説明

透光性多結晶質焼結体、透光性多結晶質焼結体の製造方法及び高輝度放電灯用発光管

【課題】光の直線透過率が高く、しかも、曲げ強度が大きく、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプ等の高輝度放電灯に使用される発光管の製造に適した透光性多結晶質焼結体を提供する。
【解決手段】透光性多結晶質焼結体は、アルミナを主成分とし、高輝度放電灯に用いられる発光管の製造に適した透光性多結晶質焼結体において、平均粒径が35〜70μm、好ましくは50〜60μmである。0.5mm厚の平板形状とした場合における直線透過率が30%以上、好ましくは50%以上である。0.5mm厚の平板形状とした場合における可視光領域(360〜830nm)の直線透過率の最大値と最小値の比が2:1〜1:1である。曲げ強度が250MPa以上、好ましくは300MPa以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプ等の高輝度放電灯に使用される発光管の製造に適した透光性多結晶質焼結体及びその製造方法、並びに透光性多結晶質焼結体を用いた高輝度放電灯用発光管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高輝度放電灯に用いられるセラミック焼結体の負荷容量を向上し、また、放電灯自体の負荷容量をも向上させるようにした技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。ここでいう負荷とは、放電灯の作動中に焼結体に加わる壁面熱負荷、及び放電管として使用される焼結体の壁面温度を意味する。
【0003】
特許文献1記載の技術は、3種類の添加剤、MgO(酸化マグネシウム)、ZrO(酸化ジルコニウム)及びY(酸化イットリウム)が共に用いられると、これら3種類の物質間で相互作用が起こり、これら添加剤の単なる添加の結果よりも明らかに優れた特徴をセラミック材料に付与することが可能となることが見出されたことに基づく。
【0004】
すなわち、従来技術で考えられた添加剤は、MgOとZrO、あるいはMgO、Y及びLa(酸化ランタン)の組み合わせのどちらかであり、しかも、どの物質も比較的多量に用いられていた。しかしながら、これらMgO、La及びYを添加しても、満足のいく結果が得られないことがわかった。つまり、その添加の結果得られるセラミックは、MgOだけが添加されたセラミックよりも品質的に劣るということがわかった。
【0005】
そこで、特許文献1では、3種類の物質(MgO、ZrO及びY)を、同時に、しかも少量添加することで、従来技術の課題を解決することができる。その添加量は、重量割合において、MgOが100〜800ppm、好ましくは100〜600ppm、特に好ましくは150〜280ppm、ZrOが、200〜1200ppm、好ましくは200〜800ppm、特に好ましくは300〜600ppm、そして、Yが、10〜300ppm、好ましくは10〜150ppm、特に好ましくは20〜75ppmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2780941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプ等の高輝度放電灯に使用される発光管の製造に適した透光性多結晶質焼結体としては、全光線透過率が高く、機械的強度、特に、曲げ強度が大きい焼結体であることが望ましい。この条件を満たすものとして、透光性アルミナが発光管材料として広く用いられている。
【0008】
ただし、従来の透光性アルミナからなる発光管を用いた高輝度放電灯では、結晶粒界の複屈折等の影響により、一般に、直線透過率が低く、0.5mm厚の平板における直線透過率は30%未満であった。このため、電極間の放電で生じた光が発光管内で散乱して外部に放出されるため、光源の大きさが発光管の大きさの制約になってしまい、点光源ではなく拡散光源になっていた。店舗照明やプロジェクタ用光源、車両用前照灯といった反射鏡と組み合わせて使うタイプの放電灯の場合、焦点位置等に発光部を配設して点灯させることによって、最適の配光分布特性が得られるよう設計されるので、焦点以外の領域から光が放射されると所望の配光特性を得ることができず、また、光学設計が困難になることがある。拡散光源の場合、反射鏡やレンズとの組合せによる光の制御には限界があり、上述のような反射鏡と組み合わせた光学装置への応用は困難で、一般照明用に用途が限定されてきた。
【0009】
これに対し、光の少なくとも可視光の範囲における直線透過率が高い透光性アルミナを発光管に用いた場合、電極間の放電により発生する光がそのまま直線的に放出され、その放電距離が小さい場合は実質的に点光源として取り扱うことができる。点光源から出てきた光は種々の反射鏡やレンズと組合せることによって、平行光に変換したり、スポット的に集光するなど光学的に自在に制御することが可能になる。
【0010】
直線透過率を高くするには、焼成温度を高くし、焼結体の平均粒径を大きくすることが考えられるが、この場合、一部の粒子のみが粗大化し、微粒と粗大粒が混在する混粒構造となり直線透過率の低下を招いたり、平均粒径を大きくし過ぎると、曲げ強度が低下したり、粒成長の過程で粒子と粒子の間が開いてしまう粒界割れが発生するという問題がある。
【0011】
他方、粒径を極端に小さくすることで、粒界における光の散乱を防ぎ直線透過率を高くすることも考えられるが(特開2006−160595号公報参照)、この場合、光の各波長における直線透過率の差が大きくなり、透過した光に色ムラができる原因となる。また、この場合、焼成温度を低く設定するため、粒子の活性が高い状態にあり、高温で使用される高輝度放電灯用としては耐熱温度が不足する。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、光の直線透過率が高く、しかも、曲げ強度が大きく、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプ等の高輝度放電灯に使用される発光管の製造に適した透光性多結晶質焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、透光性が高く、しかも、機械的強度も高く、高輝度放電灯に用いて好適な発光管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1] 第1の本発明に係る透光性多結晶質焼結体は、アルミナを主成分とし、高輝度放電灯に用いられる発光管の製造に適した透光性多結晶質焼結体において、前記透光性多結晶質焼結体を構成する焼結体粒子の平均粒径が35〜70μm、好ましくは50〜60μmであることを特徴とする。
【0015】
[2] 第1の本発明において、前記透光性多結晶質焼結体を0.5mm厚の平板形状とした場合における波長600nmの光の直線透過率が30%以上、好ましくは50%以上であることを特徴とする。
