(これは安定した注入速度を示している)、あるいは流体が容器から取り出されるにつれて圧力が低下しているかどうか(これは介護者による注意を要する適切な通気の欠如を示している)を決定することができる。本発明は、これらおよびその他の要求を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔且つ一般的に言えば、本発明は、輸液注入ポンプの上流の流体ライン内の低下する圧力または負に進行する圧力の形成に繋がる、容器が適切に通気されない時を検出するためのシステムおよび方法を対象とする。最も広範な観点では、本発明は、輸液注入ポンプの上流での吸込流体ライン内の流体の圧力を検出するためのセンサを含む輸液注入ポンプにおいて具体化される。
【0007】
別の観点では、本発明は、輸液注入ポンプの上流の吸込流体ライン内部の圧力を監視するように構成されたセンサから受け取る信号を監視するプロセッサを有する輸液注入ポンプ・システムを有し、このプロセッサはまた輸液注入ポンプ内部の蠕動ポンプを監視して、そのポンピング・サイクルでの状態または位置を追跡する。さらなる観点では、このプロセッサが、各ポンピング・サイクルに対して吸込口圧力を複数回サンプリングしてサイクル平均を計算し、蠕動ポンプによって完了されたポンピング・サイクルの回数を追跡し、所定の回数のポンプ・サイクルが完了した後にサイクル平均圧力をデータ処理する。さらなる観点では、選択された回数のポンプ・サイクルが完了するたびにサイクル平均圧力がサンプリングされる。上流圧力センサから信号をサンプリングした後、プロセッサは、上流注入ライン内に負に進行する圧力が存在するかどうかを判定する。
【0008】
本発明のさらに別の観点では、プロセッサは、上流注入ライン内に負に進行する圧力が存在すると判定した場合に、介護者に警報を提供するように指示することができ、注入装置に注意が必要であることを介護者に知らせる。そのような警報は、例えばディスプレイ上のメッセージ、点滅する光、またはディスプレイ上のテキストの色の変化などの視覚的なものとすることができる。別の観点では、警報は、アラームなどの聴覚的なものにすることができる。さらに別の観点では、警報は、印刷されたリポートの形を取る場合がある。さらに別の詳細な観点では、視覚的警報と聴覚的警報の組み合わせを提供することができる。輸液注入ポンプが施設病院管理システムや患者監視システムなどの他のシステムと通信している場合、警報は、警報のデータ・ベースに記録すること、および/または患者の医療管理記録(「MAR」)に関連付けて記憶することができる。
【0009】
本発明のさらに別の観点では、感知された吸込口圧力を、プロセッサによってアクセス可能なメモリに記憶することができる。さらなる観点では、プロセッサは、選択された回数のポンプ・サイクルを待ち、選択された回数のポンプ・サイクルの終了時にサイクル平均センサ信号をサンプリングし、上流の流体ライン内の圧力に関する第2の後のサイクル平均圧力値を求めることができる。次いでプロセッサは、第2の後のサイクル平均圧力値を先の圧力値と比較して、流体ライン内に負に進行する圧力が存在するかどうかを判定することができる。プロセッサは、故障状態が存在するかどうかを判定する際に、時間に対するサイクル平均吸込口圧力信号の勾配とその測定値とを採用することができる。次いでプロセッサは、注入装置への注意が必要とされることを示す警報を発してもよい。
【0010】
本発明によるさらに別の観点では、輸液注入ポンプの上流で流体サプライに関連付けられた通気孔の状態を検出するためのシステムであって、輸液注入ポンプの上流に配置された、吸込流体ライン内部の圧力を表す圧力信号を提供するように構成された圧力センサと、ポンピング・サイクル内における機構の位置などの輸液注入ポンプの状態を表すパラメータを監視し、圧力センサから受け取った圧力信号を輸液注入ポンプの状態の関数としてサンプリングし、サンプリングした信号が流体ライン内の負に進行する圧力を示す場合に警報を提供するように構成されたプロセッサとを有するシステムが提供される。さらに別の観点では、負に進行するサイクル平均圧力が通気についての問題を示している。
【0011】
さらに別の観点では、本発明は、輸液注入ポンプが蠕動ポンプであり、監視するパラメータが、蠕動機構サイクル内部での位置と、蠕動ポンプが完了したポンプ・サイクルの回数の値との両方であるシステムを含む。さらに別の観点では、プロセッサは、監視するパラメータの値がポンプ・サイクルの所定の回数を超えたときに、圧力センサから受け取った信号または圧力信号のサイクル平均をサンプリングする。
