説明

送水口装置

【課題】 火災発生時に送水ホースを接続させる壁埋込型の送水口装置であって、保守点検や部品の交換作業等が容易に且つ確実に行える構造にする。
【解決手段】 本体ケース1の前面送水口部2に弁座部材4を着脱自在に螺合させてこの弁座部材4に送水口部2よりも小径の逆止弁5を圧着させると共に、弁座部材4の前端部に送水ホースの口金接続用円筒部材6を着脱自在に螺合させ、さらに、壁体部に設けた本体ケース1を埋設している埋設孔Bの開口端を飾り板7によって閉止して飾り板7に設けている通孔8から口金接続用円筒部材6を突出させてなる送水口装置において、弁座部材4をその前端部が上記通孔8に達した長さに形成して、交換時等におけるこの弁座部材4と口金接続用円筒部材6との取り外し作業が円滑に行えるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の壁体部内に埋設されて、火災発生時に送水ホースを接続させ、高圧水を送水ホースに供給する送水口装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、このような壁埋込型送水口装置としては、例えば、特許文献1に記載したように、前面に左右一対の送水口部を設けると共に後面にこれらの送水口部に連通する給水管接続口部を設け且つ送水口部の外周面に前方に向かって固定ソケット体を突設してなる中空の本体ケースを建築物の壁体部に設けた埋込孔内に埋設し、この埋込孔の前端開口部を、左右両側部に上記送水口部に対応させて円形孔を設けている飾り板によって閉止すると共に、円形孔に押え筒の前端フランジ部を係止させてこの押え筒の後端部を上記固定ソケット体の前端部内周面に螺合させることによって飾り板を壁体部の前面に圧着させ、且つ、上記押え筒の前端フランジ部の外周面に飾りリングを着脱自在に螺合させ、さらに、上記各送水口部に弁座部材を着脱自在に装着すると共に本体ケース内に送水口部よりも小径の逆止弁を前後動自在に配設してこの逆止弁を弁座部材の弁座部にスプリング力によって圧着させ、各弁座部材に送水ホースの口金を着脱自在に接続させる口金接続用円筒部材の後端部を着脱自在に螺合させてこの口金接続用円筒部材を上記飾りリングの中央孔を通じて外部に突出させた構造のものが知られている。
【特許文献1】特許第2699144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の送水口装置によれば、逆止弁は本体ケースの送水口部よりも小径に形成され且つこの逆止弁の弁座部材の外径を押え筒の内径よりも小径に形成しているので、口金接続用円筒部材や弁座部材及び逆止弁の補修点検や交換時には、押え筒の前端フランジ部の外周面に螺合している飾りリングを取り外すことによって、口金接続用円筒部材を弁座部材から取り外すと共に、この口金接続用円筒部材を取り外したのち、弁座部材を本体ケースの送水口部から取り外し、しかるのち、逆止弁を押え筒内を通じて外部に取り出すことができるが、弁座部材は押え筒の後方側に配設されていて、送水口部の内周面にその外周面を螺合させた構造としているので、その取り外しを行うには、押え筒内を通じて送水口部まで工具等を挿入して極めて狭い空間部内で行わなければならず、その作業が煩雑で手間を要するといった問題点があった。
【0004】
また、この埋込孔の前端開口部を閉止する飾り板を固定するには、本体ケースにおける上記送水口部の外周面に固定ソケット体の後端部を螺合等によって取り付け、この固定ソケット体の前端部に、飾り板の円形孔に前端フランジ部を係止させている押え筒の後端部を螺合させることによって行っているために、構造が複雑化してコスト高になるばかりでなく、これらの固定ソケットや押え筒の存在によって本体ケースに対する逆止弁や弁座部材の組込作業等が円滑に行えなくなるといった問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、本体ケースに対する弁座部材や口金接続用円筒部材の組込みが容易に行えると共に補修点検や交換等も円滑に行え、また、簡単な構造によって本体ケースの埋込孔の前端開口部を閉止する飾り板の固定を行えるようにした送水口装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の送水口装置は、請求項1に記載したように、前面両側部に送水口部を設け、後面にこれらの送水口部に連通した給水管接続口部を設けている中空の本体ケースにおける上記各送水口部に弁座部材を装着すると共に本体ケース内にスプリング力によって弁座部材に圧着している逆止弁を配設し、さらに、上記各送水口部の前面側に送