説明

農薬または防疫用薬剤組成物

【課題】向上した物性を発揮すること、有効成分が安定化されること、有効成分の効力が増強されること、適用対象となる環境に対して効率よく作用することの少なくともいずれかを達成しうる、農薬または防疫用薬剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分と、(B)平均重合度が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率と、セルロースII型結晶成分の分率と、セルロース非結晶成分の分率との和が1であり、該セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、該セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒子径が5μm以下であるセルロース微粒子と、を含有した、農薬または防疫用薬剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬または防疫用薬剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農薬組成物または防疫用薬剤組成物においては、主成分はもとより、該農薬または防疫用薬剤に配合されている補助剤についても、速やかに分解することが要求されている。前記補助剤として、例えば、高分子化合物などが用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の農薬組成物または防疫用薬剤組成物に配合されている高分子化合物のうち、合成高分子化合物は、生分解性が天然高分子化合物に比べて低いという欠点がある。
【0004】
また、従来の農薬組成物または防疫用薬剤組成物に配合されている高分子化合物のうち、天然高分子化合物は、生分解性に優れるものの、製剤物性の改良、有効成分の安定化、有効成分の効力増強などについて、十分な効果を得ることが困難であるという欠点がある。
【0005】
前記天然高分子化合物を含有した農薬組成物または防疫用薬剤組成物として、例えば、セルロース粉末を含有した農薬粉状組成物などが知られている(特許文献1)。前記特許文献1に記載の農薬粉状組成物は、製造時において、吸水性担体粉末としてのセルロース粉末を用いることにより、水難溶性の固体農薬活性成分を湿式粉砕して得られた水性微粒子懸濁液を混合均一化し、生物活性を増強するものである。しかしながら、前記特許文献1に記載の農薬粉状組成物は、増粘効果、分散安定効果、乳化効果、結合効果、固着効果を発揮しにくいという欠点がある。
【特許文献1】特開平9−235203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記欠点に鑑みてなされたものであり、向上した物性を発揮すること、有効成分が安定化されること、有効成分の効力が増強されること、適用対象となる環境に対して効率よく作用することの少なくともいずれかを達成しうる、農薬または防疫用薬剤組成物を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の要旨は、
〔1〕 (A)農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分と、
(B)平均重合度が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率と、セルロースII型結晶成分の分率と、セルロース非結晶成分の分率との和が1であり、該セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、該セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒子径が5μm以下であるセルロース微粒子と、
を含有した、農薬または防疫用薬剤組成物、
〔2〕 25℃における粘度が、少なくとも10000mPa・sである、前記〔1〕記載の農薬または防疫用薬剤組成物、
〔3〕 非イオン界面活性剤をさらに含有した、前記〔1〕または〔2〕記載の農薬または防疫用薬剤組成物、ならびに
〔4〕 非イオン界面活性剤が、HLB値1〜20で、かつ炭素数20〜188のショ糖脂肪酸エステルである、前記〔3〕記載の農薬または防疫用薬剤組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物によれば、向上した物性を発揮すること、有効成分が安定化されること、有効成分の効力が増強されること、適用対象となる環境に対して効率よく作用することの少なくともいずれかが達成されるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、1つの側面では、(A)農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分と、
(B)平均重合度が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率と、セルロースII型結晶成分の分率と、セルロース非結晶成分の分率との和が1であり、該セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、該セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒子径が5μm以下であるセルロース微粒子とを含有した、農薬または防疫用薬剤組成物に関する。
【0010】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物は、平均重合度が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率と、セルロースII型結晶成分の分率と、セルロース非結晶成分の分率との和が1であり、該セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、該セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒子径が5μm以下であるセルロース微粒子を含有していることに1つの大きな特徴がある。前記セルロース微粒子を構成するセルロースは、環境中で速やかに分解され、かつヒトに対して優れた安全性を示す点で有利である。
【0011】
本発明に用いられるセルロース微粒子の平均重合度は、セルロースを微粒化し、増粘効果、分散安定効果、乳化効果、結合効果、固着効果、効力増強効果などを十分に発揮させる観点から、100以下であり、好ましくは、50以下であり、セルロースの非水溶性を発揮させる観点から、10を超える数値であり、好ましくは、20以上であることが望ましい。
【0012】
