説明

逆走防止ストッパ装置

【課題】ホイールコンベア上を移動する被搬送物品の逆走を防止する逆走防止ストッパ装置を提供する。
【解決手段】物品の移動経路に突出するストッパ部材5と、同ストッパ部材5を回動自在に支持する支持部材6とで成り、ストッパ部材5は、重心を支持部材6による支持位置よりも下方に有し、自重により起立状態を保持する構成であり、支持部材6は、ホイールコンベア2の端部に取付けて固定される構成であり、ストッパ部材5は、物品の前進方向にのみ倒れ、後退方向には起立状態を保持可能に支持部材と接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホイールコンベア上を移動する被搬送物品の逆走を防止する逆走防止ストッパ装置の技術分野に属し、更に云えば、ホイールコンベアへ着脱自在の取付けが可能な逆走防止ストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の製造現場では、被搬送物品(以下、単に物品という)を重力の作用で移動させる角度に傾斜させた複数のホイールコンベアで棚面を構成した流動棚が利用されている。この流動棚は、投入側から物品を投入すると、同物品の自重と傾斜で取出側へ自走していき、各物品が数珠繋ぎに順次保管されるので、作業者へ物品を順次に供給することに有効である。
このような流動棚から物品を取出側で取り出すには、数珠繋ぎの上部の物品を一旦後退方向へ押し戻してから、目的の物品を取り出す必要がある。このとき、時には力が余って、棚上の物品を後退方向へ逆走させてしまい、投入側から落下させてしまう場合がある。また、地震の際には、投入側から物品が逆送して飛び出し落下する虞もある。そこで、このような逆走による物品の落下事故を防止するため、下記の特許文献1に記載された逆走防止ストッパ装置が知られている。
【0003】
特許文献1の逆走防止ストッパ装置70は、図7A、Bに示すように、ホイールコンベア71のホイール72とホイール72との間に配置されている。このストッパ装置70は、物品Gの移動経路(ライン)上に突き出るストッパ部材70aと、該ストッパ部材70aを回動自在に、且つこのストッパ部材70aが前記物品Gの移動方向にのみ倒れ、後退方向には起立状態を保持可能に支持する支持材70bとで構成されている。前記ストッパ部材70aと支持材70bとは、同ストッパ部材70aが起立する位置に設けられたバネ材73により連結されており、物品Gが矢印方向(前進方向)に移動してきてストッパ部材70aに当たると、バネの力に抗して同方向へ倒される(図7A参照)。しかし、物品Gが通り過ぎると、直ちにバネの力によってストッパ部材70aが元の起立状態に戻される(図7B参照)。物品Gが後退方向へ移動しストッパ部材70aに当たる場合、ストッパ部材70aは支持材70bの上部に当たり後退方向への回動が規制されて、物品Gの逆走を確実に防止できる構成である。
この逆走防止ストッパ装置70をホイールコンベア71へ取付けるには、図示の通り、支持材70bの下端部と連結されたステー74によりホイールコンベア71の底面とボルト接合して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭52−37427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の発明は、バネ材73の弾性力によりストッパ部材70aの起立状態を保持する方法である。しかし、このホイールコンベア71上には大量の物品が移動するため、バネ材73の弾力性能の低下・劣化が早まり、その定期的なチェックや、バネ材を取り替える作業が生じメンテナンスが面倒であるという問題がある。
【0006】
また、逆走防止ストッパ装置70をホイールコンベア71へ取付ける作業は、ホイールコンベア71の底面にボルト接合するので、非常に面倒である。更に、その取付け位置は、ホイール72とホイール72の間であり、物品Gの走行の妨げとならないように、ストッパ部材70aが倒れる最大角を計算して取付ける必要がある。つまり、ストッパ部材70aが前進方向へ倒れた際、ストッパ部材70aの上端がホイール72の上面より突き出さず、且つホイール72の回転を妨害しない位置に配置しなければならない。したがって、熟練した技術を要し、作業性も著しく悪く、誰でも容易に着脱できる構成ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点を解決することであり、ストッパ装置のメンテナンス作業を簡便にし、取付け作業が非常に簡単で、誰でも容易に着脱でき、取付状態の安定性が高く、作業性が飛躍的に向上できるバネ材を使用しない逆走防止ストッパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る逆走防止ストッパ装置は、
