説明

送り装置

【課題】 所望のパイロットリリース開始角度位置に簡単に且つ容易に設定することができる送り装置を提供すること。
【解決手段】 装置本体2と、プレス作業と同期して回転駆動される回転駆動軸4と、所定位置に配設された第1グリップ手段と、前進位置と後退位置との間を往復移動可能に配設された第2グリップ手段とを備えた送り装置。回転駆動軸2に関連してパイロットリリース調整機構60が設けられ、このパイロットリリース調整機構60は、回転駆動軸4と一体的に回転する第1歯車と、パイロットリリースの開始角度位置を調整操作するための操作部材62と、操作部材62の回動操作によって回動される遊星歯車68と、第1カム手段20の前記第2カム部26と一体的に回転する第2歯車とを有し、第1歯車及び第2歯車が遊星歯車68に噛合されているとともに、それらの歯数が相互に異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長いシート状部材をプレス装置に間欠的に送給する送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置には、加工すべきシート状部材をプレス装置の加工域を通して間欠的に送給するための送り装置が付設されている(例えば、特許文献1参照)。この種の送り装置は、例えばプレス装置に取り付けられる装置本体と、プレス装置によるプレス作業と同期して回転駆動される回転駆動軸と、装置本体の所定位置に配設された第1グリップ手段と、シート状部材を送る前進位置とこの前進位置から後退する後退位置との間を往復移動可能に配設された第2グリップ手段と、を備えている。
【0003】
この送り装置によれば、回転駆動軸の一回転毎に次のようにしてシート状部材の送給が行われる。即ち、第2グリップ手段がグリップ状態となってシート部材をグリップし(このとき、第1グリップ手段はグリップ解除状態に保たれる)、かかるグリップ状態において後退位置から前進位置まで送り方向に移動され、このようにしてシート状部材の送りが行われる。その後、第1グリップ手段がグリップ状態になってシート状部材をグリップし(このとき、第2グリップ手段はグリップ解除状態となる)、このようにシート状部材をグリップしているときに、第2グリップ手段が前進位置から後退位置に移動し、このようにしてシート状部材の間欠的移動が行われる。
【0004】
【特許文献1】特許第3172820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような送り装置を用いたプレス加工では、第2グリップ手段が前進位置から後退位置に移動する間に、プレス装置によるプレス加工が行われるが、このプレス加工の際に、プレス装置の可動金型に設けられたパイロットピンがシート状部材のパイロット穴に挿入され、かかるパイロットピンによって加工域におけるシート状部材の位置付けが行われ、このパイロットピンの挿入の間は、第1グリップ手段によるグリップ状態が一時的に解除されるように構成されている。
【0006】
このプレス加工時の第1グリップ手段によるグリップ解除時期、即ちパイロットリリース開始角度位置は、加工条件、例えばシート状部材の厚さなどによって異なり、加工条件毎にプレス加工に適した角度位置に調整する必要があり、比較的簡単な構成でもって所望のパイロットリリース開始角度位置に簡単に且つ容易に設定することができるものの実現が望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、所望のパイロットリリース開始角度位置に簡単に且つ容易に設定することができる送り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の送り装置は、装置本体と、前記装置本体に回転自在に支持され、プレス作業と同期して回転駆動される回転駆動軸と、前記装置本体の所定位置に配設された第1グリップ手段と、前記装置本体にシート状部材を送る前進位置とこの前進位置から後退する後退位置との間を往復移動可能に配設された第2グリップ手段と、を備えており、
前記第1グリップ手段は、第1固定グリップとこの第1固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第1可動グリップとを有しており、
前記第2グリップ手段は、第2固定グリップとこの第2固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第2可動グリップとを有しており、
前記回転駆動軸には、前記第1グリップ手段の前記第1可動グリップを移動させるための第1カム手段と、前記第2グリップ手段の前記第2可動グリップを移動させるための第2カム手段が設けられ、前記第1カム手段は、前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられた第1カム部と、前記回転駆動軸に相対的に回転するように取り付けられた第2カム部とを有し、前記第2カム手段は前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられており、
前記回転駆動軸に関連して、更に、前記第1グリップ手段によるグリップ状態を解除するためのパイロットリリース調整機構が設けられ、前記パイロットリリース調整機構は、前記回転駆動軸と一体的に回転するように取り付けられた第1歯車と、パイロットリリースの開始角度位置を調整操作するための操作部材と、前記操作部材の回動操作によって回動される第1遊星歯車と、前記第1カム手段の前記第2カム部と一体的に回転するように設けられた第2歯車と、を有し、前記第1歯車及び前記第2歯車は前記第1遊星歯車に噛合されているとともに、それらの歯数が相互に異なっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の送り装置では、前記パイロットリリース調整機構は、パイロットリリース開始角度位置を表示するための角度位置表示部と、前記角度位置表示部と一体的に回動するように設けられた第3歯車と、を備え、前記第3歯車は前記第1遊星歯車に噛合されているとともに、前記第2歯車と歯数が等しいことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載の送り装置では、前記パイロットリリース調整機構は、前記操作部材と前記第1遊星歯車との間に介在された減速機構を備え、前記減速機構は、前記操作部材に装着された第2遊星歯車と、前記第1遊星歯車が装着された中間部材と、前記角度表示部に一体的に回転するように設けられた第4歯車と、前記中間部材に一体的に回転するように設けられた第5歯車と、とを備え、前記第4及び第5歯車が前記第2遊星歯車に噛合されているとともに、それらの歯数が相互に異なっていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の送り装置は、装置本体と、前記装置本体に回転自在に支持され、プレス作業と同期して回転駆動される回転駆動軸と、前記装置本体の所定位置に配設された第1グリップ手段と、前記装置本体にシート状部材を送る前進位置とこの前進位置から後退する後退位置との間を往復移動可能に配設された第2グリップ手段と、を備えており、
前記第1グリップ手段は、第1固定グリップとこの第1固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第1可動グリップとを有しており、
前記第2グリップ手段は、第2固定グリップとこの第2固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第2可動グリップとを有しており、
前記回転駆動軸には、前記第1グリップ手段の前記第1可動グリップを移動させるための第1カム手段と、前記第2グリップ手段の前記第2可動グリップを移動させるための第2カム手段が設けられ、前記第1カム手段は、前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられた第1カム部と、前記回転駆動軸に相対的に回転するように取り付けられた第2カム部とを有し、前記第2カム手段は前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられており、
前記回転駆動軸に関連して、更に、前記第1グリップ手段によるグリップ状態を解除するためのパイロットリリース調整機構が設けられ、前記パイロットリリース調整機構は、リリースハウジングと、パイロットリリースの開始角度位置を調整操作するために前記リリースハウジングに回転自在に支持された第1操作部材と、前記回転駆動軸に対して軸方向に移動自在に且つ回転自在に支持された移動部材と、前記第1カム手段の前記第2カム部と一体的に回転するように設けられた第1スパイラル歯部と、前記移動部材に設けられた第2スパイラル歯部と、有し、前記第1及び第2スパイラル歯部が相互に噛合されているとともに、前記移動部材と前記リリースハウジングとが螺合されていることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項5に記載の送り装置では、前記パイロットリリース調整機構は、更に、パイロットリリースの開始角度位置を大きく調整操作するための第2操作部材と、前記回転駆動軸に一体的に回転するように装着された第1部材とを備え、前記第2操作部材は係合位置と解除位置との間を移動自在に前記回転駆動軸に支持されており、第1部材には第1スプラインが設けられ、前記第2操作部材には上記軸方向に間隔をおいて第2スプライン及び第1歯部を有し、また前記移動部材は相互に回転自在に支持された外側部材及び内側部材を有し、前記外側部材が前記リリースハウジングに螺合され、前記内側部材に第2歯部が設けられており、前記第2操作部材を前記係合位置に位置付けた状態においては、前記第1スプラインと前記第2スプラインとが係合状態に保たれるとともに、前記第1歯車と前記第2歯車とが噛合状態に保たれ、前記第1操作部材を回動操作することによって前記移動部材が回動されまた前記第2操作部材を前記解除位置に位置付けた状態においては、前記第1歯車と前記第2歯車とが噛合状態に保たれる一方、前記第1スプラインと前記第2スプラインとの係合状態が解除され前記第2操作部材を回動操作することによって前記移動部材の前記内側部材が回動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の送り装置によれば、パイロットリリース開始角度位置を調整するためのパイロットリリース調整機構は、回転駆動軸と一体的に回転するように取り付けられた第1歯車と、操作部材の回動操作によって回動される第1遊星歯車と、第1カム手段の第2カム部と一体的に回転するように設けられた第2歯車とを有し、第1歯車及び第2歯車が第1遊星歯車に噛合されているので、操作部材を回動操作すると、両歯車を中心として第1遊星歯車がその周囲を自転しながら回転し、かかる操作部材の回動が減速されて第2歯車に伝達され、この第2歯車を介して第1カム手段の第2カム部が回転駆動軸に対して相対的に移動され、かくして操作部材を回動するという簡単な操作でもってパイロットリリース開始角度位置を所要の通りに調整することができる。また、第1歯車と第2歯車との歯数が異なっているので、操作部材を一回転操作すると、両者の歯数差に対応する回転角度量が相対的にずれ、これによってパイロットリリース開始角度位置を調整することができる。尚、第1歯車と第2歯車との歯数差を小さくすることによって、パイロットリリース開始角度位置をより高精度に調整することが可能となる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の送り装置によれば、パイロットリリース調整機構は、パイロットリリース開始角度位置を表示する角度位置表示部と一体的に回動するように第3歯車が設けられ、この第3歯車が第1遊星歯車に噛合されているとともに、第2歯車と歯数が等しく構成されているので、第3歯車は第2歯車と同様に回動してその回動量は等しくなる。