説明

送気/送水シリンジ及び内視鏡用送気/送水シリンジ

【課題】送水と送気を1回の操作で、しかも量に制限のない連続の送気/送水を容易に行い、また内視鏡装置及び送気/送水に関する機器の携帯化、簡易化が図られるようにする。
【解決手段】シリンジ口14を有する筒体11の側面部に、液体導入口15を設け、ピストン体12をピストン部12a、軸部12b、押部12cから構成し、この押部12cにA通気孔Vを形成し、軸部12bに通気路18を形成し、ピストン部12aに、その側面まで貫通するB通気孔Vを形成する。上記筒体11の内面部材17に、所定の移動範囲DでB通気孔Vと筒体内部とを連通させる内面通路17bを形成する。上記ピストン体12を元の位置へ復帰させるバネ20を設け、このピストン体12の復帰時に、A通気孔V、通気路18、B通気孔V及び内面通路17bを介して空気を導入しかつ導入口15から洗浄水を導入し、シリンジ口14から送水、送気を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送気/送水シリンジ、特に内視鏡等に配設された送気/送水管を利用して送気/送水をするために用いられ、送気/送水装置として携帯できる送気/送水シリンジの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
図6には、従来の内視鏡装置の構成が示されており、内視鏡(スコープ)は、例えば固体撮像素子を備えた先端部1A、湾曲部を介して設けられた操作部1B等を有する。この内視鏡には、先端面に配置された観察窓を洗浄するために、送気/送水管3aと、この送気/送水管3aから分岐する送水管3b及び送気管3cが配設され、操作部1Bに、送水管3bと送気管3cの切替えと送気/送水の操作をする送気/送水ボタン4aが設けられる。
【0003】
また、上記送水管3bには、洗浄水を入れた送水タンク6を介して、送気/送水用のポンプ8が接続され、送気管3cには、直接、送気/送水用のポンプ8が接続される。なお、この操作部1Bには、吸引ボタン4b、カメラシャッタボタン4cが配置されると共に、内視鏡内に配設された処置具挿通チャンネルに処置具を導入するための鉗子口5等が設けられる。
【0004】
このような内視鏡装置によれば、上記送気/送水ボタン4aの送水操作(例えば2段目押し)をすると、送気管3cが閉じて送水管3bが開状態となり、送水タンク6内の洗浄水が先端面のノズルから観察窓へ向けて噴射され、送気操作(例えば1段目押し)をすると、送水管3bが閉じて送気管3bが開状態となり、ポンプ8からの送気が同様に行われる。このような送水と送気により、観察窓に付着した汚れ等を除去することで、被観察体の観察状態を良好に保つことができる。なお、上記説明は機械式バルブの例であるが、電気式ボタン(スイッチ)と開閉バルブを用いて送気送水を行うこともできる。
【特許文献1】特開2003−135391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の内視鏡装置において送気/送水を行う場合は、上述のように送気/送水用ポンプ(装置)8が必要となり、この送気/送水用ポンプ8を配置した施設以外の場所では、内視鏡を使用することが困難であるという問題があった。
【0006】
内視鏡装置の携帯化は、設備の整った施設以外の各種場所での使用、ベッドサイドでの使用、緊急時の使用等を可能にし、また構成の簡易化は、コストの低減に繋がり、送気、送水に関する機器の携帯化、簡易化ができれば、利便性の高い内視鏡装置を提供できることになる。
【0007】
また、一般に用いられるシリンジでは、手動でピストンを押し操作することで、送水又は送気のいずれかを行うことができるが、送水と送気の両方を1回の操作で行うことはできず、また供給量の制限のない連続した送気/送水を容易に行うことはできなかった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、送水と送気を1回の操作で行うことができ、かつ供給量に制限のない連続した送気/送水を容易に行うことができる送気/送水シリンジ及び内視鏡装置の携帯化、簡易化に繋がる送気/送水に関する機器の携帯化、簡易化を得ることが可能になる内視鏡用送気/送水シリンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る送気/送水シリンジは、先端部にシリンジ口(注入口)を配置し、かつ側面部に液体の導入口を設けた筒体と、この筒体内を往復動するピストンであって、押部のA通気孔、このA通気孔に連通してピストン内部を通る通気路、及びこの通気路から上記ピストン側面まで貫通するB通気孔を形成したピストン体と、このピストン体の所定の移動範囲で上記B通気孔と上記筒体内部とを連通させる内面通気路を形成し、それ以外の移動範囲でB通気孔を塞ぐための筒体内面部材と、上記ピストン体の押部と上記筒体との間に配置され、押し操作した上記ピストン体を元の位置へ復帰させるバネと、を有してなり、上記ピストン体の復帰時に、上記筒体内(閉空間)へ、上記A通気孔、上記ピストン内通気路、B通気孔及び内面通気路を介して空気を導入しかつ上記液体導入口から液体を導入することにより、上記シリンジ口から送気/送水が行えるようにしたことを特徴とする。