梁材間に架設されたホイールコンベア上を移動する被搬送物品の逆走を防止するストッパ装置において、
前記被搬送物品の移動経路に突き出るストッパ部材と、同ストッパ部材をヒンジ部により回動自在に支持する支持部材とで成り、
前記ストッパ部材は、その重心が支持部材による支持位置よりも下方に有り、自重により起立状態を保持する構成であり、
前記支持部材は、ホイールコンベアの端部に取付けて固定される構成であり、
前記ストッパ部材は、被搬送物品の前進方向にのみ倒れ、後退方向には起立状態を保持可能に前記支持部材と接合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した逆走防止ストッパ装置において、
ストッパ部材は、同ストッパ部材が被搬送物品に押されて後退方向へ回動するのをホイールコンベアを架設した梁材により規制されて起立状態を保持する構成で支持部材に支持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した逆走防止ストッパ装置において、
支持部材には、ホイールコンベアを梁材へ架設する取付金具のリップ部を嵌め得る切り込み溝が形成されており、同取付金具のリップ部に支持部材の切り込み溝を嵌め合わせてホイールコンベアへ取付け固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3に記載した発明に係る逆走防止ストッパ装置4は、物品Gの移動経路に起立状態を保持するストッパ部材5と、同ストッパ部材5を回動自在に支持する支持部材6とのみで構成され、特に、支持部材6はホイールコンベア2の端部へ挿入するだけで取付け固定可能な構造である。したがって、この逆走防止ストッパ装置4(以下、単ストッパ装置4と云う。)の取付け固定作業には工具が必要なく、ボルト接合作業や、取付け位置の計算と調整作業が一切必要無く、誰でも容易に取付け作業を行え、作業性を飛躍的に向上できる。また、取り外しも上記固定方法を単に逆に行うだけで行えるため、熟練した技術が無くても誰でも自在に着脱作業を行え、使い勝手がすこぶる良い。
【0012】
また、本発明のストッパ装置4は、バネ材により起立状態を保持する構成ではなく、ストッパ部材5の自重により保持するので、バネ材の点検や取り替えの必要が無く、メンテナンス作業が非常に簡便である。
【0013】
更に、請求項3に記載した本発明の逆走防止ストッパ装置4は、支持部材6に取付金具3のリップ部32を嵌め得る大きさと位置に切り込み溝60aを形成し、同取付金具3のリップ部32に支持部材6の切り込み溝60aを嵌め合わせたうえで、ホイールコンベア2へ取付け固定する構成としたので、前記支持部材6がホイールコンベア2から抜け出ることがない。また、取付金具3に嵌め合わされたストッパ装置4の支持部材6は、取付金具3が本来有するホイールコンベア2への固定力によりホイールコンベア2の端部と密接状態に固定されるので、取付状態の安定性が非常に高い。
更に、前記切り込み溝60aを様々な取付金具及びホイールコンベアのリップ部を嵌め得るように十分に切り込んでおけば、汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る逆走防止ストッパ装置を流動棚へ実施した一例を示した斜視図である
【図2】本発明に係る逆走防止ストッパ装置の拡大斜視図である。
【図3】A、Bは、本発明に係る逆走防止ストッパ装置をホイールコンベアへ取付ける要領を示した分解斜視図である。
【図4】逆走防止ストッパ装置をホイールコンベアへ取付けた状態を示した断面図である。
【図5】A、Bは、本発明の逆走防止ストッパ装置をホイールコンベアへ取付て稼働させた状態を示す側面図である。
【図6】Aは、実施例2の逆走防止ストッパ装置を示した斜視図である。Bは、Aの側面図である。
【図7】A、Bは従来例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、梁材11、11間に架設されたホイールコンベア2上を移動する物品Gの逆走を防止するストッパ装置4である。
前記物品Gの移動経路に突き出るストッパ部材5と、同ストッパ部材5をヒンジ部7により回動自在に支持する支持部材6とで成る。
