説明

逆相エマルション及びその使用

本発明は、香味料工業に関する。より詳細には、本発明は、親水性の香味料又は甘味料、レシチン、タウマチン、極性溶媒及び疎水性成分を有する逆相エマルションに関する。本発明はまた、香味付けされた製品中での係るエマルションの使用、及びタウマチンを前記エマルションの分散相に添加する工程を有する逆相エマルションの安定化法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、香味料工業に関する。より詳細には、本発明は、親水性の香味料又は甘味料、レシチン、タウマチン、極性溶媒及び疎水性成分を有する逆相エマルションに関する。本発明はまた、香味付けされた製品中での係るエマルションの使用、及びタウマチンを該エマルションの分散相に添加する工程を有する逆相エマルションの安定化法に関する。
【0002】
先行技術
逆相エマルションは、親水性の香味料又は甘味料を疎水性の食品中に含ませるのに役立つ。それゆえ、新規の安定な逆相エマルションを提供することが望まれる。
【0003】
親水性の香味料は、極性溶媒、例えばプロピレングリコールに溶解されることはできるが、通常、水に溶解されることはできない。それにもかかわらず、現在知られている逆相エマルションにおいて、水は該エマルションの安定のために必要である。水は親水性の香味料のための良好な溶媒ではないので、低い量の水しか存在しない場合又は水の不在下ですら安定である逆相エマルションを提供することが有利とされる。
【0004】
US4,786,491には、タウマチン、レシチン、水及び着香性成分を有するエマルションが記載される。それにもかかわらず、この文献の教示は、上に述べた問題を、2つの理由のために解決しない。第一に、親水性の香味料又は甘味料を疎水性ベースに含ませるエマルションを提供することが望まれるのに対して、香味料が疎水性である。第二に、この文献中に記載されるエマルションが必ず水を含有することである。そのうえ、親水性の香味料と使用するために最も好ましい極性溶媒であるプロピレングリコールが言及されていない。
【0005】
親水性の香味料又は甘味料を疎水性の食用ベースに含ませるのに適した逆相エマルションを提供することが望まれる。高い量の極性溶媒、例えばプロピレングリコールを含有し、且つ非常に低い量の水を含有するか又はそれどころか水を含有しない係るエマルションを提供することが更に有利であると考えられ、なぜなら、親水性の香味料は、溶媒、例えばプロピレングリコールに、水より効率よく溶解されるからである。
【0006】
本発明の概要
本発明は、上で述べた問題の予期されなかった解決策を提供する。実際に、本発明者は、香味料又は甘味料、極性溶媒、疎水性成分及び任意に水を有する逆相エマルションがタウマチンの添加によって安定化されることに意外にも気付いた。本発明の逆相エマルションは、水の不在下ですら安定である。
【0007】
したがって、本発明は、
(a)以下(i)〜(iv)を有する分散相45〜80%
(i)タウマチン0.2〜1%;
(ii)水ではない極性溶媒10〜68.8%;
(iii)水0〜58.8%;及び
(iv)親水性の香味料又は甘味料1〜30%;
(b)以下(i)、(ii)を有する連続相20〜55%
(i)レシチン2〜10%;及び
(ii)疎水性材料10〜53%;
を有する逆相エマルションを提供し、その際、全ての百分率は、該エマルションの全質量を基準として、質量によって定義されている。
【0008】
さらに本発明は、上に定義した通りの逆相エマルションを有する香味付けされた製品を提供する。
【0009】
別の観点において、本発明は、親水性の香味料又は甘味料、水ではない極性溶媒、レシチン、疎水性成分及び任意に水を含有する逆相エマルションを安定化するための、該エマルションの分散相に、該エマルションの全質量を基準として、タウマチン0.2〜1質量%を添加する工程を有する方法を提供する。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明者は、タウマチンの併用により、水の不在下ですら、逆相エマルションが効果的に安定化されることを見出した。これは意外であり、且つ我々の知っている限りでは、知られていない。タウマチンが存在する場合、エマルション中の粒径分布が減少し、且つエマルションの保存寿命が増大する。水相の最大容積分率及び親水性の香味料又は甘味料の負荷量はまた、タウマチンが存在する場合、増加される。
【0011】
本明細書中で引用される全ての百分率は、別段示されない限り、エマルションの全質量を基準として、質量が意図されている。
【0012】
"逆相エマルション"を指して、我々は、ここでは、外部(連続)相が疎水性であるのに対して、内部(分散)相が親水性であるエマルションのことを言う。
【0013】