【0016】
[3] 第1の本発明において、前記透光性多結晶質焼結体を0.5mm厚の平板形状とした場合における可視光領域(360〜830nm)の直線透過率の最大値と最小値の比が2:1〜1:1であることを特徴とする。
【0017】
[4] 第1の本発明において、前記透光性多結晶質焼結体の曲げ強度が250MPa以上、好ましくは300MPa以上であることを特徴とする。
【0018】
[5] 第1の本発明において、前記透光性多結晶質焼結体の全光線透過率が85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることを特徴とする。
【0019】
[6] 第1の本発明において、添加材料として、30〜200重量ppm、好ましくは30〜100重量ppm、さらに好ましくは30〜80重量ppmのMgOを含むことを特徴とする。
【0020】
[7] 第1の本発明において、添加材料として、200〜1200重量ppm、好ましくは200〜800重量ppmのZrOを含むことを特徴とする。
【0021】
[8] 第1の本発明において、添加材料として、5〜300重量ppm、好ましくは5〜30重量ppm、さらに好ましくは5〜9重量ppmのYを含むことを特徴とする。
【0022】
[9] 第1の本発明において、添加材料としてMgO、ZrO及びYを含み、前記ZrOとYの重量の合計と、MgOの重量の比が、1:1から50:1、好ましくは2:1から15:1であることを特徴とする。
【0023】
[10] 第1の本発明において、添加材料としてMgO及びYを含み、前記Yの重量と、MgOの重量の比が、1:1から1:40、好ましくは1:2から1:20、さらに好ましくは1:5から1:10であることを特徴とする。
【0024】
[11] 第1の本発明において、添加材料として、10〜50重量ppmのSiO、10〜50重量ppmのNaO、10〜50重量ppmのKOを含むことを特徴とする。
【0025】
[12] 第1の本発明において、前記透光性多結晶質焼結体を構成する焼結体粒子のうち、粒径が平均粒径の1/2以下の焼結体粒子の数が40%以下、好ましくは30%以下であることを特徴とする。
【0026】
[13] さらに、前記透光性多結晶質焼結体を構成する焼結体粒子のうち、粒径が平均粒径の1.5倍以上の焼結体粒子の数が5%以上15%以下、好ましくは10%以上15%以下であることを特徴とする。
【0027】
[14] 第2の本発明に係る焼結体の製造方法は、上述した第1の本発明に係る透光性多結晶質焼結体を製造するための焼結体の製造方法において、主成分と添加材料とを調合して混合物を作製する材料調合工程と、前記混合物を成形して成形体を作製する成形体作製工程と、前記成形体を予備焼成して焼結体前駆体を作製する予備焼成工程と、前記焼結体前駆体を本焼成して透光性多結晶質焼結体を作製する本焼成工程とを有することを特徴とする。
【0028】
[15] 第2の本発明において、前記混合物は、前記主成分と前記添加材料とを含むセラミックス粉末とゲル化剤と溶剤とが少なくとも混合されたスラリーであり、前記成形体は、前記スラリーを金型に供給した後に硬化することにより作製されることを特徴とする。
【0029】
[16] 第2の本発明において、前記予備焼成は、酸化雰囲気で前記成形体中の有機バインダーを分解除去し、前記本焼成は、前記焼結体前駆体を、水素雰囲気又は真空中で1700℃〜2000℃で焼成することを特徴とする。
【0030】
[17] 第2の本発明において、前記本焼成工程は、前記本焼成を、複数回に分けて行うことを特徴とする。
【0031】
[18] 第2の本発明において、前記本焼成工程は、前記1700℃〜2000℃で焼成される時間が3時間以上、好ましくは6時間以上、さらに好ましくは10時間以上であることを特徴とする。
【0032】
[19] 第2の本発明において、前記本焼成により、作製される前記透光性多結晶質焼結体中のMgOを一部除去することを特徴とする。
【0033】
[20] 第2の本発明において、前記本焼成工程により、作製される前記透光性多結晶質焼結体中のMgOを、前記材料調合工程におけるMgO添加量の2/3、好ましくは1/2、さらに好ましくは1/3に相当する量まで減らすことを特徴とする。
【0034】
[21] 第2の本発明において、前記本焼成した後、大気中で1100℃〜1600℃でアニール処理を行うことを特徴とする。
【0035】
[22] 第3の本発明に係る高輝度放電灯用発光管は、上述した第1の本発明に係る透光性多結晶質焼結体にて構成されていることを特徴とする。
【0036】
[23] 第4の本発明に係る高輝度放電灯用発光管は、上述した第2の本発明に係る焼結体の製造方法にて製造された透光性多結晶質焼結体にて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明に係る透光性多結晶質焼結体及びその製造方法によれば、光の直線透過率が高く、しかも、曲げ強度が大きく、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプ等の高輝度放電灯のうち、反射鏡と組み合わせて使用されるタイプの発光管の製造に適したものとなる。
【0038】
また、本発明に係る発光管は、透光性が高く、しかも、機械的強度も高く、高輝度放電灯のうち、反射鏡と組み合わせて使用される発光管に用いて好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施の形態に係る高輝度放電灯用発光管を自動車前照灯用の高輝度放電灯に適用した一例を示す一部断面正面図である。
【図2】本実施の形態に係る発光管の一例を示す拡大縦断正面図である。
【図3】平均粒径の算出方法を示す説明図である。
【図4】粒度分布の測定方法を示す説明図である。
【図5】直線透過率の測定方法を示す説明図である。
【図6】全光線透過率の測定方法を示す説明図である。
【図7】本実施の形態に係る焼結体の製造方法を示す工程ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る透光性多結晶質焼結体及びその製造方法並びに高輝度放電灯用発光管の実施の形態例を図1〜図7を参照しながら説明する。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0041】
本実施の形態に係る高輝度放電灯用発光管が適用される高輝度放電灯は、出力定格約20〜1000Wで使用される高圧ナトリウム放電灯及びメタルハライドランプとして好適な放電灯である。
【0042】
高輝度放電灯10は、図1に示すように、基本的には、発光管12と、この発光管12を内部に収容した外管14と、該外管14を支持すると共に給電を行う一対の給電部材(第1給電部材16A及び第2給電部材16B)と、これらの各部材を接続した口金18とを有して構成されている。
【0043】