【0012】
さらなる観点では、プロセッサは、所定の回数のポンプ・サイクルが行われた後に、圧力センサから受け取ったサイクル平均圧力信号を定期的にサンプリングする。一実施例では、ポンプ・サイクルの所定の回数は3回である。
【0013】
別の観点では、本発明は、蠕動輸液注入ポンプの上流に配置された流体ライン内の通気孔の状態を求める方法であって、蠕動輸液注入ポンプが、循環式に流体をポンピングするように構成されており、また前記方法が、輸液注入ポンプによって完了されたサイクルの回数を表す値を求めるステップと、輸液注入ポンプの上流での流体ライン内の圧力を感知するように構成された圧力センサによって提供されるサイクル平均圧力信号をサンプリングするステップと、サイクル平均圧力信号を処理して、上流の流体ライン内の圧力に関する値を求めるステップと、サイクル平均圧力の変化の割合が制限値を超えた場合に警報を提供するステップとを含んでおり、その制限値が、固定値である、または制御インターフェースを介してポンプの制御システムに提供される容器のサイズおよびタイプの関数である場合がある方法を含む。別の観点では、サイクル平均圧力のサンプリングは、所定の回数のポンプ・サイクルが完了したときにのみ行われる。
【0014】
本発明のさらなる観点では、前記方法が、サイクル平均圧力の値をメモリに記憶するステップと、所定の回数のサイクルが完了した後にサイクル平均圧力をサンプリングするステップと、上流の流体ライン内の圧力に関する第2のサイクル平均値を求めるステップと、圧力に関する第2の値を圧力に関する第1の値と比較するステップと、第2の値が第1の値よりも事前設定された量だけ、または制御インターフェースを介してポンプの制御システムに提供される容器サイズおよびタイプの関数だけ負である場合に、警報信号を提供するステップとを含む。
【0015】
さらに別の観点では、本発明は、輸液注入ポンプの上流での注入ライン内の圧力の変化を検出するためのシステムであって、上流注入ラインに隣接して輸液注入ポンプの上流に配置された、上流の流体ライン内部の圧力を表す圧力信号を提供するように構成された圧力センサと、患者への流体の注入の状態を表すパラメータを監視するようにプログラムされたプロセッサであって、さらに、圧力センサから受け取った圧力信号を注入の状態の関数としてサンプリングし、サンプリングした信号を解析して、上流の流体ライン内の圧力が低下しているかどうかを判定するようにプログラムされたプロセッサとを有するシステムを対象とする。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の構成を例として示す添付図面に関連して与えられる以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】流体源と、流体源から患者に流体を注入するための輸液注入ポンプとを含む注入装置を示す図である。
【図2】上流圧力センサを含む例示的な蠕動輸液注入ポンプの側面図である。
【図3】本発明の方法を実施するようにプログラムすることができる輸液注入ポンプ制御システムの一実施例の概略図である。
【図4】上流の流体ラインまたは容器内の低下する圧力を検出することを対象とする本発明の方法の一実施例のブロック図である。
【図5】上流の流体ラインまたは容器内の低下する圧力を検出することを対象とする本発明の方法の代替実施例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで図面を参照すると、図中の同様の参照番号は、同様の要素または対応する要素を表す。図1に、参照番号10で一般に表される輸液注入ポンプ装置が、その所期の環境での使用状態で示されている。特に、輸液注入ポンプ装置10は、静脈(I.V.)ポール12に取り付けられて示されており、静脈ポール12に、I.V.流体を含む流体源14が保持されている。流体源14は、上流の流体ライン16と流体連絡して接続される。流体ライン16は、病院または医療環境で通常使用される従来のI.V.注入タイプの管(チューブ)であり、ポリ塩化ビニル(PVC)など、患者に治療流体を注入するために使用するのに適した任意のタイプの可撓性管材料からなる。可撓性管材料から形成されるポンピング・チューブ・セグメント18が、蠕動ポンプ・ポンピング装置19と動作係合して取り付けられ、下流の流体ライン20を通して患者の腕22に流体を送出する。上流の流体ライン16、可撓性ポンピング部分18、および下流の流体ライン20は、可撓性管材料の連続する長さの一部分とすることができ、これらの部分は、蠕動ポンプ19の位置によって画定されることを当業者は理解するであろう。簡略化のため、図1に示す管の長さ全体を参照番号21で示している。この文脈では、用語「上流」は、流体源14と蠕動ポンプ10との間に延びる可撓性管材料21の部分を表し、用語「下流」は、蠕動ポンプ10から患者22に延びる可撓性管材料21の部分を表している。