本発明の目的のために、材料が"親水性"を意味するのは、プロピレングリコールと中鎖トリグリセリド、特にカプリル/カプリントリグリセリド(商品名Neobee(R)で販売)との該材料の境界部分が、少なくとも40:60、好ましくは50:50である時である。材料が"疎水性"を意味するのは、プロピレングリコールと中鎖トリグリセリド、特にカプリル/カプリントリグリセリド(商品名Neobee(R)で販売)との該材料の境界部分が、40:60より小さい時である。
【0014】
当業者であれば、日常的な実験によって、特定の香味料、甘味料又はそれらの混合物のプロピレングリコールとカプリル/カプリントリグリセリドとの境界部分を容易に決定することができる。だがそれにもかかわらず、境界部分を決定するのに適した方法は、次の通りである。
【0015】
カプリル/カプリントリグリセリド1mlの量及びプロピレングリコール1mlの量を、ガラス管に設置する。香味料又は甘味料1mlの量を、さらに該管に添加する。該管を、次いでSnijders Scientific(Tilburg,Holland在)社のTest Tube Rotatorを用いて10rpmで16時間振動させる。各々の相の高さを、次いでTurbiscan MA 2000を用いて測定する。境界部分を、親水性相(プロピレングリコールと香味料又は甘味料の部分から成る)の高さと疎水性相(カプリル/カプリントリグリセリドと香味料又は甘味料の残部から成る)の高さとの関係に基づいて計算する。
【0016】
本発明の逆相エマルション中の分散相の割合は45〜80%の間で含まれている。60〜75%の間で含まれる分散相のより高い割合でさえ、それどころか好ましく、なぜなら、このパラメーターは、親水性の香味料及び/又は甘味料の高い負荷量を有するのに重要だからである。分散相の成分は、下に定義した通りである。
【0017】
タウマチンは、着香性組成物又は香味付けされた製品中で甘味料として頻繁に使用されている天然由来のポリペプチドである。タウマチンの2つの異なる形態は知られている:タウマチンI及びタウマチンII。本発明の目的のために、"タウマチン"との用語は、タウマチンI、タウマチンII及びそれらの混合物、並びにこれらのタンパク質の変性された形態も包含する。
【0018】
タウマチンの非常に低い量ですら、本発明のエマルションを安定化させるのには十分であるが、しかし、甘味効果が所望されるならば、より高い濃度を使用することができる。概して、タウマチンは、0.2〜1%の間で含まれる量で本発明のエマルション中に存在してよい。より狭い範囲は、エマルションの使用が意図されている製品に応じて、及び所望の甘味効果に応じて定義することができる。例えば、0.25%〜0.5%の範囲の濃度が好ましい。タウマチンはOverseal Natural Ingredients社(Talin(R))、Beneo−Palatinit又はMP Biomedicals社から商業的に入手可能である。
【0019】
着香性組成物中で現在用いられている任意の極性溶媒を、本発明のエマルション中で使用することができる。好ましくは、極性溶媒は全体として水混和性である。特に適した1つの水混和性溶媒はプロピレングリコールである。
【0020】
水は、分散相の任意の成分である。エマルションは、水の不在下ですら完全に安定であるが、しかし、所望されるならば、水を、エマルションの安定性にいかなる不利な効果も与えずに添加することができる。好ましくは、本発明のエマルションは、2.5%より小さい水を有する。より好ましくは、それは水を含まない。
【0021】
分散相中に存在する極性溶媒及び水の量は、エマルションの安定のための主要要因ではない。これらの2つの成分の濃度は、幅広い範囲の値内で変動してよく、且つ当該技術分野に属する当業者によって、日常的な実験によって、香味料の所望の濃度及び目標適用の性質に基づき調節することができる。
【0022】
香味料は、たた一つの着香性化合物又は着香性化合物の混合物の形態で使用することができる。"着香性化合物"との用語は、それが快楽効果を付与する化合物でり、すなわち、調製物の味を心地よく付与するか又は改良することができ、且つ、単に味を付与するだけではない化合物であるという点で、当該技術分野における通例の意味を有する。
【0023】
甘味料は、有利には、本発明の逆相エマルション中に、単独で又は着香性成分と混ぜられて存在してもよい。
【0024】
分散相中で使用することができる着香性の化合物又は甘味料は、上に定義した通り、親水性である。これらの成分は、極性溶媒と1つの相溶液を形成する。
【0025】
親水性の着香性化合物及び甘味料のうちで、適したものは、当業者によって、その一般的に知識に基づいて、及び意図された使用又は適用及び所望の官能効果に従って選択される。
【0026】