前記「増粘効果」とは、農薬または防疫用薬剤組成物の粘度を増加させる効果をいい、これにより、分散安定性と乳化安定性を付与する。また、前記「分散安定効果」とは、農薬または防疫用薬剤組成物中に固体有効成分(例えば、融点40℃以上で、25℃での水に対する溶解度が0.1%以下である有効成分)が含まれる場合に、該固体有効成分を均一に分散させ、該農薬または防疫用薬剤組成物の保存中における該固体有効成分の沈殿や分離を実質的に防止する効果をいう。前記「乳化効果」とは、農薬または防疫用薬剤組成物中に油性液体有効成分が含まれる場合に、該油性液体有効成分を均一に乳化させ、該農薬または防疫用薬剤組成物の保存中における該油性液体有効成分の沈殿や分離を実質的に防止する効果をいう。前記「固着効果」とは、対象物に適用、例えば、スプレー噴霧された農薬または防疫用薬剤組成物の液だれを防止し、該対象物へ付着する有効成分量を高める効果をいう。前記「効力増強効果」とは、前記固着効果に加え、対象物に適用、例えば、スプレー噴霧された農薬または防疫用薬剤組成物が乾燥により皮膜を形成して、それにより、風雨などによる有効成分の流出を防止する効果、効力の増強と効力の持続を発揮させる効果をいう。
【0013】
前記「平均重合度」は、1000mg以下の範囲の異なる5種の量の乾燥セルロース微粒子を、カドキセン 50mlに溶解して得られた希薄セルロース溶液について、25℃における比粘度をウベローデ型粘度計を用いて測定し、極限粘度数ηを、濃度0に外挿したときの比粘度として求め、式(I):
η=3.85×10-2×Mw0.76 (I)
(式中、Mwは、重量平均分子量を示す)
と、式(II):
平均重合度=Mw/162 (II)
(式中、Mwは、重量平均分子量を示す)
とにより算出される。
【0014】
本発明に用いられるセルロース微粒子の平均粒子径は、増粘効果を発揮させる観点から、5μm以下、好ましくは、3.5μm以下、より好ましくは、2μm以下であり、効率のよい製造を行なう観点から、0.001μm以上、より好ましくは、0.005μm以上、より好ましくは、0.01μm以上である。
【0015】
なお、本明細書において、前記「セルロース微粒子の平均粒子径」とは、具体的には、レーザー回折式粒度分布測定法、例えば、後述の実施例記載の測定方法に準じて、超音波(条件:42kHz、40W、処理時間:10分)で、可能な限り微細に、測定される粒子径の変化がなくなるまで、分散させ、得られた分散体におけるセルロース微粒子の直径の分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、商品名:レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2000型)により測定することにより得られる値をいう。
【0016】
本発明に用いられるセルロース微粒子においては、増粘効果を発揮させる観点から、セルロースI型結晶成分の分率が、0.1以下、好ましくは0.06以下である。また、前記セルロースI型結晶成分の分率は、0以上であればよく、製造の容易性の観点から、好ましくは、0.01以上であることが望ましい。さらに、本発明に用いられるセルロース微粒子においては、増粘効果を発揮させる観点から、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下、好ましくは、0.3以下である。また、前記セルロースII型結晶成分の分率は、0以上であればよく、製造の容易性の観点から、好ましくは、0.01以上であることが望ましい。本発明に用いられるセルロース微粒子において、セルロースI型結晶成分の分率と、セルロースII型結晶成分の分率と、セルロース非結晶成分の分率との和が1である。
【0017】
なお、前記セルロースI型結晶成分の分率(χ1)は、
1) 乾燥させたセルロース微粒子を粉状に粉砕して錠剤に成型するステップ、
2) 得られた錠剤を、線源CuKαを用いた反射法によるX線回折に供して、広角X線回折図を得るステップ、
3) 得られた広角X線回折図において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0°における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1とから、式(III):
χ1=h1/h0
によって求められる。また、同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χ2)は、
1) 乾燥させたセルロース微粒子を粉状に粉砕して錠剤に成型するステップ、
2) 得られた錠剤を、線源CuKαを用いた反射法によるX線回折に供して、広角X線回折図を得るステップ、および
3’) 得られた広角X線回折図において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0*と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*とから式(IV):
χ2=h1*/h0*
によって求められる。
【0018】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物中におけるセルロース微粒子の含有量は、好ましくは、0.1重量%以上であり、より好ましくは、0.5重量%以上であり、好ましくは、5.0重量%以下であり、より好ましくは、3.0重量%以下である。
【0019】
前記セルロース微粒子は、例えば、無機酸水溶液にセルロースを溶解させたセルロース溶液を、水、または水の含有量が50重量%以上である凝固剤に添加し、セルロースを再沈殿させ、セルロース懸濁液を調製し、得られた懸濁液中のセルロースを加水分解処理し、ついで、得られた懸濁液から酸を除去し、その後、得られた懸濁液を、超高圧分散、高圧分散、媒体ミル、ホモジナイザー、ホモミキサーなどで高度粉砕処理に供することにより製造されうる。前記高度粉砕処理は、セルロース微粒子の粒子径を小さくすることができ、得られる農薬または防疫用薬剤組成物の物性を向上させることができる観点から、固形分濃度5重量%以下の低濃度で行なうことが望ましい。
【0020】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物は、含まれるセルロース微粒子が前記平均重合度、結晶成分の分率および平均粒子径を有するものである。そのため、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物によれば、含まれる前記セルロース粒子により、高いチキソトロピー性が発現される。したがって、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物によれば、例えば、当該農薬または防疫用薬剤組成物が、水溶剤、液剤、フロアブル製剤、エマルション製剤、マイクロエマルション製剤、サスポエマルション製剤、ジャンボ剤、水面展開剤、ベイト剤、エアゾル剤またはゲル製剤である場合、静置保管時においては粘度が高くなり、高い増粘効果および分散安定効果を示すとともに、使用時において応力が加えられることにより、粘度低下し、良好なハンドリング性を示すという優れた効果を発揮する。
【0021】