発光管12内には、放電媒体としてアルゴン(Ar)やキセノン(Xe)等の希ガスを含む始動及び緩衝ガス並びに発光金属としてのよう化ナトリウム(NaI)、よう化タリウム(TlI)、よう化インジウム(InI)及びよう化ツリウム(TmI)等の金属ハロゲン化物が封入されている。
【0044】
発光管12は、図2に示すように、長さ方向中間部に位置する発光部20と、該発光部20から両方向に延びる2つの小径円筒部22,22と、各小径円筒部22,22に挿通された電極構体24,24とを有する。電極構体24,24は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)やニオブ(Nb)等の金属線材料を一種又は複数種接続した線状の導入導体26と、発光部20内に臨む放電電極部28とからなり、対向した2つの放電電極部28,28の先端間で発光部20における光源が形成される。なお、発光管12は、小径円筒部22,22の外側の各開口部に形成されたガラス封着剤30によって気密封止された対称構造をしている。
【0045】
このとき、小径円筒部22内面と導入導体26外面との間に隙間がある場合は、導入導体26にタングステン(W)やモリブデン(Mo)等の細線を巻装して隙間を小さくしておくことが望ましい。また、導入導体26の小径円筒部22の開口部から導出する部分は外部導入導体として別体の導電線が接続されていてもよい。さらに、放電電極部28は、先端にタングステン(W)線を巻装したコイル状電極であってもよい。
【0046】
発光管12を内部に収容した外管14は透明な石英ガラスやアルミノシリケートガラス等からなる円筒状を有し、両端に発光管12から導出した導入導体26を直接あるいは導入導体26にガラスとのなじみがよいモリブデンMo線や箔等の金属部材32を介在させ、外管14を外部から加熱し収縮させて気密の封止部34,34を形成している。なお、この外管14内は、真空雰囲気あるいは窒素(N)やアルゴン(Ar)などが封入された希ガス雰囲気にしてある。
【0047】
この外管14は、一端側の封止部34近傍に巻装等により固定した金属バンド36を介し、口金シェル38の凹部40内に環状に設けられた環状の金属片42にスポット溶接等の手段で固定保持されている。
【0048】
また、外管14の一端から導出した第1給電部材16Aを構成する金属線44は口金シェル38の凹部40内及び絶縁体に形成した透孔46を通り、その先端は口金18の頂部の端子部材48に溶接やかしめあるいはろう付けにより接続されている。
【0049】
また、口金18とは反対側の第2給電部材16Bを構成する金属線50は、外管14とほぼ並行して配設され、口金シェル38のうち、凹部40とは異なる場所に設けられた透孔49を通り、口金シェル38の外側面に環状に設けられた他方の端子部材52に溶接やかしめあるいはろう付けにより接続されている。なお、図1中、54は外管14外を通る他方の金属線50の露出部を覆い電気的保護をなすセラミックス製等の絶縁管であり、56は口金シェル38の外側端部に設けられたフランジ部である。
【0050】
また、発光管12と口金18との固定に際しては、例えば口金18のフランジ部56を基準として環状の金属片42上に外管14を抱持した金属バンド36の係止片側を載置させ、発光管12を仮点灯する等すると共に発光管12を移動させて焦点位置とのバランスを調整する発光部20の位置合わせをした後、金属バンド36の係止片を環状の金属片42にスポット溶接等で固定し一体化することで、高輝度放電灯10が完成する。
【0051】
そして、発光管12は、本実施の形態に係る透光性多結晶質焼結体(以下、単に焼結体と記す)によって構成されている。
【0052】
本実施の形態に係る焼結体は、アルミナを主成分とし、平均粒径が35〜70μm、好ましくは50〜60μmである。粒度分布でみると、平均粒径の1/2以下の粒径の粒子の数が40%以下、且つ、平均粒径の1.5倍以上の粒径の粒子の数が5%以上15%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、平均粒径の1/2以下の粒径の粒子の数が30%以下、且つ、平均粒径の1.5倍以上の粒径の粒子の数が10%以上15%以下である。焼結体に含まれる5μm以下の微細気孔の数は390個/mm以下、好ましくは210個/mm以下、さらに好ましくは170個/mm以下である。なお、平均粒径の1.5倍以上の粒子の数が15%を超えていると、透過率の上昇が見られず、また、微細なクラックが入りやすく、強度が低下する。
【0053】
また、焼結体への添加材料として、MgO、ZrO、Yを含む。
【0054】
この場合、焼結体に含まれるMgOは、30〜200重量ppm、好ましくは30〜100重量ppm、さらに好ましくは30〜80重量ppm含む。ZrOは、200〜1200重量ppm、好ましくは200〜800重量ppm含む。Yは、5〜300重量ppm、好ましくは5〜30重量ppm、さらに好ましくは5〜10重量ppm含む。
【0055】
ZrOとYの重量の合計と、MgOの重量の比は、1:1から50:1、好ましくは2:1から15:1である。Yの重量と、MgOの重量の比は、1:1から1:40、好ましくは1:2から1:20、さらに好ましくは1:5から1:10である。
【0056】
さらに、焼結体への添加材料として、SiO、NaO及びKOを含む。この場合、焼結体に含まれるSiOは、10〜50重量ppm、NaOは、10〜50重量ppm、KOは、10〜50重量ppm含むことが好ましい。
【0057】
本実施の形態に係る焼結体は、上述の構成を有することで、0.5mm厚の平板形状とした場合における波長600nmの光の直線透過率が30%以上、さらには50%以上が実現されており、特に、0.5mm厚の平板形状とした場合における可視光領域(360〜830nm)の直線透過率の最大値と最小値の比が2:1〜1:1である。しかも、全光線透過率は85%以上、さらには90%以上、さらには95%以上であり、曲げ強度が250MPa以上、さらには、300MPa以上が実現されている。
【0058】
本実施の形態に係る焼結体においても、従来から行われている、肉厚を薄くする、表面研磨を行い面粗度を改善する、といった方法で直線透過率を改善することが可能であるため、これらの方法を採用するかについては、耐久性やコストを勘案し決定される。
【0059】
ここで、平均粒径の算出方法、粒度分布の測定方法、直接透過率の測定方法、曲げ強度の測定方法について図3〜図5を参照しながら説明する。
【0060】
[平均粒径の算出方法]
平均粒径は、以下の手順で算出した。
【0061】
(1) 焼結体の表面の顕微鏡写真(100〜200倍)を撮影し、単位長さの直線が横切る粒子の数を数える。これを異なる3箇所について実施する。なお、単位長さは500μm〜1000μmの範囲とする。
【0062】
(2) 実施した3箇所の粒子の個数の平均をとる。
【0063】
(3) 下記の式により、平均粒径を算出する。
