説明

輸送用ショック低減装置

【課題】輸送手段の加減速時や傾斜時において、搬送物の横方向に作用する加速度を大幅に緩和することができる輸送用ショック低減装置を提供する。
【解決手段】輸送用ショック低減装置10Aは、水平な加速度α方向に延びるガイドレール11と、載置面6を有しガイドレール11上を移動自在な載置台13とを備える。ガイドレール11は、載置台13が水平な加速度α方向に移動したときに載置面6の移動方向の前方が相対的に高く後方が相対的に低くなるようなレール形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送中の搬送物に作用する横方向の加速度を緩和するための輸送用ショック低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学精密機械、コンピュータやテレビ等の電子機器、ガラス工芸品等の、衝撃・振動により損傷を受け易い搬送物を、トラック、飛行機、船などの輸送手段で安全に輸送するためには、輸送中の搬送物に作用する振動を緩和する必要がある。そのため、従来、搬送物を輸送する際に、搬送物を防振パレットの上に設置して衝撃・振動から保護している。下記特許文献1には、従来の防振パレットが開示されている。
【0003】
図5は、特許文献1に開示された防振パレット70の構成図である。図5において、ベース71の台座プレート71a上に載せる防振パレット70は、下架台73と、搬送物74を載せる上架台72と、下架台73と上架台72の間に脚部として配置された防振手段75とを備え、防振手段75で上架台72を弾性的に支持する構成としたものである。防振手段75は、圧縮コイルばねの外周または内周に粘弾性シートを接着したダンピングコイルばねで形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−297056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の防振パレット70によれば、コイルばねによる弾性支持によって搬送物74に作用する振動を緩和することができる。しかしながら、輸送手段が加速または減速する際には、慣性力によって搬送物74に水平方向の加速度が作用し、この水平方向の加速度が搬送物74に悪影響を与えるという問題がある。一般的に構造物は上下方向には強いが横方向の力には弱いという性質がある。例えば、精密な位置精度が要求されるレンズを備えた精密機器の場合、水平方向の加速度を受けることによりレンズ位置がずれてしまい、輸送後にレンズ位置を再調整する必要が生じることがある。
【0006】
また、航空機により輸送する際に、離着陸時の傾斜角度によって搬送物74が傾くことで、重力加速度の分力が搬送物74の横方向に作用するため、精密機器に悪影響を与えるという問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、輸送手段の加減速時や傾斜時において、搬送物の横方向に作用する加速度を大幅に緩和することができる輸送用ショック低減装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の輸送用ショック低減装置は、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
(1)本発明は、搬送物を直接に又は他の構造物を介して間接的に載せるための載置面を有し、搬送物が載置された状態で前記搬送物に水平方向の加速度が作用したときに、前記搬送物に作用する前記載置面に平行な加速度成分を低減する方向に前記載置面が傾くように構成された輸送用ショック低減装置であって、前記水平な加速度方向に延びるガイドレールと、前記載置面を有し前記ガイドレール上を移動自在な載置台とを備え、前記ガイドレールは、前記載置台が前記水平な加速度方向に移動したときに前記載置面の移動方向の前方が相対的に高く後方が相対的に低くなるような形状を有する、ことを特徴とする。
【0010】
上記の輸送用ショック低減装置の構成によれば、輸送手段の加減速により搬送物に水平方向の加速度(慣性力による加速度)が作用すると、搬送物は載置台と一体となって水平な加速度方向に移動する。この移動に伴い、載置面が水平面に対して傾斜することで水平方向の加速度と重力加速度の合力が載置面に対して垂直に近づく。これにより、搬送物の横方向に作用する加速度を大幅に低減することができる。
また、上記の輸送用ショック低減装置の構成によれば、航空機の離着陸時における傾斜時には、航空機の傾斜をキャンセルする方向に、載置面が航空機に対する相対的な姿勢を自動的に変化させるので、載置面をほぼ水平に維持できる。これにより、重力加速度の分力が搬送物の横方向に作用することがないので、航空機の離着陸時における傾斜時に、搬送物の横方向に加速度が作用することを防止できる。
【0011】
(2)また、上記(1)の輸送用ショック低減装置において、前記ガイドレールは、前記水平な加速度方向に延びる直線レール部と、該直線レール部の両端の各々に連結され該両端からの水平方向距離が大きくなるにつれてレール高さが高くなるレール部とからなる
【0012】
(3)また、上記(1)の輸送用ショック低減装置において、前記ガイドレールは、下に凸となるように湾曲したレール形状を有する。
【0013】