水ホースの口金を着脱自在に接続させる口金接続用円筒部材を配設してこれらの口金接続用円筒部材の後端を上記弁座部材の前端に連設してなる送水口装置であって、上記本体ケースは、建築物の壁体部に設けた埋込孔内に埋設されていると共にこの埋込孔の前端開口部を上記壁体部の前面にその外周部を当接状態で固定している飾り板によって閉止してあり、この飾り板の両側部に設けている通孔に飾りリングの短筒部を挿入して該飾りリングの外周フランジ部を通孔の開口端周縁部の前面に係止させていると共にこの飾りリング内を通じて上記口金接続用円筒部材をそれぞれ前方に向かって突出させている一方、上記弁座部材は上記送水口部よりも小径の弁座部の外周部に送水口部の内周面に着脱自在に螺合した後側大径部と、弁座部の前端に一体に設けられて上記飾りリングの短筒部の内周面に着脱自在に螺合した前側大径部とを有し、且つ、上記通孔を通じて外部に取り出し可能に構成している。
【0007】
このように構成した送水口装置において、請求項2に係る発明は、上記弁座部材と口金接続用円筒部材とを別体に形成して弁座部材の前側大径部の内周面に口金接続用円筒部材の後端部外周面を着脱自在に螺合させていると共に、弁座部材の前側大径部の前端部を飾り板に設けている通孔から前方に臨ませていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の送水口装置によれば、本体ケースの送水口部に弁座部材の後側大径部を着脱自在に螺合し、この弁座部材の前側大径部の前端に口金接続用円筒部材の後端を連設していると共に、上記本体ケースを埋設している建築物の壁体部における埋込孔の前端開口部を閉止した飾り板において、口金接続用円筒部材に対応して該飾り板に設けている通孔に飾りリングの外周フランジ部を係止させ、この飾りリングの短筒部を上記口金接続用円筒部材の前側大径部の外周面に螺合させていると共に飾りリングを通じて上記口金接続用円筒部材を前方に突出させているので、口金接続用円筒部材や弁座部材及び逆止弁の補修点検や交換時には、短筒体を取り外したのち、外部に突出している口金接続用円筒部材を回動させることによって簡単に取り外すことができる。その上、口金接続用円筒部材と弁座部材とを一体に形成しておくことにより、又は、互いに連結しておくことにより、弁座部材も簡単に送水口部から取り外すことができる。
【0009】
さらに、本体ケースの送水口部に弁座部材の後側大径部を螺合させることによって装着したのち、飾りリングの短筒部を飾り板に設けている通孔に挿入して弁座部材の前側大径部に螺合させれば、この飾りリングの外周フランジ部を通孔の前面に係止させた状態にして飾り板を強固に且つ簡単に埋込孔の開口端前面に圧着、固定させることができる。従って、全体の構造を簡素化することができるばかりでなく、飾りリングを取り付ける前においては、本体ケースの送水口部の前方側には広い空間部を設けておくことができるので、本体ケースに対する逆止弁や弁座部材、口金接続用円筒部材の組込作業が円滑に行うことができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明によれば、上記弁座部材と口金接続用円筒部材とを別体に形成して弁座部材の前側大径部の内周面に口金接続用円筒部材の後端部外周面を着脱自在に螺合させていると共に、弁座部材の前側大径部の前端部を飾り板に設けている通孔から前方に臨ませているので、口金接続用円筒部材は飾り板から前方に突出しているから、この口金接続用円筒部材を弁座部材の前端大径部から取り外す作業や該前端大径部に連結させる作業が簡単に行える上に、弁座部材においてもその前側大径部の前端部を飾り板の通孔内から前方に臨ませているから、本体ケースの送水口部からの取り外し作業が容易に且つ迅速に行うことができ、弁座部材や逆止弁等の保守点検や交換作業が能率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、1は前面両側部に円形の送水口部2、2を設けていると共に後面中央部にこれらの送水口部2、2に連通した給水管接続口部3を設けている中空の本体ケースで、その送水口部2、2を前方に向けた状態で建築物の壁体部Aに設けている埋込孔B内に配設し、この本体ケース1の外周面と埋込孔Bとの間にモルタルCを充填することによって埋込孔B内に固定されている。さらに、この本体ケース1の上記送水口部2、2には、弁座部材4が取り外し可能に装着されていると共に、これらの送水口部2、2の後方側における本体ケース1の両側空間部内には、スプリング17の弾圧力によって弁座部材4の便座部4aに圧着して常態においては、送水口部2、2を密閉している逆止弁5、5をそれぞれ配設している。
