説明

農用車輪

【課題】スポークの本数を増加させることなく高い強度が得られる農用車輪を提供する。
【解決手段】農用車輪1は、円環状のリム4と、一端が記リムに接続され他端がリムの内側に向けて延びた複数のスポーク5,5,5と、リムの内側においてスポークの他端を接続するボス7と、を有し、スポークは、リムとボスとの間において溶接線を増加させ、断面積を増加させて生ずる圧縮応力を減少させることを期待して、ボスの軸心方向に2股に分かれてボスに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理機、田植機等の農用機械に装着される農用車輪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農用車輪においては、基本的に管を環状としたリム、円管で形成されたスポーク、それぞれのスポーク管を連結する補強板、および車軸に取り付けるためのボス等で構成されており、これらの各部材は溶接等によって接合され一体化されていた(特許文献1)。
このようなスポークを有する農用車輪は、装着される農用機械の重量が大きくなると、その重量を支持するために管スポークの肉厚を増すことにより対応することになる。しかし、管スポークの肉厚の増加では重量の増加に対応しきれない場合には、スポークの本数を増加させて各スポークの負担を軽減させ、または補強板の形状を見直して補強板を含めたスポークの補強を行う等の方法を採用することが考えられる。
【特許文献1】特開平7−47813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、リムを覆う弾性体を加硫成形するゴム型は、予め鉄車における決められたスポーク本数に合わせてスポークとゴム型との合致部分が形成されていることから、スポークの本数を増加させる方法、つまり装着される農用機械の重量に対応して任意に農用車輪のスポークの本数を変更する方法は、ゴム型をいくつも用意する必要があることから、実現が困難であった。
また、補強板の形状を見直す方法では、スポークの強度補強のためには補強板における圧縮応力または引張応力が生ずる断面積の増加、つまり回転軸方向からみた面積を増加させることとなる。しかし、補強板の面積の増加は、圃場での走行時に農用車輪に泥溜まりを発生させるおそれがあり、採用することが容易ではない。
【0004】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、スポークの本数を増加させることなく高い強度が得られる農用車輪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る農用車輪は、円環状のリムと、一端が前記リムに接続され他端が前記リムの内側に向けて延びた複数のスポークと、前記リムの内側において前記スポークの前記他端を接続するボスと、を有し、前記スポークは、前記リムと前記ボスとの間で前記ボスの軸心方向に2股に分かれて前記ボスに接続されている。
前記農用車輪は、前記スポークにおける前記リムとの接続部分から前記2股に分かれる部分までが、真っ直ぐな断面半円形の2つの部材の平周面が合わされて形成されまたは断面円形の中実棒で形成される。
【0006】
好ましくは、前記農用車輪は、前記スポークが、断面形状が半円形の2つの部材が平周面を対向させて合わされて形成され、または前記スポークにおける前記リムとの接続部分から前記2股に分かれる部分までが真っ直ぐな断面円形の中実棒でおよび前記2股に分かれた部分から前記ボスに接続された部分までがそれぞれ断面半円形の部材の平周面を対向させて形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、スポークの本数を増加させることなく高い強度が得られる農用車輪を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は農用車輪1の正面図、図2は図1におけるA−A矢視断面図である。
以下の説明において、農用車輪1の半径方向を半径方向または径方向、農用車輪1が回転する方向を周方向、および農用車輪1の回転中心が延びる方向を軸方向または幅方向という。
