説明

逆流防止弁を有する体液採取袋

本発明は体液採取袋(1)に関し、特に逆流防止弁を形成する接合部(7、8)を備える。採取袋(1)は、ずれている採取部(3)への入口(6)と流入口(4)とを備える。本発明による装置は、医療分野において利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体採取袋、詳しくは、例えば血液または尿などの体液を採取する流体採取袋に関する。本発明による流体採取袋は、輸液に使用したり、創傷または医療機器を洗浄したり、あるいは、洗い流したりするのに使用される溶液を保存することが可能なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、体液採取袋を使用することはよく知られている。特許文献1は、逆止弁が固定され、その主要機能として、採取袋内に含まれる液体を全く逆流しない採取袋について開示している。実例として、膀胱カテーテル法としても知られている尿道カテーテル法の実施時の尿排泄及び採尿を挙げられる。そのような膀胱カテーテル法の実施時に、装置は、尿道カテーテルのみならず、逆流防止弁を有する採取袋も備えることが多い。そのような弁は、流体、すなわち、採取袋で採取、保存した尿が、尿道カテーテル、最終的には膀胱に逆流することを防ぐ。
【0003】
しかし、従来技術による装置の構成部品の幾何学的複雑さと数によって、そのような装置を製造するためには、高度かつ特定の専門的知識と、高額な人件費や製造設備とを必要とする。さらに具体的には、従来技術による採取袋は、特に袋と逆流防止弁を含み、後者は、一緒に組み立てる必要がある1つを超える部品によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願第1825838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を克服し、部品が少なく、安価であり、例えば膀胱カテーテル法の実施と要件にまさに適した装置を医業に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、逆流防止弁を備えた流体採取袋に関し、その採取袋は、周縁部に沿って重ねて接合される2つの塑性材で構成され、採取部と、流入口と、流入口と採取部の入口との間に位置し、逆流防止弁を構成する接合部によって形成される流入路とを含み、流入口と採取部への入口は、特に軸方向に互いにずれ、流入口の接合部は、採取袋の採取部の内部境界を形成し、流入路は、採取袋の側壁から離れた位置で採取部に開いていることを特徴とする。
【0007】
上記特徴に加えて、本発明による装置は、個別に、あるいは、技術的に可能な組み合わせのいずれかを考慮して、1または複数の以下の特徴を有してもよい。
流入路は、少なくとも入口の一方の側に採取補助部を形成するように、採取部に延伸する。
流入路は、流入口と、採取部の周縁部上の任意の一点とを結ぶ直線が、流入路の接合部の少なくとも1つに交差するように構成される。
接合部の1つは、流入口の軸と実質的に平行である。
採取部の入口は、幅が14〜20mmのものである。
流入路は、幅が14mm以上、特に20mm以上のものである。
接合部は、応力集中点で、最小幅が2mm、特に2〜8mm、好ましくは4〜6mmである。
接合部の境界は、放射状に構成され、すなわち、袋が満たされた際に応力が集中する角度を形成しない。
補助部の幅は、20mm以上、特に20〜40mm、好ましくは25〜35mmであり、少なくとも1つの補助部の高さは、10mm以上、特に10〜30mm、好ましくは15〜25mmである。
接合部の下端部は、揃えて配列される。
【発明の効果】
【0008】
本発明による採取袋によると、特に圧力や引張応力が印加された場合でも液体を採取して保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】採取袋の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、実施例を示す図1を参照した以下の説明から明確となる。
図は、明確に示すため、本発明の理解に有用な要素のみを概略的に示し、原寸には比例していない。
【0011】
図1は、あらゆる種類の流体、特に尿の採取を可能にする採取袋1を示す。特に、この袋は、流入口4と、流入路5と、採取部3への入口6と、2つの接合部7及び8と、2つの補助部11と、小穴部12と、採取部3の外側縁を形成する2つの側部接合部9及び10とを備える。