また、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物は、含まれるセルロース微粒子が前記平均重合度、結晶成分の分率および平均粒子径を有するものである。そのため、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物では、前記セルロース粒子により高いチキソトロピー性が発現される。したがって、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物によれば、例えば、当該農薬または防疫用薬剤組成物が、水溶剤、液剤、フロアブル製剤、エマルション製剤、マイクロエマルション製剤、サスポエマルション製剤、ジャンボ剤、水面展開剤、ベイト剤、エアゾル剤またはゲル製剤である場合、適用対象物への適用時における液だれの発生が実質的に抑制されて高い付着性が発現され、該農薬または防疫用薬剤組成物中に含まれる有効成分を効率よく適用対象物に作用させることができるという優れた効果を発揮する。
【0022】
さらに、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物は、含まれるセルロース微粒子が前記平均重合度、結晶成分の分率および平均粒子径を有するものである。そのため、例えば、当該農薬または防疫用薬剤組成物が粒剤、粉粒剤または顆粒水和剤である場合、該農薬または防疫用薬剤組成物の製造時において、乾燥工程を行なうことにより、前記セルロース微粒子が、農薬または防疫用薬剤有効成分の表面に皮膜を生成する。そのため、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物によれば、強度のある固形製剤が得られるという優れた効果を奏する。
【0023】
また、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物によれば、含まれるセルロース微粒子が前記平均重合度、結晶成分の分率および平均粒子径を有するものであるため、例えば、当該農薬または防疫用薬剤組成物が水溶剤、液剤、フロアブル製剤、エマルション製剤、マイクロエマルション製剤、サスポエマルション製剤、ジャンボ剤、水面展開剤、ベイト剤、エアゾル剤またはゲル製剤である場合、農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分が従来のように、サブミクロンの微粒子ではなく、1μm以上の平均粒子径を有する場合でも、安定な分散性を維持することができるという優れた効果を奏する。
【0024】
前記農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分は、液状の有効成分または平均粒子径0.01μm〜50μmの固体状の有効成分である。
【0025】
前記農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分としては、特に限定されないが、例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤、誘引剤、忌避剤、殺鼠剤、展着剤などが挙げられ、具体的には、例えば、「農薬ハンドブック」(2001年、日本植物防疫協会発行)に記載されている有効成分などが挙げられる。前記殺虫剤としては、特に限定されないが、例えば、有機リン系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、ネライストキシン系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤、昆虫成長制御剤、その他の合成殺虫剤、天然殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、くん蒸剤、生物由来の殺虫剤などが挙げられる。前記殺菌剤としては、特に限定されないが、例えば、銅殺菌剤、無機殺菌剤、有機硫黄殺菌剤、有機リン系殺菌剤、メラニン生合成阻害剤、ベンゾイミダゾール系殺菌剤、ジカルボキシイミド系殺菌剤、酸アミド系殺菌剤、ステロール生合成阻害剤、メトキシアクリレート系殺菌剤、合成抗細菌剤、土壌殺菌剤、その他の合成殺菌剤、抗生物質殺菌剤、天然物殺菌剤、生物由来の殺菌剤などが挙げられる。前記除草剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノキシ酸系除草剤、カーバメート系除草剤、酸アミド系除草剤、尿素系除草剤、スルホニル尿素系除草剤、ピリミジルオキシ安息香酸系除草剤、トリアジン系除草剤、ダイアジン系除草剤、ダイアゾール系除草剤、ビピリジリウム系除草剤、ジニトリロアニリン系除草剤、芳香族カルボン酸系除草剤、脂肪酸系除草剤、有機リン系除草剤、アミノ酸系除草剤、その他の有機除草剤、無機除草剤、生物由来の除草剤などが挙げられる。
【0026】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物は、固体製剤または液体製剤である。
【0027】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物の剤形としては、例えば、粉剤、粒剤、粉粒剤、水和剤、顆粒水和剤、水溶剤、乳剤、液剤、油剤、フロアブル製剤、エマルション製剤、マイクロエマルション製剤、サスポエマルション製剤、くん煙剤、放出制御製剤、ジャンボ剤、水面展開剤、サーフ剤、塗布剤、注入剤、ベイト剤、エアゾル剤、複合エマルション製剤、ゲル製剤粉剤などが挙げられる。前記剤形のなかでは、固体製剤、水性の液体またはゲル製剤の場合、農薬または防疫用薬剤組成物中に含まれるセルロース微粒子による効果が顕著に発揮される観点から、好ましくは、粒剤、粉粒剤、顆粒水和剤、水溶剤、液剤、フロアブル製剤、エマルション製剤、マイクロエマルション製剤、サスポエマルション製剤、ジャンボ剤、水面展開剤、ベイト剤、エアゾル剤およびゲル製剤である。
【0028】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物には、前記剤形および前記農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分の種類に応じて、補助剤として、担体、溶剤、界面活性剤、結合剤、増粘剤、防腐剤、凍結防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などがさらに配合されていてもよい。また、本発明の農薬または防疫用薬剤組成物は、肥料と混合した農薬肥料としてもよい。
【0029】
前記担体としては、特に限定されないが、例えば、ホワイトカーボン、珪藻土、アタパルジャイト、ゼオライト、酸性白土、ベントナイト、タルク、クレー、バーミキュライト、炭酸カルシウム、珪砂、パーライトなどが挙げられる。本発明の農薬または防疫用薬剤組成物には、前記担体は、単独で配合されていてもよく、2種以上を混合して配合されていてもよい。
【0030】