"香味料"との用語は、本発明の文脈では、ただ一つの着香性分子、又は幾つかの着香料を有する組成物に関係してよい。好ましくは、香味料組成物との用語は、少なくとも2種の香味料分子の組成物に関係する。香味料との用語は、三叉神経の介在によって知覚される化合物、例えば清涼化合物、唾液分泌性化合物、刺激性化合物及び刺痛性化合物も含む。概して、着香性化合物は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン、炭化水素、含窒素又は含硫黄複素環式化合物及び精油にいたるさまざまな化学種に属する。それらは天然起源又は合成起源であってよい。これらの成分の多くは、いずれの場合も、参考文献、例えばS.Arctander著の書籍、Perfume and Flavor Chemicals、1969、Montclair、New Jersey,USA、又はそのより最近の版、又は同様の類いの他の著作物、並びに香味料の分野における豊富な特許文献に列記されている。
【0027】
本発明の逆相エマルション中で使用される少なくとも1種の着香性化合物が天然香味料であることが特に有利である。
【0028】
頻繁に揮発性である着香性化合物は、有利には、それらの損失を抑えるためにカプセル化することができる。当該技術分野において知られている任意のカプセル化法、例えば噴霧乾燥又は押出を、これらの着香性化合物をカプセル化するために使用することができる。
【0029】
本発明の逆相エマルション中に存在する連続相の全量は、上で説明した通り、分散相の所望の割合によって決定される。したがって、概して連続相は、エマルションの20〜55%を、有利には25〜40%を表す。連続相の重要な成分は、レシチン及び疎水性成分である。
【0030】
レシチンは、通常、アセトン不溶性ホスファチドの複雑な混合物として定義されており、それは、主としてホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルイノシトールから成り、他の物質、例えばトリグリセリド、脂肪酸、及び炭水化物のさまざまな量が組み合わさったものであり、粗製植物油源とは区別される。本発明の目的のために、"レシチン"とは、上に述べたリン脂質の少なくとも2種の任意の混合物、好ましくは上に述べたリン脂質の少なくとも3種の任意の混合物を意味する。さらに"レシチン"との用語は、レシチンの修飾形態、例えばヒドロキシル化レシチン又は酵素分解レシチンを含む。
【0031】
本発明における使用のために特に効果的なレシチンは、Alcolec(R)F−100(出所:American Lecithin)、Adlec(R)soy(出所:ADM)及びEpikuron 200(出所:Cargill)の名称で販売されるレシチンを含む。
【0032】
レシチンは、エマルション中に、概して2〜10%、且つ好ましくは5〜10%の間で含まれる、比較的低い量で存在する。
【0033】
疎水性成分は、疎水性溶媒、疎水性の着香性化合物又はそれらの混合物であってよい。
【0034】
"疎水性溶媒"として、上に定義した通り疎水性であり、且つ水と混和性ではない任意の溶媒が意味されている。中鎖トリグリセリド(例えば、商品名Neobee(R)で販売されるカプリル/カプリントリグリセリド)及びトリアセチンが、係る疎水性溶媒の例である。Neobee(R)が好ましく、Neobee(R)M5が最も好ましい。
【0035】
"疎水性香味料"として、上に定義した通り、ただ一つの着香性化合物又は疎水性である着香性化合物の混合物が意味されている。疎水性成分は、疎水性香味料と疎水性溶媒の混合物であってもよい。
【0036】
疎水性成分は、10〜53%の間で含まれる量で、且つ好ましくは15〜50%の量で存在する。
【0037】
任意に、本発明のエマルションは香味助剤も有してよい。"香味助剤"とは、追加的に加えられる利益、例えば色、特定の耐光性、化学的安定性等を付与することができる成分を意味する。着香性ベース中で一般に使用される助剤の性質及び種類の詳細な記載は網羅し得ないが、係る成分は、当該技術分野に属する当業者によく知られている。
【0038】
本発明のエマルションは、当該技術分野に属する当業者に知られている、逆相エマルションの任意の製造法、例えば、低せん断混合、高せん断混合、音波処理又は均質化を用いて製造することができる。
【0039】
本発明の好ましい観点によれば、エマルションは、25℃で少なくとも1ヶ月間安定である。エマルションは、油層が形成されない時か又は形成された油層がエマルションの全体積のせいぜい10%を表す時に安定とみなされる。油層の体積は、Turbiscan装置、例えばTurbiscan MA 2000を用いて容易に測定することができる。
【0040】