従って、角度表示部は、回転駆動軸に対する第1カム手段の第2カム部の相対的角度位置を示し、パイロットリリース開始角度位置を正確に表示することができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の送り装置によれば、パイロットリリース調整機構は、操作部材と第1遊星歯車との間に介在された減速機構を備えているので、操作部材の回動はこの減速機構によって更に減速されるので、パイロットリリース開始角度位置をより高精度に調整することができる。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載の送り装置によれば、パイロットリリース開始角度位置を調整するためのパイロットリリース調整機構は、調整操作するための第1操作部材と、回転駆動軸の軸方向に移動自在に且つ回転自在に支持された移動部材と、第1カム手段の第2カム部と一体的に回転するように設けられた第1スパイラル歯部と、移動部材に設けられた第2スパイラル歯部と、有し、第1及び第2スパイラル歯部が相互に噛合されているとともに、移動部材とリリースハウジングとが螺合されているので、第1操作部材を回動操作すると、その回動操作が移動部材に伝達されてこの移動部材が軸方向に移動され、この軸方向の移動が第1及び第2スパイラル歯部によって周方向の移動に変換される。従って、回転駆動軸に対して第1カム手段の第2カム部が相対的に回動され、これによって、パイロットリリース開始角度位置を所要の通りに簡単に調整することができる。
【0017】
更に、本発明の請求項5に記載の送り装置によれば、パイロットリリースの開始角度位置を大きく調整操作するための第2操作部材と、回転駆動軸に一体的に回転するように装着された第1歯車とを更に備え、第2操作部材は係合位置と解除位置との間を移動自在に回転駆動軸に支持され、移動部材は相互に回転自在に支持された外側部材及び内側部材を有している。この第2操作部材を係合位置に位置付けた状態においては、第1スプラインと第2スプラインとが係合状態に保たれるとともに第1歯車と第2歯車とが噛合状態に保たれるので、回転駆動軸に対する移動部材の相対的回転が阻止され、第1操作部材を回動操作することによって、外側部材を回動させながら軸方向に移動させてパイロットリリース開始角度位置を小さく高精度に調整することができる。また、第2操作部材を解除位置に位置付けた状態においては、第1歯車と第2歯車との噛合状態が保たれた状態において、第1スプラインと第2スプラインとの係合状態が解除されるので、第2操作部材を回動操作することによって、その回動が第1及び第2歯部を介して移動部材の内側部材に伝達され、更に第1及び第2スパイラル歯部を介して第1カム手段の第2カム部に伝達され、これによってパイロットリリース開始角度位置を大きく調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う送り装置の一実施形態について説明する。まず、図1〜図4を参照して、本発明に従う送り装置の一実施形態について説明する。図1は、一実施形態の送り装置を簡略的に示す断面図であり、図2は、図1におけるII−II線による断面図であり、図3は、図1の送り装置におけるパイロットリリース調整機構及びその近傍を示す断面図であり、図4は、図3のパイロットリリース調整機構における角度位置表示部を示す正面図である。
【0019】
図1において、図示の送り装置は、例えばプレス装置(図示せず)に設置される装置本体2を備えている。この装置本体2には回転駆動軸4が回転自在に支持され、この回転駆動軸4はプレス装置のプレス加工作業に同期して所定方向に回転駆動される。矢印6で示す送り方向に見て、この装置本体2の下流側部に第1グリップ手段8が設けられ、またこの第1グリップ手段8の上流側に、この形態では装置本体2の中間部に第2グリップ手段10が設けられている。
【0020】
図示の第1グリップ手段8は、上側に配設された第1固定グリップ12と、この第1固定グリップ12に対向して下側に配設された第1可動グリップ14とから構成され、第1固定グリップ12が固定的に配設され、第1可動グリップ14が第1固定グリップ12に対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設されている。第1固定グリップ12に近接する方向に移動すると、第1可動グリップ14は第1固定グリップ12と協働してシート状部材(図示せず)をグリップし(第1グリップ手段8がグリップ状態になる)、また第1固定グリップ12から離隔する方向に移動すると、第1可動グリップ14及び第1固定グリップ12によるグリップ状態が解除される(第1グリップ手段14のグリップ状態が解除される)。
【0021】
また、図示の第2グリップ手段10は、上側に配設された第2固定グリップ16と、この第2固定グリップ16に対向して下側に配設された第2可動グリップ18とから構成され、第2固定グリップ12が装置本体2に揺動自在に装着された揺動アーム(図示せず)に固定的に配設され、第2可動グリップ18が第2固定グリップ16に対して近接及び離隔する方向に移動自在に且つ矢印6で示す送り方向及びこれと反対方向に移動自在に配設されている。第2固定グリップ16に近接する方向に移動すると、第2可動グリップ18は第2固定グリップ16と協働してシート状部材(図示せず)をグリップし(第2グリップ手段10がグリップ状態となる)、また第2固定グリップ16から離隔する方向に移動すると、第2可動グリップ18及び第2固定グリップ16によるグリップ状態が解除される(第2グリップ手段10のグリップ状態が解除される)。また、揺動部材(図示せず)が揺動されることによって、第2グリップ手段10(第2固定グリップ16及び第2可動グリップ18)は、図1に実線で示す後退位置と、図1に二点鎖線で示す前進位置との間を往復移動自在に構成されている。上記後退位置から矢印6で示す方向に上記前進位置に移動するときには、第2グリップ手段10はグリップ状態に保持され(このとき、第1グリップ手段8はグリップ解除状態に保たれる)、かかる第2グリップ手段10の移動によってシート状部材(図示せず)が送り方向に送給される。また、上記前進位置から矢印6で示す方向と反対方向に前記後退位置に移動するときには、第2グリップ手段10はグリップ解除状態に保持され(このとき、第1グリップ手段8はグリップ状態に保持される)、シート状部材が送り方向に送給されることはない。
