説明

追跡気管支鏡検査法を用いる腫瘍運動シミュレーションと運動補正のためのシステム及び方法

医療処置において標的の運動を考慮するためのシステムと方法は、内視鏡の位置と配向を追跡するための追跡機構304を含む内視鏡302を含む。記憶装置310は標的組織若しくはその付近に位置するときに内視鏡の位置を記録するように構成される。運動センサ312は臓器の周期的運動が内視鏡と標的組織の記録された位置に関連付けられることができるように臓器の周期的運動を追跡するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はイメージングシステムに、より具体的には医療処置中に内部物体の運動を追跡するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡検査は、肺気道若しくは胃腸系などの内部構造の目視検査のためにカメラが体内に挿入される低侵襲リアルタイム画像診断法である。肺応用の分野において、内視鏡は気管支鏡とも呼ばれる。
【0003】
追跡(tracked)内視鏡検査は、内視鏡の位置を術前コンピュータ断層撮影(CT)画像と関連付け、合成画像を臨床医に表示するために例えば電磁(EM)トラッカなどの位置センサ若しくは追跡装置を用いて内視鏡の先端を追跡することを含む。CT空間とトラッカ空間の間でデータ統合を実現するために、通常はランドマークベースレジストレーション手順がナビゲーションの前に実行される。これらのランドマーク(外部基準マーカ若しくは内部解剖学的ランドマーク)はCT画像において識別され、較正された追跡プローブに触れられる。そして、CT空間とトラッカ空間の間の変換行列を見つけるためにポイントベースレジストレーションが実行される。これは、ナビゲーションキューやインターベンション標的の位置など、CTスキャンからの全体的な情報が気管支鏡からの局所情報に関連付けられることができるように、内視鏡を術前CT画像と合わせるレジストレーション行列を生じる。
【0004】
簡単にするために、以下の文脈では内視鏡の位置と配向を追跡するために使用されることができる任意の小型位置センサをあらわすためにEM追跡センサが記載される。しかしながら、ランドマークベースレジストレーションを介して得られるトラッカ空間とCT空間との間の空間的整合は、ナビゲーションの前に実行され、1回限りのプロセスである。術前CT画像は患者の呼吸停止条件で取得される。従って、このレジストレーション行列は呼吸サイクルの1フェーズにおけるEM‐CT関係しか有効に反映しない。この不正確なマッピングは疑わしい病変の組織生検などの不正確なEMガイド気管支鏡インターベンションを生じ得る。肺呼吸運動のダイナミクスのために、術前に得られる変換行列は肺運動の全フェーズに適合することができない。吸気終末CT画像から得られるレジストレーション行列は呼気終末CT画像の行列と同じではない。固定EM‐CTレジストレーション行列はEM追跡スコープをCT空間に正確にマッピングしない。これは、CT画像が呼吸運動の1フェーズでしか取得されない一方で、EM追跡スコープは肺の呼吸運動と一緒に動いているためである。
【0005】
全呼吸サイクルにわたって患者のCT画像を取得するために4次元コンピュータ断層撮影(4D CT)画像データが利用され得る。4D CTは肺運動の詳細情報を提供する。4D CTは通常は高精度放射線治療中に危険にさらされる腫瘍と臓器によって受信される放射線量を評価するために利用される。一般統計運動モデルが取得され研究されている。新たな研究の運動を予測するために学習された(trained)4Dモデルを用いることは、大きな患者間の変動のために適切な精度をもたらさない可能性がある。4D CTは費用がかかり患者を高放射線にさらすという既知の欠点を持つ。全ての病院が全呼吸サイクルにわたって4D CT画像を取得するために十分なリソースを持つとは限らない。放射線量は望ましくなく、診療報酬は別の問題をもたらす。
【0006】