本発明の逆相エマルションは、上に記載した通り、有利には任意の食品又は飲料中で使用することができる。それは、より有利には、疎水性製品又は油ベース製品である食品又は飲料中で使用される。係る製品の例として、特に風味食品及びチューイングガムを挙げることができ、なかでもチューイングガムが好ましい。塩味又は薬味を有する任意の食品として定義されている"風味食品"は、"風味"との用語に包含されている。スナックは、係る風味食品の特定の例である。
【0041】
本発明のエマルションを本発明の製品に添加することができる量は、幅広い範囲の値内で変動する。これらの値は、香味付けされる物の性質、及び所望の官能効果、並びに、本発明によるエマルションが、当該技術分野で一般に使用される着香性の共存成分、溶媒又は添加剤と混合される場合の、所定のベース中での共存成分の性質に依存する。香味付けされた最終製品中に含まれる本発明のエマルションの量は、所望の味に本質的に依存する。
【0042】
本発明の香味付けされた製品中で、エマルションは香味担体と混ぜ合わすことができる。"香味担体"とは、着香性成分の官能特性を著しく変えないような、香味に関して実質的に中性の材料を意味する。該担体は、液体又は固体であってよい。
【0043】
適した液体担体は、例えば、香味料中で一般に使用される溶媒を包含する。適した溶媒は、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、トリエチルシトレート、ベンジルアルコール、エタノール、植物油又はテルペンを包含する。この列挙したものは非網羅的であり、且つ当業者であれば、他の溶媒が本発明における使用のために適切であり得ることを容易に理解する。
【0044】
適した固体の担体は、例えば、吸収ゴム又はポリマー、又はそのうえカプセル化材料を包含する。係る材料の例は、壁形成材料及び可塑化材料、例えば単糖類、二糖類又は三糖類、天然デンプン又は化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、又は参考文献、例えばH.Scherz,Hydrokolloids:Stabilisatoren,Dickungs− und Geliermittel in Lebensmittel,Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie,Lebensmittelqualitaet,Behr's Verlag GmbH & Co.,Hamburg,1996で挙げられた材料を包含する。カプセル化は、当該分野に属する当業者によく知られた方法であり、且つ、例えば、噴霧乾燥、凝塊形成及び押出しといった技法を使用して実施してよく;又は、それは被覆カプセル化、例えば単純コアセルベーション法又は複合コアセルベーション法から成ってよい。
【0045】
香味付けされた製品は、香味ベース及び/又は香味助剤も有してよい。"香味助剤"は、上に定義した通りである。"香味ベース"とは、上に定義した通り、少なくとも1種の着香性化合物を有する組成物を意味する
さらなる観点において、本発明は、タウマチンを分散相に添加する工程を有する、親水性香味料、水ではない極性溶媒、レシチン及び疎水性成分を含有する逆相エマルションを安定化するための方法に関する。エマルションの全ての成分は、下に定義した通りである。
【0046】
概して、タウマチンは、0.2〜1%の間で含まれる量で添加することができる。より狭い範囲は、エマルションの使用が予定されている製品、及び所望の官能効果に応じて定義することができる。例えば、0.25%〜0.5%の範囲の濃度を選択することができる。
【0047】
得られたエマルションは特に安定である。このことは、高い部分のプロピレングリコールを含有する逆相エマルションがレシチン単独によって十分には安定化されないことから意外である。このことは、タウマチンが乳化特性を有するとは全く記載されていなかったことから、なおさら意外である。本発明は、レシチンとタウマチンの混合物が上記エマルションの安定化にとって重要であることを明らかにする。レシチンとタウマチンは、ただでさえ高い濃度のプロピレングリコールを有し、且つ水の不在下にある逆相エマルションを安定化するのに相乗的に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1(組成物A)の逆相エマルションの顕微鏡写真を示す図
【図2】組成物A(左側の2つのびん)及び組成物B(右側の2つのびん)を示す写真図
【図3】25℃で2ヶ月貯蔵した後の組成物Eを示す写真を示す図
【実施例】
【0049】
本発明をこれから、以下の実施例によってさらに詳細に説明する。
【0050】
実施例1
本発明による逆相エマルション:タウマチンの安定化効果の証明
以下の成分を含んだ、逆相エマルションの形態の組成物A:
【表1】

1)アップル味、及び51.9:48.1のプロピレングリコールとNeobee(R)M5との境界部分を有する着香性成分の混合物、出所:Firmenich SA.