農用車輪1は、軟弱地盤を走行する田植機等に装着されるものであり、鉄車2および弾性輪体3からなる。
鉄車2は、リム4、3つのスポーク5,5,5、連結板6およびボス7等からなる。
【0009】
リム4は、金属製の管が円環状に曲げられ、両端が溶接等により接続されたものである。リム4は、金属製の板が所定の形状にプレスされて円環状に曲げられ、両端が溶接等により接続されたものであってもよい。
スポーク5は、断面形状が半円形であって所定の形状に曲げられた2本の金属製の管11,11(それぞれ以下「半円管11」という)が組み合わされて形成される。
半円管11は、一端から真っ直ぐに伸び所定の長さM(mm)を有するリム連結部12、リム連結部12から湾曲する周面13(側面、以下「湾曲周面13」という)側に折れて真っ直ぐに伸びる中間部14、および中間部14から平らな周面15(側面、以下「平周面15」という)側に折れて他端まで真っ直ぐに伸びるボス連結部16からなる。半円管11は、ボス連結部16の軸心の延長線が、リム連結部12の軸心と平行になるように曲げられている。
【0010】
2本の半円管11,11は、それぞれのリム連結部12,12における平周面15,15が合わされ、平周面15,15の長手方向に伸びた両端縁(平周面15と湾曲周面13との交線)同士が溶接W1,W1により一体化されてスポーク5を形成している。スポーク5は、中間部14,14からボス連結部16,16の側において、2股に分れている(図2(a),(c)参照)。
スポーク5,5,5は、農用車輪1の回転中心から放射状にそれぞれ120度間隔で、いずれもリム連結部12,12側の端がリム4の内周側に溶接で接続され、ボス連結部16,16側の端がボス7に溶接により固定されている。なお、ボス7へのスポーク5の固定は、ボス連結部16,16のそれぞれの端部がボス7の軸心方向に並ぶようにして行われている。2本の半円管11,11におけるそれぞれのボス連結部16,16は、これらの湾曲周面13,13がボス7の軸方向に互いに距離F(mm)離されて、ボス7に固着される。
【0011】
連結板6は、円形の金属製厚板で形成される。連結板6には、その中心から120度間隔で放射状に伸びる断面が半円形の凹状の3つの半円管嵌入溝17,17,17が設けられている。半円管嵌入溝17の内面の曲率半径は、半円管11における湾曲周面13の曲率半径(半径)に略等しい。連結板6は、中心にボス7の外径に略等しい孔を有する。
連結板6は、この中心に設けられた孔にボス7を貫通させ、それぞれの半円管嵌入溝17,17,17にスポーク5,5,5の湾曲周面13側が嵌め入れられて、ボス7およびスポーク5,5,5に、溶接により固定されている。
【0012】
弾性輪体3は、リム4にゴム等の弾性材料を被覆して焼き付け(加硫接着)することにより形成され、全体として円環状の形状を有する。弾性輪体3は、周方向に等間隔に複数のラグ18,…,18を備える。
農用車輪1は、スポーク5が2つの半円管11,11を組み合わせて形成され、かつボス7との接続部分近傍で2股に分けられて、リム4から加えられる農用機械の荷重による負荷を2分化する。また、農用車輪1は、スポーク5とボス7との溶接箇所W2,W3を増加させることにより、スポーク5とボス7との溶接部に掛かる外力(左右、上下、前後)のそれぞれに動きの抑制をすることができ、鉄車2の強度を上げることができる。
【0013】
農用車輪1において、ボス連結部16,16におけるそれぞれの湾曲周面13,13の距離F(mm)(以下「2股幅F」という)は、弾性輪体3の軸方向幅G(mm)との関係において、0.7G≦F≦3.0Gとするのが好ましい。2股幅FがF<0.7Gの場合、2股幅Fの距離が小さくなってスポーク5の踏ん張りが利きにくくなり、鉄車2の十分な補強効果が発揮されない。逆に、F>3.0Gになると、2股幅Fの距離が過大になり、リム4からの圧縮力に対してスポーク5(半円管11,11)の屈曲部分19,19,20,20に応力が集中しやすくなり、鉄車2は充分な強度を確保することができない。また、半円管11,11とボス7との固着部分の軸方向距離が大幅に広がることは、農用機械への取付が困難になる等の問題を生じさせる。
