説明

送信パワー測定装置

【課題】無線送信装置の送信パワー測定において効果的に消費電力を削減する。
【解決手段】送信パワー測定装置は、無線周波数信号の有効データ区間よりも短く設定されたサンプリング区間でサンプリングして送信パワーを測定する。この際、有効データ区間開始点を基準に相対的に見て、各有効データ区間におけるサンプリング開始点が前回のサンプリング開始点の次のサンプリング点から前回のサンプリング終了点の次のサンプリング点までのいずれかの点になる。送信パワー測定装置は、各有効データ区間のサンプリング値を各有効データ区間のサンプリング点数で平均化し、さらに、この平均値を複数の有効データ区間に亘って平均化して送信パワーとして出力し、各サンプリング区間でアクティブモードになり、各サンプリング区間以外でアクティブモードより低消費電力のスリープモードになることで、送信パワーのばらつきを少なくすると共に、低消費電力化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信装置の送信パワーを測定する送信パワー測定装置に関し、特に、省電力化を実現できる送信パワー測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線送信装置の送信パワーを測定することが行われている。測定された送信パワーは、例えば、異常出力が起きていないかの監視に用いられたり、APC(Auto Power Control:自動出力制御回路)により送信パワーを一定に保つために用いられたりする(例えば、特許文献1を参照)。以下、簡単に従来の送信パワー測定装置について説明する。
【0003】
図3は、従来の無線送信装置900の構成を示す機能ブロック図である。無線送信装置900は、無線部1とカプラ2とアンテナ3と送信パワー測定部9とを備えている。
【0004】
無線部1は、入力されるベースバンド信号を無線周波数信号に変調し、電力増幅を行ってカプラ2に出力する。カプラ2は、取得した無線周波数信号を分岐し、アンテナ3と送信パワー測定部9とに出力する。アンテナ3は、無線周波数信号を電波にして送信する。
【0005】
このとき、無線周波数信号は、複数のスロットで時分割されたフレーム単位で構成されており、予め無線送信装置900にスロットの割り当てがされている。無線送信装置900は、送信すべきデータがある場合、自装置に予め割り当てられたスロットの所定区間に送信データを格納して送信している。
【0006】
送信パワー測定部9は、カプラ2によって分岐された無線周波数信号について、無線送信装置900に割り当てられたスロットの内、送信データが存在するスロットにおいて送信データが格納された所定区間(以下、有効データ区間と呼ぶ)の平均送信出力を算出し、それを複数スロットに亘って平均化した値を送信パワー値として出力する。
【0007】
この有効データ区間は、無線周波数信号において局所的である。そのため、送信パワー測定部9は、測定が不要な区間での測定処理を休止するスリープ制御を行い、消費電力の削減を行う。
【0008】
以下、具体的に送信パワー測定部9の構成について説明する。
【0009】
送信パワー測定部9は、パワー検出回路91とA/D変換器92と計算機93とスリープ制御部94とで構成される。
【0010】
カプラ2から分岐された無線周波数信号は、パワー検出回路91に入力される。パワー検出回路91は、処理を実行するアクティブモードと処理を休止するスリープモードとを有する。アクティブモードとスリープモードとの切り替えは、後述するスリープ制御部94から取得するスリープ制御信号により行われる。パワー検出回路91は、スリープ制御信号に基づいてアクティブモードになると、有効データ区間における無線周波数信号を電圧値に変換し、A/D変換器92に出力する。
【0011】
同様に、A/D変換器92も、処理を実行するアクティブモードと処理を休止するスリープモードとを有しており、スリープ制御部94から取得するスリープ制御信号によりモード切替を行う。A/D変換器92は、スリープ制御信号に基づいてアクティブモードになると、パワー検出回路91から取得した電圧値を一定のサンプリング間隔(サンプリング周期)でアナログ値からデジタル値に変換してサンプリングを行い、デジタル化した電圧値を計算機93に出力する。
【0012】
計算機93は、例えば平均化回路等で構成されており、サンプリングされた電圧値について有効データ区間全体の平均を算出して平均パワー値として保持し、それを複数スロットに亘って平均化した値を送信パワー値として出力する。
【0013】
スリープ制御部94は、パワー検出回路91とA/D変換器92とにおけるアクティブモードとスリープモードとのモードを切り替えることによりスリープ制御を行う。具体的には、スリープ制御部94は、パワー検出回路91とA/D変換器92とに対しスリープ制御信号を出力し、パワー検出回路91とA/D変換器92とによる処理が必要なときだけそれぞれをアクティブモードにし、処理が必要でないときにはスリープモードにする。ここでは、スリープ制御部94は、有効データ区間でパワー検出回路91とA/D変換器92とをアクティブモードにし、有効データ区間以外ではそれぞれをスリープモードに制御している。スリープ制御信号は、例えば制御電圧等であり、アクティブモードとスリープモードとを切り替え可能であればよい。パワー検出回路91とA/D変換器92とは、スリープモードであるときにアクティブモードよりも消費電力が低い状態となる。
【0014】