[算出式]
D=(4/π)×(L/n)
[D:平均粒径、L:直線の単位長さ、n:3箇所の粒子の個数の平均]
【0064】
平均粒径の算出例を図3に示す。異なる3箇所の位置において、それぞれ単位長さL(例えば500μm)の直線100が横切る粒子102の個数が22、23、19としたとき、平均粒径Dは、上記算出式により、
D=(4/π)×[500/{(22+23+19)/3}]
=29.9μm
となる。
【0065】
[粒度分布の測定方法]
粒度分布の測定手順を以下に示す。
(1) 焼結体の表面の顕微鏡写真(100〜200倍)を撮影し、各粒子に外接する円の直径を粒径と規定する。例えば図4に示すように、粒子102aについて見ると、該粒子102aに外接する円104の直径dを粒子102aの粒径と規定する。
(2) 評価範囲内に含まれる全ての粒子についてそれぞれ粒径を規定し、粒度分布の評価を行う。
(3) 評価範囲は0.3〜0.5mmの範囲とする。
【0066】
[微細気孔数の測定方法]
微細気孔数の測定手順を以下に示す。
(1) 焼結体の断面の顕微鏡写真(100〜200倍)を撮影する。
(2) 評価範囲内に含まれる5μm以下の微細気孔の数を測定し、評価面積で割って単位面積あたりの個数に換算する。
(3) 評価範囲は0.3〜0.5mmの範囲とする。
【0067】
[直線透過率の測定方法]
直線透過率は、図5に示すように、入射口110を有する積分球112と検出器114とを有する分光光度計116(日立ハイテク製のU−4100形分光光度計)を用いて測定した。試料118(焼結体)は、寸法を10mm(縦)×10mm(横)×0.5mm(厚み)とし、両面(入射面及び出射面)の面粗度がRa=0.04〜0.06μmの範囲になるように、両面を鏡面研磨加工した。
【0068】
そして、光源120と積分球112の入射口110とを対向させて光源120と積分球112を配置し、光源120と積分球112との間に1つの貫通孔122を有するスリット板124を設置した。スリット板124のうち、積分球112に対向する面に貫通孔122を塞ぐように試料118を固定した。分光光度計116の測定波長は175〜2600nmであるが、光源120として波長360〜830nmの可視光を出射する光源を用いた。寸法関係は、積分球112の入射口110の直径が約9mm、スリット板124の貫通孔122の直径が2mm、試料118から積分球112の入射口110までの距離Laが約90mmである。
【0069】
直線透過率は、試料118を通過する可視光を積分球112で集光したときの光強度(I)と、試料118を固定せずに測定したときの光強度(I)の比率(=I/I)より算出した。
【0070】
[全光線透過率の測定方法]
全光線透過率は、図6に示すように、上述した直線透過率の測定にて使用した分光光度計116と同様の積分球150と検出器152とを有する測定装置154を使用した。この測定装置154は、積分球150内に光源156と遮光板157とが設置されている。光源156は、外部に置かれたハロゲン電球の光を積分球150の内部に導入する光ファイバー158を有し、該光ファイバー158の外表面の一部に傷160が付けられることによって、光が散乱するように構成されている。
【0071】
試料162(焼結体)は、最大部の外径φ4mm、最大部の内径φ3mm、長さ6mmの楕円球状の発光部164の両側に外径φ2mm、内径φ0.8mm、長さ12mmの円筒状の電極挿入部166を持つ(全長30mm)発光管とし、積分球150内の光源156を覆うように試料162を固定した。検出器152は波長360〜830nmの可視光の範囲に感度を持つものを使用した。寸法関係は積分球150の内径がφ52、光源156の径が0.5mm、光源156の長さが3mmである。
【0072】
全光線透過率は試料162を通過する可視光を積分球150で集光したときの光強度(I)と、試料162を固定せずに測定したときの光強度(I)の比率(=I/I)より算出した。
【0073】
[曲げ強度の測定方法]
JIS R 1601「ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法」に準拠した方法で、焼結体の曲げ強度を測定した。
【0074】
次に、本実施の形態に係る焼結体の製造方法について図7を参照しながら説明する。
【0075】
本実施の形態に係る製造方法は、図7に示すように、主成分と添加材料とを調合して混合物を作製する材料調合工程S1と、混合物を成形して成形体を作製する成形体作製工程S2と、成形体を予備焼成して焼結体前駆体を作製する予備焼成工程S3と、焼結体前駆体を本焼成して焼結体を作製する本焼成工程S4とを有する。
【0076】
材料調合工程S1では、主成分であるアルミナの粉末に、MgO(あるいは当量のMgO前駆体、例えばマグネシウムの硝酸塩)の粉末と、ZrO(あるいは当量のZrO前駆体)の粉末と、Y(或いは当量のY前駆体)の粉末とが混合される。好ましくは、YとZrOは部分安定化ジルコニア(PSZ)材料として添加されることが望ましい。アルミナは、その混合物中、アルファ相で存在する。さらに、本実施の形態では、好ましくは、SiO(シリカ)、NaO(酸化ナトリウム)、KO(酸化カリウム)を含む。
【0077】
成形体作製工程では、上述のようにして材料調合して得られた混合物を成形して成形体を作製する。成形法としては、メタルハライドランプ用焼結体を成形する場合は、例えば、特表2009−530127号公報、特開2008−44344号公報で開示されているような、2部品を接合して成形する方法、再公表特許第2002−085590号公報、再公表特許第2005−028170号公報で開示されているような成形用中子を用いて一体で成形される方法、特開平10−125230号公報で開示されているようなプレス成形又は押し出し成形により作製した円筒状の部品を組み立てて成形する方法、等を用いることができる。また、高圧ナトリウム灯用焼結体を成形する場合には、特開2004−269290号公報で開示されているようなスプレードライ法で作製した顆粒をプレスして成形する方法を用いることができる。このように、押し出し成形法、プレス成形法、ゲルキャスト法を採用することができるが、押し出し成形やプレス成形法では、セラミック粒子の密度分布がばらつきやすいため、その後の乾燥や焼成工程で変形が起こりやすい。そこで、ゲルキャスト法にて成形することが好ましい。
【0078】
ゲルキャスト法を用いる場合、材料調合工程で作製される混合物は、主成分(アルミナ)と添加材料(MgO、ZrO、Y等)とを含むセラミックス粉末とゲル化剤と溶剤とが少なくとも混合されたスラリーである。そして、成形体作製工程において、スラリーを金型に供給した後に硬化することによって成形体が作製される。金型にスラリーを流し込んでそのまま固められるため、複雑な形状も型通りに成形でき、密度分布のばらつきや変形も生じないという効果を奏する。
【0079】
