説明

輸液装置

【課題】チューブ内の輸液の有無を正しく検出できるとともに、チューブが誤設置されていた場合でも簡便な対処で済ます。
【解決手段】輸液容器2に接続されたチューブ3内を介して輸液容器2から輸液を輸送する回路4と、チューブ3の途中位置を所定の位置に保持する保持部5と、該保持部5にチューブ3が保持されているか否かを検出するチューブ検出部と、チューブ3内の輸液の有無を所定の位置において検出する輸液検出部とを備え、回路4は、チューブ3が保持部に保持されていることがチューブ検出部によって検出されている場合に、輸液を輸送する輸液装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織から幹細胞などを含む細胞群を分離する細胞分離装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。一方、チューブ内の輸液剤の有無を検出可能な輸液装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/012480号
【特許文献2】特開平6−277282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の装置の場合、チューブが輸液検知器の検出位置に正しく設置されていないにもかかわらず輸液検知器を作動させてしまうと、輸液検知器が輸液の有無を正しく検出できないという問題がある。特に、細胞分離装置などのように、チューブが正常に接続されているか否かを事前に確認する必要がある場合、一度輸液をチューブ内に搬送させる。ここで、輸液がチューブ内を通過したことが輸液検知器によって正常に検出されずにエラーが発生してしまうと、既にチューブ内に送液された輸液を排出したりチューブを交換したりしてチューブ内を空の状態に戻し、確認作業を最初からやり直さなければならず、大掛かりな対処が必要となる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、チューブ内の輸液の有無を正しく検出できるとともに、チューブが誤設置されていた場合でも簡便な対処で済ますことができる輸液装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、輸液容器に接続されたチューブ内を介して前記輸液容器から輸液を輸送する回路と、前記チューブの途中位置を所定の位置に保持する保持部と、該保持部にチューブが保持されているか否かを検出するチューブ検出部と、前記チューブ内の輸液の有無を前記所定の位置において検出する輸液検出部とを備え、前記回路は、前記チューブが前記保持部に保持されていることが前記チューブ検出部によって検出されている場合に、前記輸液を輸送する輸液装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、チューブを輸液容器に接続して保持部に保持させた後、回路を作動させることにより、輸液容器内の輸液をチューブ内を介して輸送することができる。
この場合に、輸液検出部によって正常に輸液の有無を検出可能な位置にチューブが保持されていることがチューブ検出部によって確認された後、輸液がチューブ内に輸送されるので、チューブ内の輸液の有無を正しく検出できる。また、チューブが誤設置されていた場合にはチューブ内に輸液が輸送されないので、チューブの位置を正しく直すだけの簡便な対処で済ますことができる。
【0008】
上記発明においては、前記輸液検出部および前記チューブ検出部が、前記保持部に設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、チューブが保持部に保持されているか否か、および、チューブ内の輸液の有無を、輸液検出部およびチューブ検出部によってより正確に検出することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記輸液検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに検出光を照射する光源と、前記チューブを透過してきた前記検出光の透過光を検出する透過光検出器とを備え、前記回路により前記輸液が輸送される前後に前記透過光検出部によって検出した前記透過光の強度の差に基づいて、前記輸液の有無を検出することとしてもよい。
【0010】
このようにすることで、チューブ内が空のときと、チューブ内に輸液が存在するときとのチューブの透過率の差に基づいて、輸液の有無が検出される。これにより、輸液が光学的に高い透明度を有している場合でも、チューブ内の輸液の有無を精度良く検出することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記チューブ検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに検出光を照射する光源と、前記チューブによって反射された前記検出光の反射光を検出する反射光検出器とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、チューブが光学的に高い透明度を有している場合でも、チューブによって発生させられる反射光に基づいてチューブの有無を光学的に精度良く検出することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記チューブ検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに第1の検出光を照射する第1の光源と、前記チューブによって反射された前記検出光の反射光を検出する反射光検出器とを備え、前記輸液検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに第2の検出光を照射する第2の光源と、前記チューブを透過してきた前記検出光の透過光を検出する透過光検出器とを備え、前記第1の光源および前記第2の光源、または、前記反射光検出器および前記透過光検出器が共通であることとしてもよい。