【0014】
農用車輪1において、スポーク5におけるリム連結部12と中間部14との境界からボス7の軸心までの距離H(以下「2股高さH」という)は、弾性輪体3の接地面とボス7の軸心までの距離I(農用車輪1の半径である、以下「車輪半径I」という)との関係において、0.3I≦H≦0.7Iとするのが好ましい。
ここで、「スポーク5におけるリム連結部12と中間部14との境界」とは、半円管11のリム接続部12および中間部14の湾曲周面13における農用車輪1の軸方向の最も外側のそれぞれの母線が交わる部分(点)を含む周方向に広がる仮想周面をいう。
【0015】
スポーク5とボス7との溶接部W3は、応力が集中することにより破損(折れ)が生じ易い。2股高さ(H)が車輪半径Iに対してH<0.3Iになると、スポーク5の屈曲部分19,19と、スポーク5およびボス7の溶接部W3との距離が近くなることで溶接部W3に応力が集中しやすくなり充分な強度を確保できない。
逆に、2股高さ(H)が車輪半径Iに対してH>0.7Iとなると、今度は弾性輪体3内に埋設されているリム4とスポーク5との溶接部分W2,W2に応力が集中することで、充分な強度を確保できない。
【0016】
従来、農用車輪においては、溶接により接合された部分で破損が生じることが多かった。上述したように、0.3I≦H≦0.7Iとすることにより、農用車輪1では、スポーク5を2つの半円管11,11で形成することによりリム4から加えられる農用機械の荷重による負荷をそれぞれの半円管11,11に分散させ、溶接部分W2,W2(およびW3,W3)への負荷を減少させることができる。
また、スポーク5は、従来の円管で形成されたスポークに比べて半円管11,11における平周面15,15の部分が補強された形態(断面積の増加)となる。特に、リム連結部12,12は、それぞれの平周面15,15同士が合わされて溶接により固着されており、パイプ中央に半円状の壁が形成された部分の動きが抑制されることで更に強度が増加されている。
【0017】
図3は他の農用車輪1Bにおける図2に対応する矢視断面図である。
農用車輪1Bは、鉄車2Bおよび弾性輪体3からなる。
鉄車2Bは、リム4、3つのスポーク5B、連結板6およびボス7等からなる。
農用車輪1Bにおける弾性輪体3、ならびに鉄車2Bを形成するリム4、連結板6およびボス7等は、農用車輪1におけるものと同一である。
スポーク5Bは、断面形状が半円形であって所定の形状に曲げられた2本の金属製の半円管11B,11Bと真っ直ぐな丸棒(この部分を「丸棒部21B」という)とが組み合わされて形成される。
【0018】
半円管11B,11Bを形成する部材は、スポーク5における断面形状が半円形である半円管11と同じである。半円管11Bは、一端から真っ直ぐに伸びた中間部14、および中間部14から平周面15側に折れて他端まで真っ直ぐに伸びるボス連結部16からなる。
2本の半円管11B,11Bは、それぞれの中間部14,14の端部における平周面15,15の端縁同士が合わされ、丸棒部21Bの平らな端面に溶接によって一体化されている。なお、2本の半円管11B,11Bにおける中間部14,14の端部は、円柱状の丸棒部21Bの底面に接合可能なように1つの仮想平面内に収められている。
【0019】
丸棒部21Bは、所定の長さM(mm)を有する。
半円管11B,11Bと丸棒部21Bとの接合は、それぞれのボス連結部16,16の中間部14,14側延長線が、丸棒部21Bの軸心と平行になるようにして行われる。したがって、スポーク5Bにおいては、半円管11B,11Bのそれぞれのボス連結部16,16は平行関係を有する。
スポーク5Bは、農用車輪1Bの回転中心から放射状にそれぞれ120度間隔で、いずれも丸棒部21B側の端がリム4の内周側に溶接で接続され、ボス連結部16,16側の端がボス7に溶接により固定されている。それぞれのスポーク5Bでは、2本の半円管11B,11Bにおけるボス連結部16,16は、ボス7の軸方向に、互いの湾曲周面13,13が距離F(mm)離されてボス7に固着されている。