【0022】
図2をも参照して、第1グリップ手段8によるシート状部材のグリップ及びこのグリップの解除は、回転駆動軸4に設けられた第1カム手段20及び第1レバー機構22により行われる。第1カム手段20は、シート状部材の送給に関連して第1グリップ手段8をグリップ、グリップ解除するための第1カム部24と、プレス加工の際にパイロットピン(図示せず)がパイロット穴(図示せず)に挿入される際に一時的に第1グリップ手段8のグリップ状態を解除するための第2カム部26とを有し、第1及び第2カム部24,26が隣接して配設されている。この第1及び第2カム部24,26には、共通の第1従動コロ30が設けられている。また、第1レバー機構22は第1レバー部材32を有し、この第1レバー部材32が、装置本体2に取り付けられたピン34を介して旋回自在に連結され、第1レバー部材32の一端部が第1可動グリップ14に設けられた挿通孔36に挿通され、その他端部に第1従動コロ30が設けられている。更に、装置本体2と第1可動グリップ14との間には第1ばね部材38が介在され、この第1ばね部材38は第1可動グリップ14を第1固定グリップ12に向けて弾性的に偏倚し、従って、第1従動コロ30は第1カム手段20(第1カム部24及び第2カム部26)の周面に弾性的に押圧接触される。
【0023】
このように構成されているので、第1カム手段20(第1カム部24又は第2カム部26)の山部が第1従動コロ30に作用するときには、第1レバー部材32が図1において時計方向に揺動されてその一端部が第1可動グリップ14に作用して第1ばね部材38の作用に抗して第1固定グリップ12から離隔する方向に押し下げ、第1グリップ手段8はグリップ解除状態となり、また第1カム手段20(第1カム部24及び第2カム部26)の谷部が第1従動コロ30に作用するときには、第1レバー部材32は図1において反時計方向に旋回されてその一端部が上方に揺動し、第1可動グリップ14が第1ばね部材38の作用によって第1固定グリップ12に近接する方向に移動し、第1グリップ手段8はグリップ状態に保持される。
【0024】
第2グリップ手段10によるシート状部材のグリップ及びこのグリップの解除は、回転駆動軸4に設けられた第2カム手段40及び第2レバー機構41により行われる。第2カム手段40は、シート状部材の送給に関連して第2グリップ手段8をグリップ、グリップ解除するカム部42を有し、このカム部42には第2従動コロ44が設けられている。また、第2レバー機構41は第2〜第4レバー部材46,48,50を有し、第2レバー部材46が装置本体2に取り付けられたピン52を介して揺動自在に装着され、また第4レバー部材50が上記ピン34を介して揺動自在に装着されている。第4レバー部材50の一端部と第3レバー部材48の一端部とはピン54を介して旋回自在に連結され、第2レバー部材46の一端部と第3レバー部材48の他端部とはピン56を介して旋回自在に連結され、第4レバー部材50の他端部に第2従動コロ44が設けられている。更に、装置本体2と第3レバー部材48の他端部との間には第2ばね部材58が介在され、この第2ばね部材58は第3レバー部材48を図1において右方に向けて、換言すると第2可動グリップ18を第2固定グリップ16に向けて弾性的に偏倚し、従って、第2従動コロ44は第2カム手段40(カム部42)の周面に弾性的に押圧接触される。尚、第2可動グリップ18は、第3レバー部材48にその長手方向に移動自在に支持されている。
【0025】
このように構成されているので、第2カム手段40(カム部42)の山部が第2従動コロ44に作用するときには、第4レバー部材50及び第2レバー部材46が第2ばね部材58の作用に抗して図1において反時計方向に揺動されて第3レバー部材48及びこれに装着された第2可動グリップ18が第2固定グリップ16から離隔する方向に下がり、第2グリップ手段10はグリップ解除状態となり、また第2カム手段40(カム部42)の谷部が第2従動コロ44に作用するときには、第2レバー部材46及び第4レバー部材50は第2バネ部材58の作用によって図1において時計方向に旋回されて第3レバー部材48及びこれに装着された第2可動グリップ18が第2固定グリップ16に近接する方向に上昇し、第2グリップ手段10はグリップ状態となる。尚、上述した構成は、特許第3172820号公報に開示された構成と実質上同一の構成であり、その詳細についてはこの特許公報を参照されたい。
【0026】
次に、図2〜図4を参照して、上述した送り装置に設けられたパイロットリリース調整機構60について説明する。パイロットリリース調整機構60は、回転駆動軸4に対して第1カム手段20の第2カム部26を相対的に回動させてパイロットリリース開始角度位置を調整するためのものであり、図示の形態のものは、操作部材62と、この操作部材62に装着された遊星歯車64(第2遊星歯車を構成する)と、中間部材66と、中間部材66に装着された遊星歯車68(第1遊星歯車を構成する)と、回転駆動軸4に装着された第1歯車70と、パイロットリリース開始角度位置を表示する角度位置表示部材72と、を備えている。更に説明すると、操作部材62は、外周側に配置される外側操作部74と、この外側操作部74の径方向内側に配設された内側本体部76とから構成され、内側本体部76に対して外側操作部74が軸方向(図2及び図3において左右方向)に所定範囲にわたって移動自在に支持され、この内側本体部76に遊星歯車64の両軸部78が回転自在に支持されている。外側操作部材74の内周面には、第1駆動用スプライン80及び第1ロック用スプライン82が設けられ、内側本体部76の外周面には、第1駆動用スプライン80に対応して第2駆動用スプライン84が設けられ、第1及び第2駆動用スプライン80,84が相互に係合され、外側操作部74を回動操作すると、これと一体的に内側本体部76も回動される。尚、この実施形態では、図2及び図3に示すように、操作部材62には相互に対向して一対の遊星歯車64が配設され、また中間部材66には相互対向して一対の遊星歯車68が配設されている。
【0027】