なお、図示していないが、スリープ制御部94には、無線周波数信号について、送信データが格納されたスロットがどれであるかや、そのスロットにおける有効データ区間の開始位置や終了位置についての情報が入力されているものとする。
【0015】
図4は、パワー検出回路91とA/D変換器92とにおける処理タイミングと電力消費量とを示したイメージ図である。ここでは、分かりやすく示すためにパワー検出回路91の処理とA/D変換器92の処理とが行われる有効データ区間に対して、サンプリングが行われる様子で示している。図4で上向き矢印は、サンプリングタイミングを示している。また、パワー検出回路91とA/D変換器92とがアクティブモードである区間をアクティブ区間とし、スリープモードである区間をスリープ区間として示す。
【0016】
送信データの存在するスロットにおいて有効データ区間になるまでは、パワー検出回路91とA/D変換器92とはスリープ制御部94によりスリープモードに制御されるので、スリープ区間において消費電力がLowとなる。パワー検出回路91とA/D変換器92とは、有効データ区間になると、スリープ制御信号に基づいてスリープモードからアクティブモードに移行し処理を開始するので、アクティブ区間において消費電力がHighになる。このとき、アクティブ区間は、有効データ区間全体に略等しく設定されている。
【0017】
そのため、パワー検出回路91は、有効データ区間全体に亘って無線周波数信号を変換した電圧値をA/D変換器92に出力し続ける。A/D変換器92は、有効データ区間の間、パワー検出回路91から取得する電圧値について一定のサンプリング間隔でサンプリングする。結果的に、パワー検出回路91とA/D変換器92との処理によって、有効データ区間全体をサンプリング区間として送信出力がサンプリングされることになる。有効データ区間が終了すると、パワー検出回路91とA/D変換器92とは、スリープ制御信号に基づいてアクティブモードからスリープモードに移行し、再びスリープ区間において消費電力がLowになる。
【0018】
この処理は、送信データを有するスロットの有効データ区間の度に行われる。有効データ区間においてサンプリングされたサンプリング値は、計算機93に入力され、計算機93によって複数有効データ区間に亘って平均化され、送信パワー値として出力される。
【0019】
このように、送信パワー測定部9は、有効データ区間全体に亘ってパワー検出回路91とA/D変換器92とに処理を実行させて送信パワー値を測定するとともに、有効データ区間以外ではパワー検出回路91とA/D変換器92とによる処理を休止させて省電力化を図っている。言い換えれば、送信パワー測定部9は、スリープ制御部94により、送信出力に対するサンプリング区間が有効データ区間全体となるよう制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2010−011320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、近年の省電力化に対する要求はますます厳しくなっている。しかしながら、従来の無線送信装置900における省電力化対策では十分に対応できていない。そのため、より省電力化を実現できる無線送信装置が望まれている。
【0022】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、無線送信装置の送信パワー測定において効果的に消費電力を削減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の送信パワー測定装置は、送信される無線周波数信号について所定の測定対象区間を所定間隔でサンプリングして送信パワーを測定する送信パワー測定装置において、前記測定対象区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各測定対象区間内であって前記測定対象区間よりも短く設定されたサンプリング区間のサンプリング開始点が、前回のサンプリング開始点の次のサンプリング点から前記前回のサンプリング終了点の次のサンプリング点までのいずれかの点であるサンプリング手段と、前記サンプリングされたサンプリング値を前記各測定対象区間におけるサンプリング点数で平均化した平均値を複数の前記測定対象区間に亘って平均化した値を前記送信パワーとして出力する平均化手段とを備え、前記サンプリング手段は、前記サンプリング区間で処理を実行するアクティブモードになり、前記サンプリング区間以外で前記アクティブモードより低消費電力のスリープモードになることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無線送信装置の送信パワー測定において効果的に消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る実施形態の無線送信装置100におけるスリープ制御によるパワー検出回路41とA/D変換器42とにおける処理タイミングと電力消費量とを示したイメージ図である。
【図2】本発明に係る実施形態の無線送信装置100におけるスリープ制御によるパワー検出回路41とA/D変換器42とにおける処理タイミングと電力消費量とを示したイメージ図である。