【0019】
図2は、流体ライン21と蠕動輸液注入ポンプの要素との相互作用を示す輸液注入ポンプ10の拡大図である。流体ライン21は、可撓性ポンピング部分18が蠕動輸液注入ポンプの1つまたは複数のポンピング・フィンガ40と解放可能に接触するように、ポンプ10のハウジング30内に配設される。典型的には、そのような蠕動輸液注入ポンプは、回転カムを有するカムシャフト35または他の機構を利用してフィンガ40の1つまたは複数を活動化し、それによりフィンガ40が管21の可撓性部分18を順次押圧して圧搾し、管内部の流体を下流方向に押し進める。蠕動機構の動作は当業者によく知られており、本明細書でさらなる詳細は提供しない。
【0020】
上流吸込口圧力センサまたは検出器50が、ポンプ10のハウジング30内に取り付けられて、上流または容器側の管16内部の流体圧力を監視する。上流吸込口圧力センサ50は、当技術分野で知られている任意の種類の検出器であってよく、管16内部の流体圧力を監視し、且つ信号を提供することができ、この信号は、例えば増幅器、A/D変換器、フラッシュ・メモリなどのデジタル記憶媒体、またはセンサによって提供される信号を表す値を記憶するための他のタイプの適切な記憶媒体など、適切な電子機器によって受信することができる。またデジタル化された信号を、解析、表示、または報告のためにコンピュータまたはマイクロプロセッサに提供することもできる。上流注入ライン内部の圧力を監視するのに適した圧力センサまたは検出器の例は、容量、半導体または電気抵抗ひずみゲージ、圧電検出器、あるいは当業者に知られている他のセンサまたは検出器である。
【0021】
また本発明で具体化される上流吸込口圧力センサおよび方法は、回転蠕動または他の循環輸液注入ポンプ機構にも同様に適用可能であり、それらが本発明の範囲内に入ることが意図されていることを当業者は理解するであろう。さらに本発明は、ポンプに関連付けられたプロセッサまたはコンピュータを有する輸液注入ポンプに関係付けて説明されているが、本発明は、マイクロプロセッサまたはコンピュータがポンプから遠隔にあり、しかしポンプと通信しているシステムも含むことが意図されている。
【0022】
一般に、図3に示されるように、輸液注入ポンプは、所望の期間にわたって所定量の薬剤または他の治療流体が患者に注入されるように蠕動輸液注入ポンプの動作を制御するように構成またはプログラムされた制御システム70を含む。そのような制御システムは、典型的には、マイクロプロセッサ75と、マイクロプロセッサ75に関連付けられたメモリ80と、マイクロプロセッサに信号を入力するための1つまたは複数の入力85と、マイクロプロセッサから信号を出力するための1つまたは複数の出力90とを含む。
【0023】
また制御システム70は、入力/出力ポート92および通信手段95を使用して、薬局情報システム、病院管理システム、または施設内の他のそのようなシステムなどの情報システムと通信してもよい。入力/出力ポート92は、RS232など適当な通信プロトコルを使用してデータを送信および受信するように構成された任意のポートであってよい。例えば、入力/出力ポート92は、シリアル・ポート、パラレル・ポート、USB、または他の適切なポートにすることができる。またプロセッサ75への、および/またはプロセッサ75からの全ての信号が、個々の入力および出力を介してではなく、1つまたは複数の入力/出力ポート92を介して通信されるように、入力85および出力90を組み合わせることができることを理解されたい。
【0024】