また、回転駆動軸4の一端部の外周面には第1連結用スプラインが設けられ、また第1歯車70の内周面には第2連結用スプラインが設けられ、かかる第1及び第2連結用スプラインを介して回転駆動軸4と第1歯車70とがスプライン連結されている。
【0028】
このパイロットリリース調整機構60は、更に、角度位置表示部材88及びカバー部材90を備えている。角度位置表示部材88は第1歯車70の軸部92に回転自在に支持され、その外側端部に外側に露出する角度位置表示部94を有し、この角度位置表示部94にパイロットリリース開始角度位置を表示するための目盛り96が施されている(図4参照)。また、カバー部材90の内周面には第3連結用スプラインが設けられ、この第3連結用スプラインが回転駆動軸4の第1連結用スプラインにスプライン連結されている。カバー部材90の表面には角度表示部98が設けられ、この角度表示部98の目盛りは、角度位置表示部94の目盛り96と協働してパイロットリリース開始角度位置を表示し、例えば図4に示す角度位置関係にあるときには、パイロットリリース開始角度位置は140度となる。尚、第1歯車70及びカバー部材90は、押圧部材100を介して固定ナット102を回転駆動軸4の一端部に螺着することによってこの回転駆動軸4に取り付けられる。
【0029】
角度位置表示部材88には、外側操作部74の第1ロック用スプライン82に対応して第2ロック用スプライン103が設けられているとともに、軸方向(図2及び図3において左右方向)に間隔をおいて歯車部104,106が設けられている。また、中間部材66の一端部は第1カム手段20の第2カム部26の軸部108に回転自在に支持され、その他端部には歯車部110が設けられている。更に、第12カム部26には歯車部112が設けられている。
【0030】
この実施形態では、中間部材66に装着された遊星歯車68に関連する構成によって減速が行われ、更に操作部材62に装着された遊星歯車64によって減速が行われ、操作部材62の回動操作が2段に減速されて第1カム手段20の第2カム部26に伝達されるように構成されてえいる。即ち、中間部材66の遊星歯車68(第1遊星歯車)には、第1歯車70の歯部114が噛合されているとともに、この歯部114の内側(図2及び図3において右側)にて第2カム部26の歯車部112(第1歯車として機能する)が噛合され、この歯部114の外側(図2及び図3において左側)にて角度位置表示部材88の歯車部104(第3歯車として機能する)が噛合されている。第2カム部26の歯車部112と第1歯車70の歯部114との歯数は異なり、この歯車部112の歯数は第1歯車70の歯部114の歯数よりも多く、例えば歯車部112の歯数は例えば36個に、第1歯車70の歯数は例えば34個に設定される。このように歯数を設定することにより、遊星歯車68が第1歯車70の周囲を一回転すると、第2カム部26の歯車部112の歯数が多い故に、かかる歯数差分だけこの歯車部112(第2カム部26)が第1歯車70に対して相対的に回転方向に進むようになり、かかる歯数差に対応する角度差だけ相対的にずれるようになる。また、第2カム部26の歯車部112と角度位置表示部材88の歯車部104との歯数は等しく、角度位置表示部材88の歯車部104の歯数は例えば36個に設定される。このように歯数を設定することにより、角度位置表示部材88は第2カム部26と同期して回動し、この角度位置表示部材88により第2カム部26の角度位置を表示することが可能となる。
【0031】
また、操作部材62の遊星歯車64(第2遊星歯車)には、角度位置表示部材88の歯車部106(第4歯車として機能する)と中間部材66の歯車部110(第5歯車として機能する)とが噛合されている。中間部材66の歯車部110の歯数と角度位置表示部材88の歯車部106との歯数は異なり、この歯車部106の歯数は中間部材66の歯車部110の歯数よりも少なく、例えば歯車部106の歯数は例えば38個に、中間部材66歯車部110の歯数は例えば40個に設定される。このように歯数を設定することにより、遊星歯車64が角度位置表示部材88の歯車部106(第4歯車)の周囲を一回転すると、中間部材66の歯車部110(第5歯車)の歯数が多い故に、かかる歯数差分だけこの歯車部110が角度位置表示部材88の歯車部106に対して相対的に回転方向に進むようになり、かかる歯数差に対応する角度差だけ中間部材66が角度位置表示部材88に対して相対的にずれるようになる。
【0032】
この形態では、操作部材62の外側操作部74と内側本体部76とが上記軸方向に相対的に移動自在に装着され、図2及び図3に示すロック位置においては、外側操作部74の第1駆動用スプライン80と内側本体部76の第2駆動用スプライン84とが係合するとともに、外側操作部74の第1ロック用スプライン82と角度位置表示部材88の第2ロック用スプライン103とが係合するように構成されている。従って、このロック位置においては、角度位置表示部材88に対する操作部材62の相対的回動が阻止され、この操作部材62はロック状態に保持される。また、外側操作部74を手前側(図3において左側)に引いたロック解除位置においては、外側操作部74の第1駆動用スプライン80と内側本体部76の第2駆動用スプライン84との係合状態が保たれた状態において、外側操作部74の第1ロック用スプライン82と角度位置表示部材88の第2ロック用スプライン103との係合が解除される。従って、このロック解除位置においては、角度位置表示部材88に対する操作部材62の相対的回動が許容され、外側操作部74を回動操作して後述する如くして第1カム手段20の第2カム部26の相対的角度位置を調整することができる。
【0033】
次に、上述したパイロットリリース調整機構60によるパイロットリリース開始角度位置の調整について説明する。パイロットリリース開始角度位置を調整するには、操作部材62の外側操作部74を手前側(図3において左側)に引っ張って所定方向(又は所定方向対して反対側)に回動すればよい。かく回動操作すると、外側操作部74と一体的に内側本体部76が回動し、かかる回動に伴って遊星歯車64(第2遊星歯車)が移動部材88の歯車部106(第4歯車)の周囲を自転しながら回動する。このよう遊星歯車64が回動すると、この歯車部106の歯数が中間部材66の歯車部110(第5歯車)の歯数よりも少ないので、中間部材66が歯数差に対応する角度分だけ進むように所定方向(又は所定方向と反対方向)に減速されて回動される。
