説明

農用作業車

【課題】農用作業車においてドラムロータへの草類の巻き付きを少なくする。
【解決手段】除草伝動ケース24の下部に左右ドラムロータ26,26を備えた農用作業車において、高圧水を散布することのできる散布ホース37の終端側を前記左右ドラムロータ26,26の後側上方部位まで延長し、前記散布ホース37の終端から分岐した左右散布ホース37a,37bを前記左右ドラムロータ26,26の後側上部に向けて前下がり傾斜状に前方へ延出してその先端部にノズル40,40を設け、該ノズル40,40により左右ドラムロータ26,26の後部に高圧水を散布するように構成したことを特徴とする農用作業車の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用作業車に関し、特に農用作業車に搭載した除草装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農用作業車の除草装置において、機体の後部にカルチロータを設け、カルチロータの耕耘爪により後方に放擲した土や草類に薬液散布ブームから薬液を散布するようにしたものは、公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−87026号公報(6頁、図2、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景技術の除草装置では、除草ロータから後方に放擲された土や草類に薬液を散布する構成であるので、除草ロータには泥が付着したり雑草類が巻き付き徐々に堆積すると、除草能力が低下し、エンジン負荷率も大きくなり、燃料消費もかさむという不具合が発生する。そこで、この発明は、除草ロータの耕耘部分に直接高圧水を散布することにより、除草ロータに巻き付いた草類を排除し、前記不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、除草伝動ケース(24)の下部に左右ドラムロータ(26),(26)を備えた農用作業車において、高圧水を散布することのできる散布ホース(37)の終端側を前記左右ドラムロータ(26),(26)の後側上方部位まで延長し、前記散布ホース(37)の終端から分岐した左右散布ホース(37a),(37b)を前記左右ドラムロータ(26),(26)の後側上部に向けて前下がり傾斜状に前方へ延出してその先端部にノズル(40),(40)を設け、該ノズル(40),(40)により左右ドラムロータ(26),(26)の後部に高圧水を散布するように構成したことを特徴とする農用作業車とする。
【0005】
前記構成によると、散布ホース(37)の終端から分岐した左右散布ホース(37a),(37b)の終端側は左右ドラムロータ(26),(26)の後側上方部位に位置していて、除草作業をする左右ドラムロータ(26),(26)の後側上部に向けて前下がり傾斜状に前方へ延出している左右散布ホース(37a),(37b)の先端部のノズル(40),(40)から左右ドラムロータ(26),(26)に高圧水が散布され、左右ドラムロータ(26),(26)に巻き付いた草類を排出することができる。
【0006】
請求項2の発明は、前記左右ドラムロータ(26),(26)の左右両側部を背面視で左右両側ほど小径になる小径部(26s)に構成し、終端側の前記左右散布ホース(37a),(37b)を前記左右ドラムロータ(26),(26)の後部に向けて前下がり傾斜状で且つ中央部から左右両側に向けて下り傾斜するように延出してその先端部にノズル(40),(40)を設け、該ノズル(40),(40)から左右ドラムロータ(26),(26)に高圧水を散布するようにしたことを特徴とする請求項1記載の農用作業車とする。
【0007】
前記構成によると、請求項1発明の前記作用に加えて、左右ドラムロータ(26),(26)の後側上部に向けて、前下がり傾斜状で且つ中央部から左右両側に向けて下り傾斜の左右散布ホース(37a),(37b)の先端部のノズル(40),(40)から左右ドラムロータ(26),(26)に高圧水が散布され、左右ドラムロータ(26),(26)に付着した草類は左右両側部の小径部(26s)に向けて排出される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、左右ドラムロータ(26),(26)の草類の巻き付きを少なくし、除草性能の維持を図ることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、前下がり傾斜状で且つ中央部から左右両側に向けて下り傾斜の左右散布ホース(37a),(37b)のノズル(40),(40)から左右ドラムロータ(26),(26)に高圧水が散布されるので、左右ドラムロータ(26),(26)の左右両側部の小径部(26s)に向けて草類を円滑に排出し、草類の巻き付きを少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
