説明

逆潮流検出機能付き電力量計

【課題】 売電取引非対象の発電装置の余剰電力による逆潮流を簡便な手段で検出し、売電取引非対象の発電装置を速やかに停止させることで、売電取引対象の発電装置の余剰電力を正確に計測する。
【解決手段】 系統電源から延びる配電線11と電力需要家の分電盤12との間に設置され、その電力需要家が所有する売電取引対象の発電装置16および売電取引非対象の発電装置17のうち、売電取引対象の発電装置16からの逆潮流による発電電力を計測する電力量計14であって、売電取引対象の発電装置16および売電取引非対象の発電装置17からの逆潮流を検出し、その検出信号に基づいて売電取引非対象の発電装置17を停止させる制御信号を出力する逆潮流検出部21を内蔵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、一般家庭や工場などの電力需要家に設置され、その電力需要家が所有する各種の発電装置からの逆潮流による発電電力を計測する逆潮流検出機能付き電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点からクリーンな自然エネルギーとして、太陽光、風力、地熱などを利用した各種の発電装置が注目されている。これら各種の発電装置は、分散電源として、一般家庭、商店、工場やビルなどの電力需要家に設置されている。一方、これら発電装置における余剰の発電電力を電力会社が買い取る制度がある。この場合、発電装置の余剰電力が電力需要家から電力会社へ逆潮流することになる。この余剰電力の買取制度では、買取対象となる発電装置と買取対象とならない発電装置とが制定されている。
【0003】
このような発電装置の余剰電力の買取制度を実現するため、電力需要家には、電力会社から供給される電力を計測するための買電用電力量計(買電メータ)と、発電装置の余剰電力を計測するための売電用電力量計(売電メータ)とが設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来のシステムでは、図3に示すように、電力会社からの配電線1と電力需要家内に設置された分電盤2との間に買電用電力量計3および売電用電力量計4を設置し、分電盤2にパワーコンディショナ5(電力変換装置)を介して各種の発電装置6,7が接続された構成となっている。
【0005】
ここで、各種の発電装置には、前述したように買取対象となる(売電取引対象の)発電装置6と買取対象とならない(売電取引非対象の)発電装置7とがあるため、売電取引非対象の発電装置7の余剰電力の逆潮流を阻止するため、売電取引非対象の発電装置7を速やかに停止させる必要がある。
【0006】
そこで、従来では、分電盤2内において、売電用電力量計4と売電取引非対象の発電装置7とを繋ぐ接続線に逆潮流検出用電流センサとして変流器8(例えばクランプ式CT)を取り付け、売電取引非対象の発電装置7の余剰電力による逆潮流が発生した場合、その逆潮流を変流器8で検出し、その検出信号に基づいてリレー装置9を作動させて売電取引非対象の発電装置7を停止させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−294334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述した従来のシステムは、逆潮流検出用電流センサとしての変流器8を電力需要家の分電盤2内に取り付ける工事が必要で、その変流器8の取り付け時には停電させなければならず、取り付け工事に手間がかかっていた。また、前述の変流器8は売電取引非対象の発電装置7ごとに設ける必要があるため、電力需要家で多数の発電装置7を設置した場合、分電盤2内の限られたスペースに多数の変流器8を取り付けることが非常に困難であった。
【0009】
また、分電盤2内に取り付けられた変流器8は簡単に取り外すことが可能であることから、逆潮流を検出する手段としては、セキュリティ管理の面において好ましいものではなかった。前述のように、売電取引対象の発電装置6の余剰電力を計測する売電用電力量計4とは別に、売電取引非対象の発電装置7の余剰電力による逆潮流を検出する手段として、分電盤2に取り付けた変流器8や、その変流器8の検出出力に基づいて売電取引非対象の発電装置7を停止させるためのリレー装置9を設置しなければならず、コスト低減を図ることが困難であった。
【0010】
また、売電取引非対象の発電装置7の余剰電力による逆潮流を変流器8で検出し、その検出信号に基づいてリレー装置9を作動させて売電取引非対象の発電装置7を停止させるまでの時間内で、売電用電力量計4が売電取引非対象の発電装置7の余剰電力を計測してしまうことになる。その結果、売電取引対象の発電装置6の余剰電力を売電用電力量計4により正確に計測することが困難であった。
【0011】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、売電取引非対象の発電装置の余剰電力による逆潮流を簡便な手段で検出し、売電取引非対象の発電装置を速やかに停止させることで、売電取引対象の発電装置の余剰電力を正確に計測し得る逆潮流検出機能付き電力量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、系統電源から延びる配電線と電力需要家の分電盤との間に設置され、その電力需要家が所有する売電取引対象の発電装置および売電取引非対象の発電装置のうち、売電取引対象の発電装置からの逆潮流による発電電力を計測する電力量計であって、売電取引対象の発電装置および売電取引非対象の発電装置からの逆潮流を検出し、その検出信号に基づいて売電取引非対象の発電装置を停止させる制御信号を出力する逆潮流検出部を内蔵させたことを特徴とする。