【図3】従来の無線送信装置900の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】従来の無線送信装置900におけるスリープ制御によるパワー検出回路91とA/D変換器92とにおける処理タイミングと電力消費量とを示したイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態の無線送信装置は、有効データ区間をサンプリングするサンプリング区間を有効データ区間よりも短く設定し、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、有効データ区間毎にサンプリング開始点を順次ずらしながら送信パワー値の測定を行う。
【0027】
つまり、従来の無線送信装置900では、有効データ区間全体にサンプリングを行っていたのに対し、本実施形態の無線送信装置では、有効データ区間の一部に対してサンプリングを行う。そのため、本実施形態の無線送信装置では、送信パワー測定部において測定処理を休止する時間を従来よりも長く設定することができるので、高い省電力効果を得ることができる。
【0028】
また、本実施形態の無線送信装置では、1つの有効データ区間に対し、その一部にだけサンプリングを行っているが、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、有効データ区間毎にサンプリング開始点を順次ずらしながら送信出力の測定を行うので、最終的に複数スロット分に亘って平均化され、従来技術と同等のばらつきの少ない送信パワー値を得ることができる。
【0029】
以下、図を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
本実施形態の無線送信装置100の構成は、図3に示す従来の無線送信装置900と同様でよい。ここでは、図3を参照して本実施形態の無線送信装置100が従来の無線送信装置900と異なる点について説明を行い、従来の無線送信装置900と同様の構成に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0031】
本実施形態の無線送信装置100が従来の無線送信装置900と異なる点は、送信パワー測定部4にあり、特にスリープ制御部44によるスリープ制御のタイミングにある。送信パワー測定部4は、パワー検出回路41とA/D変換器42と計算機43とスリープ制御部44とで構成される。
【0032】
スリープ制御部44は、パワー検出回路41とA/D変換器42とに対するスリープ制御を行っており、有効データ区間内の一部の所定区間がアクティブ区間となるように、パワー検出回路41とA/D変換器42とを制御する。このとき、スリープ制御部44は、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、パワー検出回路41とA/D変換器42とにおけるアクティブ区間の開始位置が時間軸上で順次ずれるよう制御する。また、各アクティブ区間は、有効データ区間よりも短く設定される。そして、アクティブ区間以外は、スリープ区間に設定される。なお、図示していないが、従来と同様に、スリープ制御部44には、無線周波数信号について送信パワー値の測定を行う測定対象区間(ここでは有効データ区間)がどの位置にあるかの情報が入力されているものとする。
【0033】
その結果、パワー検出回路41は、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各有効データ区間に対する処理開始点を順次ずらしながら、アクティブ区間に対応する有効データ区間の無線周波数信号を電圧値に変換してA/D変換器42に出力する。パワー検出回路41は、アクティブ区間が終了してスリープ区間になると、スリープモードに移行して処理を休止する。
【0034】
A/D変換器42は、パワー検出回路41と同様にスリープ制御され、アクティブ区間になると、パワー検出回路41から取得する電圧値を所定のサンプリング間隔でアナログ値からデジタル値に変換してサンプリングを行い、計算機43に出力する。A/D変換器42は、アクティブ区間が終了してスリープ区間になると、スリープモードに移行して処理を休止する。
【0035】
計算機43は、A/D変換器42から取得した電圧値についてアクティブ区間毎の平均パワー値を算出し、複数のアクティブ区間に亘って平均化して送信パワー値を出力する。このとき、計算機43は、平均化の対象となる複数のアクティブ区間を、少なくとも有効データ区間の最初から最後まで、上記のように順次ずらして生成される複数の一連のアクティブ区間とすることで、従来と同様に有効データ区間全体の平均パワー値を得ることができる。計算機43は、有効データ区間全体の平均パワー値を送信パワー値としてもよいし、さらに多くの一連のアクティブ区間で平均化した値を送信パワー値としてもよい。
【0036】
図1は、本実施形態におけるスリープ制御によるパワー検出回路41とA/D変換器42とにおける処理タイミングと電力消費量とを示したイメージ図である。図4と同様に、パワー検出回路41の処理とA/D変換器42の処理とが行われる有効データ区間に対してサンプリングが行われる様子で示している。なお、図中の上向き矢印は、サンプリングタイミングを示している。また、以下でn、mは自然数である。
【0037】
まず、無線周波数信号において有効データ区間を有する第n番目のスロットが到来すると、パワー検出回路41とA/D変換器42とは、スリープ制御信号に基づいて、アクティブ区間になるまでスリープモードに制御される。パワー検出回路41とA/D変換器42とがスリープモードに制御されるスリープ区間では、それぞれの消費電力がアクティブ区間に比べてLowとなる。