予備焼成工程では、成形体を酸化雰囲気で予備焼成(温度:1000℃〜1400℃、時間:1〜18時間)して、成形体中の有機バインダーを分解除去する。この段階で、焼結体の前駆体が完成する。
【0080】
その後の本焼成工程では、焼結体前駆体を、水素雰囲気又は真空中で1700℃〜2000℃で焼成する。ところで、材料調合工程で添加されたMgOは、その後の高温でその添加量が減少する場合がある。本実施の形態では、作製される焼結体中のMgOを積極的に一部除去するようにしている。そして、本焼成を複数回にわたって行うことで、作製される焼結体中のMgOを、材料調合工程におけるMgO添加量の2/3に相当する量まで減らすようにしている。このように、MgOの添加量を減らすようにしている理由は、先ず、MgOの添加量が多いと、セラミック粒子の成長は遅くなるが、成長する粒子のサイズ(大きさ)がほぼ均一になるという利点がある。反対に、MgOの添加量が少ないと、セラミック粒子の成長は速くなるが、成長する粒子のサイズにばらつきが生じるという問題がある。そこで、本実施の形態では、材料調合工程においてMgOの添加量を多くすることで、本焼成の初期段階では、それぞれサイズは小さいがほぼ均一のサイズを有する粒子に成長させ、複数回の本焼成で、MgOの添加量を減らしていくことで、徐々に粒子の成長を速めて、所望の範囲の平均粒径(35〜70μm、好ましくは50〜60μm)を有し、且つ、粒子のサイズ(大きさ)がほぼ均一とされた焼結体を得ることができる。すなわち、粒度分布でみた場合に、平均粒径の1/2以下の粒径の粒子の数が40%以下、且つ、平均粒径の1.5倍以上の粒径の粒子の数が5%以上15%以下、好ましくは、平均粒径の1/2以下の粒径の粒子の数が30%以下、且つ、平均粒径の1.5倍以上の粒径の粒子の数が10%以上15%以下を実現することができる。
【0081】
さらに、このようにして得られた焼結体を大気雰囲気の中で1100℃〜1600℃でアニール処理(ステップS5:図7において括弧書きにて示す。)することで、直線透過率を悪化させることなく、全光線透過率をさらに向上させることができる。全光線透過率はランプ効率の面からできるだけ高い方が望ましい。
【0082】
また、上述のような方法で一旦成形した成形体を600℃〜900℃で仮焼し、有機バインダーを分解除去した後、粉砕したアルミナ粉末を、原料アルミナ粉末の一部として混ぜて使用してもよい。このように成形、仮焼、粉砕を経ることでアルミナ粉末の物性が変化し、焼成の際、種結晶のような役割を果たすため、粒成長の速度ばらつきが緩和される。すなわち、粒子のサイズが均一化がされやすくなる。
【0083】
ここで、成形体作製工程S2にてゲルキャスト法を用いる場合に、材料調合工程S1にて調製されるスラリー並びに該スラリーに含まれるゲル化剤(熱硬化性樹脂前駆体)について説明する。
【0084】
[スラリー]
スラリーは、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、イットリアといった無機成分と、例えば分散剤とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応が誘起される有機化合物とからなる。
【0085】
このスラリーは、無機成分粉末の他、有機分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。有機分散媒は反応性官能基を有していてよく、あるいは有していなくともよい。しかし、この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
【0086】
反応性官能基を有する有機分散媒としては、以下を例示することができる。
【0087】
すなわち、反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化可能な液状物質であること、及び鋳込みが容易な高流動性のスラリーを形成できる液状物質であることの2つを満足する必要がある。
【0088】
ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より十分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール、多塩基酸が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリグリセリンのように多数あってもよい。
【0089】
一方、注型が容易な高流動性のスラリーを形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に、20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリーを固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル、多価アルコールの酸エステル等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、スラリーを大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0090】
スラリーに含有されていてもよい反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。また、非反応性分散媒としては、炭化水素、エーテル、トルエン等を例示できる。
【0091】
上述したスラリーは、以下のように作製することができる。
(a)分散媒に無機物粉体を分散してスラリーとした後、後述するゲル化剤を添加する。
(b)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリーを製造する。
【0092】
注型時等の作業性を考慮すると、20℃におけるスラリーの粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリーの粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリーの濃度(スラリー全体の体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0093】
但し、スラリーの濃度は、通常は、25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。有機成分として分散媒、分散剤、反応硬化物、反応触媒を有する。このうち、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により固化する。
【0094】
なお、スラリーには、上述した成分以外に、消泡剤、界面活性剤、焼結助剤、触媒、可塑剤、特性向上剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0095】
[スラリーに含まれるゲル化剤(熱硬化性樹脂前駆体)]
