説明

逆止弁、自励振動ヒートパイプ、発熱機器、逆止弁の製造方法、自励振動及びヒートパイプの製造方法

【課題】製造工程数を少なくすることができ、また、小型化が可能な逆止弁、自励振動ヒートパイプ及び発熱機器を提供する。
【解決手段】逆止弁部20は、内部に流路11aを構成する管路部11と、前記流路11aにおいて浮遊可能な球状の弁体21と、前記管路部11に設けられ、前記流路11aの作動流体の流動を妨げることなく前記弁体21の動きを規制するストッパ部23と、前記管路部11のうち、前記弁体21を挟んで前記ストッパ部23と反対側の一部が、塑性加工により、前記弁体21の外径よりも小さい小径部22aを有してなる弁座部22と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れ方向を規制する逆止弁、この逆止弁を備えた自励振動ヒートパイプ、自励振動ヒートパイプを備えた発熱機器に係り、特に製造工程数を少なくできるとともに小型化が可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の発熱機器に設けられた発熱部品の熱を、作動流体を輸送する自励振動ヒートパイプを介してヒートシンクや放熱板で放熱することにより冷却する技術が知られている。このような自励振動ヒートパイプにおいて、作動流体を所定方向のみに循環させるために逆止弁を備えたものが知られている。逆止弁は、例えば、浮遊型の球状弁体と、球状弁体の外径より小さい内径のパイプで作られた弁座部と、この弁座部より下流側に球状弁体が浮遊できるように設けられたストッパとを備え、ストッパと弁体と弁座部とにより、自励振動ヒートパイプの流路が、一方向に流れる作動流体に対して開き、これと反対方向に流れる作動流体に対して閉じるように構成されている。弁座部は、通常、機械加工によって管路部と別体で製造され、円筒状の管路部の内面に、かしめ手段や、ろう付けにより固定される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−332881
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の逆止弁では弁座部が機械加工によって管路部と別体に製造され、管路部の内面に固定されるため、製造工程数が多く、また、小型化することが困難である。
【0004】
そこで本発明では、製造工程数を少なくすることができ、また、小型化が可能な逆止弁、自励振動ヒートパイプ、発熱機器及びこれらの製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態にかる逆止弁は、内部に流路を構成する管路部と、前記流路において浮遊可能な球状の弁体と、前記管路部に設けられ、前記流路の作動流体の流動を妨げることなく前記弁体の動きを規制するストッパ部と、前記管路部のうち、前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の一部が、塑性加工により、前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の一形態にかかる逆止弁は、上記に加え、前記ストッパ部は、前記管路部の一部が塑性加工により、一方向における流路の幅が前記弁体の外径よりも小さく、他方向における流路幅が前記弁体の外径よりも大きく構成されてなり、
前記弁座部の内面のうち、前記弁体に接触する接触面は円錐形状に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一形態にかかる自励振動ヒートパイプは、発熱部と放熱部との間で連通する流路を内部に形成する管路部と、前記流路において浮遊可能な球状の弁体と、前記管路部に設けられ、前記流路の作動流体の流動を妨げることなく前記弁体の動きを規制する弁体ストッパ部と、前記管路部のうち、前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の一部が、塑性加工により、前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の一形態にかかる発熱機器は、発熱部と、放熱部と、前記発熱部と前記放熱部との間で連通する流路を内部に形成する管路部を備えた自励振動ヒートパイプを備え、