4D CTのようなEMガイド内視鏡検査は時間的に動的な情報ももたらすことができる。EMガイド内視鏡検査は気道検査によって呼吸する肺についての多くの運動情報を提供する。この情報は十分に活用されず、しばしば1回の内視鏡処置の後、全てのリアルタイム情報は将来の診断若しくは治療計画のためにそのフルスケールで利用されることなく破棄される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者への暴露リスクなしに処置中の内部組織及び臓器の追跡において呼吸運動を考慮することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の原理によれば、運動パラメータの計算及び将来のインターベンション(放射線治療など)のための計画のために1つのEMガイド処置によって得られるこのリアルタイム情報の使用が考慮される。本方法は患者への4D CTの使用を控えることによって絶えず動いている肺組織をナビゲートするために静止CT画像を使用する問題点も考慮する。
【0009】
患者特有の病変若しくは他の関心点の運動モデルを備え、本発明の原理はEM‐CTレジストレーション(呼吸サイクルの1フェーズでしか実行されない)の制限を克服する。本発明の原理は"呼吸する"病変のより現実的なターゲティングのために、その後の放射線治療計画においてよりよい精度をもたらす。
【0010】
特に有用な実施形態によれば、システムと方法は4D CT画像を使用せずに腫瘍若しくは他の組織の運動軌道を追跡する。適合法は位置検出器で局所運動を測定し、追跡内視鏡を用いて腫瘍運動を予測するためにこのデータを使用する。病変の患者特有運動パターンが取得され、同じ内視鏡処置のために、場合によってはその後の内視鏡インターベンション及び放射線治療計画のために使用されることができる。肺の局所運動は剛体変換とみなされる。局所4Dデータを推定し、EM追跡によって発見される腫瘍運動軌道を予測することによって、シミュレーションされたリアルタイムCTガイダンスが提供される。
【0011】
システムと方法は追跡内視鏡を含む。例えばEMトラッカが内視鏡の先端に固定され、又は光学トラッカ若しくは光ファイバブラッググレーティング(FBG)追跡装置が内視鏡に挿入されるか若しくは組み込まれる。その上に腫脹リンパ節若しくは疑わしい癌組織が強調表示され輪郭描写されている術前3D CT画像が提供される。呼吸運動センサは肺が現在呼吸サイクルのどのフェーズにいるかを提供する。この呼吸運動センサは胸部に取り付けられるEM追跡センサ若しくは光学追跡センサ、胸部まわりの呼吸ベローズ、口を出入りする空気を測定するフローセンサ、人工呼吸器からのSpOのトレースなどを含み得る。ソフトウェアは追跡内視鏡の運動を記録し、この運動を呼吸運動センサから検出される呼吸運動と同期させる。ソフトウェアはまた病変の更新位置を再描画し、病変画像をCT画像若しくは仮想腔内レンダリングに重ね合わせる。
【0012】
医療処置中に標的の運動を考慮するシステムと方法は、内視鏡の位置と配向を追跡するための追跡機構を含む内視鏡を含む。記憶装置は動いている標的組織若しくはその付近にあるときに内視鏡の位置を記録するように構成される。運動センサは臓器の周期的運動が内視鏡と標的組織の記録された位置に関連付けられることができるように臓器の周期的運動を追跡するように構成される。
【0013】
医療処置中に標的の運動を考慮するための別のシステムは、内視鏡の位置を追跡するための追跡機構を含む内視鏡を含み、内視鏡は標的組織の位置若しくは配向変化についてのデータを収集するために動いている標的組織若しくはその付近に位置する。運動センサは基準に対して動いている標的組織の周期的運動を追跡するように構成される。コンピュータ処理装置は追跡機構及び運動センサの位置について時間的及び空間的情報を収集するように構成され、コンピュータ処理装置は追跡機構と運動センサの位置に基づいて周期的運動を通じて標的組織の位置を決定するように構成されるプログラムを含む。
【0014】
医療処置中に標的の運動を考慮するための方法は、周期的運動の存在下で標的組織の位置変化についてのデータを収集するために動いている標的組織若しくはその付近の内視鏡位置を追跡するステップと、基準に対する対象の周期的運動を追跡するステップと、内視鏡と運動センサの位置について時間的及び空間的情報を関連付けることによって周期的運動を通じて標的組織の位置を決定するステップを含む。
【0015】
本開示のこれらの及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に関連して読まれるその例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0016】
本開示は以下の図面を参照して以下の好適な実施形態の説明を詳細に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の原理を示す、病変付近に追跡内視鏡を持つ内腔の断面図である。
