説明

農園芸用支柱杭

【課題】打ち込みや引き抜きが容易で耐久性に優れた扱いやすい農園芸用支柱杭を提供する。
【解決手段】一端部分11が扁平状に潰された鉄パイプ10と、前記鉄パイプ10の前記一端部分11から内部に挿入された鉄板14とで構成され、前記一端部分11の扁平押し潰し部分11aの側面屈曲点から前記鉄板14の先端中心点とを結ぶ線に沿って前記鉄板14とその表裏両面に沿う前記一端部分11とが切断され且つ前記一端部分11と前記鉄板14の切断残部同士が切断部分の全周に亘って水密状に溶接されている農園芸用支柱杭。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業や園芸などの分野で使用される支柱杭の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業や園芸などで使用される支柱杭は太い丸太や竹竿で耐腐食性の薬品が塗布され、地中に打ち込まれる側の先端部分を削って尖らしたものが使用されている。このような支柱杭は、野ざらしで使用され、或いはビニールハウス内で使用されるとしても打ち込まれた先端部分は常に水分を含む地中内に埋設されているため、次第に腐食していく。支柱杭は畝に所定の間隔で多数一列に打ち込まれ、隣接する支柱杭間に横桟を何段にもわたって掛け渡し、畝に植え付けられた例えばトマトやキュウリのようなつる性の植物のつるを支柱杭や横桟に絡ませて育てる。そしてこれら植物の生育に従い横桟や支柱杭に大きな荷重がかかるようになり、特に風の強い日には茂った葉が風を受けて支柱杭を倒す方向に力が加わる。
【0003】
支柱杭が丸太や竹竿のようなものであれば、地中埋設部分が腐食して前述のような風の強い日には支柱杭全体が倒れてしまい、何十本もあるような場合にはこれを元通りにするには非常な手間がかかるだけでなく、実も収穫できなくなるというようなこともあり、損害が非常に大きいというようなこともあった。ビニールハウスの中でも1本の支柱杭が腐食により倒れると将棋倒しのように倒れていく。
【0004】
これに加えて太い丸太や竹竿製の支柱杭を畝に打ち込む時、先端を尖らしているものの丸太の場合、角錐状で先端から次第にその横断面積が増加していくため打ち込むにつれて次第に抵抗が増していく。竹竿製の場合、竿の中空部分に土が入り込んで丸太と同様に、やはり打ち込むにつれて次第に抵抗が増していく。1、2本の支柱杭を打ち込む場合はさほど問題にはならないが、農家のように何十本、何百本というような作業では打ち込み易さは大きな問題となる。
【0005】
そこで、特許文献1に示すような鉄製の支柱杭が提案された。鉄製の支柱杭では丸太や竹竿のような短時間での腐食のような問題は解消されたが、半面、鉄製の支柱杭は丸太や竹竿に比べて重く扱いにくい。また、耐腐食性が向上したから当然繰り返し使用することになるが、その耐久性も重要なファクターとなるし、収穫が終わると全て抜去しなければならず、抜去の容易さも実際の作業では非常に重要である。
【0006】
この点、特許文献1の鉄製支柱杭はこの点先端部分が潰され且つ鏃状に形成されており、丸太や竹竿に比べ重いからこれらに比べてある程度容易に打ち込むことができる。しかしながら、その先端部の鏃状部分を構成する三角形の円錐状部が膨れているので、前述の丸太や竹竿と同様、この部分が打ち込み時の抵抗となり、何十本、何百本も打ち込む場合は作業者に大きな負担となる。さらに鉄製支柱杭は前述のように繰り返して使用されるものであるため、引き抜き易い事も要求される。引き抜きは支柱杭を中心軸の回りに回転させながら行われる。特許文献1の鉄製支柱杭の先端部は鏃状であり、この部分のプレスされた両側縁部分が両側に大きく張り出しているため、回転に際しては大きな抵抗となり回転させづらい。このことは引き抜き時には大きな抵抗となり、作業者の大きな負担となる。更に鏃状部分はプレス成形であるから当然口が開いており、外面には防錆処理を施していたとしても内面はなされておらず、ここから中に水が浸入すると内部から腐食してしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平3−24843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、打ち込みや引き抜きが容易で耐久性も優れた扱いやすい農園芸用支柱杭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、「一端部分(11)が扁平状に潰された鉄パイプ(10)と、鉄パイプ(10)の一端部分(11)から内部に挿入された鉄板(14)とで構成され、前記一端部分(11)の扁平押し潰し部分(11a)の側面屈曲点(11b)から鉄板(14)の先端中心点(14a)とを結ぶ線(L)に沿って鉄板(14)とその表裏両面に沿う一端部分(11)とが切断され且つ該一端部分(11)と鉄板(14)の切断残部(11c)(14c)同士が