2)Thaumatin Nat 987499、水性プロピレングリコール中のタウマチンの5%溶液、出所:Overseal Natural Ingredients
3)Neobee(R)M5、出所:Stepan
4)Epikuron 200、出所:Cargill
【0051】
組成物Aの2つの同じ試料を以下の通り調製した。最初に、親水性(分散)相の調製を、プロピレングリコール3g中にタウマチン0.25gを溶解させることにより行った。この溶液を、磁気攪拌機により15分間攪拌し、次いでアップル香味料0.5gを磁気攪拌下で添加した。次いで溶液をさらに15分間攪拌した。
【0052】
疎水性(連続)相の調製を、Neobee(R)M5(出所:Stepan)1g中にEpikuron 200(出所:Cargill)0.25gを溶解させることにより行った。この溶液を、磁気攪拌機により30分間攪拌した。
【0053】
次いで親水性相を、磁気攪拌下で30分にわたり添加した。
【0054】
この混合物を、親水性相の添加後に、さらに5分間攪拌した。
【0055】
25℃で1日貯蔵した後の、得られた逆相エマルションの顕微鏡像を図1に示す。
【0056】
以下の成分を含んだ組成物B:
【表2】

1)アップル味、及び51.9:48.1のプロピレングリコールとNeobee(R)M5との境界部分を有する着香性成分の混合物、出所:Firmenich SA.
2)Neobee(R)M5、出所:Stepan
3)Epikuron 200、出所:Cargill
【0057】
成分Bでは、タウマチンの代わりにプロピレングリコールを使用したが、他の全ての成分は組成物A中の成分と同じであり、且つ分散相及び連続相の割合は組成物Aの割合と同じままであった。
【0058】
組成物Bの2つの同じ試料を以下の通り調製した。最初に、アップル香味料0.5gを、磁気攪拌下でプロピレングリコール3gに添加した。この溶液を、磁気攪拌機により30分間攪拌した。
【0059】
疎水性(連続)相の調製を、Neobee(R)M5(出所:Stepan)1g中にEpikuron 200(出所:Cargill)0.25gを溶解させることにより行ったこの溶液を、磁気攪拌機により30分間攪拌した。
【0060】
次いで親水性相を、磁気攪拌下で30分にわたり添加した。
【0061】
親水性相の添加後に、この混合物をさらに5分間攪拌した。
【0062】
組成物Aとは異なり、エマルションは形成されなかった。エマルションの調製直後に撮った図2の写真は、組成物A(左側の2つの試料)と組成物B(右側の2つの試料)との明らかな相違点を示している。組成物Bの2つの試料においては、2つの相が観察される(上部でライトグレー色、下部でダークグレー色)が、組成物Aの試料において相分離は観察されない。
【0063】
実施例2
本発明による逆相エマルション
以下の成分を含んだ、逆相エマルションの形態の組成物C:
【表3】

1)スイカ味、及び55.5:44.4のプロピレングリコールとNeobee(R)M5との境界部分を有する着香性成分の混合物、出所:Firmenich SA.
