説明

農薬用展着剤組成物および耐雨性の改良された農薬施用方法

【課題】 茎葉処理農薬の施用時に耐雨性を改善するために用いる農薬用展着剤組成物およびこれを用いた茎葉処理農薬組成物、並びに耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法を提供する。
【解決手段】 茎葉処理農薬の施用時に、25℃での動粘度90〜20000mm2/sのシリコーンオイル、界面活性剤および、必要なら溶剤を含有する農薬用展着剤組成物であり、この展着剤組成物を茎葉処理農薬の希釈液調製時に混合して施用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茎葉処理農薬の施用時に耐雨性を改善するために用いる農薬用展着剤組成物および耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茎葉処理農薬の植物の茎葉への施用方法としては、農薬製剤の原液を直接散布する方法、農薬製剤(乳剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル、サスポエマルジョン等)を水で適当な濃度に希釈して散布する方法がある。これらの方法により茎葉処理農薬を植物に散布した後、降雨、霧、露、スプリンクラーなどによる散水などにより植物に施用した農薬の活性成分が植物から流れ落ちてしまうことがある。このことにより、植物の茎葉には活性成分のごく一部しか付着していない状態となり、効果の著しい低下、残効期間が著しく短くなるという弊害が生じることがある。
【0003】
このような弊害を防止するために農薬の施用に際して耐雨(水)性を付与する方法が試みられ、開示されている。例えば、農薬活性成分、界面活性剤、有機リン化合物から成る農薬組成物(特許文献1)、2級もしくは3級アルコールアルコキシレートと除草剤活性成分から成る除草剤組成物(特許文献2)、エトキシル化ゲルベアルコールと除草剤活性成分から成る除草剤組成物(特許文献3)、ソルビタントリオレエートと農薬活性成分から成る農薬組成物(特許文献4)などであるが、これらの先行技術は農薬施用直後の降雨に対する十分な耐性があるとはいい難い。
【0004】
また、ジメチルポリシロキサン等のオルガノシロキサン化合物が植物体の茎葉表面で優れた拡展性を有する性質があることから、低分子量のオルガノシロキサン系界面活性剤を除草剤と併用する方法(特許文献5)、低分子量のアルキル変性シリコーンオイルと農薬活性成分を含有する農薬組成物(特許文献6)なども耐雨性改善に効果があると報告されている。
【0005】
しかしながら、特許文献5で開示されているオルガノシロキサン系界面活性剤は、低分子量シリコーンを親水化した化合物であり、依然として農薬施用直後の降雨の影響を受けやすいと考えられる。また、特許文献6で開示されているアルキル変性シリコーンオイルは親水変性ではないものの、低分子量であることから農薬施用直後の降雨に対する堅牢性は必ずしも最適とはいえず、さらなる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−212210号公報
【特許文献2】特開平9−506615号公報
【特許文献3】特開平11−507673号公報
【特許文献4】再公表特許97−46092号公報
【特許文献5】特開平6−24918号公報
【特許文献6】特開2004−189642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、茎葉処理農薬の施用時に耐雨性を改善するために用いる農薬用展着剤組成物およびこれを用いた耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、茎葉処理農薬の施用時に、25℃での動粘度90〜20000mm2/sのシリコーンオイルを主成分として含有する展着剤組成物を混合して施用することにより、農薬散布直後の降雨による農薬有効成分の効果低下を著しく抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)25℃での動粘度90〜20000mm2/sのシリコーンオイル、および界面活性剤を含有する、ことを特徴とする、茎葉処理農薬用展着剤組成物。
(2)さらに溶剤を含有する、前記(1)に記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物。
(3)前記シリコーンオイルがジメチルポリシロキサンまたはその誘導体である、前記(1)または(2)に記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物と、茎葉処理農薬とを含有する、ことを特徴とする、茎葉処理農薬組成物。
(5)茎葉処理農薬の施用において、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物を、茎葉処理農薬と混合して用いることを特徴とする、耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、茎葉処理農薬の散布直後に激しい降雨があった場合でも、その農薬の薬効が低下しないという効果がある。このことにより、再度の農薬散布の必要がなくなり、農薬コスト、労力の削減を図ることができる。
また、我が国は年間を通して雨が多く、特に、茎葉処理農薬を施用する時期に梅雨を迎えることが多く、農業従事者が農薬による一般防除を行なうタイミングを図るのに苦労しているが、本発明の活用により、このような雨量の多い時期でも茎葉処理農薬による一般防除の計画が立てやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の茎葉処理農薬用展着剤組成物およびこれを用いた耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法について詳細に説明する。