切断部分の全周に亘って水密状に溶接されている農園芸用支柱杭(A)」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の支柱杭(A)では一端部分(11)と鉄板(14)の切断残部(11c)(14c)同士が切断部分の全周に亘って水密状に溶接されているので、水分の多い土中に打ち込まれたとしても内部に水が浸入することがなく、しかも鉄パイプ(10)の先端部分(12)が三角形に形成され且つ扁平押し潰し部分(11a)が先端部分(12)の表裏を構成するので、表裏両面は平たく、それ故、畝(1)への打ち込み時に薄く三角形の先端部分(12)が抵抗なく打ち込まれて行き、大量の打ち込み作業に於いて作業者に大きな負担をかけることがない。
【0011】
また、支柱杭(A)の一端部分(11)の扁平押し潰し部分(11a)はその側面屈曲点(11b)から鉄板(14)の先端中心点(14a)とを結ぶ線(L)に沿って鉄板(14)とその表裏両面に沿う一端部分(11)とが切断されているので、該先端部分(12)は鉄パイプ(10)の円柱部分(10a)の外径幅(H)と等しくなり、抜く時に支柱杭(A)を回転させたとしても従来のように両側縁部分の大きな張り出しがなく、スムーズに回転させることが出来、引き抜きやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の支柱杭が畝に打ち込まれ、横桟が架設された状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の支柱杭の畝への打ち込み状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の支柱杭に接ぎ木用杭を継いだ状態を示す断面図である。
【図4】本発明の支柱杭の扁平押し潰し部分の切除と溶接部分の断面図である。
【図5】図4の直角方向の縦断面図である。
【図6】図4の支柱杭を先端部側から見た底面図である。
【図7】本発明の支柱杭の一部省略正面図である。
【図8】図7の直角方向の側面図である。
【図9】図7の上面端底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。支柱杭(A)を構成する鉄パイプ(10)の一端部分(11)は扁平状に潰されており、潰した部分は先拡がりに広がっている(図4仮想線参照)。この部分を扁平押し潰し部分(11a)とし、その側面の広がりの開始点を側面屈曲点(11b)とする。一端部分(11)には鉄板(14)を挿入してプレスして押し潰しているので、その開口幅は鉄板(14)の厚みに等しい。
【0014】
鉄板(14)は図4の仮想線で示されるように、正面視長方形のもので、その先端部分(14b)を若干突出させた状態でプレス前の断面円形の一端部分(11)に挿入され、この部分が前述のようにプレスされる。この正面視長方形或いは正方形の部分が扁平押し潰し部分(11a)で、この部分からプレスによって円形から次第にその横断面が楕円或いは長円状に変形し、その正面視がスカート状に広がる部分がスカート状部(10b)で、このスカート状部(10b)と変形のない円柱部分(10a)との境目で、側面が外方に屈曲している部分が側面屈曲点(11b)である。
【0015】
プレスにより一端部分(11)を変形させた後、前記側面屈曲点(11b)から鉄板(14)の先端中心点(14a)(この点は、本実施例では円柱部分(10a)の中心軸に一致する。)とを結ぶ線(L)に沿って鉄板(14)とその表裏両面に沿う一端部分(11)とが切断されて該先端部分(12)が三角形状になる。
【0016】
この時、扁平押し潰し部分(11a)は切断された鉄板(14)の三角形状の切断残部(14c)の表裏に沿うが、スカート状部(10b)はその横断面が次第に円に近づく楕円又は長円であるから、鉄板(14)の三角形状の切断残部(14c)の表裏から次第に離間し、両者間に隙間(13)が生じる。そこで、該切断残部(14c)(11c)同士を全周に亘って水密状に溶接し、或いは更なるプレスによって前記隙間(13)を潰した後、該切断残部(14c)(11c)同士を全周に亘って水密状に溶接し、先端部分(12)から水が内部に浸入しないようにする。
【0017】
なお、先端部分(12)の前記三角形は先端の角度θが鋭角な二等辺三角形が好ましく、また、鉄板(14)の仮想線で示す先端部分(14b)は一端部分(11)から若干突出させた状態で挿入されているため、扁平押し潰し部分(11a)の切断された残部は逆台形状になり、鉄板(14)の先端中心点(14a)近傍部分は扁平押し潰し部分(11a)の切断された逆台形状残部の先端から少し突出した状態、鉄板(14)の先端中心点(14a)が溶接の盛り肉によって尖った状態を形成する。
【0018】
