説明

送信機制御システム

【課題】地上波デジタル放送において、地上波アナログ放送での映像同期信号の有無による中継局送信機制御方式に代り、かつ専用線不要の中継局送信機の起動、停止制御を行う。
【解決手段】地上波デジタルテレビ放送において各中継局に伝送されるTSパケットにはシステムの識別,階層構成,伝送パラメータなどを伝送するためのTMCC情報が含まれている。204ビットで構成されるTMCC情報には拡張用に15ビットのリザーブビットが存在する。この拡張用の15ビットを利用し、TSパケットヘッダ内の放送/非放送フラグと送信機のON、OFF制御信号を絡め、中継局送信機へ起動、停止信号を伝送することで、複数の中継局送信機の起動/停止制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送中継局送信機制御システム、特に地上波デジタルテレビ放送波を一般家庭等へ中継する中継局の送信機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上波アナログテレビ放送波を一般家庭等へ中継する中継局送信機の起動および停止制御を行う方法としては、映像同期信号の有無をモニターし、「同期信号あり」で送信機を起動させ、「同期信号なし」で送信機を停止させるという方法が一般に用いられている。しかし、地上波デジタル放送においては映像同期信号が存在しないため、上述の方式に替わる中継局送信機の起動、停止制御方法が必要となる。
【0003】
この種の中継局送信機等の機器を監視および制御する方法としてはTS(Transport Stream)パケット内のAC(Aux Channel)を利用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、TSパケットにおけるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)格納領域に、各中継段を一斉に制御・監視するための制御・監視情報の伝送に利用することができるAC1領域や、任意の中継段を個別に制御・監視するための制御・監視情報の伝送に利用することができるCC1領域,CC2領域を規定する。そして、制御情報としては各中継局の放送送信機に対するオン・オフ制御、系統切り替え、遅延時間制御等を想定し、監視情報としてはアラーム情報等を想定している。
【0004】
【特許文献1】特開2004-165753号公報(第6頁−第9頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、中継局とは、STL(Studio to Transmitter Link)/TTL(Transmitter to Transmitter Link)回線で接続された複数の局間伝送により多段中継を行うのであって、親局からの地上波デジタルテレビ放送波を一般家庭等へ直接的に中継(放映)する中継局を予定していないと考えられる。このような中継の故に、TSパケット−STL/TTL伝送パケット相互間のフォーマット構造の検討が必要となり、多段中継における制御・監視情報の一斉伝送の仕様が争点となっている。
【0006】
すなわち、中継局内では、受信したSTL/TTL伝送パケットを一度放送TSパケットの形式に変換し、制御・監視情報を一度取り出さなくてはならず、後段の中継局へ制御・監視情報を送る場合には、放送TSパケットをSTL/TTL伝送パケットに変換する際に、再度制御・監視情報を重畳する処理による遅延時間の蓄積が問題視される。特許文献1記載の技術は、この問題点を解消しようとするものである。
【0007】
従って、地上波デジタル放送において、上述の地上波アナログテレビ放送における映像同期信号を利用した中継局の起動および停止方法に替わる、複数の中継局送信機の起動・停止制御の具体的方法等はまだ確立していない。
【0008】
また、特許文献1記載の技術では、個別に制御・監視すべき中継局を指定するための領域は特に設けられていないので、個別に制御・監視のためのCC1領域,CC2領域は特定の中継局とリンクしていると考えられ、これでは多数の中継局を個別に制御・監視するのに不便であるという問題点もある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、専用の制御回線を用いることなく複数の中継局送信機の一斉または個別の自動起動および停止制御を行うことのできる送信機制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の送信機制御システムは、地上波デジタルテレビ放送波を一般家庭等へ中継する中継局の送信機制御システムにおいて、地上波デジタルテレビ放送波を送信する放送局は、TSパケットのヘッダ部より放送/非放送フラグを抽出する放送/非放送フラグ抽出部(図1の11)と、放送/非放送フラグ抽出部によって抽出された放送/非放送フラグと、中継局毎に指定された送信機ON/OFF信号とが論理輪された各中継局の送信機ON/OFFフラグを中継局識別IDと共に順次TMCC情報のリザーブビットに挿入する符号化装置(図1の12)と、送信機ON/OFFフラグの組み込まれたTMCC情報をTSパケットに組み込む混合器(図1の13