説明

迷子判断装置、及び迷子判断方法

【課題】環境の要因によって受信成功率が大きく変化する場合、迷子判定の精度を維持することができない。
【解決手段】本発明の親の端末40は、子の端末10が一定間隔で発信する信号を受信するタグID受信部41と、タグID受信部41が、子の端末10が一定間隔で発信する信号を受信しなかった場合に、該信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値に従って子の端末10を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断部48と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迷子を判断する迷子判断装置、及び該迷子判断装置において実行される迷子判断方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、無線IDタグを利用した迷子検出方法として、子供が所持する無線ICタグからの信号を施設内に設置したICタグリーダが受信できなかった時間が所定時間経過した場合、或いは、親と子とが所持する両ICタグの距離が所定距離以上となった場合に、迷子であることを検出する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−33310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際には、無線ICタグが発信した信号をICタグリーダが受信できない要因として、無線ICタグとICタグリーダとの距離が通信可能距離以上に離れてしまった場合(すなわち、親と子との距離が離れた、或いは子が施設の外にでてしまった等、子が迷子である可能性が高い場合)に限らず、無線ICタグとICタグリーダとの間に障害物が存在する場合、ICタグリーダが一の無線ICタグからの信号を受信中には他の無線ICタグは待たなければならないため信号の発信が行えなかった場合、或いは、ICタグリーダの受信可能範囲が施設内の全面積を覆っていない場合等、種々の要因が存在する。
【0005】
これら、種々の要因によって無線ICタグが発信した信号をICタグリーダが受信できない割合は、ICタグリーダの配置態様、施設内の人口密度等によって大きく変動する。
【0006】
よって、無線ICタグが送信した信号を受信できなかった時間、或いは受信できなかった回数に閾値を設けて迷子であることを検出する方法では、受信できない割合が大きく変化する実際の環境では実用に耐え得る精度を出すことができない問題があった。
【0007】
また、親と子とが所持する両ICタグの距離に閾値を設けて迷子であることを検出する方法は、無線ICタグが送信した信号を受信できることを前提としている。従って、上記のような種々の要因によって信号を受信できなかった場合、実用に耐え得る精度を出せない問題(例えば、最初に迷子を検知できた時には既に迷子となっている状態であり、通知が遅れる等)があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、種々の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことができる迷子判断装置、及び迷子判断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の迷子判断装置は、被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断装置であって、被迷子判断装置が所定間隔で発信する信号を受信する信号受信手段と、信号受信手段が、信号を受信しなかった場合に、該信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値に従って被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断手段と、を備える。
【0010】
このように構成された迷子判断装置は、信号の未受信の原因が、被迷子判断装置が信号受信手段の受信可能範囲の外に出てしまった(すなわち迷子になりかけている)ことではなく、その他の例えば、無線ICタグとICタグリーダとの間に障害物が存在する場合、ICタグリーダが一の無線ICタグからの信号を受信中には他の無線ICタグは待たなければならないため信号の発信が行えなかった場合、或いは、ICタグリーダの受信可能範囲が施設内の全面積を覆っていない場合等の、環境の要因に基づいている可能性を判断し、該環境の要因に基づいている可能性が十分に低い場合に迷子であることを判断することとなる。従って、環境の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明の迷子判断装置は信号受信手段による信号の受信の履歴である第1の受信履歴を保持する受信履歴保持手段と、信号受信手段は信号を受信したか否かを判断する第1の受信判断手段と、被迷子判断装置が所定間隔で発信する信号を連続して受信できなかった回数である連続未受信回数を保持する連続未受信回数保持手段と、を更に備え、迷子判断手段は、第1の受信判断手段が信号受信手段は信号を受信しなかったと判断した場合に、受信履歴保持手段が保持する第1の受信履歴から、信号受信手段が信号を受信しなかった割合である第1の未受信率を算出する未受信率算出手段と、迷子判断手段が信号受信手段は信号を受信しなかったと判断した場合に、未受信率算出手段が算出した第1の未受信率と、連続未受信回数保持手段が保持する連続未受信回数とに基づいて誤差可能性値を算出する誤差可能性算出手段と、誤差可能性算出手段が算出した誤差可能性値が所定の閾値以下である場合に、被迷子判断装置を所持する者が迷子であると判断する許容判断手段と、を含んで構成される、ことが好適である。
【0012】
このように構成された迷子判断装置は、環境の要因によって信号を受信しなかった割合である未受信率、及び受信の未受信が連続した回数である連続未受信回数から誤差可能性値を算出し、該誤差可能性値が所定の閾値以下となった場合に迷子を判断することとなる。このように環境の要因による未受信率を考慮することにより、環境の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の迷子判断装置は、被迷子判断装置が所定間隔で発信した信号を受信する、迷子判断装置とは別に配置される受信装置による信号の受信の成否に関する情報である受信情報を受信する無線通信手段を更に備え、迷子判断手段は、信号受信手段は被迷子判断装置が所定の間隔で発信した信号を受信しなかった場合に、受信装置は被迷子判断装置が所定間隔で発信した信号を受信したか否かを判断する第2の受信判断手段を更に備え、受信履歴保持手段は、受信装置による信号の受信の履歴である第2の受信履歴を更に保持し、未受信率算出手段は、第2の受信判断手段は受信装置が信号を受信しなかったと判断した場合に、受信履歴保持手段が保持する第2の受信履歴から、受信装置が信号を受信しなかった割合である第2の未受信率を更に算出し、誤差可能性算出手段は、第2の受信判断手段は受信装置が信号を受信しなかったと判断した場合に、未受信率算出手段が算出した第1の未受信率及び第2の未受信率と、連続未受信回数保持手段が保持する連続未受信回数とに基づいて誤差可能性値を算出する、ことが好適である。
【0014】