このようにすることで、輸液検出部とチューブ検出部の構成の一部を共通化し、特に保持部にチューブ検出部と輸液検出部の両方を設ける場合には、構成を簡略にすることができるので好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チューブ内の輸液の有無を正しく検出できるとともに、チューブが誤設置されていた場合でも簡便な対処で済ますことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る輸液装置の全体構成図である。
【図2】図1の輸液装置のホルダの横断面図であり、透過型光センサと反射型光センサの構成を示している。
【図3】図1の輸液装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】LEDを共通化した場合の透過型光センサおよび反射型光センサの構成の変形例を示す図である。
【図5】透過型光センサおよび反射型光センサの配置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る輸液装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る輸液装置1は、図1に示されるように、輸液容器2から図示しない他の容器などにチューブ3内を介して輸液を輸送する回路4と、チューブ3の途中位置を所定の位置に保持するホルダ(保持部)5とを備えている。ホルダ5は、図2に示されるように、チューブ3が設置される保持穴5aを有し、該保持穴5aの内面に反射型光センサ(チューブ検出部)61および透過型光センサ(輸液検出部)62を備えている。
【0016】
回路4は、一端が輸液容器2に接続されるチューブ3と、チューブ3内に輸液を送液させる送液ポンプ7と、チューブ3の途中位置に設けられ輸液の送液を禁止または許可するバルブV1,V2とを備えている。チューブ3は、操作者が内部を容易に視認できるように、光学的に透明度の高い材質からなるものが使用される。符号V3〜V6は、輸液容器2からの輸液がチューブ3内を逆流することを防ぐ逆止弁を示している。
【0017】
ホルダ5の保持穴5aは、チューブ3の外径と略同一の内径を有し、周方向の一部がチューブ3を出し入れ可能に開放された略筒状であり、その内面によりチューブ3の外周面が支持されるようになっている。ホルダ5は、例えば、図示しない壁や他の装置のパネル、輸液スタンドなどに固定されている。
【0018】
反射型光センサ61は、LED6a、および、該LED6aの近傍に設けられたPT(フォトトランジスタ、反射光検出器)6bを備えている。透過型光センサ62は、反射型光センサ61と共通のLED(発光ダイオード、光源)6a、および、該LED6aと対向して配置されたPD(フォトダイオード、透過光検出器)6cを備えている。符号8は、LED6a、PT6bおよびPD6cの動作を制御する制御回路が形成された基板を示している。
【0019】
保持穴5aにチューブ3が設置された状態でLED6aが発光したとき、LED6aからの検出光の一部がチューブ3の外面によって反射された反射光LがPT6bに検出される。また、検出光の他の一部がチューブ3を半径方向に透過した透過光L’がPD6cに検出される。
【0020】
反射型光センサ61は、PT6bが検出した反射光Lの強度が所定の閾値以上の場合、ホルダ5にチューブ3が保持されていることを検出するようになっている。
透過型光センサ62は、チューブ3がホルダ5に保持されていることが反射型光センサ61によって検出されているときに、PD6cにより透過光L’を検出する。これにより、透過型光センサ62は、ホルダ5に保持されている位置におけるチューブ3の透過率を測定する。ここで、透過型光センサ62は、回路4が送液ポンプ7により輸液を送液する前後に透過率を測定し、測定した透過率の差が所定の閾値以上の場合、チューブ3内に輸液が存在することを検出するようになっている。
【0021】
このように構成された輸液装置1の動作および作用について、図3のフローチャートを参照して以下に説明する。
本実施形態に係る輸液装置1を用いて輸液するには、まず、操作者は、チューブ3の一端を輸液容器2に接続し、チューブ3の途中位置をホルダ5に設置する。次に、例えば、チューブ3の設置が完了したことを操作者が輸液装置1に入力することにより(ステップS1)、輸液装置1は、回路4が正常に作動するか否かの動作確認を開始する。
【0022】
具体的には、輸液装置1は、LED6aを発光させ、反射型光センサ61によりチューブ3がホルダ5に正しく保持されているか否かを検出する(ステップS2)。ここでチューブ3が検出されなかった場合、輸液装置1は、操作者に対してエラーを報知する(ステップS3)。操作者は、チューブ3を正しく設置し直した後、再びチューブ3の設置が完了したことを輸液装置1に入力する(ステップS1)。
【0023】
一方、チューブ3が検出された場合、輸液装置1は、次に透過型光センサ62によりチューブ3の透過率T1を測定する(ステップS4)。ここで測定される透過率T1は、空のチューブ3の透過率である。続いて、輸液装置1は、バルブV1,V2を開放し(ステップS5)、送液ポンプ7により輸液容器2からチューブ3内に、少なくとも輸液がホルダ5の位置を超えるまで少量の輸液を試験輸送する(ステップS6)。次に、輸液装置1は、再び透過型光センサ62により透過率T2を測定する(ステップS7)。ここで測定される透過率T2は、内部に輸液が満たされたチューブ3の透過率である。透過型光センサ62は、測定した2つ透過率T1,T2の差分を算出する(ステップS8)。
【0024】