【0012】
また、上記弁座部材4の前端開口部に送水ホースの口金接続用円筒部材6の後端開口部を連通させた状態で連設していると共に、上記埋込孔Bの前端開口部を上記壁体部Aの前面にその後面外周部を当接させた状態で固定している横長長方形状の飾り板7によって閉止している。この飾り板7の両側部には、上記本体ケース1の前面両側部に設けている送水口部2、2に同軸線上に対応させて送水口部2、2と略同径の通孔8、8を設けてあり、これらの通孔8、8の開口端周縁部の前面にそれぞれ飾りリング9、9の外周フランジ部9aの後面を係止させた状態にして該飾りリング9、9の内周部から後方に突設している短筒部9bを通孔8内に挿入し、上記弁座部材4の前端部に着脱自在に連結している。
【0013】
さらに詳しく説明すると、この弁座部材4は本体ケース1の送水口部2の内径よりも小径の弁座部4aを中央にしてこの弁座部4aの外周部に前後方向に向かって外径が送水口部2の内径と略同一径に形成された筒形状の前後大径部4b、4cをそれぞれ突設していると共にこれらの前後大径部4a、4c間に送水口部2の前端面にシール材10を介して当接した鍔部4dを一体に形成している。また、この弁座部材4の上記前後大径部4b、4cの外周面にはそれぞれ雄螺子部11、12が形成されていて、後側大径部4cの雄螺子部12を上記送水口部2の内周面に形成している雌螺子部13に着脱自在に螺合させていると共に、上記前側大径部4bをその前端部が飾り板7の上記通孔8内に達する長さに形成して該前端部を通孔8から前方に臨ませた状態にしてその雄螺子部11に上記飾りリング9の短筒部9bの内周面に形成している雄螺子部14を着脱自在に螺合させている。なお、通孔8を弁座部材4の最大径部よりも大径に形成して弁座部材4を該通孔8を通じて挿入、抜き取り可能に構成している。
【0014】
上記逆止弁5は、円板形状の弁部5aの後面中心部に後方に向かって弁軸5bを突設してなり、この弁軸5bを本体ケース1の後壁部内面に送水口部2の中心に向かって突設しているガイド筒部15に前後摺動自在に挿入、支持させていると共にこのガイド筒部15と弁部5a間に上述したようにスプリング17を介在させてこのスプリング17の弾発力により弁部5aを上記弁座部材4の弁座部4aに圧着させ、この弁座部材4の開口部を閉止している。
【0015】
弁座部材4の前端開口部に接続している上記口金接続用円筒部材6は、その後端部外周面に弁座部材4の前側大径部4bの内周面に設けている雌螺子部18に着脱自在に螺合した雄螺子部19を設けている。弁座部材4の前側大径部4bは上述したように、飾り板7の上記通孔8内に配設されてあり、従って、この弁座部材4の前側大径部4bに後端部を螺合によって着脱自在に接続している口金接続用円筒部材6は、飾り板7の通孔8から前方に突出している。
【0016】
なお、上記口金接続用円筒部材6の前端部外周には送水ホース(図示せず)の口金を螺合により着脱自在に螺子する内螺子を有する締付環20が回転自在に装着されてあり、その開口端は常態においはてカバー21によって閉鎖されている。
【0017】
このように構成した送水口装置は、火災発生時にカバー21を外したのち、締付環20に送水ホースの口金を螺合させることによって接続すると、その接続時の口金の螺進によって該口金に設けている押圧金具で弁座部材4がスプリング17の力に抗して押し開かれ、給水管接続口部3に接続している給水管を通じて本体ケース1内に供給されている高圧水が口金接続用円筒部材6内を通じて送水ホースに供給され、消火作業を行うことができる。
【0018】
また、本体ケース1の送水口部2に配設している弁座部材4や逆止弁5等の保守点検や交換を行う場合には、まず、口金接続用円筒部材6をその後端部と弁座部材4の前側大径部4bとの螺合部を弛める方向に回動させることによって取り外す。この場合、口金接続用円筒部材6は飾り板7の前面から前方に大きく突出しているので、その取り外し作業が簡単且つ確実に行うことができる。
【0019】
次いで、飾りリング9を口金接続用円筒部材6の前側大径部4bに対する短筒部9bの螺合を解くことによって飾り板7の通孔8内から取り外す。この飾りリング9を除去すると、その外周フランジ部9aによる飾り板7の通孔8との係止が解かれて飾り板7が壁体部Aから取り外されるが、壁体部Aの埋込孔Bに対して送水口装置を組み込んだのち、飾り板7の外周端面を壁体部Aにおける埋込孔Bの開口端周縁部にパテ材等によって固着しておいてもよい。
【0020】