これにより、迷子判断装置の受信状況のみならず、迷子判断装置とは別に配置された受信装置の受信状況をも考慮することにより、迷子判定の精度をより高めることが可能となる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の迷子判断方法は、被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断装置において実行される迷子判断方法であって、迷子判断装置が、被迷子判断装置が所定間隔で発信する信号を受信する信号受信ステップと、信号受信ステップにおいて、信号を受信しなかった場合に、該信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値に従って被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断ステップと、を含む。
【0016】
このように構成された迷子判断方法によれば、信号の未受信の原因が、被迷子判断装置が信号受信手段の受信可能範囲の外に出てしまった(すなわち迷子になりかけている)ことではなく、その他の例えば、無線ICタグとICタグリーダとの間に障害物が存在する場合、ICタグリーダが一の無線ICタグからの信号を受信中には他の無線ICタグは待たなければならないため信号の発信が行えなかった場合、或いは、ICタグリーダの受信可能範囲が施設内の全面積を覆っていない場合等の、環境の要因に基づいている可能性を判断し、該環境の要因に基づいている可能性が十分に低い場合に迷子であることを判断することとなる。従って、環境の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、種々の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の迷子判断システムの機能構成を示す図である。
【図2】図1に示すタグID受信部及び無線通信部が一時的に蓄えている情報の例を示す図である。
【図3】図1に示す受信履歴保持部が保持している情報の例を示す図である。
【図4】図1に示す迷子判断部の機能構成を示す図である。
【図5】図1に示す迷子判断部による処理を説明するための図である。
【図6】図1に示す子の端末、空間の受信器、及び親の端末の物理的構成を示す図である。
【図7】図1に示す迷子判断システムにおける処理の流れを示す図である。
【図8】図7に示す迷子判断処理の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る移動通信端末について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に本実施形態における迷子判断システム1の機能構成を示す。図1に示すように、本実施形態の迷子判断システム1は、子の端末(被迷子判断装置)10、空間の受信装置(受信装置)20、サーバ30、及び親の端末(迷子判断装置)40を含んで構成されている。
【0021】
子の端末10は、迷子であることを判断する対象の者が所持する端末である。具体的には、子の端末10は、図示しない発信部を含んで構成される。
【0022】
子の端末10の図示しない発信部は、子の端末10を表示するタグIDを保持する機能、並びに、所定の時間間隔で、保持するタグIDを空間の受信装置20及び親の端末40に対して発信する機能を有する。
【0023】
ここで、タグIDとは、後述の親の端末40によって、子の端末10は対応する子の端末10であることを認識することが可能となるように設定され、かつ、後述のサーバ30によって子の端末10と後述の親の端末40との対応関係を認識することが可能となるように設定された識別子である。例えば、タグIDは、子の端末10及び親の端末40に対して重複することなく予め設定されていても良いし、百貨店或いは公園などの施設に入場する都度、その施設内において重複がないように設定されても良い。
【0024】
本実施形態において子の端末10が信号を発信する所定の時間間隔として5秒を用いる。但し、これに限定しない。所定の時間間隔は任意に設定可能である。時間間隔を短くすることで迷子であることをより短時間で判断することが可能となる。時間間隔を長くすることで、迷子判断システム1における処理負担を軽減することが可能となる。所定の時間間隔は、必ず一定である必要はない。所定の時間間隔として、状況に応じて変化する時間間隔を用いてもよい。
【0025】
本実施形態において、子の端末10として携帯電話を用いて発明を説明する。但し、これに限定する必要はない。子の端末10として、簡易型携帯電話機(PHS:Personal Handy-phone System)、通信機能を有する携帯型情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、或いは、ノート型パソコン(PC:Personal Computer)を用いても良い。
【0026】
後述の通り、本実施形態においては、子の端末10と親の端末40とは同様の物理的構成の端末を用いているが、子の端末10と親の端末40の物理的構成は異なっていても良い。その場合、子の端末10は物理的には、ICタグを内蔵したカードのようなものでも良い。
【0027】
本実施形態においては、RFID(Radio Frequency Identification)の技術を用いる。従来のRFIDタグ技術は、電波の送出方法の仕組みの違いにより主としてアクティブタグとパッシブタグとに分類することが可能である。このうちアクティブタグは電源部を備えており、自ら電波を放出する。一方パッシブタグは受信した電波を反射する形態で通信を行う。
【0028】
通信可能距離は、パッシブタグでは数センチ程度が主流であるが、アクティブタグでは数メートルから数キロメートルの距離での通信が可能の場合もある。
【0029】
RFID技術において用いる電磁波、及びその周波数も様々なものが実用化されている。
【0030】
本実施形態においては、パッシブタグ、アクティブタグ、電磁波、及び周波数において特に限定する必要はない。
【0031】
RFID技術に限らず、親の端末40及び空間の受信装置20によって、子の端末10が近傍に存在することを所定の時間間隔で判断することが可能である技術であれば、考え得るどのような技術であっても応用可能である。
【0032】
空間の受信装置20は、空間の受信装置20が設置された場所の付近に子の端末10が存在するか否かを判断する装置である。具体的には、空間の受信装置20は図示しない受信部及び図示しない送信部を含んで構成される。
【0033】
空間の受信装置20における図示しない受信部は、子の端末10が所定の時間間隔で発信する、子の端末10を表示するタグIDを含む信号を受信する機能、及び該信号を受信した場合に、該信号を受信した時刻である受信時刻を得る機能を有する。
【0034】
空間の受信装置20における図示しない送信部は、受信部が信号を受信すると、該信号に含まれているタグIDと、受信部が得た受信時刻とを含んで構成される受信情報を後述のサーバ30に対して送信する機能を備える。
【0035】
空間の受信装置20は、予め固有の識別子が付与されており、該固有の識別子を上記受信情報に含めてサーバ30に送信しても良い。このような構成とすることによって、子の端末10の概略の現在位置を把握することが可能となる。
【0036】
