説明

農作物掘取機

【課題】 馬鈴薯等の農作物の掘り取りとカバークロップの播種を同時に行う。
【解決手段】 前端に鍬3を備えた土篩コンベヤ2を走行機体に前屈みに取り付け、種子Sを貯溜したホッパー4を走行機体に設け、その吐出口6aを土篩コンベヤ2の先端部で隆起した土上に種子Sが吐出されるように設ける。鍬3を畦土Gに埋入して走行機体を走行させると、鍬3で畦土Gの一部が土篩コンベヤ2の先端部に隆起しながら土中の農作物Pが掘り取られる。掘り取られた農作物Pは土篩コンベヤ2に拾い上げられ、付着している土は土篩コンベヤ2で振い落とされる。その掘り取りと並行して、ホッパー4内の種子Sが隆起した土上に吐出され、その種子Sと土が土篩コンベヤ2で混和しながら畦土Gに落下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種機能を備えた農作物掘取機に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物を栽培しない時期に別の植物を作付けし、その植物で表土を被覆して土壌の流亡を防止するカバークロップ栽培がある。その播種時期は、梅雨時の土壌流亡防止効果やカバークロップの草生量確保を考慮し、4月中旬〜6月中旬に行われるのが一般的である。
【0003】
ところで、農作物が春作の馬鈴薯の場合、その収穫時期とカバークロップの播種時期が重なってカバークロップ栽培の実施が困難となり、他作物と比較してカバークロップ栽培が普及しない原因になっている。本発明は、特許文献1に示されるような農作物掘取機に播種機能を付加し、馬鈴薯等の農作物の掘り取りとカバークロップの播種を同時に行えるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−254582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、馬鈴薯等の農作物の掘り取りとカバークロップの播種を同時に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 前端に鍬を備えた土篩コンベヤを走行機体に前屈みに取り付け、その鍬を畦土に埋入して走行しながら土中の農作物を掘り取り、土篩コンベヤで土を篩い落としながら農作物を拾い上げる農作物掘取機において、種子又は肥料を貯溜するホッパーを走行機体に設け、そのホッパーの吐出口を土篩コンベヤの先端部で隆起した土上に種子又は肥料が吐出されるように設け、その吐出した種子又は肥料が土と混和して畦土に落下されるようにしたことを特徴とする、農作物掘取機
2) ホッパーの吐出口を鍬の先端から土篩コンベヤに沿って20〜40cm後方の位置に配置した、前記1)記載の農作物掘取機
3) ホッパーの吐出口に種子又は肥料を畦土の幅方向へ拡散させる拡散板を設けた、前記1)又は2)記載の農作物掘取機
4) 土篩コンベヤと連動してホッパー内の種子又は肥料を送り出す送出機を設けた、前記1)〜3)いずれか記載の農作物掘取機
5) 種子がカバークロップ栽培用の種子である、前記1)〜4)いずれか記載の農作物掘取機
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ホッパーに種子又は肥料を投入し、鍬を畦土に埋入して走行機体を走行させると、鍬で畦土の一部が土篩コンベヤの先端部に隆起しながら土中の農作物が掘り取られる。掘り取られた農作物は土篩コンベヤに拾い上げられ、付着している土は土篩コンベヤで振い落とされる。その掘り取りと並行して、ホッパー内の種子又は肥料が隆起した土上に吐出され、その種子又は肥料と土が土篩コンベヤで混和しながら畦土に落下する。
【0008】
このように、農作物の掘り取りと播種を同時に行うことができて従来の播種作業が省力化されるから、農作物の収穫時期とカバークロップの播種時期が重なってもカバークロップ栽培を実施し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例の農作物掘取機の説明図である。
【図2】実施例のホッパーと送出機の一部切欠き説明図である。
【図3】実施例の農作物の掘り取りと播種を示す説明図である。
【図4】実施例の他の例の拡散板の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のホッパーの吐出口は、鍬の先端から土篩コンベヤに沿って20〜40cm後方の位置に配置するのが望ましい。20cmより前方であると、種子又は肥料が土の隆起時にその両脇に寄ってしまい、畦土全体に均一に播けないという問題あり、40cmより後方であると、隆起した土が先に落下し、その後に種子又は肥料が畦土の表面に落下して土と良く混ざらず、覆土効果がなくなるという問題ある。また、吐出口の下方に拡散板を設けると、吐出した種子又は肥料が畦土の幅方向へ拡散して満遍なく落下し、生長範囲にムラが生じ難くなる。なお、本発明でいう肥料とは、粒状や液状の一般的な肥料の他、堆肥や有効菌も含む。
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0012】