【0020】
農用車輪1Bにおいても、農用車輪1と同様に、2股幅Fは、弾性輪体3の軸方向幅G(mm)との関係において、0.7G≦F≦3.0Gとするのが好ましい。また、丸棒部21Bと半円管11B,11Bとの接合部分からボス7の軸心までの距離H(以下「2股高さH」という)は、車輪半径Iとの関係において、0.3I≦H≦0.7Iとするのが好ましい。
スポーク5Bでは、それぞれの半円管11B,11Bの中間部14は、その軸心が丸棒部21Bの軸心に対して傾斜させて丸棒部21Bに接合されている。また、農用機械の荷重に対する路面からの反力は、この半円管11B,11Bと丸棒部21Bとの接合部分で半円管11B,11Bに対する曲げモーメントを生じさせることから、上記のように2股高さHを規定する。
【0021】
農用車輪1Bは、スポーク5Bにおけるリム4との接続部分が無垢の丸棒(丸棒部21B)で、他の部分が半円状のパイプ(半円管11B,11B)で形成され、丸棒部21Bと半円管11B,11Bとが溶接W4により固定されている。このことにより、半円管11B,11Bの曲げ加工位置20,20がそれぞれ1箇所のみになって加工が容易になり、また、無垢部分(丸棒部21B)の強度を上げることができる。
さらには、リム4は、無垢の丸棒(丸棒部21B)に溶接されることで、パイプをリム4に溶接する場合に比べ、容易に作業することができる。
【0022】
図4は他の農用車輪1Cにおける図2に対応する矢視断面図である。
農用車輪1Cは、鉄車2Cおよび弾性輪体3からなる。
鉄車2Cは、リム4、3つのスポーク5C、連結板6Cおよびボス7等からなる。
農用車輪1Cにおける弾性輪体3、ならびに鉄車2Cを形成するリム4およびボス7等は、農用車輪1におけるものと同一である。
スポーク5Cは、断面形状が半円形で真っ直ぐに伸びた金属製の半円管11Cと、この半円管11Cが所定の形状に曲げられた半円管11とが組み合わされて形成される。
【0023】
スポーク5Cを形成する一方の半円管11は、農用車輪1におけるスポーク5を形成する半円管11と同一であり、リム連結部12、中間部14およびボス連結部16を有する。
半円管11,11Cは、半円管11のリム連結部12における平周面15と半円管11Cにおける平周面15Cとが、半円管11のリム連結部12側端と半円管11Cの一方の端とを揃えた状態で合わされ、平周面15,15Cの長手方向に伸びた両端縁同士が溶接W1,W1により固着されている。
【0024】
スポーク5Cは、農用車輪1の回転中心から放射状にそれぞれ120度間隔で、いずれもリム連結部12側の端がリム4の内周側に溶接で接続され、ボス連結部16側の端がボス7に溶接により固定されている。ボス7へのスポーク5Cの固定は、半円管11,11Cのそれぞれの端部がボス7の軸心方向に並ぶようにして行われている。2本の半円管11,11Cにおけるそれぞれのボス7への連結部分は、ボス7の軸方向に距離F(mm)(以下「2股幅F」という)離されている。
農用車輪1Cにおいて、2股幅Fは、弾性輪体3の軸方向幅G(mm)との関係において、0.7G≦F≦3.0Gとするのが好ましい。
【0025】
農用車輪1Cにおいて、半円管11Cにおけるリム連結部12と中間部14との境界からボス7の軸心までの距離H(以下「2股高さH」という)は、車輪半径Iとの関係において、0.3I≦H≦0.7Iとするのが好ましい。
なお、「リム連結部12と中間部14との境界」の概念は、農用車輪1におけるものと同じである。
連結板6Cは、円形の金属製厚板で形成されている。連結板6Cは、農用車輪1における連結板6と同様の3つの半円管嵌入溝17Cおよび中心の孔を備えている。連結板6Cは、半円管11の屈曲部分20を被覆可能とするために、連結板6よりも径が大きく、かつ外周近傍で一方の面側にプレス加工により、半円管1における中間部14とボス連結部16とがなす角度と同一の角度で傾斜が設けられている。連結板6Cは、鉄車2Cにおいてスポーク5Cの半円管11C側に、半円管嵌入溝17Cにスポーク5Cの一部が嵌め入れられて、溶接によりボス7およびスポーク5Cに、固定されている。
【0026】