空間の受信装置20の具体例として、例えば、特定の施設内に配置されたタグリーダを用いることが可能である。本実施形態においては、子の端末10における図示しない発信部は、子の端末10を表示するタグIDを送信する機能を備えれば良く、子の端末10と空間の受信装置20との間の通信時において、子の端末10が保持する情報を書き変える必要はない。従って、空間の受信装置20における図示しない受信部が備える機能として、少なくとも子の端末10が送信したタグIDを受信する機能があれば、書込みを行う機能は必ずしも必要ではない。
【0037】
本実施形態において説明のために用いる、空間の受信装置20が設置されている特定の施設は、好適には百貨店或いは公園等の施設である。
【0038】
サーバ30は、公衆網を介して空間の受信装置20及び後述の親の端末40と通信可能な状態で接続している。サーバ30は、空間の受信装置20が送信した受信情報を適切な親の端末40に対して転送する装置である。
【0039】
具体的には、サーバ30は、対応保持部31、通信制御部32、及び対応検索部33を含んで構成されている。
【0040】
対応保持部31は、子の端末10と親の端末40との間の対応関係を保持する機能を有する。具体的には、対応保持部31は、子の端末10を表示するタグIDと、後述の親の端末40を表示するタグIDとを関連づけて保持している。
【0041】
子の端末10を表示するタグIDと、後述の親の端末40を表示するタグIDとの対応関係は事前に登録されていてもよい。
【0042】
例えば、対応関係は、百貨店或いは公園等の施設内に入る際に登録されても良い。或いは、端末の購入時に予め登録されても良い。
【0043】
子の端末10と親の端末40との対応関係は、1対1である必要はなく、一つの親の端末40に対して複数の子の端末10が登録されていても良い。
【0044】
通信制御部32は、空間の受信装置20とサーバ30との間、及びサーバ30と親の端末40との間の通信を制御する機能を有する。
【0045】
具体的には、通信制御部32は、空間の受信装置20から受信情報を受信し、後述の対応検索部33へ出力する。また、対応検索部33から受信情報及び親の端末40を表示するタグIDを入力(後述)すると、該タグIDが表示する後述の親の端末40に対して受信情報を送信する。
【0046】
対応検索部33は、空間の受信装置20が送信した受信情報を通信制御部32を介して受信する機能、対応保持部31を検索することで、受信情報に含まれるタグIDに関連付けられて保持されているタグIDを、親の端末40を表示するタグIDとして得る機能、及び、該得た親の端末40を表示するタグIDと、受信情報とを通信制御部32に対して出力する機能を有する。
【0047】
本実施形態においてサーバ30は物理的にはネットワーク上に存在するサーバを用いることが可能である。サーバ30が有するそれぞれの機能は、物理的に単一のサーバによって実現されていても良いし、サーバ群によって分散的に実現されていても良い。
【0048】
次に、親の端末40が有する機能について説明する。
【0049】
親の端末40は、具体的には、タグID受信部(信号受信手段)41、無線通信部(無線通信手段)42、受信履歴保持部(受信履歴保持手段)43、受信履歴生成部44、第1の受信判断部(第1の受信判断手段)45、連続未受信回数更新部46、連続未受信回数保持部(連続未受信回数保持手段)47、迷子判断部(迷子判断手段)48、及び迷子通知部49を含んで構成されている。
【0050】
タグID受信部41は、対応する子の端末10を表示するタグIDを保持する機能、子の端末10が所定の時間間隔で送信した信号を受信する機能、受信した信号に含まれているタグIDとタグID受信部41が保持しているタグIDとが同一であるか否かを判断する機能、同一であった場合に、タグID受信部41が信号を受信した時刻である受信時刻を得る機能、及び、同一であった場合に、タグID及び受信時刻を一時的に蓄えておく(バッファ)機能を有する。
【0051】
タグID受信部41は、更に、タグID受信部41が保持しているタグIDと、受信した信号に含まれているタグIDが異なる場合には受信した信号を破棄する機能を有しても良い。
【0052】
タグID受信部41は、百貨店或いは公園などの施設内に入場する時点で子の端末10と親の端末40との対応関係をサーバ30に登録する場合に、サーバ30から子の端末10を表示するタグIDを受信し、該タグIDを保持してもよい。購入時、或いはその後に子の端末10を表示するタグIDを、サーバ30から、或いは直接子の端末10から受信し、該タグIDを保持してもよい。
【0053】
子の端末10と親の端末40との対応関係は、1対1である必要はなく、タグID受信部41は、子の端末10を表示するタグIDを複数保持していても良い。
【0054】
無線通信部42は、対応する子の端末10を表示するタグIDを保持する機能、サーバ30が送信した受信情報を受信する機能、受信した受信情報に含まれているタグIDと無線通信部42が保持しているタグIDとが同一であるか否かを判断する機能、及び、同一であった場合に受信した受信情報に含まれている受信時刻を一時的に蓄えておく(バッファ)機能を有する。
【0055】
無線通信部42は、更に、無線通信部42が保持しているタグIDと、受信した受信情報に含まれているタグIDが異なる場合には受信した受信情報を破棄する機能を有しても良い。
【0056】
図2に、タグID受信部41及び無線通信部42が一時的に蓄えている情報の例を示す。図2(A)に示す例は、タグID受信部41が、図2(B)に示す例は、無線通信部42がそれぞれ一時的に蓄えている情報の例である。
【0057】
これらの図に例示したように、タグID受信部41及び無線通信部42は、信号或いは受信情報を受信した順番に、受信時刻を一時的に蓄えている。図2の例では、より上部に記載された情報ほどより後(より現在に近い時刻)に受信した情報であり、より下部に記載された情報ほどより先(より昔の時刻)に受信した情報である。
【0058】
上述の通り、図2(A)に記載した受信時刻は、親の端末40のタグID受信部41が信号を受信した時刻であり、図2の(B)に記載した受信時刻は、空間の受信装置20の図示しない受信部が信号を受信した時刻である。従って、タイムラグが生じた場合には、両受信時刻が厳密には同時刻ではない場合も考え得る。しかし、子の端末10が信号を発信する時間間隔を例えば5秒とし、受信に失敗した場合の再発信を考慮しない場合には、タイムラグは問題とはならず、両受信時刻は、子の端末10が信号を発信した時刻と実質的に同一視できる。
【0059】
なお、本実施形態において、空間の受信装置20の図示しない受信部が受信時刻を得ているが、サーバ30における通信制御部32が受信情報を受信した時刻を得て、該得た時刻を受信時刻としても良い。或いは、無線通信部42が受信情報を受信した時刻を得て、該得た時刻を受信時刻としても良い。
【0060】
受信履歴保持部43は、タグID受信部41による信号の受信の履歴である第1の受信履歴、及び、空間の受信装置20による信号の受信の履歴である第2の受信履歴を保持する機能を有する。以後、第1の受信履歴及び第2の受信履歴の両方を指して“受信履歴”と称する。
【0061】
図3に、受信履歴保持部43が保持している受信履歴の例を示す。図3に例示したように、受信履歴保持部43は、子の端末10が一定間隔で送信した信号を、空間の受信装置20及び親の端末40において受信したか否かに関する情報を、受信時刻毎に受信した順に保持している。
