説明

農作業機の整地装置

【課題】本発明では、整地ロータの藁屑などの夾雑物の埋め込み機能を整地装置の左右全面で良好に行われるようにすることを課題とする。
【解決手段】走行車体の後部で左右後輪の後側に位置して側部整地ロータを設け、その左右側部整地ロータの間に中央整地ロータ27bを配置し、これら側部整地ロータと中央整地ロータ27bの後部にフロートを配置した農作業機の整地装置において、側部整地ロータと中央整地ロータ27bをロータ片119で整地すると共に中央整地ロータ27bのロータ片119の外周径を側部整地ロータのロータ片の外周径よりも大径にしたことを特徴とする農作業機の整地装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタや田植機等の農作業機で圃場を平らに整地する整地装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2007−195417号公報に記載の田植機では、走行車体の後部に苗植付装置が装着されるが、この苗植付装置の走行車体側に整地ロータとフロートを設けて、圃場を整地ロータで整地しフロートで地表を平らにしてその跡地に苗植付装置で苗を植え付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−195417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の田植機で、整地ロータは、土塊を砕くと共に圃場表面に残る藁屑などを土中に埋め込む機能も期待されているが、この埋め込み機能が特に左右車輪が通過しない左右車輪の中間部分で充分でなく、地表に残留する藁屑で植え付けた苗が安定せず浮き上がって倒れることがあった。
【0005】
このために、本発明では、整地ロータの藁屑などの夾雑物の埋め込み機能を整地装置の左右全面で良好に行われるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行車体2の後部で左右後輪11、11の後側に位置して側部整地ロータ27a,27aを設け、その左右側部整地ロータ27a,27aの間に中央整地ロータ27bを配置し、これら側部整地ロータ27aと中央整地ロータ27bの後部にフロート55,56を配置した農作業機の整地装置において、側部整地ロータ27aと中央整地ロータ27bをロータ片104,119で整地すると共に中央整地ロータ27bのロータ片119の外周径を側部整地ロータ27aのロータ片104の外周径よりも大径にしたことを特徴とする農作業機の整地装置とした。
【0007】
この構成で、側部整地ロータ27aが通過する側の夾雑物が後輪11で土中に埋め込まれ、中央整地ロータ27bが通過する側で側部整地ロータ27aのロータ片104よりも広いロータ片119の接地面で夾雑物を埋め込む。
【0008】
請求項2に記載の発明は、中央整地ロータ27bのロータ片119の外周よりも外方に張り出す円盤状或はスターホイル状の突起体24を軸方向所定間隔で形成したことを特徴とする請求項1に記載の農作業機の整地装置とした。
【0009】
この構成で、中央整地ロータ27b側の夾雑物が円盤状或はスターホイル状の突起体24で埋め込まれる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成で、側部整地ロータ27aが後輪11で夾雑物を埋め込み、中央整地ロータ27bがロータ片119の広い接地面積で夾雑物を埋め込むことによって、左右側部整地ロータ27a,27aと中央整地ロータ27bで夾雑物の埋め込みが充分に行われて、苗植付装置等に夾雑物を播き付かせない良好な整地作業が行われる。
【0011】
請求項2の構成で、側部整地ロータ27aが後輪11で夾雑物を埋め込み、中央整地ロータ27bがロータ片119の広い接地面積と円盤状或はスターホイル状の突起体24で夾雑物を埋め込むことによって、左右側部整地ロータ27a,27aと中央整地ロータ27bで夾雑物の埋め込みが充分に行われて、苗植付装置等に夾雑物を播き付かせず、良好な整地作業が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】整地装置を示す側面図
【図4】整地装置を示す背面図
【図5】整地装置を示す断面平面図
【図6】整地装置の駆動機構を示す断面平面図
【図7】ロータ伝動ケースを示す断面平面図
【図8】別実施例を示す中央整地ロータの平断面図
【図9】さらに、別実施例を示す中央整地ロータの平断面図