図5は他の農用車輪1Dにおける図2に対応する矢視断面図である。
農用車輪1Dは、鉄車2Dおよび弾性輪体3からなる。
鉄車2Dは、リム4、3つのスポーク5D、連結板6Dおよびボス7等からなる。
農用車輪1Dにおける弾性輪体3、ならびに鉄車2Dを形成するリム4およびボス7等は、農用車輪1におけるものと同一である。
スポーク5Dは、金属で形成された管状の同一形状を有する2つの管部材11D,11Dにより構成される。管部材11Dは、一端から真っ直ぐに伸び所定の長さM(mm)を有する断面形状が半円形のリム連結部12、リム連結部12に連続し湾曲する湾曲周面13側に折れて真っ直ぐに伸びて断面形状が半円形から徐々に円形に変化する中間部14D、および中間部14Dに連続しリム連結部12における平周面15側に折れて他端まで真っ直ぐに伸びる断面形状が円形のボス連結部16Dからなる。管部材11Dは、ボス連結部16Dの軸心の延長線が、リム連結部12の軸心と平行になるように曲げられている。
【0027】
2本の管部材11D,11Dは、それぞれのリム連結部12,12における平周面15,15が合わされ、平周面15,15の長手方向に伸びた両端縁同士が溶接W1,W1により一体化されてスポーク5Dを形成している。スポーク5Dは、中間部14D,14Dからボス連結部16D,16Dの側において、2股に分れている(図5(a),(c)参照)。
スポーク5Dは、農用車輪1Dの回転中心から放射状にそれぞれ120度間隔で、いずれもリム連結部12,12側の端がリム4の内周側に溶接で接続され、ボス連結部16D,16D側の端がボス7に溶接により固定されている。ボス7へのスポーク5Dの固定は、ボス連結部16D,16Dのそれぞれの端部がボス7の軸心方向に並ぶようにして行われている。2本の管部材11D,11Dにおけるボス連結部16D,16Dは、それぞれの互いに外方となる周面が距離F(mm)(以下「2股幅F」という)離されてボス7に固着されている。
【0028】
農用車輪1Dにおいて、2股幅Fは、弾性輪体3の軸方向幅G(mm)との関係において、0.7G≦F≦3.0Gとするのが好ましい。また、スポーク5Dにおけるリム連結部12と中間部14Dとの境界からボス7の軸心までの距離H(以下「2股高さH」という)は、車輪半径Iとの関係において、0.3I≦H≦0.7Iとするのが好ましい。
連結板6Dは、円形の金属製厚板で形成されている。連結板6Dは、半円管嵌入溝17Dの内面の曲率半径が、管部材11Dにおけるボス連結部16Dの曲率半径(半径)に略等しい点を除き、農用車輪1における連結板6と同じである。
【0029】
図6は他の農用車輪1Eにおける図2に対応する矢視断面図である。
農用車輪1Eは、鉄車2Eおよび弾性輪体3からなる。
鉄車2Eは、リム4、3つのスポーク5E、連結板6Dおよびボス7等からなる。
農用車輪1Eにおける弾性輪体3、ならびに鉄車2Eを形成するリム4、連結板6Dおよびボス7等は、農用車輪1Dにおけるものと同一である。
スポーク5Eは、金属で形成された管状の同一形状を有する2つの管部材11E,11Eと真っ直ぐな丸棒(以下「丸棒部21B」という)とが組み合わされて形成される。
【0030】
管部材11Dは、端面形状が半円形であって真っ直ぐに伸びて徐々に断面形状が円形に変化する中間部14D、および中間部14Dに連続しリム連結部12の端面における円弧状端縁側に折れて他方の端まで真っ直ぐに伸びる断面形状が円形のボス連結部16Dからなる。管部材11Dは、農用車輪1Dのスポーク5Dにおける管部材11Dからリム連結部12を切り取った形態を有する。
2本の管部材11E,11Eは、それぞれの中間部14D,14Dの半円形端面における弦に相当する端縁同士が合わされて、丸棒部21Bの(平らな)端面に溶接によって一体化されている。なお、2本の管部材11E,11Eにおける中間部14D,14Dの半円形を有する端面は、円柱状の丸棒部21Bの底面に接合可能なように1つの仮想平面内に収められている。
【0031】
また、この管部材11E,11Eと丸棒部21Bとの一体化は、それぞれのボス連結部16D,16Dの中間部14D,14D側延長線が、丸棒部21Bの軸心と平行になるようにして行われ、ボス連結部16D,16D同士は平行となっている。