農用作業車1の車体フレーム2の前後には左右前輪3,3及び左右後輪4,4を設け、車体フレーム2の前側部にはエンジン(図示省略)を搭載してボンネット6で被覆し、エンジン(図示省略)の動力をミッションケース6内の静油圧式無段変速装置(図示省略)及びギヤ式副変速装置(図示省略)を経由して左右前輪3,3、左右後輪4,4及びPTO軸(図示省略)に伝達している。車体フレーム2のボンネット6の後側部からハンドルポスト8を上方へ延出し、ハンドルポスト8の上部にステアリングハンドル9を設け、ステアリングハンドル9の後方に操縦席10を設けている。ボンネット6の後側部に表示パネル12を設け、ハンドルポスト8の左側には無段変速装置変速用の主変速レバー13aやアクセルレバー13bを設け、操縦席10の右側には散布量等を設定する散布設定器(図示省略)を設けている。車体フレーム2上にはオペレータが足を置くフロア14を設け、フロア14上には左右のブレーキペダル15,15等を設け、操縦席10の左右両側には左右薬液タンク16,16を設けている。
【0010】
車体フレーム2の後部には油圧シリンダ(図示省略)により昇降可能に作業機昇降装置21を設け、この作業機昇降装置21に除草機22を連結している。この除草機22は、農用作業車1のPTO軸(図示省略)から動力が伝達される伝動ボックス23と、伝動ボックス23から後側下方に延出している中央及び左右の除草伝動ケース24,…と、除草伝動ケース24,…の下部に軸架している左右除草軸25,25と、左右除草軸25,25に取り付けられている左右ドラムロータ26,26と、左右ドラムロータ26,26を覆う左右ドラムカバー27,27等で構成している。
【0011】
この左右ドラムロータ26,26について具体的に説明する。左右除草軸25,25の内側寄りの爪ホルダ25aに左右内側ブレード26a,…を取り付けてその先端部を左右外側に屈折し、また、左右除草軸25,25の外側寄りの爪ホルダ25b,…に左右外側ブレード26b,…を取り付けてその先端部を内側に屈折し、左右内側ブレード26a,…の先端屈折部内周面に左右外側ブレード26b,…の先端屈折部外周面を接合している。そして、このような左右内側ブレード26a,…と左右外側ブレード26b,…を回転方向に複数組配設して、除草伝動ケース24の下部左右両側に左右ドラムロータ26,26を構成している。
【0012】
また、除草機22の伝動ボックス23から後下がり傾斜状に中央の除草伝動ケース24を延出し、伝動ボックス23から左右両側に向けて左右除草フレーム23a,23bを延出し、左右除草フレーム23a,23bの左右両側部にはブラケット23c,…を介して、後下がり傾斜状の左右の除草伝動ケース24,24を左右方向に調節自在に取り付け、除草フレーム23a,23bの内部に設けた左右方向に伸縮自在の伝動軸(図示省略)を経由して、左右ドラムロータ26,26に動力を伝達している。そして、これら左右ドラムロータ26,26の後方に尾輪28,…をそれぞれ設けている。
【0013】
次に、除草機22への薬液や水等の散布構成について説明する。
左右薬液タンク16,16の下部を連通パイプ16aで連結し、薬液の左右の偏りを防止している。操縦席10の右側下方にポンプPを配置し、右薬液タンク16の下部から給水パイプ31を経由してポンプPに薬液が送られ、ポンプPから吐出した薬液は、吐出ホース(図示省略)を経由して調圧装置(図示省略)に送られ、調圧装置(図示省略)で調圧された薬液は流量制御弁(図示省略)を経由して吐出し、散布コック(図示省略)、第1散布ホース34、散布マニホールド36に送られる。そして、散布マニホールド36で左右及び中央の散布ホース37,…に分岐されて送られる。そして、左右及び中央の散布ホース37,…の後側端部を左右及び中央の左右ドラムロータ26,…の後側上方部位まで延出し、左右及び中央の除草伝動ケース24,…から後方に向けて延出している延長フレーム42,…の後側端部に散布ホース37,…が取り付けられ、左右及び中央の散布ホース37,…の終端側が左右ドラムロータ26,…の後部に向けて前下がり傾斜状に延出され、散布ホース37,…の後側端部に設けたノズル40,…から薬液が左右ドラムロータ26,26の後部に向けて散布されるように構成している。
【0014】
また、散布マニホールド36を操縦席10の後方に配設し、散布マニホールド36から左右及び中央の散布ホース37,…を支持パイプ41で束ねて作業機昇降装置21の左右一側を通して後方に延出しているので、散布ホース37,…の配索がシンプルとなって接続ミスを防止し、除草機22の昇降の際に作業機昇降装置21との干渉を回避し、中耕除草作業及び薬液散布作業を円滑に行なうことができる。
【0015】
前記構成によると、除草作業中の左右ドラムロータ26,…の後部に薬液や水を散布することができ、除草効果を高めると共に草類の巻き付きを少なくすることができる。
次に、農用作業車1の左右ドラムロータ26,…の草類の除去構成について説明する。
【0016】
左右ドラムロータ26,…を備えた農用作業車において、図2に示すように、左右薬液タンク16,16に水を投入し、ポンプPから高圧水を吐出し、吐出ホース(図示省略)、調圧装置(図示省略)で高圧に調圧された高圧水を流量制御弁(図示省略)、第1散布ホース34、散布マニホールド36を経由して散布ホース37,…に送る。そして、散布ホース37,…の左右終端側部37a,37bを左右ドラムロータ26,…の後側上部に向けて、前下がり傾斜で且つ内側から左右両外側に下り傾斜するように延出し、先端のノズル40,…から左右ドラムロータ26,…の左右全幅に向けて高圧水を散布する。
【0017】
例えば大豆の畦間を連続して左右ドラムロータ26,…により除草作業をすると、ドラムロータ26のブレード26a,26bに泥が付着したり、切断された草類が巻き付く。そして、これが徐々に堆積すると、除草能力が低下し、エンジン負荷率も大きくなり、燃料消費もかさむという不具合が発生する。
