説明

農薬活性ピラゾール類および誘導体

【課題】建設されたまたは建設予定の建物を、這う昆虫、特にシロアリから保護する方法の提供。
【解決手段】アリールピラゾール系の5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−トリフルオロメチルスルフィニル−3−シアノピラゾールを有効成分とする殺虫化合物の効果的な量を、建物の周囲または下の不連続な位置に散布することにより、すでに建設されたまたは建設予定の建物の保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明の目的の一つは、すでに建設されたまたは建設予定の建物を、這う昆虫、特にシロアリから保護することである。
【0002】
1−アリールピラゾール類の一群の殺虫活性化合物は、シロアリに対して有効な活性を示すものとして周知である。
【0003】
従来のシロアリ防除作業者は、建物や家屋の周囲や下に化学物質を使用して、シロアリの侵入に対するバリアを形成している。しかしながら処理に隙間があれば、家屋の保護に失敗することもある。
【0004】
別の方法には、シロアリを誘引する物質を含有する餌を置いて、シロアリにその餌を食べさせ、餌に含まれる有効成分により殺す、というものがある。
【0005】
本発明の目的の一つは、改善した家屋保護方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、処理済みの家屋の家主からの再呼出数を減少させるシロアリの処理法を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、最小量の殺虫有効成分で建物を保護することである。
【0008】
本発明の別の目的は、シロアリに対する建物保護程度を良好にしながら、使用殺虫剤量を減少させることである。
【0009】
本発明の別の目的は、シロアリが存在するまたは存在すると思われる場所に直接処理する必要性を減少させることである。
【0010】
本発明の別の目的は、シロアリの侵入する正確な場所を探し出す必要性を減少させた治療的処理法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、侵入部分が未処理である場合でさえも有効である治療的処理法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、主に侵入位置を調査しない無差別処理である治療的処理法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、無形のわなのようなシロアリ処理機能を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、バリアなしのシロアリ処理法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、土壌処理が主であるシロアリ処理法を提供することである。
【0016】
これらの目的は、本発明による方法によって達成できることが分かった。
【0017】
本発明は、殺虫有効量の化合物の効果的な量を建物の周囲または下の不連続位置に散布することによって、すでに建設されたまたは建設予定の建物を保護する方法に関する。
【0018】
本発明で使用することができる殺虫有効物質は、接触(防除したい種との接触)により効果があり、昆虫に対する忌避効果をもたない、好ましくは防除したい昆虫に対する忌避効果をもたない有効成分である。
【0019】
本発明で使用することができる好ましい有効成分の種類は、急速ノックダウン効果(quick knock−down effect)はもたない化合物、言い換えると、いわゆる二次殺虫効果、つまり当該殺虫剤による直接処理をしないで昆虫を殺す作用を生じる化合物である。また、建築後または建築予定の家屋または建物付近に近づいてきて処理されたシロアリが持ち帰った場合に、シロアリの巣にいるシロアリを殺すことのできる殺虫剤も好ましい。
【0020】
実用的な観点から、最も好ましい化合物は、1−アリールピラゾール型殺虫剤であり、特に式(I)を有するものである。
【0021】
【化1】