前記ストッパ部材5は、重心が支持部材6による支持位置よりも下方に有り、自重により起立状態を保持する構成とした。
また、前記支持部材6は、ホイールコンベア2の端部に取付けて固定される構成である。
前記ストッパ部材5は、同ストッパ部材5が前記物品の前進方向にのみ倒れ、後退方向には起立状態を保持可能に支持部材6と接合されている。
【実施例1】
【0016】
以下に、本発明に係る逆走防止ストッパ装置の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の逆走防止ストッパ装置4を、流動棚1の枠体10を構成する梁材11、11へ架設して棚を構成する各ホイールコンベア2…の投入側Eの端部に取付けた実施例を示した。
各ホイールコンベア2は、その両端部に取付けられた取付金具3、3により流動棚1の前後の梁材11、11間に、物品が重力の作用で投入側Eから取出側Dへ自走する角度に傾斜された状態で架設されている。因みに、前記取付金具3は一般的に使用されるホイールコンベア2を梁材11、11へ架設する金具であり、具体的には、図3A、Bに示すように梁材11上に載せ架けるアーチ型の梁材受け部30と、ホイールコンベア2に差し込まれるレール部31及びリップ部32とから構成されている。
【0017】
次に、本発明の逆走防止ストッパ装置4(以下、単にストッパ装置という)の具体的構成を図2に示し、同逆走防止ストッパ装置4をホイールコンベア2へ取付け固定する要領を図3及び図4に示した。
このストッパ装置4は、物品の移動経路上に起立するストッパ部材5と、同ストッパ部材5を回動自在に支持するL字形状の支持部材6とで構成されている。
前記ストッパ部材5は、重心が前記支持部材6による支持位置よりも下方に有り、自重により起立状態を保持する構成とされている。
前記支持部材6は、後述する前記ホイールコンベア2の端部へ挿入され取付可能な形状と大きさに形成された固定部60と、前記ストッパ部材5と接合される水平部61とから構成されている。前記固定部60には、前記取付金具3のリップ部32、32(図3A、B参照)を嵌め得る大きさと位置に形成された切り込み溝60a、60aが形成されている。この切り込み溝60aは、様々な厚さの取付金具3のリップ部32に対応するように、十分に大きく切り込むことが好ましい。また、リップ部32の幅以上で、水平部61の全長にわたって切り欠いた形状としても良い。
【0018】
前記支持部材6は、前記ストッパ部材5をヒンジ部7により回動自在に支持している。つまり、ストッパ部材5の内側中間部に平面視に見て凹み字状に2カ所設けた支持パイプ50、50の軸心と、支持部材6の水平部61の端部から連結した平面視に見て凸字状の支持パイプ61aの軸心とを一致させ、その両パイプ50、60a内に挿入したピポットピン8により回動自在に支持し、同ストッパ部材5が起立状態のとき支持部材6の水平部61と略直角となるように支持している。図2に示す支持状態においては、ストッパ部材5は物品の前進方向にも後退方向にも回動するが、ストッパ装置4がホイールコンベア2の端部へ取付けられると、ストッパ部材5の後退方向への回動はホイールコンベア2を架設した梁材11により規制されて起立状態が保持される構成とされている(図4参照)。
【0019】
図3A、Bに示すように、上記の構成とされたストッパ装置4は、最初に取付金具3の開口部からレール部31内へ挿入される。つまり、ストッパ装置4を構成する支持部材6の切り込み溝60a、60aを、取付金具3のリップ部32と嵌め合わせて同レール部31内へ挿入される。
【0020】
そして、上記のようにストッパ装置4が挿入された取付金具3を、前記梁11、11間に合わせてぴったり嵌り込む長さのホイールコンベア2内へ深く挿入すると、取付金具3が本来有するホイールコンベア2への固定力によりストッパ装置4の固定部60の外側面とホイールコンベア2の端部とが密接状態となり、ストッパ装置4がホイールコンベア2へ強固に取付け固定される(図4参照)。
【0021】
次に、上記のようにストッパ装置4を固定したホイールコンベア2を、図1に示す流動棚1の梁材11、11間へ架設し、物品Gを移動させた際のストッパ装置4の動作について、図5に基づいて説明する。
先ず、図5Aに示すように、投入側Eから物品Gが移動しストッパ部材5へ当たると、ストッパ部材5は前進方向に回動して倒れ込んで、同物品Gをホイールコンベア2上へ導き取出側Dへ向かって自走させる。前記物品Gがストッパ部材5の上を通り過ぎた後は、同ストッパ部材5は自重により直ちに起立状態へ戻る(図5B)。