通信手段95は、別のコンピュータへのハードワイヤードまたは無線接続、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワーク、遠隔サーバまたはクライアント・システムへの電話回線、あるいはインターネットとすることができる。通信手段は、光ファイバ、同軸ケーブル、イーサネット(登録商標)・ケーブル、または他の通信ラインに接続するための特殊化された接続デバイスを含む場合もある。別法として無線接続を使用することができ、これは、当技術分野で知られている適切な送信機および受信機の使用を含む場合もある。そのような無線接続は、赤外線、RF、ブルートゥース、またはWiFi(IEEE802.11b)通信手段などを含む場合がある。さらに、マイクロプロセッサ75は通例、望まれるタスクを実施することができるように埋め込みプログラミング命令または適切なソフトウェアを使用してプログラミングされる。
【0025】
本発明のシステムおよび方法の一実施例では、マイクロプロセッサ75は、上流吸込口圧力センサ105から入力85を介して信号を受信することができる。上流吸込口圧力センサ105は、上流注入ラインに隣接して配設されて、上流注入ライン内部の流体圧力を監視し、注入ライン内部での感知された圧力を表す信号をマイクロプロセッサ75に提供する。上述したように、マイクロプロセッサ75は、上流圧力センサ50から受信された信号を解析するように、適当なソフトウェアまたは埋め込みコマンドを使用してプログラミングされている。受信された上流圧力信号の解析が完了した後、プロセッサは、出力90を介して信号を出力することができる。この信号は、患者への流体の注入を制御するためにポンプ・モータ115に送ることができる。
【0026】
また信号をディスプレイ120に送り、ポンプの状態および/または上流注入ライン内部の圧力を操作者に知らせることもできる。またこのディスプレイは、点滅する表示、点滅する光、またはディスプレイ上のテキスト色の変化など視覚的な警報を提供する手段を含むこともあり、注入装置に注意が必要であることを操作者に警告する。
【0027】
また信号を警報モジュール125に送ることもできる。この警報モジュールは、ポンプを制御しているプロセッサの個別のモジュールとすることができ、あるいはポンプから遠隔の位置に配置すること、および/またはポンプから遠隔にある別個のプロセッサに関連付けて通信することもできる。警報モジュール125は、視覚的、聴覚的、または視覚と聴覚の組み合わせの通知を介護者に提供するように構成することができ、注入システムに注意しなければならないことを介護者に警告する。警報モジュールは、ベッド脇、ナース・ステーション、または中央監視システムにあるコンソールに連絡される信号を発生することができる。さらに、ディスプレイ変化および聴覚的警報の様々な組み合わせを使用して警報の優先順位を表すことができ、注入を受ける患者に危害が生じる前に問題を修正するため、早急の注意を要さない警報は早急の注意を要する警報ほどには目立たなくてもよい。
【0028】
また警報モジュール125は、上流注入ライン内で感知された低下する圧力または負の圧力により発生される任意の警報を含む注入の進行を表す信号をデータ・ベースに提供することもでき、その情報は、後で検査および解析するためにそこに記憶される。データ・ベースはポンプに関連付けられていてもよく、またはポンプ10から遠隔にある場合がある。例えば、ポンプが遠隔制御システムによって制御される場合、データ・べースは、遠隔制御システムに位置付けおよび関連付けられていてもよい。別の実施例では、データ・ベースは、施設の情報システムの一部にすることができ、その情報システムは、企業ワイド・ネットワーク(enterprise wide network)の一部であってもよい。
【0029】
別の実施例では、マイクロプロセッサ75は、ポンプ機構位置センサ110から入力85を介して信号を受信するように構成することもできる。この実施例では、プロセッサ75は、ポンプ10の機能を監視することができ、例えば注入の開始時間および完了時間、注入される流体の量、注入の開始以来、または過去の選択された時間以来の完了されたポンプ・サイクルの回数、および複数の対応するポンプ機構位置それぞれでの吸込口圧力値など、注入に関係する情報を収集し、解析し、記憶する。この情報は、後で検索および解析するためにメモリ80に記憶することができ、または通信手段95を使用して別の遠隔のシステムに通信することもできる。
【0030】
