説明

辛味の少ない長日タマネギ

【課題】本発明は、辛味の少ない鱗茎を含む長日タマネギ植物、およびかかるタマネギ
を得るための方法を含む。本発明は、かかるタマネギを得るための方法において用いられ
得る試薬および材料も提供する。
【解決手段】発明は、5.5μM/gFW未満のPAD測定値を有する鱗茎を含む、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の日光を必要とするタマネギ植物またはその部分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35 U.S.C.§119(e)に基づいて、2005年7月15日に出願し、2006年6月30日に仮出願番号_____への変更を申請した、出願番号11/183,202の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、辛味の少ない長日タマネギ、かかるタマネギを得るための方法を含む。本発明は、かかるタマネギを得るための方法において用いられ得る試薬および材料も提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
タマネギは、ユリ目、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、アリウム(Allium)属に属する。アリウム属は、ニンニク、チャイブおよびシャロットなどの一般的な栽培作物を含む、球根状でタマネギ臭のある地下葉を有する多年生草木の一群を含む。それは、花を目的として育てられる鑑賞用の種も含む。
【0004】
タマネギは、世界的に重要な野菜であり、経済上の重要性において全ての野菜の中で第2位にランク付けられており、その推定価値は毎年60億ドルである。タマネギはまた歴史上最も古い栽培野菜の1つである。一般的な栽培タマネギはアリウム・セパ(Allium cepa)種である。タマネギは、様々な方法で、基本的な用途、風味、色、鱗茎の形状、および日長により分類される。タマネギは、白色、黄色および赤色を呈する。鱗茎は、丸い、平たい、または魚雷の形状であってもよい。
【0005】
市販のタマネギは、「ストレージオニオン(storage onion)」、「フレッシュオニオン(fresh onion)」、「パールオニオン(pearl onion)またはミニオニオン(mini onion)」および「グリーンオニオン(green onion)」を含む。「フレッシュオニオン」は、より淡色で、薄皮の、よりマイルドで、より甘い風味を有する傾向があり、また、それらは十分に貯蔵できないので、新鮮なうちに食べなければならない。これらのタマネギは、赤色、黄色および白色のものが入手可能であり、それらの地域名、例えば、スウィートインペリアル(Sweet Imperial)、ヴィデーリア(Vidalia)、ワラワラスウィート(Walla Walla Sweet)およびテキサススウィート(Texas Sweet)の名で売られていることが多い。恐らく最も知られているフレッシュオニオンはバミューダオニオン(Bermuda onion)であろう。フレッシュオニオンは、3月または4月初旬に市販され始め、8月まで購入可能である。
【0006】
ストレージオニオンは、8月初旬の収穫期から入手可能であり、貯蔵され、3月頃までの冬期にわたって入手可能である。ストレージオニオンは、フレッシュオニオンの皮よりも厚い、より暗色の皮を有する。それらは、例えば、辛味のある風味、より高い割合の実質、および望ましい調理特性でも知られている。これらのタマネギも赤色、黄色および白色のものが入手可能である。長日時間型(long day length type)(長日性)タマネギの全てが貯蔵に適するとは限らない。真のストレージオニオンは、晩夏または秋に収穫可能で、フレッシュオニオン作物が再び入手可能となる春まで適切な条件下で貯蔵可能であるものである。
【0007】
「スパニッシュオニオン(Spanish onion)(複数も含む)」または「スペイン型(Spanish type)」は、白色のこともあるが一般的に黄色の、様々な長日タマネギに適用された名称であり、一般的に大きくて球状の品種である。一般的に、スパニッシュオニオンは、平均300〜700グラム(g)の鱗茎サイズ(典型的に、3インチより大きくて、最大4インチまでであるが、「巨大」として分類される鱗茎については、直径最大5インチまで)を有する、米国西部の州(カリフォルニア、アイダホ、オレゴン、ワシントン、コロラド)で育てられる類の様々な長日性タマネギに適用される。
【0008】
タマネギ品種は、温度および最低日照時間数の両方が特定レベルに到達すると、鱗茎形成を開始する。まずタマネギが植えられると、そのタマネギ品種に適する日長が、植物に対してシグナルを誘起して、基礎的な栄養成長の形成を停止して、鱗茎形成を開始させるまで、それらは鱗茎形成の兆候を伴うことなく、初めに栄養成長を発達させる。故に、タマネギは、それらが受けとる日光および暗闇の時間に影響を受け、ほとんどの品種について、鱗茎が形成を開始するのは、日光および暗闇の特定の組み合わせが成し遂げられる場合のみである。故に、タマネギは、鱗茎形成を開始し得る日長の程度により分類される。タマネギは、短日性、中日性および長日性として記載される。短日は、鱗茎形成が11〜12時間の日光で開始し得ることを意味する。中日は、12〜約14時間の日光で鱗茎形成するタマネギについて用いられる。長日タマネギは、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上を必要とする。
【0009】
より北の気候でタマネギを生産する栽培者は長日性タマネギを植える。日照時間は緯度により大きく異なり、より高緯度では、日長が鱗茎形成を誘起して、大きな鱗茎をもたらす前に、長日タマネギは十分な最大成長をもたらし得る。北(より高緯度)で育てられる短日タマネギは、あまりにも早く鱗茎を形成し、比較的小さな鱗茎をもたらし得る。
【0010】
短日タマネギは、南テキサス、南カリフォルニアおよびメキシコなどの南部に好ましい。かかる短日の気候において長日性タマネギが植えられるならば、鱗茎形成過程を誘起するのに十分な日長をそのタマネギが経験することは決してないかもしれない。
【0011】
タマネギはまた、甘い、マイルドな、および辛いという総称を用いて、風味について分類される。タマネギの風味は、タマネギの種類および生育条件の両方の結果である。例えば、大量の硫黄を含有する土壌は、より辛味のあるタマネギをもたらす。タマネギの甘味は、糖グルコース、フルクトースおよびスクロースによりもたらされる。タマネギは、フルクタンと呼ばれるフルクトースのポリマーも含有する。タマネギ品種は、それらが含有するスクロース、グルコース、フルクトースおよびフルクタンの相対量の点で、極めて顕著に異なる。それらは、貯蔵期間および場所に従って、鱗茎中の糖の点でも異なる。貯蔵に向かない短日品種は、より高レベルのスクロース、フルクトースおよびグルコースを有するが、フルクタンをほとんど有さない傾向がある。対照的に、長日性品種および中日性貯蔵用品種、例えば、プケコヘロングキーパー(Pukekohe Longkeeper)は、スクロース、グルコースおよびフルクトースがより少なく、より大量のフルクタンを有する。
【0012】
フルクタンは甘味に関与しない。辛味レベルと糖レベルとのバランスが知覚するタマネギの辛味を決定する。高レベルの辛味は高レベルの糖をマスキングするので、タマネギは甘いと知覚されない。辛味が低レベルあるが、糖も低レベルであるタマネギは、味気ないと知覚され得る。理想的には、辛味の少ないタマネギは、高レベルの糖および低レベルの辛味を有するだろう。
【0013】
日光は辛味の風味の発達に強く影響すると考えられている。糖および有機酸などの化合物はタマネギの風味の一因となるが、タマネギにその独特の風味および芳香を与えるのは、生物活性のある有機硫黄化合物の特別な種類である。タマネギの辛味は、これらの揮発性硫黄化合物によりもたらされ、その幾つかは、タマネギを刻んだときに目に作用して、涙を誘発する(催涙効果と呼ばれることが多い)。タマネギには3種類の異なるフレーバー前駆体:1−プロペニルシステインスルホキシド、通常、最も高濃度で見出される;メチル−システインスルホキシド、通常、より少ない濃度で見出される;およびプロピルシステインスルホキシド、最も低濃度で見出される:がある。
【0014】
貯蔵条件も辛味に影響するかもしれない。研究は錯綜しているが、ほとんどの研究は、貯蔵中にほとんどの長日性タマネギの辛味が増大することを示している。Shock,C.C.,E.B.G.Feibert,and L.D.Saunders.2004.Pungency of Selected Onion Varieties Before and After Storage.Oregon State University,Malheur Experiment Station Special Report 1055:45−46を参照のこと。
【0015】
インタクトな細胞内で、酵素アリナーゼは細胞の液胞中に区分され、フレーバー前駆体は細胞質中に見出される。故に、タマネギ組織が損傷され、オルガネラが破壊されて、酵素および基質が一緒にされる場合にのみ、反応が生じる。分解の動態は、各々の特定のフレーバー前駆体によって異なる。1−プロペニルシステインスルホキシドの分解はほぼ瞬間的であるが、一方で、メチルおよびプロピルシステインスルホキシドの分解は数分間かけて生じる。フレーバー前駆体の分解から生じる主な生成物は、ピルベート(pyruvate)、アンモニアおよび化学的に不安定なスルフェン酸を含む。その内、スルフェン酸は催涙性物質または催涙性化合物であり、タマネギの特徴である。スルフェン酸はさらなる転位を受けて、タマネギの特徴的な風味に関与するチオスルフィナートを形成する。
【0016】
フレーバー前駆体形成は、タマネギによる硫酸イオン(S04-2)の取り込み、その硫化物への還元、その後の、植物の葉における光依存性反応によるシステインへの同化から始まる。次いで、グルタチオン、システインのトリペプチドが合成される。これは、フレーバー前駆体生合成経路の開始点である。特定のフレーバー前駆体に各々特有の幾つかの特定可能なペプチド中間体を介して硫黄が変換されることは分かっているが、各フレーバー前駆体の合成に至る経路は十分には理解されていない。
【0017】
最近になって、研究者らは、ピルビン酸発生量(pyruvic acid development)(PAD)の実験室分析を用いる、タマネギ風味における違いを実証するためのツールを開発した。ピルビン酸は、消費者の風味の知覚とよく関連していることが示されている。辛味は酵素的ピルビン酸の量によってのみ評価されるとしても、PAD測定値は、タマネギのマイルドさのより明確な指標として業界内で容認されてきている。最も市販されているタマネギについて、ピルビン酸レベルは、新鮮重量1グラムあたり約1〜約18マイクロモルに収まる。PAD単位は、新鮮重量1グラムあたりのマイクロモル(μM/gFW)のピルビン酸で提供される。辛味の少ないタマネギとして市販されている短日タマネギは、典型的に、5.5μM/gFWまたはそれ未満のPAD値を有し得る。5.5μM/gFWまたはそれ未満のPADを有するタマネギ鱗茎は、Vidalia Labs sweet onion certification specifications(Shock,C.C.,E.B.G.Feibert,and L.D.Saunders.2004.Onion Production from Transplant in the Treasure Valley.Oregon State University,Malheur Experiment Station Special Report 1055:4752)によれば、甘いとみなされる。