【0062】
受信履歴生成部44は、子の端末10が一定時間間隔で送信した信号を、空間の受信装置20及び親の端末40において受信したか否かを、受信時刻毎に受信した順に表示する表である受信履歴を作成する機能を有する。
【0063】
具体的に、受信履歴生成部44は、時計441、バッファ参照部442、及び書込部443を含んで構成されている。
【0064】
時計441は、子の端末10が信号を発信する所定の時間間隔毎(本実施形態においては5秒毎)に後述のバッファ参照部442に対して、前回の通知以降所定の時間が経過した旨の通知を出力する機能を有する。
【0065】
バッファ参照部442は、時計441から前回の通知以降所定の時間が経過した旨の通知を入力すると、タグID受信部41及び無線通信部42が一時的に蓄えている受信時刻を参照する機能、並びに、タグID受信部41及び無線通信部42のそれぞれについて、該一時的に蓄えている受信時刻の中に前回参照した時刻以降現在までの時間を表示する受信時刻が含まれている場合には受信している旨を後述の書込部443に対して通知し、含まれていない場合には受信していない旨を後述の書込部443に対して通知する機能を有する。
【0066】
書込部443は、バッファ参照部442による通知に従って受信履歴保持部43に対して情報履歴を書込む機能、及び、受信履歴を書込んだ時点で、書込んだ旨の通知を第1の受信判断部45に対して行う機能を有する。
【0067】
具体的には、書込部443は、タグID受信部41及び無線通信部42に関して受信した旨或いは受信していない旨の通知をバッファ参照部442から受けると、タグID受信部41及び無線通信部42毎に、該通知の内容を受信履歴保持部43が保持する第1の受信履歴(タグID受信部41に対応)及び第2の受信履歴(無線通信部42に対応)の最後に書き込む。
【0068】
書込部443は、バッファ参照部442からの通知の内容を上記方法によって受信履歴保持部43が保持する情報に書き込みを行った時点で、その旨を後述の第1の受信判断部45に対して通知する。
【0069】
図2及び3を用いて、以上説明した処理の内容を概念的に説明する。
【0070】
図2に示した例では、タグID受信部41は、子の端末10が00時00分55秒に発信した信号を受信しなかったことが分かる(図2(A)参照)。また、空間の受信装置20の図示しない受信部は、子の端末10が00時00分40秒、及び00時00分30秒に発信した信号を受信しなかったことが分かる(図2(B)参照)。
【0071】
図3における「時刻」は、図中“T1”から“T10”に向かって時系列で並んでいる。「親の端末」の行には、タグID受信部41が信号を受信できたか否かに関する情報(第1の受信履歴)を保持し、「空間の受信装置」の行には、空間の受信装置20の図示しない受信部が信号を受信できたか否かに関する情報(第2の受信履歴)を保持する。
【0072】
図3中“Y”は信号を受信したことを意味し、“N”は信号を受信しなかったことを意味する。図3は、受信履歴生成部44が、00時00分55秒以後、最初にテーブル作成の処理が終了した直後における受信履歴保持部43に保持されている受信履歴の例を示している。この時点では、図3におけるT1には、00時00分10秒に子の端末10が発信した信号に関する情報が保持されている。図3におけるT2には、00時00分15秒に子の端末10が発信した信号に関する情報が保持されている。以後、T3〜T10には、T10の00時00分55秒に子の端末10が発信した情報まで、5秒毎の情報が保持されている。
【0073】
受信履歴生成部44が、00時00分55秒以後、最初にテーブルを作成する処理においては、バッファ参照部442は、最初に、タグID受信部41及び無線通信部42が一時的に蓄えている情報(図2に例示する情報)を参照する。無線通信部42が一時的に蓄えている情報(図2(B))を参照すると、00時00分55秒に受信情報を受信した旨の情報が蓄えられているため、バッファ参照部442は、書込部443に対して、空間の受信装置20は信号を受信した旨の通知を行う。
【0074】
一方、タグID受信部41に一時的に蓄えられている情報(図2(A))を参照すると、直近の5秒間の時刻が蓄えられていないため、バッファ参照部442は、書込部443に対して、タグID受信部41は信号を受信しなかった旨の通知を行う。
【0075】
書込部443は、受信履歴保持部43に保持されている情報のうち最新の情報を保持している列(T10)の「親の端末」の欄に対して“Y”を入力し、「空間の受信装置」の欄に対して“N”を入力する。
【0076】
このような処理が、5秒間隔で繰り返されることによって、受信履歴保持部43に図3に示す受信履歴が作成される。
【0077】
以上、図2及び3を用いて、既に機能的に説明している内容と同じ内容について概念的に説明した。
【0078】
第1の受信判断部45は、タグID受信部41が信号を受信したか否かを判断する機能、及び該判断の結果を後述の連続未受信回数更新部46に対して通知する機能を有する。
【0079】
具体的には、第1の受信判断部45は、受信履歴生成部44から、受信履歴保持部43の情報を書き変えた旨の通知を受けると、受信履歴保持部43に保持されている第1の受信履歴の直近の情報(最も現在に近い時刻における情報)を参照することによって、タグID受信部41が直近に子の端末10が発信した信号を受信したか否かを判断する。
【0080】
なお、本実施形態における第1の受信判断部45が、タグID受信部41は信号を受信したか否かを判断するきっかけは、上述の通り、受信履歴保持部43の情報を書き変えた旨の通知を受信履歴生成部44から受けることであるが、他の方法として、第1の受信判断部45は、親の端末40が迷子であるか否かを判断する所定の時間間隔で、タグID受信部41は信号を受信したか否かを判断してもよい。
【0081】
この場合、第1の受信判断部45は、更に、図示しないタイマーを備えても良い。親の端末40が迷子であるか否かを判断する所定の時間は、例えば30秒とすることができる。但し、これに限らない。該所定の時間は、親の端末40の利用者によって予め設定されていても良い。
【0082】
上記の処理を図3に示す例を用いて概念的に説明すると、第1の受信判断部45は、書込部443から受信履歴保持部43の情報を書き変えた旨の通知を入力した時点で、図3に記載した情報のT10の欄の「親の端末」の行に保持されている情報を参照する。
【0083】
図3に示す例では、“N”が保持されているため、タグID受信部41が信号を受信しなかったと判断する。
【0084】
連続未受信回数更新部46は、第1の受信判断部45から、タグID受信部41が信号を受信したか否かの通知を受ける機能、該通知を受けた時点で該通知内容に応じて、後述の連続未受信回数保持部47に保持されている連続未受信回数を更新する機能、及び、第1の受信判断部45からタグID受信部41が信号を受信しなかった旨の通知を入力した場合に後述の迷子判断部48に対して迷子判断処理を実行する命令を通知する。
【0085】
ここで、連続未受信回数とは、タグID受信部41が連続して信号を受信できなかった場合の、該連続回数を指す。
【0086】
具体的には、連続未受信回数更新部46は、第1の受信判断部45からタグID受信部41が信号を受信した旨の通知を受けた場合には、後述の連続未受信回数保持部47に保持されている連続未受信回数を0で更新する(連続未受信回数に0を設定する)。