前記溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、酢酸、無水酢酸、アセトフェノ、オレイン酸メチル、ヤシ油、ナタネ油、大豆油、ひまし油、アマニ油、パラフィン油、ケロシン、高級アルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、へキシレングリコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピルセロソルブ、γ−ブチロラクトン、脂肪酸メチルエステル、メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロアニリン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、ノルマルパラフィン、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、シクロヘキサノン、アセトニトリル、灯油、マシン油、芳香族溶剤などが挙げられる。本発明の農薬または防疫用薬剤組成物には、前記溶剤は、単独で配合されていてもよく、2種以上を混合して配合されていてもよい。
【0031】
前記界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤およびこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
前記非イオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸部分の炭素数4〜30)、ポリオキシエチレン(以下、「POE」という)ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸部分の炭素数4〜30、オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、ショ糖脂肪酸エステル(炭素数20〜188、脂肪酸部分の炭素数4〜30)、POE脂肪酸エステル(炭素数4〜30、オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、POEひまし油(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、POE硬化ひまし油(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(オキシアルキレン基の炭素数2〜6、オキシアルキレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POEアルキルエーテル(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POEアルキルフェニルエーテル(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POEスチレン化フェニルエーテル(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル(オキシアルキレン基の炭素数2〜6、オキシアルキレン基の付加モル数1〜500)、POEベンジルフェニルエーテル(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル(オキシアルキレン基の炭素数2〜6、オキシアルキレン基の付加モル数1〜500)、POE−POPブロックポリマー(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、オキシプロピレン基の付加モル数1〜500)、POEアルキルアミン(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POE脂肪酸アミド(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、脂肪酸部分の炭素数4〜30)、POE型シリコン系界面活性剤(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、POE型フッ素系界面活性剤(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)などが挙げられる。
【0033】
前記アニオン界面活性剤としては、炭素数4〜30のアルキルサルフェート、POEアルキルエーテルサルフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POEアルキルフェニルエーテルサルフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POEスチレン化フェニルエーテルサルフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、POEベンジルフェニルエーテルサルフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、POE−POPブロックポリマーサルフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、オキシプロピレン基の付加モル数1〜500)、炭素数1〜50のアルカンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、ジアルキルスルホサクシネート(アルキル基の炭素数4〜30)、アルキルベンゼンスルホネート(アルキル基の炭素数4〜30)、アルキルナフタレンスルホネート(アルキル基の炭素数4〜30)、ナフタレンスルホネート縮合物、リグニンスルホネート、POEアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステル(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、炭素数4〜30の脂肪酸塩、N−メチル脂肪酸サルコシネート(脂肪酸部分の炭素数4〜30)、POEアルキルエーテルホスフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POEアルキルフェニルエーテルホスフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500、アルキル基の炭素数4〜30)、POEスチレン化フェニルエーテルホスフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、POEベンジルフェニルエーテルホスフェート(オキシエチレン基の付加モル数1〜500)、炭素数4〜30のアルキルホスフェートなどが挙げられる。
【0034】
前記カチオン界面活性剤としては、アンモニウム型界面活性剤、ベンザルコニウム型界面活性剤などが挙げられる。前記両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤などが挙げられる。なお、前記界面活性剤のHLB値は、乳化効果および分散効果を十分に得る観点から、1〜20であることが望ましい。
【0035】