【0034】
そして、このように中間部材66が回動されると、この回動に伴って中間部材66の遊星歯車68(第1遊星歯車)が第1歯車70の周囲を自転しながら回動する。かくすると、第1歯車70の歯部114の歯数が第1カム手段20の第2カム部26の歯部112(第2歯車)の歯数よりも少ないので、第2カム部26が歯数差に対応する角度分だけ進むように所定方向(又は所定方向と反対方向)に更に減速されて回動され、このように回動することによって、回転駆動軸4に対して第1カム手段20の第2カム部26が所定方向(又は所定方向対して反対方向)に相対的に回動され、かくして、第2カム部26の角度位置が変わり、パイロットリリース開始角度位置を所要の通り調整することができる。また、このとき、回転駆動軸4(換言すると、第1歯車70)に対して第2カム部26の歯部112(第2歯部)と角度位置表示部材88の歯部104(第3歯部)とが同期して回動するので、回転駆動軸4に対する第2カム部26の回動量と、回転駆動軸4に対する角度位置表示部材88の回動量とが等しく、角度位置表示部材88の目盛り96は、カバー部材90の角度表示部98と協働してパイロットリリース開始角度位置を表示し、この目盛り96を見ることによって、パイロットリリース開始角度位置を容易に把握することができ、この目盛り96を見ながら操作部材62を回動操作することによって、所定のパイロットリリース開始角度位置を容易に且つ正確に設定することができる。また、この形態では、操作部材62の回動操作が2段階に減速されて第1カム手段20の第2カム部26に伝達されるので、パイロットリリース開始角度位置を高精度に設定することができる。
【0035】
尚、上述した形態では、操作部材62の回動操作を2段階に減速して第2カム部26に伝達しているが、このような構成に限定されず、その回動操作を1段階に減速して第2カム部26に伝達するようにしてもよい。この場合、中間部材66を操作部材62のように構成し、遊星歯車64(第2遊星歯車)、角度位置表示部材88の歯車部106(第4歯車)及び中間部材66の歯車部110(第5歯車)を省略すればよく、このように構成しても上述した同様にしてパイロットリリース開始角度位置を所要の通りに調整することができる。
【0036】
次に、図5及び図6を参照して、送り装置のパイロットリリース調整機構の他の実施形態ついて説明する。図5は、他の実施形態のパイロットリリース調整機構を示す断面図であり、図6は、図5のパイロットリリース調整機構における第2操作部材を解除位置に位置付けた状態で示す断面図である。
【0037】
図5において、このパイロットリリース調整機構60Aは、リリースハウジング202を備え、このリリースハウジング202が組み合わされる第1ハウジング204及び第2ハウジング206から構成されている。この回転駆動軸4には、第1カム手段210の第2カム部212が回転自在に支持され、かかる第2カム部212が軸受部材214を介して第2ハウジング206に回転自在に支持されている。
【0038】
このパイロットリリース機構60Aは、パイロットリリース開始角度位置を小さく調整操作するための第1操作部材216と、第1操作部材216と一体的に回動する駆動歯車218と、第2ハウジング206に支持された移動部材220と、パイロットリリース開始角度位置を大きく調整するための第2操作部材222と、回転駆動軸4と一体的に回転される第1部材224とを備えている。
【0039】
移動部材220は、外周側に配設された外側部材226(連結ねじ227によって連結された部材229,231が外側部材を構成する)と、この外側部材226の径方向内側に配設された内側部材228とを有し、内側部材228と外側部材226とが一対の軸受部材230を介して相対回転自在に装着されている。この移動部材220はリリースハウジング202の第2ハウジング206に螺着されている。この形態では、リリースハウジング202の第2ハウジング206の内周面には雌ねじ部が設けられ、移動部材220の外側部材226の外周面には雄ねじ部が設けられ、この雌ねじ部と雄ねじ部とが螺合されている。このように装着されているので、移動部材220はリリースハウジング202(換言すると、回転駆動軸4)に対して軸方向(図5及び図6において左右方向)に移動自在に且つ相対回転自在に装着されている。この移動部材220の外周面には歯車部230が設けられ、内側部材228の内周面には螺旋状に延びるスパイラル歯部232(第2スパイラル歯部を構成する)が設けられている。
【0040】
第1操作部材216には軸部材234が固定され、かかる軸部材234が一対の軸受部材236を介してリリースハウジング202に回転自在に支持され、この軸部材234に駆動歯車218が取り付けられ、この駆動歯車218の歯部238が移動部材220(外側部材226)の歯車部230に噛合されている。また、第2カム部212の軸部240の外周面に、移動部材220のスパイラル歯部232に対応してスパイラル歯部242(第1スパイラル歯部を構成する)が設けられ、かかるスパイラル歯部242が移動部材220(内側部材228)のスパイラル歯部232に相互に噛合されている。このように構成されているので、回転駆動軸4(即ち、第2カム部212)に対して移動部材220が矢印244(又は246)で示す方向に移動されると、相互に噛合するスパイラル歯部232,242の作用によって、第2カム部212が所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動される。
【0041】
この形態では、第1部材224は固定部材248によって回転駆動軸4に固定されている。この第1部材224の外周面にはスプライン250(第1スプラインを構成する)が設けられている。また、移動部材220の内側部材228の端部は第2操作部材222に向かって延び、この内側部材228の端部に歯部252(第2歯車として機能する)が設けられている。また、第2操作部材222には、第1部材224のスプライン250に対応してスプライン254が設けられ、また移動部材220(内側部材228)の歯部252に対応して歯部256(第1歯車として機能する)が設けられている。