【図2】一実施形態例にかかる標的組織の運動を考慮するための方法を示すフロー図である。
【図3】本発明の原理にかかる追跡内視鏡の配置を示す気管支の斜視図である。
【図4A】胸壁上の運動センサによって決定される1呼吸サイクルに対する肺活量のプロットである。
【図4B】肺及び肺拡張による病変の運動を示す図である。
【図5】一実施形態例にかかる標的組織の運動を考慮するためのシステムを示すブロック/フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の原理は局所4D CTデータをシミュレーションし、静止3D CTデータから組織運動を予測する適合ガイド内視鏡検査法を提供する。得られる組織の運動パターンは患者特有であり、後に放射線治療計画若しくは他の用途のために使用されることができる。
【0019】
画像ガイド気管支鏡検査(若しくは他の形の内視鏡検査)及び放射線治療における最大の障害の1つが、内部組織(例えば肺)が(例えば呼吸サイクルの下で)常に動いているということであることを考えると、(コストと高放射線を含む既知の欠点を持つ)4D CT画像なしで組織(例えば腫瘍)の運動軌道を追跡する新たな解決法が提供される。本実施形態は追跡内視鏡を用いて局所4D CTデータをシミュレーションし組織運動を予測する適合法を提供する。得られる組織の運動パターンは患者特有であり、同じ内視鏡処置のために、場合によってはその後の内視鏡インターベンション及び放射線治療計画のために使用されることができる。適合EMガイド内視鏡検査法は局所4D CTデータをシミュレーションし静止3D CTデータから腫瘍運動を予測するために利用される。得られる病変の運動パターンは患者特有であり後に放射線治療計画のために使用されることができる。
【0020】
肺の局所運動が剛体変換とみなされることができるという仮定に基づき、本方法は局所4D CTを推定し、EMトラッキングによって発見される腫瘍運動軌道を予測することによって、シミュレーションされたリアルタイムCTガイダンスを提供する。
【0021】
一実施形態において、例えばEMトラッカを持つ追跡内視鏡が内視鏡の先端に固定され、又はファイバブラッググレーティングを持つ光ファイバが内視鏡に挿入されるか若しくは組み込まれる。他の追跡装置も考慮される。術前3D CT画像が得られる。画像は組織中の関心点、例えば腫脹リンパ節若しくは疑わしい癌組織を含み、これは画像中で強調表示され輪郭描写され得る。呼吸運動センサは組織が現在呼吸サイクルのどのフェーズにいるかをあらわすために使用される。これは胸部に取り付けられるEM追跡センサ若しくは光学追跡センサ、胸部まわりの呼吸ベローズ、口を出入りする空気を測定するフローセンサ、人工呼吸器からのSpOのトレースなどを含み得る。
【0022】
ソフトウェアプログラムは追跡内視鏡の運動を記録し、この運動を呼吸運動センサから検出される呼吸運動と同期させるように構成される。ソフトウェアプログラムは組織、例えば病変の更新位置を再描画し、組織画像をCT画像若しくは仮想腔内レンダリングに重ね合わせるように構成される。
【0023】
本発明は気管支鏡検査と併用されるEM追跡に関して記載されるが、本発明の教示はもっと広く、動的運動が存在する任意の処置に対する若しくはそのための任意の追跡方法に適用可能であることが理解されるべきである。本発明は内視鏡処置に関して記載されるが、本発明の教示はもっと広く、動的運動が関与する処置若しくは医療装置に適用可能であることも理解されるべきである。本明細書に記載の実施形態は好適には肺若しくは肺付近における組織を位置決定するためであるが、心臓、消化器、血管、腎臓などの他の位置であってもよい。
【0024】
本発明は医療機器に関して記載されるが、本発明の教示はもっと広く、複雑な生物学的若しくは機械的システムを追跡若しくは分析するのに利用される任意の機器に適用可能であることが理解されるべきである。特に、本発明の原理は肺、胃腸管、排出器官、血管など、体の全領域における生物学的システム、処置の内部追跡手順に適用可能である。図に描かれる要素はハードウェアとソフトウェアの様々な組み合わせで実施され、単一要素若しくは複数要素に組み合わされ得る機能を提供し得る。
【0025】