請求項2の発明は、内視鏡の送気/送水ポートに上記シリンジ口を管接続し、請求項1記載の送気/送水シリンジを内視鏡用として用いることを特徴とする。
【0010】
本発明の構成によれば、まず押部によりピストン体を筒体先端まで押して、親指等を離すと、バネによってピストン体は元の位置へ復帰するが、このとき、親指等が押部から離れてA通気孔が開放されるので、このA通気孔からピストン内通気路、B通気孔、内面通路を介して筒体内へ空気が導入される。その後、このピストン体が所定の移動範囲(D)を移動すると、B通気孔が筒体内面部材で塞がれ、A通気孔から筒体内までの通気路が閉じられることになり、その結果、流体導入口から流体(例えば洗浄水)が筒体内へ導入される。この流体は、重みによって筒体の下側(シリンジ口側)へ溜まる。従って、シリンジ口を下向きにした状態で、押部により押しピストン体を押すことにより、シリンジ口から最初に送水を行い、その後に送気をすることができ、逆にシリンジ口を上向きにすれば、先に送気、後に送水を行うことができる。
【0011】
また、内視鏡装置の場合は、内視鏡の送気/送水ポートに上記シリンジ口が接続されるので、内視鏡内の送気/送水管を介して先端部のノズルから観察窓に対し送水と送気を行うことができる。そして、上記ピストン体は、バネによって自動復帰するので、押し操作を繰り返すことにより、筒体内の容量に関係なく、連続した送水及び送気を実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の送気/送水シリンジによれば、送水と送気を1回の押し操作で行うことができると共に、押し操作を繰り返すことで、供給量に制限のない連続した送気/送水を容易に行うことができる。
また、内視鏡用送気/送水シリンジによれば、送気/送水に関する機器の携帯化、簡易化、ひいては内視鏡装置の携帯化、簡易化が可能となり、設備の整った施設以外の各種場所、ベッドサイド、緊急時等における内視鏡の使用が容易となり、利便性の高い内視鏡装置が得られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図4には、実施例に係る送気/送水シリンジを内視鏡装置に適用した場合(内視鏡用送気/送水シリンジ)の構成が示されており、各図に示されるように、送気/送水シリンジは、円筒状の筒体11とピストン体(スライダー)12を有してなる。この筒体11は、その先端面にシリンジ口(注入口)14が設けられると共に、中央から先端側の側面に流体導入口15が設けられる。また、この筒体11の内面には、図4(A)に示されるように、上記流体導入口15を確保するための開口17aと、筒体11のシリンジ口側の上記ピストン体12の所定の移動範囲Dに対応した長さの内面通路17bを形成した筒状の筒体内面部材17が配置される。
【0014】
一方、ピストン体12は、上記筒体11(内面部材17)の内面に密着しながら摺動(往復動)する所定厚さの円板状のピストン部(摺動部)12a、このピストン部12aを支持し上記筒体11の内径よりも小さい外径とされた円柱棒状の軸部12b、この軸部12bの後側に配置され、親指等で押してピストン動作をするための円板状の押部12cからなる。なお、上記軸部12bは、ピストン部12aと同じ太さ(径)にしてもよい。
【0015】
また、ピストン体12において、上記押部12cの中心部にA通気孔Vが形成されると共に、このA通気孔Vに連通するように、上記軸部12bの径方向中心部に軸部通気路(管路)18が形成され、この軸部12bの先端側には、上記通気路18からピストン部12aの側面まで貫通する孔で、移動範囲Dにて上記内面通路17bに連通可能となるB通気孔Vが形成される。更に、上記筒体11の後側のフランジ部11aとピストン体12の押部12cとの間に(それぞれに係合する状態で)、押した押部12cを元の位置へ戻す方向へ付勢するバネ(スプリング)20が設けられる。そして、このバネ20にて戻されるピストン体12の基本位置は、筒体11の内部先端から上記移動範囲Dに移動範囲Dを加えた長さの位置となり、この移動範囲D,Dの長さを調整することで、1回の押し操作で注入できる送水量と送気量を設定することができる。
【0016】
また、図1乃至図3に示されるように、上記筒体11の液体導入口15には、連結チューブ22を介して液体(洗浄水等)を収納する液体貯留タンク(容器)23が取り付けられる。一方、内視鏡25内に、送気/送水管26が配設され、その操作部に送気/送水ポート26Pが設けられており、この送気/送水ポート26Pに、上記筒体11先端のシリンジ口14が接続される。なお、上記送気/送水管26及びポート26Pとして、従来の送気管又は送水管(3b,3c)及びこれらのポートを利用することができる。
【0017】