式中、
は、CN、メチルまたはハロゲン原子であり、
R2は、S(O)nR3、4,5−ジシアノイミダゾール−2−イルまたはハロアルキルであり、
は、アルキルまたはハロアルキルであり、
R4は、水素もしくはハロゲン原子であるか、またはNR5R6、S(O)mR7、C(O)R7、C(O)O−R7、アルキル、ハロアルキル、OR8、および−N=C(R)(R10)からなる群のうちの一つを表し、
およびRは、独立に水素原子、アルキル、ハロアルキル、C(O)アルキル、アルコキシカルボニル、またはS(O)CF基を表すか、またはRおよびR
一緒になって一つまたは二つの酸素や硫黄などの二価ヘテロ原子で中断されうる二価アルキレン基を形成することができ、
は、アルキルまたはハロアルキル基を表し、
は、アルキルもしくはハロアルキル基、または水素原子を表し、
は、アルキル基または水素原子を表し、
10は、未置換のフェニルまたはヘテロアリール基であるか、または任意に一つまたは複数のハロゲン原子、またはOH、−O−アルキル、−S−アルキル、シアノ、およびアルキルからなる群のうちの一つによって置換されてもよいフェニルまたはヘテロアリール基を表し、
11およびR12は、互いに独立に水素またはハロゲン原子か、CNまたはNOを表し、
13は、ハロゲン原子か、ハロアルキル、ハロアルコキシ、S(O)CFまたはSF基を表し、
Xは、三価の窒素原子を表すか、またはC−R12基で炭素原子の他の三つの原子価が芳香環部分を形成するものを表し、
m、n、q、およびrは、互いに独立に0、1、または2の整数を表し、
但し、R1がメチルであれば、R3がハロアルキル、R4がNH2、R11がCl、R13がCF、およびXがNであるか、または、Rが4,5−ジシアノイミダゾール−2−イル、R4がCl、R11がCl、R13がCF3、およびXが=C−Clであるか、のどちらかである。
【0022】
アルキル基は、通常1〜6個の炭素原子を有する。
【0023】
本発明の有効な1−アリールピラゾールの好ましい種類は、
がCN、Rがハロアルキル基、RがNH、XがC−R12、であって、
11およびR12が互いに独立にハロゲン原子を表し、及び
13がハロアルキル基であるものである。
【0024】
最も好ましい化合物は、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−トリフルオロメチルスルフィニル−3−シアノピラゾールであり、以降これを化合物(A)と表記する。
【0025】
式(I)の化合物は、周知の方法によって調製することができ、例えば、国際特許公開番号WO 87/3781号、93/6089号、および94/21606号、および欧州特許出願第295117号、第403300号、第385809号、または第679650号、ドイツ特許公開第19511269号、および米国特許第5232940号および第5236938号、に記載の方法、またはケミカル・アブストラクト(Chemical Abstract)またはその引用文献に含まれると考えられる化学合成技術の熟練者の知識による他の方法が挙げられる。式(I)の化合物を含む組成物についても、同様の従来技術等の教えるところにより調製することができる。
【0026】
本発明の実施に有利な方法は、シロアリを誘引する性質を有するあらゆる補助剤を含まない製剤において有効成分を使用することである。このような誘引物質は任意に使用してもよいが、危険を伴う可能性があり、またこのような処理を居住者や家主が嫌う可能性がある。周知の方法では、通常は有効であるためには誘引物質の使用を避けることができなかった。
【0027】
本発明の方法は、治療的方法とともに予防的方法で実施することができる。
【0028】
有効成分による実際の処理は、建築される家屋または建物の輪郭の内側または外側に実施することができる。
【0029】
一般的に、有効成分または製剤を、昆虫、特にシロアリがより頻繁に這う、移動するまたは登る場所に施用するとより効果的である。これらの場所は、特に、建物または建設予定の建物の角および/または壁の交差する所である。また、これらは特に、家屋周囲の他の場所よりも湿度の高い場所である。
【0030】
有効成分は、土壌に施用すると有利である。これは、土壌への製剤の単純な表面処理のほか、スプレー噴霧、混合、混和、浸漬であってもよい。
【0031】
土壌に施用する化合物の効果的な量は、一般に土壌の表面積1m当たりの有効成分量が0.05gから0.0001g/mの範囲内である。この範囲は、有効成分を施用する厳密な位置に対するものである。
【0032】
すでに述べたように、有効成分は不連続な位置に使用する。通常の施用量は、家屋の周囲の処理部分が、周辺全体の10m当たりで0.5〜7.5m処理し、処理する場所の幅が1〜50cm、好ましくは5〜30cmの範囲となるようにする。
【0033】
このような施用のためには、式(I)の化合物またはその誘導体が、種々の固体または液体状の組成物の形態であることが一般的である。
【0034】
使用することのできる固体状の組成物には、粉剤(式(I)の化合物、または農薬として許容できるその塩を80%を上限とする範囲に含む)、水和剤または顆粒(水分散性顆粒を含む)があり、特に押し出し成形、圧縮成形、顆粒担体の含浸、または粉体から開始して顆粒化によって得られるものである(式(I)の化合物、または農薬として許容できるその塩の水和剤または顆粒中の含量は約0.5〜80%の間である)。式(I)の化合物または農薬として許容できるその塩を一種または複数種含む固体の均一または不均一組成物、例えば顆粒、ペレット、ブリケット、またはカプセル、をある期間中の静水または流水の処理に使用することができる。同様の効果は、本明細書記載の水分散性濃厚物を徐々にまたは断続的に供給することで達成することができる。
【0035】
液体組成物には、例えば、水性または非水性の溶液または懸濁液(乳剤、エマルション、フロアブル、分散液、溶液など)またはエアロゾルが含まれる。また液体組成物には、液体であるかまたは使用時に液体組成物、例えば水性散布液(少量または微量散布液を含む)または煙霧もしくはエアロゾルを形成する組成物の形態である、特に、乳剤、分散液、エマルション、フロアブル、エアロゾル、水和剤(または散布用粉末)、ドライフロアブルまたはペーストが含まれる。
【0036】
液体組成物、例えば乳化可能または溶解性の濃厚物の形態では、最も頻繁には約5〜約80重量%の有効成分を含み、一方そのまま使用できるエマルションまたは溶液の場合では、約0.01から約20%の有効成分を含む。溶媒のほかに、乳化可能なまたは溶解性の濃厚物は、必要であれば安定剤、界面活性剤、浸透剤、腐食防止剤、着色剤、粘着剤などの適当な添加剤を約2〜約50%含むことができる。任意の必要な濃度のエマルションは、特に施用に適したものであり、上記濃厚物を水で希釈することで得ることができる。これらの組成物は、本発明で使用することのできる組成物の範囲内に含まれる。エマルションは、油中水型または水中油型の形態をとることができ、高濃度であってもよい。
【0037】
本発明の液体組成物は、通常の農業用途への使用に加えて、例えば、構内、屋内または屋外の貯蔵庫または加工区域、静水または流水用容器または装置を含む、節足動物(または本発明の化合物により防除できる他の害虫)の群がるまたは群がりやすい基材や部位の処理に使用することができる。
【0038】
これらすべての水性分散液またはエマルションまたはスプレー混合物は、任意の適当な手段、主として噴霧器をもちいて施用することができ、通常1ヘクタール当たり約100〜約1,200リットル程度のスプレー混合物の割合で使用されるが、必要性または使用法に応じてこれよりも高くても低くても(例えば少量または微量)よい。
【0039】
濃厚懸濁液は、噴霧器で使用することができ、沈降しない安定な液体生成物となるように調製され(微粉砕)、通常は約10〜約75重量%の有効成分と、約0.5〜約30%の界面活性剤と、約0.1〜約10%の揺変性付与剤と、約0〜約30%の消泡剤、腐食防止剤、安定剤、浸透剤、粘着剤などの添加剤、および担体としての有効成分の溶解性が低いまたは不溶性である水または有機液体を含む。ある種の有機固体または無機塩類を、担体中に溶解させて、沈降防止に役立てたりまたは水に対する不凍剤としたりすることができる。
【0040】
水和剤(またはスプレー用粉末)は、通常は、約10〜約80重量%の有効成分と、約20〜約90%の固体担体と、約0〜約5%の湿潤剤と、約3〜約10%の分散剤と、必要であれば、約0〜80%の一種または複数種の安定剤および/または浸透剤、粘着剤、固化防止剤、着色剤、などの他の添加剤と、を含むように調製される。これらの水和剤を得るために、有効成分を、追加の物質(多孔質充填剤に含浸させたものでもよい)と適当な混合機で完全に混合し、ミルまたは他の適当な粉砕機で粉砕する。こうして有利となる湿潤性および懸濁性をもつ水和剤が製造される。これらは、水中に懸濁させて、任意の所望の濃度とし、この懸濁液は非常に有利に使用することができる。
【0041】
「水分散性顆粒(WG)」(容易に水に分散可能な顆粒)は、水和剤の組成とよく似た組成を有する。これらは、水和剤で述べた製剤を顆粒化することで調製することができ、湿式経路(微粉砕した有効成分を、不活性充填剤と少量の水、例えば1〜20重量%、と接触させるか、または分散剤またはバインダーの水溶液と接触させ、その後乾燥とふるい分けを行なう)または乾式経路(圧縮成形後に粉砕およびふるい分けを行なう)のいずれかにより行われる。
【0042】
一般に、害虫に対して使用する組成物は、通常は約0.00001重量%〜約95重量%、より詳細には約0.0005重量%〜約50重量%の一種または複数種の式(I)の化合物、または農薬に許容されるその塩、または全有効性分を含む。
【0043】
以下の実施例は、本発明の実施法について当業者の理解を助けるためのものである。本発明の限定または制限のために使用するべきものではない。
【実施例1】
【0044】
シロアリの通過するまたは移動する領域において、家屋を建設する計画をする。この計画では、家屋は15m×10mの長方形であり低い方の階に4つの部屋ができるとする。
【0045】
化合物(A)を、土壌に対して0.01g/mの割合で、次図に従って家屋の角となる位置および各部屋の壁の交差する位置の土壌上に実際に置く。
【0046】
【化2】