2)Thaumatin Nat 987499、水性プロピレングリコール中のタウマチンの5%溶液、出所:Overseal Natural Ingredients
3)Neobee(R)M5、出所:Stepan
4)Epikuron 200、出所:Cargill
【0064】
組成物Cを以下の通り調製した。最初に、親水性(分散)相の調製を、プロピレングリコール1g中にタウマチン0.25gを溶解させることによって行った。この溶液を、磁気攪拌機により15分間攪拌し、次いでスイカ香味料1gを磁気攪拌下で添加した。次いで溶液をさらに15分間攪拌した。
【0065】
疎水性(連続)相の調製を、Neobee(R)M5(出所:Stepan)2.25g中にEpikuron 200(出所:Cargill)0.25gを溶解させることにより行った。この溶液を、磁気攪拌機により30分間攪拌した。
【0066】
次いで親水性相を、磁気攪拌下で30分にわたり添加した。
【0067】
親水性相の添加後に、この混合物をさらに5分間攪拌した。
【0068】
逆相エマルションが形成された。
【0069】
実施例3
本発明による逆相エマルション
以下の成分を含んだ、逆相エマルションの形態の組成物C:
【表4】

1)スイカ味、及び55.5:44.4のプロピレングリコールとNeobee(R)M5との境界部分を有する着香性成分の混合物、出所:Firmenich SA.
2)Thaumatin Nat 987499、水性プロピレングリコール中のタウマチンの5%溶液、出所:Overseal Natural Ingredients
3)Neobee(R)M5、出所:Stepan
4)Epikuron 200、出所:Cargill
【0070】
組成物Dを以下の通り調製した。最初に、親水性(分散)相の調製を、プロピレングリコール1g中にタウマチン0.25gを溶解させることによって行った。この溶液を、磁気攪拌機により15分間攪拌し、次いでスイカ香味料1gを磁気攪拌下で添加した。次いで溶液をさらに15分間攪拌した。
【0071】
疎水性(連続)相の調製を、Neobee(R)M5(出所:Stepan)1g中にEpikuron 200(出所:Cargill)0.25gを溶解させることにより行った。この溶液を、磁気攪拌機により30分間攪拌した。
【0072】
次いで親水性相を、磁気攪拌下で30分にわたり添加した。
【0073】
親水性相の添加後に、この混合物をさらに5分間攪拌した。
【0074】
逆相エマルションが形成された。
【0075】
実施例4
本発明による逆相エマルション
以下の成分を含んだ、逆相エマルションの形態の組成物E:
【表5】

1)出所:Firmenich SA.
2)Thaumatin Nat 987499、水性プロピレングリコール中のタウマチンの5%溶液、出所:Overseal Natural Ingredients
3)Neobee(R)M5、出所:Stepan
4)Epikuron 200、出所:Cargill
【0076】
組成物Eを以下の通り調製した。最初に、親水性(分散)相の調製を、プロピレングリコール15.3g中にタウマチン1.5gを溶解させることによって行った。この溶液を、磁気攪拌機により15分間攪拌し、次いでスクラロース4.2gを磁気攪拌下で添加した。次いで溶液をさらに15分間攪拌した。
【0077】
疎水性(連続)相の調製を、Neobee(R)M5(出所:Stepan)8.4g中にEpikuron 200(出所:Cargill)0.6gを溶解させることにより行った。この溶液を、磁気攪拌機により30分間攪拌した。
【0078】
次いで親水性相を、プロペラによる500rpmでの攪拌下で10分にわたり疎水性相に添加した。親水性相の添加後に、この混合物をさらに同じ速度で5分間攪拌した。
【0079】
逆相エマルションが形成された。組成物Eを25℃で2ヶ月の間貯蔵した。逆相エマルションは、この期間のあいだずっと安定し続け、且つ図3に示される通り、相分離は観察されなかった。
【0080】
実施例5
本発明の逆相エマルションを含有するチューイングガム及び官能検査
チューイングガムの2つの試料を調製した:チューイングガムA(純粋なスクラロースを用いて調製した対照標準)及びチューイングガムB(実施例4の逆相エマルション(組成物E)を用いて調製した試験試料)。双方の試料は、スクラロース0.1%の最終的な濃度を有していた。まず第一に、香味付けされていないチューイングガムを、以下の成分の表示された量で調製した。
【0081】
【表6】

1)出所:Cafosa
【0082】
シグマブレードミキサーを45〜50℃に予熱し、且つ結晶ソルビトール P60W、マルチトールシロップ及びグリセリンの半分を添加した。ガムベースSolsona T及びガスベースVegaを、60〜65℃に加熱し、且つ該ミキサーに添加した。混合を約4分間行った。残りの結晶ソルビトール P60W、マルチトールシロップ及びグリセリンを添加し、且つ混合をさらに4分間継続した。上記のように調製された香味付けされていないチューインガムを、次いで香味付けし、且つ甘味付けして、以下のチューインガム組成物を準備した:
【表7】

1)ストロベリー味を有する着香性成分の混合物、出所:Firmenich SA,Geneva,Swithzerland