)と、混合器からのTSパケットを各中継局に分配する分配器(図1の15)を備え、地上波デジタルテレビ放送波を受信する各中継局は、受信されたTSパケットのTMCC情報を抽出するTMCC抽出部(図1の22)と、起動命令または停止命令に従い受信されたTSパケットの送信(放映)を開始または終了する送信機(図1の25)と、TMCC抽出部にて抽出されたTMCC情報のリザーブビットから送信機ON/OFFフラグを取り出し、リザーブビットの中継局識別IDが送信機のIDと一致するとき、送信機ON/OFFフラグに従い送信機に対し起動命令または停止命令を出力する符合判別部(図1の23)を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、TMCC情報のリザーブビットに、各中継局の送信機に対する送信機ON/OFFフラグと中継局識別IDとを挿入して各中継局へTSパケットを送信し、中継局では受信したTSパケットからTMCC情報を抽出して、自己の送信機が中継局識別IDと一致するときは送信機ON/OFFフラグにより送信機の起動、停止制御をすることとしたため、地上波デジタルテレビ放送波を一般家庭等へ中継(放映)する多数の中継局の送信機の起動、停止制御を専用制御回線を用いることなく行うことができるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
地上波デジタルテレビ放送において各中継局に伝送されるTSパケットにはシステムの識別,階層構成,伝送パラメータなどを伝送するためのTMCC情報が含まれている。204ビットで構成されるTMCC情報には拡張用に15ビットのリザーブビットが存在する。この拡張用の15ビットを利用し、中継局送信機の起動信号と停止信号を伝送することで中継局送信機の制御を行う。
【0013】
本発明の送信機制御システムは、地上波デジタル放送中継局の送信機の制御信号をTSパケット内のTMCC情報に割り当てることにより、専用の制御回線を用いることなく複数の中継局送信機の起動および停止制御を行う。更に、TSパケットヘッダ内の放送/非放送フラグ(broadcasting flag)を利用し、中継局送信機の一斉自動起動/停止を可能とすることで、地上波アナログ放送における映像同期信号を利用した複数中継局の起動および停止方法に替わる地上波デジタル放送中継局の送信機制御システムを提供する。以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0014】
204ビットで構成されるTMCC情報には、図2に示すように、拡張用に15ビットのリザーブビットが存在する。本発明では、この拡張用の15ビットを利用し、中継局送信機の起動/停止制御信号および中継局識別IDを伝送することで中継局送信機の制御を行う。
【0015】
更に、TSパケットヘッダのPID(Personal Identity Number)部に存在するシステム管理記述子の放送/非放送フラグ(broadcasting flag)を抽出し、各中継局のON/OFF制御信号と絡めることで、中継局の自動起動/停止を行う。
【0016】
図1は本発明の送信機制御システムの一実施例を示すブロック図である。この送信機制御システムは、放送/非放送フラグ抽出部11,符号化装置12,混合器13,QAM変調器14および分配器15を備えて地上波デジタルテレビ放送波を送信する放送局10と、それぞれが放送局10からの地上波デジタルテレビ放送波を受信して一般家庭等へ直接的に中継(放映)する、QAM復調器21,TMCC抽出部22,符合判別部23,OFDM変調器24および送信機25多数の中継局20とで構成されている。
【0017】
放送局10の放送/非放送フラグ抽出部11はTSパケットヘッダのPID部より放送/非放送フラグを抽出する。符号化装置12は各中継局の送信機ON/OFFフラグを中継局識別IDと共に順次TMCC情報のリザーブビットに挿入する。送信機ON/OFFフラグは、放送/非放送フラグ抽出部11によって抽出された放送/非放送フラグと、中継局毎に指定された送信機ON/OFF信号とが論理輪されたものである。
【0018】
混合器13は中継局送信機ON/OFFフラグの組み込まれたTMCC情報をTSパケットに組み込む。QAM変調器14は各中継局20にTSパケットを送信するためにQAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調を行う。分配器15はQAM変調器14にて変調されたTS信号を各中継局20に分配する。
【0019】
各中継局20のQAM復調器21はQAM変調器14にて変調されたTS信号を復調する。TMCC抽出部22は復調されたTSパケットのTMCC情報を抽出する。符合判別部23はTMCC抽出部22にて抽出されたTMCC情報のリザーブビットから送信機ON/OFFフラグを取り出し、リザーブビットの中継局識別IDが送信機25のIDと一致するとき、送信機ON/OFFフラグに従い送信機25に対し起動命令または停止命令を出力する。
【0020】
OFDM変調器24は復調されたTSパケットに対してOFDM(Orthogonal Frequncy Division Multiplexing)変調を行い、送信機25は起動命令または停止命令に従いOFDM変調されたTSパケットの送信(放映)を開始または終了する。