【0047】
処理領域は、周囲10m当たりで5mを表している。
【0048】
家屋建築の1年後に、シロアリの侵入は認められない。
【0049】
同様の実験をクロルピリホスについて行なうと、著しいシロアリの侵入(壁の部分に体積の10%を超える穴ができた)が観察できた(家屋建築の1年後)。
【実施例2】
【0050】
有効成分を家屋周囲の内側に使用することを除けば、実施例1を繰り返す。言い換えると、実施例1とは、施用位置が壁の反対の面に位置することだけが異なる。実施例1と同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設されているか又はこれから建設される建物をシロアリから保護する方法であって、
シロアリに5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−トリフルオロメチルスルフィニル−3−シアノピラゾールを有効成分とする組成物を適用し、該適用されたシロアリがシロアリの巣に帰った場合に、該シロアリの巣にいるシロアリを二次的に殺虫する前記方法。
【請求項2】
シロアリがより頻繁に這う、移動する又は登る場所に前記組成物を施用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物を土壌に施用する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
土壌に施用される前記有効成分の量が、土壌の表面積1mあたり0.05gから0.0001gの範囲内である請求項3に記載の方法。

【公開番号】特開2012−167094(P2012−167094A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−71768(P2012−71768)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【分割の表示】特願2008−225579(P2008−225579)の分割
【原出願日】平成9年11月24日(1997.11.24)
【出願人】(398036704)アベンティス クロップサイエンス ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】