【0012】
本発明の茎葉処理農薬用展着剤組成物は、25℃での動粘度が90〜20000mm2/sのシリコーンオイルおよび界面活性剤、またはこれらと溶剤とを含有する組成物から成り、茎葉処理農薬の施用時に、その農薬製剤とタンク混合して使用するためのものである。
【0013】
本発明において用いる特定のシリコーンオイルとしては、下記式(1)で示される25℃での動粘度が90〜20000mm2/sのジメチルポリシロキサン誘導体を用いることができる。
【化1】

〔式中、R1、R2は、同一または異なる基であって、水素原子若しくはトリメチルシリル基を示し、またはR1、R2が共に少なくとも1つのジメチルシロキシレン基を形成して環状構造になっていてもよい。nは0〜1000の整数、mは0〜1000の整数であり(但し、nとmは同時に0であってはならない。)、Xは置換基を有することのあるアルキル基、または水素原子を示す。〕
前記した動粘度範囲(25℃での動粘度90〜20000mm2/s)であるには、前記nとmの合計が、通常80〜1000の範囲であればよい。前記置換基を有することのあるアルキル基としては、例えば炭素数2〜18のアルキル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラル基、フェニル基、基:−R3NH2(但し、R3は炭素数2〜6の2価アルキレン基)、基:−R4NHR5NH2(但し、R4、R5は炭素数2〜6の2価アルキレン基)、−R6−Y(R6は炭素数2〜6の2価アルキレン基、Yはエポキシ基、カルボキシル基が挙げられる。
【0014】
前記シリコーンオイルの25℃での動粘度は、90〜20000mm2/sであり、好ましくは200〜10000mm2/sである。ここで、動粘度とは、粘度をその液体の同一条件下(温度、圧力)における密度で除した値をいい、通常、同一条件下において、一定量の液体の毛細管流出時間を測定し、その時間と粘度計定数とから計算式[動粘度(mm2/s)=粘度計定数×流出時間(s)]により求められる(JIS−K2283を参照)。25℃での動粘度が90mm2/s未満であると、茎葉表面上での固着性が低下し、逆に20000mm2/sを超えると、茎葉表面上での拡展性が低下するため、いずれも好ましくない。
【0015】
シリコーンオイルの化学構造としては、変性のされていないジメチルポリシロキサン(前記式(1)において、m=0の場合)がコスト面から好ましいが、式(1)のXが前記した種々の官能基であってもよい。なお、式(1)のn/mの比は、100/0〜20/80であるのが好ましく、100/0〜50/50であるのがより好ましい。
【0016】
本発明において用いる界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群より少なくとも一種を選択して用いることができる。本発明の農薬用展着剤は各種農薬製剤の希釈液調製時に混合して用いるので、農薬組成物との相溶性の面から非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0017】
本発明において用いる界面活性剤のうち、カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物(例えば、オレイン酸とペンタエチレンヘキサミンとの1:1(モル比)縮合物)、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩( 例えば、ステアリン酸トリエタノールアミンエステルギ酸塩)、高級脂肪酸アミドの塩(例えば、ステアラミドエチルジエチルアミンの酢酸塩)、高級脂肪酸とアミノエチルエタノールアミンとを加熱縮合させ、これに更に尿素を結合させた後、酢酸で中和した塩(例えば、アーコベルA型、G型等のカチオン性界面活性剤、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤(例えば、2−ヘプタデセニルヒドロキシエチルイミダゾリン)、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
【0018】
本発明において用いる界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN−メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩などを挙げることができる。なお、ここでいう塩とは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩または炭素数1〜5のアルカノールアミン塩、および酸タイプ(塩を形成していない酸自体)を含むものである。
【0019】
本発明において用いる界面活性剤のうち、両性界面活性剤としては、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどのアミノ酸型両性界面活性剤、ラウリルジメチルベタインなどのベタイン型両性界面活性剤などを挙げることができる。
【0020】
