説明

農業用ハウス

【課題】雨などの外的要件に左右され難くする。
【解決手段】蒲鉾状の農業用ハウス1の長手方向に多数並設される支柱10を有する骨格部2と、隣り合う支柱10の間であってハウス1の下部に設けられ、水平軸回りに傾動可能であってほぼ垂直な閉姿勢Aと開姿勢とにわたり傾動する多数の開閉窓6と、各開閉窓6を傾動可能に支持する軸部材13と、各開閉窓6の内面側であって閉姿勢のときに軸部材13よりも上側の部位にそれぞれ設けられた第1の紐通し16と、骨格部の内面側に、第1の紐通し16よりも低い位置に設けられた第2の紐通し17と、第1の紐通し16及び第2の紐通し17に通されるとともに一端が固定された紐18と、紐18の他端側を巻き取る巻取機20と、開閉窓6が開姿勢を維持するようにロックするロック手段21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば野菜などの農作物を作るために用いられる蒲鉾状の農業用ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した農業用ハウスとして、一般的にはビニールシートやビニール製の波板を用いて全面が覆われたものが知られている。
【0003】
そして、近年においては、ハウス内の温度調整を可能とするように開閉窓を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この提案の農業用ハウスは、複数本のアーチ主骨を連続して並設し該アーチ主骨をハウスの長手方向に設けたアーチ横骨によって連結してハウスの骨格を構成し、ハウスの垂直中心に対して左右対称位置にかつアーチ主骨に沿って移動可能に設けた開閉窓を具備し、該開閉窓と上記アーチ主骨との間に当該枠体を移動させる移動手段を設け、上記アーチ主骨の地上から一定の高さ迄と上記開閉窓にビニールフィルム又はプラスチック板を張設した構成となっている。
【特許文献1】特開平9−182529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した提案方式の場合には、上記開閉窓がハウスの長手方向のほぼ全長にわたって設けられた重いものであるため、この開閉窓をアーチ主骨に沿った上下方向に移動させる移動手段としては駆動力の大きいものが要求され、その結果として高コストなものになるという不都合があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、コスト的に安価な農業用ハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る農業用ハウスは、蒲鉾状の農業用ハウスであって、長手方向に所定間隔おきに多数並設される支柱を有する骨格部と、隣り合う支柱の間であってハウスの下部に設けられ、水平軸回りに傾動可能であってほぼ垂直な閉姿勢と、所定角度に傾斜した開姿勢とにわたり傾動する多数の開閉窓と、前記骨格部の前記水平軸に相当する部位であって各開閉窓毎に設けられたヒンジを有し、該ヒンジを介して各開閉窓を傾動可能に支持する軸部材と、各開閉窓の内面側であって、前記閉姿勢のときに前記軸部材よりも上側の部位にそれぞれ設けられた第1の紐通しと、前記骨格部の各開閉窓を水平方向に挟む両側部位のそれぞれの内面側に、前記第1の紐通しよりも低い位置に設けられた第2の紐通しと、第1の紐通し及び第2の紐通しに通されるとともに一端が固定された紐と、前記紐の他端側を巻き取る巻取機と、前記開閉窓が前記開姿勢を維持するように前記紐の他端側または前記巻取機をロックするロック手段とを具備し、前記巻取機による紐の巻取りに伴う前記第2の紐通しに対する前記第1の紐通しの接近により前記開閉窓が閉姿勢から開姿勢へ変化し、その状態を前記ロック手段がロックすると開姿勢が維持され、一方、前記ロック手段によるロックを解除すると前記開閉窓が自重により閉姿勢に戻るように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る農業用ハウスは、請求項1に記載の農業用ハウスにおいて、前記第1の紐通しは紐を通す紐通部を有し、その紐通部が、開閉窓を閉姿勢にした状態で、前記ヒンジを通る垂直面よりもハウス内側に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係る農業用ハウスは、請求項2に記載の農業用ハウスにおいて、前記第2の紐通しは紐を通す紐通部を有し、前記開閉窓が閉姿勢のとき、前記第1の紐通しの紐通部と前記第2の紐通しの紐通部とがほぼ同一の垂直面上に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係る農業用ハウスは、請求項1乃至3のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、前記軸部材が、前記閉姿勢における前記開閉窓の重心よりも高い位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係る農業用ハウスは、請求項1乃至4のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、前記開姿勢が、開閉窓の上端がハウスの内側に入り開閉窓の下端がハウスの外側に突出しかつ前記上端が前記下端よりも上側に位置する姿勢であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係る農業用ハウスは、請求項1乃至5のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、前記開閉窓が前記閉姿勢のとき、前記開閉窓の上端外面または下端内面が当接する当接片が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に係る農業用ハウスは、請求項1乃至6のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、前記巻取機から遠い側にある一部の開閉窓に、前記水平軸よりも下側に錘が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項8に係る農業用ハウスは、請求項1乃至7のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、前記紐が前記第1の紐通しと前記第2の紐通しとに交互に通されて千鳥状になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、開閉窓が閉姿勢にあるときに巻取機により紐の他端側を巻き取ると、骨格部に設けた第2の紐通しに対する第1の紐通しの接近により、開閉窓が巻取機に近い側から遠い側へ順番に閉姿勢から開姿勢へ変化していく。そして、巻取機により巻き取られる紐が通された第1の紐通しを有する全部の開閉窓が開姿勢になると、ロック手段により紐の他端側または巻取機をロックすることで、全部の開閉窓が開姿勢に維持される。そして、開閉窓を閉姿勢にするときは、ロック手段によるロックを解除すると、巻取機に近い側から遠い側へ順番に開閉窓が自重により閉姿勢に戻る。また、各開閉窓の開姿勢のときの傾き角度は、第1の紐通しが第2の紐通しに対して最も接近した状態のときの角度となるので、第1の紐通し、第2の紐通しおよび軸部材の各高さ関係に応じて調整されることとなる。従って、本発明による場合には、紐の他端側を巻き取ることにより開閉窓を巻取機に近い側から遠い側へ順番に閉姿勢から開姿勢へと変化させ、その開姿勢をロック手段でロックすることで維持させることができ、ロック解除により開閉窓が自重により閉姿勢に戻るので、大きい駆動力を必要とせず、コスト的に安価なものにできる。
【0015】
請求項2の発明による場合には、開閉窓が閉姿勢のとき、開閉窓を傾動させるヒンジ(水平軸)に対して第1の紐通しの紐通部が水平方向においてハウス内側に偏位しているので、開閉窓を閉姿勢から開姿勢へ軽い巻取力により変えることができる。
【0016】
請求項3の発明による場合には、開閉窓が閉姿勢のとき第1の紐通しの紐通部と第2の紐通しの紐通部とがほぼ同一の垂直面上に位置するので、開閉窓を開ける瞬間において、開閉窓に取付けた第1の紐通しを、第2の紐通しの紐通部を介してほぼ真下方向に引き下げるように力が作用するようにできる。よって、開閉窓を閉姿勢から軽い巻取力により開けることができる。
【0017】
請求項4の発明による場合には、開閉窓の重心よりも軸部材が高いので、開姿勢の開閉窓をその自重により閉姿勢に戻すことが可能になる。
【0018】
請求項5の発明による場合には、開姿勢が、開閉窓の上端がハウスの内側に入り開閉窓の下端がハウスの外側に突出しかつ前記上端が前記下端よりも上側に位置する姿勢であるので、雨降りの時においても通気性を確保することができる。
【0019】
請求項6の発明による場合には、開閉窓の上端外面または下端内面を当接片に当接させて開閉窓を閉姿勢にするので、閉姿勢の開閉窓が全て綺麗に揃った状態になる。
【0020】
請求項7の発明による場合には、開姿勢から閉姿勢に戻り難い開閉窓に対し、水平軸よりも下側に錘を設けることにより、開閉窓の自重に錘の重量を加えた重さが、開閉窓の水平軸よりも下側に作用するので、開閉窓を閉姿勢に戻り易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0022】
図1は本発明を適用した農業用ハウスの全体を示す外観斜視図であり、図2は本発明の要部である開閉窓の部分を外側から見た図、図3は図2の開閉窓の部分を内側から見た図、図4は開閉窓が取付けられる被取付部を示す外観斜視図、図5は図4の被取付部に開閉窓が取付けられた状態を示す外観斜視図、図6は開閉窓が開閉する動作内容の説明図、図7はロック手段の説明図である。
【0023】
この農業用ハウス1は、骨格部2の外側全体に合成樹脂製の覆い部材3が取付けられた蒲鉾状のもので、長手方向Lの両側に垂直な壁面4、4が設けられ、各壁面4にはそれぞれ出入り用の扉5が形成されている。また、幅方向Wの両側面には、ハウス1の下部に、地面に沿って開閉窓6が多数設けられており、この開閉窓6にも、他の部位と同様の覆い部材3が設けられている。開閉窓6の具体的な構成は、横に長い矩形状の枠体6cを有するもので、その枠体6cの外側に覆い部材3が設けられた構成である。なお、開閉窓6は、ハウス1の長手方向Lの全長にわたる範囲に設けられている。また、長手方向Lと幅方向Wとは、直交する方向となっている。
【0024】
上記覆い部材3は、合成樹脂製のものであれば自由に変形可能な軟質なものや変形しない硬質のものを問わず使用することができ、特に耐久性を向上させる場合には光に対して変色し難いポリカーボネート製のものを用いるのが好ましい。覆い部材3の断面形状としては、波板状でも、他の形状のものでもよい。
【0025】
骨格部2は、長手方向Lに所定間隔おきに多数並設されたアーチ状の支柱10と、長手方向Lに沿って長く、支柱10によって支持された桟11と、各壁面4に設けられた構造部12とを有する。各支柱10は、その両端部を地面に埋設して固定されている。なお、骨格部2の材質は、木質、金属など種類を問わない。
【0026】
桟11は、アーチ状の支柱10に沿って複数設けられていて、片方の側面側には、例えば図示例では開閉窓6の下部に相当する位置に設けた桟11aと、開閉窓6の上部に相当する位置に設けた桟11bと、天井部に設けた桟11cと、その桟11cと前記桟11bとの間に設けた桟11d、11eとを有する。桟11は、天井部に設けた桟11cを除き、幅方向Wに対称的に配置されていて、図1に表れていない奥側にも桟11a、11b、11dおよび11eが設けられている。
【0027】
構造部12は、両壁面4において同一構造であって、壁面4に設けられた支柱10の内側に設けられており、水平部材12aと、水平部材12aの下側に設けられた2つの扉5、5と、各扉5の外側に2つずつ設けられた鉛直部材12bとを有する。各扉5は、該当する扉5の外側に位置する鉛直部材12bを中心として鉛直軸回りに開閉し、両方の扉5が観音開きとなるように形成されている。また、水平部材12aの上側には、支柱10を支持する鉛直部材12cが複数、例えば図示例では4本設けられている。この構成の構造部12は、長手方向Lの両側の壁面4に設けられている。
【0028】
次に、開閉窓6が配設された部分の開閉機構を具体的に説明する。
【0029】
地面に近い上記桟11aと桟11bは、支柱10の外側に配置されていて、両桟11a、11bの間には軸部材13が支柱10の外側に水平に設けられている。また、両桟11a、11bの内側には、上下両端部を桟11a、11bに固定して巻取機取付板7が設けられている。この巻取機取付板7は、幅方向Wの両側面のそれぞれであって、ハウス1における長手方向Lの同じ側の端部に設けられており、図3に示す一番端の支柱10と、その1つ隣の支柱10との間に挟まれている。
【0030】
上記軸部材13は、各開閉窓6毎に2つ1組で設けられたヒンジ14を有し、各組のヒンジ14は開閉窓6の枠体6cにおける左右の各辺部に取付けられている。また、各組のヒンジ14はそれぞれ軸部材13に取付けられている。よって、開閉窓6は、ヒンジ14の軸部14a(図6参照)を水平軸として、その回りを傾動可能に設けられ、ほぼ垂直な閉姿勢Aと、上端6aがハウス1の内側に入り下端6bがハウス1の外側に突出し、かつ上端6aが下端6bよりも上側に位置する開姿勢Bとにわたり傾動する。そして、開閉窓6は、閉姿勢Aのときに開閉窓6の下端部が地面に近い上記桟11aに当接することにより、全ての開閉窓6の閉姿勢Aが揃うようになっている。なお、閉姿勢Aのときのほぼ垂直には、支柱10の下部の地面に対する角度にほぼ一致する角度を含む。例えば、支柱10の下部の角度が地面に対して垂直である場合には、その垂直を含み、或いは、支柱10の下部の角度が地面寄りに寝ている場合には、その地面寄りに寝ている角度を含むものである。
【0031】
この開閉窓6は、支柱10よりも外側であって、傾動に際して、並設された隣り合う支柱10、10の間を通るように適長離隔して配置されていて、隣合う開閉窓6の間には隙間を埋める化粧用の縦枠15が設けられている(図1、図2参照)。この縦枠15は、その下端部を桟11aに固定し、上端部を桟11bに固定することにより骨格部2に取付けられている。
【0032】
各開閉窓6の内面側には、閉姿勢Aのときに前記軸部材13よりも上側の部位、図示例では枠体6cの上辺6dに第1の紐通し16がスペーサ19を介してそれぞれ設けられている。一方、骨格部2の各開閉窓6を水平方向に挟む両側部位のそれぞれ、各巻取機取付板7および各支柱10(巻取機取付板7よりも外側のものを除く)の内面側に、前記第1の紐通しよりも低い位置に第2の紐通し17が設けられている。
【0033】
これら第1の紐通し16及び第2の紐通し17は、共に紐18を通す紐通部16a、17aを有し、各紐通部16a、17aは、前記スペーサ19の長さを調整することにより、開閉窓6が閉姿勢Aのときにほぼ同一の垂直面Cの上に位置するように設計されている。また各紐通部16a、17aは紐18が抜け出ない環状、好ましくは円環状のものであって、各紐通部16a、17aには紐18が通されており、この紐18は開閉窓6が閉姿勢Aのとき千鳥状となっている。また、紐18の一端は、図示例では巻取機取付板7と反対側の端の図3に表れていない第2の紐通し(17)に結び付けて固定されている。紐18の一端の固定は、巻取機取付板7と反対側の端の第1の紐通し16であってもよく、或いは、骨格部2における巻取機取付板7とは反対側の部位であってもよい。
【0034】
紐18の他端は、巻取機取付板7に回動可能に取付けた巻取機20に結び付けて固定されている。この巻取機20は、把持部20aと、この把持部20aの回動により回動する巻取ドラム20bと、巻取ドラム20bを軸方向で挟むフランジ部20c、20dとを有する構成となっており、把持部20aを把持して一定方向(例えば時計回り)に回動させると巻取ドラム20bが紐18の他端側を巻き取るようになっている。
【0035】
この巻取機20には、ロック手段21が付設されている。ロック手段21は、前記フランジ部20c、20dのうち、巻取機取付板7に近い側のフランジ部20cに外側に突出するように形成した突起21aと、その突起21aが回る領域に、一定間隔で形成された複数のピン取付孔21bと、これらのピン取付孔21bの1つに差し込んで固定されるピン21cとを有し(図7参照)、ピン21cをピン取付孔21bの1つに差し込むと、そのピン21cが突起21aに当接することにより巻取機20が回動しないようにロックする。
【0036】
次に、このように構成された農業用ハウス1における開閉機構の開閉作業につき説明する。
【0037】
開閉窓6が閉まっていて、ハウス1内の温度が高すぎる場合には、開閉窓6を開けるために、幅方向Wの片側のハウス側面に設けられた巻取機20の把持部20aを、例えば時計回りに回動させて紐18の他端側を巻き取る。このとき、上述したように開閉窓6が閉姿勢Aのとき第1の紐通し16の紐通部16aと第2の紐通し17の紐通部17aとがほぼ同一の垂直面C上に位置するので(図6参照)、開閉窓6を開ける瞬間において、開閉窓6に取付けた第1の紐通し16を、第2の紐通し17の紐通部17aを介してほぼ真下方向に引き下げるように力が作用するようにでき、開閉窓6を閉姿勢Aから軽い巻取力により開けることが可能になる。また、開閉窓6が閉姿勢Aのとき、開閉窓6を傾動させる水平軸(ヒンジ14の軸部14a)に対して第1の紐通し16の紐通部16aが水平方向においてハウス1の内側に偏位しているので(図6参照)、開閉窓6を閉姿勢Aから開姿勢Bへ軽い巻取力により変えることができる。
【0038】
このような巻取りに伴い、千鳥状となっていた紐18が、直線状に近づいていき、これにより第2の紐通し17に対して第1の紐通し16が接近して開閉窓6が閉姿勢Aから開姿勢Bへ変化していく。この開姿勢Bへの変化は、巻取機20に近い側から順に生じていく。そして、片側のハウス側面に設けられた全部の開閉窓6が開姿勢Bになると、戻りが最も小さいピン取付孔21bにピン21cを差し込む。その後、把持部20aから手を離すと巻取ドラム20bが少し戻るものの、ピン21cが突起21aに当接することにより巻取機20が回動しないようにロックされる。これにより、片側のハウス側面に設けられた全部の開閉窓6が開姿勢Bに維持される。
【0039】
このとき、各開閉窓6は、開姿勢Bにおいて、上端6aがハウス内側に入り下端6bがハウス外側に突出しかつ上端6aが下端6bよりも上側に位置するように傾動しているので、雨などが降っても開姿勢のままでもハウス内に雨などが入り難いため、雨降りの時においても通気性を確保することができる。また、各開閉窓6の開姿勢Bのときの傾き角度は、第1の紐通し16が第2の紐通し17に対して最も接近した状態のときの角度となるので、第1の紐通し16、第2の紐通し17および軸部材13の各高さ関係に応じて調整される。
【0040】
以上は片側のハウス側面に設けた開閉窓6を開ける場合であるが、必要に応じて、反対側のハウス側面に設けられた開閉窓6に関しても、同様にして閉姿勢Aから開姿勢Bへ変化させ、開姿勢Bに維持させるようにする。これにより、ハウス1における幅方向Wの両側面の下部に設けた開閉窓6が開姿勢Bとなって通気性を確保することが可能になる。
【0041】
そして、開閉窓6を開姿勢Bから閉姿勢Aに戻すときは、ロック手段21のピン21cをピン取付孔21bから抜いてロックを解除すると、軸部材13、実質的にはヒンジ14の軸部14a(水平軸)が開閉窓6の重心よりも高いので、開閉窓6が自重により閉姿勢Aに戻る。この閉姿勢Aへの戻りは、巻取機20に近い側から遠い側へ順番に起こる。
【0042】
但し、紐18と第1の紐通し16との間、紐18と第2の紐通し17との間などに摩擦抵抗などが存在するため、場合によっては、巻取機20から遠い側に位置する開閉窓6が閉姿勢Aへ戻り難くなる。その場合には、戻り難い開閉窓6に対して錘22を取り付けることが好ましい(図6参照)。錘22の取り付けは、開閉窓6の内側でも外側でもよいが、取り付け位置は、開閉窓6が傾動する水平軸(ヒンジ14の軸部14a)よりも下側の部位がよい。これにより開閉窓6の自重に錘22の重量を加えた重さが、開閉窓6の水平軸(軸部14a)よりも下側に作用するので、開閉窓6を閉姿勢Aに戻り易くすることができる。なお、ハウス1の幅方向Wにおけるもう片側の開閉窓6に関しても、必要に応じて閉姿勢Aに戻せばよい。
【0043】
以上の閉姿勢Aへの戻りに際し、上述したように閉姿勢Aのときに開閉窓6の下端6bの内面が地面に近い上記桟11aに当接するので、全ての開閉窓6の閉姿勢Aが綺麗に揃う。この桟11aは、本発明の当接片として機能するものである。
【0044】
なお、上述した実施形態では開閉窓6の下端6bの内面が当接片としての桟11aに当接する構成としているが、本発明はこれに限らず、開閉窓6の上端6aの外面が当接して各開閉窓6の閉姿勢Aが綺麗に揃うような構成としてもよい。
【0045】
したがって、本実施形態による場合には、紐18を巻取機20により巻き取ることにより開閉窓6を巻取機20に近い側から遠い側へ順番に閉姿勢Aから開姿勢Bへと変化させ、その開姿勢Bをロック手段21でロックすることで維持させることができ、ロック解除により開閉窓6が自重により閉姿勢Aに戻るので、大きい駆動力を必要とせず、コスト的に安価なものにできる。
【0046】
なお、上述した実施形態では第1の紐通し16の紐通部16aと第2の紐通し17の紐通部17aとに対し交互に紐18を通し、つまり千鳥状となるように紐18を通しているが、本発明はこれに限らない。例えば、隣合う2つの第1の紐通し16に対し連続して紐18を通してもよく、或いは連続する3以上の第1の紐通し16に対し連続して紐18を通してもよい。このような紐の通し方を採用した場合には、千鳥状に紐を通す場合よりも自重により開姿勢Bから閉姿勢Aに戻り易くすることが可能になる。また、その戻り易さは、第1の紐通し16に連続して通す数が多い程、容易になる。
【0047】
また、上述した実施形態では手動の巻取機20を用いているが、本発明はこれに限らず、電動モータなどによる電動巻取機を用いてもよい。
【0048】
更に、上述した実施形態では農業用ハウスの長手方向の全長にわたって設けられた開閉窓の全部を1つの巻取機で開閉する構成を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限らない。例えば、農業用ハウスの長手方向の全長にわたって設けられた開閉窓を半分ずつのグループに分け、各グループを1つの巻取機で開閉する構成としてもよい。或いは、農業用ハウスの長手方向の全長にわたって設けられた開閉窓を3つ以上のグループに分け、各グループを1つの巻取機で開閉する構成としてもよい。各グループにおける巻取機を配置する位置は、同じ方向でも異なる方向でも構わない。
【0049】
更にまた、上述した実施形態では各開閉窓6の開姿勢Bのときの傾き角度は、第1の紐通し16、第2の紐通し17および軸部材13の各高さ関係に応じて調整され、第1の紐通し16が第2の紐通し17に対して最も接近した状態のときの角度となるが、本発明はこれに限らない。例えば、開閉窓6が開閉する領域に傾き角度調整用のストッパを設け、そのストッパに開閉窓6が当接するときの角度が傾き角度となるような構成としてもよい。
【0050】
更にまた、上述した実施形態ではロック手段として、複数のピン取付孔21bの1つに差し込んだピン21cが突起21aに当接することにより巻取機20が回動しないようにロックする構成のものを用いているが、本発明はこれに限らない。例えば、巻取機が魚釣り用のリールなどに組み込まれるラチェットホイールの場合には、そのラチェットホイールを回転または停止させるストッパ爪のようなものでもよい。或いは、紐18を巻き付ける棒部材や、紐18を両側から挟み込んで紐18を動かないように固定するクランプでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用した農業用ハウスの全体を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の要部である開閉窓の部分を外側から見た図である。
【図3】図2の開閉窓の部分を内側から見た図である。
【図4】開閉窓が取付けられる被取付部を示す外観斜視図である。
【図5】図4の被取付部に開閉窓が取付けられた状態を示す外観斜視図である。
【図6】開閉窓が開閉する動作内容の説明図である。
【図7】ロック手段の説明図である。
【符号の説明】
【0052】
A 閉姿勢
B 開姿勢
C 垂直面
W 幅方向
L 長手方向
1 農業用ハウス
2 骨格部
6 開閉窓
6a 上端
6b 下端
10 支柱
13 軸部材
14 ヒンジ
14a ヒンジ軸部(水平軸)
16 第1の紐通し
17 第2の紐通し
16a、17a 紐通部
18 紐
20 巻取機
21 ロック手段
21a 突起
21b ピン取付孔
21c ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒲鉾状の農業用ハウスであって、
長手方向に所定間隔おきに多数並設される支柱を有する骨格部と、
隣り合う支柱の間であってハウスの下部に設けられ、水平軸回りに傾動可能であってほぼ垂直な閉姿勢と、所定角度に傾斜した開姿勢とにわたり傾動する多数の開閉窓と、
前記骨格部の前記水平軸に相当する部位であって各開閉窓毎に設けられたヒンジを有し、該ヒンジを介して各開閉窓を傾動可能に支持する軸部材と、
各開閉窓の内面側であって、前記閉姿勢のときに前記軸部材よりも上側の部位にそれぞれ設けられた第1の紐通しと、
前記骨格部の各開閉窓を水平方向に挟む両側部位のそれぞれの内面側に、前記第1の紐通しよりも低い位置に設けられた第2の紐通しと、
第1の紐通し及び第2の紐通しに通されるとともに一端が固定された紐と、
前記紐の他端側を巻き取る巻取機と、
前記開閉窓が前記開姿勢を維持するように前記紐の他端側または前記巻取機をロックするロック手段とを具備し、
前記巻取機による紐の巻取りに伴う前記第2の紐通しに対する前記第1の紐通しの接近により前記開閉窓が閉姿勢から開姿勢へ変化し、その状態を前記ロック手段がロックすると開姿勢が維持され、一方、前記ロック手段によるロックを解除すると前記開閉窓が自重により閉姿勢に戻るように構成されていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項2】
請求項1に記載の農業用ハウスにおいて、
前記第1の紐通しは紐を通す紐通部を有し、その紐通部が、開閉窓を閉姿勢にした状態で、前記ヒンジを通る垂直面よりもハウス内側に位置するように配置されていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項3】
請求項2に記載の農業用ハウスにおいて、
前記第2の紐通しは紐を通す紐通部を有し、前記開閉窓が閉姿勢のとき、前記第1の紐通しの紐通部と前記第2の紐通しの紐通部とがほぼ同一の垂直面上に位置するように配置されていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、
前記軸部材が、前記閉姿勢における前記開閉窓の重心よりも高い位置に設けられていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、
前記開姿勢が、開閉窓の上端がハウスの内側に入り開閉窓の下端がハウスの外側に突出しかつ前記上端が前記下端よりも上側に位置する姿勢であることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、
前記開閉窓が前記閉姿勢のとき、前記開閉窓の上端外面または下端内面が当接する当接片が設けられていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、
前記巻取機から遠い側にある一部の開閉窓に、前記水平軸よりも下側に錘が設けられていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の農業用ハウスにおいて、
前記紐が前記第1の紐通しと前記第2の紐通しとに交互に通されて千鳥状になっていることを特徴とする農業用ハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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