【0018】
長日タマネギは、それらが鱗茎産生を開始するために長日を必要とするために、一般的に北部の州で育てられる。この理由のため、長日性貯蔵用品種は、夏期に、必要とされる14〜16時間の日長を有する地帯である米国北部の州およびカナダに非常に適する。辛味の少ない長日性タマネギは存在しない。一般的に植えられている長日性イエローオニオン品種の幾つかは、デイトナ(Daytona)、ランチェロ(Ranchero)、グラネロ(Granero)、サブロソ(Sabroso)、タマラ(Tamara)、ハムレット(Hamlet)、フォートレス(Fortress)、ノースター(Norstar)、テトン(Teton)およびバッケロ(Vaquero)である。
【0019】
短日品種は貯蔵条件下で持ちが悪く、短日品種の辛味は貯蔵中に大幅に増大し得る。北アメリカおよびヨーロッパにおける現在の生産は、11月から4月までの間、暖冬地域からの短日タマネギの収穫を許容している。長日タマネギは、晩夏に新鮮な状態で入手可能であり、9月から3月まで、またはさらには1年中、ストレージオニオンとして入手可能であるが、辛味の少ない品種としては入手可能ではない。甘いタマネギの生産におけるすき間を埋めるために、甘いタマネギは南半球から輸入される必要がある(11月〜2月)。米国では、11月〜2月に入手可能な辛味の少ないタマネギは南半球で生産された短日タマネギではあるものの、ジョージアおよびテキサスなどの地域が3月〜6月に短日タマネギを生産している。
【0020】
辛味の少ないタマネギ、特に、辛味の少ない長日品種の開発が当該分野において必要とされている。貯蔵中に辛味を実質的に増大しないストレージオニオンも必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、辛味の少ない鱗茎を含む長日性タマネギ植物を提供する。
本発明は、特に辛味の少ない鱗茎を含むスペイン型タマネギ植物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一の態様において、本発明は、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の日光を必要とし、辛味の少ない鱗茎を含むタマネギ植物を提供する。
本発明は、また、5.5μM/gFW未満のPAD測定値を有する鱗茎を含む、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の日光を必要とするタマネギ植物の部分を提供する。
【0023】
なおさらなる一の態様において、本発明は、約5.5μM/gFW未満のPAD測定値を有する鱗茎を含む、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の光を必要とするタマネギ植物に由来するタマネギ鱗茎を提供する。
【0024】
さらなる別の態様において、本発明は、約5.5μM/gFW未満の平均PAD測定値を有する鱗茎を含む、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の光を必要とするタマネギ植物に由来するタマネギ鱗の容器を提供する。
【0025】
本発明は、約5.5μM/gFW未満の平均PAD測定値を含む鱗茎を有するタマネギ植物の生産能を有する、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の光を必要とするタマネギ植物の種子も提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の光を必要とするタマネギ植物の種子の容器であって、該種子の50%を超える種子に由来するタマネギ鱗茎が辛味の少ないタマネギであり、該種子に由来するタマネギ鱗茎の集団が約5.5μM/gFW未満のピルベートである平均PAD測定値を有するものである容器を提供する。
【0027】
本発明は、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上または14時間以上の光を必要とする辛味の少ないタマネギ植物を第2のタマネギ植物と交配させて、F1タマネギ種子を得ることを含む、ハイブリッドタマネギ種子の生産方法も提供する。
【0028】
本明細書中、NCIMB寄託番号41329の下で種子の試料が寄託されているWYL77−5l28Bの種子、ならびに該種子から成長したタマネギ植物およびその部分も提供される。
【0029】
本発明は、NCIMB寄託番号41330の下で種子の試料が寄託されているWYL77−5168Bの種子、ならびに該種子から成長したタマネギ植物およびその部分も提供する。
【0030】
さらなる別の態様において、本発明は、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上、または連続14時間以上の光を必要とする、約5.5μM/gFW未満のPAD測定値を含む鱗茎を有するハイブリッドタマネギ植物も提供する。
添付の図を参照して、本発明の様々な例示的態様が詳細に記載され得る:
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1−1】多数の市販品種についての様々な辛味および甘味レベルの測定値の結果を示す表である。
【図1−2】図1−1の続き。
【図1−3】図1−2の続き。
【図1−4】図1−3の続き。
【図1−5】図1−4の続き。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、辛味の少ない長日性タマネギ植物、該植物により生産されたタマネギ種子およびタマネギ鱗茎(タマネギ)、タマネギ鱗茎の容器、およびタマネギ種子の容器を提供する。一の態様において、タマネギは、白色、赤色または黄色のタマネギ鱗茎を生じる。別の態様において、タマネギは、スペイン型タマネギをもたらす。
【0033】
本発明のタマネギ植物は、風味について改善された特性を有するアリウム・セパの品種、特に、辛味の少ない長日タマネギ鱗茎を生じる長日タマネギ植物である。これらのおよび他の特徴ならびに本発明の利点は、本発明による考案品および方法の様々な例示的態様の以下の詳細な説明に記載されているか、またはそれらから明らかである。
【0034】
「タマネギ」、アリウム・セパ L.(Allium cepa L.)(一般的なタマネギ)は、寒期用(凍結耐性のある)2年生植物である。「2年生植物」により、アリウム・セパ L.が第1シーズンに鱗茎を生じ、第2シーズンに種子を生じることが意味される。タマネギ植物は、植物の成長および発達を可能とするいずれの温度で成長してもよい。本発明のタマネギ植物の成長および発達を可能とする温度は、約45°F〜約95°F、または約50°F〜約90°Fのものを含む。本発明のタマネギ植物の成長および発達に好ましい温度は、約55°F〜約90°Fである。別の態様において、実生成長を可能とする温度範囲は、植物の成長および発達についての温度よりも低くてもよい。実生成長を可能とする温度は、約58°F〜約87°F、または約63°F〜約82°Fのものを含む。一の好ましい態様において、実生成長についての温度は、約68°F〜約77°Fの温度である。
【0035】
「鱗茎」または「タマネギ鱗茎」により、商用に収穫された、タマネギ植物の食用部分が意味される。タマネギ鱗茎は、同心の、肥大した、多肉質の葉の基部からなり、鱗片とも呼ばれる。タマネギ鱗茎は、タマネギ鱗茎または成熟したタマネギ鱗茎を発達させてもよい。一の好ましい態様において、本発明のタマネギ鱗茎は成熟したタマネギ鱗茎である。
【0036】
本明細書で用いられる「成熟したタマネギ鱗茎」とは、収穫される状態となっている任意のタマネギ鱗茎を言う。一般的に、タマネギの葉上部の25〜50%が倒伏すると、タマネギは収穫される状態となっている。成熟時に、好ましくは、外側の葉の基部は乾燥して、鱗状となっており、内側の葉の基部は、肥厚し、収穫可能な鱗茎へと発達している。
【0037】
一の態様において、本発明の長日タマネギ植物は、辛味の少ないタマネギ鱗茎を生じる。別の態様において、本発明の長日タマネギ植物は、5.5μM/gFW未満のピルベートであるPAD測定値を有するタマネギ鱗茎を生じる。
【0038】
タマネギ鱗茎の辛味は、辛味を測定するための任意の方法を用いて測定されてもよい。一例として、辛味は、タマネギ鱗茎のピルビン酸含有量を測定することにより決定される。ピルビン酸含有量は、ピルビン酸含有量を示す任意の単位で表されてもよい。一の好ましい態様において、ピルビン酸含有量は、タマネギ果肉の新鮮重量1グラムあたりの、測定された酵素的ピルビン酸のマイクロモル(μM/gFW)で表される。一の好ましい態様において、測定値は、Schwimmer,S.;Weston,W.1961:Onion Flavor and Odor,Enzymatic Development of Pyruvic acid in Onions A Measure Of Pungency.Journal Of Agricultural And Food Chemistry 9:301により開発された、ピルビン酸発生量(PAD)レベルを測定するための方法を用いて測定される。
【0039】
一の態様において、本発明の辛味の少ないタマネギは、5.5μM/gFW未満のピルベートであるPAD測定値を有する。別の態様において、本発明の辛味の少ないタマネギは、5.0μM/gFW、4.75μM/gFW、4.5μM/gFW、4.25μM/gFW、4.0μM/gFW、3.75μM/gFW、または3.5μM/gFW未満のピルベートであるPAD測定値を有する。別の態様において、辛味の少ないタマネギは、約3.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、4.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、約4.5μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、または約5.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベートであるPAD測定値を有してもよい。
【0040】
別の態様において、辛味の少なさは、参照の長日タマネギ鱗茎と比較した、タマネギ鱗茎における有機硫黄化合物の減少の結果であってもよい。一の態様において、辛味は、参照の長日タマネギと比較した、1−プロペニルシステインスルホキシド、メチル−システインスルホキシドまたはプロピルシステインスルホキシドを含む有機硫黄化合物の減少の結果であってもよい。一の態様において、参照の長日タマネギ鱗茎は、任意の市販の長日タマネギ植物から得られてもよい。一の好ましい態様において、参照の長日タマネギ鱗茎は、長日タマネギ系統ビジョン(Vision)である。有機硫黄化合物の減少は、有機硫黄化合物の任意の減少であってもよい。一の好ましい態様において、有機硫黄化合物の減少は、参照の長日タマネギ植物に由来するタマネギ鱗茎と比較した、1種以上の有機硫黄化合物の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%またはそれ以上の減少である。
【0041】