2)出所:Firmenich SA,Geneva,Switzerland
【0083】
チューイングガムAのために、甘味料を、香味付けされていないチューインガム調製物に添加し、そして約2分間混合した。次いで香味料を添加し、且つ2〜4分間継続的に混合した。
【0084】
チューイングガムBのために、エマルションEを添加し、且つさらに2分間継続的に混合した。
【0085】
甘味付いているチューインガムA及びBを放出して、薄片状にし、そして棒状又は板状に切断した。
【0086】
6人の訓練済みのパネリストに、チューイングガムA及びチューイングガムBの甘味を30秒、60秒及び120秒の咀嚼時間後に評価するよう求めた。試料をブラインド試験に基づき呈示し、且つバランスのとれた呈示順で続けた。該パネリストに、0〜10にわたる段階で試料の甘味に評価を付けるよう求め、ここで、10は最も甘味知覚が最も強く、且つ0は甘味知覚がない。
【0087】
30秒後に、パネリストは、チューイングガムAがチューイングガムBより甘いと知覚したのに対して、60秒後及び120秒後に、全てのパネリストは、チューイングガムBがチューイングガムAより著しく甘いと知覚した。官能検査は、甘味の長期持続性が、スクラロースをそのまま添合する代わりに、本発明の逆相エマルションの形態においてチューイングガムベースに添加すると改善されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆相エマルションであって、
(a)以下(i)〜(iv)を有する分散相45〜80%
(i)タウマチン0.2〜1%;
(ii)水ではない極性溶媒10〜68.8%;
(iii)水0〜58.8%;及び
(iv)親水性の香味料又は甘味料1〜30%;
(b)以下(i)、(ii)を有する連続相20〜55%
(i)レシチン2〜10%;及び
(ii)疎水性材料18〜53%;
を有し、その際、全ての百分率は、該エマルションの全質量を基準として、質量によって定義される、逆相エマルション。
【請求項2】
前記エマルションの全質量を基準として、分散相60〜75質量%及び連続相25〜40質量%を有することを特徴とする、請求項1記載の逆相エマルション。
【請求項3】
前記分散相が、前記エマルションの全質量を基準として、タウマチン0.25〜0.5質量%を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の逆相エマルション。
【請求項4】
前記極性溶媒が、完全に水混和性であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の逆相エマルション。
【請求項5】
前記極性溶媒がプロピレングリコールであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の逆相エマルション。
【請求項6】
前記エマルションが、前記エマルションの全質量を基準として、水2.5%未満を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の逆相エマルション。
【請求項7】
前記エマルションが水を含まないことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の逆相エマルション。
【請求項8】
前記エマルションが、前記エマルションの全質量を基準として、レシチン5〜10%を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の逆相エマルション。
【請求項9】
25℃で1ヶ月の貯蔵後、油層が形成されないか又はせいぜい10%の油層が形成されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の逆相エマルション。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の逆相エマルションを有する食品又は飲料。
【請求項11】
前記食品又は飲料が疎水性であることを特徴とする、請求項10記載の食品又は飲料。
【請求項12】
前記食品が風味食品又はチューイングガムであることを特徴とする、請求項11記載の食品。
【請求項13】
親水性の香味料又は甘味料、水ではない極性溶媒、レシチン及び任意に水を含有する逆相エマルションを安定化するための方法であって、該エマルションの分散相に、該エマルションの全質量を基準として、タウマチン0.2〜1質量%を添加する工程を有する方法。
【請求項14】
タウマチンを、前記エマルションの全質量を基準として、0.25〜0.5質量%の量で添加することを特徴とする、請求項13記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−529284(P2012−529284A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514573(P2012−514573)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052515
【国際公開番号】WO2010/143120
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】