説明

逃し弁

【課題】樹脂ボデーから成る逃し弁において、外装体と固定するためのビス穴を樹脂ボデーに有することに樹脂割れ等の危険性が伴う。
【解決手段】その樹脂ボデーに取り付けビス穴を有さず、樹脂ボデーとは材質を異とする板を別部品として組み込み、この板にビス穴を設ける構成としたことにより、樹脂ボデーにビス穴を有することで生まれてくる課題および懸念事項を解消することができ、ボデー材質を金属から樹脂に変更することによるコスト低減・質量低減を図る共に、原材料費の著しい変動による生産計画の狂いを未然に防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯機や電気温水器などの貯湯式給湯装置に使用する圧力逃し弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の逃し弁においては、そのボデー材質は耐食銅合金に代表されるような金属から成り、このボデーにタッピングビス穴加工を施し、これを貯湯タンクを収納する外装体に固定するための取り付け用ビス穴として利用していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−105530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、ボデー材質が金属であるためコスト高・質量大になると共に、金属材料の値段変動が近年著しいため中期計画を立て難いという課題を有していた。
【0004】
上の課題を解決するためにボデー材質を樹脂化する動きが見られるが、樹脂ボデーゆえに、外装体に固定するための取り付けビス穴をタッピングにできない、セルフタッピングビスを用いると組立時のトルク管理が複雑になる、またメンテナンス時の不安要素が残存するという新たな課題が浮上していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明における逃し弁は、その樹脂ボデーに取り付けビス穴を有さず、樹脂ボデーとは材質を異とする板を別部品として組み込み、この板にビス穴を設ける構成とした。
【0006】
本構成によって、樹脂ボデーにビス穴を有することで生まれてくる課題および懸念事項を解消することができ、ボデー材質を金属から樹脂に変更することによるコスト低減・質量低減を図る共に、原材料費の著しい変動による生産計画の狂いを未然に防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の逃し弁は、ボデー材質を金属から樹脂に変更することによるコスト低減・質量低減を図ると共に、原材料費の著しい変動による生産計画の狂いを未然に防ぐことができる。かつ、樹脂ボデー特有の課題および懸念事項を解消することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、湯水を貯湯するタンクと、前記タンクを収納する外装体と、前記タンク内の湯水を加熱する加熱装置と、前記タンクの上部に配設しタンク内の膨張水を排出する手動で開閉可能な操作レバーを有した逃し弁と、前記逃し弁を前記外装体に固定する逃し弁固定具とを備えた貯湯式給湯装置において、前記逃し弁のボデーが複数の樹脂成型品から構成され、かつ前記樹脂ボデーは、前記固定具との固定用ビス穴を有していない構成とした。
【0009】
これによって、樹脂ボデーに下穴抜き加工を施した上で、セルフタッピングビスを用いた場合に生じてくる、組立時のトルク管理の複雑化、またメンテナンス時の締め過ぎによ
る樹脂ボデーの破損および締め不足による水漏れ等の不安要素を解消することができる。
【0010】
第2の発明は、特に第1の発明において、逃し弁は、その樹脂ボデーとは材質を異とする板を備え、前記板は固定具との固定用ビス穴を有している構成とした。
【0011】
これによって、樹脂ボデー特有の不安要素を解消することができつつ、従来の金属ボデー時に構成してきた外装体と逃し弁固定具のビス締めを可能とすることができる。
【0012】
第3の発明は、特に第2の発明において、逃し弁に備えられた板は、樹脂ボデーの組立時の共締め構成とした。
【0013】
これによって、従来の金属ボデー時と同様の構成をしつつ、部品点数と組立時の工数の増加を最小限に抑えることができる。
【0014】
第4の発明は、特に第2の発明において、逃し弁に備えられた板は、樹脂ボデーへの埋め込み構成とした。
【0015】
これによって、従来の金属ボデー時と同様の構成をしつつ、部品点数と組立時の工数の増加を最小限に抑えることができる。
【0016】
第5の発明は、特に第1の発明において、逃し弁は、その樹脂ボデーに固定具との固定用貫通穴を有し、前記固定具との連結はボルト−ナットによる構成ことした。
【0017】
これによって、樹脂ボデー特有の不安要素を解消することができつつ、従来の金属ボデー時に構成してきた外装体と逃し弁固定具の連結を可能とすることができる。
【0018】