【0087】
第1の受信判断部45からタグID受信部41が信号を受信しなかった旨の通知を入力した場合には、連続未受信回数更新部46は、後述の連続未受信回数保持部47に現在保持されている連続未受信回数に1を加えて、該1を加えた後の連続未受信回数によって連続未受信回数保持部47に保持されている連続未受信回数を更新する(連続未受信回数に1を加える)。
【0088】
連続未受信回数保持部47は、連続未受信回数を保持する機能を有する。
【0089】
上記構成によって、タグID受信部41が最初に信号を受信しなかった場合に、連続未受信回数として1が設定され、その後、更に連続して信号を受信しなかった場合に、連続未受信回数は2、3と増えてゆくこととなる。タグID受信部41が信号を受信した場合は、その時点における連続未受信回数の値に関わらず、連続未受信回数として0が設定(リセット)されることとなる。
【0090】
迷子判断部48は、連続未受信回数更新部46から迷子判断処理を実行する命令を受ける機能、該迷子判断処理を実行する命令を受けた時点で受信履歴保持部43に保持されている受信履歴を得る機能、連続未受信回数更新部46から迷子判断処理を実行する命令を受けた時点で連続未受信回数保持部47に保持されている連続未受信回数を得る機能、連続未受信回数更新部46から迷子判断処理を実行する命令を受けた時点で、受信履歴と連続未受信回数とに基づいて、信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値を算出する機能、該算出した誤差可能性値に従って子の端末10を所持する者が迷子であるか否かを判断する機能、及び、迷子であると判断した場合に後述の迷子通知部49に対して迷子を知らせる命令を通知する機能を有する。
【0091】
迷子判断部48が有する機能の詳細については後述する。
【0092】
迷子通知部49は、迷子判断部48から、迷子を知らせる命令を受ける機能、及び、該命令を受けた時点で、親の端末40における鳴動等のユーザインターフェース機能(図示せず)を起動させることによって迷子を知らせる機能を有する。
【0093】
次に、図4を用いて迷子判断部48が有する機能について詳述する。図4に示すように、迷子判断部48は、具体的には、第2の受信判断部(第2の受信判断手段)481、未受信率算出部(未受信率算出手段)482、誤差可能性算出部(誤差可能性算出手段)483、及び許容判断部(許容判断手段)484を含んで構成されている。
【0094】
第2の受信判断部481は、連続未受信回数更新部46が通知した迷子判断処理を実行する命令を受ける機能、該命令を受けた場合に、空間の受信装置20は子の端末10が所定時間間隔で発信した信号を受信したか否かを判断する機能、該判断の結果を後述の未受信率算出部482に対して通知する機能を有する。
【0095】
具体的には、第2の受信判断部481は、連続未受信回数更新部46から迷子判断処理を実行する命令を受けた場合に、受信履歴保持部43を参照して、受信履歴保持部43に保持されている第2の受信履歴の直近の情報(最も現在に近い時刻における情報)を参照することによって、空間の受信装置20が直近に子の端末10が発信した信号を受信したか否かを判断する。
【0096】
上記の処理の内容を図3に示す例を用いて概念的に説明すると、第2の受信判断部481は、連続未受信回数更新部46から迷子判断処理を実行する命令を受けた時点で、図3に記載した情報のT10の欄の「空間の受信装置」の行に保持されている情報を参照する。
【0097】
この例では、“Y”が保持されているため、空間の受信装置20が信号を受信したと判断する。
【0098】
未受信率算出部482は、第2の受信判断部481による判断結果の通知を受ける機能、受信履歴保持部43が保持する受信履歴から、信号を受信しなかった割合である未受信率を算出する機能、及び、該算出した未受信率を後述の誤差可能性算出部483に対して出力する機能を有する。
【0099】
具体的には、未受信率算出部482は、第2の受信判断部481が空間の受信装置20が信号を受信しなかったと判断した場合には、受信履歴保持部43に保持されている第1の受信履歴から、タグID受信部41による信号受信における未受信率である第1の未受信率を算出する。
【0100】
未受信率算出部482は、第2の受信判断部481が空間の受信装置20が信号を受信したと判断しなかった場合(受信しなかったと判断した場合)には、受信履歴保持部43に保持されている第1の受信履歴から第1の未受信率を算出し、更に、第2の受信履歴から空間の受信装置20による信号受信における未受信率である第2の未受信率を算出する。
【0101】
本明細書において第1の未受信率及び第2の未受信率を指して“未受信率”と称する。
【0102】
未受信率算出部482が受信履歴から未受信率を算出する方法は既存のあらゆる方法を応用可能である。例えば、過去の所定回数分の履歴から未受信率を算出しても良い。或いは、連続して未受信となる直前より所定の回数分の履歴から未受信率を算出しても良い。
【0103】
図3に示された例を用いて上記の処理内容を具体的に説明する。ここでは、説明の例として、過去10回分の履歴を用いる方法で説明する。
【0104】
この例では、上述の通り、第2の受信判断部481は、空間の受信装置20が信号を受信したと判断する。その場合には、未受信率算出部482は、第1の未受信率として0.1(この例では、10回中1回信号を受信しなかった。図3参照)を算出する。
【0105】
誤差可能性算出部483は、未受信率算出部482から未受信率を入力する機能、連続未受信回数保持部47を参照し、連続未受信回数を得る機能、未受信率及び連続未受信回数に基づいて誤差可能性値を算出する機能、並びに、該算出した誤差可能性値を後述の許容判断部484に対して出力する機能を有する。
【0106】
具体的には、誤差可能性算出部483は、未受信率算出部482から未受信率を入力すると、連続未受信回数保持部47に保持されている連続未受信回数を得る。
【0107】
誤差可能性算出部483は、未受信率算出部482から第1の未受信率のみ入力した場合には、該入力した(第1の未受信率)を、連続未受信回数保持部47から得た(連続未受信回数)乗することによって誤差可能性値を算出する。
【0108】
すなわち、この場合、第1の未受信率をX、連続未受信回数をNとすると、誤差可能性値Eは下記式(1)で表させる。
【数1】

【0109】
誤差可能性算出部483は、未受信率算出部482から第1の未受信率及び第2の未受信率を入力した場合には、該入力した第1の未受信率と第2の未受信率とを乗算し、該乗算した結果を、連続未受信回数保持部47から得た(連続未受信回数)乗することによって誤差可能性値を算出する。
【0110】
すなわち、この場合、第1の未受信率をX、第2の未受信率をX連続未受信回数をNとすると、誤差可能性値Eは下記式(1)で表させる。
【数2】

【0111】
上述の通り、連続未受信回数更新部46は、タグID受信部41が信号を受信した場合に迷子判断処理を実行する命令を出力し、迷子判断部48は、該迷子判断処理を実行する命令を入力した場合に迷子判断処理を行っている。また、誤差可能性算出部483が第1の未受信率のみ入力する場合とは、上述の通り空間の受信装置20が信号を受信した場合である。