別の態様において、辛味は、タマネギ鱗茎の集団における平均PAD測定値として決定されてもよい。タマネギ鱗茎の集団は、約5.5μM/gFW未満の、5.0μM/gFW未満の、4.5μM/gFW未満の、4.0μM/gFW未満の、または3.75μM/gFW未満のピルベートである平均PAD測定値を有してもよい。別の態様において、辛味の少ないタマネギは、約3.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、約4.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、約4.5μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、または約5.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベートである平均PAD測定値を有してもよい。一の態様において、タマネギ鱗茎の集団は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50個またはそれ以上のタマネギ鱗茎であってもよい。
【0042】
本明細書で提供されるタマネギ系統の平均PAD測定値は、本発明のタマネギ植物に由来する任意の数のタマネギ鱗茎のPAD測定値を平均することにより決定されてもよい。一例として、平均PAD測定値は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50個のタマネギ鱗茎の平均である。一の好ましい態様において、鱗茎が得られるタマネギ植物は長日タマネギ植物である。
【0043】
PAD測定値のごときタマネギの特性は、様々な時間で測定され得る。一の態様において、特性は、栽培箱内での成長後に測定される。別の態様において、特性は、収穫時に測定される。別の態様において、特性は、収穫後1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間、周囲条件下でタマネギ鱗茎を貯蔵した後に測定される。さらなる別の態様において、特性は、収穫後1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、または6ヶ月間、5℃でタマネギ鱗茎を貯蔵した後に測定される。
【0044】
タマネギ植物は、様々な日長に応答する鱗茎形成開始によって、3つのカテゴリーに分類されてもよい。一の態様において、「短日」長型のタマネギ植物(短日またはSDタマネギ)は、鱗茎形成を開始するために11〜12時間の日光に応答し、「中日」長型タマネギ植物(中日またはIDタマネギ)は12〜14時間の日光を必要とし、および「長日」長型タマネギ植物(長日またはLDタマネギ)は、鱗茎形成を開始するために連続約14時間以上の日光を必要とする。一の好ましい態様において、長日タマネギ植物は、鱗茎形成を開始するのに連続14時間以上の日光を必要とする。
【0045】
特定の型のタマネギについて鱗茎形成を開始するための日長応答期間は、任意の形式で表されてもよく、任意の日数の間の、多数の連続時間数の日光として表されてもよい。一の態様において、タマネギ植物が鱗茎形成を開始するのに、少なくとも1日間、数時間の日光が必要とされる。別の態様において、タマネギ植物は、鱗茎形成を開始するのに、2、3、4、5、6、7、8、9、10日またはそれ以上の特定の連続時間数の日光を必要としてもよい。
【0046】
気候および土壌は、ピルビン酸濃度に影響してもよい。好ましくは、辛味の少ないタマネギは、元々低い硫黄レベルを有する土壌で育てられるべきである。成長期の間の夏の高い温度も、ピルビン酸濃度を増大してもよい。辛味の少ないタマネギを生産する場合、個々の生産地域において最も暑い時期を避ける種まきおよび収穫条件の利用が順守されるべきである。栽植密度もタマネギの辛味に影響する。密度の低い植物集団は、辛味の少ないタマネギに推奨される。また、本明細書で用いられる「同様の圃場条件」は、辛味の少ない系統を比較するための適切なタマネギ成長条件、すなわち、辛味の少ないタマネギを生産するのに適する地域および条件下での、同じ圃場および時期における成長を言う。
【0047】
一の態様において、本発明は、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上および連続14時間以上の日光を必要とする、辛味の少ない鱗茎を含むタマネギ植物を提供する。
【0048】
別の態様において、本発明は、約5.5μM/gFW未満のピルベートであるPAD測定値を有する鱗茎の生産能を有する、タマネギ植物の種子を提供する。一の好ましい態様において、種子から成長したタマネギ植物は、鱗茎形成を開始するのに約14時間以上および連続14時間以上の日光を必要とする。
【0049】
本発明は、辛味の少ない長日タマネギから収穫された長日タマネギ、例えば、タマネギ植物の圃場において育てられた複数の辛味の少ない長日タマネギ植物から収穫されたタマネギも提供する。
【0050】
本発明はさらに、貯蔵後に辛味の少ないタマネギ鱗茎を生産するという特性を有する長日タマネギ植物を提供する。一の態様において、好ましくは、鱗茎は、少なくとも2ヶ月間の貯蔵下、好ましくは、少なくとも約4ヶ月間の貯蔵下で少ない辛味レベルを維持しており、一方で、さらに好ましい態様において、タマネギは、少なくとも約6ヶ月間の貯蔵下で少ない辛味レベルを維持している。一の好ましい態様において、2ヶ月間の貯蔵後のPAD測定値は、5.5μM/gFW未満のピルベートであり、一方で、他の好ましい態様において、2ヶ月間の貯蔵後のPAD測定値は5.0μM/gFW未満のピルベートであり、より好ましくは、4.5μM/gFW未満のピルベート、さらにより好ましくは、約4.0または3.75μM/gFW未満のピルベートである。
【0051】
別の態様において、本発明のタマネギ鱗茎は、辛味を実質的に増大することなく、タマネギ鱗茎の貯蔵に適する任意の条件下で貯蔵されてもよい。一の態様において、0〜約6ヶ月にわたるタマネギ鱗茎の長期貯蔵のための貯蔵条件は、約4℃〜約6℃および約50%〜約65%の範囲の相対湿度の制御された環境条件下にある。一の態様において、タマネギ鱗茎は、PAD測定値における実質的な増大を伴うことなく、かかる条件下で少なくとも約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月間貯蔵されてもよい。PAD測定値における「実質的な増大」は、収穫時に得られたPAD測定値と比較して20%を超えるPAD測定値の増大を言う。一の好ましい態様において、タマネギ鱗茎は、収穫時のPAD測定値と比較して、15%、10%または5%を超えるPAD測定値の増大を伴うことなく、上記期間、貯蔵されてもよい。
【0052】
本発明の一の態様において、タマネギ植物から収穫された成熟したタマネギ鱗茎は、匹敵する圃場条件下で育てられた場合に、WYL77−5128B系統についての2ヶ月間の貯蔵後のPAD測定値とほぼ同じまたはそれ未満の、2ヶ月間の貯蔵後の平均PAD測定値を有する。
【0053】
本発明の別の態様において、タマネギ植物から収穫されたタマネギは、匹敵する圃場条件下で育てられた場合に、WYL77−5168B系統についての収穫時のPAD測定値とほぼ同じまたはそれ未満の、2ヶ月間の貯蔵後の平均PAD測定値を有する。
【0054】
長期間の貯蔵のために、タマネギ鱗茎は、十分に成熟した場合に収穫され、日干しにされてもよい。特に、雨または湿気のある天候の後に、鱗茎は変化する可能性があり、損傷した材料は廃棄される。浅型のスラットトレイおよびオープンメッシュサックなどのものを含む、空気循環をもたらす容器が用いられてもよい。一の好ましい態様において、光が発芽を誘導し得るので、光への曝露は避けられ、タマネギは乾燥した状態に保たれる。一の好ましい態様において、タマネギ鱗茎は、25%未満の損失を伴って、約1、2、3、4、5、6、7または8ヶ月間貯蔵され得る。
【0055】
別の態様において、辛味の少ない長日タマネギは、長期貯蔵条件下で2ヶ月、4ヶ月または6ヶ月間貯蔵された場合に、約5.5μM/gFW未満のPAD値を有する辛味の少ない成熟したタマネギ鱗茎をもたらし得る長日性タマネギ植物である。辛味の少ない長日タマネギはまた、匹敵する圃場条件下で育てられた場合、2ヶ月、4ヶ月または6ヶ月間の長期貯蔵条件下の長日WYL77−5168B系統のタマネギについてのPAD値と同等か、またはそれ未満のPAD値を有するだろう。或いは、辛味の少ない長日タマネギは、匹敵する圃場条件下で育てられた場合、2ヶ月、4ヶ月または6ヶ月間の長期貯蔵条件の長日WYL77−5128B系統のタマネギについての平均PAD値と同等か、またはそれ未満の平均PAD値を有するだろう。
【0056】
本発明を用いて、生産者は、長日条件下で育てることが可能で、貯蔵性もよい辛味の少ないタマネギ鱗茎を生産することができる。望ましい辛味の少ないタマネギが生産され得る領域が拡大されるので、長日条件下での鱗茎生産および辛味の少ない系統の特性は、生産者にとって非常に利益がある。
【0057】
短日タマネギと異なり、辛味の少ない長日タマネギは、長期貯蔵条件下で2ヶ月以上貯蔵され得、その辛味の少なさを保ち得る。一の態様において、辛味の少ない長日タマネギの長期貯蔵能を利用して、辛味の少ないタマネギの現在の生産におけるすき間(11月〜2月)を埋めてもよい。辛味の少ない長日タマネギは、2ヶ月から最高6ヶ月まで、またはそれ以上の間貯蔵されてもよく、それは、北部の緯度にある生産地域からの辛味の少ないタマネギの単独かつ連続的な供給をもたらす。
【0058】
本発明は、50%を超える種子から成長した鱗茎が辛味の少ない長日性タマネギ植物である、タマネギ種子の容器も提供する。別の態様において、容器中の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%を超えるタマネギ種子から成長したタマネギ植物から得られた鱗茎は辛味が少ない。一の態様において、該種子から成長した植物から得られた鱗茎の集団は、5.5μM/gFW、5.0μM/gFW、4.5μM/gFW、4.0μM/gFWまたは3.75μM/gFW未満のピルベートである平均PAD含有量を有する。別の態様において、該種子から成長したタマネギ植物から得られた鱗茎の集団は、約3.75μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、約4.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、約4.5μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベート、または約5.0μM/gFW〜約5.5μM/gFWのピルベートである平均PAD測定値を有する。タマネギ鱗茎の集団は、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200、500または1000個またはそれ以上のタマネギ鱗茎を含んでいてもよい。
【0059】
タマネギ種子の容器は、任意の数、重さまたは体積の種子を含んでいてもよい。例えば、容器は、少なくとも約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000個またはそれ以上、またはそれらを超える種子を含み得る。或いは、容器は、少なくとも約1オンス、5オンス、10オンス、1ポンド、2ポンド、3ポンド、4ポンド、5ポンドまたはそれ以上、またはそれらを超える種子を含み得る。
【0060】
タマネギ種子の容器は、当該分野において入手可能である任意の容器であってよい。非限定的な例として、容器は、箱、袋、小包、ポーチ、テープロール、またはチューブであってもよい。
【0061】
別の態様において、本発明は、50%を超える鱗茎が、長日性タマネギ植物からの辛味の少なさを有するものである、タマネギ鱗茎の容器も提供する。別の態様において、容器中の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%を超えるタマネギ鱗茎は辛味が少ない。一の態様において、容器中の鱗茎の集団は、5.5μM/gFW、5.0μM/gFW、4.5μM/gFW、4.0μM/gFWまたは3.75μM/gFW未満のピルベートである平均PAD含有量を有する。別の態様において、鱗茎の集団は、約3.75μM/g〜約5.5μM/gFWのピルベート、約4.0μM/g〜約5.5μM/gFWのピルベート、約4.5μM/g〜約5.5μM/gFWのピルベート、または約5.0μM/g〜約5.5μM/gFWのピルベートである平均PAD測定値を有する。タマネギ鱗茎の集団は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200、500または1000個またはそれ以上のタマネギ鱗茎を含んでいてもよい。