【図10】別実施例を示す駆動基軸と駆動パイプの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1及び図2は、粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業部となる苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0014】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0015】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0016】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操向手段となるハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0017】
また、後輪11の左右方向外側には前後方向の軸回りに上下に回動する回動式ステップ111を設けており、該回動式ステップ111は、使用しないときは図1に示すようにリヤステップ36から下に延びるよう下側に回動し、作業者が後輪11に巻き込まれるのを防止するガードとなり、上方へ回動して固定すると図2に示すようにリヤステップ36の左右外側に位置し、作業者が回動式ステップ111に足を乗せて苗載台51特に苗載台51の左右最外条部分への苗補給を容易に行える。
【0018】
また、フロントカバー32の左右側面から左右外側に突出する把持グリップ112を設けており、作業者が該把持グリップ112を把持して畦等の機体前方からフロアステップ35ヘ楽に搭乗できるようにしている。この把持グリップ112は、左右の予備苗載台38の左右内側に設けられているので、予備苗載台38と苗載台51との間を行き来する作業者にとって苗補給作業時に予備苗載台38の位置を判別する目安となり、苗補給作業の容易化が図れる。尚、この把持グリップ112にカップホルダや傘ホルダ等を装着することにより、把持グリップ112の機能を高めることができる。
【0019】
また、フロントカバー32の前部には、夜間等に機体前方を照らすための前照灯114を設けている。この前照灯114の後側を覆うように光を反射する反射板115を設け、該反射板115の形状により前照灯114の光が効率良く機体前方を照らすように構成しているが、反射板の一部に光を通過する孔や透明レンズ等の光通過部を設ける一方、作業者の足元近くとなるフロントカバー32の後面の一部を透明部にし、光通過部を通る光をフロントカバー32の内部に設けた足元用反射板116を介して透明部に反射させ、作業者の足元を照らすようにしており、作業の安全性が図れると共に、作業者の足元を照らす格別のライトが不要でコストダウンが図れる。尚、前記足元用反射板116を用いず、光通過部からもれる光が透明部を介して直接作業者の足元を照らす構成とすれば、足元用反射板116が不要になり更なるコストダウンが図れる。
【0020】
また、機体の前端部には機体の左右中央位置の指標となる指標体29を設け、該指標体29の上端には、苗載台51の苗減少センサ117により該苗載台51の苗が所定量以下に減少したことを検出すると点灯する告知ランプを設けている。指標体29は、下端を支点に前後に回動可能であり、通常作業時は前方に倒して圃場における機体の左右中央位置を容易に認識できるようにしている。この指標体29を後側に回動させて該指標体29の上端がフロントカバー32の上面のモニターパネル33に近づけると、苗の減少に関係なく前記告知ランプが点灯する。これにより、告知ランプの灯りでモニターパネル33を照らすことができ、夜間等のモニターパネル33の視認の容易化が図れる。
【0021】
油圧式無段変速装置23は、ハンドル34の右側に設けた主変速レバー16で変速操作される。一方、ミッションケース12内の伝動ギヤの切替により通常植付作業時に使用する低速の作業速と路上走行時に使用する高速の路上走行速と伝動を断つ中立速度の3段階に切替する副変速レバー90を、ハンドル34の下方に設けている。
【0022】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0023】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51aに供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ等を備えている。また、苗載台51は、伝動ケース50に基部が固定された矩形状の支持枠体65の支持ローラ65aと苗取出口51aを構成する苗受板91で案内して左右方向にスライドする構成である。