スラリー中に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、以下を例示することができる。
【0096】
すなわち、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリーを固化することが好ましい。
【0097】
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリーを固化可能な物質である。従って、ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0098】
但し、反応性ゲル化剤は、スラリーの流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0099】
一般に、平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本実施例では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。なお、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0100】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0101】
イソシアナート類は、ジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリーが固化してしまう場合がある。
【0102】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリーを大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0103】
イソシアナート基及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0104】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0105】
なお、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【実施例】
【0106】
次に、実施例1〜10、比較例1〜3、参考例について、平均粒径、直線透過率、全光線透過率、曲げ強度、クラックの有無等について確認した実験例を示す。実施例1〜10、比較例1〜3、参考例の内訳並びに評価を後述する表1〜表3に示す。
【0107】
[実施例1]
以下の成分を混合したスラリーを調製した。
【0108】
(原料粉末)
・比表面積3.5〜4.5m/g、平均一次粒子径0.35〜0.45μmのα−アルミナ粉末 100重量部
・MgO(マグネシア) 0.025重量部
・ZrO(ジルコニア) 0.040重量部
・Y(イットリア) 0.0015重量部
(分散媒)
・グルタル酸ジメチル 27重量部
・エチレングリコール 0.3重量部
(ゲル化剤)
・MDI樹脂 4重量部
(分散剤)
・高分子界面活性剤 3重量部
(触媒)
・N,N-ジメチルアミノヘキサノール 0.1重量部
【0109】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに、室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0110】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼(予備焼成)の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を2回繰り返し行い、緻密化及び透光化させ、10mm×10mm×1mmの板状焼結体と、最大部の外径φ4mm、最大部の内径φ3mm、長さ6mmの楕円球状の発光部の両側に外径φ2mm、内径φ0.8mm、長さ12mmの円筒状の電極挿入部を持つ、全長30mmの発光管形状焼結体と、3mm×4mm×40mmの棒状焼結体とを得た。
【0111】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、50μmであった。また、上述した粒度分布の測定方法にて、焼結体の粒径分布を測定したところ、平均粒径の半分にあたる25μm以下の粒子の個数は27%、平均粒径の1.5倍にあたる75μm以上の粒子の個数は6%であった。
【0112】
これらの焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの量はそれぞれ、80ppm、400ppm、9ppmであった。
【0113】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が64.1%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々66.0%と59.0%であり、両者の比は1.1であった。
【0114】
これらの焼結体のうち、発光管形状焼結体を用いて全光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0115】
また、これらの焼結体のうち、棒状焼結体を用いて、JIS R 1601に準拠した方法で曲げ強度を測定したところ300MPaであった。
【0116】
[実施例2]
のみ0.0030重量部とした点以外は、上述した実施例1と同様にしてスラリーを調製した。
【0117】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0118】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を2回繰り返し行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0119】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、50μmであった。また、上述した粒度分布の測定方法にて、焼結体の粒径分布を測定したところ、平均粒径の半分にあたる25μm以下の粒子の個数は35%、平均粒径の1.5倍にあたる75μm以上の粒子の個数は5%であった。
【0120】
これらの焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの量はそれぞれ、80ppm、400ppm、30ppmであった。
【0121】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が49.9%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々51.3%と45.9%であり、両者の比は1.1であった。
【0122】
これらの焼結体のうち、発光管形状焼結体を用いて全光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0123】