【0042】
第2操作部材222は、図5に示す係合位置と、この係合位置から手前側(図5及び図6において左側)に引っ張った解除位置との間を移動自在に回転駆動軸4に支持されている。この係合位置においては、図5に示すように、第2操作部材222の歯部256(第1歯車)と移動部材220の歯部252(第2歯部)が噛合するととともに、第2操作部材222のスプライン254(第2スプライン)と第1部材224のスプライン250(第1スプライン)とが係合状態に保たれ、両スプライン250,254の係合によって、回転駆動軸4に対する第2操作222の相対的回動が阻止されるとともに、回転駆動軸4に対する移動部材220の内側部材228の相対的回転が阻止される。従って、第1操作部材216を後述する如く操作することによって、パイロットリリース開始角度位置を調整することができる。また、解除位置においては、図6に示すように、第2操作部材222の歯部256(第1歯車)と移動部材220の歯部252(第2歯部)との噛合状態が保たれた状態にて、第2操作部材222のスプライン254(第2スプライン)と第1部材224のスプライン250(第1スプライン)との係合状態が解除される。従って、回転駆動軸4に対する移動部材220の内側部材228の相対的回動が許容され、第2操作部材222を後述する如く操作することによって、パイロットリリース開始角度位置を調整することができる。このパイロットリリース調整機構60Aを備えた送り装置の構成は、図1及び図2に示すものと同様でよい。
【0043】
このパイロットリリース調整機構60Aによるパイロットリリース開始角度位置の調整は、次のようにして行われる。パイロットリリース開始角度位置を小さく高精度に調整するには、第1操作部材216を回動操作すればよく、またパイロットリリース開始角度位置を大きく速く調整するには、第2操作部材222を手前側に引っ張って係合位置から解除位置に位置付け、かかる状態において第2操作部材222を回動操作すればよい。
【0044】
第2操作部材222を係合位置から解除位置に位置付けると、図6に示すように、第2操作部材222の歯部256(第1歯車)と移動部材220(内側部材228)の歯部252(第2歯部)との噛合状態が保たれた状態にて、第2操作部材222のスプライン254(第2スプライン)と第1部材224のスプライン250(第1スプライン)との係合状態が解除され、第2操作部材222によるパイロットリリース開始角度位置の調整が可能となる。
【0045】
第2操作部材222を解除位置に位置付けた状態にて第2操作部材222を回動すると、この回動が第2操作部材222の歯部256(第1歯車)及び移動部材220(内側部材228)の歯部252(第2歯部)を介してこの移動部材220(内側部材228)に伝達され、更にスパイラル歯部232及びスパイラル歯部242を介して第2カム部212に伝達され、この第2カム部212が回転駆動軸4に対して相対的に回動され、このようにしてパイロットリリース開始角度位置を大きく調整することができる。
【0046】
一方、第2操作部材222を係合位置に位置付けた状態にて第1操作部材216を回動すると、この回動が駆動歯車218の歯部238及び歯車部230を介して移動部材220(外側部材226)に伝達され、この移動部材220が例えば所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動される。かくすると、移動部材220の外側部材226がリリースハウジング202(第2ハウジング206)に螺合されているので、この移動部材220の回動が軸方向の移動に変換され、移動部材220(外側部材226及び内側部材228)が例えば矢印244(又は246)で示す方向に移動され、かかる軸方向の移動が、移動部材220のスパイラル歯部232及び第2カム部212のスパイラル歯部242を介して第2カム部212の回動移動に変換される。従って、第1操作部材216の回動が駆動歯車218及び移動部材220の歯車部230により減速されて第1カム手段210の第2カム部212に伝達され、この第2カム部212が回転駆動軸4に対して相対的に回動され、このようにしてパイロットリリース開始角度位置を小さく高精度に調整することができる。
【0047】
以上、本発明に従う送り装置の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】一実施形態の送り装置を簡略的に示す断面図。
【図2】図1におけるII−II線による断面図。
【図3】図1の送り装置におけるパイロットリリース調整機構及びその近傍を示す断面図。
【図4】図3のパイロットリリース調整機構における角度位置表示部を示す正面図。
【図5】他の実施形態のパイロットリリース調整機構を示す断面図。
【図6】図5のパイロットリリース調整機構における第2操作部材を解除位置に位置付けた状態で示す断面図。
【符号の説明】
【0049】
2 装置本体
4 回転駆動軸
8 第1グリップ手段
10 第2グリップ手段
20,210 第1カム手段
26,212 第2カム部
40 第2カム手段
60,60A パイロットリリース調整機構
62 操作部材
64,68 遊星歯車
66 中間部材
70 第1歯車
88 角度位置表示手段
202 リリースハウジング
216 第1操作部材
220 移動部材
222 第2操作部材
232,242 スパイラル歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、前記装置本体に回転自在に支持され、プレス作業と同期して回転駆動される回転駆動軸と、前記装置本体の所定位置に配設された第1グリップ手段と、前記装置本体にシート状部材を送る前進位置とこの前進位置から後退する後退位置との間を往復移動可能に配設された第2グリップ手段と、を備えており、
前記第1グリップ手段は、第1固定グリップとこの第1固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第1可動グリップとを有しており、