なお、丸棒部21Bは、農用車輪1Dのスポーク5Dにおける丸棒部21Bと同一であり、所定の長さM(mm)を有する。
3つのスポーク5Eは、農用車輪1Eの回転中心から放射状にそれぞれ120度間隔で、いずれもリ丸棒部21B側の端がリム4の内周側に溶接で接続され、ボス連結部16D,16D側の端がボス7に溶接により固定されている。それぞれのスポーク5Eでは、2本の管部材11E,11Eにおけるボス連結部16D,16Dは、それぞれの互いに外方となる周面が距離F(mm)(以下「2股幅F」という)離されてボス7に固着されている。
【0032】
農用車輪1Bにおいて2股幅Fは、弾性輪体3の軸方向幅G(mm)との関係において、0.7G≦F≦3.0Gとするのが好ましい。また、丸棒部21Bと管部材11E,11Eとの接合部分からボス7の軸心までの距離H(以下「2股高さH」という)は、車輪半径Iとの関係において、0.3I≦H≦0.7Iとするのが好ましい。
図7は他の農用車輪1Fにおける図2に対応する矢視断面図である。
農用車輪1Fは、鉄車2Fおよび弾性輪体3からなる。
鉄車2Fは、リム4、3つのスポーク5F、連結板6Dおよびボス7等からなる。
【0033】
農用車輪1Fにおける弾性輪体3、ならびに鉄車2Fを形成するリム4、連結板6Dおよびボス7等は、農用車輪1Dにおけるものと同一である。
スポーク5Fは、金属で形成された管状の2つの管部材11D,11Fにより構成される。管部材11Dは、農用車輪1Dのスポーク5Dを形成する管部材11Dと同一の構成を有し、一端から真っ直ぐに伸びた断面形状が半円形のリム連結部12は、所定の長さM(mm)を有する。
管部材11Fは、一端から真っ直ぐに伸び断面形状が半円形のリム連結部12、リム連結部12に連続する部分でその軸心が平周面15側に僅かに折れて真っ直ぐに伸び徐々に断面形状が円形に変化する中間部14F、および中間部14Fに連続しその軸心がリム連結部12の軸心の延長線に平行となってボス7まで真っ直ぐに伸びる断面形状が円形のボス連結部16Fからなる。
【0034】
2本の管部材11D,11Fは、それぞれのリム連結部12,12における平周面15,15が合わされ、平周面15,15の長手方向に伸びた両端縁同士が溶接W1,W1により一体化されてスポーク5Fを形成している。スポーク5Fは、中間部14D,14Fからボス連結部16D,16Fの側において、2股に分れている(図7(a),(c)参照)。
スポーク5Fは、農用車輪1Fの回転中心から放射状にそれぞれ120度間隔で、いずれもリム連結部12,12側の端がリム4の内周側に溶接で接続され、ボス連結部16D,16F側の端がボス7に溶接により固定されている。2本の管部材11D,11Fにおけるそれぞれのボス連結部16D,16Fは、軸方向においてそれぞれの互いに外方となる周面が距離F(mm)(以下「2股幅F」という)離されてボス7に固着されている。
【0035】
農用車輪1Fにおいて、2股幅Fは、弾性輪体3の軸方向幅G(mm)との関係において、0.7G≦F≦3.0Gとするのが好ましい。また、スポーク5Fにおけるリム連結部12と中間部14D,14Fとの境界からボス7の軸心までの距離H(以下「2股高さH」という)は、車輪半径Iとの関係において、0.3I≦H≦0.7Iとするのが好ましい。
なお、スポーク5Fにおけるリム連結部12と中間部14D,14Fとの境界は、図7において符合19D,19Fを付した部分であり、中間部14D,14Fとボス連結部16D,16Fとの境界は、図7において符合20D,20Fを付した部分である。
【0036】
スポーク5,5B〜5Fを2股にした農用車輪1,1B〜1Fは、例えば、半円スポーク(半円管11,11B,11C、管部材11D〜11F)のリム連結部12,12を合わせてリム4に連結される部分の円形断面の径、または無垢の丸棒(丸棒部21B)の径を、従来の農用車輪のスポークと同一の径に合わせることで、従来のモールドをそのまま使用できる等のメリットがあり、新規設計のモールド改造等をすることがなく、製品の強度アップを図ることができる。