【0062】
タマネギ鱗茎の容器は、任意の数、重さまたは体積の鱗茎を含んでいてもよい。例えば、容器は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50または100個、またはそれらを超える鱗茎を含み得る。或いは、容器は、少なくとも約1ポンド、2ポンド、3ポンド、4ポンド、5ポンドまたはそれ以上、またはそれらを超える鱗茎を含み得る。
【0063】
タマネギ鱗茎の容器は、当該分野において入手可能である任意の容器であってもよい。非限定的な例として、容器は、箱、薄い箱、袋、小包または束であってもよい。本発明のタマネギ鱗茎の容器は、倉庫、配給業者、卸業者、または小売市場、例えば、食料品店を含むがこれらに限定されない任意の場所で見出されてもよい。
【0064】
本発明はさらに、複数の辛味の少ない長日タマネギ植物を育て、次いで、該タマネギ植物から長日タマネギを収穫することを含む、タマネギ作物の生産方法を提供する。この方法に従って収穫された長日タマネギも提供される。
【0065】
一の態様において、本発明のタマネギ植物は、放任受粉系統、半同胞系統または雄性不稔系統として維持されてもよく、大きさ、形状および色などの特性に関して表現型的に異なっていてもよい。別の態様において、本発明は、鱗茎形成を開始するのに連続14時間以上の日光を必要とする、辛味の少ない近交タマネギ系統を提供する。雄性不稔近交系統は、本発明のハイブリッドタマネギの生産において用いられてもよい。タマネギ植物育種プログラムにおけるハイブリッドタマネギの開発は、ホモ接合性近交系統の開発、これらの系統の交配、および交配の評価を含んでいてもよい。本発明の別の態様において、タマネギ植物の育種プログラムは、2種以上の近交系統に由来する遺伝的背景または他の様々な生殖質源を、育種集団へ一体化させてもよく、該育種集団から、新規近交系統が自家または同胞受粉および所望の表現型の選択により開発されてもよい。当該分野において知られており、かつタマネギ植物育種プログラムにおいて使用されている植物育種技法は、循環選抜、戻し交配、倍加半数体、系統育種、制限断片長多型増強選抜、遺伝子マーカー増強選抜、および形質転換を含むが、これらに限定されない。一の態様において、これらの技法の組み合わせが用いられてもよい。故に、本発明のタマネギ植物に由来する近交系統は、本明細書に記載の植物育種技法を用いて開発されてもよい。新規近交タマネギ系統は、他の近交系統と交配されてもよく、これらの交配に由来するハイブリッドを評価して、どれが商業的可能性を有するかを決定してもよい。
【0066】
戻し交配手法を本発明のタマネギ植物と共に用いて、近交系を改善するか、または特定の特徴もしくは一連の特徴を近交系に導入することができる。本明細書で用いられる「戻し交配」なる用語は、その近交系の親タマネギ植物の1つに戻ってハイブリッド後代を繰り返し交配することを言う。所望の特徴に関する遺伝子を提供する親タマネギ植物は、非反復体、またはドナー、親と呼ばれる。この専門用語は、非反復親が戻し交配プロトコルにおいて1回だけ用いられ、それ故に、反復しないという事実を言う。非反復親に由来する遺伝子(複数も可)が移入される親タマネギ植物は、戻し交配プロトコルにおいて数ラウンドにわたって用いられるので、反復親として知られている。典型的な戻し交配プロトコルにおいて、目的とする元々の近交系(反復親)は、移入されるべき目的の特性(複数も可)を保有する第2の近交系(非反復親)に交配される。次いで、この交配から得られた後代は、反復親に再度交配され、この過程は、非反復親の1個または数個の移入された特性に加えて、反復親の所望の形態学的および生理学的特徴の基本的に全てが変換された植物中に回収されているタマネギ植物が得られるまで、繰り返される。典型的には、後代が、所望の特性(複数も可)を制御する遺伝子を除く、反復親の基本的に全ての遺伝子を含み得る前に、所望の特性の選択と共に、4世代以上の戻し交配世代が必要とされてもよい。分子マーカーが選択過程において使用可能である場合、プログラムは加速されてもよい。次いで、移入されるべき遺伝子(複数も可)について純粋な育種後代を得るために、最後の戻し交配世代が自家受粉される。
【0067】
「近交系」、「近交系植物」または「近交系タマネギ」なる用語が本発明の文脈において用いられる場合、これは、該近交系の任意の単一の遺伝子変換も含む。本明細書で用いられる単一遺伝子変換植物なる用語は、戻し交配と呼ばれる植物育種技法により開発され、戻し交配技法により単一の遺伝子が近交系へ移入することに加えて、近交系の所望の形態学的および生理学的特徴の基本的に全てが回収されている、タマネギ植物を言う。
【0068】
任意のタマネギ植物は、本明細書で開示されるタマネギ植物と合わせて用いられ得る。一の好ましい態様において、辛味の少なさの供給源はエリート植物である。一の態様において、辛味の少ないタマネギは、以下の長日供給源:デイトナ(Daytona)、ランチェロ(Ranchero)、グラネロ(Granero)、サブロソ(Sabroso)、タマラ(Tamara)、ハムレット(Hamlet)、フォートレス(Fortress)、ノースター(Norstar)、テトン(Teton)およびバッケロ(Vaquero)を用いる育種により生産されてもよい。図1は、市販されている多数の(および開発段階にある幾つかの)長日タマネギ品種についての様々な辛味および甘味パラメータの測定値の表を提供する。明かであろうが、冬期の間の貯蔵を経た典型的な長日性タマネギは、6.2〜12μM/gFWの範囲のPADを有し得、非常に辛味がある。一の態様において、本発明の辛味の少ないタマネギ植物は、所望の特性を有する任意の近交タマネギ系統と交配されてもよい。
【0069】
本明細書で用いられる「エリート系統」とは、優れた農業パフォーマンスについての育種および選択から得られる任意の系統である。エリート植物は、エリート系統に由来する任意の植物である。植物は、スパニッシュオニオンまたは他の長日生殖質から選択され得、低いPAD値についてスクリーニングされ得る。
【0070】
本発明のタマネギ植物は、自家受粉され、多世代にわたって類型ついて選択されてもよく、その結果、ほぼ全ての遺伝子座においてホモ接合性となり、真の育種後代の均一な集団をもたらす。かかる2つの植物間の交配は、多数の遺伝子座についてヘテロ接合性であるハイブリッド植物の均一な集団をもたらす。一般的に、近交系植物の開発は、少なくとも約2世代の自家受粉、次いで、集団選択または同胞交配を必要とする。次いで、近交系植物は、改善されたF1ハイブリッドを開発する試みにおいて、異種交配されてもよい。次いで、ハイブリッドは、スクリーニングされ、小規模試験において評価される。典型的に、潜在的な商業的価値について選択された約10〜15個の表現型特性が測定される。
【0071】
本発明は、本発明のタマネギ植物の特性を保有するために十分な遺伝物質を有する、辛味の少ないタマネギの後代も提供する。本明細書で用いられる後代は、2つの植物間の任意の交配(戻し交配またはそれ以外)の産物だけでなく、その系統が元々の交配に由来する全ての後代も含むが、これらに限定されない。一の態様において、かかる後代は、初めに交配された2つの植物の一方に由来する遺伝物質の50%、25%、12.5%またはそれ未満の遺伝物質を有する植物を含むが、これらに限定されない。本明細書で用いられる第2の植物は、該第2の植物系統が第1の植物を含むならば、第1の植物に由来する。
【0072】
本発明の方法を用いて産生された植物は、育種プログラムの一部であるか、またはそれから産生され得る。育種方法の選択は、植物の生殖様式、改善しようとする特性(複数も可)の遺伝性、および商業的に用いられている品種の型(例えば、Flハイブリッド品種、純系統品種など)に依存する。本発明の植物を育種するために選択された非限定的なアプローチを以下に示す。任意の交配の後代のマーカー利用選抜のごとき利用可能な任意の方法を用いて、育種プログラムが強化され得る。任意の市販されている品種および市販されていない品種が育種プログラムに用いられ得ることがさらに理解される。一般的に、例えば、出芽力、発育力、ストレス耐性、病害耐性、開花、結実、種子サイズ、種子密度、耐倒伏性および鱗茎サイズのごとき因子が、選択に影響し得る。
【0073】
本発明は、新規タマネギ植物の生産方法およびかかる方法により生産されたタマネギ植物も提供する。かかる方法に従って、第1の親タマネギ植物は第2の親タマネギ植物と交配されてもよく、ここで、第1および第2のタマネギ植物の少なくとも一方は、本明細書で記載したような近交系の辛味の少ない長日タマネギ植物である。該方法の1つの適用は、F1ハイブリッド植物の生産にある。この方法の別の重要な態様は、それが新規近交系統の開発に用いられ得るということである。例えば、本明細書で記載したような近交系の辛味の少ないタマネギ植物が任意の第2の植物に交配され得、得られたハイブリッド後代は約2世代以上にわたって各々自家受粉または同胞受粉され、それにより、多数の別個の純粋交配の近交系統がもたらされる。次いで、これらの近交系統は、他の近交または非−近交系統と交配され得、得られたハイブリッド後代は有益な特徴について分析される。このように、所望の特徴を付与する新規近交系統が同定され得る。
【0074】
本発明のタマネギ植物は、任意の天然技法により、例えば、昆虫による受粉により交配され得る。一の態様において、交配は以下の工程:
(a)第1および第2の親タマネギ植物の種子または鱗茎、好ましくは、第1の近交タマネギ植物および第2の別個の近交タマネギ植物の種子または鱗茎を受粉可能な近さで植え付けること;
(b)第1および第2の親タマネギ植物の種子または鱗茎を、花をつける植物に栽培または成長させること;
(c)第1と第2の親タマネギ植物の間で自然な他家受粉を生じさせること;
(d)親タマネギ植物で生産された種子を回収すること;および所望により
(e)回収した種子をタマネギ植物、好ましくは、ハイブリッドタマネギ植物に育てること、
を含む。
【0075】
交互に並ぶ作条、ブロック、育種ケージ中、または任意の他の便利な植え付けパターンで親植物を植え付けることにより、親植物は互いに受粉可能な近さで植え付けられてもよい。親植物の成熟期が異なる場合、より遅く成熟する植物を初めに植え付け、それにより、雌性親が花粉を受け入れる力のある時期の間に雄性親からの花粉が利用可能であることを確実にすることが所望されてもよい。両親植物を栽培し、開花時期まで成長させておく。有利には、生産者により適切であると考えられる場合に、この成長段階の間、植物は肥料および/または他の農薬で一般的に処理される。
【0076】
或いは、本発明の別の態様において、第1および第2の親タマネギ植物の両方が、本明細書で記載したような辛味の少ない長日タマネギ植物であり得る。故に、本明細書で記載したような辛味の少ない長日タマネギ植物を用いて生産された任意のタマネギ植物は本発明の一部を形成する。本明細書で用いられる交配とは、自家交配、同胞受粉、戻し交配、別または同じ近交系への交配、集団交配などを意味し得る。故に、本明細書で記載したような辛味の少ない長日タマネギ植物を親として用いて生産された全てのタマネギ植物は、本発明の範囲内である。
【0077】