以上から、支柱杭(A)は従来例のように張り出し部分がなく全体が鉄パイプ(10)の円柱部分(10a)の外形寸法(H)に等しくなる。また、この支柱杭(A)は、ハンマーを使って畝(1)に打ち込みやすい高さに形成されており、通常は900mm〜1m以下の高さである。(例えば900mmの場合、図7では600mmが省略されている。)
【0019】
接ぎ木用杭(20)は支柱杭(A)と同じ直径の鉄パイプで構成され、その一端が支柱杭(A)の内径より若干細く絞られている。この細く絞られた部分を細径部分(21)とし、接ぎ木用本体部分(23)と細径部分(21)との間の細径部分(21)に向かって次第に細くなる部分をテーパー部分(22)とする。そして、接ぎ木用杭(20)(接ぎ木用杭(20)を使用しない場合は支柱杭(A))の頂部にはキャップ(35)が着脱可能にて嵌め込まれるようになっている。接ぎ木用杭(20)は図4の実施例では一本だけであるが、必要に応じて適数本接続することができる。接ぎ木用杭(20)の高さも適宜決めることができるが、通常50cm内外である。
【0020】
支柱杭(A)や接ぎ木用杭(20)には、横竿受け部材(30)が取り付けられる。横竿受け部材(30)は接ぎ木用杭(20)や支柱杭(A)の外径よりその内径が若干大であり、その側面にナット部材(32)が溶接されているリング部材(31)と、前記ナット部材(32)に螺着する、大きな円盤状頭部(34)を有したネジ部材(33)とで構成されている。ここで使用される部材は勿論、これに限られないが、本実施例では鉄製で、防錆処理、例えば亜鉛めっきが施されている。
【0021】
支柱杭(A)は打ち込み用ブロック(41)を用いて打ち込まれる。打ち込み用ブロック(41)は支柱杭(A)の内径よりも若干細い脚部(43)と、支柱杭(A)の外径よりも若干太い打撃用頭部(42)とで構成されている。
【0022】
しかして、作業者が支柱杭(A)を畝(1)の所定個所に立って、先端部分(12)を軽く刺し、上端開口に打ち込み用ブロック(41)の脚部(43)を嵌め込んだ状態で打撃用頭部(42)をハンマーで打撃する。支柱杭(A)の鉄板(14)の先端部分(12)は三角形状に形成されしかもその表裏両面は平板状であって、土に対して、突き刺さりやすく、小さな力で必要な深さまで簡単に打ち込むことができる。
【0023】
なお、支柱杭(A)の側面に目盛り(18)を設けておけば、打ち込む深さを簡単に作業をしつつ確認することが出来る。また、図示していないが接ぎ木用杭(20)にも目盛りを設けておけば、横竿受け部材(30)の装着高さの目安とすることが出来る。
【0024】
畝(1)に対して所定間隔にて必要本数だけ打ち込むと、必要に応じて接ぎ木用杭(20)の細径部分(21)を挿入して必要本数だけ接ぎ木を行う。この時、テーパー部分(22)のいずれかの部分が下の段の支柱杭(A)或いは接ぎ木用杭(20)の上面開口に隙間なく嵌り込み、ぐらつくことなく接続することができる。
【0025】
そして、必要数だけ横竿受け部材(30)のリング部材(31)を支柱杭(A)や接ぎ木用杭(20)に挿通し、ネジ部材(33)を捻じ込んで所定箇所に固定する。ネジ部材(33)の円盤状頭部(34)と支柱杭(A)や接ぎ木用杭(20)との間には横竿(45)を架けるだけのスペースが存在し、このスペースに横竿(45)を架け、隣接する支柱杭(A)や接ぎ木用杭(20)間に架け渡す。そして必要があれば横竿(45)と支柱杭(A)や接ぎ木用杭(20)とを紐で固定する。
【0026】
このように用意したのち、つる性植物の苗を畝(1)に植え付け、そのつるを支柱杭(A)や横竿(45)に取り付けて誘引する。収穫が終わり、植物を引き抜いて処分したのち、横竿(45)を取り外し、接ぎ木用杭(20)が用いられている場合は下の段から接ぎ木用杭(20)を引き抜き、最後に支柱杭(A)を引き抜く。この場合、図4のように支柱杭(A)全体が円柱部分(10a)と同じ太さに形成されておれば引き抜き時の回転に対して抵抗が少なく引き抜き作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
(A) 支柱杭
(1) 畝
(10) 鉄パイプ
(10a) 円柱部分
(11) 一端部分
(11a) 扁平押し潰し部分
(11b) 側面屈曲点
(12) 先端部分
(14) 鉄板
(14a) 先端中心点
(L) 線
(H) 外径幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部分が扁平状に潰された鉄パイプと、鉄パイプの一端部分から内部に挿入された鉄板とで構成され、前記一端部分の扁平押し潰し部分の側面屈曲点から鉄板の先端中心点とを結ぶ線に沿って鉄板とその表裏両面に沿う一端部分とが切断され且つ該一端部分と鉄板の切断残部同士が切断部分の全周に亘って水密状に溶接されている農園芸用支柱杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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