説明

送風機の回転速度検出方法及び回転速度検出装置

【課題】既存の送風機に容易に取付可能で、かつ安価な回転速度検出方法及び回転速度検出装置を提供する。
【解決手段】送風機10で発生される風の脈動周波数をセンサ16で検出し、該脈動周波数を送風機10の回転する羽根11bの枚数で除することによって、送風機10の羽根の回転速度を求める回転速度検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等を冷却するために用いる送風機の回転速度検出方法及び回転速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送風機の回転速度検出方法としては、送風機内部にタコメータ、エンコーダ、レゾルバ等の検出器を設ける方法(特許文献1)、羽根の先端に磁石を埋め込み、その通過をセンサで検出する方法(特許文献2)、ループアンテナで漏れ磁束を検出して送風機の回転を検知する方法(特許文献3)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−022181
【特許文献2】実開平1−058166
【特許文献3】特開2006−226694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来の方法には次のような問題があった。
送風機内部に回転検出器を設ける方法においては、送風機を設計・製造する際に速度検出器を設けなければならず、後から付け加えることができない。
また、羽根先端に磁石を埋め込む方法も同様で、既存の送風機に後から加工するのは容易ではない。
さらに、ループアンテナで漏れ磁束を検出する方法においては、実際の漏れ磁束の信号波形が原理通りの理想的な波形ではなく歪んだものになるため、オシロスコープ等測定器に備えられた周波数測定機能に因らねばならず、全体としては高価なものになってしまう。
【0005】
送風機は羽根によって空気を送り出し、空気を循環させたり、対象物を冷却したりする。万一、送風機に異常があって停止すると、機器や環境に重大な影響を及ぼす恐れがあるため、重要な箇所には、予め回転異常検出器付きの送風機が使用されることが多い。
しかしながら、通常の送風機を設置した後に、回転異常検出機能が必要になることもある。
【0006】
本発明は、こうした従来の問題を解決し、既存の送風機に容易に取付可能で、かつ安価な回転速度検出方法及び回転速度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の問題を解決するために、本発明では、送風機で発生される風の脈動周波数をセンサを用いて検出し、求めた周波数を送風機の羽根の枚数で除算することによって送風機の回転速度を求めるようにしたことにある。
また、本発明では、風の脈動が送風機のケーシングにも伝わることを利用し、ケーシングの脈動周波数を、センサを用いて検出し、求めた周波数を送風機の羽根の枚数で除算することによって、送風機の回転数を求めるようにしたことにある。
また、本発明では、羽根によって発生する風の脈動が送風機の空気取り入れ口及び吐き出し口付近にも存在することを利用し、取り入れ口又は吐き出し口付近に一部を固定され、なおかつ風の脈動によって可逆的に可動する小片を設けて、該小片の位置変化を、センサを用いて検出するようにしたことにある。
また、本発明では、ケーシングの一部に風圧によって形状が変化する素材を用いて、該素材の形状変化を、センサを用いて検出するようにしたことにある。
さらにまた、本発明では、ケーシングが無い送風機において、羽根の外周の延長線上に、同様なセンサを設置し検出するようにした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、送風機で発生される風の周波数を直接検出するので、送風機の回転速度を精度良く求めることができる。
請求項2の発明によれば、送風機のケーシングの脈動周波数を検出するようにしたので、周波数の検出が極めて容易である。
請求項3の発明によれば、センサと演算回路を備えた簡単な装置で送風機の回転速度を検出することができる。
請求項4の発明によれば、送風機の空気取り入れ口又は吐き出し口付近にセンサを設置することで、送風機の回転速度が求められるので、装置の着脱が極めて容易である。
請求項5の発明によれば、センサと演算回路を備えた簡単な装置で送風機の回転速度を検出することができる。
請求項6の発明によれば、送風機の羽根で発生される風の脈動を風洞側面の圧力変化で検出するので、送風機の回転速度を精度良く求めることができる。
請求項7の発明によれば、送風機の回転速度の異常を容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態による送風機の回転速度検出装置を示し、送風機の風洞側面に十分小さな穴を開けセンサを取付けた状態を例示した斜視図である。
【図2】7枚羽根の送風機に、図1のようにコンデンサマイクを取り付けたときの検出波形である。
【図3】本発明の他の実施の形態による送風機の回転速度検出装置を示し、送風機の空気吐き出し口付近にヒンジを用いてセンサを取付けた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施の形態による送風機の回転速度検出装置を示し、送風機の風洞に薄いフィルムを貼着した開口部を設けセンサを取付けた状態を例示した斜視図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】図4のA-A線断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態による送風機の回転速度検出装置を示し、送風機にセンサおよび演算回路装置を固定するためのケーシングを例示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図4ないし図6は、電子機器等を冷却するために用いられる送風機10である。この送風機10は、内蔵された図示しないモータによって回転する回転体11と、この回転体11を支持するケーシング12とで構成されている。前記回転体11は、筒状の回転部分11aの周面に円周方向に一定間隔で、放射状に複数枚の羽根11bを備えたものである。前記ケーシング12は、内側に略円形の開口部を有する一対の枠体13a,13bと円筒状の風洞部14で構成されている。この風洞部14の中心軸線上に回転体11を支持している。
前記送風機10には、ケーシング12の円筒状風洞部14に開口部14aを設け、この開口部14aを覆うようにして、薄いフィルム15を貼着してある。このフィルム15にセンサ16を貼り付けて、送風機10作動時の空気の圧力によるフィルム15の位置変化をセンサ16で検出するようにしたもので、羽根11bの通過に起因する空気の粗密波を検出することができる。
薄いフィルム15に代えて、ゴムや薄い金属等を用いても良い。風洞部14の素材が十分薄い場合は、直接センサ16を取付けても良い。
【0011】
一般に、送風機10のある定点を通過する羽根11bの単位時間当たりの回数と、送風機10の回転数(回転速度)の関係は、次の式で表される。
【0012】
n=60・f/a ・・・式(1)
n:回転数[rpm]、f:羽根の通過回数[回/秒]、a:羽根の枚数[枚]
【0013】
送風機の風洞部14あるいは空気の流路では、羽根11bが通過することによって、空気の粗密波が発生するが、その周波数は羽根11bの通過回数fと同じである。
【0014】
その粗密波をセンサ16、たとえばコンデンサマイク、脈動ピックアップ、加速度センサや圧電センサなどで検出して羽根11bの通過回数fを求め、式(1)に従って計算すれば、演算によって送風機10の回転速度を求めることができる。
【0015】
図1は、本発明の他の実施の形態で、風洞部14の側面に小さな穴を開けセンサ16を設置し、直接空気の粗密波を検出する方法である。以下図4と同一部分は同符号を付してある。
【0016】
図2は、7枚羽根の送風機に図1のようにコンデンサマイクを取付けたときの検出波形である。
この例では、周波数は約322Hzなので、式(1)によって計算すると、回転速度は約2765rpmである。
【0017】
風洞部14の空気取り入れ口17aおよび空気吐き出し口17b付近の空気中においても、空気の粗密波が発生しているので、コンデンサマイクや気圧センサなどを直接近傍に設置して検出する方法や、可逆的に変形する素材を介して加速度センサや角度センサなどを設置して検出する方法がある。
【0018】
図3は、空気吐き出し口17bに脈動センサ16をヒンジ18で固定する概念図である。ヒンジ18はピン部19を中心に小片19aを風洞部14等に付け、他方の小片19bにセンサ16を取り付けたものである。小片19bは風の脈動によってピン部19を軸として位置が可逆的に変化する。小片19bの位置をセンサ16によって電気信号に変換するものである。
【0019】
図7は、センサ部と演算回路部とを一つの筐体に収納した回転速度検出器20を、送風機ケーシング風洞部14に固定した状態を示す図である。
【0020】
なお、検出した周波数あるいは周期をもとに、送風機の回転数を求める方法としては、マイコンによって演算する方法がある。マイコンによれば、予め定めておいた速度を下回ったり、上回ったりしたときに、警告を発するのは容易である。
【0021】
予め定めておいた時間と、検出した周期を、タイマなどを用いて比較し、警告を発する方法もある。
【0022】
それらの回路装置を送風機に取り付ければ、取扱いの容易な回転異常アラーム付き送風機を提供できる。
【0023】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、送風機としては、軸流ファン、シロッコファン、クロスフローファンなど、各種の送風機に適用することができる。また、脈動を検出できるものとしては、加速度センサ、角度センサ、圧電素子等各種のセンサを適用することができる。など、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
10 送風機
11 回転体
11a 回転部分
11b 羽根
12 ケーシング
14 風洞部
15 薄いフィルム
16 センサ
17a 空気取り入れ口
17b 空気吐き出し口
18 ヒンジ
20 回転速度検出器