図4は、上流注入ライン内の圧力を求めるため、および通常の通気状態の下で予想される速さを超える速さで上流注入ライン内に負の圧力が生じていることを表す警報を与えるべきかどうかを判定するために、プロセッサによって行われる本発明の方法の一実施例を例示する概略ブロック図200である。上述したように、このプロセッサは、他のプロセスの中でもとりわけ図4に記載されるステップを行うようにプログラムされる。ボックス205において介護者または操作者が輸液注入ポンプを活動化することによって注入を開始するとき、ボックス210においてプロセッサは上流圧力センサ(図2)によって提供される上流注入ライン内部の圧力を表す信号をサンプリングし、且つサンプリングした信号を圧力に変換し、ボックス215においてその圧力と、関連する機構位置(典型的には、指数、ステップ数、または回転角度で表される)とを、プロセッサ(図3)に関連付けられたメモリに記憶する。
【0031】
次いでボックス220において、プロセッサは、それぞれのサイクルから得られる複数のサンプルからサイクル平均圧力を計算し、経過したポンピング時間を監視し、選択された期間待機する。この期間は、選択された回数のプロセッサ・クロック・サイクルが行われるのに必要な時間として、あるいは、例えば当技術分野で知られているプロセッサのクロック速度に基づくプロセッサの動作特性から決定される何らかの他の時間尺度として、プロセッサによって決定することができる。ボックス225で判定されるように、所定の期間が経過した後、または機構の特定の運動が検出された後、ボックス230においてプロセッサは、上流圧力センサから信号を再びサンプリングし、サンプリングした信号を圧力値に変換し、これらのサンプルをサイクル平均圧力に変換し、ボックス235において第2のサイクル平均圧力値を、記憶されているサイクル平均圧力値と比較して、上流注入ライン内で圧力の変化があったかどうかを判定することができる。所定の期間が経過または運動が発生しなかった場合、ボックス220で示されるように、プロセッサは、経過したポンピング時間または運動を引き続き監視する。
【0032】
第2のサイクル平均圧力値が第1のサイクル平均圧力値よりも所定の値以上に、またはポンプのユーザ・インターフェースから入力される容器のサイズおよびタイプに関連付けられる値以上に下回っている場合、プロセッサは、介護者に警報を与えるべきであると判定し、ボックス240で、視覚的または聴覚的アラームを提供することによってその警報を提供し、あるいは、故障状態が存在しており、介護者が注入装置を検査して、上流注入ラインまたは容器内の通気孔を開放または解除するなど適当な修正作業を行うべきであるという通知を提供する。先のサイクル平均圧力に対する後のサイクル平均圧力の比較が、上流注入ライン内の圧力の過剰な低下を示さない場合、プロセッサはボックス215に戻り、最新のサイクル平均圧力をメモリに記憶する。
【0033】
プロセッサは、上述したプロセスが注入の間継続的に行われるようにプログラムすることができ、フェールセーフ・システムを提供して、上流注入ラインおよび流体容器の適切な通気を保証することができる。そのような実施例では、ボックス215において最新の圧力値がメモリに記憶された後、プロセッサは、追加の期間にわたって経過したポンピング時間を引き続き監視し、各ポンピング時間間隔に対して上述した残りのステップを実施する。
【0034】
上流の圧力の最新サイクル平均値がメモリに記憶されるとき、先の1つまたは複数の値のメモリを単に上書きすることができ、または別法として、後の解析のために、注入中に求められる全ての圧力値を記憶するようにメモリを構成することもできる。複数の連続するサイクル平均値をデジタル重み付けアルゴリズムと共に使用してサイクル平均圧力信号の最適化勾配を計算することもでき、この勾配は2サイクルよりも大きい範囲にわたっており、したがって運動の影響および他のタイプの環境アーティファクトに対する耐性がより高い。圧力値の全てまたは少なくとも一部が記憶される場合、それらは、プロセッサが順次に利用可能であるように記憶され、それによりプロセッサは、上述したように最新の圧力値をその前の圧力値と比較すること、および/またはより複雑な勾配解析を行うことができる。
【0035】
図5に示される本発明の別の実施例では、プロセッサは、輸液注入ポンプによって完了されたポンプ・サイクルの回数を監視することによって、上流圧力センサから信号をサンプルするための時間枠を決定することができる。ボックス255において介護者または操作者が輸液注入ポンプを活動化することによって注入を開始したとき、ボックス260においてプロセッサは、上流圧力センサによって提供される上流注入ライン内部の圧力を表す信号をサンプリングし、サンプリングした信号を圧力に変換し、機構サイクルに関連する複数の圧力サンプルを平均化し、ボックス265においてプロセッサに関連付けられたメモリにサイクル平均圧力を記憶する。