【0024】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56がそれぞれ設けられている。センターフロート55及びサイドフロート56からなるこれらのフロートを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、前記フロートが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植付けられる。各フロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0025】
尚、苗載台51の裏面には樹脂製の吸音材113を貼り付けている。これにより、エンジン20から発生する騒音が圃場の水面及び前上がり傾斜姿勢の苗載台51を介して反射して座席31にいる作業者に達するのを抑えることができ、作業環境を良好に維持できる。
【0026】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でフロート(センターフロート55及びサイドフロート56)の左右両側に取り付けた施肥ガイド92まで導き、施肥ガイド92の前側に設けた作溝体93によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0027】
尚、図1に示すように、苗載台51上に苗の葉の向きを修正するためのエア吸引器118を設けてもよい。これにより、苗載台51上の苗の葉の向きを適正に修正でき、ひいては苗植付装置52により適正な植付姿勢で苗を植付できる。従来、運搬等のためにロール状に巻いた巻き苗を使用して植付作業を行うことがあるが、苗載台51上に巻き苗を広げて展開しても苗の巻き癖により苗の葉が倒伏姿勢あるいは不適正な方向に向いた状態となり、適正に苗を植付できなくなるおそれがある。特に、苗の葉が後側(苗植付装置52側)に倒れていると、苗植付装置52の苗取り爪52aが苗の葉を傷付けやすくなると共に苗の床部を良好に掻き取りにくくなる。
【0028】
走行車体2の後側で且つ苗植付部4の前側には、圃場の乱れた泥土面を整地して均す整地ロータを備える整地装置94を設けている。整地ロータは、左右のサイドフロート56の各々の前方に配置された側部整地ロータ27aと、センターフロート55の前方に配置された中央整地ロータ27bで構成される。
【0029】
ここで、整地ロータ27の支持構造を図3から図6を参照しながら説明する。
苗載台51の支持枠体65に基部を固着した左右アーム65cの先端に回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した左右支持アーム67と該支持アーム67に各々回動自在に取り付けられた左右の整地ロータ支持フレーム68が設けられている。該整地ロータ支持フレーム68の下端には側部整地ロータ27aの駆動軸70aが回転自在に支持されて取り付けられている。また、該整地ロータ支持フレーム68の下端部近くは伝動ケース50に基部が回動自在に取り付けられた左右の連結部材71が連結されている。
【0030】
また、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bはサイドフロート56の前方にある左右の側部整地ロータ27aより前方に配置されている。即ち、側部整地ロータ27aの駆動軸70aの各々の内側から機体前方に向けて左右のロータ伝動ケース73を配置し、この左右のロータ伝動ケース73間に中央整地ロータ27bの駆動軸70bを軸支して、中央整地ロータ27bを設けている。
【0031】
そして、図5に示す如く、左側の後輪11の後輪ギヤケース18内のギヤから自在継手72を介して左側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aに動力を伝達し、該駆動軸70aから左側のロータ伝動ケース73内の伝動軸103にて中央整地ロータ27bの駆動軸70bに伝達し、そして、駆動軸70bから右側のロータ伝動ケース73内の伝動軸103にて右側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aに動力を伝達する構成となっている。
【0032】
夾雑物巻付防止部95は、左右のロータ伝動ケース73の前部に一体で構成され、中央整地ロータ27bの前方に位置するように機体の左右方向内側に突出して設けられている。
【0033】