【0038】
パワー検出回路41とA/D変換器42とは、アクティブ区間になると、スリープ制御信号に基づいてスリープモードからアクティブモードに移行し、処理を開始するので、消費電力がHighになる。このとき、アクティブ区間は、有効データ区間の開始点から始まる。
【0039】
パワー検出回路41は、アクティブ区間全体に亘って有効データ区間における無線周波数信号を変換した電圧値をA/D変換器42に出力し続ける。A/D変換器42は、アクティブ区間の間、パワー検出回路41から取得する電圧値について一定のサンプリング間隔でサンプリングを行い、計算機43に出力する。結果的に、パワー検出回路41とA/D変換器42との処理によって、アクティブ区間全体をサンプリング区間として送信出力がサンプリングされることになる。
【0040】
パワー検出回路41とA/D変換器42とは、有効データ区間が残っていても、アクティブ区間が終了すると、スリープ制御信号に基づいてアクティブモードからスリープモードに移行し、消費電力がLowになる。
【0041】
次に、有効データ区間を有する第n+1番目のスロットが到来すると、スリープ制御部44は、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見て、前回測定を行った第n番目の有効データ区間におけるサンプリング終了点の次のサンプリング点が、第n+1番目のサンプリング開始点となってサンプリングが開始されるように、スリープ制御を行う。言い換えれば、前回の第n番目の有効データ区間と今回の第n+1番目の有効データ区間とを重ねたときに、予め定められたサンプリング間隔で連続してサンプリングが行われるようにアクティブ区間が設定される。
【0042】
パワー検出回路41とA/D変換器42とは、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見ると、今回のサンプリング開始点が、前回の有効データ区間に対し行われたサンプリング終了点の次のサンプリング点となる点からサンプリングが開始されるように、スリープ制御信号に基づいて、スリープモードからアクティブモードに移行する。パワー検出回路41とA/D変換器42とは、アクティブモードになると処理を開始し、アクティブ区間において送信出力のサンプリングを行う。パワー検出回路41とA/D変換器42とは、アクティブ区間が終了するとスリープモードになり、消費電力の削減を行う。
【0043】
有効データ区間を有する第n+2番目以降のスロットが到来した場合にも、同様の処理が行われる。例えば、有効データ区間を有する第n+2番目のスロットが到来した場合、スリープ制御部44は、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、前回の第n+1番目の有効データ区間におけるサンプリング終了点の次のサンプリング点が、第n+2番目の有効データ区間におけるサンプリング開始点として、サンプリングがされるようスリープ制御を行う。これにより、パワー検出回路41とA/D変換器42によって第n+2番目の有効データ区間に対しアクティブ区間のサンプリングが行われる。
【0044】
有効データ区間を有する第m番目のスロットが到来した場合にも、同様のスリープ制御がされる。この第m番目における処理では、設定されるアクティブ区間により有効データ区間の最後までサンプリングが行われる。スリープ制御部44は、アクティブ区間が有効データ区間を超える場合、アクティブ区間の予め設定された時間長を短くして有効データ区間の終了点とアクティブ区間の終了点とを揃えるように設定してもよい。
【0045】
なお、スリープ制御部44は、アクティブ区間が有効データ区間の終了点に到達したときは、次に到来する有効データ区間を有するスロットについては、有効データ区間開始点をアクティブ区間の開始点に設定することを繰り返す。例えば、有効データ区間を有する第m+1番目のスロットが到来したときには、有効データ区間の先頭からサンプリングが行われる。
【0046】
各アクティブ区間においてサンプリングされたサンプリング値は、計算機43によってアクティブ区間におけるサンプリング点数で平均化され、さらに複数のアクティブ区間に亘って平均化されて、送信パワー値として出力される。
【0047】
このように、本実施形態では、有効データ区間の一部にのみサンプリングを行うことで、パワー検出回路41とA/D変換器42とをスリープモードにするスリープ区間を長く設定し、送信パワー測定における消費電力を低下させることができる。また、本実施形態において、有効データの開始点を基準に相対的に見たときに、今回の有効データ区間をサンプリングするサンプリング開始点は、前回の有効データ区間に対するサンプリング終了点の次のサンプリング点となるよう設定されている。このように、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見て、各有効データ区間に対するサンプリング区間を前回の有効データ区間に対するサンプリング区間分だけ時間軸上ずらすことにより、最終的に有効データ区間全体に対してサンプリングしたことになるので、算出される送信パワー値のばらつきを少なくすることができる。
【0048】