図に示す様々な要素の機能は、専用ハードウェア及び適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行することができるハードウェアの使用を通して提供されることができる。プロセッサによって提供されるとき、機能は単一専用プロセッサによって、単一共有プロセッサによって、若しくはその一部が共有され得る複数の個別プロセッサによって、提供されることができる。さらに、"プロセッサ"若しくは"コントローラ"という語の明示的使用はソフトウェアを実行することができるハードウェアを排他的にあらわすと解釈されるべきではなく、限定されることなく、デジタル信号プロセッサ("DSP")ハードウェア、ソフトウェアを保存するためのリードオンリーメモリ("ROM")、ランダムアクセスメモリ("RAM")、及び不揮発性記憶装置を非明示的に含むことができる。
【0026】
さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその特定の実施例を列挙する本明細書の全文は、その構造的及び機能的均等物の両方を包含することが意図される。加えて、かかる均等物は現在既知の均等物と将来開発される均等物(すなわち構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素)の両方を含むことが意図される。
【0027】
従って、例えば、本明細書に提示のブロック図は本発明の原理を具体化する例示的なシステム構成要素及び/又は回路の概念図をあらわすことが当業者によって理解される。同様に、任意のフローチャート、フロー図、状態遷移図、疑似コードなどが、実質的にコンピュータ可読記憶媒体にあらわされ、コンピュータ若しくはプロセッサが明示的に示されているかどうかにかかわらず、かかるコンピュータ若しくはプロセッサによってそのように実行され得る、様々なプロセスをあらわすことが理解される。
【0028】
さらに、本発明の実施形態は、コンピュータ若しくは任意の命令実行システムによって若しくはそれらと関連して使用するためのプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能若しくはコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形をとることができる。この説明の目的のために、コンピュータ使用可能若しくはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、機器、若しくは装置によって又はそれらと関連して使用するためのプログラムを、含む、保存する、通信する、伝搬する、若しくは伝送し得る任意の装置であることができる。媒体は電子、磁気、光学、電磁、赤外線、又は半導体システム(若しくは機器若しくは装置)、又は伝搬媒体であることができる。コンピュータ可読媒体の例は半導体若しくは固体メモリ、磁気テープ、取り外し可能コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、固体磁気ディスク及び光学ディスクを含む。光学ディスクの現在の例は、コンパクトディスク‐リードオンリーメモリ(CD‐ROM)、コンパクトディスク‐リード/ライト(CD‐R/W)及びDVDを含む。
【0029】
図面において同様の数字は同じ若しくは同様の要素をあらわし、最初に図1を参照すると、例えば肺の気道などの内臓器官若しくは内腔10の断面画像が例示的に描かれる。病変12が気道10の壁14付近に示される。運動補正がないと、追跡内視鏡16とセグメント化された病変12の間にミスマッチが存在する。これは医師若しくは技師が、運動を統合しない静止CTロードマップを用いて病変に針を挿入しようとするとき、空間的混乱を生じる。本発明の原理によれば、この問題を解決するために、局所運動を検出するために追跡スコープ16が利用される。
【0030】
引き続き図1を参照しながら図2を参照すると、標的組織の運動を考慮するための方法が例示的に示される。ブロック102において、追跡スコープは標的組織(例えば病変)領域付近に位置する。画像ガイダンスは追跡スコープ(例えば内視鏡)の先端の位置トラッカ(たとえばEMトラッカ、FBGセンサを持つ光ファイバなど)を用いて術前CTデータを術中ビデオデータと統合することによって得られる。EMガイダンス若しくは他の位置追跡は例えば経気管支生検若しくは他の処置が計画される場合に内視鏡が標的領域に正確に達するための位置決定ツールを提供する。
【0031】