左右の側部整地ロータ27aは同径で、これに対して左右中央の中央整地ロータ27bは大径としている。そして、この側部整地ロータ27aと中央整地ロータ27bは、幅の狭い複数のロータ片104,119を左右に連ねて構成されている。該ロータ片104,119は、樹脂性であり、駆動軸70a,70b側に取り付けるための取付ボス部104a,119aと、土壌面に接地して整地作用を施す整地板104b,119bと、取付ボス部104a,119aと整地板104b,119bを連結する連結部104c,119cをそれぞれ備えている。駆動軸70a,70bは、ロータ伝動ケース73の駆動軸軸受部99から突出する駆動基軸105と、該駆動基軸105の外周側に嵌合する駆動パイプ106で構成され、駆動基軸105の小判形状の先端部105aが駆動パイプ106の小判形状の孔を備える端部106aに嵌合し、駆動基軸105と駆動パイプ106が一体で回転する構成となっている。
【0034】
尚、駆動基軸105の先端部105aと駆動パイプ106の端部106aを貫通する連結軸となる取付ボルト107により、駆動パイプ106を駆動基軸105に対して左右移動しないように取り付けている。駆動パイプ106の外周面は四角形状(正方形状)であり、ロータ片104の取付ボス部104aの孔も四角形状(正方形状)である。
【0035】
従って、駆動パイプ106にロータ片104,119の取付ボス部104a,119aが嵌合して、駆動軸70a,70bとロータ片104,119が一体回転する構成となっている。
【0036】
整地板104b,119bは、平面状で整地ロータの回転方向に対して斜めに配置され、整地ロータの回転方向における60度毎の位相で計6枚設けられている。左右に設けた複数のロータ片104、109の整地板104b,119bが互いに接触して合致し、整地板104b,119bが左右に連ねて配置される。連結部104c、109cは、整地板104b,119bの左右幅内で整地板104b,119bの左右中央位置に配置され、プレート状に構成され、取付ボス部104a,109a及び計6枚の整地板104b,119bに一体で構成される。
【0037】
尚、取付ボス部104a,119aも、連結部104c,119cと同様に、整地板104b,119bの左右幅内で整地板104b,119bの左右中央位置に配置されている。また、前記取付ボルト107は、駆動軸70a,70bにおいて、取付ボス部104a,119a及び連結部104c,119cが配置されない位置に設けている。
【0038】
そして、左右の夾雑物巻付防止部95は、中央整地ロータ27bの左右両端のロータ片119の前方で且つ機体の正面視で中央整地ロータ27bにおいて連なる整地板119bの左右端部と重複する位置までロータ伝動ケース73から突出している。
【0039】
駆動軸軸受部99は、整地板104b,119bよりも回転方向内側すなわち駆動軸70a,70b側で且つ機体の正面視において中央整地ロータ27b及び側部整地ロータ27aにおいて連なる整地板104b,119bの各々の左右方向端部と各々重複する位置までロータ伝動ケース73から突出している。また、この駆動軸軸受部99は、駆動基軸105が貫通する孔108を備え、該孔108の内面に駆動基軸105が接触しており、該孔108よりもロータ伝動ケース73のケース内側にオイルシール109を配置し、該オイルシール109の更に内側にベアリング(軸受)110を配置している。従って、オイルシール109が、ロータ伝動ケース73から外方に露出しない。
【0040】
以上により、この整地装置94は、ロータ伝動ケース73内の動力により駆動回転する駆動軸70a,70bをロータ伝動ケース73の駆動軸軸受部99から突出させて左右方向に設け、該駆動軸70a,70bの駆動により回転する側部整地ロータ27aと中央整地ロータ27bを設け、該側部整地ロータ27aと中央整地ロータ27bは、駆動軸70a,70b側に取り付けるための取付ボス部104a,119aと、土壌面に接地して整地作用を施す整地板104b,119bと、取付ボス部104a,119aと整地板104b,119bを連結する連結部104c,119cを備え、中央整地ロータ27bのロータ伝動ケース73側に夾雑物巻付防止部95を移動しないように設け、該夾雑物巻付防止部95を、整地板119bの前方で且つ機体の正面視において整地板119bの左右方向端部と重複する位置に配置している。
【0041】
また、駆動軸軸受部99を、整地板104b,119bよりも回転中心側すなわち駆動軸70a,70b側で且つ機体の正面視において整地板104b、119bの左右方向端部と重複する位置に配置している。更に、駆動軸軸受部99のオイルシール109をロータ伝動ケース73から外方に露出しないように設けている。
【0042】
よって、中央整地ロータ27bが、機体の前方側で整地板119bの左右方向端部の空間が夾雑物巻付防止部95に遮られるので、機体の前進で整地板119bの左右方向端部とロータ伝動ケース73の間から駆動軸70b側へ藁等の夾雑物が侵入しにくくなり、夾雑物が駆動軸70bあるいは取付ボス部119aに巻き付くのを抑え、メンテナンス性が向上する。