飾りリング9を取り外したのち、弁座部材4をその後側大径部4cと本体ケース1の送水口部2との螺合部を弛める方向に回動させることにより取り外す。この場合、弁座部材4の前側大径部4bの前端部は壁体部Aの前面から前方に突出しているので、上記口金接続用円筒部材6と同様にその取り外し作業が簡単且つ確実に行うことができる。この弁座部材4の除去後、本体ケース1内に配設している逆止弁5を外部に取り出す。
【0021】
次に、弁座部材4や逆止弁5、口金接続用円筒部材6等を組み込むには、まず、逆止弁5を本体ケース1の送水口部2を通じて本体ケース1内に挿入し、その弁軸5bをガイド筒部15に挿入すると共にスプリング16を配設したのち、弁座部材4を飾りリング9の通孔8を通じて埋込孔B内で開口している本体ケース1の送水口部2に向かって挿入し、その後側大径部4cの外周面に形成している雄螺子部12を送水口部2の内周面に形成している雌螺子部13に螺合させることによって装着する。この際、弁座部材4は、その前側大径部4bの前端部を常に壁体部Aの前面から前方に突出させる長さに形成されているので、この前側大径部4bの前端部を回転操作しながら簡単且つ確実に弁座部材4を送水口部2に装着することができる。
【0022】
次いで、飾りリング9を飾り板7の通孔8内に挿入してその短筒部9bを弁座部材4の前側大径部4bの外周面に螺合させて外周フランジ部9aを飾り板7の通孔8の周縁部前面に係止させると共に口金接続用円筒部材6の後端部外周面に形成している雄螺子部19を弁座部材4の前側大径部4bの内周面に形成している雌螺子部18に螺合させることによって取り付ける。この際、弁座部材4の前側大径部4bの前端開口部は飾り板7の通孔8から前方に臨んでいて外部に露出しているので、この弁座部材4に対する口金接続用円筒部材6の取り付け作業は円滑に行うことができる。
【0023】
なお、弁座部材4と口金接続用円筒部材6とは別体に形成して螺合により互いに接続しているが、弁座部材4の前端に口金接続用円筒部材6の後端を連通した状態で一体に形成しておいてもよく、このように構成しておくと送水口装置の構造が一層簡素化することができると共に組み立て、分解作業も容易に且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明送水口装置の要部を横断した状態の平面図。
【図2】その正面図。
【符号の説明】
【0025】
1 本体ケース
2 送水口部
3 給水管接続口部
4 弁座部材
5 逆止弁
6 口金接続用円筒部材
7 飾り板
8 通孔
9 飾りリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面両側部に送水口部を設け、後面にこれらの送水口部に連通した給水管接続口部を設けている中空の本体ケースにおける上記各送水口部に弁座部材を装着すると共に本体ケース内にスプリング力によって弁座部材に圧着している逆止弁を配設し、さらに、上記各送水口部の前面側に送水ホースの口金を着脱自在に接続させる口金接続用円筒部材を配設してこれらの口金接続用円筒部材の後端を上記弁座部材の前端に連設してなる送水口装置であって、上記本体ケースは、建築物の壁体部に設けた埋込孔内に埋設されていると共にこの埋込孔の前端開口部を上記壁体部の前面にその外周部を当接状態で固定している飾り板によって閉止してあり、この飾り板の両側部に設けている通孔に飾りリングの短筒部を挿入して該飾りリングの外周フランジ部を通孔の開口端周縁部の前面に係止させていると共にこの飾りリング内を通じて上記口金接続用円筒部材をそれぞれ前方に向かって突出させている一方、上記弁座部材は上記送水口部よりも小径の弁座部の外周部に送水口部の内周面に着脱自在に螺合した後側大径部と、弁座部の前端に一体に設けられて上記飾りリングの短筒部の内周面に着脱自在に螺合した前側大径部とを有し、且つ、上記通孔を通じて外部に取り出し可能に構成していることを特徴とする送水口装置。
【請求項2】
弁座部材と口金接続用円筒部材とを別体に形成して弁座部材の前側大径部の内周面に口金接続用円筒部材の後端部外周面を着脱自在に螺合させていると共に、弁座部材の前側大径部の前端部を飾り板に設けている通孔から前方に臨ませていることを特徴とする請求項1に記載の送水口装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−200248(P2006−200248A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13972(P2005−13972)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000155838)株式会社立売堀製作所 (4)
【Fターム(参考)】