【0036】
次いでボックス270において、プロセッサはポンプ・サイクルの回数を監視する。ボックス275で判定されるように、ポンプが選択された回数「N」のサイクルを完了した場合、プログラムはボックス280に進み、上流圧力センサからの信号が再びサンプリングされ、ボックス285で、新たなサイクル平均圧力値が、最新の記憶されているサイクル平均圧力値と比較されて、差が求められる。選択された回数のサイクルが完了していない場合、プログラムはボックス270に戻り、選択された回数のサイクルが完了されるまでポンプ・サイクルの回数を監視し続け、その後ボックス280に進む。
【0037】
ボックス280でサンプリングされた圧力が、記憶されている圧力値よりも許容最大値を超えて下回っていることがボックス285で判定された場合、ボックス290においてプロセッサは警報信号を提供するように指示する。ボックス285での比較が、最新のサンプル圧力が記憶されている圧力と等しいか、またはそれよりも大きいことを示し、上流ライン内の圧力が安定または低下していないことを示す場合、プログラムはボックス265に進み、最新のサンプル圧力をメモリに記憶し、ボックス270において上流の圧力をサンプリングすべき次の時間までポンプ・サイクルの回数を監視し続ける。
【0038】
別法として、プロセッサは、選択された期間にわたってメモリに記憶されたサイクル平均圧力の差の値をサンプリングし、例えばその期間にわたって平均値を計算して、最新の圧力値と比較することができる。このタイプの解析の一例は、一般に移動平均と呼ばれ、これは重み付けされることも、重み付けされないこともあり、それらの用語は当技術分野で理解される。このようにして、瞬時の圧力変化、または上流圧力センサによって提供される信号のエラーをフィルタ除去して、不必要なアラームを防止することができる。傾向解析や他の方法などその他の解析方法を利用して、上流注入ライン内の大幅に低下する圧力または負の圧力からの保護を依然として提供しながら、重要でない圧力変化または上流圧力センサからのエラー信号による警報を最小限にすることを保証することができる。
【0039】
本発明のいくつかの特定の形態を例示して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正を加えることができることは明らかであろう。
【0040】
本発明によれば、例えば以下のシステムおよび方法が提供される。
(1) 輸液注入ポンプの上流の流体サプライに関連付けられた通気孔の状態を検出するためのシステムであって、
輸液注入ポンプの上流に位置する圧力センサであって、流体ライン内部の圧力を表す圧力信号を提供するように構成された圧力センサと、
前記輸液注入ポンプの状態を表すパラメータを監視し、且つ前記圧力センサから受け取った前記圧力信号を前記輸液注入ポンプの状態の関数としてサンプリングするように構成されたプロセッサであって、前記サンプリングした信号が前記流体ライン内の負の圧力を示している場合に警告を提供するように構成されたプロセッサと
を有するシステム。
(2) 前記輸液注入ポンプが蠕動ポンプであり、前記監視するパラメータが、前記蠕動ポンプが完了したポンプ・サイクルの回数の値である(1)に記載のシステム。
(3) 前記プロセッサは、前記監視するパラメータの前記値がポンプ・サイクルの所定の回数を超えたときに、前記圧力センサから受け取った前記信号をサンプリングする(2)に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサは、所定の回数のポンプ・サイクルが行われた後に、前記圧力センサから受け取った前記信号を定期的にサンプリングする(2)に記載のシステム。
(5) ポンプ・サイクルの前記所定の回数が3回である(4)に記載のシステム。
(6) 前記負の圧力は、通気孔の問題を示している(1)に記載のシステム。
(7) 蠕動輸液注入ポンプの上流に位置する流体ライン内の通気孔の状態を求める方法であって、前記蠕動輸液注入ポンプが循環式に流体をポンピングするように構成されている方法において、
前記輸液注入ポンプによって完了されたサイクルの回数を表す値を求めるステップと、