また、これらの焼結体のうち、棒状焼結体を用いて、JIS R 1601に準拠した方法で曲げ強度を測定したところ300MPaであった。
【0124】
[実施例3]
実施例1に示す成分に、さらに、SiO(シリカ)を0.0045重量部、NaO(酸化ナトリウム)を0.003重量部、KO(酸化カリウム)を0.002重量部を加えて、上述した実施例1と同様にしてスラリーを調製した。
【0125】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0126】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を1回行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0127】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、35μmであった。また、上述した粒度分布の測定方法にて、焼結体の粒径分布を測定したところ、平均粒径の半分にあたる17.5μm以下の粒子の個数は36%、平均粒径の1.5倍にあたる52.5μm以上の粒子の個数は5%であった。
【0128】
これらの焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの量はそれぞれ、100ppm、400ppm、15ppmであった。
【0129】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が56.9%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々59.2%と52.5%であり、両者の比は1.1であった。
【0130】
これらの焼結体のうち、発光管形状焼結体を用いて全光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0131】
また、これらの焼結体のうち、棒状焼結体を用いて、JIS R 1601に準拠した方法で曲げ強度を測定したところ310MPaであった。
【0132】
[実施例4]
上述した実施例1と同様にしてスラリーを調製した。
【0133】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0134】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を1回行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0135】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、35μmであった。また、上述した粒度分布の測定方法にて、焼結体の粒径分布を測定したところ、平均粒径の半分にあたる17.5μm以下の粒子の個数は36%、平均粒径の1.5倍にあたる52.5μm以上の粒子の個数は5%であった。
【0136】
これらの焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの量はそれぞれ、150ppm、400ppm、15ppmであった。
【0137】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が45.1%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々49.7%と38.3%であり、両者の比は1.3であった。
【0138】
これらの焼結体のうち、発光管形状焼結体を用いて全光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0139】
また、これらの焼結体のうち、棒状焼結体を用いて、JIS R 1601に準拠した方法で曲げ強度を測定したところ320MPaであった。
【0140】
[実施例5]
上述した実施例1と同様にしてスラリーを調製した。
【0141】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0142】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を3回繰り返して行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0143】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、60μmであった。また、上述した粒度分布の測定方法にて、焼結体の粒径分布を測定したところ、平均粒径の半分にあたる30μm以下の粒子の個数は28%、平均粒径の1.5倍にあたる90μm以上の粒子の個数は7%であった。
【0144】
これらの焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの量はそれぞれ、80ppm、400ppm、15ppmであった。
【0145】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が65.2%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々65.7%と58.7%であり、両者の比は1.1であった。
【0146】
これらの焼結体のうち、発光管形状焼結体を用いて全光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0147】
また、これらの焼結体のうち、棒状焼結体を用いて、JIS R 1601に準拠した方法で曲げ強度を測定したところ280MPaであった。
【0148】
[実施例6]
上述した実施例1と同様にしてスラリーを調製した。
【0149】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0150】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を4回繰り返して行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0151】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、70μmであった。また、上述した粒度分布の測定方法にて、焼結体の粒径分布を測定したところ、平均粒径の半分にあたる35μm以下の粒子の個数は40%、平均粒径の1.5倍にあたる105μm以上の粒子の個数は5%であった。
【0152】
これらの焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの量はそれぞれ、60ppm、400ppm、15ppmであった。