【0013】
本発明では、売電取引対象の発電装置および売電取引非対象の発電装置からの逆潮流を検出し、その検出信号に基づいて売電取引非対象の発電装置を停止させる制御信号を出力する逆潮流検出部を内蔵させたことにより、売電取引非対象の発電装置の余剰電力による逆潮流を簡便な手段で検出し、売電取引非対象の発電装置を速やかに停止させることで、売電取引対象の発電装置の余剰電力を正確に計測することができる。
【0014】
また、本発明では、従来のような逆潮流検出用電流センサとしての変流器を電力需要家の分電盤内に取り付ける工事が不要となり、変流器の取り付け時の停電もなくなるので、逆潮流検出手段の設置が簡略化され、電力需要家で多数の発電装置を設置した場合であっても対応が容易となる。また、逆潮流検出部が電力量計に内蔵されていることから、セキュリティ管理の面においても好ましく、逆潮流検出部が内蔵された電力量計に集約されるので、コスト低減を図ることも容易である。
【0015】
本発明における逆潮流検出部は、電力演算部の所定の設定電流以下で逆潮流を検出し、その検出電流以上で電力積算部により電力量の計測を開始することが望ましい。ここで、「所定の設定電流」とは、電力量計の電力積算部が電力量を計測開始する時の電流を意味する。このように、電力演算部の所定の設定電流以下で逆潮流を検出すれば、売電取引非対象の発電装置の余剰電力を確実に排除することができ、売電取引対象の発電装置による余剰電力のみを正確に計測することができる。また、その検出電流以上で電力積算部により電力量の計測を開始するようにすれば、売電取引対象の発電装置による余剰電力の計測をより一層正確に行うことができる。
【0016】
本発明では、逆潮流検出部から出力される制御信号に基づいて、売電取引非対象の発電装置の停止信号を送出する出力部を備えていることが望ましい。このようにすれば、逆潮流が発生した場合、売電取引非対象の発電装置を速やかに停止させることができ、売電取引対象の発電装置による余剰電力を正確に計測することができる。また、電力需要家で多数の発電装置を設置した場合であっても対応が容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、売電取引非対象の発電装置の余剰電力による逆潮流を簡便な手段で検出し、売電取引非対象の発電装置を速やかに停止させることで、売電取引対象の発電装置の余剰電力を正確に計測することができる。また、従来のような逆潮流検出用電流センサとしての変流器を電力需要家の分電盤内に取り付ける工事が不要となり、変流器の取り付け時の停電もなくなるので、逆潮流検出手段の設置が簡略化され、電力需要家で多数の発電装置を設置した場合であっても対応が容易となる。さらに、逆潮流検出部が電力量計に内蔵されていることから、セキュリティ管理の面においても好ましく、逆潮流検出部が内蔵された電力量計に集約されるので、コスト低減を図ることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態で、売電用電力量計を設けた全体のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】図1の売電用電力量計の内部構成を示すブロック図である。
【図3】売電用電力量計を設けた全体のシステム構成の従来例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る逆潮流検出機能付き電力量計の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、例えば、一般家庭、商店、工場やビルなどの電力需要家に設置され、その電力需要家が所有する各種の発電装置からの逆潮流による発電電力を計測する電力量計、つまり、売電用電力量計を例示する。
【0020】
太陽光、風力、地熱などを利用した各種の発電装置における余剰の発電電力を電力会社が買い取る制度を実現するため、電力需要家には、電力会社から供給される電力を計測するための買電用電力量計(買電メータ)と、発電装置の余剰電力を計測するための売電用電力量計(売電メータ)とが設置されている。発電装置の余剰電力を電力会社が買い取る場合、発電装置の余剰電力が電力需要家から電力会社へ逆潮流することになる。
【0021】
図1は売電用電力量計14を備えた全体のシステム構成を示す。同図に示すように、電力会社からの配電線11と電力需要家内に設置された分電盤12との間に買電用電力量計13および売電用電力量計14を設置し、分電盤12にパワーコンディショナ15(電力変換装置)を介して各種の発電装置16,17が接続された構成となっている。
【0022】
ここで、各種の発電装置には、前述したように買取対象となる(売電取引対象の)発電装置16と買取対象とならない(売電取引非対象の)発電装置17とがあるため、売電取引非対象の発電装置17の余剰電力の逆潮流を阻止するため、売電取引非対象の発電装置17を速やかに停止させる必要がある。
【0023】