そしてブロック104において、内視鏡の先端は最も近い標的組織点(例えば気道壁への侵入点など、組織生検のための入口が計画される場所(図3参照))に取り付けられるために使用される。スコープは好適には数呼吸サイクルにわたって気道の同じ領域に固定される。平均呼吸速度が20回/分であると仮定すると、10秒間の記録は約3呼吸サイクルである。より多い若しくは少ないデータが必要に応じて収集され得る。
【0032】
ブロック106において、トラッカ(EM)測定値が数呼吸サイクルにわたって記録される。スコープは気道の同じ位置に固定されるので、記録されるEM変化は呼吸運動のみを反映する(咳若しくは他の不規則呼吸パターンによる局所気道収縮若しくは弛緩についての信号は破棄されるべきであり、新たな記録が考慮されるべきである。)。
【0033】
ブロック108において、局所運動は剛性であり、病変の運動は最も近い気道及び内視鏡の先端の運動に類似するという仮定から、3次元空間における病変の運動ベクトルを得る。ブロック110において、内視鏡の運動軌道が運動センサと同期されるべきであり、例えば基準トラッカが患者の胸部(横隔膜付近)若しくは他の基準点/位置に取り付けられる。基準トラッカは呼吸運動を検出し、肺が現在呼吸サイクルのどのフェーズにいるのかを知らせることができる。この同期(病変の運動ベクトルと基準センサ)は肺容量がその最大値まで拡張するときに病変が運動ベクトルの遠位端に近い(図4Bに点Eで示される)ことを与える。肺容量(図4B)がその最小値まで減少するとき、病変は運動ベクトルの原点に近い(図4Bの点O)。これは他の運動及び臓器にも同様に当てはまる。
【0034】
ブロック112において、内視鏡若しくは他の医療機器(例えば針、放射源、トロカールなど)が呼吸サイクルを考慮する軌道に従ってガイドされる。動作を実行する(例えば生検試料を採取する)ためにサイクル内で最適な時間を特定するためにソフトウェアプログラムが利用され得る。例えば、生検を実行する最適時間は病変が内視鏡に最も近いときであり得るが、他の時間/位置も利用され得る。臨床医はこの情報を使用して動作の時刻を決めるか、又は呼吸サイクルの特にスケジュールされた部分において動作するように装置をプログラムする。標的運動に関する情報は現在の処置のために利用され得るか、又は後で後続処置のために利用され得る。例えば、肺癌放射線治療のための運動補正は現在の線量及び将来の線量照射のために放射線治療を向けるために標的領域の運動を利用し得る。
【0035】
ブロック114において、時間の関数として3次元において標的の運動のシミュレーションを実行する随意ステップが利用され得る。これは標的組織をCT若しくは他のスキャン画像においてトレース若しくはアウトラインでマークするステップを含み得る。標的組織は仮想画像においてもマークされ得る。時間に関して標的組織の位置を(手動で若しくは自動的に)決定するのを助けるためにライン若しくは他の記号が画像中に置かれ得る。例えば生検、アブレーション、焼灼、ステープリングなど、医療処置において特定の動作を実行するために最適化時間及び位置が決定され得る。本発明の原理は例えば生検などの動作を実行する最適時間(サイクルのどのフェーズか)を決定するのに役立つことができる。
【0036】
図3を参照すると、追跡内視鏡16は処置が計画される領域(例えば経気管支生検が計画される最近壁)に隣接して位置するか若しくは接触している。追跡内視鏡16は標的領域、例えば病変12の3次元空間における運動を測定するために利用される。EM追跡が利用される場合、EM測定値はスコープの先端が気道10の同じ位置に固定されるときに数呼吸フェーズにわたって記録される。記録データは病変12の運動を推定するために利用される。
【0037】
図4Aと4Bを参照すると、例示的なプロットが規則的サイクルにわたって肺活量/変位を示す。図4Aに従って、図4Bは肺の呼吸サイクルにわたって病変の運動を例示的に示す。肺15の静止画像がCT空間に示される。最小肺活量位において、病変12は点O(x,y,z)に位置する。最大肺活量において、病変12は点E(x,y,z)に位置する。フルモーションはサイクル中の任意の時刻における病変12の軌道を提供する。これは所定時間における確率的位置を提供するために統計的にモデル化され得る、又は、腫瘍位置を予測するために複数のサイクルにわたって空間的補間が実行され得る。呼吸運動は胸壁上若しくは他の位置の基準トラッカ130からモニタリングされ、EM追跡内視鏡16で検出される腫瘍若しくは病変12の3D運動軌道と同期される。運動はCT空間132若しくは他の術前画像スキャンにマッピングされ得る。例えば、静止CTスキャンは病変12の運動をマッピングするために各対応位置(例えば点O及び/又はE)において利用され得る。