なお、各有効データ区間に対して設定されるサンプリング区間は、最終的に有効データ区間全体がサンプリングされればよいので、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、前後の有効データ区間のサンプリング区間に対応する区間と相対的に連続していればよい。そのため、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、例えば、今回の各有効データ区間のサンプリング開始点は、前回の有効データ区間におけるサンプリング開始点の次のサンプリング点となってもよい。
【0049】
図2は、本実施形態におけるスリープ制御によるパワー検出回路41とA/D変換器42とにおける処理タイミングと電力消費量とを示したイメージ図であって、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各有効データ区間に対するサンプリング開始点が、前回の有効データ区間におけるサンプリング開始点の次のサンプリング点となるよう設定されたイメージ図である。図2では、図1と同様に、パワー検出回路41の処理とA/D変換器42の処理とが行われる有効データ区間に対してサンプリングが行われる様子で示している。また、図中で上向き矢印はサンプリングタイミングを示している。
【0050】
無線周波数信号において有効データ区間を有する第n番目のスロットに対するサンプリング区間の設定は、図1と同じである。つまり、パワー検出回路41とA/D変換器42とは、アクティブ区間の開始点が有効データ区間の開始点となるよう、スリープ制御部44により制御され、有効データ区間の先頭からアクティブモードになってアクティブ区間の間サンプリングを行う。
【0051】
無線周波数信号において有効データ区間を有する第n+1番目のスロットに対しては、パワー検出回路41とA/D変換器42とは、スリープ制御部44により制御され、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、前回の第n番目の有効データ区間におけるサンプリング開始点の次のサンプリング点から、今回の第n+1番目のサンプリングが開始されるようスリープモードからアクティブモードに移行する。そのため、この第n+1番目の有効データ区間では、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見ると、パワー検出回路41とA/D変換器42とにより、前回の有効データ区間に対するサンプリング区間と一部重複したサンプリングが行われる。
【0052】
有効データ区間を有する第n+2番目以降のスロットに対しても、有効データ区間を有する第n+1番目のスロットのときと同様にアクティブ区間の設定がされる。つまり、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見ると、各有効データ区間におけるアクティブ区間のサンプリング開始点は、1サンプリング周期分ずつシフトして設定される。
【0053】
アクティブ区間が有効データ区間の終了点に到達したときは、図1の場合と同様に、その次に到来する有効データ区間を有するスロットについては、そのアクティブ区間の開始点が有効データ区間の開始点に設定される。
【0054】
図2に示す場合においても、各有効データ区間に対して必要となるパワー検出回路41とA/D変換器42とにおける処理時間は、各有効データ区間において限定的であるので、パワー検出回路41とA/D変換器42とをスリープモードにするスリープ区間を長く設定でき、送信パワー測定における消費電力を低下させることができる。また、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各有効データ区間に対するサンプリング区間は、前回の有効データ区間に対するサンプリング区間より1サンプリング周期分だけ、時間軸上でシフトしている。そのため、最終的に有効データ区間全体に対してサンプリングしたことになり、算出される送信パワー値のばらつきを少なくすることができる。
【0055】
なお、ここでは、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各有効データ区間におけるサンプリング開始点を、前回の有効データ区間におけるサンプリング開始点から1サンプリング周期だけシフトする構成としたが、サンプリング区間内のサンプリング点数を上限に、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、2サンプリング周期や3サンプリング周期分、シフトさせてもよい。つまり、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見て、各有効データ区間におけるサンプリング開始点が、前回のサンプリング開始点の次のサンプリング点から前回のサンプリング終了点の次のサンプリング点までのいずれかの点であればよい。そのため、図1に示すとおり、最大でサンプリング区間内のサンプリング点数分だけ有効データ区間の開始点に対し相対的にシフトさせることができる。
【0056】
例えば、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)のように、送信されるスロット毎に送信出力が変更される無線周波数信号の場合、図1に示すように、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各有効データ区間におけるサンプリング開始点を、前回の有効データ区間のサンプリング終了点の次の点、つまりシフト可能な最大サンプリング点数分ずらすと、スロット間の送信出力差によるばらつきを吸収しやすくなる。逆に、送信されるスロット毎の送信出力に変動が少ないような場合、図2に示すように、有効データ区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各有効データ区間に対するサンプリング開始点を、前回の有効データ区間に対するサンプリング開始点から1サンプリング周期だけずらして、測定される送信パワー値の精度を上げてもよい。
