送信装置、受信装置、無線通信システム、送信制御方法、受信制御方法、及び、プロセッサ
【課題】ユーザ間干渉を除去する通信方式MU−MIMO THPにおける伝搬特性を向上させることができる送信装置、受信装置、無線通信システム、送信制御方法、受信制御方法、及び、プロセッサを提供する。
【解決手段】複数の送信アンテナを備え、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置の多重信号生成部1bは、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の受信装置宛の信号と、電力抑圧処理を行わない第2の受信装置宛の信号と、を多重する。
【解決手段】複数の送信アンテナを備え、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置の多重信号生成部1bは、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の受信装置宛の信号と、電力抑圧処理を行わない第2の受信装置宛の信号と、を多重する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、無線通信システム、送信制御方法、受信制御方法、及び、プロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
<THPについて>
無線通信技術において、Tomlinson Harashima Precoding(THP)が知られている。THPは、送信装置と受信装置との通信において干渉が存在する状況下で、送信装置があらかじめ干渉を検出し、送信信号から干渉をあらかじめキャンセルした信号を受信装置に対して送信する技術である。ここで、送信装置及び受信装置は、Modulo(モジュロ、剰余)演算を行うことで、干渉をキャンセルすることによる送信電力の増加を抑圧した信号の送受信をする(非特許文献1参照)。
【0003】
以下、THPを用いた通信について詳細を説明する。
まず、送信装置及び受信装置が行うModulo演算について説明をする。このModulo演算は、変調シンボルのI−ch(In−phase chanel)及び Q−ch(Qudrature chanel)に対して、送信装置及び受信装置で既知の値τの整数倍を加算することにより、当該信号が[−τ/2,τ/2]の範囲に収まる変調シンボルになるように変換する演算である。Modulo演算は、次式(1)で表される。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、Modτ(x)はModulo演算を表し、x、x’はそれぞれModulo演算前後の変調シンボルを表す。また、jは虚数単位、Re(x)はxの実部を表し、Im(x)はxの虚部を表す。また、floor(x)はxを超えない最大の整数を表す。
【0006】
図37は、従来技術に係るModulo演算を示す概略図である。この図において、符号P11を付した変調シンボルP11は、Modulo演算前の変調シンボルを示す(式(1)のx)。また、符号P12を付した変調シンボルP12は、Modulo演算後の剰余シンボルを示す(式(1)のx’)。ここで、変調シンボルP12は、変調シンボルP11にN1τ+jN2τ(図37では、N1=−1、N2=−2)が加算されたものである。
図37において、Modulo演算後の変調シンボルP12は、I−ch、Q−chともに原点から[−τ/2,τ/2]の範囲に収まっている。このように、Modulo演算を行うことにより、信号の振幅を一定範囲内に収めることができ、送信電力を低減することができる。
なお、通常、Modulo幅τは、変調シンボルの平均電力を1に正規化した場合、変調方式に応じて、あらかじめ送受信側で既知な所定の値となる。例えば、QPSK(quadrature phase−shift keying;四位相偏移変調)ではτ=2√2、16QAM(Quadrature amplitude modulation;直交振幅変調)では、τ=8/√10、64QAMではτ=16/√42である。
【0007】
次に、Modulo演算を用いた干渉除去について説明をする。ここで、送信装置が受信装置に伝える所望信号の変調シンボルを所望シンボルsとし、送信装置と受信装置間での干渉の変調シンボルを干渉シンボルfとする。
THPを用いた通信では、送信装置は、まず干渉シンボルfを所望シンボルsから減算する。このようにすれば、受信装置では受信信号を復調して、そのまま所望シンボルsを受信することができる。しかし、減算後の干渉除去シンボルs−fは、干渉を減算することによって一般的に振幅が大きくなるため、この干渉除去シンボルの信号を送信すると送信電力が増加してしまう。そこで、送信装置は、この干渉除去シンボルs−f に対してModulo演算を行い、演算後の剰余シンボルx’(=Modτ(s−f))の信号を送信する。これにより、送信装置は、送信する信号の変調シンボルをI−ch、Q−chともに原点から[−τ/2,τ/2]の範囲に収めることができ、干渉除去シンボルs−fの信号を送信するときと比較して、電力を抑圧した信号を送信できる。
【0008】
送信装置が送信した信号は干渉を受け、受信装置が受信したこの信号の変調シンボルは、受信シンボルy=Modτ(s−f)+fとなる。ただし、伝搬路の特性を1として雑音の影響を無視している。この受信シンボルに対してModulo演算を行うと、その結果は、Modτ{Modτ(s−f)}+f=Modτ(s−f+f)=Modτ(s)=sとなる。つまり、受信装置は、所望シンボルsを検出することができる。
以上が、THPを用いた通信の仕組みである。
【0009】
<MU−MIMO THPについて>
次に、マルチユーザMIMO(MU−MIMO;Multi−User Multi Input Multi Output)通信にTHPを用いた通信について説明をする。なお、基地局装置から端末装置へのダウンリンク(DL;DownLink)におけるこの通信技術をDL MU−MIMO THPという。
【0010】
図38は、従来技術に係る無線通信システムを示す概略図である。この図は、DL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムの図である。
この図において、基地局装置X1は、複数の端末装置Y11及びY12へ信号を送信している。これらの信号が同一時刻に同一周波数に送信された場合、信号は互いに干渉する(ユーザ間干渉;Multi User Interference)。DL MU−MIMO THPは、このユーザ間干渉を除去する技術である。
非特許文献2には、DL MU−MIMO THPについて記載されている。
【0011】
以下、図38の無線通信システムについて、基地局装置X1及び端末装置Y1(Y11及びY12)の構成について説明をする。
図39は、従来技術に係る基地局装置X1の構成を示す概略ブロック図である。
多重生成部X13において、フィルタ算出部X131は、端末装置Y11及びY12から伝搬路状態情報(CSI;Channel State Information)を受信し、受信したCSIに基づいて干渉係数及び線形フィルタを算出する。フィルタ算出部X131は、算出した干渉係数及び線形フィルタを示す情報を、それぞれ、干渉算出部X132及び線形フィルタ乗算部X135に出力する。
干渉算出部X132は、フィルタ算出部X131から入力された情報が示す干渉係数を、変調部X121から入力された端末装置Y11宛の変調シンボルs1に乗算することで、干渉シンボルfを算出する。干渉算出部X132は、算出した干渉シンボルfを干渉減算部X133に出力する。
干渉減算部X133は、変調部X122から入力されたY12宛の変調シンボルs2に対して、干渉算出部X122から入力された干渉シンボルfを減算する。干渉減算部X133は、減算後の干渉除去シンボルs2−fをModulo演算部X134に出力する。
【0012】
Modulo演算部X134は、干渉減算部X133から入力された干渉除去シンボルに対して、式(1)のModulo演算を行い、演算後の剰余シンボルs2’(=Modτ(s2−f))を線形フィルタ乗算部X135に出力する。
線形フィルタ乗算部X135(係数乗算部)は、変調部X121から入力された端末装置Y11宛の変調シンボルs1、及び、線形フィルタ乗算部X135から入力された剰余シンボルs2’に対して、フィルタ算出部X131から入力された情報が示す線形フィルタを乗算し、無線送信部X141、X142に出力する。
以上の処理によって、基地局装置X1は、基地局装置X1から端末装置Y11への方向について、端末装置Y12宛の信号の成分を0(Null)にすることができる。なお、この動作原理については後述する。
【0013】
図40は、従来技術に係る端末装置Y1の構成を示す概略ブロック図である。この図において、Moduo演算部Y113は、伝搬路補償された受信信号の変調シンボルに対して、式(1)のModulo演算を行い、所望シンボルを抽出する。
【0014】
以下、図38〜図40に示したDL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムについて、動作原理を説明する。
基地局装置X1において、干渉算出部X122は、伝搬行列Hのエルミート共役行列HHをQR分解する。QR分解とは、行列をユニタリ行列Qと上三角行列Rに分解することである。この分解は、次式(2)で表される。
【0015】
【数2】
【0016】
フィルタ算出部X131は、CSIを用いて行列HHを生成し、行列HHをQR分解する。フィルタ算出部X131は、行列Qを線形フィルタとして算出し、r12*/r22*を干渉係数として算出する。ここで、r*は、rの複素共役を表す。
干渉算出部X122は、干渉シンボルfを(r12*/r22*)s1として算出する。また、Modulo演算部X134は、剰余シンボルs2’をModτ{s2−(r12*/r22*)s1}として生成し、線形フィルタ乗算部X135に出力する。線形フィルタ乗算部X135は、次式(3)のシンボルs1’’、s2’’を生成し、それぞれ、無線送信部X141、X142に出力する。
【0017】
【数3】
【0018】
端末装置Y11における受信信号を受信シンボルy1、端末装置Y12における受信信号を受信シンボルy2とおく。y1とy2は、次式(4)で表される。
【0019】
【数4】
【0020】
式(4)は、端末装置Y11の受信シンボルy1(=r11*s1)には、端末装置Y12宛の所望シンボルs2の成分が含まれていないことを示す。つまり、基地局装置X1は、基地局装置X1から端末装置Y11への方向について、端末装置Y12宛の信号の成分を0(Null)にすることができる。
端末装置Y11では、伝搬路補償部Y112が受信シンボルy1からr11*を除算することにより、所望シンボルs1を抽出することができる。なお、Modulo演算部Y113は、Modulo演算を行うが、Modτ(s1)=s1となるので、復調部Y114には、所望シンボルs1が出力される。
【0021】
端末装置Y12では、伝搬路補償部Y112は、受信シンボルy2からr22*を除算する。伝搬路補償部Y112は、除算後の伝搬補償シンボルz2(=y2/r22*)をModulo演算部Y113に出力する。
Modulo演算部Y113は、伝搬補償シンボルz2に対して、式(1)のModulo演算を行うことにより、所望シンボルs2を抽出する(次式(5)参照)。
【0022】
【数5】
【0023】
また、非特許文献3には、上記のDL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムにおいて、端末装置各々が複数のアンテナを備え、SU−MIOMO(Single−User Multi Input Multi Output)通信を行う場合について記載されている。
図41は、従来技術に係る無線通信システムを示す別の概略図である。この図は、端末装置各々がSU−MIOMO通信を行う場合に、DL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムの図である。
この図において、基地局装置X2は、複数の端末装置Y21〜Y22各々へ、SU−MIOMO通信を用いて信号を送信している。これらの信号が同一時刻に同一周波数に送信された場合に信号は互いにユーザ間干渉するが、DL MU−MIMO THPを適用することによって、このユーザ間干渉を除去する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】H.Harashima and H.Miyakawa,”Matched−Transmission Technique for Channels With Intersymbol Interference“,IEEE Transactions On Communications,Vol.Com−20,No.4,pp.774−780,August 1972.
【非特許文献2】J.Liu and A.Krzymien,”Improved Tomlinson−Harashima Precoding for the Dowinlink of Multiple Antenna Multi−User Systems”,Proc.IEEE Wireless and Communications and Networking Conference,pp.466−472,March 2005.
【非特許文献3】V.Stankovic and M.Haardt,”Successive optimization Tomlinson−Harashima precoding(SO THP) for multi−user MIMO systems”,Proc.IEEE Int.Conf.Acoust.,Speech,and Signal Processing (ICASSP),Vol.III,pp.1117−1120,Philadelphia,PA,USA,March 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ところで、上述した従来のTHPを適用した無線通信システムでは、Modulo幅τ間隔で周期的にI−ch、Q−ch方向にずれた点を同じ点とみなすため、受信候補点が増加して信号検出性能が低下(Modulo Loss)するという欠点があった。
具体的に、図42を用いて信号検出性能の低下について説明をする。
図42は、従来技術に係る受信候補点を示す概略図である。上図(a)はTHPを適用しない場合の図であり、下図(b)はTHPを適用した場合の図である。また、図42は、変調方式がQPSKの場合の図である。この図において、白塗り及び黒塗りの丸印、白塗り及び黒塗りの四角印は、受信候補点を示す。
【0026】
図42において、雑音等の影響で受信信号点が、矢印の先端の位置(符号z11を付した×印。信号z11という)にずれている。この場合、上図(a)では、信号z11は一番近い受信信号点P11として検出される。一方、下図(b)では、信号z11は一番近い受信信号点P22として検出される。このように、従来のTHPを適用した無線通信システムでは、受信候補点が増加して信号検出性能が低下し、伝搬特性が悪化するという欠点があった。
【0027】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、伝搬特性を向上させることができる送信装置、受信装置、無線通信システム、送信制御方法、受信制御方法、及び、プロセッサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明は、複数の送信アンテナを備え、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置において、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする送信装置である。
【0029】
(2)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定することを特徴とする。
【0030】
(3)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、複数の第1の前記受信装置宛の信号と、複数の第2の前記受信装置宛の信号と、を多重することを特徴とする。
【0031】
(4)また、本発明は、上記の送信装置において、前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする。
【0032】
(5)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定し、前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を生成して出力する剰余切換決定部と、前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、を備えることを特徴とする。
【0033】
(6)また、本発明は、上記の送信装置において、前記剰余切換決定部は、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より大きい場合に前記受信装置を第1の受信装置であると決定し、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より小さい場合に前記受信装置を第2の受信装置であると決定することを特徴とする。
【0034】
(7)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、を備え、前記適応剰余部は、前記剰余切換決定部から入力されたそれぞれの送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部がそれぞれの干渉信号を減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号をそれぞれ生成することを特徴とする。
【0035】
(8)また、本発明は、上記の送信装置において、前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0036】
(9)また、本発明は、上記の送信装置において、前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0037】
(10)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部が減算した減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、を備えることを特徴とする。
【0038】
(11)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記受信装置各々の固有参照信号を、当該受信装置宛の信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0039】
(12)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、前記フィルタ算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、予め定めた受信装置の順序に従って、当該受信装置宛の信号から干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置宛の信号に剰余演算を行う剰余演算部と、前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置宛の信号であって前記干渉減算部が前記干渉信号を減算した信号と、前記剰余演算部が剰余演算を行った信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする。
【0040】
(13)また、本発明は、上記の送信装置において、前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0041】
(14)また、本発明は、上記の送信装置において、前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0042】
(15)また、本発明は、上記の送信装置において、前記係数算出部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出し、前記多重信号生成部は、前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、を備えることを特徴とする。
【0043】
(16)また、本発明は、空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置において、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、を備えることを特徴とする受信装置である。
【0044】
(17)また、本発明は、上記の受信装置において、前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする。
【0045】
(18)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる情報であって前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を取得し、取得した送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする。
【0046】
(19)また、本発明は、上記の受信装置において、前記適応復調部は、前記送信モード判定部が、前記送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする。
【0047】
(20)また、本発明は、上記の受信装置において、前記信号から受信装置各々の固有参照信号を抽出するフレーム分離部と、前記フレーム分離部が抽出した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、を備えることを特徴とする。
【0048】
(21)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる受信装置各々の固有参照信号に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする。
【0049】
(22)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記固有参照信号が配置された位置が示す前記受信装置の順序であって、前記信号から干渉信号が減算された順序に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする。
【0050】
(23)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記受信装置の順序が閾値以後の順序である場合に前記受信装置を第1の受信装置であると判定し、前記受信装置の順序が閾値より前の順序である場合に前記受信装置を第2の受信装置であると判定することを特徴とする。
【0051】
(24)また、本発明は、上記の受信装置において、前記適応復調部は、前記送信モード判定部が前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする。
【0052】
(25)また、本発明は、上記の受信装置において、前記固有参照信号は前記受信装置の順序で時間順に配置され、前記送信モード判定部は、前記固有参照信号のうち前記受信装置の順序と対応付けされた順番の最後に受信した固有参照信号を選択し、前記送信モード判定部が選択した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、を備えることを特徴とする。
【0053】
(26)また、本発明は、複数の受信装置宛の信号を空間多重して送信する送信装置と、前記送信装置が送信した信号を受信する受信装置とを具備する無線通信システムにおいて、前記送信装置は、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備え、前記受信装置は、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、を備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0054】
(27)また、本発明は、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置における送信制御方法において、多重信号生成部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する過程を有することを特徴とする送信制御方法である。
【0055】
(28)また、本発明は、空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置における受信制御方法において、送信モード判定部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する第1の過程と、適応復調部が、前記第1の過程での判定結果に基づいて、前記信号を復調する第2の過程と、を有することを特徴とする受信制御方法である。
【0056】
(29)また、本発明は、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置に用いられるプロセッサにおいて、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とするプロセッサである。
【0057】
(30)また、本発明は、空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置に用いられるプロセッサにおいて、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、を備えることを特徴とするプロセッサである。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、伝搬特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る基地局装置を示す概略ブロック図である。
【図3】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る基地局装置が送信する無線信号の一例を示す概略図である。
【図5】本実施形態に係る基地局装置が送信する無線信号の別の一例を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図7】本実施形態に係る適応復調部の構成を示す概略ブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図9】本実施形態に係る基地局装置を示す概略ブロック図である。こ
【図10】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図11】本実施形態に係る適応Modulo部の構成を示す概略ブロック図である。
【図12】本実施形態に係るフレーム構成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図13】本実施形態に係る多重信号生成部の動作を示すフロー図である。
【図14】本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。
【図15】本実施形態に係る閾値を説明する説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図17】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図18】本実施形態に係る多重信号生成部の動作を示すフロー図である。
【図19】本実施形態に係る閾値Kを説明する説明図である。
【図20】本実施形態に係る閾値Kと誤り率特性との関係を示す概略図である。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図22】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図23】本実施形態に係るフレーム構成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図24】本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。
【図25】本実施形態に係る端末装置を示す概略ブロック図である。
【図26】本発明の第5の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図27】本実施形態に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図28】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図29】本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。
【図30】本実施形態に係るフレーム構成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図31】本実施形態に係る基地局装置が送信する無線信号の一例を示す概略図である。
【図32】本実施形態に係る端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図33】本実施形態に係る多重信号生成部の動作を示すフロー図である。
【図34】本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。
【図35】OFDM処理を行う構成を示す概略ブロック図である。
【図36】Codebookの一例を示す概略図である。
【図37】従来技術に係るModulo演算を示す概略図である。
【図38】従来技術に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図39】従来技術に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図40】従来技術に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図41】従来技術に係る無線通信システムを示す別の概略図である。
【図42】従来技術に係る受信候補点を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0061】
<無線通信システムについて>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。この図は、DL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムの図である。
この図において、基地局装置Bは、複数の端末装置MT1及びMT2各々に宛てた信号を空間多重して送信している。無線通信システムでは、干渉電力に基づいて、端末装置MT2宛の信号に対してModulo演算(信号の電力を抑圧する電力抑圧処理)を行うか否かを切り替える。
以下、基地局装置Bを基地局装置b1といい、端末装置MT1及びMT2各々を端末装置m1という。
【0062】
<基地局装置b1について>
図2は、本実施形態に係る基地局装置b1を示す概略ブロック図である。この図は、基地局装置b2が、同じ周波数帯域で各端末装置宛の信号を送信するアンテナを2個備える場合の図である。
図2において、基地局装置b1は、符号部b111、b112、変調部b121、b122、多重信号生成部1b、CRS(Common Reference Symbols;共通参照シンボル)生成部b13、フレーム選択部b14、無線送信部b151、b152、アンテナb101、b102、無線受信部b161、b162、及び伝搬路情報取得部b17を含んで構成される。
【0063】
符号部b111、b112は、それぞれ、端末装置MT1宛の情報ビット、MT2宛の情報ビットを入力される。符号部b111、b112は、入力された情報ビットを誤り訂正符号化して、それぞれ、変調部b121、b122に出力する。
変調部b121、b122は、入力されたビットを変調し、それぞれ、変調した変調シンボルs1、s2を多重信号生成部1bに出力する。
【0064】
多重信号生成部1bは、伝搬路情報取得部b17から入力された伝搬路状態情報(CSI;Channel State Information)に基づいて、端末装置MT2宛の無線信号に生ずる干渉シンボルfを算出する。多重信号生成部1bは、変調部b121、b122から入力された変調シンボルs2から、算出した干渉シンボルfを減算する。
また、多重信号生成部1bは、端末装置m1毎の固有参照シンボル(DRS;Dedecated Reference Symbols)を生成する。なお、固有参照シンボル及び後述する共通参照シンボルは、基地局装置b1と端末装置m1とがその値を予め記憶するシンボルであり、伝搬路状態の推定等に用いられる。
【0065】
多重信号生成部1bは、伝搬路情報取得部b17から入力されたCSIに基づいて、Modulo演算を行うか否かを判定する。Modulo演算を行うと判定した場合、多重信号生成部1bは、Modulo演算後の剰余シンボルs2’、Modulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b14に出力する。
一方、Modulo演算を行わないと判定した場合、多重信号生成部1bは、干渉除去シンボルs2−f、Modulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b14に出力する。
なお、多重信号生成部1bが行う処理の詳細については、後述する。
【0066】
CRS生成部b13は、アンテナ毎の共通参照シンボル(CRS)を生成し、フレーム選択部b14に出力する。
フレーム選択部b14は、マッピング情報に従って、CRS生成部b13から入力されたアンテナb101、b102の共通参照シンボルを周波数帯域に配置して、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b151に出力する。
また、フレーム選択部b14は、マッピング情報に従って、多重信号生成部1bから入力された端末装置MT2宛のシンボル列を、端末装置MT2に信号を送信する周波数帯域に配置する。ここで、端末装置MT1及びMT2のシンボル列を配置する周波数帯域は同じ周波数帯域である。フレーム選択部b14は、周波数帯域に配置した信号を、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b152に出力する。
【0067】
無線送信部b151、b152は、それぞれ、端末装置MT1宛の信号、MT2宛の信号をフレーム選択部b14から入力される。無線送信部b151、b152は、入力された信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換後の信号を搬送周波数にアップコンバージョンする。無線送信部b151、b152は、アップコンバージョンした無線信号(図4、5参照)を、それぞれ、アンテナb101、b102を介して送信する。
なお、フレーム選択部b14が用いるマッピング情報、符号部b111、b112での符号化方式、及び、変調部b121、b122での変調方式は、基地局装置b1が端末装置m1(本実施例では端末装置MT1、MT2)へ予め通知する。
【0068】
無線受信部b161、b162は、それぞれ、アンテナb101、b102を介して、端末装置MT1、MT2からの無線信号を受信する。無線受信部b161、b162は、受信した無線信号をベースバンド帯域にダウンコンバージョンして、ダウンコンバージョン後の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う。無線受信部b161、b162は、変換後の信号を伝搬路情報取得部b17に出力する。
