説明

農作業機

【課題】作業者への負担を軽減できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、トラクタに連結する機体2を備える。機体2には、伝動ケース体11を回動可能に設ける。伝動ケース体11の下部には、耕耘爪23を有する耕耘体21を回転可能に設ける。伝動ケース体11には、耕耘体21を覆う回動カバー体31を回動可能に設ける。農作業機1が作業状態から非作業状態になる際に、伝動ケース体11が機体2に対して回動しかつ回動カバー体31が伝動ケース体11に対して回動する。その結果、回動カバー体31と耕耘爪23との間の距離が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者への負担を軽減できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、トラクタ等の走行車に連結される機体と、この機体に回動可能に設けられた伝動ケース体と、この伝動ケース体の下部にて回転可能に支持された回転軸およびこの回転軸に取り付けられた複数の耕耘爪を有する耕耘体と、伝動ケース体に固定され耕耘体を覆う固定カバー体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−139102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、固定カバー体の内面(耕耘体との対向面)に土が付着した場合、この付着した土を作業者が手作業で落とさなければならず、その土落とし作業は作業者にとって重労働である。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業者への負担を軽減できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結されて使用される農作業機であって、前記走行車に連結される機体と、この機体に回動可能に設けられた伝動ケース体と、この伝動ケース体の下部にて回転可能に支持された回転軸およびこの回転軸に取り付けられた複数の耕耘爪を有する耕耘体と、前記伝動ケース体に回動可能に設けられ、前記耕耘体を覆う回動カバー体とを備え、前記農作業機が持ち上げられて作業状態から非作業状態になる際に、前記伝動ケース体が前記機体に対して回動しかつ前記回動カバー体が前記伝動ケース体に対して回動し、その結果、前記回動カバー体と前記耕耘爪との間の距離が減少するものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、機体に回動可能に設けられ、長孔部が形成された連結体を備え、回動カバー体は、前記長孔部に挿通された挿通軸を有し、作業状態時には前記挿通軸が前記長孔部内で移動可能となっており、非作業状態時には前記挿通軸が前記長孔部の端部に当接した状態となっているものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、農作業機が持ち上げられて作業状態から非作業状態になる際に、連結体が回動カバー体の前端側の挿通軸を押し下げることによって、回動カバー体が伝動ケース体に対して回動するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、農作業機が持ち上げられて作業状態から非作業状態になる際に、伝動ケース体が機体に対して回動しかつ回動カバー体が伝動ケース体に対して回動し、その結果、回動カバー体と耕耘爪との間の距離が減少するため、回動カバー体に付着した土を耕耘爪で落とすことができ、よって、作業者への負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図2】同上農作業機の正面図である。
【図3】同上農作業機の作業状態時の要部側面図である。
【図4】同上農作業機の非作業状態時の要部側面図である。
【図5】同上農作業機の作用説明図である。
【図6】同上農作業機の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1ないし図4において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)に連結されて使用される中耕機である。そして、農作業機1は、トラクタに連結された状態で、トラクタの前進走行により前方(進行方向)に移動しながら、所定の農作業である土作業、すなわち例えば中耕・除草・培土・畝成形を行うものである。
【0014】