前記自励振動ヒートパイプは、前記流路において浮遊可能な球状の弁体と、前記管路部に設けられ前記流路の作動流体の流動を妨げることなく前記弁体の動きを規制するストッパ部と、前記管路部のうち、前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の一部が、塑性加工により、前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態にかかる逆止弁の製造方法は、管状に構成された管路部の内部に、球状の弁体を配した状態において、前記管路部の一部に塑性加工を施し、扁平状に変形させることにより、一方向における流路の幅が前記弁体の外径よりも小さく、他方向における流路幅が前記弁体の外径よりも大きいストッパ部を前記管路部に一体に形成し、前記管路部の前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の部分に塑性加工を施し、その内面のうち、前記弁体に接触する接触面が円錐形状に構成されるとともに前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部を前記管路部に一体に形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の一形態にかかる自励振動ヒートパイプの製造方法は、発熱部付近に配される受熱部と放熱部付近に配される放熱部とを備えた管路部材の内部に球状の弁体を配した状態において、前記管路部の一部に塑性加工を施し、扁平状に変形させることにより、一方向における流路の幅が前記弁体の外径よりも小さく、他方向における流路幅が前記弁体の外径よりも大きいストッパ部を前記管路部に一体に形成し、前記管路部の前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の部分に塑性加工を施し、その内面のうち、前記弁体に接触する接触面が円錐形状に構成されるとともに前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部を前記管路部に一体に形成することで、逆止弁部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、逆止弁または自励振動ヒートパイプの製造工程数を少なくすることができ、また、小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態にかかるコンピュータ1について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、各図において適宜構成を拡大、縮小、省略して概略的に示している。なお、図中矢印X,Y,Zは互いに直交する三方向を示している。
【0013】
図1は発熱機器としてのコンピュータ1の全体構成を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体部2と表示部3とが連結部4によって互いに回動可能に接続されて折りたたみ可能に構成されている。本体部2には、加熱部としてCPU等の発熱体5が設けられ、表示部3の裏側に放熱部としての放熱面6が設けられている。
【0014】
このコンピュータ1の内部に、自励振動ヒートパイプ10が配されたパネル7が内蔵されている。自励振動ヒートパイプ10は、例えばSUSから、細いパイプ状に構成され、発熱部としての発熱体5と放熱部としての放熱面6側との間を複数回往復して蛇行状に配された円筒状の管路部11を備えている。管路部11は、複数の湾曲部12と、2つの湾曲部12の間で直線状に延びる直管部13とを備え、放熱面6側に配される放熱管部14、発熱体5の付近に配される受熱管部15、及び連結部4を通る連結管部16を有している。なお、この明細書において、付近に配される、とは、直接接触して配されるものも含む意味とする。内側に形成された流路11aは管路部11の一端部から他端部に至って連通するとともに、管路部11の両端が接続され、管路部11はループを構成している。
【0015】
連結管部16は、曲げ変形可能に構成されており、本体部2と表示部3とが互いに連結部4を中心に折畳み可能となっている。
【0016】
図2に示す管路部11の内部に形成された流路11aには、その内容積の半分程度の作動流体(図示せず)が封入され、作動流体蒸気と作動流体液とが分布している。自励的に発生する圧力振動により、作動流体蒸気と作動流体液とが加熱部と放熱部との間を往復することによって発熱体5から放熱面6への熱輸送が行われる。
【0017】
図1及び図2に示すように、受熱管部15と放熱管部14との間の複数の直管部13には冷媒の流れを一方向に規制する機能を有する逆止弁部20(逆止弁)が夫々設けられている。複数の逆止弁部20は受熱管部15を挟んでその上流側及び下流側の両側の所定の部分に配設されている。
【0018】
図3及び図4に示す逆止弁部20は、SUSから形成された球状の弁体21と、弁体21によって開閉される小径部22aを有する弁座部22と、弁体21の動きを規制するストッパ部23とから形成されている。この弁座部22とストッパ部23との間に弁体21が浮遊可能な浮遊領域20bが形成されている。
【0019】
弁座部22は、管路部11の内径が外周から塑性加工により急激に絞られ、小径部22aを有して構成される。弁座部22の内面のうち、弁体と接触する接触面22bは球状の弁体21の外面21aに沿った形状に構成されている。接触面22bは円錐形状を成している。
【0020】