【0012】
さらに、図1には、直線D13を示す。
【0013】
図1に示す採取袋1は、例えば塑性材で作製された2枚のシートで形成される。採取袋1の組み立て時には、これらのシートは、周縁部2の全体に沿って重ねて接合され、柔軟な袋を形成する。言い換えると、これらの2枚のシートは、それ自体で体液採取袋1を形成する。
【0014】
接合部7及び8は、採取袋1の2枚のシート間に形成される。これらの接合部7及び8は、例えば熱接合部であってもよい。
【0015】
接合部8は、実質的に垂直(軸A4に平行)であり、下端部81を備える。
【0016】
接合部7は、第1の斜部71と(A4に平行な)第2の実質的な垂直部72とを備える。
【0017】
接合部7及び8の下端部72及び81は、採取部3への入口6を形成し、実質的に同じ高さで終端するのが好ましい。
【0018】
さらに、2つの接合部7及び8は、一方では、以下に記載する機能を有する逆流防止弁を形成し、他方では、流入路5の下部を形成する。
【0019】
逆流防止弁は、接合部7及び8によって形成されるアセンブリであり、流入口4から軸方向にずれている。
【0020】
第1の補助部11は、接合部10と接合部7によって形成される。
【0021】
第2の補助部11は、接合部8と接合部9によって形成される。
【0022】
接合部9、10ならびに2つの接合部7及び8は、採取部3を区切る。
【0023】
流入口4から液体を入れると、それは2つの接合部7、8と2つのシートによって形成される流入路5を流れ落ちる。その結果、採取部3は、流入路5を介して満たされる。
【0024】
均一流及び正常流を確保するためには、流入路5の幅L5は、14mm以上、特に20mm以上が好ましい。同じように、逆流防止弁の幅L6は、14〜20mmが好ましい。
【0025】
採取部3に入った流体で補助部11が満たされた場合、例えば、袋の使用者が袋の上下の向きを変えた場合、逆流防止弁は閉じ、流入路5から流体が逆流しないようになる。さらに具体的には、補助部11が流体で満たされると、その後の静水圧は、これらの補助部の壁や接合部のあらゆる位置で同じとなる。しかし、この静水圧によって、逆流防止弁の入口6の接合部72及び81が互いに分離する傾向がある補助部の壁が引っ張られて特定の構造となり、これにより、入口6を閉じ、補助部11の流体圧が増大するとさらに密閉する。この閉鎖によって、採取袋1が上下の向きを変えた場合でも、圧縮応力及び/または引張応力を受けた場合でも、液体は採取部3の外部に逆流しない。
【0026】
採取袋1の逆流防止弁を完全に締めることを確実にするためには、補助部11の幅L11は、20〜40mm、好ましくは25〜35mm、補助部の高さH11は、10〜30mm、好ましくは15〜25mmにする。
【0027】
幅L11と高さH11によって形成される容積は、逆流防止弁を確実に密閉するために必要な最小容積に対応している。
【0028】
さらに、図1に示すように、流入口4は、流入路5の上端部によって形成され、入口6から流入路5の下端部によって形成される採取部3まで軸方向にずれている。採取部3が満たされる場合、かつ、小穴部12と流入口4の高さで引張応力が採取袋1に印加される場合、軸A4及びA6のこの軸ずれによって、逆流防止弁の密閉を維持することが可能となる。
【0029】
さらに具体的には、この軸ずれは、直線D13によって具現化してもよい。この直線は、流入口4を通って、採取部3の2つの側部接合部9と10の周縁部2の任意の位置に交わるためには、接合部7または8を必ず横切る必要がある。この配置によって、引張応力または圧縮応力が印加されても、逆流防止弁が密閉した状態を確実に維持することが可能になる。
【0030】
また、接合部8は、流入口4の軸A4と実質的に平行である。これによって、引張力が採取袋1に印加された場合に、逆流防止弁が開かないようにすることが可能になる。
【0031】
一方では、接合部7及び8は放射状に構成され、すなわち、袋が満たされた際に圧力応力が集中する角度を形成しない。幅は2〜8mm、好ましくは4〜6mmである。この幅は、特に応力集中点において重要であり、接合部7及び8が弱くなって破裂しないようにする。
【0032】
要するに、採取袋1には、特に他に部品も要素も必要としない逆流防止弁を備える装置を提供する利点があり、これにより、体液採取袋1の2つのシートの1または複数の接合部の特定かつ精巧な組み合わせによって、採取袋1及び逆流防止弁を製造することができる。