農作業機1は、図示しないトラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降装置)に脱着可能に連結された機体2を備えている。なお、トラクタの3点リンク部は、油圧を利用して農作業機1全体を所定範囲内において昇降させることが可能である。
【0015】
機体2は、前側中央に走行車連結手段である3点連結部4を有し、この3点連結部4がトラクタの後部の3点リンク部に連結されている。また、機体2は、左右方向長手状で円筒状のフレーム部5を有し、このフレーム部5の左右方向略中央にはギアボックス部6が設けられ、このギアボックス部6から入力軸7が前方に向かって突出している。入力軸7は、トラクタのPTO軸に、例えばユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等にて構成された伝動手段(図示せず)を介して接続されている。
【0016】
また、農作業機1は、機体2のフレーム部5にこのフレーム部5を中心として上下方向に回動可能に設けられた複数(例えば3つ)の伝動ケース体11を備えている。伝動ケース体11は、機体2に対してフレーム部5の軸芯を通る左右方向の回動中心軸線(伝動ケース体回動支点)Xを中心として上下方向に回動可能となっている。
【0017】
伝動ケース体11は、上下方向長手状のケース部材12を有している。ケース部材12の上部が機体2のフレーム部5に回動中心軸線Xを中心として回動可能に取り付けられている。
【0018】
ケース部材12内には、例えばスプロケットおよびチェーン等にて構成された伝動手段(図示せず)が収納されている。ケース部材12の上下方向略中央部の前面側には、左右方向の軸である前側軸13が溶接等により固設されている。ケース部材12の上下方向略中央部の後面側には、左右方向の軸である後側軸(回動カバー体回動支点)14が溶接等により固設されている。
【0019】
また、農作業機1は、各伝動ケース体11の下部にて回転可能に支持され所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体21を備えている。耕耘体21は、伝動ケース体11のケース部材12の下部にて回転可能に支持された左右方向の回転軸22と、この回転軸22に取り付けられた複数の耕耘爪23とを有している。
【0020】
そして、入力軸7側からの動力が伝動ケース体11内の伝動手段から回転軸22に伝達され、その結果、この回転軸22が複数の耕耘爪23と一体となって回転し、これら複数の耕耘爪23にて耕耘作業が行われる。
【0021】
また、農作業機1は、各伝動ケース体11に後側軸14を中心として上下方向に回動可能に設けられ耕耘体21の上方部および左右の側方部を覆う可動式の耕耘部カバーである回動カバー体31を備えている。回動カバー体31は、伝動ケース体11に対して左右方向の後側軸14を中心として上下方向に回動可能となっている。
【0022】
回動カバー体31は、耕耘体21の上方部を覆う側面視断面略逆U字状のカバー天板32を有している。カバー天板32の左右の側端部には、耕耘体21の側方部を覆うカバー側板33が固設されている。カバー天板32の上面には、前後方向長手状の取付板である突出板34が上方に向かって突出状に固設されている。
【0023】
突出板34の前部、つまり突出板34のうち伝動ケース体11よりも前方に位置する部分には、前から後に向かって順に円形状の孔部36および上下方向にやや長手状の長孔部37が形成されている。なお、長孔部37の長手方向は、伝動ケース体11の長手方向と略一致している。
【0024】
そして、突出板34の孔部36には、左右方向の固定軸である挿通軸40が挿入固定されている。突出板34の長孔部37には、伝動ケース体11の前側軸13が長孔部37内でこの長孔部37に沿ってスライド移動可能に挿通されている。
【0025】
また、突出板34の後部、つまり突出板34のうち伝動ケース体11よりも後方に位置する部分には、前から後に向かって順にそれぞれ円形状の第1孔部41、第2孔部42および第3孔部43が形成されている。そして、突出板34の第1孔部(軸受孔部)41には、伝動ケース体11の後側軸14が回動可能に挿入されている。つまり、回動カバー体31が伝動ケース体11の後側軸14にて回動可能に支持されている。
【0026】
また、農作業機1は、機体2に左右方向の軸45を中心として上下方向に回動可能に設けられ機体2と回動カバー体31とを連結する板状の連結手段である連結体46を備えている。
【0027】