【0038】
図5を参照すると、医療処置のための標的301の運動を考慮するためのシステム300が例示的に示される。システム300は4D CT画像を使用せずに患者101における腫瘍若しくは他の組織301の運動軌道を追跡する。システム300は追跡内視鏡302を含む。内視鏡302は電磁(EM)追跡、光学追跡、FBG追跡若しくは他の追跡技術を使用することを含み得る追跡機構304を含む。コンソール306及び/又は外部マーカ308が追跡機構304と利用され得る。適合法は追跡機構(例えば位置検出器)で局所運動を測定し、追跡内視鏡を用いて腫瘍運動を予測するためにそのデータを使用する。病変の患者特有運動パターンが取得され、同じ内視鏡処置のために、場合によってはその後の内視鏡インターベンション及び放射線治療計画のために使用されることができる。標的301の運動を考慮する、そのシステム300を利用する処置を実行するために医療機器若しくは装置307が内視鏡上に(若しくは独立して)設けられ得る。標的組織の局所運動は剛体変換と見なされる。局所4Dデータを推定し、EM追跡によって発見される腫瘍運動軌道を予測することによって、シミュレーションされたリアルタイムCTガイダンスが提供される。CT若しくは他の画像は好適には予め(術前に)とられ、メモリ310に保存される。トラッカ機構304は好適には内視鏡302の先端上に固定され、又はファイバブラッググレーティングを持つ光ファイバが内視鏡302に挿入されるか若しくは組み込まれる。メモリ310に保存される術前3D CT画像は、好適には画像中で強調表示され輪郭描写される標的領域(例えば腫脹リンパ節若しくは疑わしい癌組織)を含み得る。
【0039】
運動センサ312は標的組織のフェーズ、例えば肺の呼吸サイクルを提供する。運動センサ312は胸部に取り付けられるEM追跡センサ若しくは光学追跡センサ、胸部まわりの呼吸ベローズ、口を出入りする空気を測定するフローセンサ、人工呼吸器からのSpOのトレースなどを含み得る。
【0040】
コンソール306は患者の中及び周辺の電磁場における変化を解釈するEM位置検出コンソール、若しくは光ファイバの光学センサ(例えばFBG)に光を供給し、それらから光を受信する光学コンソール(例えば光学送受信機)を含み得る。コンソール306はコンピュータシステム320に接続されるか若しくはその一部であり得、これはメモリ310と、標的領域の運動に関連するパラメータを決定し比較する対応プログラム324を持つオペレーティングシステム322を含む。
【0041】
プログラム324は追跡内視鏡302の運動を記録し、この運動を呼吸運動センサ312から検出される呼吸運動と同期させる。プログラム324は病変の更新位置を再描画し、病変画像をCT画像若しくは仮想腔内レンダリングに重ね合わせるようにも構成される。これは処置のリアルタイム表示を提供することができる。プログラム324は運動を予測するため、又は標的に対して任意の時刻における平均位置を見つけるために、運動データに対して統計分析若しくは補間を実行するようにも適合され得る。
【0042】
コンピュータシステム320はコンソール306を含むか、又は独立システムであり得る。コンピュータ320はプロセッサ330を含み、これはプログラム324を実装し、プログラムオプション及びアプリケーション、例えば標的領域の運動との処置ステップの同期、複数のサイクルにわたる標的領域の運動の統計的モデル化などを提供する。入力/出力(I/O)装置若しくはインターフェース332はコンピュータ320、内視鏡302、及び空間的に局在したイメージングの視覚表示326とのリアルタイム相互作用を提供する。標的組織の配向、形状及び/又は位置が表示され得る。コンピュータシステム320はコンソール306及び/又は内視鏡302と相互作用するためのユーザインターフェース332を含み得る。インターフェース332はキーボード、マウス、タッチスクリーンシステムなどを含み得る。
【0043】
得られる標的組織の運動パターンは患者特有であり、同じ内視鏡処置のために、場合によってはその後の内視鏡インターベンション及び放射線治療計画のために使用されることができる。同期された運動軌道は複数の用途を持つ。例えば、仮想現実気管支鏡検査若しくは他のインターベンションのために、標的の3D軌道は、肺運動に起因する病変の現実的な位置を示す、術前CT空間内の腔内ビュー(例えば内気道の仮想レンダリング)に重ね合わせられることができる。これは、インターベンション呼吸器科医が組織生検及び他のインターベンションをより自信を持って実行することができるように、ディスプレイ326上に動いている病変のリアルタイム視覚化を提供する。