ストッパ部23は、塑性加工により、管路部11の一部が、図中矢印Zで示す一方向における流路11aの幅が前記弁体21の外径よりも小さく、図中矢印Yで示す他方向における流路11aの幅が前記弁体21の外径よりも大きい扁平形状に潰されて構成されている。ストッパ部23は、弁座部22の位置よりも下流側に浮遊可能に配された弁体21よりもさらに下流の所定位置に、形成されている。すなわちストッパ部23は、他方向における広い外径と弁体との間に隙間23aが形成されることにより、作動流体の流動を停止することなく、一方向における狭い内径において弁体21を停止させることにより弁体21の動きを規制する機能を有する。
【0021】
ここで、管路部11の外径d0は1.0mm程度内径d1は0.8mm程度、球状の弁体21の径d2は0.6mm程度、ストッパ部23の図中矢印Zで示す鉛直方向(一方向)における内径d3は0.3mm程度、ストッパ部23の図中矢印Yで示す水平方向(他方向)における内径d4は0.9mm程度、弁座部22の小径部22aの内径d5は0.4mm程度に構成されている。また、接触面22bの傾斜角度θは30度程度に構成されている。すなわち、小径部の内径d3及び内径d4は弁体の径d2よりも小さく、内径d5は弁体の径d2よりも大きく構成されている。
【0022】
上記構成の逆止弁部20を備えた自励振動ヒートパイプ10においては、流路11aの所定位置に形成される浮遊領域20bに弁体21が配置された状態で、塑性加工により弁体21よりも下流側の管路部11が変形されてストッパ部23が形成されるとともに、塑性加工により弁体21よりも上流側の管路部11が変形されて弁座部22が形成される。すなわち、弁座部22及びストッパ部23は自励振動ヒートパイプ10の管路部11の一部が変形することにより管路部11に一体に形成される。
【0023】
次に本実施形態にかかる自励振動ヒートパイプ10の動作について説明する。自励振動ヒートパイプ10の内部の流路11aでは連続的な圧力振動が自励的に発生し、作動流体を駆動している。CPU等の発熱体5は自励振動ヒートパイプ10の受熱管部15と熱伝達がよい状態で実装されており、発熱体5の熱は、管路部11の放熱管部14を介して放熱面6に輸送され、そこで放熱される。逆止弁部20においては、図4の矢印方向に流れる流体によって、図中Aで示すように弁体21が浮遊領域20bにおけるストッパ部23側に移動することにより、弁座部22が開放されるとともにストッパ部23の隙間23aから流体が流動可能となる。また、図4中の矢印と反対方向に流れる作動流体に対しては、図中Bで示すように弁体21が弁座部22側に位置するとともに弁体21の外面21aが弁座部22の接触面22bに接触して小径部22aが閉ざされ、流路11aが閉塞される。
【0024】
本実施形態にかかる逆止弁部20、自励振動ヒートパイプ10及びコンピュータ1は、以下に掲げる効果を奏する。すなわち、自励振動ヒートパイプ10の管路部11の外径d0は1.0mm、内径d1は0.8mmと細く設定されているため、塑性変形処理を行うだけで接触面22bを容易、かつ、精度よく成形することができる。一方で、塑性加工のみで形成するため、別工程で弁座部22を製造してから管路部11の内部に取り付ける場合と比べて製造工程数を減らすとともに小型に構成することが可能となる。したがって、製造費用を低く抑えることができる。一本の長い自励振動ヒートパイプ10を蛇行させた構成により、作動流体封入工程が容易となる。さらに細管で構成されているため電熱面積を大きく取ることができる。
【0025】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明を実施するにあたり、各構成部材の具体的な形状など、本発明の構成要素を発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できることは言うまでもない。例えば上述した例では、折畳み式のコンピュータ1に適用した場合について説明したが、これに限られるものではなく、発熱機器としては他にデスクトップ式のパソコンや、他の電子機器にも適用可能である。逆止弁部20は必ずしも自励振動ヒートパイプ10に一体に構成されているものに限られず、別体で構成されていてもよい。また弁座部22はその接触面22bが円錐形状となるように構成したが、断面が直線状の円錐形状の他に、断面が曲線状となる富士山状や釣鐘形状も適用可能である。また、管路部11及び弁体21をSUSで構成した場合について例示したがこれに限られるものではなく、管路部11にはアルミ合金や銅等、他の材料を用いても良いし、弁体21にはルビー等、他の材料を用いても良い。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンピュータの外観を一部切欠して示す斜視図。
【図2】同実施形態における自励振動ヒートパイプの構成を一部切欠して模式的に示す平面図。
【図3】同実施形態における自励振動ヒートパイプ逆止弁部を拡大して示す平面図。
【図4】同実施形態における自励振動ヒートパイプの逆止弁部を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0027】