本発明のさらなる一の態様は、本明細書で記載したタマネギ植物の組織培養物に関する。本明細書で用いられる「組織培養物」なる用語は、同じもしくは異なる型の単離細胞を含む組成物または植物の部分を組織するかかる細胞の集まりを言う。組織培養物の例示的な型は、プロトプラスト、カルス、および植物または植物の部分中のインタクトな植物細胞、例えば、胚、葉、花柄、小花柄、葯、分裂組織、鱗茎、幹および茎、外植片などである。一の好ましい態様において、組織培養物は、これらの植物の部分の未熟な組織に由来する胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、花粉、葉または葯を含む。植物組織培養物を調製および維持するための手段は当該分野においてよく知られている。
【0078】
WYL77−5128Bと指定された近交系長日タマネギ(Allium cepa)植物の種子は、寄託番号41329として、the National Collections of Industrial and Marine Bacteria(NCIMB Limited,Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksbum,Aberdeen,Scotland;AB21 9YA,UK)に寄託された。同様に、WYL77−5168Bと指定された近交系長日タマネギ植物の種子は、寄託番号41330として、NCIMBに寄託された。該種子、該種子から成長した植物、およびかかる植物に由来する種子も本明細書において提供される。
【0079】
本発明のさらなる一の態様において、種子は、少なくとも一方の親として、長日タマネギ植物WYL77−5128BおよびWYL77−5168Bのいずれか一方の種子から成長した植物を有する長日タマネギ植物のために提供される。植物は、長日タマネギ植物WYL77−5128BおよびWYL77−5168Bから選択される一方または両方の親を有するハイブリッド植物であってもよい。本発明はさらに、かかる長日タマネギ植物の種子を成長させることにより生産された長日タマネギ植物、またはその部分を提供する。
【0080】
本発明は、かかる種子から生産されるか、または任意の無性生殖手段により生産される長日タマネギ植物から成長した長日タマネギ植物から収穫した長日タマネギも提供する。
【0081】
本発明は、長日タマネギ植物WYL77−5128BおよびWYL77−5168Bの生理学的および形態学的特徴を有する長日タマネギ植物も提供する。本発明は、細胞またはプロトプラストが葉、花粉、子葉、胚軸、胚、根、鞘、花、芽および茎からなる群より選択される植物組織から産生されたものである組織培養物を用いて、長日タマネギ植物に由来するプロトプラストまたは再生可能細胞から産生された植物または植物の産物を熟慮する。
【0082】
本発明の別の態様は、辛味の少ない長日タマネギ植物またはその部分を提供し、ここで、該植物またはその部分は、長日タマネギ植物において機能する調節エレメントに作動可能に連結した1つ以上のトランスジーンを含むように形質転換される。
【0083】
本発明のなおさらなる一の態様は、WYL77−5128BおよびWYL77−5168Bの花粉もしくは胚珠、またはかかる長日タマネギ植物、特に、組織培養物から再生し、かつ辛味が少なく長日性であるという特性を有する長日タマネギ植物の細胞に由来するタマネギ組織培養物を提供する。
【0084】
例えば、育種目的のための、本発明のタマネギ植物または任意のその部分の使用も、本発明により提供される。より具体的には、少なくとも一方の親タマネギ植物として本発明の長日性で辛味の少ないタマネギ植物の交配、および所望の特性を有する後代タマネギ植物の選択から得られたF1種子からFlタマネギ植物を成長させるという方法が熟慮される。さらなる一の好ましい態様において、親タマネギ植物の一方に対する2世代以上の戻し交配が、長日性の辛味の少ないタマネギ植物の新規系統の育種において用いられる。
【0085】
WYL77−5168Bは、典型的な長日スパニッシュオニオンの全ての望ましい特性に辛味が少ないというさらなる特性を組み合わせた、長日スパニッシュオニオン育種系統である。WYL77−5168Bに最も密接に類似している品種はビジョン(Vision)である。他の全ての長日品種からWYL77−5168Bのごとき辛味の少ない品種を最も容易に区別する比較特性は、WYL77−5168Bの独特の辛味の少なさ(「マイルドさ」)である。このレベルの辛味の少なさは、長日条件下の光周期に応答して鱗茎形成を誘導するタマネギに独特である。
【0086】
上記したように、アリウム・セパ育種系統WYL77−5168Bからの種子は、寄託番号NCIMB41330アリウム・セパWYL77−5168Bとして、2005年6月24日にNCIMB Ltd.に寄託された。
【0087】
WYL77−5128Bは、典型的な長日スパニッシュオニオンの全ての望ましい特性に辛味が少ないというさらなる特性を組み合わせた、長日スパニッシュオニオン育種系統である。WYL77−5128Bに最も密接に類似している品種もまたビジョン(Vision)である。WYL77−5128Bは、鱗茎形成を誘導するのに長日条件下の光周期において辛味の少ないタマネギを生じる。上記したように、アリウム・セパ育種系統WYL77−5128Bからの種子は、寄託番号NCIMB41329アリウム・セパWYL77−5128Bとして、2005年6月24日にNCIMB Ltd.に寄託された。
【0088】
一の好ましい態様において、本発明の長日性で辛味の少ないタマネギ植物は、ハイブリッド種子の生産において用いられてもよい。本明細書に記載されるような辛味の少ないタマネギ植物が別の異なるタマネギ近交系と交配される場合にはいつでも、第1世代(F1)タマネギハイブリッド植物が産生される。そのようなものとして、F1ハイブリッドタマネギ植物は、辛味の少ないタマネギ植物、例えば、本明細書に記載したものと、任意の第2の近交タマネギ植物を交配させることにより産生され得る。本質的に任意の他のタマネギ植物を用いて、一方の親として本明細書で記載したような長日性で辛味の少ないタマネギ植物を有するハイブリッドタマネギ植物を産生することができる。必要なことは、第2の植物が稔性であるということだけであり、天然にタマネギ植物は稔性である。
【0089】
タマネギは複相を有し、これは、2つの様相の遺伝子(2つの対立遺伝子)が各遺伝子座(染色体上の位置)を占めることを意味する。遺伝子座にある対立遺伝子が同じであるならば、ホモ接合性と呼ばれる。それらが異なるならば、ヘテロ接合性と呼ばれる。ホモ接合性である場合の多数の遺伝子座は、植物に有害であるために、特に、活力の軽減、貧弱な鱗茎の質、弱いおよび/または乏しい成長をもたらすために、近交系植物の産生は予測不可能かつ困難な過程である。幾つかの条件下では、ある遺伝子座におけるヘテロ接合性の利点は、ホモ接合性の永続化を効果的に妨げる。
【0090】
単交配ハイブリッドタマネギ品種は、各々が他の遺伝子型を補完する遺伝子型を有する2種の近交植物の交配種である。典型的に、F1ハイブリッドは、それらの近交系親よりも活力を有する。このハイブリッドの活力または雑種強勢は、著しく改善された収率、より良好な根、より良好な均一性ならびにより良好な耐虫性および耐病性を含む、多数の多遺伝子性特性に現れる。ハイブリッドの開発において、典型的に、F1ハイブリッド植物のみが探求されている。2種の近交系植物が交配される場合に、F1単交配種ハイブリッドが産生される。初めに2種の近交系の間で交配させ(A×B)、次いで、そのF1ハイブリッドを3番目の近交系統と交配させる(A×B)×Cことにより、3種の近交系植物から3通りの交配ハイブリッドが産生される。
【0091】
当業者に知られている任意のタマネギ品種を、本発明の長日性で辛味の少ないタマネギ系統と交配させて、ハイブリッド植物を生産できる。
【0092】
本明細書に記載したような近交系の辛味の少ないタマネギ植物を別の近交系植物に交配させて、ハイブリッドを得る場合、それは母性または父性植物のいずれかとしての機能を果たし得る。多数の交配について、親植物の属する性に関係なく、結果は同じである。ハイブリッド交配種において第2の親に関連する特徴をもたらす種子に依存して、雄性または雌性親として親植物の一方を使用することが所望されてもよい。故に、雄性または雌性親として一方の親植物を使用するという決定は、当業者によく知られているような任意の特徴に基づいてなされてもよい。
【0093】
1種または複数の出発品種を用いる新規品種の開発は当該分野においてよく知られている。本発明に従って、新規品種は、かかるよく知られている方法に従って、本明細書で記載するような近交長日性で辛味の少ないタマネギ植物を交配させ、次いで、育種の複数の世代を交配させることにより、作り出されてもよい。新規品種は、本明細書で記載するような長日性で辛味の少ないタマネギ植物を任意の第2の植物と交配させることにより、作り出されてもよい。新規近交系統を開発する目的で交配させるためのかかる第2の植物を選択する際、1つ以上の選択された望ましい特徴を示すか、またはハイブリッド混合種の場合には望ましい特徴(複数も可)を示す植物を選択することが所望されてもよい。潜在的に所望される特徴の例は、収率がより大きいこと、殺虫剤、除草剤、害虫および病害に対する耐性、熱および日照りに対する耐性、作物が成熟するまでの時間が軽減されていること、農業上の性質がより良好であること、栄養価値がより高いこと、ならびに発芽時間、成長速度、成熟度および鱗茎サイズにおける均一性を含む。
【0094】
一旦、初めの交配が本発明の長日性で辛味の少ないタマネギ植物を用いてなされると、新規近交系品種を生産するために、同系交配が実施される。同系交配は、ヒト育種者による操作を必要とする。天然のタマネギにおいて生じる異種交配よりも極めてまれな事象である同系交配においてさえ、ホモ接合性および多数の世代の既知の有害効果に起因して、事実上、完全な同系交配の達成を期待することはできず、植物は孤立して育種される必要があろう。育種者が近交系植物を作り出す理由は、配偶子伝達が予測可能である遺伝子の既知の保有宿主を有するということである。
【0095】
系統育種方法は、2種の遺伝子型の交配を含む。各遺伝子型は、他では欠失している1種以上の所望の特徴を有し得るか、または各遺伝子型は他の遺伝子型を補完し得る。2種の元々の親遺伝子型が所望の特徴の全てをもたらさないならば、他の遺伝子型は育種集団内に含まれ得る。これらの交配の産物である優性植物は、自家受粉されるか、または同胞交配され、継続的世代において選択される。各継続的世代は、自家受粉および選択の結果として、より同質となる。典型的に、この育種方法は、1または2世代の自家交配または同胞交配、次いで、集団選択または同胞化:S1→S2;S2→S3を含む。少なくとも5世代後、近交系植物は遺伝的に純粋であるとみなされる。本発明のタマネギ植物は遺伝的に純粋であるか、またはS1、S2、S3等であってもよい。
【0096】
新規品種の開発において通常は選択されないが、戻し交配技法により改善され得る多数の特性が同定された。特性を付与する遺伝子座は、トランスジェニックであってもなくてもよい。当業者に知られているかかる特性の例は、雄性不稔性、除草剤耐性、細菌、真菌またはウイルス病に対する耐性、虫害耐性、雄稔性および栄養価増強を含むが、これらに限定されない。これらの遺伝子は一般的に核を介して受け継がれるが、細胞質を介して受け継がれてもよい。これに対する幾つかの既知の例外は、雄性不稔性に関する遺伝子であり、その幾つかは細胞質的に受け継がれるが、単一の遺伝子座特性としてなお作用する。
【0097】
遺伝子座が優性特性として作用する場合、直接選択が適用されてもよい。優性特性の一例は除草剤耐性特性である。この選択過程のために、初めの交配の後代は、戻し交配の前に除草剤をスプレーされる。そのスプレーにより、所望の除草剤耐性の特徴を有さない任意の植物が排除され、除草剤耐性遺伝子を有する植物のみがその後の戻し交配において使用される。次いで、さらなる戻し交配世代についてこの過程を繰り返す。