【0044】
仮想現実はリアルビデオ画像と組み合わされ得る。例えば、仮想CT画像は病変と重ね合わせられることができる。病変は肺組織と一緒に"呼吸している"ので、重ね合わせられた病変若しくはシミュレーションされた標的333の位置は動的に更新されることに留意されたい。これは経気管支組織生検及び他のインターベンションのためのリアルタイム運動補正及び正確な位置決定を提供する。シミュレーションされた標的333はスキャン空間若しくは仮想空間に提供され得る。4D CTは高価で、高放射線を生じる。放射線治療計画のためのほとんどの従来の臨床診療はまだ3D CTイメージングに基づいており、解剖学的及び病理学的構造の運動は提示されない。
【0045】
EMガイド内視鏡処置から記録されたデータを再利用することによって局所4D CT情報をシミュレーションする本実施形態は、放射線治療計画及び治療実施の評価に適用可能である。推定される標的(病変/腫瘍)の運動情報は、コールドスポット(腫瘍領域への低放射線照射(under‐delivery of radiation))及びホットスポット(周辺健常領域への高放射線照射(over‐delivery of the radiation))の可能性も制限する。
【0046】
添付の請求項を解釈する上で以下のことが理解されるべきである。
a)"有する"という語は所与の請求項に列挙されたもの以外の要素若しくは動作の存在を除外しない。
b)ある要素に先行する"a"若しくは"an"という語はかかる要素の複数の存在を除外しない。
c)請求項における任意の参照符号はその範囲を制限しない。
d)複数の"手段"は同じ項目又はハードウェア若しくはソフトウェア実装構造若しくは機能によってあらわされ得る。
e)特に指定のない限り動作の特定の順序が必要とされることを意図しない。
【0047】
追跡気管支鏡(例示であって限定ではないことが意図される)を用いる腫瘍運動シミュレーション及び運動補正のためのシステム及び方法について好適な実施形態を記載したが、上記教示を踏まえて当業者によって修正及び変更がなされることができることが留意される。従って添付の請求項によって概説される通り本明細書に開示の実施形態の範囲内にある開示の特定の実施形態において変更がなされ得ることが理解される。このように特許法によって要求される詳細及び特殊性を記載したが、特許証によって保護されることを望まれる特許請求の範囲は添付の請求項に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置において標的の運動を考慮するためのシステムであって、
内視鏡の位置及び配向を追跡するための追跡機構を含む内視鏡と、
動いている標的組織若しくはその付近に位置するときに前記内視鏡の位置を記録する記憶装置と、
臓器の周期的運動が前記内視鏡及び前記標的組織の記録された位置に関連付けられることができるように、臓器の周期的運動を追跡する運動センサとを有する、システム。
【請求項2】
前記追跡機構が電磁追跡装置、光学追跡装置、及びファイバグレーティング追跡装置のうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記標的組織の運動に従ってガイド可能な医療機器をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
シミュレーションされた前記標的組織の運動を画像に表示する表示装置をさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記画像が前記標的組織を含む標的領域の術前スキャンを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記周期的運動が肺の呼吸サイクルのフェーズを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記運動センサが胸部に接続されるセンサ、胸部まわりの呼吸ベローズ、気流を測定するフローセンサ、及び人工呼吸器トレースのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