【0043】
また、駆動軸軸受部99により、整地板104b、119bの左右方向外側に駆動軸70a,70b及び取付ボス部104aが露出しないので、整地板104b、119bの左右方向端部とロータ伝動ケース73の間から侵入する藁等の夾雑物が駆動軸70a,70bあるいは取付ボス部104aに接触しにくくなるため、夾雑物が回転する駆動軸70a,70bあるいは取付ボス部104a、119bに巻き付くのを抑え、メンテナンス性が向上する。
【0044】
更に、オイルシール109部分に夾雑物が巻き付くことがなく、オイルシール109部分に夾雑物が巻き付くことによるオイルシール109の損傷ひいてはロータ伝動ケース73内からの潤滑油の漏れを防止できると共に、メンテナンス性が向上する。
【0045】
尚、前述の夾雑物巻付防止部95は、ロータ伝動ケース73のケース体で構成したが、ロータカバー98等、ロータ伝動ケース73に支持される他の部材で構成してもよい。
この夾雑物巻付防止部95と中央整地ロータ27bの後側に位置するロータ伝動ケース73の突出部96に、固着用ボルト97を介して中央整地ロータ27bの上側を覆ってロータカバー98を固着している。また、左右の側部整地ロータ27aの上側を覆って設けるロータカバー98は、ロータ伝動ケース73の後部に設けた突出部96に固着用ボルト97を介して固着している。このロータカバー98の後輪11の真後ろは、切欠き部98aを形成して、後輪11が跳ね上げる泥土をこの切欠き部98aから落としてカバー上に溜めないようにしている。
【0046】
また、駆動軸軸受部99は、ロータ伝動ケース73に一体で構成され、左側のロータ伝動ケース73の後部の左側となる駆動軸70a部分と、左側のロータ伝動ケース73の前部の右側となる駆動軸70b部分と、右側のロータ伝動ケース73の前部の左側となる駆動軸70b部分と、左側のロータ伝動ケース73の後部の右側となる駆動軸70a部分にそれぞれ設けられている。
【0047】
尚、中央整地ロータ27bは、図8に示す如く、各ロータ片119で押し込み板83を挟み込んで構成しても良い。この押し込み板83の外周は、円状或はスターホイル状として夾雑物を土中に押し込むようにする。
【0048】
また、中央整地ロータ27bは、図9に示す如く、各ロータ片119に押し込み突起119dを一体成型した形状にしても良い。この押し込み突起119dの外周は、円状或はスターホイル状として夾雑物を土中に押し込むようにする。
【0049】
尚、中央整地ロータ27bに押し込み板83か押し込み突起119dを設けた場合には、中央整地ロータ27bと側部整地ロータ27aを一体の一体フロートに構成として、夾雑物を押し込み板83か押し込み突起119dで土中に押し込み、一体フロートで圃場表面を平らにするようにしても良い。
【0050】
図10に示す駆動基軸105と駆動パイプ106の取付ボルト107による固定の別実施例では、取付ボルト107の頭部よりも外径の大きな巻付き防止円板120を取付ボルト107で駆動パイプ106と共締めによって取り付けて夾雑物の巻き付きを防いでいる。
【0051】
次に、ロータ伝動ケース73内の伝動構成について説明する。
まず、左側のロータ伝動ケース73内の伝動について説明すると、自在継手72を介して後輪ギヤケース18から伝動される入力軸100から一対の入力ベベルギヤ101を介して左側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aを駆動する。また、該駆動軸70aから伝動ベベルギヤ102を介して前側に延びる伝動軸103へ伝動し、該伝動軸103の前端部から伝動ベベルギヤ102を介して中央整地ロータ27bの駆動軸70bを駆動する。更に、該駆動軸70bの右端から駆動パイプ106を介して右側のロータ伝動ケース73内に入力する。
【0052】
次に、右側のロータ伝動ケース73内の伝動について説明すると、前記駆動パイプ106の駆動基軸105から伝動ベベルギヤ102を介して後側に延びる伝動軸103へ伝動し、該伝動軸103の後端部から伝動ベベルギヤ102を介して右側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aを駆動する。
【0053】
上記のロータ伝動ケース73内の伝動構成によって、中央整地ロータ27bの回転周速度は側部整地ロータ27aの回転周速度よりも速くすると、中央整地ロータ27bの夾雑物埋め込みを効果的に行え、中央整地ロータ27bの回転周速度と側部整地ロータ27aの回転周速度を同速にすると、水の多い圃場での中央整地ロータ27bによる泥水押しを防ぐことが出来る。