【0098】
多数の有用な特性は、遺伝子形質転換技法により誘導されるものである。タマネギの遺伝子形質転換のための方法は当業者に知られている。例えば、タマネギの遺伝子形質転換について記載されている方法は、電気穿孔法、電気的形質転換、微粒子銃、アグロバクテリウム介在形質転換、プロトプラストの直接的DNA取り込み形質転換、および炭化ケイ素繊維介在形質転換を含んでもよい。例えば、Khachatourians,G.,ら.,eds.,Transgenic Plants and Crops,Marcel Dekker,Inc.(2002)を参照のこと。
【0099】
メンデル性遺伝により後代へ単一の遺伝子座を伝達する、安定に形質転換されたタマネギ植物を生産するための技法は当該分野においてよく知られているので、トランスジーンが植物に直接形質転換される必要がないことは、当業者に理解される。故に、かかる遺伝子座は、当該分野においてよく知られている標準的な植物育種技法により、親植物から後代植物へ伝達されてもよい。本発明によるタマネギ植物へ導入されてもよい特性の例は、例えば、雄性不稔性、除草剤耐性、病害耐性、虫害耐性、および栄養価増強を含む。
【0100】
PCRおよびサザンハイブリダイゼーションは、特定の遺伝子座の存在およびそれ故にその遺伝子座の転換を確認するために用いられ得る分子技法の2つの例である。
【0101】
上で引用した各参考文献、特許または他の刊行物は、出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。
【実施例1】
【0102】
WYL77−5128BおよびWYL77−5168Bは、長日条件下で鱗茎を生産する長日タマネギである。辛味の少ない長日性タマネギの選択において、その辛味の少ない長日タマネギを、匹敵する圃場条件下で育てられたビジョン(Vision)を含む対照の長日タマネギと比較する、様々な圃場試験を育種系統を用いて実施した。ビジョン(Vision)は、現在Seminisから市販されているCMSハイブリッドであって、フルシーズンの成熟性および優れた貯蔵性を有する長日クラスのハイブリッド型イエロースパニッシュオニオンである。
【0103】
記載された方法(Schwimmer,S.;Weston,W.1961.Onion Flavor and Odor,Enzymatic Development of Pyruvic Acid in Onions A Measure Of Pungency.Journal Of Agricultural and Food Chemistry 9:301)に従って、集められたタマネギ試料をピルベート(PADレベル)について分析した。
【0104】
他のタマネギ品種にも当てはまるが、タマネギの繁殖の過程の間に、わずかな割合の変異体しか、ほぼ全ての特徴について商業的に許容される限度内で生じることができない。WYL77−5128BおよびWYL77−5168Bが均一かつ安定であると観察された数年間に、変異体は全く観察されなかった。
【0105】
実施例1:WYL77−5168B 長日タマネギ
長日タマネギ近交系、WYL77−5168Bを、イエロースウィートスパニッシュオニオン(Yellow Sweet Spanish Onion)の合成遺伝子プール(合成遺伝子YSS−715B)からの集団選択により開発した。集団選択は、ヘテロ接合性集団内の個々を選択的に収穫することによる、複合集団の形成である。Burton,G.W.1990.Enhancing germplasm with mass selection.p.99−100.In:J.Janick and J.E.Simon (eds.),Advances in new crops.Timber Press,Portl and,ORを参照のこと。
【0106】
合成遺伝子プールYSS−715Bを、YSS53−351B(50%)およびYSS805(50%)のプールから開発した。このプールは、元々辛味に関してではなく他の表現型を目的として、作製されたものであった。
【0107】
WYL77−51688は、サイズが大きく、鱗茎の形状が丸く、および中間色の皮を有する、スパニッシュオニオン系統である。最上部は中程度であり、幾分、柔らかい。WYL77−5168Bの貯蔵期間は中程度の期間である。WYL77−5168Bの成熟は、スペイン型タマネギについての全シーズンである。
1年目、集団1世代の鱗茎を合成YSS−715Bから選択した。
2年目、種子をM1鱗茎選択において生産した。
3年目、集団2世代の鱗茎を1995種子生産から選択した。
4年目、1996M2鱗茎選択に由来するケージ97−575において、種子を生産した。
5年目、集団3世代の鱗茎を97−575源から選択した。
6年目、種子をケージ99−327−1においてM3鱗茎から生産した。また、列番号99−7099の97−575源のさらなる鱗茎を成長させ、鱗茎選択を行った。
7年目、列番号99−7099で成長させた鱗茎に由来するケージ00333−1において、集団4世代の種子を生産した。
【0108】
8年目、元々の種子源00333−1に由来する列01OS3164において、鱗茎を成長させ、親育種系統WYL77−5168Bを割り当てた。WYL77−5168Bは、サイズ、皮の保持力および抽苔(bolter)の欠如(種子−茎形成または「抽苔(bolting)」は、市場向きとならない硬質の中心部を有する質の悪い鱗茎をもたらす)について良好な特徴を示した。この系統はさらなる開発のために十分な種子も生産した。初めの選別において、WYL77−5168Bは4.53μM/gFWの平均PADを有した。WYL77−5128Bは、6.48μM/gFWの平均PADを有した。他の特性についてあまり有益ではない3つの他の系統は、5.82、6.16および6.22μM/gFWの平均PADを有した。試験した残りの系統のうち、6.5〜7.0のものが10種あり、7.0〜7.5のものが21種あり、7.5〜8.0のものが11種あり、8.0〜8.5のものが14種あり、8.5〜9.0のものが14種あり、9.0〜9.5のものが10種あり、9.5〜10.0のものが3種あり、10.0〜10.5のものが8種あり、および10.5を超えるものが5種あった。特定の系統についての低いPADは、長期貯蔵条件下での2ヶ月間の貯蔵後の平均PADレベルに基づく、続く世代における該系統についての選択に至った。
【0109】
9年目、列番号01OS3164から成長させた鱗茎に由来するケージRNG4005において、集団5世代の種子を生産した。種子源00333−1に由来する列02053097において、さらなる鱗茎を成長させた。これらの鱗茎についての辛味試験は、2ヶ月間の貯蔵後に4.53μM/gFWのPAD(最小2.14、最大6.98)の辛味レベルを有するWYL77−5168B系統を示した。
【0110】
10年目、種子生産サイクル−元々の00333−1(M−4)源に由来する列番号02053097において成長した鱗茎に由来するケージRNR5613、RNR5616、RNR5617、RNR5619において、集団5世代の種子を生産した。これらの鱗茎についての辛味試験は、6ヶ月間の貯蔵後に4.51のPAD(最小2.30、最大9.97)の辛味レベルを有するWYL77−5168B系統を示した。ケージRNR5619は、3.91のPADの平均(最小2.56、最大4.96)を伴う、辛味の少ない選択物であった。
【0111】
10年目、鱗茎生産サイクル−元々の種子源00333−1に由来する鱗茎の列03054045において、WYL77−5168Bの鱗茎を成長させた。鱗茎の列03054045についての辛味試験は、6ヶ月間の貯蔵後に5.16のPAD(最小1.82、最大11.94)の平均辛味を有するWYL77−5168B系統を示した。列03OS1283および03OS1317において、ビジョン(Vision)を成長させ、分析のために貯蔵した。これは6ヶ月間の貯蔵後に9.15のPAD(最小6.25、最大15.44)の平均辛味レベルを有した。
【0112】
11年目、種子生産サイクル−元々の種子源00333−1に由来するケージRNV4012において、WYL77−5168B系統の種子を生産した。RNV4012は、3.74のPAD(最小1.82、最大4.57)の平均レベルを伴う、辛味の少ない選択物であった。
【0113】
11年目、鱗茎生産サイクル−2ヶ月間の貯蔵後に、元々の00333−01源に由来するWYL77−5168Bの鱗茎を試験し、これは6.02のPAD(最小4.28、最大8.19)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5168Bのさらなる選択物であるRNR5616−2を列04OS7076において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.09のPAD(最小3.52、最大5.75)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5168Bのさらなる選択物であるRNR5616−12を列04OS7085において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.87のPAD(最小3.80、最大7.45)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5168Bのさらなる選択物であるRNR5616−7を列04OS57081において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に5.09のPAD(最小3.68、最大6.75)の平均辛味レベルを示した。列04OS7086において成長させた、WYL77−5168Bのさらなる選択物であるRNR5616−15は、2ヶ月間の貯蔵後に5.15のPAD(最小3.86、最大6.08)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5168Bのさらなる選択物であるRNR5616−3を列04OS7077において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に5.30のPAD(最小3.70、最大5.75)の平均辛味レベルを示した。ビジョン(Vision)もまた分析し、追試1では、6.07のPAD(最小4.94、最大7.24)の平均辛味レベルを示し、追試2では、6.25(最小5.14、最大7.40)の平均辛味レベルを示した。この研究のために輸入かつ購入された短日性(SD)タマネギであるペルビアンスウィート(Peruvian Sweet)(Bland Farms source)は、6.04のPAD(最小4.67、最大7.94)の平均ピルベートレベルを示した。
【0114】
圃場における選択基準は、生産性に関連する特徴と、生産力、茎葉、鱗茎の形状、鱗茎の皮、抽苔耐性、長期貯蔵性、ならびに紅色根およびフサリウムに対する耐性を含む市場に適する特徴とのバランスを表す。
8年目、9年目、10年目および11年目における観察結果は、育種系統WYL77−.5168Bが商業的に許容される限度内で均一かつ安定であることを確証している。
【実施例2】
【0115】
実施例2:WYL77−5128B 長日タマネギ
長日スパニッシュオニオン近交系WYL77−5128を、イエロースウィートスパニッシュオニオンの合成遺伝子プール(合成遺伝子プールYSS−FR713B)からの集団選択により開発した。
【0116】
合成遺伝子プールYSS−FR713Bを、YSS−Giano(50%)、YSS 53−351B(25%)およびYSS Peckham(25%)のプールから開発した。