動いている標的組織若しくはその付近に位置するときに前記内視鏡の位置を記録し、術前画像において標的組織シミュレーションオーバーレイの位置を更新するプログラムをさらに有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
医療処置において標的の運動を考慮するためのシステムであって、
内視鏡の位置を追跡するための追跡機構を含む内視鏡であって、前記内視鏡は動いている標的組織若しくはその付近に位置して前記標的組織の位置若しくは配向変化についてのデータを収集する、内視鏡と、
基準に対する動いている臓器の周期的運動を追跡する運動センサと、
前記追跡機構と前記運動センサの位置についての時間的及び空間的情報を収集するコンピュータ処理装置であって、前記コンピュータ処理装置は前記追跡機構と前記運動センサの位置に基づいて前記周期的運動を通じて前記標的組織の位置を決定するプログラムを含む、コンピュータ処理装置とを有する、システム。
【請求項10】
画像中で前記標的組織に重ね合わせられる、前記コンピュータ処理装置によって生成される標的組織シミュレーション画像をさらに有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記画像が対象の術前画像を含み、前記標的組織シミュレーションが動的に更新される位置を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記追跡機構が電磁追跡装置、光学追跡装置、及びファイバグレーティング追跡装置のうちの1つを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記標的組織の運動に従ってガイド可能な医療機器をさらに有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記標的組織シミュレーションを画像に表示する表示装置をさらに有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記画像が前記標的組織を含む標的領域の術前スキャンを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記周期的運動が肺の呼吸サイクルのフェーズを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記運動センサが胸部に接続されるセンサ、胸部まわりの呼吸ベローズ、気流を測定するフローセンサ、及び人工呼吸器トレースのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項18】
医療処置において標的の運動を考慮するための方法であって、
動いている標的組織若しくはその付近における内視鏡位置を追跡して、周期的運動の存在下で前記標的組織の位置変化についてのデータを収集するステップと、
基準に対する対象の周期的運動を追跡するステップと、
前記内視鏡と前記運動センサの位置についての時間的及び空間的情報を関連付けることによって前記周期的運動を通じて前記標的組織の位置を決定するステップとを有する、方法。
【請求項19】
前記標的組織の運動がシミュレーション画像によってトレースされるように、標的組織シミュレーション画像を画像中に重ね合わせるステップをさらに有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標的組織の運動に従ってオーバーレイの運動を表示するステップをさらに有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記標的組織の運動に従って医療機器をガイドするステップをさらに有する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記標的組織の運動について収集されたデータを少なくとも1つの後続処置において利用するステップをさらに有する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−519486(P2013−519486A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553420(P2012−553420)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/IB2011/050175
【国際公開番号】WO2011/101754
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】