前記輸液注入ポンプの上流の前記流体ライン内の圧力を感知するように構成された圧力センサによって提供される信号をサンプリングするステップと、
前記信号を処理して、前記上流の流体ライン内の前記圧力に関する値を求めるステップと、
前記圧力値が負である場合に警告を提供するステップと
を含む方法。
(8) サンプリングが、所定の回数のポンプ・サイクルが完了したときにのみ行われる(7)に記載の方法。
(9) 前記圧力に関する前記値をメモリに記憶するステップと、
所定の回数のサイクルが完了した後に前記信号をサンプリングするステップと、
前記上流の流体ライン内の前記圧力に関する第2の値を求めるステップと、
前記圧力に関する前記第2の値を、前記圧力に関する前記第1の値と比較するステップと、
前記第2の値が前記第1の値よりも負である場合に警告信号を提供するステップと
をさらに含む(7)に記載の方法。
(10) 輸液注入ポンプの上流の注入ライン内の圧力の変化を検出するためのシステムであって、
上流注入ラインに隣接する輸液注入ポンプの上流に位置する圧力センサであって、前記上流の流体ライン内部の圧力を表す圧力信号を提供するように構成された圧力センサと、
患者への流体の注入の状態を表すパラメータを監視するようにプログラムされたプロセッサであって、前記圧力センサから受け取った圧力信号を前記注入の状態の関数としてサンプリングし、前記サンプリングした信号を解析して、前記上流の流体ライン内の圧力が低下しているかどうかを決定するようにさらにプログラムされているプロセッサと
を有するシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液注入ポンプの上流に配置された流体ラインまたは流体供給容器に関連付けられた通気孔の状態を検出するためのシステムであって、
該システムは、圧力センサと連絡するプロセッサを有し、該プロセッサは、
複数のポンプ・サイクルにわたって前記圧力センサから受け取った複数の圧力信号をサンプリングし、
サイクル平均圧力を決定し、
サイクル平均圧力の変化の割合を決定し、また
決定した前記変化の割合が制限値を超えると警告信号を生成する
ように構成されており、また
前記圧力センサは輸液注入ポンプの上流に配置され、前記圧力センサは、前記流体ライン内の圧力を表す圧力信号を提供するように構成され、前記警告信号は、前記通気孔の状態が変わったこと示す通知を含むものである
システム。
【請求項2】
輸液注入ポンプの上流に配置された流体ラインまたは流体供給容器に関連付けられた通気孔の状態を検出するためのシステムであって、
前記ポンプ機構の上流で前記流体ラインに隣接して配置された圧力センサであって、前記ポンプ機構の上流の前記流体ライン内の圧力を表す圧力信号を提供するように構成された圧力センサと、
前記輸液注入ポンプから遠隔に配置されたデータ・ベースと、
前記輸液注入ポンプに配置されたメモリと、
前記圧力センサ、前記データ・ベースおよび前記メモリと連絡するプロセッサであって、
3回以上のポンプ・サイクルを含む選択された複数のポンプ・サイクルにわたって前記圧力センサから受け取った複数の圧力信号をサンプリングし、
前記選択された複数のポンプ・サイクルのそれぞれにおいて、前記受け取った複数の圧力信号から平均値を算出し、
前記算出した平均値を前記メモリに記憶し、
前記記憶した平均値の変化の割合を決定し、
決定した前記変化の割合が制限値を超えると警告信号を生成し、また
生成された何らかの警告を含む情報を前記データ・ベースに提供する
ようにプログラムされたプロセッサと
を含むシステムにおいて、
前記警告信号は、前記通気孔の状態が変わったこと示す通知を含むものである
システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245354(P2011−245354A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200309(P2011−200309)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【分割の表示】特願2006−547533(P2006−547533)の分割
【原出願日】平成16年12月31日(2004.12.31)
【出願人】(505403186)ケアフュージョン 303、インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】