【0033】
本発明による採取袋1は、操作される際、具体的には、引張応力が2つの端部に印加される際に密閉される。
【0034】
本発明は、医療、特に、病院環境または地域社会で尿失禁を管理する分野において利用される。
【0035】
上述は本発明の実施例であり、当業者は、特に、逆流防止弁を形成する接合部の位置または配置に関して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、採取袋のさまざまな変形を実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 採取袋
2 周縁部
3 採取部
4 流入口
5 流入路
6 入口
7 接合部
71 斜部
72 垂直部
8 接合部
81 下端部
9 接合部
10 接合部
11 補助部
12 小穴部
A4 軸
A6 軸
D13 直線
H11 高さ
L5 幅
L6 幅
L11 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆流防止弁を備え、周縁部(2)全体に沿って重なって接合される2つの塑性材で構成され、
採取部(3)と、流入口(4)と、流入口(4)と採取部(3)への入口(6)との間に位置し逆流防止弁を形成する接合部(7、8)によって形成される流入路(5)と、を備える体液採取袋(1)であって、
流入口(4)と採取部(3)への入口(6)が、互いにずれ、
流入路(5)の接合部(7、8)が、採取袋(1)の採取部(3)の内部境界を形成し、
流入路(5)が、採取袋(1)の側壁(9、10)から離れた位置で採取部(3)に対して開いている
ことを特徴とする採取袋(1)。
【請求項2】
流入路(5)が、採取部(3)に延伸し、少なくとも入口(6)の一方の側に補助部(11)を形成する
請求項1に記載の採取袋(1)。
【請求項3】
補助部(11)の幅(L11)が、20mm以上、好ましくは20〜40mm、更に好ましくは25〜35mmであり、少なくとも1つの補助部(11)の高さ(H11)が、10mm以上、好ましくは10〜30mm、更に好ましくは15〜25mmである
請求項2に記載の採取袋(1)。
【請求項4】
流入路(5)が、流入口(4)と、採取部(3)の周縁部(2)上の任意の点を結ぶ直線(D13)が、流入路(5)の接合部(7、8)の少なくとも1つに交差するように構成される
請求項1ないし3のいずれかに記載の採取袋(1)。
【請求項5】
接合部(7、8)の1つが、流入口(4)の軸(A4)と実質的に平行である
請求項1ないし4のいずれかに記載の採取袋(1)。
【請求項6】
採取部(3)への入口(6)が、幅(L3)が14〜20mmである
請求項1ないし5のいずれかに記載の採取袋(1)。
【請求項7】
流入路(5)が、幅(L5)が14mm以上、好ましくは20mm以上である
請求項1ないし6のいずれかに記載の採取袋(1)。
【請求項8】
接合部(7、8)の下端部が揃って配列される
請求項1ないし7のいずれかに記載の採取袋(1)。
【請求項9】
接合部(7、8)が、応力集中点で、最小幅が2mm、好ましくは2〜8mm、更に好ましくは4〜6mmである
請求項1ないし8のいずれかに記載の採取袋(1)。
【請求項10】
接合部(7、8)が放射状に構成される
請求項1ないし9のいずれかに記載の採取袋(1)。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−519503(P2012−519503A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552354(P2011−552354)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001247
【国際公開番号】WO2010/099916
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511217485)ビー.ブラウン メディカル エスエーエス (3)
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MEDICAL SAS
【住所又は居所原語表記】204 Ave du Marechal Juin,F−92660 Boulogne−Billancourt Cedex France
【Fターム(参考)】