本発明において用いる界面活性剤のうち、非イオン性界面活性剤としては、活性水素を有する化合物へのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。本発明において、上記活性水素を有する化合物としては、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等のような多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸アミド等を例示することができる。ここに、上記脂肪酸は、飽和及び不飽和のいずれであってもよい。
【0021】
従って、本発明において、非イオン性界面活性剤は、上述したように、活性水素を有する化合物へのアルキレンオキサイド付加物からなり、そのようなものとしては、例えば、脂肪族アルコールへのアルキレンオキサイド付加物であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルフェノールへの付加物であるポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルへの付加物であるポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルへの付加物であるポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルへの付加物であるポリオキシアルキレンペンタエリスリトール脂肪酸エステル、脂肪酸への付加物であるポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、脂肪酸アミドへの付加物であるポリオキシアルキレン脂肪酸アミド等を挙げることができる。
【0022】
本発明においては、上記非イオン性界面活性剤としての活性水素を有する化合物へのアルキレンオキサイド付加物は、分子中に含まれるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなるものが好ましく用いられる。分子中に含まれるオキシアルキレン基が2種以上であるアルキレンオキサイド付加物においては、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0023】
本発明においては、非イオン性界面活性剤として、前記したアルキレンオキサイド付加物に代えて、またはこれらに加えて、他のタイプの非イオン性界面活性剤も用いることができる。そのようなタイプとしては、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸モノエステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどを挙げることができる。
【0024】
本発明において用いる溶剤としては、水、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、炭酸プロピレン、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、灯油、ガソリン、鉱物油等の炭化水素系溶剤等が挙げられ、それぞれ単独または混合して使用することができる。また、茎葉処理農薬の実使用場面で水希釈されていること、環境への負荷軽減、安全性面およびコスト面を考慮すると、水が好ましく用いられる。
【0025】
本発明の農薬用展着剤組成物の製造方法としては、例えば、溶剤として水を使用する場合、ホモミキサー(高速乳化ミキサー)などの攪拌機を設置したステンレス容器に、シリコーンオイルおよび界面活性剤の所定量を投入して加温せずに攪拌し、所定量の水を少量ずつ添加して転相乳化を行うことにより目的の組成物を水中油型エマルションとして得ることができる。
また、灯油等の他の溶媒を使用する場合、例えば、プロペラシャフト付攪拌機(EYELA社製D.CスターラーMDC−NS)、およびサーモスタット付加熱装置を設置したステンレス容器に、所定量の溶媒を添加した後、シリコーンオイルおよび界面活性剤成分の所定量を添加し、40〜50℃で攪拌して溶解し、目的の組成物を溶液として得ることができる。
【0026】
また、本発明においては、農薬用展着剤組成物の上記配合に加えて、従来より農薬製剤に一般的に使用されている他の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、4,5−ジクロル−3H−1,2−ジチオール−3−オン、メチレンビスチオシアネートなどの防腐剤、キサンタンガムなどの増粘剤、消泡剤、あるいはpH調節剤(緩衝剤を含む)などを含有することも可能である。
【0027】
本発明では、農薬用展着剤組成物中のシリコーンオイルと界面活性剤との配合割合は、重量比でシリコーンオイル/界面活性剤=1/99〜99/1であればよく、好ましくは10/90〜99/1、より好ましくは20/80〜95/5であるのがよい。また、農薬用展着剤組成物中のシリコーンオイルと界面活性剤との合計量に対する溶剤の配合割合は、重量比で該合計量/溶剤=100/0〜1/99であればよく、好ましくは100/0〜5/95、より好ましくは100/0〜10/90であるのがよい。
【0028】
次に、本発明の農薬用展着剤組成物を用いる、耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法について説明する。
【0029】
茎葉処理農薬製剤は、その使用の際に溶媒(通常水)で所定濃度に希釈され、農薬散布液が調製される。本発明の農薬用展着剤組成物は、従来の展着剤と同様、この農薬散布液の調製時に茎葉処理農薬製剤とタンク混合するとよい。
【0030】