【0021】
次に、具体的な数値を用いて本送信機制御システムの動作について説明する。TMCC情報内の15ビットのリザーブビットへのビットの割り当てとして、1ビット目を送信機のON/OFFフラグとし、残り14ビットを中継局識別ID番号とする。この場合、14ビットの中継局識別ID番号により最大で2の14乗、すなわち16,384 局の中継局送信機制御が可能となる。送信機ON/OFFフラグとして、ONには0、OFFには1を割り当てる。また、各中継局には他の中継局と重複しない固有の中継局識別IDを予め割り当てておく。
【0022】
図2において、放送/非放送フラグ抽出部11にて、TSパケットヘッダのPID部に存在するシステム管理記述子の放送/非放送フラグを抽出する。放送/非放送フラグは0で放送、1で非放送とする。抽出された放送/非放送フラグと各中継局の送信機ON/OFF信号は論理和され、符号化装置12へ送られる。
【0023】
ここで、各中継局の送信機ON/OFF信号は0でON、1でOFFと定義すると、論理和をとることで、放送/非放送フラグが0(放送)となると中継局の送信機ON/OFF信号が0(ON)である中継局全てを起動することができ、放送/非放送フラグが1(非放送)となると中継局の送信機ON/OFF信号に関わらず全ての中継局をOFFすることができる。
【0024】
符号化装置12では制御を行う各中継局の送信機ON/OFFフラグと中継局識別IDとをTMCC情報内のリザーブビットへ順次挿入する。挿入されたTMCC情報は混合器13によってTSパケット内に組み込まれる。このとき、例えば、ID1の中継局送信機を起動し、ID2の送信機を停止する場合には、先ずTMCC情報内リザーブビットへ送信機制御信号として000000000000001が挿入されたものがTSパケットに組み込まれ伝送され、続いて100000000000010が挿入されたものが次のTSパケットに組み込まれ伝送される。
【0025】
TSパケットはQAM変調器14によりQAM変調され、分配器15を通して各中継局へ伝送される。各中継局では、QAM復調器21により復調されたTSパケットからTMCC抽出部22によりTMCC情報を抽出する。符合判別部23はTMCC抽出部22により抽出されたTMCC情報からリザーブビットを取り出し、中継局識別IDと送信機ON/OFFフラグを判別する。
【0026】
そして、符合判別部23に予め設定されている自局の中継局識別IDとTMCC情報として伝送されてきた中継局識別IDを比較し、一致する場合には、送信機ON/OFFフラグが0ならば送信機25に対し起動命令を、1ならば停止命令を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の送信機制御システムの一実施例を示すブロック図
【図2】本発明で採用するQAM変調器情報の拡張用リザーブビットの内容を示す図
【符号の説明】
【0028】
10 放送局
11 放送/非放送フラグ抽出部
12 符号化装置
13 混合器
14 QAM変調器
15 分配器
20 中継局
21 QAM復調器
22 QAM抽出部
23 符号判別部
24 OFDM変調器
25 送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上波デジタルテレビ放送波を一般家庭等へ中継する中継局の送信機制御システムにおいて、
前記地上波デジタルテレビ放送波を送信する放送局は、
TSパケットのヘッダ部より放送/非放送フラグを抽出する放送/非放送フラグ抽出部と、
前記放送/非放送フラグ抽出部によって抽出された放送/非放送フラグと、中継局毎に指定された送信機ON/OFF信号とが論理輪された各中継局の送信機ON/OFFフラグを中継局識別IDと共に順次TMCC情報のリザーブビットに挿入する符号化装置と、
前記送信機ON/OFFフラグの組み込まれたTMCC情報をTSパケットに組み込む混合器と、
前記混合器からのTSパケットを各中継局に分配する分配器を備え、
前記地上波デジタルテレビ放送波を受信する各中継局は、
受信されたTSパケットのTMCC情報を抽出するTMCC抽出部と、
起動命令または停止命令に従い受信されたTSパケットの送信(放映)を開始または終了する送信機と、
前記TMCC抽出部にて抽出されたTMCC情報のリザーブビットから前記送信機ON/OFFフラグを取り出し、前記リザーブビットの前記中継局識別IDが前記送信機のIDと一致するとき、前記送信機ON/OFFフラグに従い前記送信機に対し起動命令または停止命令を出力する符合判別部を備えたことを特徴とする送信機制御システム。
【請求項2】
前記符号化装置は、前記リザーブビットの1ビットに前記送信機ON/OFFフラグを挿入し、前記リザーブビットの残余のビットに前記中継局識別IDを挿入することを特徴とする請求項1記載の送信機制御システム。

【図1】
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【図2】
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