伝搬路情報取得部b17は、無線受信部b161、b162から入力された信号を復調する。伝搬路情報取得部b17は、復調した情報から、基地局装置と端末装置MT1、MT2各々とアンテナb101、b102各々との伝搬路状態を示すCSIであって、端末装置MT1、MT2各々が推定したCSIを抽出する。伝搬路情報取得部b17は、抽出したCSIを多重信号生成部1bに出力する。
【0069】
図3は、本実施形態に係る多重信号生成部1bの構成を示す概略ブロック図である。この図において、多重信号生成部1bは、線形フィルタ算出部111b、干渉算出部112b、干渉減算部113b、Modulo演算切替決定部114b、適応Modulo部12b、MT(Mobile Terminal;端末装置)固有情報挿入部13b、及び、線形フィルタ乗算部141bを含んで構成される。また、適応Modulo部12b(適応剰余部)は、Modulo演算切替部121b及びModulo演算部122bを含んで構成される。また、フレーム構成部13bは、送信モード情報挿入部131b、DRS生成部132b、及びDRS挿入部133bを含んで構成される。
【0070】
線形フィルタ算出部111b(係数算出部)は、CSIを入力される。線形フィルタ算出部111bは、入力されたCSIから伝搬行列Hを生成する。線形フィルタ算出部111bは、生成した伝搬行列Hのエルミート共役行列HHをQR分解して、干渉係数(r12*/r22*)及び線形フィルタ(行列Q)を算出する。QR分解とは、行列をユニタリ行列Qと上三角行列Rに分解することであり、このQR分解は、次式(2)で表される。なお、r*は、rの複素共役を表す。
【0071】
【数6】
【0072】
ここで、h11、h12は、それぞれ、アンテナb101と端末装置MT1、MT2との伝搬路推定値であり、h21、h22は、それぞれ、アンテナb201と端末装置MT1、MT2との伝搬路推定値(複素利得)である。伝搬路推定値はCSIに含まれる情報である。
線形フィルタ算出部111bは、算出した干渉係数を示す情報を、干渉算出部112b及びModulo演算切替決定部114bに出力する。また、線形フィルタ算出部111bは、線形フィルタを示す情報を、線形フィルタ乗算部141bに出力する。
【0073】
干渉算出部112bは、変調シンボルs1を入力される。干渉算出部112bは、線形フィルタ算出部111bから入力された情報が示す干渉係数を、入力された変調シンボルs1に乗算することで、干渉シンボルf(=(r12*/r22*)s1)を算出する。干渉算出部112bは、算出した干渉シンボルfを干渉減算部113bに出力する。
干渉減算部113bは、変調シンボルs2を入力される。干渉減算部113bは、入力された変調シンボルs2から、干渉算出部112bから入力された干渉シンボルfを減算する。干渉減算部113bは、減算後の干渉除去シンボルs2−fを、Modulo演算切替部121bに出力する。
【0074】
Modulo演算切替決定部114b(剰余切換決定部)は、線形フィルタ算出部111bから入力された干渉係数を二乗することで、次式(7)で表される干渉電力Pを算出する。
【0075】
【数7】
【0076】
Modulo演算切替決定部114bは、算出した干渉電力Pが予め定めた閾値P0より大きい場合、Modulo演算を行うと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部114bは、Modulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報を送信モード情報挿入部131b及びModulo演算切替部121bに出力する。
一方、算出した干渉電力Pが予め定めた閾値P0以下の場合、Modulo演算切替決定部114bは、Modulo演算を行わないと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部114bは、Modulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報を送信モード情報挿入部131b及びModulo演算切替部121bに出力する。
【0077】
Modulo演算切替部121bは、Modulo演算切替決定部114bから入力された送信モード情報が送信モード1を示す場合、干渉減算部113bから入力された干渉除去シンボルs2−fを、Modulo演算部122bに出力する。
一方、Modulo演算切替決定部114bから入力された送信モード情報が送信モード2を示す場合、Modulo演算切替部121bは、干渉減算部113bから入力された干渉除去シンボルs2−fを、送信モード情報挿入部131bに出力する。
【0078】
Modulo演算部122b(剰余演算部)は、Modulo演算切替部121bから入力された干渉除去シンボルs2−fに対して、Modulo演算を行う。Modulo演算は、次式(8)で表される。
【0079】
【数8】
【0080】
ここで、Modτ(x)はModulo演算を表し、x、x’はそれぞれModulo演算前後の変調シンボルを表す。また、jは虚数単位、Re(x)はxの実部を表し、Im(x)はxの虚部を表す。また、floor(x)はxを超えない最大の整数を表す。
Modulo演算部122bは、演算後の剰余シンボルs2’(=Modτ(s2−f))を送信モード情報挿入部131bに出力する。
【0081】
送信モード情報挿入部131bは、Modulo演算切替決定部114bから入力された送信モード情報を変調する。送信モード情報挿入部131bは、Modulo演算部122bから入力された剰余シンボルs2’、或いはModulo演算切替部121bから入力された干渉除去シンボルs2−f、及び、変調した送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT2宛のシンボル列)。また、送信モード情報挿入部131bは、変調部b121から入力された変調シンボルs1、及び、送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT1宛のシンボル列)。送信モード情報挿入部131bは、配列した端末装置m1毎のシンボル列を、DRS挿入部133bに出力する。
【0082】
DRS生成部132bは、端末装置m1(本実施形態では端末装置MT1、MT2)毎の固有参照シンボルを生成する。DRS生成部132bは、生成した端末装置m1毎の固有参照シンボルを、DRS挿入部133bに出力する。
DRS挿入部133bは、DRS生成部132bから入力された端末装置m1毎の固有参照シンボルを、その端末装置m1のシンボル列であって送信モード情報挿入部131bから挿入されたシンボル列に挿入する。ここで、DRS挿入部133bは、マッピング情報が示す時間に、固有参照シンボルを挿入する。
DRS挿入部133bは、固有参照シンボルを挿入した端末装置m1毎のシンボル列(フレーム)を線形フィルタ乗算部141bに出力する。
【0083】
線形フィルタ乗算部141bは、同時刻に送信するシンボルであって、DRS挿入部133bから入力された端末装置MT1のシンボル列のシンボルS1と、端末装置MT2のシンボル列のシンボルS2と、を組み合わせたベクトルを生成する。線形フィルタ乗算部141bは、生成したベクトルに対して、線形フィルタ算出部111bから入力された情報が示す線形フィルタを乗算する。線形フィルタを乗算したシンボルS1’’、S2’’は、次式(9)で表される。
【0084】
【数9】
【0085】
線形フィルタ乗算部141bは、シンボルS1’’、S2’’を含むシンボル列を、それぞれ、アンテナb101、アンテナb102で送信するシンボル列として、フレーム選択部b14に出力する。
【0086】
<無線信号について>
図4は、本実施形態に係る基地局装置b1が送信する無線信号の一例を示す概略図である。この図において、横軸は時間軸を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号を、端末装置毎の無線信号(端末装置MT1宛の無線信号、及び端末装置MT2宛の無線信号)に分けて表している。
【0087】
図4において、端末装置MT1宛の無線信号は、変調シンボルs1の信号S111(MT1宛データ信号)、端末装置MT1の送信モード情報の信号S112(本実施形態では、送信モード2)、及び端末装置MT1の固有参照シンボルの信号S113(DRS−MT1)を含む信号である。
また、端末装置MT2宛の無線信号は、剰余シンボルs2’の信号或いは干渉除去シンボルs2−fの信号S121(MT2宛データ信号)、端末装置MT2の送信モード情報の信号S122、及び端末装置MT2の固有参照シンボルの信号S123(DRS−MT2)を含む信号である。
図4において、信号S111及びS121は同時刻に送信されている、つまり、空間多重されていることを示す。また、図4は、信号S112、S113、S122、S123が同時刻に送信される他の信号がない、つまり、時分割で多重されることを示す。
【0088】
また、
図5は、本実施形態に係る基地局装置b1が送信する無線信号の別の一例を示す概略図である。この図は、端末装置m1が伝搬路推定するためのCRSを含む無線信号の一例を示す概略図である。
基地局装置b1は、まず、図5に示す無線信号を送信する。その後、基地局装置b1は、図4に示す無線信号を送信する。この図において、横軸は時間軸を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号のうち、共通参照シンボルの信号S101、S102(CRS−TX1、CRS−TX2)を示す。
【0089】
<端末装置m1について>
図6は、本実施形態に係る端末装置m1の構成を示す概略ブロック図である。この図は、端末装置m1のアンテナが1個の場合の図である。
図6において、端末装置m1は、アンテナm101、無線受信部m111、フレーム分離部m121、伝搬路推定部m122、伝搬路補償部m123、送信モード取得部m124、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、フレーム構成部m132、及び無線送信部m141を含んで構成される。
【0090】
無線受信部m111は、アンテナm101を介して、基地局装置b1からの無線信号を受信する。無線受信部m111は、受信した無線信号をベースバンド帯域にダウンコンバージョンして、ダウンコンバージョン後の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う。無線受信部m111は、変換後の信号をフレーム分離部m121に出力する。
【0091】
フレーム分離部m121は、基地局装置b1から予め通知されたマッピング情報に基づいて、無線受信部m111から入力された信号から、自装置宛の信号を分離する。
フレーム分離部m121は、分離した信号のうち共通参照シンボルの信号、及び自装置の固有参照シンボルの信号を、伝搬路推定部m122に出力する。また、フレーム分離部m121は、分離した信号のうち自装置宛のデータ信号(図4の例では信号S111、S121の時刻の信号)を伝搬路補償部m123に出力する。
例えば、端末装置MT1におけるデータ信号の変調シンボルを受信シンボルy1、端末装置MT2におけるデータ信号の変調シンボルを受信シンボルy2は、次式(10)又は(11)で表される。
【0092】
【数10】
【0093】
ここで、式(10)は送信モード情報が「送信モード1」を示す場合であり、式(11)は送信モード情報が「送信モード2」を示す場合である。式(10)は、シンボルS1、S2に線形フィルタを乗じたことにより、受信シンボルy1、y2が、伝搬行列が行列RHの場合のシンボルとなることを示す。
また、フレーム分離部m121は、分離した信号のうち送信モード情報の信号を送信モード取得部m124に出力する。
【0094】
伝搬路推定部m122は、フレーム分離部m121から入力された共通参照シンボルの信号及び固有参照シンボルの信号に基づいて、基地局装置b1のアンテナ各々からの伝搬路状態を推定する。伝搬路推定部m112は、共通参照シンボルの信号及び固有参照シンボルの信号に基づいて推定した伝搬路状態を示すCSIを、それぞれ、伝搬路状態情報生成部m131及び伝搬路補償部m123に出力する。
伝搬路補償部m123は、伝搬路推定部m122から入力されたCSIに基づいて、フレーム分離部m121から入力された自装置宛のデータ信号に対して、伝搬路補償を行う。伝搬路補償部m123は、伝搬路補償を行って抽出した自装置宛のデータ信号を適応変調部1mに出力する。例えば、端末装置MT2におけるデータ信号の変調シンボルは、z2=y2/r22*で表される。
【0095】
送信モード取得部m124は、フレーム分離部m121から入力された送信モード情報の信号を復調することで、送信モード情報を取得する。送信モード取得部m124は、取得した送信モード情報を、適応復調部1mに出力する。
【0096】
適応復調部1mは、送信モード取得部m124から入力された送信モード情報に基づいて、伝搬路補償部m123から入力されたデータ信号を復調する。適応復調部1mは、復調したビットを復号部m124に出力する。
復号部m124は、適応復調部1mから入力されたビットを復号化して、出力する。
【0097】
伝搬路状態情報生成部m131は、伝搬路補償部m123から入力されたCSIを変調し、変調した信号をフレーム構成部m132に出力する。
フレーム構成部m132は、伝搬路状態情報生成部m131から入力された信号を、基地局装置b1に信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム構成部m132は、周波数帯域に配置した信号を、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部m141に出力する。
無線送信部m141は、フレーム構成部m132から入力された信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換後の信号を搬送周波数にアップコンバージョンする。無線送信部m141は、アップコンバージョンした無線信号を、アンテナm101を介して送信する。
【0098】
図7は、本実施形態に係る適応復調部1mの構成を示す概略ブロック図である。この図は、図6の適応復調部1mの構成を示す。この図において、適応復調部1mは、Modulo演算切替部111m、Modulo演算部112m、及び復調部113mを含んで構成される。
【0099】
Modulo演算切替部111mは、データ信号及び送信モード情報を入力される。Modulo演算切替部111mは、入力された送信モード情報が「送信モード1」を示す場合、入力されたデータ信号をModulo演算部112mに出力する。一方、Modulo演算切替部111mは、入力された送信モード情報が「送信モード2」を示す場合、入力されたデータ信号を復調部113mに出力する。
Modulo演算部112mは、Modulo演算切替部111mから入力されたデータ信号の変調シンボルz2に対して、Modulo演算を行うことで、所望シンボルs2を抽出する(式(5)参照)。Modulo演算部112mは、抽出した所望シンボルs2のデータ信号を復調部113mに出力する。
復調部113mは、Modulo演算部112mから入力されたデータ信号を復調する。復調部113mは、復調したビット(硬判定結果)又は軟推定値(軟推定結果)を出力する。
【0100】
このように、本実施形態によれば、多重信号生成部1bは、「送信モード1」の場合、Modulo演算を行った端末装置MT2宛の信号と、Modulo演算を行わない端末装置MT1宛の信号と、を多重する。また、送信モード取得部m124は、受信した信号から送信モード情報を取得して、Modulo演算を行った端末装置宛の信号であるか又はModulo演算を行わない端末装置宛の信号であるかを判定する。この判定結果に基づいて、適応復調部1mは、信号にModulo演算を行って復調する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が小さい信号と干渉電力が大きい信号とを多重するとともに、干渉電力が大きい信号にはModulo演算を行って干渉電力が小さい信号にはModulo演算を行わずに信号を多重することができる。つまり、本実施形態では、無線通信システムは、受信候補点が増加して信号検出性能が低下することを防止するとともに、電力効率が高い通信を行うことができ、伝搬特性を向上させることができる。
特に、本実施形態に係る通信システムでは、線形フィルタの乗算によって端末装置MT1宛の信号に対する干渉信号をなくすため、端末装置MT2宛の信号に対する干渉信号が大きくなる場合がある。しかし、本実施形態によれば、干渉信号が大きくなった場合にはModulo演算を行うので、送信電力を低くして、電力効率が高い通信を行うことができる。
【0101】
また、本実施形態では、多重信号生成部1bは、複数の端末装置MT1、MT2各々との伝搬路状態情報に基づいて、端末装置MT1の信号による干渉電力を算出する。また、多重信号生成部1bは、算出した干渉電力Pが閾値P0より大きい場合に端末装置MT2宛の信号にModulo演算を行うと決定し、算出した干渉電力Pが閾値P0より小さい場合に端末装置MT2宛の信号にModulo演算を行わないと決定する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が低い場合には受信候補点が増加して信号検出性能が低下することを防止するとともに、干渉電力が高い場合には電力効率が高い通信を行うことができ、伝搬特性を向上させることができる。
【0102】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
上記の第1の実施形態では、基地局装置Bが2個の端末装置MT1及びMT2に信号を送信する場合について説明をした。本実施形態では、基地局装置がN個の端末装置に信号を送信する場合について説明をする。
【0103】
<無線通信システムについて>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。この図において、基地局装置Bは、N個の端末装置MT1〜MTNへ信号を送信している。
以下、基地局装置Bを基地局装置b2という。なお、端末装置MTk(k=1〜N;kを端末番号という)各々の構成は、第1の実施形態の端末装置m1の構成(図6、7)と同じであるので、説明は省略する。ただし、本実施形態に係る端末装置m1は、基地局装置BのN個のアンテナとの伝搬路状態情報に基づいて、伝搬路補償を行う。
【0104】
<基地局装置b2について>
図9は、本実施形態に係る基地局装置b2を示す概略ブロック図である。この図は、同じ周波数帯域で各端末装置宛の信号を送信するアンテナをN個備える場合の図である。
図9において、基地局装置b2、符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、多重信号生成部2b、CRS生成部b23、フレーム選択部b24、無線送信部b151〜b15N、アンテナb101〜b10N、無線受信部b161〜b16N、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27を含んで構成される。
【0105】
符号部b11kには、それぞれ、端末装置MTk宛の情報ビットが入力される。符号部b11kは、入力された情報ビットを誤り訂正符号化して、それぞれ、変調部b12kに出力する。
変調部b12kは、入力されたビットを変調し、それぞれ、変調した変調シンボルskを多重信号生成部2bに出力する。
【0106】
多重信号生成部2bは、伝搬路情報取得部b27から入力されたCSIに基づいて、端末装置MTk宛の無線信号に生ずる干渉シンボルfkを算出する。多重信号生成部2bは、変調部b12kから入力された変調シンボルskから、算出した干渉シンボルfkを減算する。
また、多重信号生成部2bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。
【0107】
多重信号生成部2bは、伝搬路情報取得部b27から入力されたCSIに基づいて、端末装置MTk毎にModulo演算を行うか否かを判定する。Modulo演算を行うと判定した場合、多重信号生成部2bは、Modulo演算後の剰余シンボルsk’、 端末装置MTk宛のシンボルにModulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b24に出力する。
一方、Modulo演算を行わないと判定した場合、多重信号生成部2bは、干渉除去シンボルsk−fk、端末装置MTk宛のシンボルにModulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b24に出力する。
【0108】
CRS生成部b23は、アンテナ毎の共通参照シンボル(CRS)を生成し、フレーム選択部b24に出力する。
フレーム選択部b24は、マッピング情報に従って、CRS生成部b13から入力されたアンテナb10kの共通参照シンボルを、予め定められた周波数帯域に配置する。
また、フレーム選択部b24は、マッピング情報に従って、多重信号生成部2bから入力された端末装置MTk宛のシンボル列を、端末装置MTkに信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム選択部b24は、周波数帯域に配置した信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b15kに出力する。
【0109】
無線送信部b15kには、それぞれ、アンテナb10k毎の信号がフレーム選択部b24から入力される。無線送信部b15kは、入力された信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換後の信号を搬送周波数にアップコンバージョンする。無線送信部b15kは、アップコンバージョンした無線信号を、それぞれ、アンテナb10kを介して送信する。
【0110】
無線受信部b16kは、それぞれ、アンテナb10kを介して、端末装置MTkからの無線信号を受信する。無線受信部b16kは、受信した無線信号をベースバンド帯域にダウンコンバージョンして、ダウンコンバージョン後の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う。無線受信部b16kは、変換後の信号をフレーム分離部b28に出力する。
フレーム分離部b28は、無線受信部b16kから入力された信号を、送信元の端末装置MTk毎に分離する。フレーム分離部b28は、分離した端末装置MTk毎のCSIを伝搬路情報取得部b27に出力する。
【0111】
伝搬路情報取得部b27は、フレーム分離部b28から入力された信号を復調する。伝搬路情報取得部b27は、復調した情報から、端末装置MTk各々と基地局装置のアンテナb10k各々との伝搬路状態を示すCSIであって、端末装置MTk各々が推定したCSIを抽出する。伝搬路情報取得部b27は、抽出したCSIを多重信号生成部2bに出力する。
【0112】
図10は、本実施形態に係る多重信号生成部2bの構成を示す概略ブロック図である。この図において、多重信号生成部2bは、線形フィルタ算出部211b、干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、Modulo演算切替決定部214b、適応Modulo部12b−2〜12b−N、フレーム構成部23b、及び、線形フィルタ乗算部241bを含んで構成される。
【0113】
線形フィルタ算出部211bは、CSIを入力される。線形フィルタ算出部111bは、入力されたCSIから伝搬行列Hを生成する。ここで、伝搬行列Hのp行q列要素hpq(p=1〜N、q=1〜N)は、アンテナb10q(q=1〜N)と端末装置MTp(p=1〜N)との伝搬路推定値である。
線形フィルタ算出部211bは、生成した伝搬行列Hのエルミート共役行列HHをQR分解して、線形フィルタ(行列Q)を算出する。また、線形フィルタ算出部211bは、算出した行列Rのエルミート共役行列RHから対角成分を抽出した対角行列Aを生成する。線形フィルタ算出部211bは、干渉係数行列B=A−1RH−Iを算出する。ここで、A−1はAの逆行列を表し、Iは単位行列を表す。なお、干渉係数行列Bの算出処理において、A−1は端末装置MTkで伝搬路補償を行った後の信号に含まれる干渉成分を算出するためにRHに乗算され(第1の実施形態ではr22*)、Iは端末装置MTk宛のデータ信号の成分を除去するためにA−1RHから減算される。
【0114】
線形フィルタ算出部211bは、算出した干渉係数行列Bの(l,x)成分を干渉係数Blxとして、この干渉係数を示す情報を、干渉算出部212b及びModulo演算切替決定部214bに出力する。また、線形フィルタ算出部211bは、線形フィルタを示す情報を、線形フィルタ乗算部241bに出力する。
【0115】
干渉算出部212bは、変調部b121から変調シンボルs1(送信データシンボルν1とする)、及び、適応Modulo部12b−kから干渉除去シンボルsk−fk或いは剰余シンボルsk’(=Modτ(sk−fk))(k=2、3、・・・、N)を入力される。ここで、適応Modulo部12b−kから入力されるシンボルを送信データシンボルνkとする。
干渉算出部212bは、線形フィルタ算出部211bから入力された情報、及び、入力されたシンボルに基づいて、次式(12)で表される干渉シンボルfkを算出する。
【0116】
【数11】
【0117】
干渉算出部212bは、算出した干渉シンボルfkを、それぞれ、干渉減算部113b−kに出力する。
干渉減算部113b−k(k=2、3、・・・、N)は、それぞれ、変調部b12kから変調シンボルskを入力される。干渉減算部113b−kは、入力された変調シンボルskから、干渉算出部212bから入力された干渉シンボルfkを減算する。干渉減算部113b−kは、減算後の干渉除去シンボルsk−fkを、適応Modulo部12b−kに出力する。
【0118】
Modulo演算切替決定部214bには、線形フィルタ算出部211bから干渉係数を示す情報が入力される。Modulo演算切替決定部214bは、線形フィルタ算出部211bから入力された情報が示す干渉係数に基づいて、次式(13)で表される干渉電力Pkを算出する(干渉電力算出処理という)。
【0119】
【数12】
【0120】
なお、Tlについては、干渉電力算出処理の動作(図14)と併せて後述する。
Modulo演算切替決定部214bは、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0より大きい場合、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行うと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報を、フレーム構成部23b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
一方、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0以下の場合、Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行わないと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報を、フレーム構成部23b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
【0121】
適応Modulo部12b−k(k=2、3、・・・、N)は、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkに対して、Modulo演算を行う(式(8)参照)。適応Modulo部12b−kは、演算後の剰余シンボルsk’を送信データシンボルνkとして、端末装置MTk宛のシンボルとしてフレーム構成部23bに出力する。
一方、適応Modulo部12b−kは、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード2」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkを送信データシンボルνkとして、、端末装置MTk宛のシンボルとしてフレーム構成部23bに出力する。
【0122】
フレーム構成部23bは、Modulo演算切替決定部214bから入力された送信モード情報を変調する。また、フレーム構成部23bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。
フレーム構成部23bは、適応Modulo部12b−kから入力された送信データシンボルνk、変調した送信モード情報の変調シンボル、及び、生成した端末装置MTkの固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MTk宛のシンボル列)。また、フレーム構成部23bは、変調部b121から入力された送信データシンボルν1(=s1)、及び、送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、及び生成した端末装置MT1の固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT1宛のシンボル列)。
フレーム構成部23bは、配列した端末装置m1毎のシンボル列(フレーム)を、線形フィルタ乗算部241bに出力する。
【0123】
線形フィルタ乗算部241bは、同時刻に送信するシンボルであって、フレーム構成部23bから入力された端末装置MTk(k=1〜N)のシンボル列のシンボルSk(k=1〜N)を組み合わせたベクトルに対して、線形フィルタ算出部211bから入力された情報が示す線形フィルタを乗算する。線形フィルタを乗算したシンボルSk’’ (k=1〜N)は、次式(14)で表される。
【0124】
【数13】
【0125】
線形フィルタ乗算部241bは、シンボルSk’’ を含むシンボル列を、それぞれ、アンテナb10kで送信する信号として、フレーム選択部b14に出力する。
【0126】
図11は、本実施形態に係る適応Modulo部12b−kの構成を示す概略ブロック図である。適応Modulo部12b−kは、Modulo演算切替部121b−k及びModulo演算部122b−kを含んで構成される。
Modulo演算切替部121b−kは、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkを、Modulo演算部122b−kに出力する。
一方、適応Modulo部12b−kは、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード2」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkを、送信モード情報挿入部231bに出力する。
Modulo演算部122b−kは、Modulo演算切替部121b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkに対して、Modulo演算を行う。
【0127】
図12は、本実施形態に係るフレーム構成部23bの構成を示す概略ブロック図である。フレーム構成部23bは、送信モード情報挿入部231b、DRS生成部232b、及びDRS挿入部233bを含んで構成される。
送信モード情報挿入部231bは、適応Modulo部12b−kから入力された送信モード情報を変調する。送信モード情報挿入部231bは、送信モード情報挿入部231bは、Modulo演算部122b−kから入力された送信データシンボルνk、及び、変調した送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT2宛のシンボル列)。また、送信モード情報挿入部231bは、変調部b121から入力された変調シンボルs1、及び、送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT1宛のシンボル列)。送信モード情報挿入部231bは、配列した端末装置m1毎のシンボル列を、DRS挿入部233bに出力する。
【0128】
DRS生成部232bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。DRS生成部232bは、生成した端末装置m1毎の固有参照シンボルを、DRS挿入部233bに出力する。
DRS挿入部233bは、DRS生成部232bから入力された端末装置m1毎の固有参照シンボルを、その端末装置m1のシンボル列であって送信モード情報挿入部231bから挿入されたシンボル列に挿入する。ここで、DRS挿入部233bは、マッピング情報が示す時間に、固有参照シンボルを挿入する。
DRS挿入部233bは、固有参照シンボルを挿入した端末装置m1毎のシンボル列(フレーム)を線形フィルタ乗算部241bに出力する。
【0129】
<基地局装置b2の動作について>
図13は、本実施形態に係る多重信号生成部2bの動作を示すフロー図である。
(ステップS101)線形フィルタ算出部211bは、線形フィルタ(行列Q)及び干渉係数行列Bを算出し、干渉係数情報をModulo演算切替決定部214bと干渉算出部212bとに入力する。その後、ステップS12に進む。
(ステップS12)Modulo演算切替決定部214bは、干渉係数情報に基づいて、干渉電力Pkを算出して、各端末装置MTk宛のシンボルに対して、Modulo演算を行うか否かを決定する。また、Modulo演算切替決定部214bは、決定結果を表す送信モード情報を生成する。その後、ステップS103に進む。
(ステップS103)干渉算出部212bは、変数kに1を代入する。その後、ステップS104に進む。
(ステップS104)干渉算出部212bは、端末装置MT1宛の変調シンボルs1を送信データシンボルν1とする。その後、ステップS105に進む。
【0130】
(ステップS105)干渉算出部212bは、kに1を加算する。その後、ステップS106に進む。
(ステップS106)干渉算出部212bは、ステップS101で算出した干渉係数行列B及び端末装置MT1〜(k−1)宛の送信データシンボルν1〜νk−1を用いて、端末装置MTk宛の無線信号に生ずる干渉シンボルfkを算出する(式(12)参照)。その後、ステップS107に進む。
(ステップS107)干渉減算部113b−kは、端末装置MTk宛の変調シンボルskから、ステップS106で算出した干渉シンボルfkを減算することで、干渉除去シンボルsk−fkを算出する。その後、ステップS108に進む。
【0131】
(ステップS108)Modulo演算切替部121b−kは、ステップS12で生成した端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示すか否かを判定する。端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示す場合(Yes)、ステップS109に進む。一方、端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」以外を示す場合(No)、ステップS110に進む。
(ステップS109)Modulo演算部122b−kは、ステップS108で算出した干渉除去シンボルsk−fkに対してModulo演算を行う。Modulo演算部122b−kは、干渉除去シンボルsk−fkを送信データシンボルνkとする。その後、ステップS111に進む。
(ステップS110)Modulo演算部122b−kは、変調シンボルskを送信データシンボルνkとする。その後、ステップS111に進む。
(ステップS111)Modulo演算部122b−kは、ステップS109又はS110で代入したνkを干渉算出部212bに入力する。その後、ステップS112に進む。
【0132】
(ステップS112)干渉算出部212bは、k=Nであるか否かを判定する。k=Nであると判定した場合(Yes)、ステップS113に進む。一方、k≠Nであると判定した場合(No)、ステップS105に戻る。
(ステップS113)フレーム構成部23bは、ステップS104、S109或いはS110で生成した送信データシンボルν1〜νNを入力される。その後、ステップS114に進む。
(ステップS114)フレーム構成部23bは、送信モード情報及び固有参照シンボルをシンボル列に挿入する。その後、ステップS115に進む。
(ステップS115)線形フィルタ乗算部241bは、送信データシンボルνkを組み合わせたベクトルに対して、線形フィルタを乗算する(式(14)参照)。その後、動作を終了する。
【0133】