本発明の農薬用展着剤組成物は、種々の農薬活性成分を含有する茎葉処理農薬製剤の農薬散布液調製時に使用することができる。農薬活性成分としては、「農薬ハンドブック2005年版」(社団法人日本植物防疫協会、2005年10月)に記載のフェノキシ酸系除草剤、ジフェニルエーテル系除草剤、カーバメート系除草剤、酸アミド系除草剤、尿素系除草剤、スルホニル尿素系除草剤、トリアジン系除草剤、ダイアジン系除草剤、ダイアゾール系除草剤、ビピリジリウム系除草剤、ジニトロアニリン系除草剤、芳香族カルボン酸系除草剤、脂肪酸系除草剤、有機リン系除草剤、アミノ酸系除草剤等の除草剤;銅殺菌剤、無機殺菌剤、有機硫黄殺菌剤、有機塩素系殺菌剤、有機リン系殺菌剤、ベンゾイミダゾール系殺菌剤、ジカルボキシイミド系殺菌剤、酸アミド系殺菌剤、エルゴステロール生合成阻害剤、抗生物質殺菌剤等の殺菌剤;有機リン系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、ネライストキシン系殺虫剤、昆虫成長制御剤等の殺虫剤が挙げられる。特に、アミノ酸系除草剤を活性成分として含む農薬製剤に好適に用いられる。
【0031】
前記した茎葉処理農薬製剤の剤型としては、乳剤、液剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル製剤、EW製剤(O/Wエマルジョン)、サスポエマルジョン等、茎葉処理で採用できる剤型であればいずれでもよい。
【0032】
本発明の農薬用展着剤組成物を用いる、耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法においては、農薬用展着剤組成物および茎葉処理農薬製剤の割合は、農薬用展着剤組成物:茎葉処理農薬製剤=3:1〜1:10であるのがよく、好ましくは2:1〜1:3であるのがよい。
【0033】
希釈液の水量については、使用する茎葉処理農薬製剤のラベルの記載に従って適宜設定すればよい。一般的には、10aあたり25リットル〜300リットルの水量で散布される。
【0034】
本発明の農薬用展着剤組成物および茎葉処理農薬製剤の希釈液は、噴霧器を用いて防除しようとする植物の茎葉に噴霧散布すればよい。このとき、地上での散布以外に、有人の航空機、ヘリコプターや無人ラジコンヘリコプターを使用しての空中からの散布も可能である。
【0035】
また、本発明の農薬用展着剤組成物は、前記した農薬活性成分を含有する茎葉処理農薬製剤の製造に用いることもできる。すなわち、製造工程の何れかにおいて本発明の組成物を添加する工程を有する茎葉処理農薬製剤の製造方法に供される。この場合、本発明の組成物は、茎葉処理農薬製剤を構成する成分の1つとして茎葉処理農薬製剤を製造する一連の工程の何れかにおいて配合してもよいし、別途調製された茎葉処理農薬製剤に更に配合してもよい。
【0036】
本発明の農薬用展着剤組成物を茎葉処理農薬製剤の製造に用いる場合、本発明の農薬用展着剤組成物と、農薬原体(農薬としての有効成分)とを含有する茎葉処理農薬組成物が提供される。茎葉処理農薬組成物中、本発明の農薬用展着剤組成物は、前記したシリコーンオイルが1〜40重量%となるように配合されるのが好ましい。
【0037】
また、前記農薬組成物の製剤型は、乳剤、液剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル製剤、EW製剤(O/Wエマルジョン)、サスポエマルジョン等、茎葉処理で採用できる剤型であればいずれでもよい。従って、その製剤型に応じた他の添加剤、例えば乳化剤、溶剤、分散剤、担体等を含有するものであってもよい。前記農薬組成物は、製剤型に応じた方法で対象に適用されるが、例えばかかる農薬組成物を水で希釈して植物に散布する、農薬組成物の適用方法が挙げられる。
【0038】
また、農薬組成物の製剤中に必要に応じてキレート剤、pH調節剤、無機塩類、増粘剤、防腐剤、消泡剤等の添加剤を加えてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」は質量部を示す。
【0040】
(農薬用展着剤の調製)
実施例1<農薬用展着剤(1)>
TKホモミクサー(商品名、プライミクス(株)製)を設置したステンレスビーカーに、ジメチルポリシロキサン〔25℃での動粘度(以下、単に動粘度ということがある。) 100mm2/s、信越化学工業(株)製の「KF−96−100CS」〕36.0部、平均炭素数10の高級アルコールEO平均7モル付加物2.3部および平均炭素数10の高級アルコールEO平均5モル付加物1.8部を投入して25℃で攪拌し、TKホモミクサーの回転数を5000rpmまで上げて強く攪拌し、25℃の水59.89部を少量ずつ添加して転相乳化を行い、水中油型エマルションを得た。これに2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン水溶液(50%)0.01部を加えて回転数800rpmで攪拌し、農薬用展着剤(1)を得た。
【0041】
実施例2<農薬用展着剤(2)>
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(動粘度100mm2/s)の代わりに、ジメチルポリシロキサン(動粘度200mm2/s、信越化学工業(株)製の「KF−96−200CS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、農薬用展着剤(2)を得た。
【0042】
実施例3<農薬用展着剤(3)>
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(動粘度100mm2/s)の代わりに、ジメチルポリシロキサン(動粘度500mm2/s、信越化学工業(株)製の「KF−96−500CS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、農薬用展着剤(3)を得た。