【0054】
中央整地ロータ27bは、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76の先端に上下方向の支持部材77を回動自在に連結し、該支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cの何れかに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部がその左右方向中央部が吊り下げられた構成となっている。
【0055】
次に、整地ロータ27を上下位置調節及び収納位置に操作する構成を説明する。
苗載台51の支持枠体65の左右方向中央部に基部を固定して下方に向けて設けたコ字状の取付体80aに機体前方に向けて枢支ピン81bを固定し、該枢支ピン81bに整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左右方向に回動自在に枢支している。また、整地ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、整地ロータ上下位置調節レバー81が機体左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着された突出部66aに下方から接当して折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方と接当しているので、該突出部66aが整地ロータ上下位置調節レバー81の機体右方向(S方向)の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の上向きの回動により左右の支持アーム67と左右の整地ロータ支持フレーム68が上方に移動するので、左右の側部整地ロータ27aは上方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も上方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も上方に移動する。
【0056】
逆に、整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左方向に回動すると、折曲片82は突出部66aの下方から離れるので整地ロータ27の重みで突出部66aは下向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の下向きの回動により左右の支持アーム67と左右の整地ロータ支持フレーム68とが下方に移動するので、左右の側部整地ロータ27aは下方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も下方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も下方に移動する。
【0057】
そして、整地ロータ上下位置調節レバー81は、苗植付部4の中央部(若しくは、略中央部)で操縦用の座席31と苗載台51との間に配置されて座席31の側に向かって伸びた構成となっており、また、その操作方向は機体左右方向であるから、整地ロータの上下動を行う場合の操作が容易で、且つ、苗載台51の前方側に機体前後方向で幅狭いスペースに配置できて機体全長を短く構成でき、更に、機体の左右バランスも良くて、適正な苗移植作業が行える。また、整地ロータ上下位置調節レバー81は、苗植付部4を苗移植作業状態を下降させた状態でも操作できるので、適切な上下高さ調節が行える。
【0058】
また、整地ロータを整地作用しない収納位置まで上動させるには、整地ロータ上下位置調節レバー81を大きく右方向に(収納操作位置まで)操作すると、整地ロータ27の上動操作と同じ要領で、整地ロータを収納位置、すなわち苗載台51の裏面側に収納状態となるように移動させることができる。尚、81aは整地ロータ上下位置調節レバー81のレバーガイドで、レバー操作時に操作位置でレバーを係合させて固定する係合溝が設けられている。この整地ロータ上下位置調節レバー81による整地ロータ27の上下高さ調節は、フロート55,56の後部回動支点を上下動させて苗の植付深さの変更を行う際に、同時に行なって、適正な整地作用が行えるようにするものである。
【0059】