図14は、本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。この図は、図13のステップS12での処理動作を示す。
(ステップS12−1)Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MT1宛の変調シンボルs1の電力を送信電力Qsとする。ここで、Qsは、データ信号を変調したシンボルの電力を平均した平均電力である。
その後、ステップS12−2に進む。
(ステップS12−2)Modulo演算切替決定部214bは、変数kに2を代入する。その後、ステップS12−3に進む。
(ステップS12−3)Modulo演算切替決定部214bは、ステップS12−6又はS12−8で算出した送信電力Tl(l=1〜k−1)を用いて干渉電力Pkを算出する(式(13)参照)。なお、k=2の場合、Modulo演算切替決定部214bは、送信電力T1をステップS12−1で算出したQsとする。例えば、k=2の場合の干渉電力P2=B212Qs(B21の2乗とQsの積)となる。ステップS12−4に進む。
【0134】
(ステップS12−4)Modulo演算切替決定部214bは、ステップS12−3で算出した干渉電力Pkが閾値P0より大きいか否かを判定する。干渉電力Pkが閾値P0より大きいと判定した場合(Yes)、ステップS12−5に進む。一方、干渉電力Pkが閾値P0以下であると判定した場合(No)、ステップS12−7に進む。
(ステップS12−5)Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報を「送信モード1」に決定する。その後、ステップS12−6に進む。
(ステップS12−6)Modulo演算切替決定部214bは、QMを送信電力Tkとする。ここで、QMは剰余シンボルsk’の平均電力であり、信号点平面上(図37参照)において原点を中心としたI−chで[−τ/2,τ/2]、Q−chで[−τ/2,τ/2]に含まれる信号点に、信号が等確率で分布していると仮定した場合の電力である。
【0135】
(ステップS12−7)Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報を「送信モード2」に決定する。その後、ステップS12−8に進む。
(ステップS12−8)Modulo演算切替決定部214bは、Qs+Pkを送信電力Tkとする。ここで、Qs+Pkは干渉除去シンボルsk−fkの平均電力を示す。その後、ステップS12−9に進む。
(ステップS12−9)Modulo演算切替決定部214bは、k=Nであるか否かを判定する。k=Nであると判定した場合(Yes)、動作を終了する。一方、k≠Nであると判定した場合(No)、ステップS12−10に進む。
(ステップS12−10)Modulo演算切替決定部214bは、kに1を加算する。その後、ステップS12−3に戻る。
【0136】
<閾値P0について>
上記の閾値P0は、以下のように予め定められている。
図15は、本実施形態に係る閾値P0を説明する説明図である。この図において、横軸は干渉電力を示し、縦軸は誤り率を示す。
符号L11を付した曲線L11は、Modulo演算を行わない場合の干渉電力と誤り率との関係を示す。曲線L11は、閾値P0が小さくなってModulo演算を行う確率が高くなると、Modulo演算に伴うModulo Lossが増加して、誤りが多く発生してしまうことを示している。一方、符号L12を付した曲線L12は、閾値P0が大きくなってModulo演算を行う確率が低下すると、干渉を電力効率良く除去できないために、誤りが増加してしまうことを示している。
符号L1を付した曲線L1は、曲線L11とL12の和をとったものである。本実施形態では、この曲線L1における最小値を閾値P0とする。
【0137】
このように、本実施形態によれば、多重信号生成部2bは、「送信モード1」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行った信号と、「送信モード2」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行わない信号と、を多重する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が小さい信号と干渉電力が大きい信号とを多重するとともに、干渉電力が大きい信号にはModulo演算を行って干渉電力が小さい信号にはModulo演算を行わずに信号を多重することができる。
特に、本実施形態に係る通信システムでは、線形フィルタの乗算によって、端末装置MTk宛の信号に対する干渉信号が大きくなる場合がある。しかし、本実施形態によれば、干渉信号が大きくなった場合にはModulo演算を行うので、送信電力を低くして、電力効率が高い通信を行うことができる。
【0138】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第3の実施形態について詳しく説明する。
上記第2実施形態では、基地局装置b2は、干渉電力Pkに基づいてModulo演算を行うか否かを判定した。本実施形態では、干渉を減算する処理を行う順序(干渉除去順という;端末装置MTkの順序(端末番号k)と同じ)に基づいて、Modulo演算を行うか否かを判定する。
本実施形態に係る無線通信システムを示す概略図は、第2の実施形態(図8)と同じであるので、説明は省略する。以下、本実施形態に係る基地局装置Bを基地局装置b3という。なお、端末装置MTk(k=1〜N)各々の構成は、第1の実施形態の端末装置m1の構成(図6、7)と同じであるので、説明は省略する。ただし、本実施形態に係る端末装置m1は、基地局装置BのN個のアンテナとの伝搬路状態情報に基づいて、伝搬路補償を行う。
【0139】
<基地局装置b3について>
図16は、本発明の第3の実施形態に係る基地局装置b3の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る基地局装置b3(図16)と第2の実施形態に係る基地局装置b2(図9)とを比較すると、多重信号生成部3bが異なる。しかし、他の構成要素(符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、CRS生成部b23、フレーム選択部b24、無線送信部b151〜b15N、アンテナb101〜b10N、無線受信部b161〜b16N、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0140】
図17は、本実施形態に係る多重信号生成部3bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る多重信号生成部3b(図17)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2b(図10)とを比較すると、多重信号生成部3bには適応Modulo部12b−2〜12b−(K−1)(Kは3以上の自然数)及びModulo演算切替決定部214bを備えない点、また、適応Modulo部12b−K〜b12−Nに代えてModulo演算部122b−K〜122b−Nを備える点が異なる。しかし、他の構成要素(線形フィルタ算出部211b、干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、フレーム構成部23b、及び、線形フィルタ乗算部241b)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
Modulo演算部122b−K〜122b−N各々が持つ機能は、図11のModulo演算部122b−kと同じであるので、説明は省略する。
【0141】
<基地局装置b3の動作について>
図18は、本実施形態に係る多重信号生成部3bの動作を示すフロー図である。本実施形態に係る多重信号生成部3bの動作(図18)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2bの動作(図13)とを比較すると、図18ではステップS12の処理がない点、及び、ステップS108に代えてステップS208の処理がある点が異なる。しかし、他の処理(ステップS101、S103〜S107、S109〜S115)は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ処理の説明は省略する。
(ステップS208)多重信号生成部3bは、変数kが予め定められた閾値K以上であるか否かを判定する。変数kが閾値K以上であると判定した場合(Yes)、ステップS109に進む。一方、変数kが閾値Kより小さいと判定した場合(No)、ステップS110に進む。
【0142】
<閾値Kについて>
上記の閾値Kは、以下のように予め定められている。
図19は、本実施形態に係る閾値Kを説明する説明図である。この図において、横軸はModulo演算を行う最初の端末装置の端末番号k(端末装置MTkのk)を示す。つまり、端末装置MT1〜MT(k−1)宛の干渉除去シンボルにはModul演算を行わず、端末装置MTk〜MTN宛の干渉除去シンボルにはModul演算を行うことを示す。また、縦軸は誤り率を示す。
【0143】
符号L21を付した曲線L21は、Modulo演算を行うMTが多くなると、Modulo演算に伴うModulo Lossが増加して、誤りが多く発生してしまうことを示している。一方、符号L22を付した曲線L22は、Modulo演算を行うMTが少なくなると、干渉を電力効率良く除去できないために、誤りが増加してしまうことを示している。 符号L2を付した曲線L2は、曲線L21とL22の和をとったものである。本実施形態では、この曲線L2における最小値を閾値Kとする。
【0144】
このように、本実施形態によれば、干渉減算部113b−2〜113b−Nは、干渉除去順(端末装置MTkの順序)に従って、端末装置MTk宛の信号から干渉信号を減算する。Modulo演算部122b−K〜Modulo演算部122b−Nは、干渉除去順が閾値Kより大きい受信装置MTK〜MTN宛の信号に剰余演算を行う。つまり、本実施形態では、無線通システムは、干渉除去順が大きく統計的に干渉電力が大きい端末装置MTK〜MTN宛の信号にModulo演算を行い、干渉除去順が小さく干渉電力が小さい端末装置MT1〜MT(K−1)宛の信号にModulo演算を行わない。これにより、本実施形態では、干渉除去順が小さく干渉電力が低い場合には受信候補点が増加して信号検出性能が低下することを防止するとともに、干渉除去順が大きく統計的に干渉電力が高い場合には電力効率が高い通信を行うことができ、伝搬特性を向上させることができる。
【0145】
本実施形態において、RHは下三角形である。これは干渉除去される順番が先の端末装置MTk宛の信号は、他の端末装置MT1〜MT(k−1)宛の信号による干渉電力が統計的に小さくなることを示している。例えば、N=4の場合、端末装置MT1宛の信号は、他の端末装置からの干渉を受けない。また、端末装置MT2宛の信号は、端末装置MT1宛の信号からの干渉を受けるが、他の端末装置MT3〜MTN宛の信号からは受けない。端末装置MT3宛の信号は、端末装置MT1、MT2宛の信号による干渉を受けるが、端末装置MT4宛の信号からの干渉を受けない。端末装置MT4宛の信号は、端末装置MT1〜MT3宛の信号の全ての信号の干渉を受ける。このように、端末装置MTkの干渉除去順が大きいほど、多くの端末装置MT1〜MT(k−1)宛の信号からの干渉を受けることになり、干渉電力が統計的に大きくなる傾向がある。そのため、本実施携帯では、端末装置MTkの干渉除去順でModulo演算の有無を切り換えることで、統計的に干渉電力が大きい端末装置MTkに対してのみModulo演算を行って、伝搬特性を向上させることができる。
【0146】
<シミュレーション>
図20は、本実施形態に係る閾値Kと誤り率特性との関係を示す概略図である。この図において、横軸はModulo演算を行う最初のMTの端末番号kを示す。また、縦軸はBER(Bit Error Rate;ビット誤り率)を示す。このBERは、送信SNR(Signal Noise Ratio)が−1.5dBとした場合の全端末装置MT1〜MTNでのBERを平均したものである。
【0147】
図20は、図19に示した関係を具体的にシミュレーションした結果である。ここで、このシミュレーションでは、基地局装置b3及び端末装置MTの数を8(N=8)とし、誤り訂正符号にターボ符号、変調方式にQPSKを用いている。
図20は、k=6のときに最小値となり、閾値K=6とすることで誤り率が最小になることを示す。
また、図20では、K=1が全端末装置宛のシンボルにModulo演算を行うMU−MIMO THPの場合の誤り率特性を示し、最も右がModulo演算を全く行わない場合(線形ビームフォーミングの場合)の誤り率特性を示す。つまり、図20は、本実施形態に係る無線通信システム(例えば、K=6)が、従来技術と比較して、誤り率を小さくすることができていることを示す。
【0148】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第4の実施形態について詳しく説明する。
上記第3の実施形態では、基地局装置b3が送信モード情報を送信し、端末装置M1kが送信モード情報を取得する場合について説明をした。本実施形態では、基地局装置b3が送信モード情報を送信せず、端末装置M1kが送信モード情報を検出する場合について説明をする。
本実施形態に係る無線通信システムを示す概略図は、第2の実施形態(図8)と同じであるので、説明は省略する。以下、本実施形態に係る基地局装置Bを基地局装置b4といい、端末装置MT1〜MTN各々を端末装置m4という。
【0149】
<基地局装置b4について>
図21は、本発明の第4の実施形態に係る基地局装置b4の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る基地局装置b4(図21)と第3の実施形態に係る基地局装置b3(図16)とを比較すると、多重信号生成部4b、フレーム選択部b44、及び端末数情報記憶部b49が異なる。しかし、他の構成要素(符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、CRS生成部b23、無線送信部b151〜b15N、アンテナb101〜b10N、無線受信部b161〜b16N、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27)が持つ機能は第3の実施形態と同じである。第3の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0150】
多重信号生成部4bは、送信モード情報の変調シンボルを配列しない点が、多重信号生成部3bと異なる。多重信号生成部4bの詳細については、後述する。
【0151】
フレーム選択部b44は、マッピング情報に従って、CRS生成部b13から入力されたアンテナb10kの共通参照シンボルを予め定められた周波数帯域に配置する。
また、フレーム選択部b44は、マッピング情報に従って、多重信号生成部4bから入力された端末装置MTk宛のシンボル列を、端末装置MTkに信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム選択部b44は、周波数帯域に配置した信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b15kに出力する。
【0152】
図22は、本実施形態に係る多重信号生成部4bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る多重信号生成部4b(図22)と第3の実施形態に係る多重信号生成部3b(図17)とを比較すると、フレーム構成部43bが異なる。しかし、他の構成要素(線形フィルタ算出部211b、干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、Modulo演算部122b−K〜122b−N、及び、線形フィルタ乗算部241b)が持つ機能は第3の実施形態と同じである。第3の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0153】
図23は、本実施形態に係るフレーム構成部43bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係るフレーム構成部43b(図23)と第2の実施形態に係るフレーム構成部23b(図12)とを比較すると、フレーム構成部43bが送信モード情報挿入部231bを備えない点が異なる。しかし、他の構成要素(DRS生成部232b、及びDRS挿入部233b)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
ただし、DRS生成部232bが用いるマッピング情報は、端末装置MTkの固有参照シンボルを、端末番号の昇順で時間順に配列することを示す情報である(図24参照)。ここで、端末番号は干渉除去順を示すので、端末装置MTkの固有参照シンボルの配列順序は、干渉除去順の順序である。
【0154】
<無線信号について>
図24は、本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。この図において、横軸は時間軸を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号を、各端末装置MT1〜MTN宛の無線信号に分けて表している。また、この図は、N=4の場合の図である。
【0155】
図24において、無線信号S21−1〜S24−1は、それぞれ、基地局装置b4がアンテナb101〜b104を用いて送信した無線信号であって端末装置MT1〜MT4宛の無線信号を示す。また、受信信号S21−2〜S24−2は、それぞれ、端末装置MT1〜MT4が受信した受信信号を示す。
【0156】
図24の無線信号S21−1〜S24−1は、各端末装置MT1〜4の固有参照シンボルの信号(DRS−MT1〜MT4)が、端末番号k(k=1〜4)の昇順で時間順に配列されていることを示す。
また、図24の受信信号S21−2〜S24−2は、端末装置MTkが端末装置MT1〜MTkの固有参照シンボルの信号を受信し、端末装置MT(k+1)〜MTNの固有参照シンボルの信号を受信しないことを示す。
【0157】
<移動局装置m4について>
図25は、本実施形態に係る端末装置m4を示す概略ブロック図である。この図は、端末装置m4のアンテナが1個の場合の図である。
本実施形態に係る端末装置m4(図25)と第1の実施形態に係る端末装置m1(図6)とを比較すると、フレーム分離部m421、端末数情報記憶部m425、及び送信モード検出部m424が異なる。しかし、他の構成要素(アンテナm101、無線受信部m111、伝搬路推定部m122、伝搬路補償部m123、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、フレーム構成部m132、及び無線送信部m141)が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略する。ただし、伝搬路推定部m122及び伝搬路補償部m123は、基地局装置b4のN個のアンテナとの伝搬路状態を推定し、推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて伝搬路補償を行う。
【0158】
フレーム分離部m421は、基地局装置b4から予め通知されたマッピング情報に基づいて、自装置宛の信号が配置される周波数帯域の信号を分離する。また、フレーム分離部m421は、分離した信号のうち自装置宛のデータ信号を伝搬路補償部m123に出力する。
また、フレーム分離部m421は、分離した信号のうち各端末装置MTk(自装置を含む)宛の固有参照シンボルの信号を、送信モード検出部m424に出力する。具体的には、各端末装置MTk宛の固有参照シンボルの信号が配置される時間帯に、予め定めた閾値以上の振幅の信号がある場合、その固有参照シンボルの信号を配列の時間順に送信モード検出部m424に出力する。また、フレーム分離部m421は、分離した信号のうち共通参照シンボルの信号を、伝搬路推定部m122に出力する。
【0159】
送信モード検出部m424は、固有参照シンボルの信号のうち信号の配列での時間順が一番遅い固有参照シンボルを、自装置宛の固有参照シンボルの信号を抽出する。送信モード検出部m424は、抽出した自装置宛の固有参照シンボルの信号、及びフレーム分離部m421から入力された共通参照シンボルの信号を伝搬路推定部m422に出力する。
【0160】
また、送信モード検出部m424は、フレーム分離部m421から入力された各端末装置MTk宛の固有参照シンボルの信号の数を計数(計数結果をK1とする)する。このK1は、端末装置m4の端末番号を示す。
また、端末数情報記憶部m425はあらかじめ、基地局装置b4と端末装置m4との間で共有する閾値Kを記憶している。
送信モード検出部m424は、端末数情報記憶部m425から読み出した情報が示す閾値KとK1とを比較する。比較の結果、K1≧Kと判定した場合には、送信モード検出部m424は、Modulo演算を行うと判定し、「送信モード1」を示す送信モード情報を生成する。K1<Kの場合には、送信モード検出部m424は、Modulo演算を行わないと判定し、「送信モード2」を示す送信モード情報を生成する。
送信モード検出部m424は、生成した送信モード情報を適応軟推定部1mに出力する。
【0161】
<受信信号について>
以下、端末装置MT1〜MTNが受信する受信信号について説明をする。ここでは、N=4の場合について説明をする。
DRS挿入部233bは、次式(15)で表す無線信号ベクトルp1〜p4で示す固有参照シンボルを時間順に挿入する。基地局装置b4は、挿入された固有参照シンボルの信号を送信する。
【0162】
【数14】
【0163】
式(15)では、左辺の各成分である無線信号ベクトルp1〜p4は、アンテナb101〜b104を用いて送信する無線信号を表す。また、右辺の行列は、行がアンテナb101〜b104の順に各アンテナを用いて送信する無線信号を表し、列が送信時刻t11〜t14の順に各送信時刻で送信する無線信号を表す。なお、送信時刻t11〜t14は、単位時間で連続した時刻であり、t11<t12<t13<t14である。また、行列の成分の値p1〜p4は、固有参照シンボルの信号p1〜p4である。
例えば、式(15)では、無線信号ベクトルp1は、送信時刻t11に固有参照シンボルの信号p1を送信し、送信時刻t12〜t14には無線信号を送信しないことを示す。また、式(15)では、無線信号ベクトルp2は、送信時刻t12に固有参照シンボルの信号p2を送信し、送信時刻t11、t13、t14には無線信号を送信しないことを示す(図24の無線信号S21−1〜S24−1参照)。
【0164】
この場合、端末装置MT1〜MT4は、次式(16)で表す受信信号ベクトルp1’〜p4’で示す受信信号を受信する(式(10)参照)。
【0165】
【数15】
【0166】
式(16)では、左辺の各成分である受信信号ベクトルp1’〜p4’は、それぞれ、端末装置MT1〜MT4が受信する受信信号を表す。また、右辺の行列は、行が端末装置MT1〜MT4の順に各端末装置が受信する受信信号を表し、列が受信時刻t21〜t24の順に各受信時刻で送信する無線信号を表す。なお、受信時刻t21〜t24は、単位時間で連続した時刻であり、t21<t22<t23<t24である。
例えば、式(16)では、受信信号ベクトルp1’は、端末装置MT1が受信時刻t21に信号r11*p1を受信し、受信時刻t22〜t24には受信信号を受信しないことを示す。また、式(16)では、受信信号ベクトルp2’は、端末装置MT2が受信時刻t11、t12にそれぞれ信号r12*p1、r22*p2を送信し、受信時刻t23、t24には無線信号を送信しないことを示す(図24の無線信号S21−2〜S24−2参照)。
【0167】
このように、本実施形態によれば、送信モード検出部m424は、固有参照信号が配置された位置が示す干渉処理順に基づいて、送信モード情報が「送信モード1」を示す情報であるか又は「送信モード2」を示す情報であるかを判定する。具体的には、送信モード検出部m424は、干渉処理順が閾値K以後の順序である場合に「送信モード1」であると判定し、干渉処理順が閾値Kより前の順序である場合に「送信モード2」であると判定する。これにより、本実施形態では、基地局装置b4が送信モード情報を送信しなくても、端末装置MTkは、送信モードを判定することができ、制御情報のオーバーヘッドを削減することができる。
また、本実施形態では、端末装置m4の干渉除去順と、DRSを送信する端末装置m4の時間順が一致する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、全ての端末装置m4が各干渉除去順の端末宛のDRSが、どの時刻にどの周波数で送信されるかを示す情報を記憶していればよい。
【0168】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第5の実施形態について詳しく説明する。
上記第1〜4の実施形態では、各端末装置MT1〜MTNが、同一時刻、同一周波数で1個の信号系列(ストリームという)を受信する場合について説明をした。本実施形態では、各端末装置MT1〜MTNが複数個のストリームを受信する場合について説明をする
【0169】
<無線通信システムについて>
図26は、本発明の第5の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。この図において、基地局装置Bは、N個の端末装置MT1〜MTNへ信号を送信している。ここで、各端末装置MT1〜MTNへの信号は、複数のストリームである。
なお、端末装置MTkはIk個のアンテナm10i(i=1〜Ik)を備え、基地局装置BはJ個(J≧Σk=1〜N Ik;Σk=1〜Nはk=1からk=Nについて和をとることを表す)のアンテナb10j(j=1〜J)を備える。
以下、基地局装置Bを基地局装置b5といい、端末装置MT1〜MTN各々を端末装置m5という。
【0170】
<基地局装置b5について>
図27は、本実施形態に係る基地局装置b5の構成を示す概略ブロック図である。この図は、同じ周波数帯域でN個の各端末装置宛の信号を送信するアンテナをJ個備える場合の図である。
本実施形態に係る基地局装置b5(図27)と第2の実施形態に係る基地局装置b2(図9)とを比較すると、多重信号生成部5b及びフレーム選択部b54が異なる。しかし、他の構成要素(符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、CRS生成部b23、無線送信部b151〜b15J、アンテナb101〜b10J、無線受信部b161〜b16J、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
なお、多重信号生成部5bの詳細については、後述する。
【0171】
フレーム選択部b54は、マッピング情報に従って、CRS生成部b23から入力されたアンテナb10kの共通参照シンボルを、予め定められた周波数帯域に配置する。フレーム選択部b54は、周波数帯域に配置したアンテナb10j毎の信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に、各アンテナb10jに接続された無線送信部b25jに出力する。また、フレーム選択部b54は、マッピング情報に従って、多重信号生成部5bから入力されたシンボル列であってアンテナb10j(j=1〜N)毎の端末装置MTk宛のアンテナb10j毎のシンボル列を、端末装置MTkに信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム選択部b54は、周波数帯域に配置したアンテナb10j毎の信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に、各アンテナb10jに接続された無線送信部b15jに出力する。
【0172】
図28は、本実施形態に係る多重信号生成部5bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る多重信号生成部5b(図28)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2b(図10)とを比較すると、線形フィルタ算出部511b、Modulo演算切替決定部514b、フレーム構成部53b、及び線形フィルタ乗算部541bが異なる。しかし、他の構成要素(干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、及び適応Modulo演算部12b−1〜12b−N)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。ただし、干渉算出部212b、干渉減算部113b−k、及び適応Modulo演算部12b−kは、第2の実施形態では1個のストリーム単位でシンボルに対して処理を行ったが、本実施形態ではIk個のストリーム単位でシンボルに対して処理を行う。例えば、変調シンボルskはIk個のストリームであり、Ik個の要素のベクトルで表される。
【0173】
線形フィルタ算出部511bは、CSIを入力される。線形フィルタ算出部111bは、入力されたCSIから伝搬行列Hを生成する。ここで、伝搬行列Hのp行q列要素hpq(p=1〜Σk=1〜N Ik、q=1〜J)は、アンテナb10qと端末装置MTkのアンテナm10iとの伝搬路推定値である。この伝搬行列は、次式(17)で表される。
【0174】
【数16】
【0175】
ここで、Tは転置を表す。また、Hkは、アンテナb10qと端末装置MTkとの伝搬行列を表し、Ik行J列の行列である。ここで、端末装置MT1〜MTk−1の伝搬行列H1〜Hk−1を、伝搬行列Hから抽出した行列をH−kとする。つまり、H−kは次式(18)で表される。
【0176】
【数17】
【0177】
[線形フィルタの算出処理について]
線形フィルタ算出部511bは、以下のように線形フィルタ(行列Q)を算出する。
まず、線形フィルタ算出部511bは、H−kを特異値分解する。H−kの特異値分解は、次式(19)で表される。
【0178】
【数18】
【0179】
ここで、行列U−kは、R1(=Σh=1〜k−1 Ih)行R1列のユニタリ行列である。また、行列Σ−kは、R1行J列の行列であり、対角成分(r1行r1列成分(r1=1〜R1))以外は「0」で対角成分が非負の行列である。また、行列VIm−kはJ行R1列の行列であり、行列Vker−kはJ行R2(=Σh=k〜N Ih)列の行列である。
H−kのランクは高々R1であることに対応して、[VIm−k,Vker−k]の最初のR1列を除いた行列Vker−kの列ベクトルが、ヌル空間(NullSpace)の基底ベクトルとなる。なお、これらの行列の間には、次式(20)の関係が成立する。
【0180】
【数19】
【0181】
ここで、IはR2行R2列の単位行列である。式(20)は、行列Vker−kをシンボルSk〜SN(SlはIl個のストリームのシンボルが要素のベクトル)を要素とするベクトルに乗算すると、端末装置MT1〜MT(k−1)に端末装置MTk〜MTN宛の信号が届かなくなることを示す。
図29は、本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。この図は、N=2の場合の一例である。この図は、基地局装置Bから送信された端末装置MT2宛の信号が、端末装置MT1に届いていないことを示す。
【0182】
図28に戻って、線形フィルタ算出部511bは、行列Hkに算出した行列Vker−kを乗算した行列HkVker−kを特異値分解して、端末装置MTkの受信フィルタ(行列UkH)及び個別フィルタ(行列VImk)を算出する。行列HkVker−kの特異値分解は、次式(21)で表される。
【0183】
【数20】
【0184】
ここで、行列UkHは、Ik行Ik列のユニタリ行列である。また、行列Σkは、Ik行R2列の行列であり、対角成分(r2行r2列成分(r2=1〜R2))以外は「0」で対角成分が非負の行列である。また、行列VImkはR2行Ik列の行列であり、行列VkerkはR2行R3(=R2−Ik=Σh=k+1〜N Ih)列の行列である。
HkVkerkのランクは高々Ikであることに対応して、[VImk,Vkerk]の最初のIk列を除いた行列Vkerkの列ベクトルが、ヌル空間(NullSpace)の基底ベクトルとなる。なお、これらの行列の間には、次式(22)の関係が成立する。
【0185】
【数21】
【0186】
ここで、IはR1行R1列の単位行列である。
線形フィルタ算出部511bは、算出した行列Vker−k及び行列VImkを用いて、線形フィルタを生成する。線形フィルタは、次式(23)の行列Qで表される。
【0187】
【数22】
【0188】
[干渉係数行列の算出処理について]
線形フィルタ算出部511bは、行列Hを行列Qに乗じた行列HQを用いて干渉係数行列B(干渉係数フィルタ)を算出する。行列HPは、次式(24)で表される。
【0189】
【数23】
【0190】
ここで、行列Tの要素Tpk(要素行列Tpkという)はIk行Ik列の行列である。式(24)は、要素行列Tpkを一個の要素として扱えば、HQが下三角行列であることを示す。なお、要素行列Tpkは端末装置MTk宛の信号が端末装置MTpに届いた場合の伝搬路状態を示す。
線形フィルタ算出部211bは、算出した行列Tから対角成分を抽出した対角行列Aを生成する。また、線形フィルタ算出部211bは、干渉係数行列B=A−1T−Iを算出する。ここで、A−1はAの逆行列を表し、Iは単位行列を表す。干渉係数行列Bは、次式(25)で表される。
【0191】
【数24】
【0192】
以上のように、線形フィルタ算出部511bは、線形フィルタの算出処理及び干渉係数行列の算出処理を行う。
線形フィルタ算出部511bは、算出した線形フィルタ(行列Q)を示す情報を、線形フィルタ乗算部541bに出力する。また、線形フィルタ算出部511bは、算出した受信フィルタ(行列UkH)を示す受信フィルタ情報を、フレーム構成部53bに出力する。また、線形フィルタ算出部211bは、算出した干渉係数行列Bを干渉算出部212b及びModulo演算切替決定部214bに出力する。
【0193】
Modulo演算切替決定部514bは、変調部b121〜b12Nから変調シンボルs1〜sNを入力される。ここで、変調シンボルskは、Ik個のストリームである。Modulo演算切替決定部514bは、線形フィルタ算出部511bから入力された情報が示す干渉係数行列及び変調シンボルs1〜sNに基づいて、次式(26)で表される干渉電力Pkを算出する(干渉電力算出処理という)。
【0194】
【数25】
【0195】
ここで、tr(X)は、Xのトレース(行列の対角成分の和)を表す。また、diag{X}は、行列Xの非対角成分を0とすることを表す。なお、送信電力行列Πlについては、干渉電力算出処理の動作(図34)と併せて後述する。
【0196】
Modulo演算切替決定部514bは、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0より大きい場合、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行うと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部514bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報を、フレーム構成部53b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
一方、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0以下の場合、Modulo演算切替決定部514bは、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行わないと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部114bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報を、フレーム構成部53b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