【0057】
なお、パワー検出回路41とA/D変換器42とが安定に動作するまでに時間が掛かる場合、それを考慮して早めにアクティブ区間を設定してもよい。また、本実施形態では、パワー検出回路41とA/D変換器42とに対するアクティブ区間とスリープ区間とを同じにして説明したが、それぞれの動作周波数を考慮して設定してもよく、例えば、パワー検出回路41のモード切替よりもA/D変換器42のモード切替のタイミングを遅らせてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、スロット単位で測定を行ったが、フレーム単位で行ってもよい。また、本実施形態では、比較的、消費電力量が多いパワー検出回路41とA/D変換器42とに対してスリープ制御を行ったが、計算機43に対してもスリープ制御を行うようにしてもよい。また、パワー検出回路41とA/D変換器42と計算機43とのいずれか1つがスリープ制御されるようにしてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、有効データ区間における送信パワー値を測定したが、測定対象区間は有効データ区間に限らず、スロット区間やフレーム区間に対して行ってもよい。
【0060】
以上、本実施形態を概説すると、本実施形態の送信パワー測定装置は、送信される無線周波数信号について所定の測定対象区間を所定間隔でサンプリングして送信パワーを測定する送信パワー測定装置において、前記測定対象区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各測定対象区間内であって前記測定対象区間よりも短く設定されたサンプリング区間のサンプリング開始点が、前回のサンプリング開始点の次のサンプリング点から前記前回のサンプリング終了点の次のサンプリング点までのいずれかの点であるサンプリング手段と、前記サンプリングされたサンプリング値を前記各測定対象区間におけるサンプリング点数で平均化した平均値を複数の前記測定対象区間に亘って平均化した値を前記送信パワーとして出力する平均化手段とを備え、前記サンプリング手段は、前記サンプリング区間で処理を実行するアクティブモードになり、前記サンプリング区間以外で前記アクティブモードより低消費電力のスリープモードになることを特徴とする。
また、前記サンプリング手段は、前記各測定対象区間のサンプリング開始点を前記各測定対象区間の前の前記測定対象区間におけるサンプリング区間分シフトさせてもよい。
また、前記サンプリング手段は、前記各測定対象区間のサンプリング開始点を前記各測定対象区間の前の前記測定対象区間におけるサンプリング開始点から1サンプリング周期シフトさせてもよい。
また、前記サンプリング手段は、前記サンプリング区間における前記無線周波数信号を電圧値に変換するパワー検出部を有し、前記パワー検出部から取得する前記電圧値に対して前記サンプリングを行ってもよい。
また、前記アクティブモードと前記スリープモードとを切り替えるスリープ制御信号を前記サンプリング手段に出力するスリープ制御部を備えてもよい。
【0061】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々様々に変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1・・・無線部
2・・・カプラ
3・・・アンテナ
4、9・・・送信パワー測定部
41、91・・・パワー検出回路
42、92・・・A/D変換器
43、93・・・計算機
44、94・・・スリープ制御部
100、900・・・無線送信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信される無線周波数信号について所定の測定対象区間を所定間隔でサンプリングして送信パワーを測定する送信パワー測定装置において、
前記測定対象区間の開始点を基準に相対的に見たときに、各測定対象区間内であって前記測定対象区間よりも短く設定されたサンプリング区間のサンプリング開始点が、前回のサンプリング開始点の次のサンプリング点から前記前回のサンプリング終了点の次のサンプリング点までのいずれかの点であるサンプリング手段と、
前記サンプリングされたサンプリング値を前記各測定対象区間におけるサンプリング点数で平均化した平均値を複数の前記測定対象区間に亘って平均化した値を前記送信パワーとして出力する平均化手段とを備え、
前記サンプリング手段は、前記サンプリング区間で処理を実行するアクティブモードになり、前記サンプリング区間以外で前記アクティブモードより低消費電力のスリープモードになる
ことを特徴とする送信パワー測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−39375(P2012−39375A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177647(P2010−177647)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】