【0112】
従って、誤差可能性算出部483は、子の端末10が所定の時間間隔で発信した信号をタグID受信部41が受信しなかったが、空間の受信装置20は受信した場合に第1の未受信率(タグID受信部41が信号を受信しなかった割合)に対して連続未受信回数を累乗することとなる。すなわち、上記式(1)の式を用いる。
【0113】
また、誤差可能性算出部483が第1の未受信率及び第2の未受信率を入力する場合とは、上述の通り空間の受信装置20が信号を受信しなかった場合である。
【0114】
従って、誤差可能性算出部483は、子の端末10が所定の時間間隔で発信した信号をタグID受信部41が受信せず、且つ空間の受信装置20も受信しなかった場合に第1の未受信率(タグID受信部41が信号を受信しなかった割合)及び第2の未受信率(空間の受信装置20が信号を受信しなかった割合)を乗算し、該乗算した結果に対して連続未受信回数を累乗することとなる。すなわち、上記式(2)を用いる。
【0115】
迷子の形態として、子供が特定の施設内にはいるが、親との距離が離れた形態と、子供が施設の外に出てしまっている形態を考えることができる。上記、タグID受信部41が受信しなかったが、空間の受信装置20は受信した場合とは、子供が特定の施設内にいるが、親との距離が離れた形態であると考えられる。この時は、子の端末10が発信した信号を親の端末40におけるタグID受信部41が受信しなかった割合である第1の未受信率を利用する(上記式(1))。
【0116】
一方、上記、タグID受信部41が受信せず、且つ空間の受信装置20も受信しなかった場合とは、子供が施設の外に出てしまっている形態であると考えられる。この場合、第1の未受信率と、子の端末10が発信した信号を空間の受信装置20が受信しなかった割合である第2の未受信率とを乗算した数値を利用する(上記式(2))。
【0117】
許容判断部484は、誤差可能性算出部483から誤差可能性値を入力する機能、該入力した誤差可能性値と所定の閾値との大小関係を判断する機能、誤差可能性値が所定の閾値以下である場合に、子の端末10を所持する者が迷子であると判断する機能、誤差可能性値が所定の閾値以上である場合に、子の端末10を所持する者が迷子でないと判断する機能、及び、該判断の結果を迷子通知部49に対して出力する機能を有する。
【0118】
ここで、所定の閾値とは、0以上1未満の任意の値である。所定の閾値は、迷子判断システム1の管理者或いは親の端末40を所持する者によって自由に設定可能であっても良い。
【0119】
所定の閾値は、好ましくは0.01より大きく、且つ0.1未満である。所定の閾値を0.01以下とすると、迷子の判定が厳しくなる傾向があり(連続未受信回数が多くても迷子と判断されない傾向に向く)、実際は迷子となっているにもかかわらず迷子であると判断されない場合が考え得る。また、所定の閾値を0.1以上とすると逆に迷子の判定がゆるくなる傾向があり(連続未受信回数が少なくても迷子と判断される傾向に向く)、実際は迷子ではないにもかかわらず迷子と判断される場合が考え得る。
【0120】
但し、状況によっては、所定の閾値を0.1以上(例えば0.5)とすることが良い場合もある。誤通知を避けることよりも、迷子の可能性がわずかでもある場合には必ず通知を受けることがより重要である場合等である。所定の閾値を0.5以上とすることによって、迷子の可能性がわずかでもある場合に、通知を受けることが可能となる。
【0121】
図5に、未受信率毎の誤差可能性値の計算結果を示す。この表に示すように、連続失敗回数の増加に伴って誤差可能性値が減少する。例えば、未受信率が0.4であった場合(すなわち、10回中4回未受信が生じた場合)且つ連続未受信回数が1である場合は、誤差可能性値は0.4となる。2回連続し未受信が生じ、連続未受信回数が2である場合は、誤差可能性値は、0.16となる。以下、連続未受信回数が増えると誤差可能性値は、0.064、0.0256、0.01024、0.004096と少なくなってゆく。
【0122】
無線ICタグとICタグリーダとの間に障害物が存在する場合、ICタグリーダが一の無線ICタグからの信号を受信中には他の無線ICタグは待たなければならないため信号の発信が行えなかった場合、或いは、ICタグリーダの受信可能範囲が施設内の全面積を覆っていない場合等の、環境に要因による信号の未受信は、段続的であると考えられる。
【0123】
一方、子の端末10が空間の受信装置20或いは親の端末40と通信可能である範囲を外れ、迷子の可能性が高い場合には、未受信が連続して生じると考えられる。本実施形態における、連続未受信回数の増加に伴う誤差可能性値の減少は、以上の事実を反映している。
【0124】
連続未受信回数に伴う誤差可能性値の減少は、未受信率(すなわち環境の要因によって生じた未受信の割合)が小さい程急激となる。図5に示すように、例えば未受信率が0.1である場合は、未受信率が0.6である場合と比較して減少が大きい。
【0125】
図5に、所定の閾値を0.03とした場合に、迷子であると判断する境界を罫線を太くすることによって示した。図5に示したように、所定の閾値として0.03を設定した場合、未受信率が0.1の時には、連続未受信回数が2回で迷子を判断することとなる。以下、未受信率と迷子を判断する連続未受信回数との関係は、未受信率0.2に対して3回、未受信率0.3に対して3回、未受信率0.4に対して4回、未受信率0.5に対して6回となる。
【0126】
これは、未受信率が低い、すなわち、環境の要因による未受信が少ない場合には連続未受信回数が少なくても迷子であると判断することを意味している。逆に、未受信率が高い、すなわち、環境の要因による未受信が多い場合には連続未受信回数が多くなければ迷子であると判断しないことを意味している。
【0127】
親の端末40における迷子判断部48をこのような構成とすることによって、環境の要因に基づいている可能性が十分に低い場合に迷子であることを判断することとなり、環境の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことが可能となる。
【0128】
なお、未受信率が0である場合、すなわち、全ての信号の受信に成功した場合は、誤差可能性値は常に0となることを考慮して、最初に未受信を判断した場合には、迷子を判断しないこととしても良い。
【0129】
次に、図6を用いて本実施形態の子の端末10、空間の受信装置20、及び親の端末40の物理的構成について説明する。
【0130】
図6に示すように子の端末10、空間の受信装置20、及び親の端末40は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置101、RAM(Random Access Memory)といった揮発性半導体等のメモリ102、公衆通信網を介した通信を制御する通信装置103、フラッシュメモリーなどの補助記憶部104、テンキーなどの入力装置105、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイなどの出力装置106、及び、近距離の無線通信を行う無線通信部107を備える。
【0131】