【0197】
フレーム構成部53bは、Modulo演算切替決定部514bから入力された送信モード情報、及び、線形フィルタ算出部511bから入力された受信フィルタ情報を変調する。また、フレーム構成部53bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。
フレーム構成部53bは、適応Modulo部12b−kから入力された送信データシンボルνk、端末装置MTkの送信モード情報の変調シンボル、端末装置MTkの受信フィルタ情報の変調シンボル、及び、生成した端末装置MTkの固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順でアンテナb10j(j=jkS(=Σh=1〜k−1 Ih+1)〜jkE(=Σh=1〜k Ih))毎に配列する(端末装置MTk宛のアンテナ毎のシンボル列;図31参照)。
また、フレーム構成部53bは、変調部b121から入力された送信データシンボルν1(=s1)、及び、端末装置MT1の送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、端末装置MT1の受信フィルタ情報の変調シンボル、及び、生成した端末装置MT1の固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順でアンテナb10j(j=1〜Ij)毎に配列する(端末装置MT1宛のアンテナ毎のシンボル列)。
フレーム構成部53bは、配列した端末装置MT1〜N宛のアンテナb10j毎のシンボル列を、線形フィルタ乗算部541bに出力する。
【0198】
線形フィルタ乗算部541bは、同時刻に送信するシンボルであって、フレーム構成部53bから入力された端末装置MTkのシンボル列のシンボルSkを組み合わせたベクトルに対して、線形フィルタ算出部511bから入力された情報が示す線形フィルタQを乗算する。
線形フィルタ乗算部541bは、線形フィルタQを乗算した後のJ個の信号を、それぞれ、アンテナb10j毎のシンボル列として、フレーム選択部b54に出力する。
【0199】
図30は、本実施形態に係るフレーム構成部53bの構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態に係るフレーム構成部53b(図30)と第2の実施形態に係るフレーム構成部23b(図12)とを比較すると、受信フィルタ情報挿入部534bが異なる。しかし、他の構成要素(フレーム構成部23bは、送信モード情報挿入部231b、DRS生成部232b、及びDRS挿入部233b)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0200】
受信フィルタ情報挿入部535bは、線形フィルタ算出部511bから入力された端末装置m1毎の受信フィルタ情報を変調する。受信フィルタ情報挿入部535bは、変調した端末装置m1毎の受信フィルタ情報の変調シンボルを、その端末装置m1のアンテナb10jkSのシンボル列であって送信モード情報挿入部231bから挿入されたシンボル列に挿入する。
【0201】
<無線信号について>
図31は、本実施形態に係る基地局装置b5が送信する無線信号の一例を示す概略図である。この図において、横軸は時間軸を示す。この図は、J=4、N=2、I1=I2=2の場合の無線信号を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号を、各端末装置宛のストリーム毎の無線信号に分けて表している。上二段はMT1宛のそれぞれのストリームを、下二段はMT2宛のそれぞれのストリームを表している。
【0202】
図31において、端末装置MT1宛の無線信号は、変調シンボルs1の信号S311、端末装置MT1の送信モード情報の信号S312(本実施形態では、送信モード2)、端末装置MT1の固有参照シンボルの信号S313(DRS−MT1)、及び、端末装置MT1の受信フィルタ情報の信号S314(MT1宛受信フィルタ情報)を含む信号である。
また、端末装置MT1宛の無線信号は、変調シンボルs1の信号S321、端末装置MT1の送信モード情報の信号S322(本実施形態では、送信モード2)、及び、端末装置MT2の固有参照シンボルの信号S323(DRS−MT2)を含む信号である。
【0203】
また、図31において、端末装置MT2宛の無線信号は、変調シンボルs2の信号S331、端末装置MT2の送信モード情報の信号S332、端末装置MT1の固有参照シンボルの信号S333(DRS−MT1)、及び、端末装置MT2の受信フィルタ情報の信号S334(MT2宛受信フィルタ情報)を含む信号である。
また、端末装置MT2宛の無線信号は、変調シンボルs2の信号S341、端末装置MT2の送信モード情報の信号S342、及び、端末装置MT2の固有参照シンボルの信号S343(DRS−MT2)を含む信号である。
図31において、信号311、S321、S331、S341は同時刻に送信されていることを示す。
【0204】
<端末装置m5について>
図32は、本実施形態に係る端末装置m5の構成を示す概略ブロック図である。この図は、端末装置MTkの構成を示し、アンテナがIk個の場合の図である。
本実施形態に係る端末装置m5(図32)と第1の実施形態に係る端末装置m1(図6)とを比較すると、受信フィルタ取得部m512、受信フィルタ乗算部m513、フレーム分離部m521、DRS用伝搬路推定部m5221、CRS用伝搬路推定部m5222が異なる。しかし、伝搬路補償部m123、送信モード取得部m124、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、及びフレーム構成部m132が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
なお、端末装置m5は、Ik個の無線受信部m111−1〜m111−Ik、無線受信部m141−1〜m141−Ikを備えるが、各々が持つ機能は、それぞれ、端末装置m1の無線受信部m111、無線受信部m141と同じである。
【0205】
受信フィルタ取得部m512は、基地局装置b5から予め通知されたマッピング情報に基づいて、無線受信部m111−1〜m111−Ikから入力された信号から自装置宛の受信フィルタ情報を抽出する。受信フィルタ取得部m512は、抽出した自装置宛の受信フィルタ情報を受信フィルタ乗算部m513に出力する。
受信フィルタ乗算部m513は、無線受信部m111−1〜m111−Ikから入力された信号に、受信フィルタ取得部m512から入力された受信フィルタ情報が示す受信フィルタを乗算する。これにより、乗算後の信号は、伝搬行列が行列Σkの場合の信号となる(式(22)参照)。受信フィルタ乗算部m513は、乗算後の信号をフレーム分離部m521bに出力する。
【0206】
フレーム分離部m521は、基地局装置b5から予め通知されたマッピング情報に基づいて、無線受信部m111−1〜m111−Ikから入力された信号から、自装置宛の信号を分離する。
フレーム分離部m521は、分離した信号のうち共通参照シンボルの信号を、CRS用伝搬路推定部m5222に出力する。また、フレーム分離部m521は、分離した信号のうち自装置の固有参照シンボルの信号を、DRS用伝搬路推定部m5221に出力する。また、フレーム分離部m521は、分離した信号のうち自装置宛のデータ信号を伝搬路補償部m123に出力する。
【0207】
DRS用伝搬路推定部m5221は、フレーム分離部m521から入力された固有参照シンボルの信号に基づいて、基地局装置b5が送信した自端末宛のIkストリームの無線信号がアンテナm101〜m10Ikで受信されるまでに通る伝搬路状態を推定する。ここで、推定された伝搬路状態を示す伝搬行列は、Σkとなる。DRS用伝搬路推定部m5221は、推定した伝搬路状態を示すCSIを、伝搬路補償部m523に出力する。
CRS用伝搬路推定部m5222は、フレーム分離部m521から入力された共通参照シンボルの信号に基づいて、基地局装置b5のアンテナb101〜b10N各々とアンテナm101〜m10Ik各々との伝搬路状態を推定する。CRS用伝搬路推定部m5222は、推定した伝搬路状態を示すCSIを、伝搬路状態情報生成部m131に出力する。
【0208】
<基地局装置b5の動作について>
図33は、本実施形態に係る多重信号生成部5bの動作を示すフロー図である。本実施形態に係る多重信号生成部5bの動作(図33)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2bの動作(図13)とを比較すると、ステップS32の処理が異なる。しかし、他の処理(ステップS101、S103〜S125)は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ処理の説明は省略する。
【0209】
図34は、本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。この図は、図33のステップS32での処理動作を示す。本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作(図34)と第2の実施形態に係る干渉電力算出処理の動作(図14)とを比較すると、ステップS32−1、S32−3、S32−6、及びS32−8の処理が異なる。しかし、他の処理(ステップS12−2、S12−4、S12−5、S12−7、S12−9、S12−10)は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ処理の説明は省略する。
【0210】
(ステップS32−1) Modulo演算切替決定部514bは、端末装置MT1宛の変調シンボルs1のアンテナb101〜b10I1各々での電力を対角成分とする行列を、送信電力行列Qsとする。ここで、行列Qsの対角成分である電力は、フレーム単位でのシンボルの電力をアンテナ毎に平均した平均電力である。その後、ステップS12−2に進む。
(ステップS32−3) Modulo演算切替決定部514bは、ステップS32−6又はS32−8で算出した送信電力行列Πlを用いて干渉電力Pkを算出する(式(26)参照)。なお、k=2の場合、Modulo演算切替決定部514bは、送信電力行列Π1をステップS32−1で算出したQsとする。その後、ステップS12−4に進む。
【0211】
(ステップS32−6) Modulo演算切替決定部514bは、QMIを送信電力行列Πkとする。ここで、QMは剰余シンボルsk’の平均電力であり、信号点平面上(図37参照)において原点を中心としたI−chで[−τ/2,τ/2]、Q−chで[−τ/2,τ/2]に含まれる信号点に、信号が等確率で分布していると仮定した場合の電力である。また、Iは単位行列である。
(ステップS32−8) Modulo演算切替決定部514bは、Qs+Ψkを送信電力Tkとする。ここで、Qsは変調シンボルslのフレーム単位でのシンボルの電力を平均し、平均した平均電力を対角成分とする行列である。また、Qs+Ψkの各対角成分各々は、干渉除去シンボルsk−fkのアンテナ毎の平均電力を示す。その後、ステップS12−9に進む。
【0212】
このように、本実施形態によれば、多重信号生成部5bは、「送信モード1」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行った複数のストリームの信号と、「送信モード2」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行わない複数のストリームの信号と、を多重する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が小さい信号と干渉電力が大きい信号とを多重するとともに、干渉電力が大きい信号にはModulo演算を行って干渉電力が小さい信号にはModulo演算を行わずに信号を多重することができ、伝搬特性を向上させることができる。
【0213】
なお、上記第1、2、5の実施形態において、基地局装置b1、b2、b5は、「送信モード1」又は「送信モード2」を示す送信モード情報を生成する場合について説明をした。しかし、本発明はこれに限らず、基地局装置b1、b2、b5が「送信モード1」を示す送信モード情報のみ、又は、「送信モード2」を示す送信モード情報のみを生成してもよい。この場合、基地局装置b1、b2、b5又は端末装置m1、m5では、送信モード情報の入力又は通知があった場合にはその送信モード情報が示す送信モードで処理を行い、送信モード情報の入力又は通知がなかった場合には、入力又は通知される送信モード情報が示す送信モード以外の送信モードで処理を行う。
【0214】
また、上記第1、2、5の実施形態において、閾値P0=0としてもよい。この場合、基地局装置b1、b2、b5及び端末装置m1、m5は、端末装置m1、m5が干渉除去順が先の端末装置m1、m5から干渉をまったく受けていない(伝搬路が直交している)場合にはModulo演算を行わないとすることができる。また、基地局装置b1、b2、b5及び端末装置m1、m5は、少しでも干渉を受ける場合、つまり、他の端末装置m1、m5宛の信号の干渉によって送信電力が高くなる場合には、Modulo演算を行って送信電力を低くすることができる。もちろん、この場合、端末装置m1、m5から基地局装置b1、b2、b5に通知された伝搬路情報を用いて基地局装置b1、b2、b5が得た伝搬路が直交していればよい。基地局装置b1、b2、b5がデータ信号を送信する時点で、実際の伝搬路が完全に直交していなくてもよい。
【0215】
なお、上記各実施形態における通信はアップリンクに適用してもよい。また、上記各実施形態における通信は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)通信であってもよい。この場合、サブキャリア又は複数のサブキャリア単位で、上記各実施形態におけるシンボルの処理を行う。以下、この場合の構成について説明をする。
【0216】
図35は、OFDM処理を行う構成を示す概略ブロック図である。この図において、符号c1を付した構成c1は、IFFT(Inverse Fast Fourier transform;逆高速フーリエ変換)部c11、GI(Guard Interval;ガードインターバル)挿入部c12を含んで構成される。符号c2を付した構成c2は、GI除去部c21、FFT(Fast Fourier transform;高速フーリエ変換)部c22を含んで構成される。
IFFT部c11は、入力された信号に対して逆高速フーリエ変換を行って、GI挿入部c12に出力する。GI挿入部c12は、IFFT部c11から入力された信号にガードインターバルを挿入して、出力する。GI除去部c21は、入力された信号からガードインターバルを除去して、FFT部c22に出力する。FFT部c22は、GI除去部c21から入力された信号に対して、高速フーリエ変換を行って出力する。
【0217】
上記各実施形態において、ダウンリンクでOFDM通信を行う場合、例えば、基地局装置b1〜b5では、フレーム選択部b14、b24、b44、b54と無線送信部b151〜b15N各々の間に、図35の構成c1を設ける。また、この場合、端末装置m1では、無線受信部m111とフレーム分離部m121との間に、端末装置m5では無線受信部m111−1〜m111−Ik各々と受信フィルタ取得部m512及び受信フィルタ乗算部m513との間に、図35の構成c2を設ける。
また、上記各実施形態において、アップリンクでOFDM通信を行う場合、例えば、基地局装置b1〜b5では、無線受信部b161〜b16N各々と伝搬路情報取得部b17又はフレーム分離部b28との間に、図35の構成c2を設ける。また、この場合、端末装置m1、m4、m5では、フレーム構成部m132と無線送信部m141又は無線送信部m141−1〜m141−Ikとの間に、図35の構成c1を設ける。
【0218】
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5及び端末装置m1、m4、m5は、例えば、OFDM通信を行う場合には、共通参照シンボルの信号、固有参照シンボルの信号、及び送信モード情報の信号を、時分割ではなく周波数分割して送信してもよいし、CDMA(Code Division Multiple Access;符号分割多元接続)などで用いる直交符号やCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto Correlation)系列等の符号を用いて多重送信してもよいし、また、これらの組み合わせを用いて送信してもよい。
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5及び端末装置m1、m4、m5は、線形フィルタを用いた処理に代えて、例えば、非特許参考文献2記載のMMSE(Minimum Mean−Square Error;最小平均二乗誤差)規範に基づいた処理を行ってMU−MIMO THPを用いた通信を行ってもよいし、非特許参考文献2記載のオーダリングを用いた処理を行ってもよい。
【0219】
また、上記各実施形態において、端末装置m1、m4、m5は、伝搬行列Hの各行の成分の値を量子化したものを、CSIとして基地局装置b1〜b5に送信してもよい。また、端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5が量子化した値を示す量子化情報のパターン(Codebookという)を予め記憶し、端末装置m1、m4、m5が、そのパターンを識別する識別情報をCSIとして基地局装置b1〜b5に送信してもよい。
図36は、Codebookの一例を示す概略図である。
【0220】
また、上記実施形態において、干渉除去順とは、上述のように、基地局装置b1〜b5が逐次的に干渉を減算していく端末装置MTkの順番であり、MT1、MT2、MT3、・・・、MTNの端末番号順である。ここで、各端末装置MTk宛の無線信号は、少なくとも、より前の順番の端末装置MTl(l≦k−1)宛の無線信号が端末装置MTk宛に及ぼす干渉を、端末装置MTk宛の変調信号から減算することにより生成される。
【0221】
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5及び端末装置m1、m4、m5の一部の構成は、プロセッサ内で実行されてもよい。例えば、基地局装置b1〜b5において多重信号生成部1b〜5b及び無線送信部b151〜b15Jのみがプロセッサ内で実行されてもよいし、これらの構成に他の一部の構成を加えたものであってもよい。また、例えば、端末装置m1、m4、m5において適応軟推定部1m及び送信モード取得部m124或いは送信モード検出部m424のみがプロセッサ内で実行されてもよいし、これらの構成に他の一部の構成を加えたものであってもよい。
【0222】
また、上記第3の実施形態において、基地局装置b3は、端末番号kを示す情報を端末装置MTkに通知してもよい。例えば、基地局装置b3及び端末装置MTkが、予め閾値Kを記憶している場合、端末番号kと閾値Kを比較することによって、送信モードを判定することができる。
また、上記第3、4の実施形態において、端末装置m1、m4に複数の送信アンテナを設けてもよい。この場合、基地局装置b3、b4は、基地局装置b5と同様にして複数のストリームの信号を送信し、端末装置m1、m4は、端末装置m5と同様にして複数のストリームの信号を受信する。
【0223】
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5が備えるアンテナの本数と、端末装置m1、m4、m5が備えるアンテナの本数の合計とが、データストリームの数と一致する場合について説明をした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ある端末装置m1、m4、m5が物理的に2本のアンテナで信号を受信するが、受信した信号を1つの信号に合成するように設計されている場合、論理的には(端末装置m1、m4、m5や基地局装置b1〜b5の処理としては)アンテナが1本として扱ってもよい。
【0224】
なお、上述した実施形態における端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5の一部、例えば、符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、多重信号生成部1b、2b、3b、4b、5b、CRS生成部b13、b23、フレーム選択部b14、b24、b44、b54、無線送信部b151〜b15J、無線受信部b161〜b16J、伝搬路情報取得部b17、線形フィルタ算出部111b、211b、511b、干渉算出部112b、212b、干渉減算部113b、113b−2〜113b−N、Modulo演算切替決定部114b、214b、514b、適応Modulo部12b、12b−2〜12b−N、フレーム構成部13b、23b、43b、53b、線形フィルタ乗算部141b、241b、541b、Modulo演算切替部121b、121b−k、Modulo演算部122b、122b−k、送信モード情報挿入部131b、231b、DRS生成部132b、232b、DRS挿入部133b、233b、無線受信部m111、m111−1〜m111−Ik、フレーム分離部m121、m421、伝搬路推定部m122、伝搬路補償部m123、送信モード取得部m124、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、フレーム構成部m132、無線送信部m141、m141−1〜m141−Ik、Modulo演算切替部111m、Modulo演算部112m、復調部113m、フレーム分離部b28、伝搬路情報取得部b27、送信モード検出部m424、受信フィルタ情報挿入部534b、受信フィルタ取得部m512、受信フィルタ乗算部m513、フレーム分離部m521、DRS用伝搬路推定部m5221、及びCRS用伝搬路推定部m5222をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、端末装置m1、m4、m5又は基地局装置b1〜b5置に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
また、上述した実施形態における端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0225】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0226】
B、b1〜b5・・・基地局装置、MT1〜MTN、m1、m4、m5・・・端末装置、b111〜b11N・・・符号部、b121〜b12N・・・変調部、1b、2b、3b、4b、5b・・・多重信号生成部、b13、b23・・・CRS生成部、b14、b24、b44、b54・・・フレーム選択部b151〜b15J・・・無線送信部、b101〜b10J・・・アンテナ、b161〜b16J・・・無線受信部、b17・・・伝搬路情報取得部、111b、211b、511b・・・線形フィルタ算出部(係数算出部)、112b、212b・・・干渉算出部、113b、113b−2〜113b−N・・・干渉減算部、114b、214b、514b・・・Modulo演算切替決定部(剰余切換決定部)、12b、12b−2〜12b−N・・・適応Modulo部(適応剰余部)、13b、23b、43b、53b・・・フレーム構成部、141b、241b、541b・・・線形フィルタ乗算部(係数乗算部)、121b、121b−k・・・Modulo演算切替部、122b、122b−k・・・Modulo演算部(剰余演算部)、131b、231b・・・送信モード情報挿入部、132b、232b・・・DRS生成部、133b、233b・・・DRS挿入部(固有参照信号挿入部)、m101・・・アンテナ、m111、m111−1〜m111−Ik・・・無線受信部、m121、m421・・・フレーム分離部、m122・・・伝搬路推定部、m123・・・伝搬路補償部、m124・・・送信モード取得部、1m・・・適応復調部、m124・・・復号部、m131・・・伝搬路状態情報生成部、m132・・・フレーム構成部、m141、m141−1〜m141−Ik・・・無線送信部、111m・・・Modulo演算切替部、112m・・・Modulo演算部、113m・・・復調部、b28・・・フレーム分離部、b27・・・伝搬路情報取得部、b49・・・端末数情報記憶部、m425・・・端末数情報記憶部、m424・・・送信モード検出部、534b・・・受信フィルタ情報挿入部、m512・・・受信フィルタ取得部、m513・・・受信フィルタ乗算部、m521・・・フレーム分離部、m5221・・・DRS用伝搬路推定部、m5222・・・CRS用伝搬路推定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、無線通信システム、送信制御方法、受信制御方法、及び、プロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
<THPについて>
無線通信技術において、Tomlinson Harashima Precoding(THP)が知られている。THPは、送信装置と受信装置との通信において干渉が存在する状況下で、送信装置があらかじめ干渉を検出し、送信信号から干渉をあらかじめキャンセルした信号を受信装置に対して送信する技術である。ここで、送信装置及び受信装置は、Modulo(モジュロ、剰余)演算を行うことで、干渉をキャンセルすることによる送信電力の増加を抑圧した信号の送受信をする(非特許文献1参照)。
【0003】
以下、THPを用いた通信について詳細を説明する。
まず、送信装置及び受信装置が行うModulo演算について説明をする。このModulo演算は、変調シンボルのI−ch(In−phase chanel)及び Q−ch(Qudrature chanel)に対して、送信装置及び受信装置で既知の値τの整数倍を加算することにより、当該信号が[−τ/2,τ/2]の範囲に収まる変調シンボルになるように変換する演算である。Modulo演算は、次式(1)で表される。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、Modτ(x)はModulo演算を表し、x、x’はそれぞれModulo演算前後の変調シンボルを表す。また、jは虚数単位、Re(x)はxの実部を表し、Im(x)はxの虚部を表す。また、floor(x)はxを超えない最大の整数を表す。
【0006】
図37は、従来技術に係るModulo演算を示す概略図である。この図において、符号P11を付した変調シンボルP11は、Modulo演算前の変調シンボルを示す(式(1)のx)。また、符号P12を付した変調シンボルP12は、Modulo演算後の剰余シンボルを示す(式(1)のx’)。ここで、変調シンボルP12は、変調シンボルP11にN1τ+jN2τ(図37では、N1=−1、N2=−2)が加算されたものである。
図37において、Modulo演算後の変調シンボルP12は、I−ch、Q−chともに原点から[−τ/2,τ/2]の範囲に収まっている。このように、Modulo演算を行うことにより、信号の振幅を一定範囲内に収めることができ、送信電力を低減することができる。
なお、通常、Modulo幅τは、変調シンボルの平均電力を1に正規化した場合、変調方式に応じて、あらかじめ送受信側で既知な所定の値となる。例えば、QPSK(quadrature phase−shift keying;四位相偏移変調)ではτ=2√2、16QAM(Quadrature amplitude modulation;直交振幅変調)では、τ=8/√10、64QAMではτ=16/√42である。
【0007】
次に、Modulo演算を用いた干渉除去について説明をする。ここで、送信装置が受信装置に伝える所望信号の変調シンボルを所望シンボルsとし、送信装置と受信装置間での干渉の変調シンボルを干渉シンボルfとする。
THPを用いた通信では、送信装置は、まず干渉シンボルfを所望シンボルsから減算する。このようにすれば、受信装置では受信信号を復調して、そのまま所望シンボルsを受信することができる。しかし、減算後の干渉除去シンボルs−fは、干渉を減算することによって一般的に振幅が大きくなるため、この干渉除去シンボルの信号を送信すると送信電力が増加してしまう。そこで、送信装置は、この干渉除去シンボルs−f に対してModulo演算を行い、演算後の剰余シンボルx’(=Modτ(s−f))の信号を送信する。これにより、送信装置は、送信する信号の変調シンボルをI−ch、Q−chともに原点から[−τ/2,τ/2]の範囲に収めることができ、干渉除去シンボルs−fの信号を送信するときと比較して、電力を抑圧した信号を送信できる。
【0008】
送信装置が送信した信号は干渉を受け、受信装置が受信したこの信号の変調シンボルは、受信シンボルy=Modτ(s−f)+fとなる。ただし、伝搬路の特性を1として雑音の影響を無視している。この受信シンボルに対してModulo演算を行うと、その結果は、Modτ{Modτ(s−f)}+f=Modτ(s−f+f)=Modτ(s)=sとなる。つまり、受信装置は、所望シンボルsを検出することができる。
以上が、THPを用いた通信の仕組みである。
【0009】
<MU−MIMO THPについて>
次に、マルチユーザMIMO(MU−MIMO;Multi−User Multi Input Multi Output)通信にTHPを用いた通信について説明をする。なお、基地局装置から端末装置へのダウンリンク(DL;DownLink)におけるこの通信技術をDL MU−MIMO THPという。
【0010】
図38は、従来技術に係る無線通信システムを示す概略図である。この図は、DL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムの図である。
この図において、基地局装置X1は、複数の端末装置Y11及びY12へ信号を送信している。これらの信号が同一時刻に同一周波数に送信された場合、信号は互いに干渉する(ユーザ間干渉;Multi User Interference)。DL MU−MIMO THPは、このユーザ間干渉を除去する技術である。
非特許文献2には、DL MU−MIMO THPについて記載されている。
【0011】
以下、図38の無線通信システムについて、基地局装置X1及び端末装置Y1(Y11及びY12)の構成について説明をする。
図39は、従来技術に係る基地局装置X1の構成を示す概略ブロック図である。
多重生成部X13において、フィルタ算出部X131は、端末装置Y11及びY12から伝搬路状態情報(CSI;Channel State Information)を受信し、受信したCSIに基づいて干渉係数及び線形フィルタを算出する。フィルタ算出部X131は、算出した干渉係数及び線形フィルタを示す情報を、それぞれ、干渉算出部X132及び線形フィルタ乗算部X135に出力する。
干渉算出部X132は、フィルタ算出部X131から入力された情報が示す干渉係数を、変調部X121から入力された端末装置Y11宛の変調シンボルs1に乗算することで、干渉シンボルfを算出する。干渉算出部X132は、算出した干渉シンボルfを干渉減算部X133に出力する。
干渉減算部X133は、変調部X122から入力されたY12宛の変調シンボルs2に対して、干渉算出部X122から入力された干渉シンボルfを減算する。干渉減算部X133は、減算後の干渉除去シンボルs2−fをModulo演算部X134に出力する。
【0012】
Modulo演算部X134は、干渉減算部X133から入力された干渉除去シンボルに対して、式(1)のModulo演算を行い、演算後の剰余シンボルs2’(=Modτ(s2−f))を線形フィルタ乗算部X135に出力する。
線形フィルタ乗算部X135(係数乗算部)は、変調部X121から入力された端末装置Y11宛の変調シンボルs1、及び、線形フィルタ乗算部X135から入力された剰余シンボルs2’に対して、フィルタ算出部X131から入力された情報が示す線形フィルタを乗算し、無線送信部X141、X142に出力する。
以上の処理によって、基地局装置X1は、基地局装置X1から端末装置Y11への方向について、端末装置Y12宛の信号の成分を0(Null)にすることができる。なお、この動作原理については後述する。
【0013】
図40は、従来技術に係る端末装置Y1の構成を示す概略ブロック図である。この図において、Moduo演算部Y113は、伝搬路補償された受信信号の変調シンボルに対して、式(1)のModulo演算を行い、所望シンボルを抽出する。
【0014】
以下、図38〜図40に示したDL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムについて、動作原理を説明する。
基地局装置X1において、干渉算出部X122は、伝搬行列Hのエルミート共役行列HHをQR分解する。QR分解とは、行列をユニタリ行列Qと上三角行列Rに分解することである。この分解は、次式(2)で表される。
【0015】
【数2】
【0016】
フィルタ算出部X131は、CSIを用いて行列HHを生成し、行列HHをQR分解する。フィルタ算出部X131は、行列Qを線形フィルタとして算出し、r12*/r22*を干渉係数として算出する。ここで、r*は、rの複素共役を表す。
干渉算出部X122は、干渉シンボルfを(r12*/r22*)s1として算出する。また、Modulo演算部X134は、剰余シンボルs2’をModτ{s2−(r12*/r22*)s1}として生成し、線形フィルタ乗算部X135に出力する。線形フィルタ乗算部X135は、次式(3)のシンボルs1’’、s2’’を生成し、それぞれ、無線送信部X141、X142に出力する。
【0017】
【数3】
【0018】
端末装置Y11における受信信号を受信シンボルy1、端末装置Y12における受信信号を受信シンボルy2とおく。y1とy2は、次式(4)で表される。
【0019】
【数4】
【0020】
式(4)は、端末装置Y11の受信シンボルy1(=r11*s1)には、端末装置Y12宛の所望シンボルs2の成分が含まれていないことを示す。つまり、基地局装置X1は、基地局装置X1から端末装置Y11への方向について、端末装置Y12宛の信号の成分を0(Null)にすることができる。
端末装置Y11では、伝搬路補償部Y112が受信シンボルy1からr11*を除算することにより、所望シンボルs1を抽出することができる。なお、Modulo演算部Y113は、Modulo演算を行うが、Modτ(s1)=s1となるので、復調部Y114には、所望シンボルs1が出力される。
【0021】
端末装置Y12では、伝搬路補償部Y112は、受信シンボルy2からr22*を除算する。伝搬路補償部Y112は、除算後の伝搬補償シンボルz2(=y2/r22*)をModulo演算部Y113に出力する。
Modulo演算部Y113は、伝搬補償シンボルz2に対して、式(1)のModulo演算を行うことにより、所望シンボルs2を抽出する(次式(5)参照)。
【0022】
【数5】
【0023】
また、非特許文献3には、上記のDL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムにおいて、端末装置各々が複数のアンテナを備え、SU−MIOMO(Single−User Multi Input Multi Output)通信を行う場合について記載されている。
図41は、従来技術に係る無線通信システムを示す別の概略図である。この図は、端末装置各々がSU−MIOMO通信を行う場合に、DL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムの図である。
この図において、基地局装置X2は、複数の端末装置Y21〜Y22各々へ、SU−MIOMO通信を用いて信号を送信している。これらの信号が同一時刻に同一周波数に送信された場合に信号は互いにユーザ間干渉するが、DL MU−MIMO THPを適用することによって、このユーザ間干渉を除去する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】H.Harashima and H.Miyakawa,”Matched−Transmission Technique for Channels With Intersymbol Interference“,IEEE Transactions On Communications,Vol.Com−20,No.4,pp.774−780,August 1972.