図1は実施例の農作物掘取機の説明図、図2は実施例のホッパーと送出機の一部切欠き説明図、図3は実施例の農作物の掘り取りと播種を示す説明図である。図中、1は走行機体、1aはエンジン、1bは車輪、2は土篩コンベヤ、2aは駆動軸、3は鍬、4はホッパー、5は送出機、5aは回転体、5bはポケット、5cはギヤ、5dはチェーン、5eはブラシ、5fはスクレーパー、6はホース、6aは吐出口、Gは畦土、Pは農作物(馬鈴薯)、Sは種子である。
【0013】
本実施例の走行機体1は、図1に示すように、エンジン1aの動力で回転する車輪1bを左右に有し、作業者が後方で操作しながら走行するものである。土篩コンベヤ2は、土と種子Sは通過できるが農作物Pは通過できない梯子状で、前端に鍬3を突設し、走行機体1の下部に前屈みに取り付けてエンジン1aの動力で往路が後向きに回動するようになっている。
【0014】
ホッパー4は、図2に示すように、送出機5に脱着可能に取り付け、その送出機5を走行機体1の上部に取り付けている。送出機5は、外周にポケット5bを備えた回転体5aと、その回転体5aに軸着したギヤ5cとを備え、そのギヤ5cと土篩コンベヤ2の駆動軸2aとの間にチェーン5dを掛架して土篩コンベヤ2と連動するようになっている。また、回転体5aの送り側には種子Sをポケット5bに定量収容させるブラシ5eを設け、その反対側には後方への種子Sの流れを規制するスクレーパー5fを設けている。
【0015】
ホース6は口径5cmで、送出機5の下端に接続し、吐出口6aが鍬3の先端から土篩コンベヤ2に沿って30cm後方の位置で、且つ土篩コンベヤ2の上方位置(隆起した土や拾い上げた農作物Pと接触しない高さ)に配置されるように配管している。
【0016】
本実施例では、ホッパー4に種子S(肥料含む)を投入して鍬3を畦土Gに埋入し、エンジン1aを始動して土篩コンベヤ2と送出機5を作動させる。走行機体1を走行させると、図3に示すように、鍬3で畦土Gの一部が土篩コンベヤ2の先端部に隆起しながら土中の農作物Pが掘り取られる。掘り取られた農作物Pは土篩コンベヤ2に拾い上げられて後方へ搬送され、農作物Pに付着している土は土篩コンベヤ2の振動や走行中の振動で振い落とされる。
【0017】
その掘り取りと並行して、ホッパー4内の種子Sが送出機5でホース6に送り出され、その吐出口6aから隆起した土上に吐出する。種子Sは土とともに土篩コンベヤ2の回動及び振動で混和しながら土篩コンベヤ2を通過し、畦土Gに落下して播種される。その後、種子Sが発芽して生長し、農作物Pを栽培しない期間中、生長した植物で表土が被覆されて土壌の流亡が防止される。
【0018】
図4に示すのは、実施例の農作物掘取機の他の例である。図4は実施例の他の例の拡散板の説明図である。図中、7は拡散板、7aは溝である。図4に示すように、ホース6の吐出口6aに扇状の拡散板7を取り付けている。拡散板7には複数の溝7aを拡散方向に形成している。これにより、種子Sが畦土Gの幅方向へ拡散して落下し、実施例と比較して掘り取り幅全体に満遍なく播種される。その他、符号と構成は実施例と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の技術は、カバークロップ栽培だけでなく、別の農作物の播種にも応用できる。
【符号の説明】
【0020】
1 走行機体
1a エンジン
1b 車輪
2 土篩コンベヤ
2a 駆動軸
3 鍬
4 ホッパー
5 送出機
5a 回転体
5b ポケット
5c ギヤ
5d チェーン
5e ブラシ
5f スクレーパー
6 ホース
6a 吐出口
7 拡散板
7a 溝
G 畦土
P 農作物
S 種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に鍬を備えた土篩コンベヤを走行機体に前屈みに取り付け、その鍬を畦土に埋入して走行しながら土中の農作物を掘り取り、土篩コンベヤで土を篩い落としながら農作物を拾い上げる農作物掘取機において、種子又は肥料を貯溜するホッパーを走行機体に設け、そのホッパーの吐出口を土篩コンベヤの先端部で隆起した土上に種子又は肥料が吐出されるように設け、その吐出した種子又は肥料が土と混和して畦土に落下されるようにしたことを特徴とする、農作物掘取機。
【請求項2】
ホッパーの吐出口を鍬の先端から土篩コンベヤに沿って20〜40cm後方の位置に配置した、請求項1記載の農作物掘取機。
【請求項3】
ホッパーの吐出口に種子又は肥料を畦土の幅方向へ拡散させる拡散板を設けた、請求項1又は2記載の農作物掘取機。
【請求項4】
土篩コンベヤと連動してホッパー内の種子又は肥料を送り出す送出機を設けた、請求項1〜3いずれか記載の農作物掘取機。
【請求項5】
種子がカバークロップ栽培用の種子である、請求項1〜4いずれか記載の農作物掘取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200173(P2012−200173A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66467(P2011−66467)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【出願人】(000217240)田中工機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】