前記界面活性剤のなかでは、前記セルロース微粒子による効果、例えば、増粘効果を十分に発揮させる観点から、非イオン界面活性剤が好ましい。前記非イオン界面活性剤のなかでも、好ましくは、ショ糖脂肪酸エステルが望ましい。前記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数20〜188のショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。また、前記ショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸部分の炭素数は、例えば、4〜20、好ましくは、6〜18であることが望ましい。前記ショ糖脂肪酸エステルのHLB値は、1〜20、好ましくは、5〜18であることが望ましい。
【0036】
前記増粘剤としては、チキソトロピー性を阻害しないものであればよく、特に限定されるものではなく、例えば、ベントナイト、スメクタイト、ホワイトカーボン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。本発明の農薬または防疫用薬剤組成物中における増粘剤の量は、スプレー性を阻害しない範囲であればよい。
【0037】
前記結合剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、リグニンスルホン酸塩、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、デキストリン、ベントナイト、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。本発明の農薬または防疫用薬剤組成物中における結合剤の量は、スプレー性を阻害しない範囲であればよい。
【0038】
前記防腐剤としては、特に限定されないが、例えば、安息香酸塩、ソルビン酸塩、パラベン類、1,2−ベンツチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0039】
前記凍結防止剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0040】
前記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤などが挙げられる。
【0041】
前記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0042】
前記肥料としては、特に限定されないが、例えば、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料、石灰質肥料、苦土質肥料、ケイ酸質肥料、微量要素肥料、動物質肥料、植物質肥料などが挙げられる。
【0043】
本発明の農薬または防疫用薬剤組成物は、例えば、製造に際して、セルロース微粒子の分散体を、補助剤として、前記農薬または防疫用薬剤有効成分などに添加することにより製造されうる。本発明の農薬または防疫用薬剤組成物の製造は、公知の方法、例えば、「農薬製剤ガイド」(1997年、社団法人 日本植物防疫協会発行)に記載の方法などにより行なわれうる。例えば、剤形が、水溶剤、液剤、フロアブル製剤、エマルション製剤、マイクロエマルション製剤、サスポエマルション製剤、ジャンボ剤、水面展開剤、ベイト剤、エアゾル剤またはゲル製剤である場合、製造に際して、セルロース微粒子の分散を促進し、かつ得られる農薬または防疫用薬剤組成物の物性向上を図る観点から、好ましくは、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、サンドミルなどの分散機を用いることが望ましい。
【0044】
以下、本発明を実施例などにより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
製造例1
(1)セルロース微粒子の製造
−5℃の65重量% 硫酸水溶液に、セルロース(サルファイト法により木材パルプから製造したサルファイトパルプ)を、終濃度5重量%となるよう溶解させ、セルロースドープを得た。続いて、セルロースドープに対して2.5倍重量の5℃に維持された水中に、前記ドープを攪拌しながら添加し、セルロースをフロック状に凝集させた。得られた産物を、85℃で20分間維持し、ついで、pH4以上になるまで、該産物の水洗と脱水とを繰り返し、ゲル状物を得た。
【0046】
次に、前記ゲル状物に、固形分濃度4重量%となるように水を添加した。その後、得られた産物を、プライミクス株式会社製、商品名:TKロボミックスに供して、10000rpm、10分間で分散させた。さらに、得られた産物を、みづほ工業株式会社製、マイクロフルイダイザーM−110−E/Hに供して、超高圧分散処理し、ゲル状のセルロース微粒子の分散体を得た。
【0047】
(2)セルロース微粒子の平均重合度
前記(1)で得られたゲル状のセルロース微粒子の分散体を、70℃で乾燥させた。乾燥させたセルロース微粒子 200mg、400mg、600mg、800mgまたは1000mgを、カドキセン 50mlに溶解して得られた希薄セルロース溶液の25℃における比粘度をウベローデ型粘度計を用いて測定し、極限粘度数ηを、濃度0に外挿したときの比粘度として算出した。ついで、得られた極限粘度数ηに基づき、式(I):
η=3.85×10-2×Mw0.76 (I)
(式中、Mwは、重量平均分子量を示す)
と、式(II):
平均重合度=Mw/162 (II)
(式中、Mwは、重量平均分子量を示す)
とにより、平均重合度を算出した。
【0048】
その結果、得られた分散体中のセルロースの平均重合度は、約44であった。
【0049】
(3)セルロース微粒子のセルロースI型結晶成分の分率およびセルロースII型結晶成分の分率の測定
前記(1)で得られたゲル状のセルロース微粒子の分散体を、70℃で乾燥させた。ついで、乾燥させたセルロース微粒子を粉状に粉砕して錠剤に成型した。得られた錠剤を、株式会社リガク製、商品名:RINK−Ultima IIIを用い、線源CuKαを用いた反射法によるX線回折に供して、それにより、広角X線回折図を得た。得られた広角X線回折図において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0°における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1とから、式(III):
χ1=h1/h0
に基づき、セルロースI型結晶成分の分率(χ1)を算出した。また、同様に、得られた広角X線回折図において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0*と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*とから式(IV):
χ2=h1*/h0*
に基づき、セルロースI型結晶成分の分率(χ2)を算出した。
【0050】
その結果、得られたセルロース微粒子の分散体のセルロースI型結晶成分の分率は、0であり、セルロースII型結晶成分の分率は、0.26であった。