前記第2グリップ手段は、第2固定グリップとこの第2固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第2可動グリップとを有しており、
前記回転駆動軸には、前記第1グリップ手段の前記第1可動グリップを移動させるための第1カム手段と、前記第2グリップ手段の前記第2可動グリップを移動させるための第2カム手段が設けられ、前記第1カム手段は、前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられた第1カム部と、前記回転駆動軸に相対的に回転するように取り付けられた第2カム部とを有し、前記第2カム手段は前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられており、
前記回転駆動軸に関連して、更に、前記第1グリップ手段によるグリップ状態を解除するためのパイロットリリース調整機構が設けられ、前記パイロットリリース調整機構は、前記回転駆動軸と一体的に回転するように取り付けられた第1歯車と、パイロットリリースの開始角度位置を調整操作するための操作部材と、前記操作部材の回動操作によって回動される第1遊星歯車と、前記第1カム手段の前記第2カム部と一体的に回転するように設けられた第2歯車と、を有し、前記第1歯車及び前記第2歯車は前記第1遊星歯車に噛合されているとともに、それらの歯数が相互に異なっていることを特徴とする送り装置。
【請求項2】
前記パイロットリリース調整機構は、パイロットリリース開始角度位置を表示するための角度位置表示部と、前記角度位置表示部と一体的に回動するように設けられた第3歯車と、を備え、前記第3歯車は前記第1遊星歯車に噛合されているとともに、前記第2歯車と歯数が等しいことを特徴とする請求項1に記載の送り装置。
【請求項3】
前記パイロットリリース調整機構は、前記操作部材と前記第1遊星歯車との間に介在された減速機構を備え、前記減速機構は、前記操作部材に装着された第2遊星歯車と、前記第1遊星歯車が装着された中間部材と、前記角度表示部に一体的に回転するように設けられた第4歯車と、前記中間部材に一体的に回転するように設けられた第5歯車と、とを備え、前記第4及び第5歯車が前記第2遊星歯車に噛合されているとともに、それらの歯数が相互に異なっていることを特徴とする請求項2に記載の送り装置。
【請求項4】
装置本体と、前記装置本体に回転自在に支持され、プレス作業と同期して回転駆動される回転駆動軸と、前記装置本体の所定位置に配設された第1グリップ手段と、前記装置本体にシート状部材を送る前進位置とこの前進位置から後退する後退位置との間を往復移動可能に配設された第2グリップ手段と、を備えており、
前記第1グリップ手段は、第1固定グリップとこの第1固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第1可動グリップとを有しており、
前記第2グリップ手段は、第2固定グリップとこの第2固定グリップに対して近接及び離隔する方向に移動自在に配設された第2可動グリップとを有しており、
前記回転駆動軸には、前記第1グリップ手段の前記第1可動グリップを移動させるための第1カム手段と、前記第2グリップ手段の前記第2可動グリップを移動させるための第2カム手段が設けられ、前記第1カム手段は、前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられた第1カム部と、前記回転駆動軸に相対的に回転するように取り付けられた第2カム部とを有し、前記第2カム手段は前記回転駆動軸に一体的に回転するように取り付けられており、
前記回転駆動軸に関連して、更に、前記第1グリップ手段によるグリップ状態を解除するためのパイロットリリース調整機構が設けられ、前記パイロットリリース調整機構は、リリースハウジングと、パイロットリリースの開始角度位置を調整操作するために前記リリースハウジングに回転自在に支持された第1操作部材と、前記回転駆動軸に対して軸方向に移動自在に且つ回転自在に支持された移動部材と、前記第1カム手段の前記第2カム部と一体的に回転するように設けられた第1スパイラル歯部と、前記移動部材に設けられた第2スパイラル歯部と、有し、前記第1及び第2スパイラル歯部が相互に噛合されているとともに、前記移動部材と前記リリースハウジングとが螺合されていることを特徴とする送り装置。
【請求項5】
前記パイロットリリース調整機構は、更に、パイロットリリースの開始角度位置を大きく調整操作するための第2操作部材と、前記回転駆動軸に一体的に回転するように装着された第1部材とを備え、前記第2操作部材は係合位置と解除位置との間を移動自在に前記回転駆動軸に支持されており、第1部材には第1スプラインが設けられ、前記第2操作部材には上記軸方向に間隔をおいて第2スプライン及び第1歯部を有し、また前記移動部材は相互に回転自在に支持された外側部材及び内側部材を有し、前記外側部材が前記リリースハウジングに螺合され、前記内側部材に第2歯部が設けられており、前記第2操作部材を前記係合位置に位置付けた状態においては、前記第1スプラインと前記第2スプラインとが係合状態に保たれるとともに、前記第1歯車と前記第2歯車とが噛合状態に保たれ、前記第1操作部材を回動操作することによって前記移動部材が回動されまた前記第2操作部材を前記解除位置に位置付けた状態においては、前記第1歯車と前記第2歯車とが噛合状態に保たれる一方、前記第1スプラインと前記第2スプラインとの係合状態が解除され前記第2操作部材を回動操作することによって前記移動部材の前記内側部材が回動されることを特徴とする請求項4に記載の送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18325(P2009−18325A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182973(P2007−182973)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(591041749)日本電産キョーリ株式会社 (14)