このような内視鏡用送気/送水シリンジによれば、図1又は図5(A)に示されるように、基本状態では、筒体11内の下側に洗浄水、上側に空気が収められた状態となり、この基本状態から、1回の押し操作で送水と送気を行うことができる。即ち、A通気孔Vを塞ぎながら押部12cを親指等で(バネ20に抗して)押すと、図5(A),(B)のように、筒体11内の洗浄水がシリンジ口14から送気/送水ポート26Pを介して送気/送水管26へ供給され、これによって、洗浄水が内視鏡先端面のノズルから観察窓へ噴射され、観察窓の汚れ等を洗浄することができる。続いて、押部12cを更に押すと、図5(C),(D)のように、筒体11内の空気がシリンジ口14から送気/送水ポート26Pを介して送気/送水管26へ供給され、これによって、空気が内視鏡先端面のノズルから観察窓へ噴射され、観察窓の水分を除去することができる。
【0018】
また、図2又は図5(D)の状態から、親指等を押部12cから離して押し操作を解除すると、図5(E),(F)のように、A通気孔Vが開放されると共に、バネ20によってピストン体12が後側へ戻されるので、外側の空気がA通気孔Vから軸部通気路18、B通気孔V、内面通路17bを介して筒体11の内部へ流入する。続いて、ピストン部12aが液体導入口15の位置を通過し、上記B通気孔Vが内面通路17bの上方位置を通過し、閉じられると、図5(G),(H)のように、液体導入口15から液体貯留タンク23内の洗浄水が筒体11の内部へ流入することになり、ピストン体12が基本位置へ戻ったときには、図1のように、所定量の洗浄水と空気が導入されセットされた状態(準備完了)となる。従って、再度、押部12cを押し操作すれば、同様に送水と送気が行われることになり、この操作の繰返しにより、連続して複数回の、そして量に制限のない送水及び送気を行うことが可能となる。
【0019】
上記実施例において、シリンジ口14(送気/送水シリンジ)を下向きにした場合を説明したが、このシリンジ口14を上向きにし、先に送気、後に送水を行うこともできる。また、上記筒体内面部材17における内面通路17bの範囲DとB通気孔Vを塞ぐ範囲Dの位置を逆にし、かつ液体導入口15を筒体11の最先端部へ配置し、ピストン体12の復帰時に、先に液体、後に空気を導入するように構成してもよい。
【0020】
更に、上記実施例では、ピストン体12はバネ20の長さに相応した図1等で示した基本位置で停止するが、この停止動作を確実とし、安定して行われるようにするためのストッパ機構を、筒体11と軸部12bとの間に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る内視鏡用送気/送水シリンジの構成を示し、洗浄水と空気を導入セットした基本状態の断面図である。
【図2】実施例の内視鏡用送気/送水シリンジの構成を示し、押し操作したときの断面図である。
【図3】実施例の内視鏡用送気/送水シリンジの構成を示し、図(A)は基本状態(操作前)の斜視図、図(B)は押し操作したときの斜視図である。
【図4】実施例の送気/送水シリンジの構成を示し、図(A)は筒体内面部材の斜視図、図(B)は筒体内面部材の構成を分かり易くしたシリンジ全体の断面図である。
【図5】実施例の送気/送水シリンジにおける送水、送気動作を示す説明図である。
【図6】従来の内視鏡装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
11…筒体、 12…ピストン体、
12a…ピストン部(摺動部)、 12b…軸部、
12c…押部、 14…シリンジ(注入)口、
15…液体導入口、 17…筒体内面部材、
17b…内面通路、 18…軸部通気路、
20…バネ、 23…流体貯留タンク、
26…送気/送水管、 26P…送気/送水ポート、
…A通気孔、 V…B通気孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にシリンジ口を配置し、かつ側面部に液体の導入口を設けた筒体と、
この筒体内を往復動するピストンであって、押部のA通気孔、このA通気孔に連通してピストン内部を通る通気路、及びこの通気路から上記ピストン側面まで貫通するB通気孔を形成したピストン体と、
このピストン体の所定の移動範囲で上記B通気孔と上記筒体内部とを連通させる内面通気路を形成し、それ以外の移動範囲でB通気孔を塞ぐための筒体内面部材と、
上記ピストン体の押部と上記筒体との間に配置され、押し操作した上記ピストン体を元の位置へ復帰させるバネと、を有してなり、
上記ピストン体の復帰時に、上記筒体内へ、上記A通気孔、上記ピストン内通気路、B通気孔及び内面通気路を介して空気を導入しかつ上記液体導入口から液体を導入することにより、上記シリンジ口から送気/送水が行えるようにした送気/送水シリンジ。
【請求項2】
内視鏡の送気/送水ポートに上記シリンジ口を管接続し、請求項1記載の送気/送水シリンジを内視鏡用として用いる内視鏡用送気/送水シリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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