1…コンピュータ、2…本体部、3…表示部、4…連結部、5…発熱体、6…放熱面、7…パネル、10…自励振動ヒートパイプ、11…管路部、11a…流路、12…湾曲部、13…直管部、14…放熱管部、15…受熱管部、16…連結管部、20…逆止弁部、20b…浮遊領域、21…弁体、21a…外面、22a…小径部、22…弁座部、
22b…接触面、23…ストッパ部、23a…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を構成する管路部と、
前記流路において浮遊可能な球状の弁体と、
前記管路部に設けられ、前記流路の作動流体の流動を妨げることなく前記弁体の動きを規制するストッパ部と、
前記管路部のうち、前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の一部が、塑性加工により、前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部と、を備えたことを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記管路部の一部が塑性加工により、一方向における流路の幅が前記弁体の外径よりも小さく、他方向における流路幅が前記弁体の外径よりも大きく構成されてなり、
前記弁座部の内面のうち、前記弁体に接触する接触面は円錐形状に構成されていることを特徴とする請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】
発熱部と放熱部との間で連通する流路を内部に形成する管路部と、
前記流路において浮遊可能な球状の弁体と、
前記管路部に設けられ、前記流路の作動流体の流動を妨げることなく前記弁体の動きを規制する弁体ストッパ部と、
前記管路部のうち、前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の一部が、塑性加工により、前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部と、を備えたことを特徴とする自励振動ヒートパイプ。
【請求項4】
発熱部と、放熱部と、前記発熱部と前記放熱部との間で連通する流路を内部に形成する管路部を備えた自励振動ヒートパイプを備え、
前記自励振動ヒートパイプは、前記流路において浮遊可能な球状の弁体と、前記管路部に設けられ前記流路の作動流体の流動を妨げることなく前記弁体の動きを規制するストッパ部と、
前記管路部のうち、前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の一部が、塑性加工により、前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部と、を備えたことを特徴とする発熱機器。
【請求項5】
管状に構成された管路部の内部に、球状の弁体を配した状態において、
前記管路部の一部に塑性加工を施し、扁平状に変形させることにより、一方向における流路の幅が前記弁体の外径よりも小さく、他方向における流路幅が前記弁体の外径よりも大きいストッパ部を前記管路部に一体に形成し、
前記管路部の前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の部分に塑性加工を施し、その内面のうち、前記弁体に接触する接触面が円錐形状に構成されるとともに前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部を前記管路部に一体に形成することを特徴とする逆止弁の製造方法。
【請求項6】
発熱部付近に配される受熱部と放熱部付近に配される放熱部とを備えた管路部材の内部に球状の弁体を配した状態において、
前記管路部の一部に塑性加工を施し、扁平状に変形させることにより、一方向における流路の幅が前記弁体の外径よりも小さく、他方向における流路幅が前記弁体の外径よりも大きいストッパ部を前記管路部に一体に形成し、
前記管路部の前記弁体を挟んで前記ストッパ部と反対側の部分に塑性加工を施し、その内面のうち、前記弁体に接触する接触面が円錐形状に構成されるとともに前記弁体の外径よりも小さい小径部を有してなる弁座部を前記管路部に一体に形成することで、逆止弁部を形成することを特徴とする自励振動ヒートパイプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−298342(P2008−298342A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143830(P2007−143830)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省、「平成18年度地域新生コンソーシアム研究開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390013815)学校法人金井学園 (20)