第6の発明は、特に第1の発明において、逃し弁は、その樹脂ボデーと固定具に、互いに勘合する形状を有する構成とした。
【0019】
これによって、樹脂ボデー特有の不安要素を解消することができつつ、従来の金属ボデー時に構成してきた外装体と逃し弁固定具の連結を可能とすることができる。
【0020】
第7の発明は、特に第1から第6の発明のいずれかにおいて、逃し弁は、その樹脂ボデーあるいは板に、操作レバーの回転角度を規制することができる形状を有する構成とした。
【0021】
これによって、操作レバーが回転することによる操作性の低下を防ぐことができる。
【0022】
第8の発明は、特に第1から第7の発明のいずれかにおいて、逃し弁は、その樹脂ボデーあるいは板に、加熱手段により設定圧力の異なる場合の識別可能な形状を有して構成とした。
【0023】
これによって、必要最小限の部品点数を入れ替えるのみで多様な適用機種に同様の機器を使用することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における逃し弁の図を示すものである。
【0026】
図1において、弁箱1とバネカバー2−1は樹脂成型品である。これらはボルト3によって組み立てられており、固定板4は共締めとなる。樹脂成型品である弁箱1とバネカバー2には固定用ビス穴5−1を有しておらず、変わりに固定板4にそれを有している。ビス穴は逃し弁の設定圧力による識別を可能とするために複数存在する。なお、固定板4は操作レバー6の回転止めも兼ねている。
【0027】
図2は、本発明の第2の実施の形態における逃し弁の図を示すものである。
【0028】
図2において、図1と同様に、弁箱1とバネカバー2−2は樹脂成型品であり、これらはボルト3によって組み立てられている。バネカバー2−2は、ビス穴5−2を有した差込板7をインサートできるようなインサート部8を有している。このとき、インサート部8の形状によって操作レバー6の回転運動を拘束することも可能である。
【0029】
図3は、本発明の第3の実施の形態における逃し弁の図を示すものである。
【0030】
図3において、図1と同様に、弁箱1とバネカバー2−3は樹脂成型品であり、これらはボルト3によって、組み立てられている。バネカバー2−3は、ビスを用いないで逃し弁固定具との勘合を可能とした凹状の窪みを有した勘合部9を有し、この凹形状を変化させることにより逃し弁の設定圧力による識別を可能としている。また、このとき勘合部9の形状によって操作レバー6の回転運動を拘束することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる逃し弁は、ボデー材質を金属から樹脂に変更することによるコスト低減・質量低減を図ると共に、樹脂ボデー特有の課題および懸念事項を解消することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1における逃し弁の概略図
【図2】本発明の実施の形態2における逃し弁の概略図
【図3】本発明の実施の形態3における逃し弁の概略図
【符号の説明】
【0033】
1 弁箱
2 バネカバー
3 ボルト
4 固定板
5 ビス穴
6 操作レバー
7 差込板
8 インサート部
9 勘合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯するタンクと、前記タンクを収納する外装体と、前記タンク内の湯水を加熱する加熱装置と、前記タンクの上部に配設しタンク内の膨張水を排出する手動で開閉可能な操作レバーを有した逃し弁と、前記逃し弁を前記外装体に固定する逃し弁固定具とを備えた貯湯式給湯装置において、前記逃し弁のボデーが複数の樹脂成型品から構成され、かつ前記樹脂ボデーは、前記固定具との固定用ビス穴を有していないことを特徴とする逃し弁。
【請求項2】
樹脂ボデーとは材質を異とする板を備え、前記板は固定具との固定用ビス穴を有していることを特徴とする請求項1記載の逃し弁。
【請求項3】
板は、樹脂ボデーの組立時の共締め構成としたことを特徴とする請求項2記載の逃し弁。
【請求項4】
板は、樹脂ボデーへの埋め込み構成としたことを特徴とする請求項2記載の逃し弁。
【請求項5】
樹脂ボデーは固定具との固定用貫通穴を有し、前記固定具との連結はボルト−ナットにより構成することを特徴とする請求項1記載の逃し弁。
【請求項6】
樹脂ボデーと固定具は、互いに勘合する形状を有することを特徴とする請求項1記載の逃し弁。
【請求項7】
樹脂ボデーあるいは板は、操作レバーの回転角度を規制することができる形状を有することを特徴とする請求項1から6記載の逃し弁。
【請求項8】
樹脂ボデーあるいは板は、加熱手段により設定圧力の異なる場合の識別可能な形状を有していることを特徴とする請求項1から7記載の逃し弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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