説明

輸送機関に電力供給する方法およびシステム

【課題】航空機システムを動作させる方法およびシステムを提供する。
【解決手段】ガスタービンエンジンシステムは、低圧(LP)シャフトと、高圧(HP)シャフトと、LPシャフトに機械的に結合された入力、および定周波数(CF)発電機に機械的に結合された出力を有する定速機械駆動アセンブリと、HPシャフトに機械的に結合された入力、および可変周波数(VF)発電機に機械的に結合された出力を有する補機ギアボックスアセンブリとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、一般に、航空機の発電システムおよび配電システムに関し、より具体的には、高圧タービンがストールする可能性を低減させる方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の航空機の少なくともいくつかは、2つ以上の高バイパス比ターボファンエンジンによって駆動される。これらのエンジンは、推進システムによる推力全体のうちかなりの部分を供給する低圧スプールによって駆動されるファンを含む。高圧スプールによって、1つまたは複数の圧縮機が駆動され、排出物を後方に送ることによって追加の推力が生じる。
【0003】
エンジンは、航空機を推進する推力をもたらし、かつ航空機の油圧システムおよび空気圧システムに動力を与えるのに加えて、環境制御システム、航空機コンピュータ、油圧モータポンプ、および/または他のモータおよび電気装置を含めた多数の航空機構成部品に電力を供給する。航空機エンジンから電力を得る一手法に、エンジンからの回転機械動力の幾分かを電力に変換する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0133813号明細書
【発明の概要】
【0005】
最新の航空機は、より小型のエンジンを有し、ストールを回避するために、高圧スプールからの電力抽出が限られている。また、最新の航空機は、より多くの電気負荷で設計されている。それだけに限られるものではないが、降下条件中などのある条件下では、圧縮機をストールさせずに電気負荷を支持するために、高圧スプールからは十分な電力を得ることができない場合がある。エンジンストールの問題は、比較的新しい問題であるので、この問題を解決する試みは限られてきている。
【0006】
一実施形態では、ガスタービンエンジンシステムは、低圧(LP)シャフトと、高圧(HP)シャフトと、LPシャフトに機械的に結合された入力、および定周波数(CF)発電機に機械的に結合された出力を有する定速機械駆動アセンブリと、HPシャフトに機械的に結合された入力、および可変周波数(VF)発電機に機械的に結合された出力を有する補機ギアボックスアセンブリとを含む。
【0007】
別の実施形態では、航空機システムを動作させる方法は、始動機/発電機を用いて第1のシャフトを駆動することによってターボファンエンジンを始動し、第1のシャフトは、圧縮機とエンジンの第1のタービンとの間に連結されているステップと、始動機/発電機を用いて、可変周波数(VF)電気エネルギーをVF電気バスに供給するステップと、ファンとエンジンの第2のタービンとの間に連結された第2のシャフトに結合された発電機を用いて、定周波数(CF)電気エネルギーをCF電気バスに供給するステップと、可変周波数(VF)電気エネルギーをVF電気バスから航空機構成部品に分配し、定周波数(CF)電気エネルギーをCF電気バスから他の航空機構成部品に分配するステップとを含む。
【0008】
さらに別の態様では、航空機システムは、ガスタービンエンジンを含み、このガスタービンエンジンは、圧縮機と第1のタービンとの間に延在する高圧(HP)シャフトを介して第1のタービンに結合された圧縮機と、可変周波数(VF)発電機と、HPシャフトに機械的に結合された入力、および可変周波数(VF)発電機に機械的に結合された出力を有する補機ギアボックスアセンブリと、ファンと第2のタービンとの間に延在し、かつ高圧シャフトと同軸の低圧(LP)シャフトを介して第2のタービンに結合されたファンと、定周波数(CF)発電機と、LPシャフトに機械的に結合された入力、および定周波数(CF)発電機に機械的に結合された出力を有する定速機械駆動アセンブリとを含む。この航空機システムはまた、前記VF発電機に電気的に結合されたVFバスであって、航空機システムの電気負荷の一部分に電力を供給するように構成されたVFバスと、前記CF発電機に電気的に結合されたCFバスであって、航空機システムの電気負荷の残りの部分に電力を供給するように構成されたCFバスとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本明細書に記載の方法およびシステムの例示的な実施形態を示す図であり、本発明の例示的な実施形態による航空機ガスタービンエンジンの概略断面図である。
【図2】本明細書に記載の方法およびシステムの例示的な実施形態を示す図であり、本発明の例示的な実施形態による電気システムの構造の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は、本発明の実施形態を例示として示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の説明は、当業者が本開示を製造または使用することを明確に可能とするものであり、現時点で本開示を実施する最良の形態と考えられるものを含めて、本開示のいくつかの実施形態、応用形態、変形形態、代替形態、および使用について説明する。本開示は、例示的な実施形態、すなわち航空機に電力供給するシステムおよび方法に適用されるものとして説明する。しかし、本開示は、産業用途、商業用途、および居住用途における電気システム構造に一般に応用することが企図される。
【0011】
本明細書では、単数形で示し、単語「a」または「an」が前に付された要素またはステップは、複数の要素またはステップの除外が明示されない限り、複数の要素またはステップも含まれるとして理解すべきである。さらに、本発明の「一実施形態」に関する言及は、記載の特徴をやはり組み込んだ追加の実施形態の存在が除外されるとして解釈すべきではない。
【0012】
本発明の実施形態は、タービンエンジンの低圧(LP)スプールから、ギアボックス定速機械駆動の定周波数(CF)AC発電機を介して得られる定周波数(CF)AC電力と、補機ギアボックスVF発電機を駆動する、タービンエンジンの高圧(HP)スプールから得られる可変周波数(VF)AC電力とを含む、航空機用の新規な電気システム構造を実現する。CF電力を必要とする電気負荷には、LPスプール駆動のCF発電機によって供給され、VF電力を許容できる電気負荷には、HPスプール駆動のVF発電機によって供給される。したがって、この構造には、パワーエレクトロニクスに基づいたいかなる変換装置も必要でなく、また、この構造は、エンジンストールに対するマージンが低減する航空機降下モード下では、タービンのLPスプールから抽出する電力を最大にし、かつタービンのHPスプールからの電力抽出を最小限に抑えることによって、タービン動作性/タービンストールの可能性の問題を解決する。さらに、HPスプール駆動の発電機はまた、タービンエンジンを始動する始動発電機として構成することができる。
【0013】
図1は、GE CFM56シリーズエンジンなど、エンジン軸8を有する航空機ガスタービンエンジン10の例示的な実施形態の概略断面図である。エンジン10は、下流方向に順に、ファン14を含むファン区画13、ブースタまたは低圧圧縮機(LPC)16、高圧圧縮機(HPC)18、燃焼区画20、高圧タービン(HPT)22、および低圧タービン(LPT)24を含む。高圧シャフト26によって、HPT22がHPC18に駆動可能に連結され、低圧シャフト28によって、LPT24がLPC16およびファン14に駆動可能に連結されている。HPT22は、HPTロータ30を含み、ロータ30の周辺にはタービンブレード34が取り付けられている。ブレード34は、ブレードプラットフォーム39から半径方向外方のブレード先端まで、半径方向外方に延びている。
【0014】
図2は、本発明の例示的な実施形態による電気システム構造200の概略図である。この例示的な実施形態では、電気システム構造200は、動作中に可変周波数を有する供給を許容できる複数の負荷204に電力を供給するように構成された可変周波数電気バス202を含む。電気システム構造200はまた、動作中に定周波数を有する電力を使用する複数の負荷208に電力を供給するように構成された定周波数電気バス206も含む。定周波数電気バス206はまた、動作中に可変周波数を有する供給を許容できる1つまたは複数の負荷210にも電力を供給するように構成されている。
【0015】
電力は、可変周波数発電機212から、可変周波数電気バス202に供給される。様々な実施形態では、可変周波数発電機212は、始動工程中に、高圧シャフト26に回転トルクをもたらすように構成された始動機/発電機を備える。電力は、定周波数発電機214から、定周波数電気バス206に供給される。可変周波数発電機212は、高圧シャフト26により、高圧シャフト26と可変周波数発電機212との間に機械的に結合された補機ギアボックス216を介して駆動される。定周波数発電機214は、低圧シャフト28により、低圧シャフト28と定周波数発電機214との間に機械的に結合された定速機械駆動アセンブリ218を介して駆動される。
【0016】
例示的な実施形態では、VF電力およびCF電力をさらに条件付ける必要はなく、例えば、VF電力およびCF電力はそのまま使用され、電力変換装置が必要でない。適正に動作するためにCF電力が必要となる負荷には、低圧シャフト28駆動の定周波数発電機214から電力が送られ、残りの負荷は、可変周波数発電機212によって電力供給される。
【0017】
低圧シャフト28駆動の定周波数発電機214に対して、ある最小限の負荷印加(loading)を維持し、かつ高圧シャフト26駆動の可変周波数発電機212からの電力抽出を最小限に抑えることによって、航空機が、エンジンをアイドル回転速度で、またはアイドル回転速度付近で動作させて推力を最小限に抑える降下モードにある間、タービンがストールする可能性が解消される。
【0018】
本発明の実施形態の技術的利点として、ある負荷に必要となるCF電力が、低圧シャフト28駆動の定周波数発電機214から得られるので、高圧シャフト26駆動の可変周波数電機212について電力変換装置が不要となる点、およびある動作条件下、例えば航空機が降下モードにある間、負荷印加を高圧シャフト26から低圧シャフト28に移行することによって、タービンがストールする可能性が解消される点が含まれる。本発明の実施形態はまた、より高い効率を有し、より低費用の電気システム構造を実現する。
【0019】
駆動/定速発電機によってタービンのLPスプールから航空機のCF電力を得、HPスプール駆動の発電機からVF電力を得る方法およびシステムの上述の実施形態は、LPスプールから電力を抽出することによって、CF電力を得るための電力変換装置が不要となり、かつHPスプールのストールが解消される、費用効果が高く、かつ信頼性が高い手段を実現する。その結果、本明細書に記載の方法およびシステムによって、航空機の動作が、費用効果が高く、かつ信頼性が高い形で促進される。
【0020】
本明細書では、例を用いて、最良の形態を含めて本発明を開示し、また、いかなる装置またはシステムの製造および使用、ならびに組み込まれたいかなる方法の実施も含めて、当業者が本発明を実施可能とするものである。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に想到される他の例も含まれ得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言と相違ない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言とそれほど相違ない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内に含まれるものである。
【符号の説明】
【0021】
8 エンジン軸
10 航空機ガスタービンエンジン
13 ファン区画
14 ファン
16 低圧圧縮機(LPC)
18 高圧圧縮機(HPC)
20 燃焼区画
22 高圧タービン(HPT)
24 低圧タービン(LPT)
26 高圧シャフト
28 低圧シャフト
30 HPTロータ
34 タービンブレード
39 ブレードプラットフォーム
200 電気システム構造
202 可変周波数電気バス
204 負荷
206 定周波数電気バス
208 負荷
210 負荷
212 可変周波数発電機
214 定周波数発電機
216 補機ギアボックス
218 定速機械駆動アセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧(LP)シャフトと、
高圧(HP)シャフトと、
前記LPシャフトに機械的に結合された入力、および定周波数(CF)発電機に機械的に結合された出力を有する定速機械駆動アセンブリと、
前記HPシャフトに機械的に結合された入力、および可変周波数(VF)発電機に機械的に結合された出力を有する補機ギアボックスアセンブリと
を備える、ガスタービンエンジンシステム。
【請求項2】
前記CF発電機が、CF電気バスに電気的に結合されている、請求項1記載のガスタービンエンジンシステム。
【請求項3】
前記VF発電機が、前記VF電気バスに電気的に結合されている、請求項1記載のガスタービンエンジンシステム。
【請求項4】
前記VF発電機が、エンジン始動工程中に、前記HPシャフトを回転させ、かつ始動後の動作中に、前記HPシャフトから電力を生成するように構成された始動機/発電機を備える、請求項1記載のガスタービンエンジンシステム。
【請求項5】
CF電力が、前記CF発電機から前記CF電気バスに直接供給される、請求項1記載のガスタービンエンジンシステム。
【請求項6】
前記CF電気バスと、前記VF電気バスとが、電気的に独立して維持される、請求項1記載のガスタービンエンジンシステム。
【請求項7】
前記定速機械駆動アセンブリの前記入力の回転速度が、前記LPシャフトの回転速度に伴って変動し、前記定速機械駆動アセンブリの前記出力の回転速度が、実質的に一定である、請求項1記載のガスタービンエンジンシステム。
【請求項8】
始動機/発電機を用いて第1のシャフトを駆動することによってターボファンエンジンを始動し、前記第1のシャフトが、圧縮機と前記エンジンの第1のタービンとの間に連結されているステップと、
前記始動機/発電機を用いて、可変周波数(VF)電気エネルギーをVF電気バスに供給するステップと、
ファンと前記エンジンの第2のタービンとの間に連結された第2のシャフトに結合された発電機を用いて、定周波数(CF)電気エネルギーをCF電気バスに供給するステップと、
前記可変周波数(VF)電気エネルギーを前記VF電気バスから航空機構成部品に分配し、前記定周波数(CF)電気エネルギーを前記CF電気バスから他の航空機構成部品に分配するステップと
を含む、航空機システムを動作させる方法。
【請求項9】
始動中に、VF電気エネルギーを前記VF電気バスから前記始動機/発電機に供給するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
補機ギアボックスアセンブリを、前記第1のシャフトと前記始動機/発電機との間に結合するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
定速機械駆動アセンブリを、前記第2のシャフトと前記発電機との間に結合するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの負荷を前記VF電気バスから電気的に断絶するステップと、
前記少なくとも1つの負荷を前記CF電気バスに電気的に結合して、前記第1のタービンがストールする可能性を低減させるステップと
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記可変周波数(VF)電気エネルギーを前記VF電気バスから航空機構成部品に分配し、前記定周波数(CF)電気エネルギーを前記CF電気バスから他の航空機構成部品に分配するステップが、前記VF電気バスと、前記CF電気バスとを電気的に独立して維持するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記始動機/発電機を用いて、可変周波数(VF)電気エネルギーをVF電気バスに供給するステップが、電力変換装置を使用せずに、可変周波数(VF)電気エネルギーをVF電気バスに供給するステップを含む、請求項8記載の方法。
【請求項15】
定周波数(CF)電気エネルギーをCF電気バスに供給するステップが、電力変換装置を使用せずに、定周波数(CF)電気エネルギーをCF電気バスに供給するステップを含む、請求項8記載の方法。
【請求項16】
航空機システムであって、ガスタービンエンジンと、VFバスと、CFバスとを備え、
前記ガスタービンエンジンが、
圧縮機と第1のタービンとの間に延在する高圧(HP)シャフトを介して前記第1のタービンに結合された前記圧縮機と、
可変周波数(VF)発電機と、
前記HPシャフトに機械的に結合された入力、および前記可変周波数(VF)発電機に機械的に結合された出力を有する補機ギアボックスアセンブリと、
ファンと第2のタービンとの間に延在し、かつ前記高圧シャフトと同軸の低圧(LP)シャフトを介して前記第2のタービンに結合された前記ファンと、
定周波数(CF)発電機と、
前記LPシャフトに機械的に結合された入力、および前記定周波数(CF)発電機に機械的に結合された出力を有する定速機械駆動アセンブリとを含み、
前記VFバスが、前記VF発電機に電気的に結合され、前記航空機システムの電気負荷の一部分に電力を供給するように構成され、
前記CFバスが、前記CF発電機に電気的に結合され、前記航空機システムの前記電気負荷の残りの部分に電力を供給するように構成される、航空機システム。
【請求項17】
前記VF発電機が、VF始動機/発電機をさらに備え、前記VF電気バスが、前記ガスタービンエンジンの始動工程中に、前記VF始動機/発電機に前記VF電力を供給するように構成され、前記VF始動機/発電機が、前記ガスタービンエンジンが始動した後に、前記VF電気バスに電力を供給するように構成される、請求項16記載の航空機システム。
【請求項18】
CF電力が、前記CF発電機から前記CF電気バスに直接供給される、請求項16記載の航空機システム。
【請求項19】
前記CF電気バスと、前記VF電気バスとが、互いに電気的に独立して維持される、請求項16記載の航空機システム。
【請求項20】
前記定速機械駆動アセンブリの前記入力の回転速度が、前記LPシャフトの回転速度に伴って変動し、前記定速機械駆動アセンブリの前記出力の回転速度が、実質的に一定である、請求項16記載の航空機システム。

【図1】
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【図2】
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