【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機で発生される風の脈動周波数をセンサで検出し、
該脈動周波数を前記送風機の羽根の枚数で除することによって、
前記送付機の回転速度を求めることを特徴とする送風機の回転速度検出方法。
【請求項2】
送風機のケーシングの脈動周波数をセンサで検出し、
該脈動周波数を前記送風機の羽根の枚数で除することによって、
前記送付機の回転速度を求めることを特徴とする送風機の回転速度検出方法。
【請求項3】
送風機で発生される風の脈動周波数を検出するセンサ部と、
検出した脈動周波数を前記送風機の羽根の枚数で除して前記送風機の回転数を求める演算回路部と、
からなることを特徴とする送風機の回転速度検出装置。
【請求項4】
前記脈動周波数を検出するセンサ部は、前記送風機の空気取り入れ口又は吐き出し口付近に一片を固定され、風の脈動によって位置が可逆的に変化する小片と、該小片の位置を電気信号に変換する素子とからなることを特徴とする請求項3に記載の送風機の回転速度検出装置。
【請求項5】
送風機のケーシングの脈動周波数を検出するセンサ部と、
検出した脈動周波数を前記送風機の羽根の枚数で除して前記送風機の回転数を求める演算回路部と、
からなることを特徴とする送風機の回転速度検出装置。
【請求項6】
前記脈動周波数を検出するセンサ部は、前記送風機の風洞側面に設けられ、圧力を受けて形状が可逆的に変化する部材と、該部材上に設けられた位置を電気信号に変換する素子とからなることを特徴とする請求項5に記載の送風機の回転速度検出装置。
【請求項7】
前記送風機の回転数が、予め定めた範囲から外れたときに警報を発するアラーム部を備えたことを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の送風機の回転速度検出装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−145251(P2011−145251A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8102(P2010−8102)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)