【非特許文献2】J.Liu and A.Krzymien,”Improved Tomlinson−Harashima Precoding for the Dowinlink of Multiple Antenna Multi−User Systems”,Proc.IEEE Wireless and Communications and Networking Conference,pp.466−472,March 2005.
【非特許文献3】V.Stankovic and M.Haardt,”Successive optimization Tomlinson−Harashima precoding(SO THP) for multi−user MIMO systems”,Proc.IEEE Int.Conf.Acoust.,Speech,and Signal Processing (ICASSP),Vol.III,pp.1117−1120,Philadelphia,PA,USA,March 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ところで、上述した従来のTHPを適用した無線通信システムでは、Modulo幅τ間隔で周期的にI−ch、Q−ch方向にずれた点を同じ点とみなすため、受信候補点が増加して信号検出性能が低下(Modulo Loss)するという欠点があった。
具体的に、図42を用いて信号検出性能の低下について説明をする。
図42は、従来技術に係る受信候補点を示す概略図である。上図(a)はTHPを適用しない場合の図であり、下図(b)はTHPを適用した場合の図である。また、図42は、変調方式がQPSKの場合の図である。この図において、白塗り及び黒塗りの丸印、白塗り及び黒塗りの四角印は、受信候補点を示す。
【0026】
図42において、雑音等の影響で受信信号点が、矢印の先端の位置(符号z11を付した×印。信号z11という)にずれている。この場合、上図(a)では、信号z11は一番近い受信信号点P11として検出される。一方、下図(b)では、信号z11は一番近い受信信号点P22として検出される。このように、従来のTHPを適用した無線通信システムでは、受信候補点が増加して信号検出性能が低下し、伝搬特性が悪化するという欠点があった。
【0027】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、伝搬特性を向上させることができる送信装置、受信装置、無線通信システム、送信制御方法、受信制御方法、及び、プロセッサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明は、複数の送信アンテナを備え、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置において、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする送信装置である。
【0029】
(2)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定することを特徴とする。
【0030】
(3)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、複数の第1の前記受信装置宛の信号と、複数の第2の前記受信装置宛の信号と、を多重することを特徴とする。
【0031】
(4)また、本発明は、上記の送信装置において、前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする。
【0032】
(5)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定し、前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を生成して出力する剰余切換決定部と、前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、を備えることを特徴とする。
【0033】
(6)また、本発明は、上記の送信装置において、前記剰余切換決定部は、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より大きい場合に前記受信装置を第1の受信装置であると決定し、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より小さい場合に前記受信装置を第2の受信装置であると決定することを特徴とする。
【0034】
(7)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、を備え、前記適応剰余部は、前記剰余切換決定部から入力されたそれぞれの送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部がそれぞれの干渉信号を減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号をそれぞれ生成することを特徴とする。
【0035】
(8)また、本発明は、上記の送信装置において、前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0036】
(9)また、本発明は、上記の送信装置において、前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0037】
(10)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部が減算した減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、を備えることを特徴とする。
【0038】
(11)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、前記受信装置各々の固有参照信号を、当該受信装置宛の信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0039】
(12)また、本発明は、上記の送信装置において、前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、前記フィルタ算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、予め定めた受信装置の順序に従って、当該受信装置宛の信号から干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置宛の信号に剰余演算を行う剰余演算部と、前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置宛の信号であって前記干渉減算部が前記干渉信号を減算した信号と、前記剰余演算部が剰余演算を行った信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする。
【0040】
(13)また、本発明は、上記の送信装置において、前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0041】
(14)また、本発明は、上記の送信装置において、前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする。
【0042】
(15)また、本発明は、上記の送信装置において、前記係数算出部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出し、前記多重信号生成部は、前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、を備えることを特徴とする。
【0043】
(16)また、本発明は、空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置において、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、を備えることを特徴とする受信装置である。
【0044】
(17)また、本発明は、上記の受信装置において、前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする。
【0045】
(18)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる情報であって前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を取得し、取得した送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする。
【0046】
(19)また、本発明は、上記の受信装置において、前記適応復調部は、前記送信モード判定部が、前記送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする。
【0047】
(20)また、本発明は、上記の受信装置において、前記信号から受信装置各々の固有参照信号を抽出するフレーム分離部と、前記フレーム分離部が抽出した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、を備えることを特徴とする。
【0048】
(21)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる受信装置各々の固有参照信号に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする。
【0049】
(22)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記固有参照信号が配置された位置が示す前記受信装置の順序であって、前記信号から干渉信号が減算された順序に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする。
【0050】
(23)また、本発明は、上記の受信装置において、前記送信モード判定部は、前記受信装置の順序が閾値以後の順序である場合に前記受信装置を第1の受信装置であると判定し、前記受信装置の順序が閾値より前の順序である場合に前記受信装置を第2の受信装置であると判定することを特徴とする。
【0051】
(24)また、本発明は、上記の受信装置において、前記適応復調部は、前記送信モード判定部が前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする。
【0052】
(25)また、本発明は、上記の受信装置において、前記固有参照信号は前記受信装置の順序で時間順に配置され、前記送信モード判定部は、前記固有参照信号のうち前記受信装置の順序と対応付けされた順番の最後に受信した固有参照信号を選択し、前記送信モード判定部が選択した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、を備えることを特徴とする。
【0053】
(26)また、本発明は、複数の受信装置宛の信号を空間多重して送信する送信装置と、前記送信装置が送信した信号を受信する受信装置とを具備する無線通信システムにおいて、前記送信装置は、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備え、前記受信装置は、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、を備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0054】
(27)また、本発明は、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置における送信制御方法において、多重信号生成部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する過程を有することを特徴とする送信制御方法である。
【0055】
(28)また、本発明は、空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置における受信制御方法において、送信モード判定部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する第1の過程と、適応復調部が、前記第1の過程での判定結果に基づいて、前記信号を復調する第2の過程と、を有することを特徴とする受信制御方法である。
【0056】
(29)また、本発明は、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置に用いられるプロセッサにおいて、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とするプロセッサである。
【0057】
(30)また、本発明は、空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置に用いられるプロセッサにおいて、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、を備えることを特徴とするプロセッサである。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、伝搬特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る基地局装置を示す概略ブロック図である。
【図3】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る基地局装置が送信する無線信号の一例を示す概略図である。
【図5】本実施形態に係る基地局装置が送信する無線信号の別の一例を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図7】本実施形態に係る適応復調部の構成を示す概略ブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図9】本実施形態に係る基地局装置を示す概略ブロック図である。こ
【図10】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図11】本実施形態に係る適応Modulo部の構成を示す概略ブロック図である。
【図12】本実施形態に係るフレーム構成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図13】本実施形態に係る多重信号生成部の動作を示すフロー図である。
【図14】本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。
【図15】本実施形態に係る閾値を説明する説明図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図17】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図18】本実施形態に係る多重信号生成部の動作を示すフロー図である。
【図19】本実施形態に係る閾値Kを説明する説明図である。
【図20】本実施形態に係る閾値Kと誤り率特性との関係を示す概略図である。
【図21】本発明の第4の実施形態に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図22】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図23】本実施形態に係るフレーム構成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図24】本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。
【図25】本実施形態に係る端末装置を示す概略ブロック図である。
【図26】本発明の第5の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図27】本実施形態に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図28】本実施形態に係る多重信号生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図29】本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。
【図30】本実施形態に係るフレーム構成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図31】本実施形態に係る基地局装置が送信する無線信号の一例を示す概略図である。
【図32】本実施形態に係る端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図33】本実施形態に係る多重信号生成部の動作を示すフロー図である。
【図34】本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。
【図35】OFDM処理を行う構成を示す概略ブロック図である。
【図36】Codebookの一例を示す概略図である。
【図37】従来技術に係るModulo演算を示す概略図である。
【図38】従来技術に係る無線通信システムを示す概略図である。
【図39】従来技術に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図40】従来技術に係る基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図41】従来技術に係る無線通信システムを示す別の概略図である。
【図42】従来技術に係る受信候補点を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0061】
<無線通信システムについて>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。この図は、DL MU−MIMO THPを適用した無線通信システムの図である。
この図において、基地局装置Bは、複数の端末装置MT1及びMT2各々に宛てた信号を空間多重して送信している。無線通信システムでは、干渉電力に基づいて、端末装置MT2宛の信号に対してModulo演算(信号の電力を抑圧する電力抑圧処理)を行うか否かを切り替える。
以下、基地局装置Bを基地局装置b1といい、端末装置MT1及びMT2各々を端末装置m1という。
【0062】
<基地局装置b1について>
図2は、本実施形態に係る基地局装置b1を示す概略ブロック図である。この図は、基地局装置b2が、同じ周波数帯域で各端末装置宛の信号を送信するアンテナを2個備える場合の図である。
図2において、基地局装置b1は、符号部b111、b112、変調部b121、b122、多重信号生成部1b、CRS(Common Reference Symbols;共通参照シンボル)生成部b13、フレーム選択部b14、無線送信部b151、b152、アンテナb101、b102、無線受信部b161、b162、及び伝搬路情報取得部b17を含んで構成される。
【0063】
符号部b111、b112は、それぞれ、端末装置MT1宛の情報ビット、MT2宛の情報ビットを入力される。符号部b111、b112は、入力された情報ビットを誤り訂正符号化して、それぞれ、変調部b121、b122に出力する。
変調部b121、b122は、入力されたビットを変調し、それぞれ、変調した変調シンボルs1、s2を多重信号生成部1bに出力する。
【0064】
多重信号生成部1bは、伝搬路情報取得部b17から入力された伝搬路状態情報(CSI;Channel State Information)に基づいて、端末装置MT2宛の無線信号に生ずる干渉シンボルfを算出する。多重信号生成部1bは、変調部b121、b122から入力された変調シンボルs2から、算出した干渉シンボルfを減算する。
また、多重信号生成部1bは、端末装置m1毎の固有参照シンボル(DRS;Dedecated Reference Symbols)を生成する。なお、固有参照シンボル及び後述する共通参照シンボルは、基地局装置b1と端末装置m1とがその値を予め記憶するシンボルであり、伝搬路状態の推定等に用いられる。
【0065】
多重信号生成部1bは、伝搬路情報取得部b17から入力されたCSIに基づいて、Modulo演算を行うか否かを判定する。Modulo演算を行うと判定した場合、多重信号生成部1bは、Modulo演算後の剰余シンボルs2’、Modulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b14に出力する。
一方、Modulo演算を行わないと判定した場合、多重信号生成部1bは、干渉除去シンボルs2−f、Modulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b14に出力する。
なお、多重信号生成部1bが行う処理の詳細については、後述する。
【0066】
CRS生成部b13は、アンテナ毎の共通参照シンボル(CRS)を生成し、フレーム選択部b14に出力する。
フレーム選択部b14は、マッピング情報に従って、CRS生成部b13から入力されたアンテナb101、b102の共通参照シンボルを周波数帯域に配置して、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b151に出力する。
また、フレーム選択部b14は、マッピング情報に従って、多重信号生成部1bから入力された端末装置MT2宛のシンボル列を、端末装置MT2に信号を送信する周波数帯域に配置する。ここで、端末装置MT1及びMT2のシンボル列を配置する周波数帯域は同じ周波数帯域である。フレーム選択部b14は、周波数帯域に配置した信号を、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b152に出力する。
【0067】
無線送信部b151、b152は、それぞれ、端末装置MT1宛の信号、MT2宛の信号をフレーム選択部b14から入力される。無線送信部b151、b152は、入力された信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換後の信号を搬送周波数にアップコンバージョンする。無線送信部b151、b152は、アップコンバージョンした無線信号(図4、5参照)を、それぞれ、アンテナb101、b102を介して送信する。
なお、フレーム選択部b14が用いるマッピング情報、符号部b111、b112での符号化方式、及び、変調部b121、b122での変調方式は、基地局装置b1が端末装置m1(本実施例では端末装置MT1、MT2)へ予め通知する。
【0068】
無線受信部b161、b162は、それぞれ、アンテナb101、b102を介して、端末装置MT1、MT2からの無線信号を受信する。無線受信部b161、b162は、受信した無線信号をベースバンド帯域にダウンコンバージョンして、ダウンコンバージョン後の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う。無線受信部b161、b162は、変換後の信号を伝搬路情報取得部b17に出力する。
伝搬路情報取得部b17は、無線受信部b161、b162から入力された信号を復調する。伝搬路情報取得部b17は、復調した情報から、基地局装置と端末装置MT1、MT2各々とアンテナb101、b102各々との伝搬路状態を示すCSIであって、端末装置MT1、MT2各々が推定したCSIを抽出する。伝搬路情報取得部b17は、抽出したCSIを多重信号生成部1bに出力する。
【0069】
図3は、本実施形態に係る多重信号生成部1bの構成を示す概略ブロック図である。この図において、多重信号生成部1bは、線形フィルタ算出部111b、干渉算出部112b、干渉減算部113b、Modulo演算切替決定部114b、適応Modulo部12b、MT(Mobile Terminal;端末装置)固有情報挿入部13b、及び、線形フィルタ乗算部141bを含んで構成される。また、適応Modulo部12b(適応剰余部)は、Modulo演算切替部121b及びModulo演算部122bを含んで構成される。また、フレーム構成部13bは、送信モード情報挿入部131b、DRS生成部132b、及びDRS挿入部133bを含んで構成される。
【0070】
線形フィルタ算出部111b(係数算出部)は、CSIを入力される。線形フィルタ算出部111bは、入力されたCSIから伝搬行列Hを生成する。線形フィルタ算出部111bは、生成した伝搬行列Hのエルミート共役行列HHをQR分解して、干渉係数(r12*/r22*)及び線形フィルタ(行列Q)を算出する。QR分解とは、行列をユニタリ行列Qと上三角行列Rに分解することであり、このQR分解は、次式(2)で表される。なお、r*は、rの複素共役を表す。
【0071】
【数6】
【0072】
ここで、h11、h12は、それぞれ、アンテナb101と端末装置MT1、MT2との伝搬路推定値であり、h21、h22は、それぞれ、アンテナb201と端末装置MT1、MT2との伝搬路推定値(複素利得)である。伝搬路推定値はCSIに含まれる情報である。
線形フィルタ算出部111bは、算出した干渉係数を示す情報を、干渉算出部112b及びModulo演算切替決定部114bに出力する。また、線形フィルタ算出部111bは、線形フィルタを示す情報を、線形フィルタ乗算部141bに出力する。
【0073】
干渉算出部112bは、変調シンボルs1を入力される。干渉算出部112bは、線形フィルタ算出部111bから入力された情報が示す干渉係数を、入力された変調シンボルs1に乗算することで、干渉シンボルf(=(r12*/r22*)s1)を算出する。干渉算出部112bは、算出した干渉シンボルfを干渉減算部113bに出力する。
干渉減算部113bは、変調シンボルs2を入力される。干渉減算部113bは、入力された変調シンボルs2から、干渉算出部112bから入力された干渉シンボルfを減算する。干渉減算部113bは、減算後の干渉除去シンボルs2−fを、Modulo演算切替部121bに出力する。
【0074】
Modulo演算切替決定部114b(剰余切換決定部)は、線形フィルタ算出部111bから入力された干渉係数を二乗することで、次式(7)で表される干渉電力Pを算出する。
【0075】
【数7】
【0076】
Modulo演算切替決定部114bは、算出した干渉電力Pが予め定めた閾値P0より大きい場合、Modulo演算を行うと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部114bは、Modulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報を送信モード情報挿入部131b及びModulo演算切替部121bに出力する。
一方、算出した干渉電力Pが予め定めた閾値P0以下の場合、Modulo演算切替決定部114bは、Modulo演算を行わないと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部114bは、Modulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報を送信モード情報挿入部131b及びModulo演算切替部121bに出力する。
【0077】
Modulo演算切替部121bは、Modulo演算切替決定部114bから入力された送信モード情報が送信モード1を示す場合、干渉減算部113bから入力された干渉除去シンボルs2−fを、Modulo演算部122bに出力する。
一方、Modulo演算切替決定部114bから入力された送信モード情報が送信モード2を示す場合、Modulo演算切替部121bは、干渉減算部113bから入力された干渉除去シンボルs2−fを、送信モード情報挿入部131bに出力する。
【0078】
Modulo演算部122b(剰余演算部)は、Modulo演算切替部121bから入力された干渉除去シンボルs2−fに対して、Modulo演算を行う。Modulo演算は、次式(8)で表される。
【0079】
【数8】
【0080】
ここで、Modτ(x)はModulo演算を表し、x、x’はそれぞれModulo演算前後の変調シンボルを表す。また、jは虚数単位、Re(x)はxの実部を表し、Im(x)はxの虚部を表す。また、floor(x)はxを超えない最大の整数を表す。
Modulo演算部122bは、演算後の剰余シンボルs2’(=Modτ(s2−f))を送信モード情報挿入部131bに出力する。
【0081】
送信モード情報挿入部131bは、Modulo演算切替決定部114bから入力された送信モード情報を変調する。送信モード情報挿入部131bは、Modulo演算部122bから入力された剰余シンボルs2’、或いはModulo演算切替部121bから入力された干渉除去シンボルs2−f、及び、変調した送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT2宛のシンボル列)。また、送信モード情報挿入部131bは、変調部b121から入力された変調シンボルs1、及び、送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT1宛のシンボル列)。送信モード情報挿入部131bは、配列した端末装置m1毎のシンボル列を、DRS挿入部133bに出力する。
【0082】
DRS生成部132bは、端末装置m1(本実施形態では端末装置MT1、MT2)毎の固有参照シンボルを生成する。DRS生成部132bは、生成した端末装置m1毎の固有参照シンボルを、DRS挿入部133bに出力する。
DRS挿入部133bは、DRS生成部132bから入力された端末装置m1毎の固有参照シンボルを、その端末装置m1のシンボル列であって送信モード情報挿入部131bから挿入されたシンボル列に挿入する。ここで、DRS挿入部133bは、マッピング情報が示す時間に、固有参照シンボルを挿入する。
DRS挿入部133bは、固有参照シンボルを挿入した端末装置m1毎のシンボル列(フレーム)を線形フィルタ乗算部141bに出力する。
【0083】
線形フィルタ乗算部141bは、同時刻に送信するシンボルであって、DRS挿入部133bから入力された端末装置MT1のシンボル列のシンボルS1と、端末装置MT2のシンボル列のシンボルS2と、を組み合わせたベクトルを生成する。線形フィルタ乗算部141bは、生成したベクトルに対して、線形フィルタ算出部111bから入力された情報が示す線形フィルタを乗算する。線形フィルタを乗算したシンボルS1’’、S2’’は、次式(9)で表される。
【0084】
【数9】
【0085】
線形フィルタ乗算部141bは、シンボルS1’’、S2’’を含むシンボル列を、それぞれ、アンテナb101、アンテナb102で送信するシンボル列として、フレーム選択部b14に出力する。
【0086】
<無線信号について>
図4は、本実施形態に係る基地局装置b1が送信する無線信号の一例を示す概略図である。この図において、横軸は時間軸を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号を、端末装置毎の無線信号(端末装置MT1宛の無線信号、及び端末装置MT2宛の無線信号)に分けて表している。
【0087】
図4において、端末装置MT1宛の無線信号は、変調シンボルs1の信号S111(MT1宛データ信号)、端末装置MT1の送信モード情報の信号S112(本実施形態では、送信モード2)、及び端末装置MT1の固有参照シンボルの信号S113(DRS−MT1)を含む信号である。
また、端末装置MT2宛の無線信号は、剰余シンボルs2’の信号或いは干渉除去シンボルs2−fの信号S121(MT2宛データ信号)、端末装置MT2の送信モード情報の信号S122、及び端末装置MT2の固有参照シンボルの信号S123(DRS−MT2)を含む信号である。
図4において、信号S111及びS121は同時刻に送信されている、つまり、空間多重されていることを示す。また、図4は、信号S112、S113、S122、S123が同時刻に送信される他の信号がない、つまり、時分割で多重されることを示す。
【0088】
また、
図5は、本実施形態に係る基地局装置b1が送信する無線信号の別の一例を示す概略図である。この図は、端末装置m1が伝搬路推定するためのCRSを含む無線信号の一例を示す概略図である。
基地局装置b1は、まず、図5に示す無線信号を送信する。その後、基地局装置b1は、図4に示す無線信号を送信する。この図において、横軸は時間軸を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号のうち、共通参照シンボルの信号S101、S102(CRS−TX1、CRS−TX2)を示す。
【0089】
<端末装置m1について>
図6は、本実施形態に係る端末装置m1の構成を示す概略ブロック図である。この図は、端末装置m1のアンテナが1個の場合の図である。
図6において、端末装置m1は、アンテナm101、無線受信部m111、フレーム分離部m121、伝搬路推定部m122、伝搬路補償部m123、送信モード取得部m124、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、フレーム構成部m132、及び無線送信部m141を含んで構成される。
【0090】
無線受信部m111は、アンテナm101を介して、基地局装置b1からの無線信号を受信する。無線受信部m111は、受信した無線信号をベースバンド帯域にダウンコンバージョンして、ダウンコンバージョン後の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う。無線受信部m111は、変換後の信号をフレーム分離部m121に出力する。
【0091】
フレーム分離部m121は、基地局装置b1から予め通知されたマッピング情報に基づいて、無線受信部m111から入力された信号から、自装置宛の信号を分離する。
フレーム分離部m121は、分離した信号のうち共通参照シンボルの信号、及び自装置の固有参照シンボルの信号を、伝搬路推定部m122に出力する。また、フレーム分離部m121は、分離した信号のうち自装置宛のデータ信号(図4の例では信号S111、S121の時刻の信号)を伝搬路補償部m123に出力する。
例えば、端末装置MT1におけるデータ信号の変調シンボルを受信シンボルy1、端末装置MT2におけるデータ信号の変調シンボルを受信シンボルy2は、次式(10)又は(11)で表される。
【0092】
【数10】
【0093】
ここで、式(10)は送信モード情報が「送信モード1」を示す場合であり、式(11)は送信モード情報が「送信モード2」を示す場合である。式(10)は、シンボルS1、S2に線形フィルタを乗じたことにより、受信シンボルy1、y2が、伝搬行列が行列RHの場合のシンボルとなることを示す。
また、フレーム分離部m121は、分離した信号のうち送信モード情報の信号を送信モード取得部m124に出力する。
【0094】
伝搬路推定部m122は、フレーム分離部m121から入力された共通参照シンボルの信号及び固有参照シンボルの信号に基づいて、基地局装置b1のアンテナ各々からの伝搬路状態を推定する。伝搬路推定部m112は、共通参照シンボルの信号及び固有参照シンボルの信号に基づいて推定した伝搬路状態を示すCSIを、それぞれ、伝搬路状態情報生成部m131及び伝搬路補償部m123に出力する。
伝搬路補償部m123は、伝搬路推定部m122から入力されたCSIに基づいて、フレーム分離部m121から入力された自装置宛のデータ信号に対して、伝搬路補償を行う。伝搬路補償部m123は、伝搬路補償を行って抽出した自装置宛のデータ信号を適応変調部1mに出力する。例えば、端末装置MT2におけるデータ信号の変調シンボルは、z2=y2/r22*で表される。
【0095】