【0117】
WYL77−5128Bは、高度に球状で、暗色の皮を有する、中程度の大きさの辛味の少ないスパニッシュオニオン系統である。最上部は大きく、直立している。WYL77−5128Bの貯蔵期間は長期期間である。WYL77−5128Bの成熟は、スペイン型タマネギについてのシーズン半ばである。
【0118】
1年目、集団1世代の鱗茎を合成YSS−FR713Bから選択した。
2年目、Ml鱗茎選択において、種子を生産した。
3年目、集団2世代の鱗茎を1996種子生産から選択した。
4年目、1996M2鱗茎選択に由来するケージ97−547において、種子を生産した。
5年目、集団3世代の鱗茎を97−547源から選択した。
6年目、ケージ00335−1において、M3鱗茎選択から、種子を生産した。
7年目、集団4世代の鱗茎を列010S3182(元々の種子源00335−1に由来する)において選択し、親育種系統WYL77−5128Bを割り当てた。上記したように、長期貯蔵条件下での2ヶ月間の貯蔵後の平均PADレベルについて、この時点からの選択物をスクリーニングした。
8年目、ケージRNG3243およびRNG3968において、種子を010S3182鱗茎生産から生産した(M4種子)。鱗茎を元々の種子源00335−1に由来する列02OS3029において成長させた。これらの鱗茎についての辛味試験は、2ヶ月間の貯蔵後に5.40のPAD(最小3.41、最大8.23)の辛味レベルを有するWYL77−5128B系統を示した。
【0119】
9年目、集団4世代の種子生産。種子を、列番号02OS3029において成長させた鱗茎に由来するケージRNR5724およびRNR5621において生産した。ケージRNR5621は、4.72の平均(最小3.41、最大5.58)を伴う、辛味の少ない選択物であった。
9年目、鱗茎生産サイクル−鱗茎を、種子源00335−1に由来する列03OS4043において成長させた。鱗茎の列03OS4043についての辛味試験は、6ヶ月間の貯蔵後に7.87のPAD(最小4.38、最大11.93)の平均辛味を有するWYL77−5128B系統を示した。ビジョン(Vision)を列03OS1283および03OS1317において成長させ、分析のために貯蔵した。これは6ヶ月間の貯蔵後に9.15のPAD(最小6.25、最大15.44)の平均辛味レベルを有した。この試験は雹害を受け、通常の大きさに成長せず、より小さく、より辛味のある鱗茎をもたらした。
【0120】
10年目、種子源00335−1に由来するケージRNV401において、WYL77−5128B系統の種子を生産した。RNV4014は、5.96のPAD(最小4.38、最大6.50)の平均レベルを伴う、辛味の少ない選択物であった。
10年目、鱗茎生産サイクル−元々の種子源00335−1に由来するWYL77−5128B選択物の鱗茎を2ヶ月間の貯蔵後に試験し、これは5.32のPAD(最小3.24、最大6.95)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5128Bのさらなる選択物であるRNR5621−13を列04OS7097において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.29のPAD(最小3.12、最大5.60)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5128Bのさらなる選択物であるRNR5621−15を列04OS7099において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.37のPAD(最小3.40、最大5.59)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5128Bのさらなる選択物であるRNR5621−5を列04OS7090において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.53のPAD(最小3.32、最大6.20)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5128Bのさらなる選択物であるRNR5621−8を列04OS7093において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.67のPAD(最小3.26、最大5.60)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5128Bのさらなる選択物であるRNR5621−12を列04OS7096において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.81のPAD(最小3.88、最大6.49)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5128Bのさらなる選択物であるRNR5621−10を列04OS7095において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に4.87のPAD(最小3.94、最大5.75)の平均辛味レベルを示した。WYL77−S128Bのさらなる選択物であるRNRS621−3を列04OS7089において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に5.03のPAD(最小3.82、最大6.01)の平均辛味レベルを示した。WYL77−5128Bのさらなる選択物であるRNR5621を列04OS7009において成長させ、これは2ヶ月間の貯蔵後に5.10のPAD(最小3.65、最大8.79)の平均辛味レベルを示した。また、ビジョン(Vision)を分析し、追試1では、6.07のPAD(最小4.94、最大7.24)の平均辛味レベルを示し、追試2では、6.25(最小5.14、最大.7.40)の平均辛味レベルを示した。この研究のために輸入かつ購入されたSDタマネギであるペルビアンスウィート(Peruvian Sweet)(Bland Farms source)は、6.04のPAD(最小4.67、最大7.94)の平均ピルベートレベルを示した。
【0121】
圃場における選択基準は、生産性に関連する特徴と、生産力、茎葉、鱗茎の形状、鱗茎の皮、抽苔耐性、長期貯蔵性、ならびに紅色根およびフサリウムに対する耐性を含む市場に適する特徴とのバランスを表す。
【実施例3】
【0122】
実施例3:貯蔵における辛味
収穫された辛味の少ない長日タマネギを、5℃および50%の相対湿度の貯蔵条件下で6ヶ月間貯蔵した。
【0123】
以下の表1および2は、上記した系統についての、長期貯蔵条件下での2ヶ月および6ヶ月間の貯蔵後の平均PAD測定値についての生データを提供する。
【0124】
【表1】

【0125】
(1)2ヶ月間の貯蔵後
(2)6ヶ月間の貯蔵後(3)圃場が収穫前に雹の嵐からの損害を受け、それによりサイズが軽減し、通常の成熟が停止した。(4)現地で仕入れた源
【0126】
【表2】

【0127】
(1)2ヶ月間の貯蔵後(2)6ヶ月間の貯蔵後(3)圃場が収穫前に雹の嵐からの損害を受け、それによりサイズが軽減し、通常の成熟が停止した。(4)現地で仕入れた源
【実施例4】
【0128】
実施例4:長日性ストレージオニオン
長日性の辛味の少ないタマネギを、5℃および50%の相対湿度の貯蔵条件下で6ヶ月間貯蔵し、市場性のある収穫高について評価した。「貯蔵力(storability)」と言われることもある市場性のある収穫高は、高レベルでタマネギの質が保持されることを言う。内部の発芽成長ならびに表面の性質および腐敗の存在をモニタリングすることにより、質を評価する。
【0129】
表3は、長期貯蔵条件下での6ヶ月間の貯蔵後に残存する市場性のある鱗茎の割合としての貯蔵力のデータを提供する。B系統の表示は、数世代の選択を完了した、より進化した系統を言う。
【0130】
【表3】

【0131】
表3の結果は、長日性の辛味の少ないタマネギが最大6ヶ月まで優れた貯蔵性を提供することを実証している。
【実施例5】
【0132】
実施例5:WYL77−5126B 長日タマネギ
長日タマネギ近交系、WYL77−5126Bを、自家交配、およびイエロースパニッシュタマネギの合成遺伝子プール(合成遺伝子プールYSS7171−5B)からの集団選択により開発した。
【0133】
1年目、合成YSS7171−5B種子ケージロット95−183自家交配ケージの単一の鱗茎(自家交配)において、種子を生産した。
2年目、列Yr2−7156において、鱗茎を1年目の自家交配物から成長させた。
3年目、ケージ97−311−1において、鱗茎の列Yr2−7156に由来する鱗茎の集団選択において、種子を成長させた。
4年目、鱗茎の列99−7102において、種子源97−311−1から鱗茎を成長させた。
5年目、ケージ00611−1Cにおいて、種子を鱗茎の列99−7102から成長させた。
6年目、鱗茎を、ケージ00611−1Cに由来する鱗茎の列01OS3170において成長させた。鱗茎は均一であることが見出され、親育種系統WYL77−5126Bを割り当てた。これらの鱗茎についての辛味試験は、6ヶ月間の貯蔵後に5.82のPADの辛味レベルを有するWYL77−5126B系統を示した。
【0134】
10年目、鱗茎を、種子源00611−1Cに由来する鱗茎の列05OS3118において成長させた。2ヶ月間の貯蔵後の辛味試験は、WYL77−5l26B系統が6.3のPADの辛味レベルを有することを示した。6ヶ月間の貯蔵後、WYL77−5126Bは5.62のPADを示した。
11年目、種子を、ケージRND1687において鱗茎の列05OS3118から成長させた。3.67のPADを伴うWYL77−5126Bの集団選択を実施した。
【実施例6】
【0135】
実施例6:WYL77−5391B 長日タマネギ
長日タマネギ近交系、WYL77−5391Bを、半同胞選択およびイエロースウィートスパニッシュオニオン親(WYL77−5168B)からの集団選択により開発した。
【0136】
1年目、鱗茎の列02OS3097において、親WYL77−5168B源の鱗茎を成長させた。
2年目、ケージRNR5616において、WYL77−5168Bの集団選択を実施した。この集団選択の単一の植物をRNR5616−2と指定し、この植物からの種子を単一植物(半同胞選択)として収穫した。
4年目、種子源RNR56162に由来する鱗茎の列05OS7001において鱗茎を成長させた。鱗茎は均一であることが見出され、親系統WYL77−5391Bを割り当てた。2ヶ月間の貯蔵後の辛味試験は、WYL77−5391B系統が4.4のPADの辛味レベルを有することを示した。6ヶ月間の貯蔵後、WYL77−5391Bは3.99のPADを有した。
6年目、種子をケージRND1698において鱗茎の列05OS7001から成長させた。3.17のPADを伴うWYL77−5391Bの集団選択を実施した。
【実施例7】
【0137】
実施例7:WYL77−5392B 長日タマネギ
WYL77−5392B、長日タマネギ近交系を、イエロースウィートスパニッシュオニオン親(WYL77−5168B)からの集団選択により開発した。
【0138】
1年目、鱗茎の列050S3152において、親WYL77−5168B源の鱗茎を成長させた。2ヶ月間の貯蔵後のWYL77−5168B系統の辛味試験は4.7のPADを有した。
2年目、ケージRND1699において、WYL77−5168Bの集団選択を実施した。6ヶ月間の貯蔵後、この集団選択は3.34のPADを有することが見出された。元々の親源より有意により低いPADを有するこの集団選択物をWYL77−5392Bと指定した。
【実施例8】
【0139】