連結体46は、前後方向長手状のもので、この連結体46の後部には前後方向にやや長手状の長孔部47が形成され、この長孔部47には回動カバー体31の挿通軸40が挿通されている。そして、図3に示す農作業機1の作業状態時には挿通軸40が長孔部47内でこの長孔部47に沿ってスライド移動可能(フリー状態)となっており、図4に示す農作業機1の非作業状態時(持ち上げ状態時)には挿通軸40が長孔部47の端部である前端部に当接した状態となっている。
【0028】
また、農作業機1は、機体2のゲージ輪取付部51に取り付けられた左右1対のゲージ輪52を備えている。さらに、機体2の前フレーム部53には、耕耘体21の前方で心土破砕作業をするサブソイラ54が取り付けられている。なお、前フレーム部53には固定板部55が固定され、この固定板部55に連結体46が左右方向の軸45を中心として上下方向に回動可能に設けられている。
【0029】
さらに、機体2のロッド取付部56には上下面開口状で筒状の回動部材60が左右方向の軸58を中心として回動可能に取り付けられ、この回動部材60に棒状の連結部材である連結ロッド57が昇降可能に挿通されている。連結ロッド57の下端部は、突出板34の第2孔部42に挿入された左右方向の軸59に回動可能に取り付けられている。つまり、連結ロッド57は、機体2に対して回動可能でかつ昇降可能となっている。そして、図4に示す農作業機1の非作業状態時には、連結ロッド57は、回動カバー体31を吊り下げ支持する。
【0030】
連結ロッド57には、第1ピン61および第2ピン62を脱着可能なピン用孔部63が形成されている。連結ロッド57の外周側には、第1ばね66および第2ばね67が配設されている。第1ばね66は、第1ピン61と回動部材60の上面との間に位置している。第2ばね67は、第2ピン62と回動部材60の下面との間に位置している。なお、弾性部材であるばね66,67は、例えば互いに長さが異なる円筒状のコイルばねである。
【0031】
図3に示す農作業機1の作業状態時には、第1ばね66が自然長の状態となっており、第2ばね67が第2ピン62と回動部材60の下面とで挟まれて圧縮弾性変形した状態となっている。そして、この圧縮した状態の第2ばね67によって伝動ケース体11が必要以上に上方回動しないようになっている。また、回動カバー体31の後側が付勢手段である第2ばね67によって下方に付勢されることによって、回動カバー体31の姿勢が所定の作業姿勢に維持されるようになっている。
【0032】
図4に示す農作業機1の非作業状態時には、第2ばね67が自然長の状態となっており、第1ばね66が第1ピン61と回動部材60の上面とで挟まれて圧縮弾性変形した状態となっている。
【0033】
また、図1に示されるように、農作業機1は、各耕耘体21の後方で畝成形作業をする畝成形体71を備えている。畝成形体71は、平行リンク72等にて構成された畝成形体支持手段73を介して、機体2に昇降可能に取り付けられている。
【0034】
さらに、回動カバー体31と畝成形体支持手段73とが連結手段74にて連結され、この連結手段74の連結ロッド75の下端部が、突出板34の第3孔部43に挿入された左右方向の軸76に回動可能に取り付けられている。
【0035】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0036】
図3には、農作業機1の作業状態時の要部側面図が示されている。この作業状態では耕耘体21の下部およびサブソイラ54の下部が圃場面よりも下方に位置している。
【0037】
そして、トラクタの走行により農作業機1が前方へ移動しながら圃場の土に対して所定の土作業を行うが、この作業中に、耕耘体21にて耕耘された土が、回動カバー体31の内面(耕耘体21との対向面)に付着する。すなわち例えば耕耘体21の耕耘爪23にて跳ね上げられた土が、左右の両カバー側板33間に詰まった状態となってカバー天板32の下面に付着する。
【0038】
しかし、耕耘土が回動カバー体31の内面に付着して成長した場合であっても、その付着した土は、農作業機1が非作業状態になると、回転中の耕耘体21の耕耘爪23によって自動的に掻き落とされる。
【0039】
すなわち例えば圃場の端部でトラクタを旋回させる際には、図4に示すように、農作業機1全体をトラクタの3点リンク部にて所定の非作業位置まで上昇させ、耕耘体21の下部およびサブソイラ54の下部を圃場面よりも上方に位置させる。つまり、農作業機1は、PTO軸を回転させたままの旋回時に、トラクタの3点リンク部にて所定位置まで持ち上げられ、図3に示す作業状態から図4に示す非作業状態になる。
【0040】