そこで、この実施形態の売電用電力量計14では、図2に示すように、売電取引対象の発電装置16および売電取引非対象の発電装置17からの逆潮流を検出し、その検出信号に基づいて売電取引非対象の発電装置17を停止させる制御信号Aを出力する逆潮流検出部21を内蔵させている。また、この逆潮流検出部21から出力される制御信号Aに基づいて、売電取引非対象の発電装置17の停止信号Bを例えば有線で送出する出力部22を備えている。
【0024】
この逆潮流検出部21は、電力演算部23の所定の設定電流、例えば始動電流以下で逆潮流を検出し、その検出電流以上で電力積算部24により電力量の計測を開始する。ここで、「始動電流」とは、売電用電力量計14の電力積算部24が電力量を計測開始する時の電流を意味する。なお、図中の符号25は、電力積算部24の出力に基づいて積算電力量を表示する表示部である。
【0025】
この売電用電力量計14では、売電取引対象の発電装置16および売電取引非対象の発電装置17からの逆潮流を検出し、その検出信号に基づいて売電取引非対象の発電装置17を停止させる制御信号Aを出力する逆潮流検出部21を内蔵させたことにより、売電取引非対象の発電装置17の余剰電力による逆潮流を簡便な手段で検出し、売電取引非対象の発電装置17を速やかに停止させることで、売電取引対象の発電装置16の余剰電力を正確に計測することができる。
【0026】
つまり、従来のように変流器8の検出信号に基づいてリレー装置9を作動させて売電取引非対象の発電装置7を停止させるまでの時間内で、売電用電力量計4が売電取引非対象の発電装置7の余剰電力を計測してしまうことがなくなる(図3参照)。その結果、売電取引対象の発電装置16の余剰電力を売電用電力量計14により正確に計測することが実現容易となる。
【0027】
また、従来のような逆潮流検出用電流センサとしての変流器8を電力需要家の分電盤2内に取り付ける工事が不要となり、変流器8の取り付け時に停電させるような状況もなくなるので(図3参照)、逆潮流検出手段の設置が簡略化され、電力需要家で多数の発電装置17を設置した場合であってもその発電装置17を売電用電力量計14に接続するだけで済むために対応が容易となる。
【0028】
また、逆潮流検出部21が売電用電力量計14に内蔵されていることから、逆潮流検出部21を売電用電力量計14から取り外すことができないので、セキュリティ管理の面においても好ましい。さらに、従来のように分電盤2に取り付けた変流器8や、その変流器8の検出出力に基づいて売電取引非対象の発電装置7を停止させるためのリレー装置9を設置する必要がなく(図3参照)、逆潮流検出部21が内蔵された売電用電力量計14に集約されるので、コスト低減を図ることも容易である。
【0029】
なお、この売電用電力量計14では、電力演算部23の始動電流以下で逆潮流を検出することにより、売電取引非対象の発電装置17の余剰電力を確実に排除することができ、売電取引対象の発電装置16による余剰電力のみを正確に計測することができる。また、その検出電流以上で電力積算部24により電力量の計測を開始することにより、売電取引対象の発電装置16による余剰電力の計測をより一層正確に行うことができる。
【0030】
また、この売電用電力量計14では、逆潮流検出部21から出力される制御信号Aに基づいて、売電取引非対象の発電装置17の停止信号Bを有線で送出する出力部22を備えていることにより、逆潮流が発生した場合、売電取引非対象の発電装置17を速やかに停止させることができ、売電取引対象の発電装置16による余剰電力を正確に計測することができる。また、電力需要家で多数の発電装置17を設置した場合であってもその発電装置17を売電用電力量計14に有線で接続するだけで済むために対応が容易となる。
【0031】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0032】
11 配電線
12 分電盤
14 (売電用)電力量計
16 売電取引対象の発電装置
17 売電取引非対象の発電装置
21 逆潮流検出部
22 出力部
23 電力演算部
24 電力積算部
A 制御信号
B 停止信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から延びる配電線と電力需要家の分電盤との間に設置され、前記電力需要家が所有する売電取引対象の発電装置および売電取引非対象の発電装置のうち、前記売電取引対象の発電装置からの逆潮流による発電電力を計測する電力量計であって、前記売電取引対象の発電装置および売電取引非対象の発電装置からの逆潮流を検出し、その検出信号に基づいて前記売電取引非対象の発電装置を停止させる制御信号を出力する逆潮流検出部を内蔵させたことを特徴とする逆潮流検出機能付き電力量計。
【請求項2】
前記逆潮流検出部は、電力演算部の所定の設定電流以下で逆潮流を検出し、その検出電流以上で電力積算部により電力量の計測を開始するようにした請求項1に記載の逆潮流検出機能付き電力量計。
【請求項3】
前記逆潮流検出部から出力される制御信号に基づいて、前記売電取引非対象の発電装置の停止信号を送出する出力部を備えた請求項1又は2に記載の逆潮流検出機能付き電力量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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