送信モード取得部m124は、フレーム分離部m121から入力された送信モード情報の信号を復調することで、送信モード情報を取得する。送信モード取得部m124は、取得した送信モード情報を、適応復調部1mに出力する。
【0096】
適応復調部1mは、送信モード取得部m124から入力された送信モード情報に基づいて、伝搬路補償部m123から入力されたデータ信号を復調する。適応復調部1mは、復調したビットを復号部m124に出力する。
復号部m124は、適応復調部1mから入力されたビットを復号化して、出力する。
【0097】
伝搬路状態情報生成部m131は、伝搬路補償部m123から入力されたCSIを変調し、変調した信号をフレーム構成部m132に出力する。
フレーム構成部m132は、伝搬路状態情報生成部m131から入力された信号を、基地局装置b1に信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム構成部m132は、周波数帯域に配置した信号を、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部m141に出力する。
無線送信部m141は、フレーム構成部m132から入力された信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換後の信号を搬送周波数にアップコンバージョンする。無線送信部m141は、アップコンバージョンした無線信号を、アンテナm101を介して送信する。
【0098】
図7は、本実施形態に係る適応復調部1mの構成を示す概略ブロック図である。この図は、図6の適応復調部1mの構成を示す。この図において、適応復調部1mは、Modulo演算切替部111m、Modulo演算部112m、及び復調部113mを含んで構成される。
【0099】
Modulo演算切替部111mは、データ信号及び送信モード情報を入力される。Modulo演算切替部111mは、入力された送信モード情報が「送信モード1」を示す場合、入力されたデータ信号をModulo演算部112mに出力する。一方、Modulo演算切替部111mは、入力された送信モード情報が「送信モード2」を示す場合、入力されたデータ信号を復調部113mに出力する。
Modulo演算部112mは、Modulo演算切替部111mから入力されたデータ信号の変調シンボルz2に対して、Modulo演算を行うことで、所望シンボルs2を抽出する(式(5)参照)。Modulo演算部112mは、抽出した所望シンボルs2のデータ信号を復調部113mに出力する。
復調部113mは、Modulo演算部112mから入力されたデータ信号を復調する。復調部113mは、復調したビット(硬判定結果)又は軟推定値(軟推定結果)を出力する。
【0100】
このように、本実施形態によれば、多重信号生成部1bは、「送信モード1」の場合、Modulo演算を行った端末装置MT2宛の信号と、Modulo演算を行わない端末装置MT1宛の信号と、を多重する。また、送信モード取得部m124は、受信した信号から送信モード情報を取得して、Modulo演算を行った端末装置宛の信号であるか又はModulo演算を行わない端末装置宛の信号であるかを判定する。この判定結果に基づいて、適応復調部1mは、信号にModulo演算を行って復調する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が小さい信号と干渉電力が大きい信号とを多重するとともに、干渉電力が大きい信号にはModulo演算を行って干渉電力が小さい信号にはModulo演算を行わずに信号を多重することができる。つまり、本実施形態では、無線通信システムは、受信候補点が増加して信号検出性能が低下することを防止するとともに、電力効率が高い通信を行うことができ、伝搬特性を向上させることができる。
特に、本実施形態に係る通信システムでは、線形フィルタの乗算によって端末装置MT1宛の信号に対する干渉信号をなくすため、端末装置MT2宛の信号に対する干渉信号が大きくなる場合がある。しかし、本実施形態によれば、干渉信号が大きくなった場合にはModulo演算を行うので、送信電力を低くして、電力効率が高い通信を行うことができる。
【0101】
また、本実施形態では、多重信号生成部1bは、複数の端末装置MT1、MT2各々との伝搬路状態情報に基づいて、端末装置MT1の信号による干渉電力を算出する。また、多重信号生成部1bは、算出した干渉電力Pが閾値P0より大きい場合に端末装置MT2宛の信号にModulo演算を行うと決定し、算出した干渉電力Pが閾値P0より小さい場合に端末装置MT2宛の信号にModulo演算を行わないと決定する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が低い場合には受信候補点が増加して信号検出性能が低下することを防止するとともに、干渉電力が高い場合には電力効率が高い通信を行うことができ、伝搬特性を向上させることができる。
【0102】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
上記の第1の実施形態では、基地局装置Bが2個の端末装置MT1及びMT2に信号を送信する場合について説明をした。本実施形態では、基地局装置がN個の端末装置に信号を送信する場合について説明をする。
【0103】
<無線通信システムについて>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。この図において、基地局装置Bは、N個の端末装置MT1〜MTNへ信号を送信している。
以下、基地局装置Bを基地局装置b2という。なお、端末装置MTk(k=1〜N;kを端末番号という)各々の構成は、第1の実施形態の端末装置m1の構成(図6、7)と同じであるので、説明は省略する。ただし、本実施形態に係る端末装置m1は、基地局装置BのN個のアンテナとの伝搬路状態情報に基づいて、伝搬路補償を行う。
【0104】
<基地局装置b2について>
図9は、本実施形態に係る基地局装置b2を示す概略ブロック図である。この図は、同じ周波数帯域で各端末装置宛の信号を送信するアンテナをN個備える場合の図である。
図9において、基地局装置b2、符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、多重信号生成部2b、CRS生成部b23、フレーム選択部b24、無線送信部b151〜b15N、アンテナb101〜b10N、無線受信部b161〜b16N、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27を含んで構成される。
【0105】
符号部b11kには、それぞれ、端末装置MTk宛の情報ビットが入力される。符号部b11kは、入力された情報ビットを誤り訂正符号化して、それぞれ、変調部b12kに出力する。
変調部b12kは、入力されたビットを変調し、それぞれ、変調した変調シンボルskを多重信号生成部2bに出力する。
【0106】
多重信号生成部2bは、伝搬路情報取得部b27から入力されたCSIに基づいて、端末装置MTk宛の無線信号に生ずる干渉シンボルfkを算出する。多重信号生成部2bは、変調部b12kから入力された変調シンボルskから、算出した干渉シンボルfkを減算する。
また、多重信号生成部2bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。
【0107】
多重信号生成部2bは、伝搬路情報取得部b27から入力されたCSIに基づいて、端末装置MTk毎にModulo演算を行うか否かを判定する。Modulo演算を行うと判定した場合、多重信号生成部2bは、Modulo演算後の剰余シンボルsk’、 端末装置MTk宛のシンボルにModulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b24に出力する。
一方、Modulo演算を行わないと判定した場合、多重信号生成部2bは、干渉除去シンボルsk−fk、端末装置MTk宛のシンボルにModulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報の変調シンボル、及び、固有参照シンボル、を予め決定したマッピング情報に従って配置する。多重信号生成部1bは、配列したシンボル列のシンボルに線形フィルタを乗算してフレーム選択部b24に出力する。
【0108】
CRS生成部b23は、アンテナ毎の共通参照シンボル(CRS)を生成し、フレーム選択部b24に出力する。
フレーム選択部b24は、マッピング情報に従って、CRS生成部b13から入力されたアンテナb10kの共通参照シンボルを、予め定められた周波数帯域に配置する。
また、フレーム選択部b24は、マッピング情報に従って、多重信号生成部2bから入力された端末装置MTk宛のシンボル列を、端末装置MTkに信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム選択部b24は、周波数帯域に配置した信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b15kに出力する。
【0109】
無線送信部b15kには、それぞれ、アンテナb10k毎の信号がフレーム選択部b24から入力される。無線送信部b15kは、入力された信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換後の信号を搬送周波数にアップコンバージョンする。無線送信部b15kは、アップコンバージョンした無線信号を、それぞれ、アンテナb10kを介して送信する。
【0110】
無線受信部b16kは、それぞれ、アンテナb10kを介して、端末装置MTkからの無線信号を受信する。無線受信部b16kは、受信した無線信号をベースバンド帯域にダウンコンバージョンして、ダウンコンバージョン後の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う。無線受信部b16kは、変換後の信号をフレーム分離部b28に出力する。
フレーム分離部b28は、無線受信部b16kから入力された信号を、送信元の端末装置MTk毎に分離する。フレーム分離部b28は、分離した端末装置MTk毎のCSIを伝搬路情報取得部b27に出力する。
【0111】
伝搬路情報取得部b27は、フレーム分離部b28から入力された信号を復調する。伝搬路情報取得部b27は、復調した情報から、端末装置MTk各々と基地局装置のアンテナb10k各々との伝搬路状態を示すCSIであって、端末装置MTk各々が推定したCSIを抽出する。伝搬路情報取得部b27は、抽出したCSIを多重信号生成部2bに出力する。
【0112】
図10は、本実施形態に係る多重信号生成部2bの構成を示す概略ブロック図である。この図において、多重信号生成部2bは、線形フィルタ算出部211b、干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、Modulo演算切替決定部214b、適応Modulo部12b−2〜12b−N、フレーム構成部23b、及び、線形フィルタ乗算部241bを含んで構成される。
【0113】
線形フィルタ算出部211bは、CSIを入力される。線形フィルタ算出部111bは、入力されたCSIから伝搬行列Hを生成する。ここで、伝搬行列Hのp行q列要素hpq(p=1〜N、q=1〜N)は、アンテナb10q(q=1〜N)と端末装置MTp(p=1〜N)との伝搬路推定値である。
線形フィルタ算出部211bは、生成した伝搬行列Hのエルミート共役行列HHをQR分解して、線形フィルタ(行列Q)を算出する。また、線形フィルタ算出部211bは、算出した行列Rのエルミート共役行列RHから対角成分を抽出した対角行列Aを生成する。線形フィルタ算出部211bは、干渉係数行列B=A−1RH−Iを算出する。ここで、A−1はAの逆行列を表し、Iは単位行列を表す。なお、干渉係数行列Bの算出処理において、A−1は端末装置MTkで伝搬路補償を行った後の信号に含まれる干渉成分を算出するためにRHに乗算され(第1の実施形態ではr22*)、Iは端末装置MTk宛のデータ信号の成分を除去するためにA−1RHから減算される。
【0114】
線形フィルタ算出部211bは、算出した干渉係数行列Bの(l,x)成分を干渉係数Blxとして、この干渉係数を示す情報を、干渉算出部212b及びModulo演算切替決定部214bに出力する。また、線形フィルタ算出部211bは、線形フィルタを示す情報を、線形フィルタ乗算部241bに出力する。
【0115】
干渉算出部212bは、変調部b121から変調シンボルs1(送信データシンボルν1とする)、及び、適応Modulo部12b−kから干渉除去シンボルsk−fk或いは剰余シンボルsk’(=Modτ(sk−fk))(k=2、3、・・・、N)を入力される。ここで、適応Modulo部12b−kから入力されるシンボルを送信データシンボルνkとする。
干渉算出部212bは、線形フィルタ算出部211bから入力された情報、及び、入力されたシンボルに基づいて、次式(12)で表される干渉シンボルfkを算出する。
【0116】
【数11】
【0117】
干渉算出部212bは、算出した干渉シンボルfkを、それぞれ、干渉減算部113b−kに出力する。
干渉減算部113b−k(k=2、3、・・・、N)は、それぞれ、変調部b12kから変調シンボルskを入力される。干渉減算部113b−kは、入力された変調シンボルskから、干渉算出部212bから入力された干渉シンボルfkを減算する。干渉減算部113b−kは、減算後の干渉除去シンボルsk−fkを、適応Modulo部12b−kに出力する。
【0118】
Modulo演算切替決定部214bには、線形フィルタ算出部211bから干渉係数を示す情報が入力される。Modulo演算切替決定部214bは、線形フィルタ算出部211bから入力された情報が示す干渉係数に基づいて、次式(13)で表される干渉電力Pkを算出する(干渉電力算出処理という)。
【0119】
【数12】
【0120】
なお、Tlについては、干渉電力算出処理の動作(図14)と併せて後述する。
Modulo演算切替決定部214bは、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0より大きい場合、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行うと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報を、フレーム構成部23b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
一方、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0以下の場合、Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行わないと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報を、フレーム構成部23b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
【0121】
適応Modulo部12b−k(k=2、3、・・・、N)は、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkに対して、Modulo演算を行う(式(8)参照)。適応Modulo部12b−kは、演算後の剰余シンボルsk’を送信データシンボルνkとして、端末装置MTk宛のシンボルとしてフレーム構成部23bに出力する。
一方、適応Modulo部12b−kは、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード2」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkを送信データシンボルνkとして、、端末装置MTk宛のシンボルとしてフレーム構成部23bに出力する。
【0122】
フレーム構成部23bは、Modulo演算切替決定部214bから入力された送信モード情報を変調する。また、フレーム構成部23bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。
フレーム構成部23bは、適応Modulo部12b−kから入力された送信データシンボルνk、変調した送信モード情報の変調シンボル、及び、生成した端末装置MTkの固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MTk宛のシンボル列)。また、フレーム構成部23bは、変調部b121から入力された送信データシンボルν1(=s1)、及び、送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、及び生成した端末装置MT1の固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT1宛のシンボル列)。
フレーム構成部23bは、配列した端末装置m1毎のシンボル列(フレーム)を、線形フィルタ乗算部241bに出力する。
【0123】
線形フィルタ乗算部241bは、同時刻に送信するシンボルであって、フレーム構成部23bから入力された端末装置MTk(k=1〜N)のシンボル列のシンボルSk(k=1〜N)を組み合わせたベクトルに対して、線形フィルタ算出部211bから入力された情報が示す線形フィルタを乗算する。線形フィルタを乗算したシンボルSk’’ (k=1〜N)は、次式(14)で表される。
【0124】
【数13】
【0125】
線形フィルタ乗算部241bは、シンボルSk’’ を含むシンボル列を、それぞれ、アンテナb10kで送信する信号として、フレーム選択部b14に出力する。
【0126】
図11は、本実施形態に係る適応Modulo部12b−kの構成を示す概略ブロック図である。適応Modulo部12b−kは、Modulo演算切替部121b−k及びModulo演算部122b−kを含んで構成される。
Modulo演算切替部121b−kは、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkを、Modulo演算部122b−kに出力する。
一方、適応Modulo部12b−kは、Modulo演算切替決定部214bから入力された端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード2」を示す場合、干渉減算部113b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkを、送信モード情報挿入部231bに出力する。
Modulo演算部122b−kは、Modulo演算切替部121b−kから入力された干渉除去シンボルsk−fkに対して、Modulo演算を行う。
【0127】
図12は、本実施形態に係るフレーム構成部23bの構成を示す概略ブロック図である。フレーム構成部23bは、送信モード情報挿入部231b、DRS生成部232b、及びDRS挿入部233bを含んで構成される。
送信モード情報挿入部231bは、適応Modulo部12b−kから入力された送信モード情報を変調する。送信モード情報挿入部231bは、送信モード情報挿入部231bは、Modulo演算部122b−kから入力された送信データシンボルνk、及び、変調した送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT2宛のシンボル列)。また、送信モード情報挿入部231bは、変調部b121から入力された変調シンボルs1、及び、送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、をマッピング情報が示す時間順に配列する(端末装置MT1宛のシンボル列)。送信モード情報挿入部231bは、配列した端末装置m1毎のシンボル列を、DRS挿入部233bに出力する。
【0128】
DRS生成部232bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。DRS生成部232bは、生成した端末装置m1毎の固有参照シンボルを、DRS挿入部233bに出力する。
DRS挿入部233bは、DRS生成部232bから入力された端末装置m1毎の固有参照シンボルを、その端末装置m1のシンボル列であって送信モード情報挿入部231bから挿入されたシンボル列に挿入する。ここで、DRS挿入部233bは、マッピング情報が示す時間に、固有参照シンボルを挿入する。
DRS挿入部233bは、固有参照シンボルを挿入した端末装置m1毎のシンボル列(フレーム)を線形フィルタ乗算部241bに出力する。
【0129】
<基地局装置b2の動作について>
図13は、本実施形態に係る多重信号生成部2bの動作を示すフロー図である。
(ステップS101)線形フィルタ算出部211bは、線形フィルタ(行列Q)及び干渉係数行列Bを算出し、干渉係数情報をModulo演算切替決定部214bと干渉算出部212bとに入力する。その後、ステップS12に進む。
(ステップS12)Modulo演算切替決定部214bは、干渉係数情報に基づいて、干渉電力Pkを算出して、各端末装置MTk宛のシンボルに対して、Modulo演算を行うか否かを決定する。また、Modulo演算切替決定部214bは、決定結果を表す送信モード情報を生成する。その後、ステップS103に進む。
(ステップS103)干渉算出部212bは、変数kに1を代入する。その後、ステップS104に進む。
(ステップS104)干渉算出部212bは、端末装置MT1宛の変調シンボルs1を送信データシンボルν1とする。その後、ステップS105に進む。
【0130】
(ステップS105)干渉算出部212bは、kに1を加算する。その後、ステップS106に進む。
(ステップS106)干渉算出部212bは、ステップS101で算出した干渉係数行列B及び端末装置MT1〜(k−1)宛の送信データシンボルν1〜νk−1を用いて、端末装置MTk宛の無線信号に生ずる干渉シンボルfkを算出する(式(12)参照)。その後、ステップS107に進む。
(ステップS107)干渉減算部113b−kは、端末装置MTk宛の変調シンボルskから、ステップS106で算出した干渉シンボルfkを減算することで、干渉除去シンボルsk−fkを算出する。その後、ステップS108に進む。
【0131】
(ステップS108)Modulo演算切替部121b−kは、ステップS12で生成した端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示すか否かを判定する。端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」を示す場合(Yes)、ステップS109に進む。一方、端末装置MTk宛の送信モード情報が「送信モード1」以外を示す場合(No)、ステップS110に進む。
(ステップS109)Modulo演算部122b−kは、ステップS108で算出した干渉除去シンボルsk−fkに対してModulo演算を行う。Modulo演算部122b−kは、干渉除去シンボルsk−fkを送信データシンボルνkとする。その後、ステップS111に進む。
(ステップS110)Modulo演算部122b−kは、変調シンボルskを送信データシンボルνkとする。その後、ステップS111に進む。
(ステップS111)Modulo演算部122b−kは、ステップS109又はS110で代入したνkを干渉算出部212bに入力する。その後、ステップS112に進む。
【0132】
(ステップS112)干渉算出部212bは、k=Nであるか否かを判定する。k=Nであると判定した場合(Yes)、ステップS113に進む。一方、k≠Nであると判定した場合(No)、ステップS105に戻る。
(ステップS113)フレーム構成部23bは、ステップS104、S109或いはS110で生成した送信データシンボルν1〜νNを入力される。その後、ステップS114に進む。
(ステップS114)フレーム構成部23bは、送信モード情報及び固有参照シンボルをシンボル列に挿入する。その後、ステップS115に進む。
(ステップS115)線形フィルタ乗算部241bは、送信データシンボルνkを組み合わせたベクトルに対して、線形フィルタを乗算する(式(14)参照)。その後、動作を終了する。
【0133】
図14は、本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。この図は、図13のステップS12での処理動作を示す。
(ステップS12−1)Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MT1宛の変調シンボルs1の電力を送信電力Qsとする。ここで、Qsは、データ信号を変調したシンボルの電力を平均した平均電力である。
その後、ステップS12−2に進む。
(ステップS12−2)Modulo演算切替決定部214bは、変数kに2を代入する。その後、ステップS12−3に進む。
(ステップS12−3)Modulo演算切替決定部214bは、ステップS12−6又はS12−8で算出した送信電力Tl(l=1〜k−1)を用いて干渉電力Pkを算出する(式(13)参照)。なお、k=2の場合、Modulo演算切替決定部214bは、送信電力T1をステップS12−1で算出したQsとする。例えば、k=2の場合の干渉電力P2=B212Qs(B21の2乗とQsの積)となる。ステップS12−4に進む。
【0134】
(ステップS12−4)Modulo演算切替決定部214bは、ステップS12−3で算出した干渉電力Pkが閾値P0より大きいか否かを判定する。干渉電力Pkが閾値P0より大きいと判定した場合(Yes)、ステップS12−5に進む。一方、干渉電力Pkが閾値P0以下であると判定した場合(No)、ステップS12−7に進む。
(ステップS12−5)Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報を「送信モード1」に決定する。その後、ステップS12−6に進む。
(ステップS12−6)Modulo演算切替決定部214bは、QMを送信電力Tkとする。ここで、QMは剰余シンボルsk’の平均電力であり、信号点平面上(図37参照)において原点を中心としたI−chで[−τ/2,τ/2]、Q−chで[−τ/2,τ/2]に含まれる信号点に、信号が等確率で分布していると仮定した場合の電力である。
【0135】
(ステップS12−7)Modulo演算切替決定部214bは、端末装置MTk宛の送信モード情報を「送信モード2」に決定する。その後、ステップS12−8に進む。
(ステップS12−8)Modulo演算切替決定部214bは、Qs+Pkを送信電力Tkとする。ここで、Qs+Pkは干渉除去シンボルsk−fkの平均電力を示す。その後、ステップS12−9に進む。
(ステップS12−9)Modulo演算切替決定部214bは、k=Nであるか否かを判定する。k=Nであると判定した場合(Yes)、動作を終了する。一方、k≠Nであると判定した場合(No)、ステップS12−10に進む。
(ステップS12−10)Modulo演算切替決定部214bは、kに1を加算する。その後、ステップS12−3に戻る。
【0136】
<閾値P0について>
上記の閾値P0は、以下のように予め定められている。
図15は、本実施形態に係る閾値P0を説明する説明図である。この図において、横軸は干渉電力を示し、縦軸は誤り率を示す。
符号L11を付した曲線L11は、Modulo演算を行わない場合の干渉電力と誤り率との関係を示す。曲線L11は、閾値P0が小さくなってModulo演算を行う確率が高くなると、Modulo演算に伴うModulo Lossが増加して、誤りが多く発生してしまうことを示している。一方、符号L12を付した曲線L12は、閾値P0が大きくなってModulo演算を行う確率が低下すると、干渉を電力効率良く除去できないために、誤りが増加してしまうことを示している。
符号L1を付した曲線L1は、曲線L11とL12の和をとったものである。本実施形態では、この曲線L1における最小値を閾値P0とする。
【0137】
このように、本実施形態によれば、多重信号生成部2bは、「送信モード1」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行った信号と、「送信モード2」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行わない信号と、を多重する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が小さい信号と干渉電力が大きい信号とを多重するとともに、干渉電力が大きい信号にはModulo演算を行って干渉電力が小さい信号にはModulo演算を行わずに信号を多重することができる。
特に、本実施形態に係る通信システムでは、線形フィルタの乗算によって、端末装置MTk宛の信号に対する干渉信号が大きくなる場合がある。しかし、本実施形態によれば、干渉信号が大きくなった場合にはModulo演算を行うので、送信電力を低くして、電力効率が高い通信を行うことができる。
【0138】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第3の実施形態について詳しく説明する。
上記第2実施形態では、基地局装置b2は、干渉電力Pkに基づいてModulo演算を行うか否かを判定した。本実施形態では、干渉を減算する処理を行う順序(干渉除去順という;端末装置MTkの順序(端末番号k)と同じ)に基づいて、Modulo演算を行うか否かを判定する。
本実施形態に係る無線通信システムを示す概略図は、第2の実施形態(図8)と同じであるので、説明は省略する。以下、本実施形態に係る基地局装置Bを基地局装置b3という。なお、端末装置MTk(k=1〜N)各々の構成は、第1の実施形態の端末装置m1の構成(図6、7)と同じであるので、説明は省略する。ただし、本実施形態に係る端末装置m1は、基地局装置BのN個のアンテナとの伝搬路状態情報に基づいて、伝搬路補償を行う。
【0139】
<基地局装置b3について>
図16は、本発明の第3の実施形態に係る基地局装置b3の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る基地局装置b3(図16)と第2の実施形態に係る基地局装置b2(図9)とを比較すると、多重信号生成部3bが異なる。しかし、他の構成要素(符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、CRS生成部b23、フレーム選択部b24、無線送信部b151〜b15N、アンテナb101〜b10N、無線受信部b161〜b16N、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0140】
図17は、本実施形態に係る多重信号生成部3bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る多重信号生成部3b(図17)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2b(図10)とを比較すると、多重信号生成部3bには適応Modulo部12b−2〜12b−(K−1)(Kは3以上の自然数)及びModulo演算切替決定部214bを備えない点、また、適応Modulo部12b−K〜b12−Nに代えてModulo演算部122b−K〜122b−Nを備える点が異なる。しかし、他の構成要素(線形フィルタ算出部211b、干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、フレーム構成部23b、及び、線形フィルタ乗算部241b)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
Modulo演算部122b−K〜122b−N各々が持つ機能は、図11のModulo演算部122b−kと同じであるので、説明は省略する。
【0141】
<基地局装置b3の動作について>
図18は、本実施形態に係る多重信号生成部3bの動作を示すフロー図である。本実施形態に係る多重信号生成部3bの動作(図18)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2bの動作(図13)とを比較すると、図18ではステップS12の処理がない点、及び、ステップS108に代えてステップS208の処理がある点が異なる。しかし、他の処理(ステップS101、S103〜S107、S109〜S115)は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ処理の説明は省略する。
(ステップS208)多重信号生成部3bは、変数kが予め定められた閾値K以上であるか否かを判定する。変数kが閾値K以上であると判定した場合(Yes)、ステップS109に進む。一方、変数kが閾値Kより小さいと判定した場合(No)、ステップS110に進む。
【0142】
<閾値Kについて>
上記の閾値Kは、以下のように予め定められている。
図19は、本実施形態に係る閾値Kを説明する説明図である。この図において、横軸はModulo演算を行う最初の端末装置の端末番号k(端末装置MTkのk)を示す。つまり、端末装置MT1〜MT(k−1)宛の干渉除去シンボルにはModul演算を行わず、端末装置MTk〜MTN宛の干渉除去シンボルにはModul演算を行うことを示す。また、縦軸は誤り率を示す。
【0143】
符号L21を付した曲線L21は、Modulo演算を行うMTが多くなると、Modulo演算に伴うModulo Lossが増加して、誤りが多く発生してしまうことを示している。一方、符号L22を付した曲線L22は、Modulo演算を行うMTが少なくなると、干渉を電力効率良く除去できないために、誤りが増加してしまうことを示している。 符号L2を付した曲線L2は、曲線L21とL22の和をとったものである。本実施形態では、この曲線L2における最小値を閾値Kとする。
【0144】
このように、本実施形態によれば、干渉減算部113b−2〜113b−Nは、干渉除去順(端末装置MTkの順序)に従って、端末装置MTk宛の信号から干渉信号を減算する。Modulo演算部122b−K〜Modulo演算部122b−Nは、干渉除去順が閾値Kより大きい受信装置MTK〜MTN宛の信号に剰余演算を行う。つまり、本実施形態では、無線通システムは、干渉除去順が大きく統計的に干渉電力が大きい端末装置MTK〜MTN宛の信号にModulo演算を行い、干渉除去順が小さく干渉電力が小さい端末装置MT1〜MT(K−1)宛の信号にModulo演算を行わない。これにより、本実施形態では、干渉除去順が小さく干渉電力が低い場合には受信候補点が増加して信号検出性能が低下することを防止するとともに、干渉除去順が大きく統計的に干渉電力が高い場合には電力効率が高い通信を行うことができ、伝搬特性を向上させることができる。
【0145】
本実施形態において、RHは下三角形である。これは干渉除去される順番が先の端末装置MTk宛の信号は、他の端末装置MT1〜MT(k−1)宛の信号による干渉電力が統計的に小さくなることを示している。例えば、N=4の場合、端末装置MT1宛の信号は、他の端末装置からの干渉を受けない。また、端末装置MT2宛の信号は、端末装置MT1宛の信号からの干渉を受けるが、他の端末装置MT3〜MTN宛の信号からは受けない。端末装置MT3宛の信号は、端末装置MT1、MT2宛の信号による干渉を受けるが、端末装置MT4宛の信号からの干渉を受けない。端末装置MT4宛の信号は、端末装置MT1〜MT3宛の信号の全ての信号の干渉を受ける。このように、端末装置MTkの干渉除去順が大きいほど、多くの端末装置MT1〜MT(k−1)宛の信号からの干渉を受けることになり、干渉電力が統計的に大きくなる傾向がある。そのため、本実施携帯では、端末装置MTkの干渉除去順でModulo演算の有無を切り換えることで、統計的に干渉電力が大きい端末装置MTkに対してのみModulo演算を行って、伝搬特性を向上させることができる。
【0146】
<シミュレーション>