特に、植付作業時に苗の植付深さを常に一定に維持するために、苗植付部4を昇降制御する為のセンサとして機能するセンターフロート55は、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしないと適切な苗植付部4の昇降制御が行えない。そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、サイドフロート56の前方にある側部整地ロータ27aよりも機体前方に位置させた構成としているが、中央整地ロータ27bと側部整地ロータ27aとはその動力伝達機構である左右ロータ伝動ケース73にて一体の構成とし、整地ロータ上下位置調節レバー81で作動する一つの上下動機構で上下調節及び収納位置への移動が行えるようになっているので、構成が簡潔で、軽量な整地装置付き田植機を得ることができ、軽量であることにより優れた水田での走行性能を発揮して、良好な苗の移植作業が行なえる。
【0060】
ところが、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしたセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bを左右の後輪11間に配置させて機体全長を短い構成にしている為に、該中央整地ロータ27bが昇降リンク装置3の左右の下リンク41の下方に位置することとなり、苗植付部4を上昇させようとした時、左右の下リンク41に中央整地ロータ27bが衝突してしまって苗植付部4を上昇できない構成となってしまう問題がある。
【0061】
そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、支持部材77に設けた係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部が吊り下げられた構成としている。従って、苗植付部4を下降させて整地ロータ27で整地しながら苗植付け作業を行なっている時には、中央整地ロータ27bはその重量でスプリング78が少し伸びて左右整地ロータ27aと同じ高さになり適正な整地作業が行え、また、苗植付部4を上昇させる際には、中央整地ロータ27bの上面が左右の下リンク41,41に接当して、苗植付部4が上昇するにつれてスプリング78は大きく伸びていき中央整地ロータ27bは下方を向く姿勢に変更されて、苗植付部4を支障なく上昇させることができる。
【0062】
また、スプリング78の製造誤差や中央整地ロータ27bの重量誤差等にて、苗植付部4を下降させた時に、中央整地ロータ27bが側部整地ロータ27aと高さが異なる場合には、スプリング78の上部を係合させる係合孔77a,77b,77cを変更して、中央整地ロータ27bの上下高さを調節して、中央整地ロータ27bを側部整地ロータ27aと同じ高さにして適正な整地作業を行うようにすることができる。
【0063】
一方、左右のロータ伝動ケース73は、センターフロート55と左右の後輪11の間に位置する構成となっているので、左右の後輪11が持ち上げた泥土がセンターフロート55上に落下するのを防止し、センターフロート55の前部は適正に泥面に追従して上下動するので苗植付部4は適正に昇降制御されて、良好な苗植付け作業が行える。
【0064】
尚、中央整地ロータ27bの上下動を電動或は油圧によって駆動するモータで行い、苗植付部4の昇降感度を調節する感度調節ダイヤルを設け、圃場が軟らかい場合には中央整地ロータ27bを一段分上げ、圃場が固い場合には中央整地ロータ27bを一段分下げるように制御すると、苗の植え付け深さを一定にすることが出来る。
【符号の説明】
【0065】
11 後輪
24 突起体(押し込み板83、押し込み突起119d)
27a 側部整地ロータ
27b 中央整地ロータ
55 フロート(センターフロート)
56 フロート(サイドフロート)
104 ロータ片(側部側)
119 ロータ片(中央側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部で左右後輪(11),(11)の後側に位置して側部整地ロータ(27a),(27a)を設け、その左右側部整地ロータ(27a),(27a)の間に中央整地ロータ(27b)を配置し、これら側部整地ロータ(27a)と中央整地ロータ(27b)の後部にフロート(55),(56)を配置した農作業機の整地装置において、側部整地ロータ(27a)と中央整地ロータ(27b)をロータ片(104),(119)で整地すると共に中央整地ロータ(27b)のロータ片(119)の外周径を側部整地ロータ(27a)のロータ片(104)の外周径よりも大径にしたことを特徴とする農作業機の整地装置。
【請求項2】
中央整地ロータ(27b)のロータ片(119)の外周よりも外方に張り出す円盤状或はスターホイル状の突起体(24)を軸方向所定間隔で形成したことを特徴とする請求項1に記載の農作業機の整地装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate