説明

農業用ビニールハウスのビニールシートの保護カバー

【課題】
ビニールハウスの断面U形のシート受け部材に装着される保護カバーについて、シート受け部材に対する着脱を簡単容易に行えるようにその構造を工夫すること。
【解決手段】
ビニールハウスの断面U形のシート受け部材に装着される保護カバーであって、細長い軟質樹脂製の柔軟シート部と、左右の樹脂製の硬質カバー部とからなり、柔軟シート部の左右両側部に左右の硬質カバー部の下面中央部が連結されて柔軟シート部の上に硬質カバー部が重ねられており、上記硬質カバー部の長さがシート受け部材の長さとほぼ等しく、上記硬質カバー部の幅がシート受け部材の溝の開口幅以上であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は農業用ビニールハウスに張られたビニールシート(透明被覆材)の保護カバーに関するものであり、骨材に固定されたシート受け部材にビニールシートが固定されているものについて、そのビニールシートが固定部で破れることを防止するものであり、上記シート受け部材に簡単容易に装着することができ、廉価に成作できるものである。
【背景技術】
【0002】
農業用ビニールハウスの骨組み構造には種々のものがあるが、最も一般的なものは図1に示すものである。この従来の骨組みは、門型の骨材1を一定間隔で配置してこれを多数の梁材2で連結して構成されている。この骨組みにビニールシート4が張られ、固定されてビニールハウスが構成される。
上記骨材1にシート受け部材3がビス等で固着されており、このシート受け部材3にビニールシート4が固定されている。シート受け部材3は断面U形の部材であり、当該シート受け部材に弾性留め具5をビニールシートの上から押し込んで嵌めることによって、ビニールシート4がシート受け部材に固定されている(特開2005−295997号公報、特許文献1)。
シート受け部材3は概略断面U形である。また、弾性留め具の構造は、線材を波形した波形金属バネによるスプリング留め具、拡張式のプラスチック留め具(実開平5−53447号公報、特許文献2)等がある。
【0003】
ところで、上記従来技術は図3に示すようなものであり、シート受け部材3の左右側壁3a,3aは内側に傾斜していて両角の角度が鋭角になっている。これによって、弾性留め具(この例では波形のスプリング留め具5)がその横方向外方への弾性復元力でシート受け部材の側壁の傾斜面に押し付けられ、当該傾斜面のカム作用によって下方に押さえられ、シート受け部材3の底部に固定される。2つのビニールシートの端部を重ね合わせてシート受け部材3に固定することで、両ビニールシートが接続される。弾性留め具を外せばビニールシート4は簡単に外れる。
また、シート受け部材3の側壁3aの先端3eが逆U形の折り返し部になっていて、これにより、先端3eにビニールシートが引っかかって破れることが防止されている。
【0004】
なお、図3はシート受け部材3の高さを誇張して示しているが実際のものは高さが極めて低く、そしてそのサイズは概ね次のとおりである。
底部の幅Bが約30mm、側壁3aの高さhはほぼ13mmであり、図示の構造よりも極めて扁平なもので、左右の側壁3a,3aによるシート受け部材の溝6の深さ(側壁3aの高さと同じ)は開口幅B1に比して極めて小さい。なお、使用されるビニールシート4の厚さは0.075〜0.65mmであり、スプリング留め具5の線径は2.5〜4.0mmである。
そして、左右側壁3aによるシート受け部材の溝6の開口幅B1はほぼ18mmである。
【0005】
以上のようにして張設されたビニールシート4が強風で煽られないように、ビニールシートの上に保持ロープR(図4参照)が張られ、これによってビニールシート4が押さえられている。この場合、保持ローブRがシート受け部材3に当接しているとこの部分でビニールシート4が保持ロープRと強く擦れ合って破れてしまうことが多い。
また、換気のためにビニールシートが部分的に巻き上げられるが、この巻き上げられるビニールシートの下端に巻き取りパイプ30が固定されており(図5参照)、下から操作される操作軸32によって歯車伝動装置31を介して回転駆動されるようになっているが、上記歯車伝動装置31はビニールハウスの妻面Fよりも外へ張り出していて、妻面Fの外に縦方向の操作軸32があるので、巻き取りパイプの歯車伝動装置側の外端にはビニールシートは巻き取られない。したがって、上記ビニールシートが巻き上げられ又は降ろされるときに、上記巻き取りパイプ30の外側端部が裸のままで昇降し、このため、当該外側端部がビニールハウス妻面F等の骨材のシート受け部材に当たり、この部分でビニールシートが破れてしまうことがある。
そしてビニールシートはシート受け部材のところで破損すると、その性質上、そこから裂け目が広がって大きく破れてしまうことになるので、その耐久性に与える影響は非常に大きい。
以上のことから、シート受け部材3に当っている部分でビニールシートが破れることを防止するための保護手段をシート受け部材に施すことが求められ、例えば、図4−2に示されているようなものなどが工夫されている。このものは全体がプラスチック製の一体もので、両側部22が厚くて硬い材質でできていて、その逆U形部22eがシート受け部材3の側壁3aの先端3eとほぼ同じ断面形状をしていて、これに弾性的に嵌合固定されてこれをカバーするようになっている。そして、中央が薄くて比較的柔軟性のある軟質部であり、この部分がシート受け部材3の溝に押し込まれて弾性留め具5で固定される。
しかし、以上のものはともにシート受け部材3への装着作業が極めて困難であり、また、破損しやすいなどの問題がある。
【特許文献1】特開2005−295997号公報
【特許文献2】実開平5−53447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、上記保護手段については既設のビニールハウスにも適用することができ、しかも、簡単容易に装着することができ、また、交換を容易にするために簡単に取り外せるものであることが必要である。
そこで、この発明は、ビニールハウスの断面U形のシート受け部材に装着される保護カバーについて、シート受け部材に対する着脱を簡単容易に行うことができるようにその構造を工夫することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、ビニールハウスのシート受け部材3に装着される細長い保護カバーであって、次の(イ)〜(ニ)によるものである。
(イ)細長い合成樹脂製の柔軟シート部と、左右両側の樹脂製の硬質カバー部とからなり、
(ロ)柔軟シート部の左右両側部に左右の硬質カバー部の下面中央部が連結され、柔軟シート部の上に硬質カバー部が重ねられており、
(ハ)上記硬質カバー部の長さがシート受け部材の長さとほぼ等しく、
(ニ)上記硬質カバー部の幅がシート受け部材の溝の開口幅以上であること。
【0008】
上記柔軟シート部はビニールシート程度の厚さで、柔軟性を有するものである。そして、上記硬質カバー部は素材が硬質であることをいうものではなくて柔軟シート部に比して厚くて硬く、比較的高剛性であって、保持ロープや巻き取りパイプ材等と強く擦られても変形しない程度の剛性を有するカバー部であることを意味する。そしてその幅の上限は特にないが、シート受け部材の溝の開口幅よりも若干広ければ溝内に落ち込むことはないのでこれで十分である。
また、上記硬質カバーの幅が「シート受け部材の幅以上である」ことの意味は、シート受け部材の溝の開口幅とほぼ等しいかそれ以上であることを意味する。この要件はシート受け部材に装着したときに硬質カバー部がシート受け部材の中に落ち込まないようにするための条件である。したがって、他の手段でシート受け部材の中に硬質カバー部が落ち込まないようにするときは、必ずしもその必要はない。しかし、この場合もシート受け部材の側壁の先端を十分にかつ確実に覆うものでなければならない。
【0009】
〔作用〕
シート受け部材をビニールハウスのビニールシートで覆った状態で、保護カバーの柔軟シートを上記ビニールシートに重ね、当該柔軟シート部をビニールシートとともにシート受け部材の溝に押し込んで弾性留め具で固定される。柔軟シート部が柔軟であるので、上記の押し込み操作および弾性留め具の装着操作が容易であり、また柔軟シート部がシート受け部材の溝にはめ込まれると、硬質カバー部が比較的剛性が高く保形性が高いので当該硬質カバー部がシート受け部材の左右側壁の上端を覆う状態になる。したがって、保護カバーを容易に装着することができる。
このとき、比較的高剛性の硬質カバー部がシート受け部材の外側まで広がっていて、その側壁の先端の断面U形部(折り返し部)に当たっているところをカバーする。したがって、ビニールシートが保持ロープR(図4参照)や巻き取りパイプ30(図6参照)等によって擦傷して破れることが防止される。
以上のように、この発明の保護カバーは、ビニールシートを固定するときに弾性留め具でビニールシートとともにシート受け部材に固定され、弾性留め具を外せば保護カバーはシート受け部材から簡単に外れる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の保護カバーはシート受け部材に対して着脱自在に装着されるものであるから、既存のビニールハウスにも容易に適用することができ、弾性留め具によってビニールシートとともにシート受け部材にしっかりと固定されるから、これが自然に外れて保護機能が失われることはない。他方、この保護カバーは弾性留め具を外すことによってシート受け部材から簡単容易に外れるので、ビニールシートを張り替えるときなどは簡単容易に取り外される。
【0011】
この発明の保護カバーは、比較的高剛性の硬質カバー部でシート受け部材の側壁先端をカバーするものであるから、保持ロープRによってめくり上げられることはないので、ビニールシートのシート受け部材のところが硬質カバー部によって確実に保護される。したがって、このところが破損されることはなく、また、ビニールシートの下端に固定された巻き取りパイプ材が衝突してもこれによって破損されることもない。
【0012】
因みに、ビニールシート4がシート受け部材3との当接部で保持ロープRと擦れ合って破損することを防止するために、ビニールシートを固定した状態で、断面茸状の保護部材をシート受け部材に装着し、この茸状の保護部材で保持ロープを支持させ、これによってこの部分でビニールシートが保持ロープと擦れ合うことを防止するものが公知である(上記特許文献2の図3参照)。このような従来の保護手段による場合は、保護部材は弾性留め具とは別体であるから部品数が多くなってコスト高になり、また、弾性留め具と保護部材との取付け、取外しが別作業になるので手間がかかる。
また、シート受け部材の近傍で保持ロープがビニールシートから浮き上がっていて押さえが効かないという問題がある。
【0013】
また、図4−2に示す構造の保護部材20が市販されているが、このものは左右の硬質プラスチック製の両側部22と中央の軟質部21によるものであり、シート受け部材3の側壁の先端3eに両側部の断面U形部22eを嵌着させてビニールシートを保護するものである。しかし、当該保護部材20による場合は、張設されたビニールシート4の上からビニールシートとともにシート受け部材3に嵌め込み、弾性留め具5を装着して止める作業が極めて困難である。また、その両側部22が硬質プラスチック材によるものであるから、低温下で衝撃を受けると容易に割れて破損される。
【0014】
しかし、本発明の保護カバーによれば、硬質カバー部は強い弾性復元力を発揮するような硬いものではないから比較的靱性があり、したがって、上記のような問題はない。これがこの発明の大きな利点である。
さらに、この発明の保護カバーは柔軟シート部の左右両側に比較的剛性が高い帯状の硬質カバー部があるものであるから、柔軟シート部で二つ折りにして左右の硬質カバー部を重ね合わせることができるので、包装に便利で取り扱いが容易であり、他方、左右に大きく開いて柔軟シート部をビニールシート上に広げて密着させ、この状態で、弾性留め具5を利用してビニールシートとともにシート受け部材3の中に容易に押し込むことができるので、シート受け部材への装着作業が容易である。
【0015】
〔実施の態様〕
1.実施態様1は、上記柔軟シート部の左右両側に細長い帯状の心材を巻き込んでその長手方向両端を溶着(又は接着でも可)して形成されたものであることである。
以上のようにすることで、上記柔軟シート部の両側に上記硬質カバー部が形成されて強固に一体化して設けられる。
2.実施態様2は、上記柔軟シート部と硬質カバー部とが一体に成形された一体成型品であることである。
この場合の硬質カバー部は柔軟シート部よりも数倍の厚さを有するが、必ずしも中実である必要はなく、中空にすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次いで、図面を参照しながら実施例を説明する。
この実施例は上記実施態様1を具体化したものであり、保護カバーは合成樹脂製で、長さL1が1800mm、幅wが250mmである。柔軟シート部10bの左右両端に硬質カバー部10aが一体に設けられており、このとき、硬質カバー部10aが柔軟シート部10bとの境目から幅b(約15mm程度)だけ外側に張り出している。なお、この張り出し幅bはもっと広くてもよいが、シート受け部材の先端を完全かつ確実に覆えるほどであればそれで十分である。
また、左右の硬質カバー部10a,10aの間にほぼ5〜15mmの隙間11があるが、柔軟シート部10bの幅、硬質カバー部10aの幅、柔軟シート部10bの両端への硬質カバー部の固定位置が選択された結果であるから、この数値に格別の意義があるわけではない。
【0017】
そして、左右の硬質カバー部10aの幅w2は35mm、厚さtはほぼ2mm程度である。
柔軟シート部10bは厚さが0.2mmであり、幅wがB+2hにほぼ等しい。ただし、Bはシート受け部材3の底部の幅、hは高さである。これは、シート受け部材3のサイズに応じたものであり、シート受け部材のサイズが違えば幅B、高さhが違い、したがって、柔軟シート部10bの幅wが違うことになる。
【0018】
この実施例の保護カバー10は、次のようにして成作することができる。
幅w3の柔軟シート材25の左右両側に厚さが例えば1mmの薄い板状心材26を重ね、これを柔軟シート材25で2〜3回巻き込み、その状態で長手方向両端10c(図2参照)、及び幅方向中央部を溶着して一体化し、これによって図2の状態にしている。
【0019】
以上の保護カバー10を図4の状態でシート受け部材3に装着する。このとき、図4−1に示すように、柔軟シート部10bが展開されてビニールシート4の上に重ねられ(図4−1)、ビニールシート4とともにシート受け部材3の溝6に押し込まれて、弾性留め具(具体的には波形スプリング留め具)5を当該溝6の底にはめ込むことによって、シート受け部材3に固定される。このとき、硬質カバー部10aが、シート受け部材3の側壁3aの先端3eに重なり、シート受け部材の溝6の開口を覆う状態になる(図4)。図4では硬質カバー部10aの外側端部が側壁の先端3eに載せられ、内側端部が宙に浮いている状態で描かれているが、これは便宜的な図示である。硬質カバー部10aの幅w2に比してシート受け部材の溝6は極めて浅い(ほぼ13mm)ので、硬質カバー部10aの実際の姿勢はほぼ図示の状態に近い。
【0020】
保持ロープRが張られると、 保護カバー10の硬質カバー部10aが保持ロープRとビニールシート4との間に介在するのでビニールシートが硬質カバー部10aで保護される。
また、この実施例では幅広の柔軟シート材25の両側に心材26を巻き込んで硬質カバー部を形成しているが、次のようにして成作することもできる。
柔軟シート材25の両側を心材なしで3〜4回ロール状に巻いてこれを加圧して扁平にし、その両端を加熱溶着させて図示の形状に成形することもできる。
また、柔軟シート材25の左右両側に厚目の心材(例えば厚さが2mm程度)を重ね合わせ、その裏面の一部を柔軟シート材25に加熱溶着させて同様の形状に成形する。
さらに、柔軟シート部10bと硬質カバー部10aとを射出成形、又は引き抜き成形によって一体に形成することもできる。
上記実施例によれば市販の廉価な材料を使い、簡単な溶着機を使って簡便に作成できるので、これが一つの望ましい実施の形態である。他方、一体ものにしてこれを引き抜き成形するのが量産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は、農業用ビニールハウスの外観図
【図2】(a)は、実施例の保護カバー平面図、(b)は、図(a)におけるx−x断面図
【図3】(a)は、従来のビニールハウスの一部斜視図、(b)は、図(a)におけるx−x断面図
【図4】は、実施例の保護カバーを装着したビニールハウスのシート受け部材の断面図
【図4−1】は、保護カバーをシート受け部材に装着する装着作業の説明図
【図4−2】(a)は、公知の保護カバーの装着状態を示す斜視図、(b)は、図(a)の保護カバーの断面図
【図5】は、実施例の保護カバー作成方法の一例を模式的に示す説明図
【図6】は、ビニールシート巻き上げ装置を概略的に示す斜視図
【符号の説明】
【0022】
1:骨材
2:梁材
3:シート受け部材
3a:側壁
3e:側壁の先端
4:ビニールシート(透明被覆材)
5:スプリング留め具(弾性留め具)
6:シート受け部材の溝
10:保護カバー
10a:硬質カバー部
10b:柔軟シート部
11:硬質カバー部間の隙間
25:柔軟シート材
26:心材
R:保持ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ビニールハウスの骨材に固定された断面U形のシート受け部材に装着される細長い保護カバーであって、
中央の軟質樹脂製の柔軟シート部と、左右両側の樹脂製硬質カバー部とからなり、
柔軟シート部の左右両側部に左右の硬質カバー部の下面中央部が連結され、柔軟シート部の上に硬質カバー部が重ねられており、
上記硬質カバー部の長さがシート受け部材の長さとほぼ等しい、ビニールシートの保護カバー。
【請求項2】
上記硬質カバー部の幅がシート受け部材の溝の開口幅以上である請求項1のビニールシートの保護カバー。
【請求項3】
上記柔軟シート材の左右両側に帯状心材を巻き込み、長手方向両端を溶着して形成されたものであることを特徴とする請求項1のビニールシートの保護カバー。
【請求項4】
上記柔軟シート部と硬質カバー部とが一体に成形された一体成型品である請求項1のビニールシートの保護カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−112231(P2009−112231A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287750(P2007−287750)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(507365053)
【Fターム(参考)】