図20は、本実施形態に係る閾値Kと誤り率特性との関係を示す概略図である。この図において、横軸はModulo演算を行う最初のMTの端末番号kを示す。また、縦軸はBER(Bit Error Rate;ビット誤り率)を示す。このBERは、送信SNR(Signal Noise Ratio)が−1.5dBとした場合の全端末装置MT1〜MTNでのBERを平均したものである。
【0147】
図20は、図19に示した関係を具体的にシミュレーションした結果である。ここで、このシミュレーションでは、基地局装置b3及び端末装置MTの数を8(N=8)とし、誤り訂正符号にターボ符号、変調方式にQPSKを用いている。
図20は、k=6のときに最小値となり、閾値K=6とすることで誤り率が最小になることを示す。
また、図20では、K=1が全端末装置宛のシンボルにModulo演算を行うMU−MIMO THPの場合の誤り率特性を示し、最も右がModulo演算を全く行わない場合(線形ビームフォーミングの場合)の誤り率特性を示す。つまり、図20は、本実施形態に係る無線通信システム(例えば、K=6)が、従来技術と比較して、誤り率を小さくすることができていることを示す。
【0148】
(第4の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第4の実施形態について詳しく説明する。
上記第3の実施形態では、基地局装置b3が送信モード情報を送信し、端末装置M1kが送信モード情報を取得する場合について説明をした。本実施形態では、基地局装置b3が送信モード情報を送信せず、端末装置M1kが送信モード情報を検出する場合について説明をする。
本実施形態に係る無線通信システムを示す概略図は、第2の実施形態(図8)と同じであるので、説明は省略する。以下、本実施形態に係る基地局装置Bを基地局装置b4といい、端末装置MT1〜MTN各々を端末装置m4という。
【0149】
<基地局装置b4について>
図21は、本発明の第4の実施形態に係る基地局装置b4の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る基地局装置b4(図21)と第3の実施形態に係る基地局装置b3(図16)とを比較すると、多重信号生成部4b、フレーム選択部b44、及び端末数情報記憶部b49が異なる。しかし、他の構成要素(符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、CRS生成部b23、無線送信部b151〜b15N、アンテナb101〜b10N、無線受信部b161〜b16N、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27)が持つ機能は第3の実施形態と同じである。第3の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0150】
多重信号生成部4bは、送信モード情報の変調シンボルを配列しない点が、多重信号生成部3bと異なる。多重信号生成部4bの詳細については、後述する。
【0151】
フレーム選択部b44は、マッピング情報に従って、CRS生成部b13から入力されたアンテナb10kの共通参照シンボルを予め定められた周波数帯域に配置する。
また、フレーム選択部b44は、マッピング情報に従って、多重信号生成部4bから入力された端末装置MTk宛のシンボル列を、端末装置MTkに信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム選択部b44は、周波数帯域に配置した信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に無線送信部b15kに出力する。
【0152】
図22は、本実施形態に係る多重信号生成部4bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る多重信号生成部4b(図22)と第3の実施形態に係る多重信号生成部3b(図17)とを比較すると、フレーム構成部43bが異なる。しかし、他の構成要素(線形フィルタ算出部211b、干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、Modulo演算部122b−K〜122b−N、及び、線形フィルタ乗算部241b)が持つ機能は第3の実施形態と同じである。第3の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0153】
図23は、本実施形態に係るフレーム構成部43bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係るフレーム構成部43b(図23)と第2の実施形態に係るフレーム構成部23b(図12)とを比較すると、フレーム構成部43bが送信モード情報挿入部231bを備えない点が異なる。しかし、他の構成要素(DRS生成部232b、及びDRS挿入部233b)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
ただし、DRS生成部232bが用いるマッピング情報は、端末装置MTkの固有参照シンボルを、端末番号の昇順で時間順に配列することを示す情報である(図24参照)。ここで、端末番号は干渉除去順を示すので、端末装置MTkの固有参照シンボルの配列順序は、干渉除去順の順序である。
【0154】
<無線信号について>
図24は、本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。この図において、横軸は時間軸を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号を、各端末装置MT1〜MTN宛の無線信号に分けて表している。また、この図は、N=4の場合の図である。
【0155】
図24において、無線信号S21−1〜S24−1は、それぞれ、基地局装置b4がアンテナb101〜b104を用いて送信した無線信号であって端末装置MT1〜MT4宛の無線信号を示す。また、受信信号S21−2〜S24−2は、それぞれ、端末装置MT1〜MT4が受信した受信信号を示す。
【0156】
図24の無線信号S21−1〜S24−1は、各端末装置MT1〜4の固有参照シンボルの信号(DRS−MT1〜MT4)が、端末番号k(k=1〜4)の昇順で時間順に配列されていることを示す。
また、図24の受信信号S21−2〜S24−2は、端末装置MTkが端末装置MT1〜MTkの固有参照シンボルの信号を受信し、端末装置MT(k+1)〜MTNの固有参照シンボルの信号を受信しないことを示す。
【0157】
<移動局装置m4について>
図25は、本実施形態に係る端末装置m4を示す概略ブロック図である。この図は、端末装置m4のアンテナが1個の場合の図である。
本実施形態に係る端末装置m4(図25)と第1の実施形態に係る端末装置m1(図6)とを比較すると、フレーム分離部m421、端末数情報記憶部m425、及び送信モード検出部m424が異なる。しかし、他の構成要素(アンテナm101、無線受信部m111、伝搬路推定部m122、伝搬路補償部m123、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、フレーム構成部m132、及び無線送信部m141)が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略する。ただし、伝搬路推定部m122及び伝搬路補償部m123は、基地局装置b4のN個のアンテナとの伝搬路状態を推定し、推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて伝搬路補償を行う。
【0158】
フレーム分離部m421は、基地局装置b4から予め通知されたマッピング情報に基づいて、自装置宛の信号が配置される周波数帯域の信号を分離する。また、フレーム分離部m421は、分離した信号のうち自装置宛のデータ信号を伝搬路補償部m123に出力する。
また、フレーム分離部m421は、分離した信号のうち各端末装置MTk(自装置を含む)宛の固有参照シンボルの信号を、送信モード検出部m424に出力する。具体的には、各端末装置MTk宛の固有参照シンボルの信号が配置される時間帯に、予め定めた閾値以上の振幅の信号がある場合、その固有参照シンボルの信号を配列の時間順に送信モード検出部m424に出力する。また、フレーム分離部m421は、分離した信号のうち共通参照シンボルの信号を、伝搬路推定部m122に出力する。
【0159】
送信モード検出部m424は、固有参照シンボルの信号のうち信号の配列での時間順が一番遅い固有参照シンボルを、自装置宛の固有参照シンボルの信号を抽出する。送信モード検出部m424は、抽出した自装置宛の固有参照シンボルの信号、及びフレーム分離部m421から入力された共通参照シンボルの信号を伝搬路推定部m422に出力する。
【0160】
また、送信モード検出部m424は、フレーム分離部m421から入力された各端末装置MTk宛の固有参照シンボルの信号の数を計数(計数結果をK1とする)する。このK1は、端末装置m4の端末番号を示す。
また、端末数情報記憶部m425はあらかじめ、基地局装置b4と端末装置m4との間で共有する閾値Kを記憶している。
送信モード検出部m424は、端末数情報記憶部m425から読み出した情報が示す閾値KとK1とを比較する。比較の結果、K1≧Kと判定した場合には、送信モード検出部m424は、Modulo演算を行うと判定し、「送信モード1」を示す送信モード情報を生成する。K1<Kの場合には、送信モード検出部m424は、Modulo演算を行わないと判定し、「送信モード2」を示す送信モード情報を生成する。
送信モード検出部m424は、生成した送信モード情報を適応軟推定部1mに出力する。
【0161】
<受信信号について>
以下、端末装置MT1〜MTNが受信する受信信号について説明をする。ここでは、N=4の場合について説明をする。
DRS挿入部233bは、次式(15)で表す無線信号ベクトルp1〜p4で示す固有参照シンボルを時間順に挿入する。基地局装置b4は、挿入された固有参照シンボルの信号を送信する。
【0162】
【数14】
【0163】
式(15)では、左辺の各成分である無線信号ベクトルp1〜p4は、アンテナb101〜b104を用いて送信する無線信号を表す。また、右辺の行列は、行がアンテナb101〜b104の順に各アンテナを用いて送信する無線信号を表し、列が送信時刻t11〜t14の順に各送信時刻で送信する無線信号を表す。なお、送信時刻t11〜t14は、単位時間で連続した時刻であり、t11<t12<t13<t14である。また、行列の成分の値p1〜p4は、固有参照シンボルの信号p1〜p4である。
例えば、式(15)では、無線信号ベクトルp1は、送信時刻t11に固有参照シンボルの信号p1を送信し、送信時刻t12〜t14には無線信号を送信しないことを示す。また、式(15)では、無線信号ベクトルp2は、送信時刻t12に固有参照シンボルの信号p2を送信し、送信時刻t11、t13、t14には無線信号を送信しないことを示す(図24の無線信号S21−1〜S24−1参照)。
【0164】
この場合、端末装置MT1〜MT4は、次式(16)で表す受信信号ベクトルp1’〜p4’で示す受信信号を受信する(式(10)参照)。
【0165】
【数15】
【0166】
式(16)では、左辺の各成分である受信信号ベクトルp1’〜p4’は、それぞれ、端末装置MT1〜MT4が受信する受信信号を表す。また、右辺の行列は、行が端末装置MT1〜MT4の順に各端末装置が受信する受信信号を表し、列が受信時刻t21〜t24の順に各受信時刻で送信する無線信号を表す。なお、受信時刻t21〜t24は、単位時間で連続した時刻であり、t21<t22<t23<t24である。
例えば、式(16)では、受信信号ベクトルp1’は、端末装置MT1が受信時刻t21に信号r11*p1を受信し、受信時刻t22〜t24には受信信号を受信しないことを示す。また、式(16)では、受信信号ベクトルp2’は、端末装置MT2が受信時刻t11、t12にそれぞれ信号r12*p1、r22*p2を送信し、受信時刻t23、t24には無線信号を送信しないことを示す(図24の無線信号S21−2〜S24−2参照)。
【0167】
このように、本実施形態によれば、送信モード検出部m424は、固有参照信号が配置された位置が示す干渉処理順に基づいて、送信モード情報が「送信モード1」を示す情報であるか又は「送信モード2」を示す情報であるかを判定する。具体的には、送信モード検出部m424は、干渉処理順が閾値K以後の順序である場合に「送信モード1」であると判定し、干渉処理順が閾値Kより前の順序である場合に「送信モード2」であると判定する。これにより、本実施形態では、基地局装置b4が送信モード情報を送信しなくても、端末装置MTkは、送信モードを判定することができ、制御情報のオーバーヘッドを削減することができる。
また、本実施形態では、端末装置m4の干渉除去順と、DRSを送信する端末装置m4の時間順が一致する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、全ての端末装置m4が各干渉除去順の端末宛のDRSが、どの時刻にどの周波数で送信されるかを示す情報を記憶していればよい。
【0168】
(第5の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第5の実施形態について詳しく説明する。
上記第1〜4の実施形態では、各端末装置MT1〜MTNが、同一時刻、同一周波数で1個の信号系列(ストリームという)を受信する場合について説明をした。本実施形態では、各端末装置MT1〜MTNが複数個のストリームを受信する場合について説明をする
【0169】
<無線通信システムについて>
図26は、本発明の第5の実施形態に係る無線通信システムを示す概略図である。この図において、基地局装置Bは、N個の端末装置MT1〜MTNへ信号を送信している。ここで、各端末装置MT1〜MTNへの信号は、複数のストリームである。
なお、端末装置MTkはIk個のアンテナm10i(i=1〜Ik)を備え、基地局装置BはJ個(J≧Σk=1〜N Ik;Σk=1〜Nはk=1からk=Nについて和をとることを表す)のアンテナb10j(j=1〜J)を備える。
以下、基地局装置Bを基地局装置b5といい、端末装置MT1〜MTN各々を端末装置m5という。
【0170】
<基地局装置b5について>
図27は、本実施形態に係る基地局装置b5の構成を示す概略ブロック図である。この図は、同じ周波数帯域でN個の各端末装置宛の信号を送信するアンテナをJ個備える場合の図である。
本実施形態に係る基地局装置b5(図27)と第2の実施形態に係る基地局装置b2(図9)とを比較すると、多重信号生成部5b及びフレーム選択部b54が異なる。しかし、他の構成要素(符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、CRS生成部b23、無線送信部b151〜b15J、アンテナb101〜b10J、無線受信部b161〜b16J、フレーム分離部b28、及び伝搬路情報取得部b27)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
なお、多重信号生成部5bの詳細については、後述する。
【0171】
フレーム選択部b54は、マッピング情報に従って、CRS生成部b23から入力されたアンテナb10kの共通参照シンボルを、予め定められた周波数帯域に配置する。フレーム選択部b54は、周波数帯域に配置したアンテナb10j毎の信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に、各アンテナb10jに接続された無線送信部b25jに出力する。また、フレーム選択部b54は、マッピング情報に従って、多重信号生成部5bから入力されたシンボル列であってアンテナb10j(j=1〜N)毎の端末装置MTk宛のアンテナb10j毎のシンボル列を、端末装置MTkに信号を送信する周波数帯域に配置する。フレーム選択部b54は、周波数帯域に配置したアンテナb10j毎の信号を、それぞれ、予め定めた送信時間単位(フレーム)毎に、各アンテナb10jに接続された無線送信部b15jに出力する。
【0172】
図28は、本実施形態に係る多重信号生成部5bの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る多重信号生成部5b(図28)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2b(図10)とを比較すると、線形フィルタ算出部511b、Modulo演算切替決定部514b、フレーム構成部53b、及び線形フィルタ乗算部541bが異なる。しかし、他の構成要素(干渉算出部212b、干渉減算部113b−2〜113b−N、及び適応Modulo演算部12b−1〜12b−N)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。ただし、干渉算出部212b、干渉減算部113b−k、及び適応Modulo演算部12b−kは、第2の実施形態では1個のストリーム単位でシンボルに対して処理を行ったが、本実施形態ではIk個のストリーム単位でシンボルに対して処理を行う。例えば、変調シンボルskはIk個のストリームであり、Ik個の要素のベクトルで表される。
【0173】
線形フィルタ算出部511bは、CSIを入力される。線形フィルタ算出部111bは、入力されたCSIから伝搬行列Hを生成する。ここで、伝搬行列Hのp行q列要素hpq(p=1〜Σk=1〜N Ik、q=1〜J)は、アンテナb10qと端末装置MTkのアンテナm10iとの伝搬路推定値である。この伝搬行列は、次式(17)で表される。
【0174】
【数16】
【0175】
ここで、Tは転置を表す。また、Hkは、アンテナb10qと端末装置MTkとの伝搬行列を表し、Ik行J列の行列である。ここで、端末装置MT1〜MTk−1の伝搬行列H1〜Hk−1を、伝搬行列Hから抽出した行列をH−kとする。つまり、H−kは次式(18)で表される。
【0176】
【数17】
【0177】
[線形フィルタの算出処理について]
線形フィルタ算出部511bは、以下のように線形フィルタ(行列Q)を算出する。
まず、線形フィルタ算出部511bは、H−kを特異値分解する。H−kの特異値分解は、次式(19)で表される。
【0178】
【数18】
【0179】
ここで、行列U−kは、R1(=Σh=1〜k−1 Ih)行R1列のユニタリ行列である。また、行列Σ−kは、R1行J列の行列であり、対角成分(r1行r1列成分(r1=1〜R1))以外は「0」で対角成分が非負の行列である。また、行列VIm−kはJ行R1列の行列であり、行列Vker−kはJ行R2(=Σh=k〜N Ih)列の行列である。
H−kのランクは高々R1であることに対応して、[VIm−k,Vker−k]の最初のR1列を除いた行列Vker−kの列ベクトルが、ヌル空間(NullSpace)の基底ベクトルとなる。なお、これらの行列の間には、次式(20)の関係が成立する。
【0180】
【数19】
【0181】
ここで、IはR2行R2列の単位行列である。式(20)は、行列Vker−kをシンボルSk〜SN(SlはIl個のストリームのシンボルが要素のベクトル)を要素とするベクトルに乗算すると、端末装置MT1〜MT(k−1)に端末装置MTk〜MTN宛の信号が届かなくなることを示す。
図29は、本実施形態に係る無線信号の一例を示す概略図である。この図は、N=2の場合の一例である。この図は、基地局装置Bから送信された端末装置MT2宛の信号が、端末装置MT1に届いていないことを示す。
【0182】
図28に戻って、線形フィルタ算出部511bは、行列Hkに算出した行列Vker−kを乗算した行列HkVker−kを特異値分解して、端末装置MTkの受信フィルタ(行列UkH)及び個別フィルタ(行列VImk)を算出する。行列HkVker−kの特異値分解は、次式(21)で表される。
【0183】
【数20】
【0184】
ここで、行列UkHは、Ik行Ik列のユニタリ行列である。また、行列Σkは、Ik行R2列の行列であり、対角成分(r2行r2列成分(r2=1〜R2))以外は「0」で対角成分が非負の行列である。また、行列VImkはR2行Ik列の行列であり、行列VkerkはR2行R3(=R2−Ik=Σh=k+1〜N Ih)列の行列である。
HkVkerkのランクは高々Ikであることに対応して、[VImk,Vkerk]の最初のIk列を除いた行列Vkerkの列ベクトルが、ヌル空間(NullSpace)の基底ベクトルとなる。なお、これらの行列の間には、次式(22)の関係が成立する。
【0185】
【数21】
【0186】
ここで、IはR1行R1列の単位行列である。
線形フィルタ算出部511bは、算出した行列Vker−k及び行列VImkを用いて、線形フィルタを生成する。線形フィルタは、次式(23)の行列Qで表される。
【0187】
【数22】
【0188】
[干渉係数行列の算出処理について]
線形フィルタ算出部511bは、行列Hを行列Qに乗じた行列HQを用いて干渉係数行列B(干渉係数フィルタ)を算出する。行列HPは、次式(24)で表される。
【0189】
【数23】
【0190】
ここで、行列Tの要素Tpk(要素行列Tpkという)はIk行Ik列の行列である。式(24)は、要素行列Tpkを一個の要素として扱えば、HQが下三角行列であることを示す。なお、要素行列Tpkは端末装置MTk宛の信号が端末装置MTpに届いた場合の伝搬路状態を示す。
線形フィルタ算出部211bは、算出した行列Tから対角成分を抽出した対角行列Aを生成する。また、線形フィルタ算出部211bは、干渉係数行列B=A−1T−Iを算出する。ここで、A−1はAの逆行列を表し、Iは単位行列を表す。干渉係数行列Bは、次式(25)で表される。
【0191】
【数24】
【0192】
以上のように、線形フィルタ算出部511bは、線形フィルタの算出処理及び干渉係数行列の算出処理を行う。
線形フィルタ算出部511bは、算出した線形フィルタ(行列Q)を示す情報を、線形フィルタ乗算部541bに出力する。また、線形フィルタ算出部511bは、算出した受信フィルタ(行列UkH)を示す受信フィルタ情報を、フレーム構成部53bに出力する。また、線形フィルタ算出部211bは、算出した干渉係数行列Bを干渉算出部212b及びModulo演算切替決定部214bに出力する。
【0193】
Modulo演算切替決定部514bは、変調部b121〜b12Nから変調シンボルs1〜sNを入力される。ここで、変調シンボルskは、Ik個のストリームである。Modulo演算切替決定部514bは、線形フィルタ算出部511bから入力された情報が示す干渉係数行列及び変調シンボルs1〜sNに基づいて、次式(26)で表される干渉電力Pkを算出する(干渉電力算出処理という)。
【0194】
【数25】
【0195】
ここで、tr(X)は、Xのトレース(行列の対角成分の和)を表す。また、diag{X}は、行列Xの非対角成分を0とすることを表す。なお、送信電力行列Πlについては、干渉電力算出処理の動作(図34)と併せて後述する。
【0196】
Modulo演算切替決定部514bは、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0より大きい場合、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行うと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部514bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行うこと(送信モード1)を示す送信モード情報を、フレーム構成部53b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
一方、算出した干渉電力Pkが予め定めた閾値P0以下の場合、Modulo演算切替決定部514bは、端末装置MTk宛のシンボル列に対してModulo演算を行わないと判定する。この場合、Modulo演算切替決定部114bは、端末装置MTk宛の送信モード情報であってModulo演算を行わないこと(送信モード2)を示す送信モード情報を、フレーム構成部53b及び適応Modulo部12b−kに出力する。
【0197】
フレーム構成部53bは、Modulo演算切替決定部514bから入力された送信モード情報、及び、線形フィルタ算出部511bから入力された受信フィルタ情報を変調する。また、フレーム構成部53bは、端末装置m1毎の固有参照シンボルを生成する。
フレーム構成部53bは、適応Modulo部12b−kから入力された送信データシンボルνk、端末装置MTkの送信モード情報の変調シンボル、端末装置MTkの受信フィルタ情報の変調シンボル、及び、生成した端末装置MTkの固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順でアンテナb10j(j=jkS(=Σh=1〜k−1 Ih+1)〜jkE(=Σh=1〜k Ih))毎に配列する(端末装置MTk宛のアンテナ毎のシンボル列;図31参照)。
また、フレーム構成部53bは、変調部b121から入力された送信データシンボルν1(=s1)、及び、端末装置MT1の送信モード2を示す送信モード情報の変調シンボル、端末装置MT1の受信フィルタ情報の変調シンボル、及び、生成した端末装置MT1の固有参照シンボルを、マッピング情報が示す時間順でアンテナb10j(j=1〜Ij)毎に配列する(端末装置MT1宛のアンテナ毎のシンボル列)。
フレーム構成部53bは、配列した端末装置MT1〜N宛のアンテナb10j毎のシンボル列を、線形フィルタ乗算部541bに出力する。
【0198】
線形フィルタ乗算部541bは、同時刻に送信するシンボルであって、フレーム構成部53bから入力された端末装置MTkのシンボル列のシンボルSkを組み合わせたベクトルに対して、線形フィルタ算出部511bから入力された情報が示す線形フィルタQを乗算する。
線形フィルタ乗算部541bは、線形フィルタQを乗算した後のJ個の信号を、それぞれ、アンテナb10j毎のシンボル列として、フレーム選択部b54に出力する。
【0199】
図30は、本実施形態に係るフレーム構成部53bの構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態に係るフレーム構成部53b(図30)と第2の実施形態に係るフレーム構成部23b(図12)とを比較すると、受信フィルタ情報挿入部534bが異なる。しかし、他の構成要素(フレーム構成部23bは、送信モード情報挿入部231b、DRS生成部232b、及びDRS挿入部233b)が持つ機能は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0200】
受信フィルタ情報挿入部535bは、線形フィルタ算出部511bから入力された端末装置m1毎の受信フィルタ情報を変調する。受信フィルタ情報挿入部535bは、変調した端末装置m1毎の受信フィルタ情報の変調シンボルを、その端末装置m1のアンテナb10jkSのシンボル列であって送信モード情報挿入部231bから挿入されたシンボル列に挿入する。
【0201】
<無線信号について>
図31は、本実施形態に係る基地局装置b5が送信する無線信号の一例を示す概略図である。この図において、横軸は時間軸を示す。この図は、J=4、N=2、I1=I2=2の場合の無線信号を示す。また、この図は、同じ周波数帯域で送信された無線信号を、各端末装置宛のストリーム毎の無線信号に分けて表している。上二段はMT1宛のそれぞれのストリームを、下二段はMT2宛のそれぞれのストリームを表している。
【0202】
図31において、端末装置MT1宛の無線信号は、変調シンボルs1の信号S311、端末装置MT1の送信モード情報の信号S312(本実施形態では、送信モード2)、端末装置MT1の固有参照シンボルの信号S313(DRS−MT1)、及び、端末装置MT1の受信フィルタ情報の信号S314(MT1宛受信フィルタ情報)を含む信号である。
また、端末装置MT1宛の無線信号は、変調シンボルs1の信号S321、端末装置MT1の送信モード情報の信号S322(本実施形態では、送信モード2)、及び、端末装置MT2の固有参照シンボルの信号S323(DRS−MT2)を含む信号である。
【0203】
また、図31において、端末装置MT2宛の無線信号は、変調シンボルs2の信号S331、端末装置MT2の送信モード情報の信号S332、端末装置MT1の固有参照シンボルの信号S333(DRS−MT1)、及び、端末装置MT2の受信フィルタ情報の信号S334(MT2宛受信フィルタ情報)を含む信号である。
また、端末装置MT2宛の無線信号は、変調シンボルs2の信号S341、端末装置MT2の送信モード情報の信号S342、及び、端末装置MT2の固有参照シンボルの信号S343(DRS−MT2)を含む信号である。
図31において、信号311、S321、S331、S341は同時刻に送信されていることを示す。
【0204】
<端末装置m5について>
図32は、本実施形態に係る端末装置m5の構成を示す概略ブロック図である。この図は、端末装置MTkの構成を示し、アンテナがIk個の場合の図である。
本実施形態に係る端末装置m5(図32)と第1の実施形態に係る端末装置m1(図6)とを比較すると、受信フィルタ取得部m512、受信フィルタ乗算部m513、フレーム分離部m521、DRS用伝搬路推定部m5221、CRS用伝搬路推定部m5222が異なる。しかし、伝搬路補償部m123、送信モード取得部m124、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、及びフレーム構成部m132が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
なお、端末装置m5は、Ik個の無線受信部m111−1〜m111−Ik、無線受信部m141−1〜m141−Ikを備えるが、各々が持つ機能は、それぞれ、端末装置m1の無線受信部m111、無線受信部m141と同じである。
【0205】
受信フィルタ取得部m512は、基地局装置b5から予め通知されたマッピング情報に基づいて、無線受信部m111−1〜m111−Ikから入力された信号から自装置宛の受信フィルタ情報を抽出する。受信フィルタ取得部m512は、抽出した自装置宛の受信フィルタ情報を受信フィルタ乗算部m513に出力する。
受信フィルタ乗算部m513は、無線受信部m111−1〜m111−Ikから入力された信号に、受信フィルタ取得部m512から入力された受信フィルタ情報が示す受信フィルタを乗算する。これにより、乗算後の信号は、伝搬行列が行列Σkの場合の信号となる(式(22)参照)。受信フィルタ乗算部m513は、乗算後の信号をフレーム分離部m521bに出力する。
【0206】
フレーム分離部m521は、基地局装置b5から予め通知されたマッピング情報に基づいて、無線受信部m111−1〜m111−Ikから入力された信号から、自装置宛の信号を分離する。
フレーム分離部m521は、分離した信号のうち共通参照シンボルの信号を、CRS用伝搬路推定部m5222に出力する。また、フレーム分離部m521は、分離した信号のうち自装置の固有参照シンボルの信号を、DRS用伝搬路推定部m5221に出力する。また、フレーム分離部m521は、分離した信号のうち自装置宛のデータ信号を伝搬路補償部m123に出力する。
【0207】
DRS用伝搬路推定部m5221は、フレーム分離部m521から入力された固有参照シンボルの信号に基づいて、基地局装置b5が送信した自端末宛のIkストリームの無線信号がアンテナm101〜m10Ikで受信されるまでに通る伝搬路状態を推定する。ここで、推定された伝搬路状態を示す伝搬行列は、Σkとなる。DRS用伝搬路推定部m5221は、推定した伝搬路状態を示すCSIを、伝搬路補償部m523に出力する。
CRS用伝搬路推定部m5222は、フレーム分離部m521から入力された共通参照シンボルの信号に基づいて、基地局装置b5のアンテナb101〜b10N各々とアンテナm101〜m10Ik各々との伝搬路状態を推定する。CRS用伝搬路推定部m5222は、推定した伝搬路状態を示すCSIを、伝搬路状態情報生成部m131に出力する。
【0208】
<基地局装置b5の動作について>
図33は、本実施形態に係る多重信号生成部5bの動作を示すフロー図である。本実施形態に係る多重信号生成部5bの動作(図33)と第2の実施形態に係る多重信号生成部2bの動作(図13)とを比較すると、ステップS32の処理が異なる。しかし、他の処理(ステップS101、S103〜S125)は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ処理の説明は省略する。
【0209】
図34は、本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作の一例を示すフロー図である。この図は、図33のステップS32での処理動作を示す。本実施形態に係る干渉電力算出処理の動作(図34)と第2の実施形態に係る干渉電力算出処理の動作(図14)とを比較すると、ステップS32−1、S32−3、S32−6、及びS32−8の処理が異なる。しかし、他の処理(ステップS12−2、S12−4、S12−5、S12−7、S12−9、S12−10)は第2の実施形態と同じである。第2の実施形態と同じ処理の説明は省略する。
【0210】
(ステップS32−1) Modulo演算切替決定部514bは、端末装置MT1宛の変調シンボルs1のアンテナb101〜b10I1各々での電力を対角成分とする行列を、送信電力行列Qsとする。ここで、行列Qsの対角成分である電力は、フレーム単位でのシンボルの電力をアンテナ毎に平均した平均電力である。その後、ステップS12−2に進む。
(ステップS32−3) Modulo演算切替決定部514bは、ステップS32−6又はS32−8で算出した送信電力行列Πlを用いて干渉電力Pkを算出する(式(26)参照)。なお、k=2の場合、Modulo演算切替決定部514bは、送信電力行列Π1をステップS32−1で算出したQsとする。その後、ステップS12−4に進む。
【0211】
(ステップS32−6) Modulo演算切替決定部514bは、QMIを送信電力行列Πkとする。ここで、QMは剰余シンボルsk’の平均電力であり、信号点平面上(図37参照)において原点を中心としたI−chで[−τ/2,τ/2]、Q−chで[−τ/2,τ/2]に含まれる信号点に、信号が等確率で分布していると仮定した場合の電力である。また、Iは単位行列である。
(ステップS32−8) Modulo演算切替決定部514bは、Qs+Ψkを送信電力Tkとする。ここで、Qsは変調シンボルslのフレーム単位でのシンボルの電力を平均し、平均した平均電力を対角成分とする行列である。また、Qs+Ψkの各対角成分各々は、干渉除去シンボルsk−fkのアンテナ毎の平均電力を示す。その後、ステップS12−9に進む。
【0212】
このように、本実施形態によれば、多重信号生成部5bは、「送信モード1」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行った複数のストリームの信号と、「送信モード2」の端末装置MTk宛の信号であってModulo演算を行わない複数のストリームの信号と、を多重する。これにより、本実施形態では、無線通信システムは、干渉電力が小さい信号と干渉電力が大きい信号とを多重するとともに、干渉電力が大きい信号にはModulo演算を行って干渉電力が小さい信号にはModulo演算を行わずに信号を多重することができ、伝搬特性を向上させることができる。
【0213】
なお、上記第1、2、5の実施形態において、基地局装置b1、b2、b5は、「送信モード1」又は「送信モード2」を示す送信モード情報を生成する場合について説明をした。しかし、本発明はこれに限らず、基地局装置b1、b2、b5が「送信モード1」を示す送信モード情報のみ、又は、「送信モード2」を示す送信モード情報のみを生成してもよい。この場合、基地局装置b1、b2、b5又は端末装置m1、m5では、送信モード情報の入力又は通知があった場合にはその送信モード情報が示す送信モードで処理を行い、送信モード情報の入力又は通知がなかった場合には、入力又は通知される送信モード情報が示す送信モード以外の送信モードで処理を行う。