なお、農用車輪1,1B〜1Fは、スポーク5,5B〜5Fにおけるボス連結部16,16D,16Fを2股形状とすることにより、従来の農用車輪に対してスポークの本数を増加させることなく高い強度を得るものである。
【0037】
上述の実施形態において、スポーク5,5B〜5Fにおける半円管11,11B,11Cの中間部14、および管部材11D,11E,11Fの中間部14D,14Fの断面形状を、上記以外の他の形状とすることができる。また、リム連結部12は、従来の農用車輪のスポーク断面の形状が円形であることを想定し、従来の加硫成形用金型を流用可能とするために断面形状を半円形とした。しかし、リム連結部12の断面形状も半円形に限られず、リム4に接続される近傍の断面形状を、2つの半円管11,11B,11C等のリム連結部を合わせて従来の農用車輪のスポーク断面形状となるように形成しても、従来の加硫成形用金型を流用することができる。
【0038】
半円管11,11B,11Cおよび管部材11D,11E,11Fを、中空の管ではなく中実の棒状物で形成してもよい。
また、農用車輪1,1B〜1Fを、いずれもスポーク5,5B〜5Fを3つ有するものとして説明したが、スポーク5,5B〜5Fの数は3つに限られず、農用車輪をより多くのスポークを有するものとして構成してもよい。
その他、農用車輪1,1B〜1F、および農用車輪1,1B〜1Fの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、管理機、田植機等の農用機械に装着される農用車輪にに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は農用車輪の正面図である。
【図2】図2は図1におけるA−A矢視断面図である。
【図3】図3は他の農用車輪における図2に対応する矢視断面図である。
【図4】図4は他の農用車輪における図2に対応する矢視断面図である。
【図5】図5は他の農用車輪における図2に対応する矢視断面図である。
【図6】図6は他の農用車輪における図2に対応する矢視断面図である。
【図7】図7は他の農用車輪における図2に対応する矢視断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1,1B,1C,1D,1E,1F 農用車輪
4 リム
5,5B,5C,5D,5E,5F スポーク
7 ボス
11,11B,11C 断面半円形の部材(半円管)
11D,11E,11F 断面半円形の部材(管部材)
15,15C 平周面
21B 中実棒(丸棒部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のリムと、
一端が前記リムに接続され他端が前記リムの内側に向けて延びた複数のスポークと、
前記リムの内側において前記スポークの前記他端を接続するボスと、を有し、
前記スポークは、前記リムと前記ボスとの間で前記ボスの軸心方向に2股に分かれて前記ボスに接続された
ことを特徴とする農用車輪。
【請求項2】
前記スポークにおける前記リムとの接続部分から前記2股に分かれる部分までが、真っ直ぐな断面半円形の2つの部材の平周面が合わされて形成されまたは断面円形の中実棒で形成された
請求項1に記載の農用車輪。
【請求項3】
前記スポークは、
断面形状が半円形の2つの部材が平周面を対向させて合わされて形成され、または前記スポークにおける前記リムとの接続部分から前記2股に分かれる部分までが真っ直ぐな断面円形の中実棒でおよび前記2股に分かれた部分から前記ボスに接続された部分までがそれぞれ断面半円形の部材の平周面を対向させて形成された
請求項1に記載の農用車輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−298252(P2009−298252A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153797(P2008−153797)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)