【0018】
しかし、前記構成によると、左右ドラムロータ26,…に草類が堆積すると、散布ホース37,…のノズル40,…から左右ドラムロータ26,…の略左右全幅に向けて前下がり傾斜方向で且つ内側から左右両側に下り傾斜方向の高圧水を散水することにより、左右ドラムロータ26,…から草類の排出を促進することができる。
【0019】
また、図3に示すように左右ドラムロータ26,26を構成してもよい。左右ドラムロータ26,26のブレード26m,…を背面視U字型に屈曲した構成とし、このブレード26m,…の両端部を左右除草軸25,25の左右両側の爪ホルダ26c,26eに取り付け、左右ブレード26m,…の内側寄りを背面視で緩傾斜状に外側ほど小径にした内側緩傾斜状部26rとし、左右ブレード26m,…の外側寄りを背面視で急傾斜状に外側ほど小径にした外側急傾斜状の小径部26sに構成する。そして、左右ブレード26m,…の回転前側に刃部26tを形成し、左右ブレード26m,…の刃部26tを平面視で左右外側ほど回転方向下手側に緩く傾斜するように構成している。
【0020】
前記構成によると、左右ドラムロータ26,…の後側左右両側部に向けてノズル40,…から前下がり傾斜方向で且つ内側から左右両側に下り傾斜方向の高圧水を散水することにより、左右ドラムロータ26,…の左右両側の小径部26sに向けて草類を排出できて絡み付きが少なくなり、除草性能の維持を図りながらメンテナンス作業を楽にすることができる。
【0021】
次に、図4に基づき左右薬液タンク16の他の実施形態について説明する。
操縦席10の左右両側に左右薬液タンク16,16を独立して設け、左右薬液タンク16,16の操縦席10側の内側面には、上側ほど内側に上り傾斜で操縦席10側に向い、且つ、タンク側面よりも内側に突出するように左右ドリンクホルダ46,46を一体成形して設けている。また、左右ドリンクホルダ46,46の上方には開閉自在の蓋47を設け、ドリンクホルダ46,46の最下端部には水抜き孔46aを設けている。
【0022】
前記構成によると、左右薬液タンク16,16の容量を大きく構成しながらデザインを向上させ、また、部品点数を少なくし組立て工数を削減することができる。また、左右方向薬液タンク16,16への薬液投入時にこぼれても、左右ドリンクホルダ46,46やペットボトル48に薬液がかかりにくく衛生上良好であり、また、農用作業車1を洗車した際にも左右ドリンクホルダ46,46への水の溜りを防止し、衛生状態を良好に保持することができる。
【0023】
次に、図5について説明する。この実施形態は、左右薬液タンク16,16とドリンクホルダ46,46とを分割構成し、左右薬液タンク16,16の操縦席10側の側面にはナット49,…を上下数段にわたり埋設し、ドリンクホルダ46の取付板46aを取付ネジ50、…により上下調節自在に取り付け、左右薬液タンク16,16の左右いずれの側へもペットボトル48を入れることができ、ペットボトル48の取出取入を容易にしている。また、薬液タンク16の操縦席10側の側面にはドリンクホルダ46の側方には液面計51を設け、オペレータが運転中に薬液の残量を容易に確認できるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】農用作業車の側面図。
【図2】農用作業車の背面図。
【図3】除草機の背面図。
【図4】農用作業車の背面図、薬液タンクの一部側面を示す図。
【図5】薬液タンクの斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1 農用作業車
24 除草伝動ケース
26 ドラムロータ
26s 小径部
37 散布ホース
37a 左散布ホース
37b 右散布ホース
40 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草伝動ケース(24)の下部に左右ドラムロータ(26),(26)を備えた農用作業車において、高圧水を散布することのできる散布ホース(37)の終端側を前記左右ドラムロータ(26),(26)の後側上方部位まで延長し、前記散布ホース(37)の終端から分岐した左右散布ホース(37a),(37b)を前記左右ドラムロータ(26),(26)の後側上部に向けて前下がり傾斜状に前方へ延出してその先端部にノズル(40),(40)を設け、該ノズル(40),(40)により左右ドラムロータ(26),(26)の後部に高圧水を散布するように構成したことを特徴とする農用作業車。
【請求項2】
前記左右ドラムロータ(26),(26)の左右両側部を背面視で左右両側ほど小径になる小径部(26s)に構成し、終端側の前記左右散布ホース(37a),(37b)を前記左右ドラムロータ(26),(26)の後部に向けて前下がり傾斜状で且つ中央部から左右両側に向けて下り傾斜するように延出してその先端部にノズル(40),(40)を設け、該ノズル(40),(40)から左右ドラムロータ(26),(26)に高圧水を散布するようにしたことを特徴とする請求項1記載の農用作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−29140(P2010−29140A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196556(P2008−196556)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】