【0214】
また、上記第1、2、5の実施形態において、閾値P0=0としてもよい。この場合、基地局装置b1、b2、b5及び端末装置m1、m5は、端末装置m1、m5が干渉除去順が先の端末装置m1、m5から干渉をまったく受けていない(伝搬路が直交している)場合にはModulo演算を行わないとすることができる。また、基地局装置b1、b2、b5及び端末装置m1、m5は、少しでも干渉を受ける場合、つまり、他の端末装置m1、m5宛の信号の干渉によって送信電力が高くなる場合には、Modulo演算を行って送信電力を低くすることができる。もちろん、この場合、端末装置m1、m5から基地局装置b1、b2、b5に通知された伝搬路情報を用いて基地局装置b1、b2、b5が得た伝搬路が直交していればよい。基地局装置b1、b2、b5がデータ信号を送信する時点で、実際の伝搬路が完全に直交していなくてもよい。
【0215】
なお、上記各実施形態における通信はアップリンクに適用してもよい。また、上記各実施形態における通信は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)通信であってもよい。この場合、サブキャリア又は複数のサブキャリア単位で、上記各実施形態におけるシンボルの処理を行う。以下、この場合の構成について説明をする。
【0216】
図35は、OFDM処理を行う構成を示す概略ブロック図である。この図において、符号c1を付した構成c1は、IFFT(Inverse Fast Fourier transform;逆高速フーリエ変換)部c11、GI(Guard Interval;ガードインターバル)挿入部c12を含んで構成される。符号c2を付した構成c2は、GI除去部c21、FFT(Fast Fourier transform;高速フーリエ変換)部c22を含んで構成される。
IFFT部c11は、入力された信号に対して逆高速フーリエ変換を行って、GI挿入部c12に出力する。GI挿入部c12は、IFFT部c11から入力された信号にガードインターバルを挿入して、出力する。GI除去部c21は、入力された信号からガードインターバルを除去して、FFT部c22に出力する。FFT部c22は、GI除去部c21から入力された信号に対して、高速フーリエ変換を行って出力する。
【0217】
上記各実施形態において、ダウンリンクでOFDM通信を行う場合、例えば、基地局装置b1〜b5では、フレーム選択部b14、b24、b44、b54と無線送信部b151〜b15N各々の間に、図35の構成c1を設ける。また、この場合、端末装置m1では、無線受信部m111とフレーム分離部m121との間に、端末装置m5では無線受信部m111−1〜m111−Ik各々と受信フィルタ取得部m512及び受信フィルタ乗算部m513との間に、図35の構成c2を設ける。
また、上記各実施形態において、アップリンクでOFDM通信を行う場合、例えば、基地局装置b1〜b5では、無線受信部b161〜b16N各々と伝搬路情報取得部b17又はフレーム分離部b28との間に、図35の構成c2を設ける。また、この場合、端末装置m1、m4、m5では、フレーム構成部m132と無線送信部m141又は無線送信部m141−1〜m141−Ikとの間に、図35の構成c1を設ける。
【0218】
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5及び端末装置m1、m4、m5は、例えば、OFDM通信を行う場合には、共通参照シンボルの信号、固有参照シンボルの信号、及び送信モード情報の信号を、時分割ではなく周波数分割して送信してもよいし、CDMA(Code Division Multiple Access;符号分割多元接続)などで用いる直交符号やCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto Correlation)系列等の符号を用いて多重送信してもよいし、また、これらの組み合わせを用いて送信してもよい。
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5及び端末装置m1、m4、m5は、線形フィルタを用いた処理に代えて、例えば、非特許参考文献2記載のMMSE(Minimum Mean−Square Error;最小平均二乗誤差)規範に基づいた処理を行ってMU−MIMO THPを用いた通信を行ってもよいし、非特許参考文献2記載のオーダリングを用いた処理を行ってもよい。
【0219】
また、上記各実施形態において、端末装置m1、m4、m5は、伝搬行列Hの各行の成分の値を量子化したものを、CSIとして基地局装置b1〜b5に送信してもよい。また、端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5が量子化した値を示す量子化情報のパターン(Codebookという)を予め記憶し、端末装置m1、m4、m5が、そのパターンを識別する識別情報をCSIとして基地局装置b1〜b5に送信してもよい。
図36は、Codebookの一例を示す概略図である。
【0220】
また、上記実施形態において、干渉除去順とは、上述のように、基地局装置b1〜b5が逐次的に干渉を減算していく端末装置MTkの順番であり、MT1、MT2、MT3、・・・、MTNの端末番号順である。ここで、各端末装置MTk宛の無線信号は、少なくとも、より前の順番の端末装置MTl(l≦k−1)宛の無線信号が端末装置MTk宛に及ぼす干渉を、端末装置MTk宛の変調信号から減算することにより生成される。
【0221】
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5及び端末装置m1、m4、m5の一部の構成は、プロセッサ内で実行されてもよい。例えば、基地局装置b1〜b5において多重信号生成部1b〜5b及び無線送信部b151〜b15Jのみがプロセッサ内で実行されてもよいし、これらの構成に他の一部の構成を加えたものであってもよい。また、例えば、端末装置m1、m4、m5において適応軟推定部1m及び送信モード取得部m124或いは送信モード検出部m424のみがプロセッサ内で実行されてもよいし、これらの構成に他の一部の構成を加えたものであってもよい。
【0222】
また、上記第3の実施形態において、基地局装置b3は、端末番号kを示す情報を端末装置MTkに通知してもよい。例えば、基地局装置b3及び端末装置MTkが、予め閾値Kを記憶している場合、端末番号kと閾値Kを比較することによって、送信モードを判定することができる。
また、上記第3、4の実施形態において、端末装置m1、m4に複数の送信アンテナを設けてもよい。この場合、基地局装置b3、b4は、基地局装置b5と同様にして複数のストリームの信号を送信し、端末装置m1、m4は、端末装置m5と同様にして複数のストリームの信号を受信する。
【0223】
また、上記各実施形態において、基地局装置b1〜b5が備えるアンテナの本数と、端末装置m1、m4、m5が備えるアンテナの本数の合計とが、データストリームの数と一致する場合について説明をした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ある端末装置m1、m4、m5が物理的に2本のアンテナで信号を受信するが、受信した信号を1つの信号に合成するように設計されている場合、論理的には(端末装置m1、m4、m5や基地局装置b1〜b5の処理としては)アンテナが1本として扱ってもよい。
【0224】
なお、上述した実施形態における端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5の一部、例えば、符号部b111〜b11N、変調部b121〜b12N、多重信号生成部1b、2b、3b、4b、5b、CRS生成部b13、b23、フレーム選択部b14、b24、b44、b54、無線送信部b151〜b15J、無線受信部b161〜b16J、伝搬路情報取得部b17、線形フィルタ算出部111b、211b、511b、干渉算出部112b、212b、干渉減算部113b、113b−2〜113b−N、Modulo演算切替決定部114b、214b、514b、適応Modulo部12b、12b−2〜12b−N、フレーム構成部13b、23b、43b、53b、線形フィルタ乗算部141b、241b、541b、Modulo演算切替部121b、121b−k、Modulo演算部122b、122b−k、送信モード情報挿入部131b、231b、DRS生成部132b、232b、DRS挿入部133b、233b、無線受信部m111、m111−1〜m111−Ik、フレーム分離部m121、m421、伝搬路推定部m122、伝搬路補償部m123、送信モード取得部m124、適応復調部1m、復号部m124、伝搬路状態情報生成部m131、フレーム構成部m132、無線送信部m141、m141−1〜m141−Ik、Modulo演算切替部111m、Modulo演算部112m、復調部113m、フレーム分離部b28、伝搬路情報取得部b27、送信モード検出部m424、受信フィルタ情報挿入部534b、受信フィルタ取得部m512、受信フィルタ乗算部m513、フレーム分離部m521、DRS用伝搬路推定部m5221、及びCRS用伝搬路推定部m5222をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、端末装置m1、m4、m5又は基地局装置b1〜b5置に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
また、上述した実施形態における端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。端末装置m1、m4、m5及び基地局装置b1〜b5の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0225】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0226】
B、b1〜b5・・・基地局装置、MT1〜MTN、m1、m4、m5・・・端末装置、b111〜b11N・・・符号部、b121〜b12N・・・変調部、1b、2b、3b、4b、5b・・・多重信号生成部、b13、b23・・・CRS生成部、b14、b24、b44、b54・・・フレーム選択部b151〜b15J・・・無線送信部、b101〜b10J・・・アンテナ、b161〜b16J・・・無線受信部、b17・・・伝搬路情報取得部、111b、211b、511b・・・線形フィルタ算出部(係数算出部)、112b、212b・・・干渉算出部、113b、113b−2〜113b−N・・・干渉減算部、114b、214b、514b・・・Modulo演算切替決定部(剰余切換決定部)、12b、12b−2〜12b−N・・・適応Modulo部(適応剰余部)、13b、23b、43b、53b・・・フレーム構成部、141b、241b、541b・・・線形フィルタ乗算部(係数乗算部)、121b、121b−k・・・Modulo演算切替部、122b、122b−k・・・Modulo演算部(剰余演算部)、131b、231b・・・送信モード情報挿入部、132b、232b・・・DRS生成部、133b、233b・・・DRS挿入部(固有参照信号挿入部)、m101・・・アンテナ、m111、m111−1〜m111−Ik・・・無線受信部、m121、m421・・・フレーム分離部、m122・・・伝搬路推定部、m123・・・伝搬路補償部、m124・・・送信モード取得部、1m・・・適応復調部、m124・・・復号部、m131・・・伝搬路状態情報生成部、m132・・・フレーム構成部、m141、m141−1〜m141−Ik・・・無線送信部、111m・・・Modulo演算切替部、112m・・・Modulo演算部、113m・・・復調部、b28・・・フレーム分離部、b27・・・伝搬路情報取得部、b49・・・端末数情報記憶部、m425・・・端末数情報記憶部、m424・・・送信モード検出部、534b・・・受信フィルタ情報挿入部、m512・・・受信フィルタ取得部、m513・・・受信フィルタ乗算部、m521・・・フレーム分離部、m5221・・・DRS用伝搬路推定部、m5222・・・CRS用伝搬路推定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを備え、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置において、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記多重信号生成部は、複数の第1の前記受信装置宛の信号と、複数の第2の前記受信装置宛の信号と、を多重することを特徴とする請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記多重信号生成部は、
前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定し、前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を生成して出力する剰余切換決定部と、
前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の送信装置。
【請求項6】
前記剰余切換決定部は、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より大きい場合に前記受信装置を第1の受信装置であると決定し、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より小さい場合に前記受信装置を第2の受信装置であると決定することを特徴とする請求項5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、
前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、
前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、
を備え、
前記適応剰余部は、前記剰余切換決定部から入力されたそれぞれの送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部がそれぞれの干渉信号を減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号をそれぞれ生成することを特徴とする請求項5に記載の送信装置。
【請求項8】
前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項5乃至7に記載の送信装置。
【請求項9】
前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項5乃至7に記載の送信装置。
【請求項10】
前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、
前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、
前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、
前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部が減算した減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、
前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、
を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の送信装置。
【請求項11】
前記多重信号生成部は、
前記受信装置各々の固有参照信号を、当該受信装置宛の信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項4乃至10のいずれかに記載の送信装置。
【請求項12】
前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、
前記フィルタ算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、
予め定めた受信装置の順序に従って、当該受信装置宛の信号から干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、
前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置宛の信号に剰余演算を行う剰余演算部と、
前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置宛の信号であって前記干渉減算部が前記干渉信号を減算した信号と、前記剰余演算部が剰余演算を行った信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする請求項4に記載の送信装置。
【請求項13】
前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項12に記載の送信装置。
【請求項14】
前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項13に記載の送信装置。
【請求項15】
前記係数算出部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出し、
前記多重信号生成部は、
前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、
を備えることを特徴とする請求項13又は14に記載の送信装置。
【請求項16】
空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置において、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、
前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項17】
前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする請求項16に記載の受信装置。
【請求項18】
前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる情報であって前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を取得し、取得した送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする請求項16又は17に記載の受信装置。
【請求項19】
前記適応復調部は、前記送信モード判定部が、前記送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする請求項18に記載の受信装置。
【請求項20】
前記信号から受信装置各々の固有参照信号を抽出するフレーム分離部と、
前記フレーム分離部が抽出した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、
前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、
を備えることを特徴とする請求項16又は17に記載の受信装置。
【請求項21】
前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる受信装置各々の固有参照信号に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする請求項20に記載の受信装置。
【請求項22】
前記送信モード判定部は、前記固有参照信号が配置された位置が示す前記受信装置の順序であって、前記信号から干渉信号が減算された順序に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする請求項21に記載の受信装置。
【請求項23】
前記送信モード判定部は、前記受信装置の順序が閾値以後の順序である場合に前記受信装置を第1の受信装置であると判定し、前記受信装置の順序が閾値より前の順序である場合に前記受信装置を第2の受信装置であると判定することを特徴とする請求項22に記載の受信装置。
【請求項24】
前記適応復調部は、前記送信モード判定部が前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする請求項21乃至23のいずれかに記載の受信装置。
【請求項25】
前記固有参照信号は前記受信装置の順序で時間順に配置され、
前記送信モード判定部は、前記固有参照信号のうち前記受信装置の順序と対応付けされた順番の最後に受信した固有参照信号を選択し、
前記送信モード判定部が選択した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、
前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、
を備えることを特徴とする請求項21に記載の受信装置。
【請求項26】
複数の受信装置宛の信号を空間多重して送信する送信装置と、前記送信装置が送信した信号を受信する受信装置とを具備する無線通信システムにおいて、
前記送信装置は、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備え、
前記受信装置は、
前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、
前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項27】
複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置における送信制御方法において、
多重信号生成部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する過程を有することを特徴とする送信制御方法。
【請求項28】
空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置における受信制御方法において、
送信モード判定部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する第1の過程と、
適応復調部が、前記第1の過程での判定結果に基づいて、前記信号を復調する第2の過程と、
を有することを特徴とする受信制御方法。
【請求項29】
複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置に用いられるプロセッサにおいて、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とするプロセッサ。
【請求項30】
空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置に用いられるプロセッサにおいて、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、
前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、
を備えることを特徴とするプロセッサ。
【請求項1】
複数の送信アンテナを備え、複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置において、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記多重信号生成部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記多重信号生成部は、複数の第1の前記受信装置宛の信号と、複数の第2の前記受信装置宛の信号と、を多重することを特徴とする請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記多重信号生成部は、
前記受信装置が第1の受信装置であるか又は第2の受信装置であるかを決定し、前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を生成して出力する剰余切換決定部と、
前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の送信装置。
【請求項6】
前記剰余切換決定部は、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より大きい場合に前記受信装置を第1の受信装置であると決定し、他の受信装置宛の信号による干渉電力が閾値より小さい場合に前記受信装置を第2の受信装置であると決定することを特徴とする請求項5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、
前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、
前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、
を備え、
前記適応剰余部は、前記剰余切換決定部から入力されたそれぞれの送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部がそれぞれの干渉信号を減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号をそれぞれ生成することを特徴とする請求項5に記載の送信装置。
【請求項8】
前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項5乃至7に記載の送信装置。
【請求項9】
前記剰余切換決定部が生成した送信モード情報であって第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項5乃至7に記載の送信装置。
【請求項10】
前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、
前記係数算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、
前記受信装置宛の信号から、干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、
前記剰余切換決定部から入力された送信モード情報に基づいて、前記干渉減算部が減算した減算した信号から、前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号を生成する適応剰余部と、
前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、
を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の送信装置。
【請求項11】
前記多重信号生成部は、
前記受信装置各々の固有参照信号を、当該受信装置宛の信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項4乃至10のいずれかに記載の送信装置。
【請求項12】
前記多重信号生成部は、
前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、前記受信装置各々に関する干渉係数を算出する係数算出部と、
前記フィルタ算出部が算出した干渉係数と、他の受信装置宛の信号と、に基づいて前記受信装置宛の信号に対する干渉であって他の受信装置宛の信号による干渉信号を算出する干渉算出部と、
予め定めた受信装置の順序に従って、当該受信装置宛の信号から干渉算出部が算出した他の受信装置宛の信号による干渉信号を減算する干渉減算部と、
前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置宛の信号に剰余演算を行う剰余演算部と、
前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置宛の信号であって前記干渉減算部が前記干渉信号を減算した信号と、前記剰余演算部が剰余演算を行った信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とする請求項4に記載の送信装置。
【請求項13】
前記受信装置の順序が閾値より大きい第1の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項12に記載の送信装置。
【請求項14】
前記受信装置の順序が閾値より小さい第2の受信装置であることを示す送信モード情報の信号を、前記信号に挿入するフレーム構成部を備えることを特徴とする請求項13に記載の送信装置。
【請求項15】
前記係数算出部は、前記複数の受信装置各々との伝搬路状態情報に基づいて、線形フィルタ、及び前記受信装置各々に関する干渉係数を算出し、
前記多重信号生成部は、
前記フレーム構成部が挿入した送信モード情報の信号と、前記適応剰余部が生成した前記第1の受信装置宛の信号と前記第2の受信装置宛の信号と、に対して、前記係数算出部が算出した線形フィルタを乗算する係数乗算部と、
を備えることを特徴とする請求項13又は14に記載の送信装置。
【請求項16】
空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置において、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、
前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項17】
前記電力抑圧処理は、剰余演算であることを特徴とする請求項16に記載の受信装置。
【請求項18】
前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる情報であって前記第1の受信装置と第2の受信装置とを識別する送信モード情報を取得し、取得した送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする請求項16又は17に記載の受信装置。
【請求項19】
前記適応復調部は、前記送信モード判定部が、前記送信モード情報に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする請求項18に記載の受信装置。
【請求項20】
前記信号から受信装置各々の固有参照信号を抽出するフレーム分離部と、
前記フレーム分離部が抽出した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、
前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、
を備えることを特徴とする請求項16又は17に記載の受信装置。
【請求項21】
前記送信モード判定部は、前記信号に含まれる受信装置各々の固有参照信号に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする請求項20に記載の受信装置。
【請求項22】
前記送信モード判定部は、前記固有参照信号が配置された位置が示す前記受信装置の順序であって、前記信号から干渉信号が減算された順序に基づいて、前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定することを特徴とする請求項21に記載の受信装置。
【請求項23】
前記送信モード判定部は、前記受信装置の順序が閾値以後の順序である場合に前記受信装置を第1の受信装置であると判定し、前記受信装置の順序が閾値より前の順序である場合に前記受信装置を第2の受信装置であると判定することを特徴とする請求項22に記載の受信装置。
【請求項24】
前記適応復調部は、前記送信モード判定部が前記第1の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行って復調し、前記送信モード判定部が前記第2の受信装置宛の信号であると判定した場合に前記信号に剰余演算を行わないで復調することを特徴とする請求項21乃至23のいずれかに記載の受信装置。
【請求項25】
前記固有参照信号は前記受信装置の順序で時間順に配置され、
前記送信モード判定部は、前記固有参照信号のうち前記受信装置の順序と対応付けされた順番の最後に受信した固有参照信号を選択し、
前記送信モード判定部が選択した固有参照信号に基づいて、伝搬路状態を推定する伝搬路推定部と、
前記伝搬路推定部が推定した伝搬路状態を示す伝搬路状態情報に基づいて、前記信号に対して伝搬路補償する伝搬路補償部と、
を備えることを特徴とする請求項21に記載の受信装置。
【請求項26】
複数の受信装置宛の信号を空間多重して送信する送信装置と、前記送信装置が送信した信号を受信する受信装置とを具備する無線通信システムにおいて、
前記送信装置は、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備え、
前記受信装置は、
前記第1の受信装置宛の信号であるか又は前記第2の受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、
前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項27】
複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置における送信制御方法において、
多重信号生成部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する過程を有することを特徴とする送信制御方法。
【請求項28】
空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置における受信制御方法において、
送信モード判定部が、信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する第1の過程と、
適応復調部が、前記第1の過程での判定結果に基づいて、前記信号を復調する第2の過程と、
を有することを特徴とする受信制御方法。
【請求項29】
複数の受信装置宛の信号を、空間多重して送信する送信装置に用いられるプロセッサにおいて、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号と、前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号と、を多重する多重信号生成部を備えることを特徴とするプロセッサ。
【請求項30】
空間多重された複数の受信装置宛の信号を受信する受信装置に用いられるプロセッサにおいて、
信号の電力を抑圧する電力抑圧処理を行った第1の前記受信装置宛の信号であるか又は前記電力抑圧処理を行わない第2の前記受信装置宛の信号であるかを判定する送信モード判定部と、
前記送信モード判定部での判定結果に基づいて、前記信号を復調する適応復調部と、
を備えることを特徴とするプロセッサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公開番号】特開2011−166317(P2011−166317A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24782(P2010−24782)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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