ホイールコンベア2上に物品Gが連なって一杯になり、取出側Dから最下部の物品Gを取り出す際に、一旦、上方の物品Gを後退方向(投入側E)へ押す(又は地震により物品が後退方向へ力が加わる場合も含む)と、最も投入側Eに近い物品Gが後退方向へ進みストッパ部材5の内側面へ当たる(図5Bの点線部分参照)が、前記ストッパ部材5は取付金具3の梁材受け部30又は梁材11に当たり起立状態以上は回動しないように規制されるので、ストッパ部材5の起立状態が確実に保持される。したがって、物品Gの後退方向への逆走を止め、物品Gの落下事故を防止することができる。
【実施例2】
【0022】
本発明の逆走防止ストッパ装置4は、実施例1の限りではない。
即ち、実施例1のストッパ装置4は、支持部材6がストッパ部材5を約360°回動可能に支持しており、ストッパ部材5の後退方向への回動を規制するには、ストッパ部材5の下端が梁材11に当たり起立状態以上は回動しないことでならしめている。しかし、ホイールコンベア及び取付金具の形状においては、ストッパ部材5が梁材11に当たらない又は確実に規制できない場合もある。実施例2は、そうした場合に対応するストッパ装置9である。基本構成は実施例1と同じであり、以下その相違点を中心に説明する。
【0023】
このストッパ装置9の支持部材90は、ストッパ部材91を回動自在に、且つストッパ部材91は前記物品の前進方向にのみ倒れ、後退方向には起立状態を保持可能に支持部材90と接合される構成とされている。
【0024】
具体的には、図6A、Bに示すように、ストッパ部材91の内側中間部の2カ所に設けられた支持パイプ91a、91aが、支持部材90の水平部90aの上に突き出た配置とされ、同水平部90aの端部から連結して同様に突き出た支持パイプ90bと、その軸心同士が一致され、両パイプ91a、90bにピポットピン92が挿入されて、回動可能に支持されている。
【0025】
したがって、図6Bに示すように、前記ストッパ部材91に後退方向への力が加わり時計方向の回動力が働いたとしても、支持部材90の水平部90aの端部側面R(又は板厚とも云う)が同回動力に十分に抵抗するので、物品の後退方向へ倒れることはない。したがって、梁材11に当たらなくても、物品の逆走を防止することができる。
【0026】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため付言する。例えば、逆走防止ストッパ装置4、9は取付金具3を介してホイールコンベア2へ固定される構成を示したが、この限りではなく、前記ストッパ装置4、9をホイールコンベア2の端部へ直接固定しても良い。この場合、ストッパ装置4(ストッパ装置9も含む。)の固定部60の切り込み溝60aはホイールコンベア2のリップ部へ嵌め合わせて固定する。
【符号の説明】
【0027】
2 ホイールコンベア
3 取付金具
4 ストッパ装置
5 ストッパ部材
6 支持部材
7 ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材間に架設されたホイールコンベア上を移動する被搬送物品の逆走を防止するストッパ装置において、
前記被搬送物品の移動経路に突き出るストッパ部材と、同ストッパ部材をヒンジ部により回動自在に支持する支持部材とで成り、
前記ストッパ部材は、その重心が支持部材による支持位置よりも下方に有り、自重により起立状態を保持する構成であり、
前記支持部材は、ホイールコンベアの端部に取付けて固定される構成であり、
前記ストッパ部材は、被搬送物品の前進方向にのみ倒れ、後退方向には起立状態を保持可能に前記支持部材と接合されていることを特徴とする、逆走防止ストッパ装置。
【請求項2】
ストッパ部材は、同ストッパ部材が被搬送物品に押されて後退方向へ回動するのをホイールコンベアを架設した梁材により規制されて起立状態を保持する構成で支持部材に支持されていることを特徴とする、請求項1に記載した逆走防止ストッパ装置。
【請求項3】
支持部材には、ホイールコンベアを梁材へ架設する取付金具のリップ部を嵌め得る切り込み溝が形成されており、同取付金具のリップ部に支持部材の切り込み溝を嵌め合わせてホイールコンベアへ取付け固定されていることを特徴とする、請求項1に記載した逆走防止ストッパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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