そして、輸液装置1は、算出された差分が所定の閾値Tthより小さい場合、すなわち、回路4によって輸液が正常に輸送されていない場合は、操作者に対してエラーを報知して(ステップS9)バルブV1,V2を閉じる(ステップS10)。操作者は、エラーの原因、例えば、チューブ3の詰りやチューブ3と輸液容器2との接続不良などを解決した後、再びチューブ3の設置が完了したことを輸液装置1に入力する(ステップS1)。一方、輸液装置1は、算出された差分が所定の閾値Tth以上の場合、すなわち、回路4によって輸液が正常に輸送されている場合は、回路4の動作確認を終了し、送液ポンプ7を作動させて輸液の本輸送を行う(ステップS11)。
【0025】
このように、本実施形態によれば、チューブ3が透過型光センサ62の検出位置に正しく設置されていることが確認された後に輸液の輸送が開始されるので、チューブ3内の輸液の有無を正しく検出することができる。また、輸液の有無が、空のチューブ3の透過率T1と輸液が満たされた状態のチューブ3の透過率T2との差分に基づいて判定される。これにより、輸液が高い光透過率を有している場合でも、チューブ3の個体差による透過率の差などに影響されることなく、精度良く輸液を検出することができる。
【0026】
また、従来、操作者の操作ミスなどによりチューブ3がホルダ5に正しく設置されていない場合でも、そのことが検出されることなく試験輸送が開始されてしまっていた。したがって、操作者は、チューブ3の誤設置に気付いた後、空チューブ3の透過率T1を測定するために、例えば、送液ポンプ7を逆回転させて輸液をチューブ3内から排出したりチューブ3を新しいものに交換したりすしなければならず、対処に手間がかかった。しかしながら、本実施形態によれば、チューブ3内が空の状態でチューブ3の誤設置が検出されるので、チューブ3をホルダ5に設置し直すだけの簡便な対処で済ますことができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、反射型光センサ61と透過型光センサ62とにおいて、LED6aを共通で使用することとしたが、これに代えて、図4に示されるように、LED(第1の光源、第2の光源)6aを2つ設け、PT6bまたはPDを共通で使用してもよい。
このようにしても、簡便な構成でチューブ3および該チューブ3内の輸液の両方を検出することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、反射型光センサ61と透過型光センサ62が共通のホルダ5に設けられていることとしたが、これに代えて、図5に示されるように、ホルダ5には透過型光センサ61のみを設け、ホルダ5の近傍に反射型光センサ61を設けてもよい。例えば、反射型光センサ61は、ホルダ5に保持されたチューブ3の背面側に設けられる。このようにしても、チューブ3がホルダ5に正常に保持されているか否かを反射型光センサ61により正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 輸液装置
2 輸液容器
3 チューブ
4 回路
5 ホルダ(保持部)
5a 保持穴
6a LED(光源、第1の光源、第2の光源)
6b PT(反射光検出器)
6c PD(透過光検出器)
7 送液ポンプ
8 基板
61 透過型光センサ(輸液検出部)
62 反射型光センサ(チューブ検出部)
V1,V2 バルブ輸液装置
V3,V4,V5 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液容器に接続されたチューブ内を介して前記輸液容器から輸液を輸送する回路と、
前記チューブの途中位置を所定の位置に保持する保持部と、
該保持部にチューブが保持されているか否かを検出するチューブ検出部と、
前記チューブ内の輸液の有無を前記所定の位置において検出する輸液検出部とを備え、
前記回路は、前記チューブが前記保持部に保持されていることが前記チューブ検出部によって検出されている場合に、前記輸液を輸送する輸液装置。
【請求項2】
前記輸液検出部および前記チューブ検出部が、前記保持部に設けられている請求項1に記載の輸液装置。
【請求項3】
前記輸液検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに検出光を照射する光源と、前記チューブを透過してきた前記検出光の透過光を検出する透過光検出器とを備え、前記回路により前記輸液が輸送される前後に前記透過光検出部によって検出した前記透過光の強度の差に基づいて、前記輸液の有無を検出する請求項1に記載の輸液装置。
【請求項4】
前記チューブ検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに検出光を照射する光源と、前記チューブによって反射された前記検出光の反射光を検出する反射光検出器とを備える請求項1に記載の輸液装置。
【請求項5】
前記チューブ検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに第1の検出光を照射する第1の光源と、前記チューブによって反射された前記検出光の反射光を検出する反射光検出器とを備え、
前記輸液検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに第2の検出光を照射する第2の光源と、前記チューブを透過してきた前記検出光の透過光を検出する透過光検出器とを備え、
前記第1の光源および前記第2の光源が共通である請求項1または請求項2に記載の輸液装置。
【請求項6】
前記チューブ検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに第1の検出光を照射する第1の光源と、前記チューブによって反射された前記検出光の反射光を検出する反射光検出器とを備え、
前記輸液検出部が、前記保持部に保持された前記チューブに第2の検出光を照射する第2の光源と、前記チューブを透過してきた前記検出光の透過光を検出する透過光検出器とを備え、
前記反射光検出器および前記透過光検出器が共通である請求項1または請求項2に記載の輸液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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