【0051】
(4)セルロース微粒子の平均粒子径
前記(1)で得られたセルロース微粒子の分散体を、1.5重量%濃度となるように、水で希釈した。得られた産物を、プライミクス社製、商品名:TKロボミックスに供し、10000rpmで10分間分散させた。得られた産物を、株式会社島津製作所製、商品名:レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2000型に供し、セルロース微粒子の直径の分布を測定し、平均値を求めた。
【0052】
その結果、セルロース微粒子の平均粒子径は、約0.20μmであった。
【0053】
実施例1
製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体と、農薬有効成分として炭酸カルシウムと、水とを、40(固形分換算1.6):20:40(重量比)で混合した。得られた混合物を、プライミクス株式会社製、商品名:TKロボミックスに供して、10000rpm、10分間で分散させ、フロアブル製剤の剤形の組成物を得た。
【0054】
前記組成物中における仕込量から算出されたセルロース微粒子の含有量は、1.6重量%であった。
【0055】
ついで、得られた組成物を、ローターNo4を用いたBH型回転粘度計に供し、25℃での粘度を測定した。その結果、前記組成物の粘度は、20000mPa・sであった。
【0056】
また、前記組成物について、デジタルビデオマイクロスコープ(オムロン株式会社製、商品名:オムロンVC−1000)で拡大観察し、有効成分の粒子50個の粒子径を測定し、平均値を求めた。その結果、有効成分の平均粒子径は、約6.4μmであった。
【0057】
前記組成物を、25℃で3ヶ月保存し、該組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離は、見られなかった。
【0058】
前記組成物をハンドスプレー容器に移し、該組成物 10gをキャベツの葉に噴霧した。5分間静置後、葉に付着した前記組成物の重量を測定した。その結果、葉に付着した前記組成物の重量は、9.7gであり、付着率は、97%であった。
【0059】
比較例1
前記製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体の代わりに、平均粒子径20μmのセルロース粉末(木材パルプを粉砕して32μmのふるいを通して得られたもの)と、農薬有効成分として炭酸カルシウムと、水とを、1.6:20:38.4(重量比)となるように混合したことを除き、実施例1と同様に行ない、組成物を得た。なお、セルロース粉末のセルロースI型結晶成分の分率は、0.45であり、セルロースII型結晶成分の分率は、0.10であった。また、前記セルロース粉末におけるセルロースの平均重合度は、100以上であった。仕込量から算出されたセルロース粉末の組成物中における含有量は、1.6重量%であった。
【0060】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、60mPa・sであった。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約7.3μmであった。
【0061】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離が見られ、上部70%が透明に離水した。このように、比較例1の組成物は、実施例1の組成物に比べ、保存安定性が悪いことがわかる。これは、当該組成物の製造に用いられたセルロース粉末の平均粒子径が5μmを超え、セルロースI型結晶成分の分率が0.1を超え、平均重合度が100以上であったためであり、増粘・分散安定効果を発揮することができなかったためであることが示唆される。
【0062】
さらに、前記実施例1と同様に、前記組成物の付着性を調べた。その結果、葉に付着した前記組成物の重量は、2.3gであり、付着率は、23%であった。このように、比較例1の組成物は、実施例1の組成物に比べ、付着率が悪いことがわかる。これは、当該組成物の製造に用いられたセルロース粉末の平均粒子径が5μmを超え、セルロースI型結晶成分の分率が0.1を超え、平均重合度が100以上であったためであり、増粘効果を発揮することができなかったためであることが示唆される。
【0063】
試験例
前記製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体(1.5重量%)について、レオメーター(HAAKE社製、商品名:Rheo Win 31404型)を用いて、ズリ速度依存性を測定した。結果を図1に示す。
【0064】
その結果、前記製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体によれば、低いズリ速度で粘度低下を起こすことがわかる。
【0065】
比較例2
前記製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体の代わりに、キサンタンガム粉末(大日本製薬株式会社製、商品名:K−0B)と、炭酸カルシウムと、水とを、1.6:20:38.4(重量比)となるように混合したことを除き、実施例1と同様に行ない、組成物を得た。仕込量から算出されたキサンタンガム粉末の組成物中における含有量は、1.6重量%である。
【0066】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、7800mPa・sであった。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約7.1μmであった。
【0067】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離が見られ、上部20%が透明に離水した。このように、比較例2の組成物は、実施例1の組成物に比べ、保存安定性が悪いことがわかる。これは、当該組成物の製造に用いられたキサンタンガムが、実施例1で用いられたセルロース微粒子に比べ、チキソトロピー性に劣るためであることが示唆される。
【0068】
前記組成物をハンドスプレー容器に移し、該組成物 10gをキャベツの葉に噴霧を試みた。しかしながら、スプレーすることができなかった。これは、当該組成物の製造に用いられたキサンタンガムが、実施例1で用いられたセルロース微粒子に比べ、チキソトロピー性に劣るためであり、スプレーのせん断速度では、該組成物の粘度低下を起こさないためであることが示唆される。
【0069】
実施例2
製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体と、農薬有効成分としてマシン油と、水とを、40(固形分換算1.6):20:40(重量比)で混合した。得られた混合物を、プライミクス株式会社製、商品名:TKロボミックスに供して、10000rpm、10分間で分散させ、殺虫剤のエマルション製剤を得た。前記組成物中における仕込量から算出されたセルロース微粒子の含有量は、1.6重量%であった。