【0043】
実施例4<農薬用展着剤(4)>
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(動粘度100mm2/s)の代わりに、ジメチルポリシロキサン(動粘度3000mm2/s、信越化学工業(株)製の「KF−96−3000CS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、農薬用展着剤(4)を得た。
【0044】
実施例5<農薬用展着剤(5)>
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(動粘度100mm2/s)の代わりに、アミノ変性シリコーンオイル(動粘度3500mm2/s、官能基当量2000g/mol、信越化学工業(株)製の「KF−861」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、農薬用展着剤(5)を得た。
【0045】
実施例6<農薬用展着剤(6)>
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(動粘度100mm2/s)の代わりに、ジメチルポリシロキサン(動粘度10000mm2/s、信越化学工業(株)製の「KF−96−10000CS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、農薬用展着剤(6)を得た。
【0046】
比較例1<農薬用展着剤(1比)>
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(動粘度100mm2/s)の代わりに、ジメチルポリシロキサン(動粘度20mm2/s、信越化学工業(株)製の「KF−96−20CS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、農薬用展着剤(1比)を得た。
【0047】
比較例2<農薬用展着剤(2比)>
実施例1において、ジメチルポリシロキサン(動粘度100mm2/s)の代わりに、ジメチルポリシロキサン(動粘度30000mm2/s、信越化学工業(株)製の「KF−96−30000CS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、農薬用展着剤(2比)を得た。
【0048】
(試験例(圃場試験))
株式会社日新化学研究所・高槻本社工場内の緑地帯に自然発生した植物(エノコログサ(Setaria viridis)、メヒシバ(Digitaria ciliaris)、エビスグサ(Senna obtusifolia)、カタバミ(Oxalis corniculata))を試験植物として用いた。緑地帯を50cm×50cmの区画分けして、各試験区とした。各試験区内の前記植物が草丈20〜30cmに成長した時、モンサント社製非選択性除草剤・ラウンドアップ(登録商標)(グリホサート・イソプロピルアミン塩41%液)62.5マイクロリットル(250ml製剤/10a相当)を25ml(100リットル/10a相当)の水で希釈し、そこへ前記した各種農薬用展着剤62.5マイクロリットル(250ml製剤/10a相当)を添加して調製した薬液を、農薬散布器を用いて各試験区にそれぞれ茎葉処理した。
【0049】
薬液の茎葉処理完了から15分経過後、水道水を充填した別の農薬散布器を用いて48mm/時間の人工降雨を10分間行なった。
【0050】
処理6日後および23日後の各試験植物に対する除草効果を、目視観察により0(除草効果なし)〜100(完全枯殺)で判定した。また、上記試験は、比較のために、前記農薬用展着剤を添加しない場合(除草剤のみの処理)も行なった。結果を表1および表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
表1および表2より、各試験植物に対するグリホサート・イソプロピルアミン塩の除草効果は、展着剤無添加の場合、処理15分後の人工降雨により著しく低下している(比較例3)。一方、各種農薬用展着剤を添加すると、処理15分後の人口降雨による除草効果の低下は特に、実施例1〜6で抑制されており、耐雨性が改善されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃での動粘度90〜20000mm2/sのシリコーンオイル、および界面活性剤を含有する、ことを特徴とする、茎葉処理農薬用展着剤組成物。
【請求項2】
さらに溶剤を含有する、請求項1に記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物。
【請求項3】
前記シリコーンオイルがジメチルポリシロキサンまたはその誘導体である、請求項1または2に記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物と、茎葉処理農薬とを含有する、ことを特徴とする、茎葉処理農薬組成物。
【請求項5】
茎葉処理農薬の施用において、請求項1〜3のいずれかに記載の茎葉処理農薬用展着剤組成物を、茎葉処理農薬と混合して用いることを特徴とする、耐雨性の改善された茎葉処理農薬施用方法。

【公開番号】特開2011−219406(P2011−219406A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89506(P2010−89506)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(502264991)株式会社日新化学研究所 (11)
【Fターム(参考)】