実施例8:植物育種および系統開発
本発明の様々なアリウム・セパ系統を用いて、様々な他家受粉および選択手法を用いて、長日性の光周期応答の、辛味の少ない特性を新規品種へ伝達することができる。故に、育種者は、記載した辛味の少ない長日タマネギ植物、ならびにさらなる自家受粉およびその後の選択についての系統を用いて、ハイブリッドを得てもよい。標準的な交配、戻し交配および選択技法を用いて、当業者は、上記したものに加えて様々な所望の特性を有する、市販用の辛味の少ない長日タマネギを得てもよい。例えば、育種者は、長日タマネギの色の好ましい特性、病害耐性の特性、特定の成長条件下での最適な生産に関する特性を有する市販用のアリウム・セパ系統を容易に得てもよい。
【実施例9】
【0140】
実施例9:タマネギ生産
通常、タマネギは苗床の複数の列に植え付けられる。通例、1つの苗床あたり2〜12列で植え付けられる時点またはその直前に、苗床は形成される。典型的な配置は、34−または44−インチの苗床上、約12インチの間隔で離れた二重の列である。特に、細流かんがい系を伴う、複数のかかる配置が用いられることもある。幾つかの辛味の少ないタマネギは単独の列に植え付けられる。
【0141】
タマネギの種子は高価であり、一般的に、精密な種まき機を用いて直接播種される(タマネギは間引かれない)。通例、種子は約1/4〜1/2−インチの深さに植え付けられる。より軽い質感の土壌における畝間かんがいのため、または限られた土壌水分のために、3/4インチの深さが必要とされてもよい。
【0142】
辛味の少ないLDタマネギのハイブリッド種子を慣用的な手法で植え付け、タマネギを成熟期まで成長させ、収穫し、2〜6ヶ月の期間、長期貯蔵条件下で維持する。その後、辛味の少ないタマネギを貯蔵から取り出し、冬期に甘味のあるタマネギとして消費者に提供する。
【0143】
上述した本発明は、明確性および理解を目的とする説明および例示のために多少詳しく記載されているが、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲内で、特定の変更および修飾が実施されてもよいことは明かであろう。本明細書で引用された全ての参考文献は、出典明示により本明細書の一部となる。
【0144】
寄託情報
上記で開示され、添付の特許請求の範囲で列挙されている、Seminis Vegetable Seedsが所有する近交系アリウム・セパ系統の寄託が、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の下で設立されたNCIMB Ltd,23 St.Machar Drive,Aberdeen AB24 3RY,国際寄託当局(IDA)になされた。WYL77−5128BおよびWYL77−5168B系統についてのNCIMB寄託番号は各々NCIMB41329およびNCIMB41330である。各寄託日は2005年6月24日であった。
【受託番号】
【0145】
WYL77−5128B:NCIMB41329(2005年6月24日寄託)
WYL77−5168B:NCIMB41330(2005年6月24日寄託)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗茎形成を開始するのに連続14時間以上の光を必要とし、収穫時に5.5μM/gFW未満のピルビン酸発生量(PAD)測定値を有する鱗茎を有し、前記鱗茎がPADが20%より多く増加せずに適切な条件下で2ヶ月間貯蔵可能であるタマネギ植物、またはその部分。
【請求項2】
鱗茎が、5.0μM/gFW未満のピルベートである収穫時PAD測定値を有する、請求項1記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項3】
鱗茎が、4.5μM/gFW未満のピルベートである収穫時PAD測定値を有する、請求項2記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項4】
鱗茎が、4.0μM/gFW未満のピルベートである収穫時PAD測定値を有する、請求項3記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項5】
鱗茎が、3.75μM/gFW未満のピルベートである収穫時PAD測定値を有する、請求項4記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項6】
タマネギ植物がイエローオニオンである、請求項1〜5のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項7】
タマネギ植物がスパニッシュオニオンである、請求項1〜6のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項8】
貯蔵後のPAD測定値が、2ヶ月の貯蔵後に収穫時のPAD測定値から10%未満増大している、請求項1〜7のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項9】
鱗茎が、PADが20%より多く増加せずに適切な条件下で4ヶ月間貯蔵可能である、請求項1〜8のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項10】
貯蔵後のPAD測定値が4ヶ月間の貯蔵後に収穫時のPAD測定値から10%未満増大している、請求項1〜8のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項11】
鱗茎が、PADが20%より多く増加せずに適切な条件下で6ヶ月間貯蔵可能である、請求項1〜10のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項12】
貯蔵後のPAD測定値が、6ヶ月間の貯蔵後に収穫時のPAD測定値から10%未満増大している、請求項11記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項13】
鱗茎形成を開始するのに2日以上の間、連続14時間以上の光を必要とする、請求項1〜12のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項14】
鱗茎形成を開始するのに4日以上の間、連続14時間以上の光を必要とする、請求項1〜12のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項15】
鱗茎形成を開始するのに7日以上の間、連続14時間以上の光を必要とする、請求項1〜12のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項16】
タマネギ植物の部分が種子、鱗茎、花粉、胚珠、葉、プロトプラストおよび細胞からなる群より選ばれる、請求項1〜15のいずれか1項記載のタマネギ植物、またはその部分。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項記載のタマネギ植物から得られた細胞の組織培養物。
【請求項18】
細胞が葉、花粉、胚、鱗茎、葯、花、芽および分裂組織からなる群より選択される組織に由来する、請求項17記載の組織培養物。
【請求項19】
種子の試料が寄託番号41329としてNCIMBに寄託されているWYL77-5128Bタマネギ系統および種子の試料が寄託番号41330としてNCIMBに寄託されているWYL77-5168Bタマネギ系統からなる群より選ばれる系統から作成された親を有する細胞質不稔性タマネギ植物であって、前記細胞質雄性不稔性が、WYL77-5128BまたはWYL77-5168Bへ形質転換若しくは戻し交配によって導入されている、前記細胞質不稔性タマネギ植物。
【請求項20】
種子の試料が寄託番号41330としてNCIMBに寄託されているWYL77-5168Bタマネギ系統と種子の試料が寄託番号41329としてNCIMBに寄託されているWYL77-5128Bタマネギ系統の子孫植物との交配によって得られるハイブリッドタマネギ植物であって、前記WYL77-5128Bタマネギ系統の子孫植物が細胞質不稔性を有し、前記細胞質不稔性がWYL77-5128Bへ形質転換若しくは戻し交配によって導入されている、前記ハイブリッドタマネギ植物。
【請求項21】
種子の試料が寄託番号41329としてNCIMBに寄託されているWYL77-5128Bタマネギ系統と種子の試料が寄託番号41330としてNCIMBに寄託されているWYL77-5168Bタマネギ系統の子孫植物との交配によって得られるハイブリッドタマネギ植物であって、前記WYL77-5168Bタマネギ系統の子孫植物が細胞質不稔性を有し、前記細胞質不稔性がWYL77-5168Bへ形質転換若しくは戻し交配によって導入されている。
【請求項22】
細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物の部分であって、前記細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物が寄託番号41329として種子がNCIMBに寄託されているWYL77-5128Bタマネギ系統および寄託番号41330として種子がNCIMBに寄託されているWYL77-5168Bタマネギ系統からなる群より選ばれる親を有し、前記部分が、種子、鱗茎、葉、花粉および胚珠からなる群より選択される、前記細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物の部分。
【請求項23】
細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物の鱗茎であって、前記細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物が寄託番号41329として種子がNCIMBに寄託されているWYL77-5128Bタマネギ系統および寄託番号41330として種子がNCIMBに寄託されているWYL77-5168Bタマネギ系統からなる群より選ばれる親を有する、前記細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物の鱗茎。
【請求項24】
細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物の細胞であって、前記細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物が寄託番号41329として種子がNCIMBに寄託されているWYL77-5128Bタマネギ系統および寄託番号41330として種子がNCIMBに寄託されているWYL77-5168Bタマネギ系統からなる群より選ばれる親を有する、前記細胞質不稔ハイブリッドタマネギ植物の細胞。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図1−4】
image rotate

【図1−5】
image rotate


【公開番号】特開2013−34482(P2013−34482A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220959(P2012−220959)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2008−521695(P2008−521695)の分割
【原出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(500195035)セミニス・ベジタブル・シーズ・インコーポレイテツド (17)
【氏名又は名称原語表記】Seminis Vegetable Seeds,Inc.
【Fターム(参考)】