【0070】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、22000mPa・sであった。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約3.6μmであった。
【0071】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離は、見られなかった。
【0072】
さらに、前記実施例1と同様に、前記組成物の付着性を調べた。その結果、葉に付着した前記組成物の重量は、9.5gであり、付着率は、95%であった。
【0073】
比較例3
前記製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体の代わりに、平均粒子径20μmのセルロース粉末(木材パルプを粉砕して32μmのふるいを通して得られたもの)と、農薬有効成分として炭酸カルシウムと、水とを、1.6:20:38.4(重量比)となるように混合したことを除き、実施例1と同様に行ない、組成物を得た。なお、セルロース粉末のセルロースI型結晶成分の分率は、0.45であり、セルロースII型結晶成分の分率は、0.10であった。また、前記セルロース粉末におけるセルロースの平均重合度は、240であった。仕込量から算出されたセルロース粉末の組成物中における含有量は、1.6重量%であった。
【0074】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、120mPa・sであった。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約500μmであった。
【0075】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離が見られ、上部30%が透明に離水した。このように、比較例3の組成物は、実施例2の組成物に比べ、保存安定性が悪いことがわかる。これは、当該組成物の製造に用いられたセルロース粉末の平均粒子径が5μmを超え、セルロースI型結晶成分の分率が0.1を超え、平均重合度が100を超えたためであり、増粘・分散安定効果を発揮することができなかったためであることが示唆される。
【0076】
さらに、前記実施例1と同様に、前記組成物の付着性を調べた。その結果、葉に付着した前記組成物の重量は、1.8gであり、付着率は、18%であった。このように、比較例3の組成物は、実施例2の組成物に比べ、付着率が悪いことがわかる。これは、当該組成物の製造に用いられたセルロース粉末の平均粒子径が5μmを超え、セルロースI型結晶成分の分率が0.1を超え、平均重合度が100を超えたためであり、増粘効果を発揮することができなかったためであることが示唆される。
【0077】
比較例4
前記製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体の代わりに、キサンタンガム粉末(大日本製薬株式会社製、商品名:K−0B)と、炭酸カルシウムと、水とを、1.6:20:38.4(重量比)となるように混合したことを除き、実施例1と同様に行ない、組成物を得た。仕込量から算出されたキサンタンガム粉末の組成物中における含有量は、1.6重量%である。
【0078】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、8200mPa・sであった。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約3.3μmであった。
【0079】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離が見られ、上部20%が透明に離水した。このように、比較例4の組成物は、実施例2の組成物に比べ、保存安定性が悪いことがわかる。これは、当該組成物の製造に用いられたキサンタンガムが、実施例2で用いられたセルロース微粒子に比べ、チキソトロピー性に劣るためであることが示唆される。
【0080】
得られた組成物をハンドスプレー容器に移し、該組成物 10gをキャベツの葉に噴霧を試みた。しかしながら、スプレーすることができなかった。これは、当該組成物の製造に用いられたキサンタンガムが、実施例2で用いられたセルロース微粒子に比べ、チキソトロピー性に劣るためであり、スプレーのせん断速度では、該組成物の粘度低下を起こさないためであることが示唆される。
【0081】
実施例3
製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体と、農薬有効成分として硫黄と、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(HLB=13)と、凍結防止剤としてプロピレングリコールと、水とを、60(固形分換算2.4):20:3:10:7(重量比)で混合した。得られた混合物を、みづほ工業株式会社製、マイクロフルイダイザーM−110−E/Hに供して、超高圧分散処理し、殺菌剤のフロアブル製剤の剤形の組成物を得た。仕込量から算出されたセルロース微粒子の組成物中における含有量は、2.4重量%である。
【0082】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、800mPa・sであった。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約1.3μmであった。
【0083】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離は見られなかった。
【0084】
さらに、得られた組成物を、水で500倍に希釈して、ジョロで散布した。その結果、前記組成物は、良好な分散性を示し、該組成物によれば、均一な散布ができた。
【0085】
実施例4
製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体と、防疫薬剤有効成分として除虫菊と、界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16)と、凍結防止剤としてプロピレングリコールと、水とを、40(固形分換算1.6):0.5:2:10:47.5(重量比)で混合した。得られた混合物を、みづほ工業株式会社製、マイクロフルイダイザーM−110−E/Hに供して、超高圧分散処理し、防疫用殺虫剤のフロアブル製剤の組成物を得た。仕込量から算出されたセルロース微粒子の組成物中における含有量は、1.6重量%である。
【0086】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、25000mPa・sであった。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約1.2μmであった。