子の端末10、空間の受信装置20、及び親の端末40が有する各機能は、制御装置101、メモリ102等のハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、制御装置101の制御のもとで通信装置103、出力装置106、入力装置105、無線通信部107を動作させると共に、メモリ102や補助記憶部104におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。なお、サーバ30の物理的構成は、サーバ30が無線通信部107を含まない点を除いて上記と同様である。
【0132】
なお、本実施形態において子の端末10には、通信装置103、入力装置105、及び出力装置106が必ず必要と言うわけではない。
【0133】
次に、図7を用いて本実施形態の迷子判断システム1における処理の流れについて説明する。
【0134】
子の端末10における図示しない発信部は、子の端末10を表示するタグIDを含んだ信号を所定時間間隔で発信する(ステップS101)。
【0135】
親の端末40におけるタグID受信部41は、子の端末10が所定時間間隔で発信した信号を受信し、タグID受信部41が信号を受信した受信時刻を所定時間蓄積する(ステップS102:信号受信ステップ)。
【0136】
空間の受信装置20における図示しない受信部は、子の端末10が所定時間間隔で発信した信号を受信すると、信号に含まれるタグIDと、空間の受信装置20が該信号を受信した時刻である受信時刻とを含んで構成される受信情報をサーバ30に対して送信する(ステップS103)。
【0137】
サーバ30における対応検索部33は、空間の受信装置20が送信した受信情報を通信制御部32を介して受信すると、対応保持部31を検索し、受信情報に含まれるタグIDに関連付けられて保持されているタグIDを、親の端末40を表すタグIDとして得る(ステップS104)。
【0138】
サーバ30における通信制御部32は、対応検索部33が得たタグIDによって示される親の端末40に対して受信情報を送信する(ステップS105)。
【0139】
親の端末40における無線通信部42は、受信情報を受信し、受信情報に含まれる受信時刻を所定時間蓄積する(ステップS106)。
【0140】
受信履歴生成部44は、子の端末10が信号を発信する所定の時間間隔毎に、タグID受信部41及び無線通信部42を参照することによって、タグID受信部41及び空間の受信装置20による信号の受信の履歴である受信履歴を作成する(ステップS107)。
【0141】
第1の受信判断部45は、タグID受信部41が信号を受信したか否かを、子の端末10が信号を発信する所定時間間隔で、判断する(ステップS108)。
【0142】
第1の受信判断部45はタグID受信部41が信号を受信したと判断した場合(ステップS108において“YES”)、連続未受信回数更新部46は、連続未受信回数に0を設定し、連続未受信回数保持部47に保持する(ステップS109)。
【0143】
第1の受信判断部45はタグID受信部41が信号を受信しなかったと判断した場合(ステップS108において“NO”)、連続未受信回数更新部46は、連続未受信回数保持部47に保持されている連続未受信回数に1を加える(ステップS110)。
【0144】
迷子判断部48は、信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値に従って子の端末10を所持する者が迷子であるか否かを判断する(ステップS111:迷子判断ステップ)。
【0145】
迷子通知部49は、迷子判断部48が迷子を判断した場合に、親の端末40における鳴動等のユーザインターフェース機能(図示せず)を起動させることによって迷子を通知する(ステップS112)。
【0146】
次に、図8を用いて親の端末40における迷子判断処理について説明する。図8に示す処理の流れは、図7におけるステップS111の処理を詳細にしたものである。
【0147】
迷子判断部48における第2の受信判断部481は、受信履歴保持部43を参照することにより、空間の受信装置20は子の端末10が発信した信号を受信したか否かを判断する(ステップS201)。
【0148】
第2の受信判断部481は空間の受信装置20が信号を受信したと判断した場合(ステップS201において“YES”)、未受信率算出部482は、受信履歴保持部43を参照することにより、タグID受信部41による信号の受信における信号未受信の割合である第1の未受信率を算出する(ステップS202)。
【0149】
誤差可能性算出部483は、第1の未受信率を、連続未受信回数保持部47が保持している連続未受信回数乗することによって誤差可能性値を算出する(ステップS203)。
【0150】
第2の受信判断部481は空間の受信装置20が信号を受信しなかったと判断した場合(ステップS201において“NO”)、未受信率算出部482は、受信履歴保持部43を参照することにより、タグID受信部41による信号の受信における信号未受信の割合である第1の未受信率、及び空間の受信装置20による信号の受信における信号未受信の割合である第2の未受信率を算出する(ステップS204)。
【0151】
誤差可能性算出部483は、第1の未受信率と第2の未受信率とを乗算し、該乗算の結果を連続未受信回数乗することによって誤差可能性値を算出する(ステップS205)。
【0152】
許容判断部484は、誤差可能性算出部483が算出した誤差可能性値が所定の許容値である誤差許容値以下であるか否かを判断する(ステップS206)。
【0153】
許容判断部484は、誤差可能性算出部483が算出した誤差可能性値が誤差許容値以下でないと判断した場合(ステップS206において“NO”)、子の端末10を所持する者が迷子であるとは判断しない(ステップS208)。
【0154】
許容判断部484は、誤差可能性算出部483が算出した誤差可能性値が所定の許容値である誤差許容値以下であると判断した場合(ステップS206において“YES”)、子の端末10を所持する者が迷子であると判断する(ステップS207)。
【0155】
次に、本実施形態における迷子判断システム1の作用及び効果について説明する。
【0156】
本実施形態における親の端末40は、タグID受信部41が被迷子判断装置が所定間隔で発信する信号を受信し、迷子判断部48は、タグID受信部41が信号を受信しなかった場合に、該信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値に従って子の端末10を所持する者が迷子であるか否かを判断するため、子の端末10が発信した信号が受信できない原因が、子の端末10が受信可能範囲の外に出てしまった(すなわち迷子になりかけている)ことではなく、その他の例えば、子の端末10と親の端末40との間に障害物が存在する場合、空間の受信装置20が一の子の端末10からの信号を受信中には他の子の端末10は待たなければならないため信号の発信が行えなかった場合、或いは、空間の受信装置20の受信可能範囲が施設内の全面積を覆っていない場合等の、環境の要因に基づいている可能性を判断し、該環境の要因に基づいている可能性が十分に低い場合に迷子であることを判断することとなる。従って、環境の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことが可能となる。
【0157】