この際、伝動ケース体11は、自重によって機体2に対して回動中心軸線Xを中心として一方向(図4上、時計回りの方向)に回動し、かつ、回動カバー体31は、伝動ケース体11に対して後側軸14を中心として一方向とは異なる他方向(図4上、反時計回りの方向)に回動する。なお、連結体46が回動カバー体31の前端側の挿通軸40を押し下げることによって、回動カバー体31が伝動ケース体11に対して回動する。
【0041】
そして、図5および図6にも示すように、これらの両回動の結果、回動カバー体31のカバー天板32の下面と耕耘爪23の先端側部分(径方向外端)との間の距離が減少し、この距離の減少(a>b)によって耕耘爪23が付着した土に接触してその土を掻き落とす。
【0042】
また、トラクタの旋回後、農作業機1全体をトラクタの3点リンク部にて所定の作業位置まで下降させ、所定の土作業を再開するが、この作業開始時には、カバー天板32の下面に付着した土(残った付着土)と耕耘爪23の先端側部分との間には所定の大きさの空間部が存在する。このため、耕耘爪23の付着土との接触による摩耗が少なくなり、耕耘爪23の耐久性が向上する。
【0043】
そして、農作業機1によれば、農作業機1がトラクタの3点リンク部にて持ち上げられて作業状態から非作業状態になる際に、伝動ケース体11が機体2に対して回動しかつ回動カバー体31が伝動ケース体11に対して回動し、その結果、回動カバー体31の内面と耕耘爪23の先端側部分との間の距離が減少するため、作業時に回動カバー体31に付着した土を旋回時等の非作業時に回転中の耕耘爪23で自動的に落とすことができ、よって、作業者への負担を軽減できるとともに、耕耘爪23の摩耗抑制により耕耘爪23の耐久性の向上も図ることができる。
【0044】
また、農作業機1の作業状態時には回動カバー体31の挿通軸40が連結体46の長孔部47内で移動可能となっており、非作業状態時には回動カバー体31の挿通軸40が連結体46の長孔部47の端部に当接した状態となっているため、作業時における回動カバー体31の伝動ケース体11に対する回動振動によって回動カバー体31に付着した土を落とすことができるとともに、非作業時における回動カバー体31のばたつきを防止できる。
【0045】
なお、農作業機1は、ロータリーカルチ等の中耕機には限定されず、他の耕耘装置等でもよい。
【0046】
また、例えば回動カバー体31の内面に、土が付着し難いゴム板、樹脂板或いはステンレス板等を取り付けるようにしてもよい。
【0047】
さらに、例えばゴム板等の弾性板が回動カバー体31の内面に取り付けられ、農作業機1の非作業状態時に耕耘爪23がその弾性板に接触する構成等でもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 農作業機
2 機体
11 伝動ケース体
21 耕耘体
22 回転軸
23 耕耘爪
31 回動カバー体
40 挿通軸
46 連結体
47 長孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結されて使用される農作業機であって、
前記走行車に連結される機体と、
この機体に回動可能に設けられた伝動ケース体と、
この伝動ケース体の下部にて回転可能に支持された回転軸およびこの回転軸に取り付けられた複数の耕耘爪を有する耕耘体と、
前記伝動ケース体に回動可能に設けられ、前記耕耘体を覆う回動カバー体とを備え、
前記農作業機が持ち上げられて作業状態から非作業状態になる際に、前記伝動ケース体が前記機体に対して回動しかつ前記回動カバー体が前記伝動ケース体に対して回動し、その結果、前記回動カバー体と前記耕耘爪との間の距離が減少する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
機体に回動可能に設けられ、長孔部が形成された連結体を備え、
回動カバー体は、前記長孔部に挿通された挿通軸を有し、
作業状態時には前記挿通軸が前記長孔部内で移動可能となっており、非作業状態時には前記挿通軸が前記長孔部の端部に当接した状態となっている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
農作業機が持ち上げられて作業状態から非作業状態になる際に、連結体が回動カバー体の前端側の挿通軸を押し下げることによって、回動カバー体が伝動ケース体に対して回動する
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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