【0087】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物中における有効成分の沈殿分離は見られなかった。
【0088】
さらに、得られた組成物をハンドスプレー容器に移して、防疫用殺虫剤スプレーを得た。
【0089】
実施例5
製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体と、農薬有効成分としてジクロロフェノキシ酢酸と、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムと、増量剤としてベントナイトと、タルクとを、40(固形分換算1.6):1.0:2:60:35.4となるように配合し、ニーダーで混練した。その後、得られた産物を、1.0mm目開きのスクリーンから押出して造粒させた。70℃で乾燥後、整粒して農薬除草剤の粒剤の剤形の組成物を得た。仕込量から算出されたセルロース微粒子の組成物中における含有量は、1.6重量%である。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約3.6μmであった。
【0090】
また、得られた組成物を、25℃で3ヶ月保存した。その結果、前記組成物は粒剤の粒が破損することなく、散布性も良好であった。
【0091】
実施例6
製造例1で得られたセルロース微粒子の分散体と、農薬有効成分として炭酸カルシウムと、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムと、増量剤として焼成珪藻土とを、40(固形分換算1.6):50:2:46.4となるように配合し、ニーダーで混練した。その後、得られた産物を、0.7mm目開きのスクリーンから押出して造粒させた。70℃で乾燥後、整粒して農薬展着剤の顆粒水和剤を得た。仕込量から算出されたセルロース微粒子の組成物中における含有量は、1.6重量%である。前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約6.8μmであった。
【0092】
また、得られた組成物を、25℃で3ヶ月保存した。その結果、前記組成物における粒剤の粒は、破損しなかった。また、前記組成物を水で30倍に希釈して散布した。その結果、前記組成物は、良好な分散安定性および散布性を示した。
【0093】
製造例2
−5℃に調整された65重量% 硫酸水溶液に、木材パルプを精製して得られた結晶セルロースを、終濃度5重量%となるように溶解し、セルロースドープを得た。続いて、セルロースドープに対して2.5倍重量の5℃に維持された水中に、前記ドープを攪拌しながら添加し、セルロースをフロック状に凝集させた。得られた産物を、80℃で30分間維持し、ついで、pH4以上になるまで、該産物の水洗と脱水とを繰り返し、ゲル状物を得た。
【0094】
次に、前記ゲル状物に、固形分濃度4重量%となるように水を添加した。その後、得られた産物を、プライミクス株式会社製、商品名:TKロボミックスに供して、10000rpm、10分間で分散させた。さらに、得られた産物を、みづほ工業株式会社製、マイクロフルイダイザーM−110−E/Hに供して、超高圧分散処理し、ゲル状のセルロース微粒子の分散体を得た。
【0095】
得られたセルロース微粒子の分散体について、製造例1と同様の手法で、モル分率を求めた。その結果、前記セルロース微粒子の分散体のセルロースI型結晶成分の分率は、0.04であり、セルロースII型結晶成分の分率は、0.05であった。また、前記セルロース微粒子の分散体におけるセルロースの平均重合度は、40であった。
【0096】
前記セルロース微粒子の分散体を、1.5重量%となるように水で希釈した。得られた産物を、プライミクス株式会社製、商品名:TKロボミックスに供して、10000rpm、10分間で分散させた。得られた産物を、株式会社島津製作所製、商品名:レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2000型に供し、セルロース微粒子の直径の分布を測定し、平均値を求めた。その結果、セルロース微粒子の平均粒子径は、約0.02μmであった。
【0097】
実施例7
製造例2で得られたセルロース微粒子の分散体を用いたことを除き、実施例1と同様に行ない、展着剤のフロアブル製剤の剤形の組成物を得た。仕込み量から算出されたセルロース微粒子の含有量は、1.6重量%である。
【0098】
前記実施例1と同様に、得られた組成物の粘度および該組成物中の有効成分の平均粒子径を調べた。その結果、前記組成物の粘度は、22000mPaであった。また、前記組成物の有効成分の平均粒子径は、約6.2μmであった。
【0099】
また、前記実施例1と同様に、25℃で3ヶ月保存した後における前記組成物の保存安定性を調べた。その結果、前記組成物には、有効成分の沈殿分離は観察されなかった。
【0100】
前記組成物をハンドスプレー容器に移し、該組成物 10gをキャベツの葉に噴霧した。5分間静置後、葉に付着した前記組成物の重量を測定した。その結果、葉に付着した前記組成物の重量は、9.8gであり、付着率は、98%であった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、適用対象となる環境に効率よく、農薬または防疫用薬剤組成物の作用を発揮させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、セルロース微粒子の分散体のズリ速度依存性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)農薬有効成分または防疫用薬剤有効成分と、
(B)平均重合度が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率と、セルロースII型結晶成分の分率と、セルロース非結晶成分の分率との和が1であり、該セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、該セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒子径が5μm以下であるセルロース微粒子と、
を含有してなる、農薬または防疫用薬剤組成物。
【請求項2】
25℃における粘度が、少なくとも10000mPa・sである、請求項1記載の農薬または防疫用薬剤組成物。
【請求項3】
非イオン界面活性剤をさらに含有してなる、請求項1または2記載の農薬または防疫用薬剤組成物。
【請求項4】
非イオン界面活性剤が、HLB値1〜20で、かつ炭素数20〜188のショ糖脂肪酸エステルである、請求項3記載の農薬または防疫用薬剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−320898(P2007−320898A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152274(P2006−152274)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】