また、本実施形態における親の端末40は、より詳細には、未受信率算出部482は、受信履歴保持部43が保持する受信履歴から、未受信率を算出し誤差可能性算出部483は、未受信率算出部482が算出した未受信率と、連続未受信回数保持部47が保持する連続未受信回数とに基づいて誤差可能性値を算出し、許容判断部484は、誤差可能性算出部483が算出した誤差可能性値が所定の閾値以下である場合に、子の端末10を所持する者が迷子であると判断している。
【0158】
従って、環境の要因によって信号を受信しなかった割合である未受信率、及び受信の未受信が連続した回数である連続未受信回数から誤差可能性値を算出し、該誤差可能性値が所定の閾値以下となった場合に迷子を判断することとなる。このように環境の要因による未受信率を考慮することにより、環境の要因によって受信成功率が大きく変化する場合でも、高精度で迷子判定を行うことが可能となる。
【0159】
また、本実施形態の迷子判断システム1は、子の端末10が所定時間間隔で発信した信号を受信する、親の端末40とは別に配置される空間の受信装置20による信号の受信の成否に関する情報である受信情報を受信する無線通信部42を更に備え、空間の受信装置20が信号を受信しなかった場合に、未受信率算出部482は、受信履歴保持部43が保持する受信履歴から、空間の受信装置20による信号の受信における未受信率である第2の未受信率を更に算出し、誤差可能性算出部483は、第1の未受信率と第2の未受信率と連続未受信回数とに基づいて誤差可能性値を算出している。
【0160】
従って、親の端末40の受信状況のみならず、親の端末40とは別に配置された空間の受信装置20の受信状況をも考慮することとなり、迷子判定の精度をより高めることが可能となる。
【0161】
[変形例]
上記実施形態においては、未受信率算出部482は、直近の受信状況から未受信率を算出していたが、予め求められている未受信率を用いても良い。
【0162】
例えば、百貨店において、曜日毎或いは時間帯毎等の未受信率の実績が同様の傾向を示すような場合に有効である。
【0163】
この場合、図示しないサーバ30における保持部が曜日毎或いは時間帯毎の未受信率を保持しておき、親の端末40における無線通信部42が該未受信率の実績を受信してもよい。
【0164】
親の端末40における未受信率算出部482は、無線通信部42が受信した未受信率の実績を得て、該得た未受信率の実績を誤差可能性算出部483に出力しても良い。
【0165】
このような構成とすることによって、直近の未受信率を算出する必要がなくなるため、処理負担が軽減されることとなる。
【0166】
別の変形例として、未受信率は、空間の受信装置20自身が測定をして、その平均値を親の端末40へ通知することとしても良い。
【符号の説明】
【0167】
1…迷子判断システム、10…子の端末、20…空間の受信装置、30…サーバ、31…対応保持部、32…通信制御部、33…対応検索部、40…親の端末、41…タグID受信部、42…無線通信部、43…受信履歴保持部、44…受信履歴生成部、441…時計、442…バッファ参照部、443…書込部、45…第1の受信判断部、46…連続未受信回数更新部、47…連続未受信回数保持部、48…迷子判断部、481…第2の受信判断部、482…未受信率算出部、483…誤差可能性算出部、484…許容判断部、49…迷子通知部。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断装置であって、
前記被迷子判断装置が所定間隔で発信する信号を受信する信号受信手段と、
前記信号受信手段が、前記信号を受信しなかった場合に、該信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値に従って前記被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断手段と、
を備える迷子判断装置。
【請求項2】
前記信号受信手段による前記信号の受信の履歴である第1の受信履歴を保持する受信履歴保持手段と、
前記信号受信手段は前記信号を受信したか否かを判断する第1の受信判断手段と、
前記被迷子判断装置が所定間隔で発信する信号を連続して受信できなかった回数である連続未受信回数を保持する連続未受信回数保持手段と、
を更に備え、
前記迷子判断手段は、
前記第1の受信判断手段が前記信号受信手段は前記信号を受信しなかったと判断した場合に、前記受信履歴保持手段が保持する第1の受信履歴から、前記信号受信手段が前記信号を受信しなかった割合である第1の未受信率を算出する未受信率算出手段と、
前記迷子判断手段が前記信号受信手段は前記信号を受信しなかったと判断した場合に、前記未受信率算出手段が算出した第1の未受信率と、前記連続未受信回数保持手段が保持する連続未受信回数とに基づいて前記誤差可能性値を算出する誤差可能性算出手段と、
前記誤差可能性算出手段が算出した誤差可能性値が所定の閾値以下である場合に、前記被迷子判断装置を所持する者が迷子であると判断する許容判断手段と、を含んで構成される、
請求項1に記載の迷子判断装置。
【請求項3】
前記被迷子判断装置が所定間隔で発信した信号を受信する、前記迷子判断装置とは別に配置される受信装置による前記信号の受信の成否に関する情報である受信情報を受信する無線通信手段を更に備え、
前記迷子判断手段は、前記信号受信手段は前記被迷子判断装置が所定の間隔で発信した信号を受信しなかった場合に、前記受信装置は前記被迷子判断装置が所定間隔で発信した信号を受信したか否かを判断する第2の受信判断手段を更に備え、
前記受信履歴保持手段は、前記受信装置による前記信号の受信の履歴である第2の受信履歴を更に保持し、
前記未受信率算出手段は、前記第2の受信判断手段は前記受信装置が前記信号を受信しなかったと判断した場合に、前記受信履歴保持手段が保持する第2の受信履歴から、前記受信装置が前記信号を受信しなかった割合である第2の未受信率を更に算出し、
前記誤差可能性算出手段は、前記第2の受信判断手段は前記受信装置が前記信号を受信しなかったと判断した場合に、前記未受信率算出手段が算出した第1の未受信率及び第2の未受信率と、前記連続未受信回数保持手段が保持する連続未受信回数とに基づいて前記誤差可能性値を算出する、
請求項2に記載の迷子判断装置。
【請求項4】
被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断装置において実行される迷子判断方法であって、
前記迷子判断装置が、
前記被迷子判断装置が所定間隔で発信する信号を受信する信号受信ステップと、
前記信号受信ステップにおいて、前記信号を受信しなかった場合に、該信号の未受信は環境の要因に基づく未受信である可能性を表す誤差可能性値に従って前記被迷子判断装置を所持する者が迷子であるか否かを判断する迷子判断ステップと、
を含む迷子判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−76242(P2011−76242A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225158(P2009−225158)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度研究開発委託、総務省、ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発(ユビキタス端末技術の研究開発)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】