このように、ガイドレールは、直線レール部と湾曲レール部からなる形状でも、全体が湾曲した形状でもよい。
【0014】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかの輸送用ショック低減装置において、前記載置台には、前記ガイドレールが延びる方向の前後に離間してガイドレール上をスライド可能な第1及び第2のガイドブロックが設けられており、前記第1ガイドブロック及び第2ガイドブロックは、前記載置台に対して回転自在に取り付けられている。
【0015】
上記の構成によれば、載置台に対して各ガイドブロックが回転自在に取り付けられているので、載置台がガイドレールに沿って移動する際にガイドブロックが載置台に対して自由に回転する。これにより、ガイドブロックが滑らかにガイドレール上を移動することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の輸送用ショック低減装置によれば、輸送手段の加減速時や傾斜時において、搬送物の横方向に作用する加速度を大幅に緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる輸送用ショック低減装置10Aの構成を示す図である。図1において、輸送用ショック低減装置10Aはコンテナ19の内部に設置されている。なお輸送用ショック低減装置10Aは、コンテナ19の内部に設置されるほか、航空機、船舶の貨物室や、トラックの荷台に直接設置されてもよい。
【0019】
図1に示すように、輸送用ショック低減装置10Aは、搬送物を直接に又は他の構造物を介して間接的に載せるための載置面6を有し、搬送物1が載置された状態で搬送物1に水平方向の加速度が作用したときに、搬送物1に作用する載置面6に平行な加速度成分を低減する方向に載置面6が傾くように構成されている。
【0020】
図1の構成例において、載置台13の載置面6に防振パレットが載置されており、この防振パレット2の上に搬送物が載置されている。防振パレット2は載置台13に対して取り外し可能である。
防振パレット2は、搬送物1を載せて輸送中に搬送物1に伝わる振動を緩和するためのものであり、上部架台4、下部架台5及び複数の防振手段7から構成されている。
【0021】
複数の防振手段7は、上部架台4と下部架台5との間に互いに適宜の間隔を置いて配置されている。図1の構成例において、防振手段7は空気ばね(ダイヤフラム型空気ばね)8と積層ゴム9とからなるが、コイルばね、積層ゴムまたは空気ばねを単独で、あるいは組み合わせて構成したものであってもよい。
【0022】
輸送用ショック低減装置10は、水平な加速度α方向に延びるガイドレール11と、載置面6を有しガイドレール11上を移動自在な載置台13とを備える。ガイドレール11は、載置台13が水平な加速度α方向に移動したときに載置面6の移動方向の前方が相対的に高く後方が相対的に低くなるような形状を有する。ガイドレール11はコンテナ19の床に設置されたレール架台18によって支持されている。
【0023】
本実施形態において、ガイドレール11は、水平な加速度α方向に延びる直線レール部11aと、直線レール部11aの両端の各々に連結されこの両端からの水平方向距離が大きくなるにつれてレール高さが高くなるように湾曲する曲線レール部11b,11cとからなる。曲線レール部11b,11cが円弧形状である場合、その円弧の半径によって決定される固有周期は、トラック、航空機、船舶などの輸送手段から入力される衝撃、振動などに共振しないように、十分大きな数値に設定されるのがよい。また、レール部11b、11cはV字型のように端部に向い直線的に高くなる形状でもよい。
【0024】
また載置台13には、ガイドレール11が延びる方向の前後に離間してガイドレール29上をスライド可能な第1及び第2のガイドブロック14,15が設けられている。図1の構成例において、直線レール部11aの長さは、第1ガイドブロック14と第2ガイドブロック15の離間距離と同じに設定されているが、想定される水平方向の加速度などの諸条件に応じて、上記の離間距離より長くても短くても良い。またガイドブロック14、15はレール3の浮上防止機構が付いた車輪を使用してもよい。
【0025】
第1ガイドブロック14及び第2ガイドブロック15はベアリング16を介して、載置台13に対して回転自在に取り付けられている。ベアリング16としては、90°のV溝形状の転動面に円筒ころがスペーサリテーナを介して交互に直交配置された構造を有しラジアル荷重、アキシアル荷重およびモーメント荷重などのあらゆる方向の荷重を負荷することができるクロスローラリングが好適である。
【0026】
次に、図2及び図3を参照し、上記のように構成された輸送用ショック低減装置10の動作について説明する。
【0027】
搬送物1が載置された防振パレット2が輸送用ショック低減装置10に載置された状態において、輸送手段の加減速により搬送物1に水平方向の加速度α(慣性力による加速度)が作用すると、図2に示すように、搬送物1は防振パレット2及び載置台13と一体となって加速度α方向に移動する。この移動に伴い、載置面6が水平面に対して傾斜することで水平方向の加速度αと重力加速度Gの合力αが載置面6に対して垂直に近づく。これにより、搬送物1の横方向に作用する加速度を大幅に低減することができる。
【0028】
また本実施形態の構成によれば、載置台13に対して各ガイドブロック14,15が回転自在に取り付けられているので、載置台13がガイドレール11に沿って移動する際にガイドブロック14,15が載置台13に対して自由に回転する。これにより、ガイドブロック14,15が滑らかにガイドレール11上を移動することができる。
【0029】
また、航空機の離着陸時における傾斜時には、図3に示すように、航空機の傾斜(角度θ)をキャンセルする方向に、載置面6が航空機に対する相対的な姿勢を自動的に変化させるので、載置面6をほぼ水平に維持できる。これにより、重力加速度の分力が搬送物1の横方向に作用することがないので、航空機の離着陸時における傾斜時に、搬送物1の横方向に加速度が作用することを防止できる。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態にかかる輸送用ショック低減装置10Bの構成を示す図である。
第2実施形態の輸送用ショック低減装置10Bは、ガイドレールの形状において第1実施形態と異なる。すなわち、直線レール部11aを有する第1実施形態のガイドレール11と異なり、第2実施形態のガイドレール12は、直線レール部11aを有さず、下に凸となるように全体が湾曲したレール形状を有する。
【0031】
ガイドブロック14,15の移動を滑らかにするため、ガイドレール12の湾曲は円弧形状であるのが良い。湾曲度ないし曲率は、想定される水平方向の加速度の大きさなどの諸条件に応じて、適切な値に設定される。第2実施形態のその他の部分の構成は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0032】
第2実施形態の輸送用ショック低減装置10Bによっても、第1実施形態と同様に、輸送手段の加減速時や傾斜時において、搬送物の横方向に作用する加速度を大幅に緩和することができる。
【0033】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、載置台13の上に防振パレット2を載置し、その上に搬送物1を載せたが、載置台13の上に直接、搬送物1を載置するようにしてもよい。この場合、載置台13自体に上記の防振パレット2と同様の機能を持たせてもよい。
【0034】
上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる輸送用ショック低減装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる輸送用ショック低減装置における輸送用ショック低減装置の動作を説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる輸送用ショック低減装置における輸送用ショック低減装置の動作を説明する別の図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる輸送用ショック低減装置の構成を示す図である。
【図5】従来の防振パレットの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 搬送物
2 防振パレット
6 載置面
7 防振手段
8 空気ばね
9 積層ゴム
10 輸送用ショック低減装置
11 ガイドレール
11a 直線レール部
11b、11c 曲線レール部
12 ガイドレール
13 載置台
14 第1ガイドブロック
15 第2ガイドブロック
16 ベアリング
18 レール架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を直接に又は他の構造物を介して間接的に載せるための載置面を有し、搬送物が載置された状態で前記搬送物に水平方向の加速度が作用したときに、前記搬送物に作用する前記載置面に平行な加速度成分を低減する方向に前記載置面が傾くように構成された輸送用ショック低減装置であって、
前記水平な加速度方向に延びるガイドレールと、
前記載置面を有し前記ガイドレール上を移動自在な載置台とを備え、
前記ガイドレールは、前記載置台が前記水平な加速度方向に移動したときに前記載置面の移動方向の前方が相対的に高く後方が相対的に低くなるような形状を有する、ことを特徴とする輸送用ショック低減装置。
【請求項2】
前記ガイドレールは、前記水平な加速度方向に延びる直線レール部と、該直線レール部の両端の各々に連結され該両端からの水平方向距離が大きくなるにつれてレール高さが高くなるレール部とからなる、請求項1記載の輸送用ショック低減装置。
【請求項3】
前記ガイドレールは、下に凸となるように湾曲したレール形状を有する、請求項1記載の輸送用ショック低減装置。
【請求項4】
前記載置台には、前記ガイドレールが延びる方向の前後に離間してガイドレール上をスライド可能な第1及び第2のガイドブロックが設けられており、
前記第1ガイドブロック及び第2ガイドブロックは、前記載置台に対して回転自在に取り付けられている、請求項1乃至3のいずれか記載の輸送用ショック低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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