【0153】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が66.3%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々77.4%と55.3%であり、両者の比は1.4であった。
【0154】
これらの焼結体のうち、発光管形状焼結体を用いて全光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0155】
また、これらの焼結体のうち、棒状焼結体を用いて、JIS R 1601に準拠した方法で曲げ強度を測定したところ250MPaであった。
【0156】
[実施例7〜10]
上述した実施例1と同様にして得られた発光管形状焼結体を、大気中でそれぞれ1100℃、1240℃、1340℃、1600℃でアニール処理を実施した。これらの焼結体の全光線透過率を測定したところ、それぞれ、88%、89%、90%、97%であった。
【0157】
[比較例1]
原料粉末として比表面積3.5〜4.5m/g、平均一次粒子径0.35〜0.45μmのα−アルミナ粉末100重量部、MgO(マグネシア)0.025重量部、ZrO(ジルコニア)0.040重量部、Y(イットリア)0.0015重量部、ポリエチレングリコール0.5重量部、水50重量部を、1時間ボールミルによって粉砕し、混合し、スプレードライヤーで、200℃付近で乾燥させ、平均粒径約70μmの造粒粉末を得た。
【0158】
この造粒粉末を、2000kgf/cmの圧力下でプレス成形し、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0159】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を1回行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0160】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、25μmであった。
【0161】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が29.9%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々33.3%と27.6%であり、両者の比は1.2であった。
【0162】
これらの焼結体のうち、棒状焼結体を用いて、JIS R 1601に準拠した方法で曲げ強度を測定したところ300MPaであった。
【0163】
直線透過率が30%未満であり、所望の焼結体(直線透過率30%以上)として使用できないことが判明したため、焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの含有量の確認、全光線透過率の確認については行っていない。
【0164】
[比較例2]
上述した実施例1と同様にしてスラリーを調製した。
【0165】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0166】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を5回行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0167】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、75μmであった。また、上述した粒度分布の測定方法にて、焼結体の粒径分布を測定したところ、平均粒径の1.5倍にあたる112.5μm以上の粒子の個数は16%であった。
【0168】
これらの焼結体には無数の微小クラックが見られた。従って、所望の焼結体(クラックなし)として使用できないことが判明したため、直線透過率の確認、焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの含有量の確認、全光線透過率並びに曲げ強度の確認については行っていない。
【0169】
[比較例3]
以下の成分を混合したスラリーを調製した。
【0170】
(原料粉末)
・比表面積9〜15m/g、平均一次粒子径0.1〜0.3μmのα−アルミナ粉末 100重量部
・MgO(マグネシア) 0.025重量部
・ZrO(ジルコニア) 0.040重量部
・Y(イットリア) 0.0015重量部
(分散媒)
・グルタル酸ジメチル 27重量部
・エチレングリコール 0.3重量部
(ゲル化剤)
・MDI樹脂 4重量部
(分散剤)
・高分子界面活性剤 3重量部
(触媒)
・N,N-ジメチルアミノヘキサノール 0.1重量部
【0171】
このスラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで40℃で30分放置し、固化を進めてから、離型した。さらに、室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、板状及び棒状の粉末成形体を得た。
【0172】
得られた粉末成形体を、大気中1100℃で仮焼の後、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃での焼成を1回行い、緻密化及び透光化させ、上述した実施例1と同様の寸法を有する板状焼結体と、発光管形状焼結体と、棒状焼結体とを得た。
【0173】
これらの焼結体の平均粒径を上述した平均粒径の算出方法で測定したところ、3μmであった。
【0174】
これらの焼結体のうち、板状焼結体の両面をダイヤモンドスラリーを用いて研磨し、表面粗度をRa=0.05μmとした試料とし、上述した直線透過率の測定方法で直線透過率を測定したところ、波長600nmの光の透過率が45.3%であった。可視光領域(360nm〜830nm)内での透過率のばらつきは、最大値と最小値が各々64.5%と17.3%であり、両者の比は3.7であった。
【0175】
直線透過率のばらつきが限度の2よりも大幅に大きく3.7であることから、所望の焼結体として使用できないことが判明したため、焼結体に含まれるMgO、ZrO、Yの含有量の確認、全光線透過率並びに曲げ強度の確認については行っていない。
【0176】
[参考例]
上述した実施例1と同様にして得られた発光管形状焼結体を、水素(H)雰囲気中で1530℃のアニール処理を実施した。この焼結体の全光線透過率を測定したところ、85%であり、実施例7〜10のような改善は見られなかった。
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

【0179】
【表3】

【0180】
[評価]
実施例1〜6は、いずれも0.5mm厚の平板形状とした場合における直線透過率が30%以上であり、可視光領域(360〜830nm)の直線透過率の最大値と最小値の比が2:1〜1:1であり、全光線透過率が85%以上であり、曲げ強度が250MPa以上となっている。実施例1〜6の平均粒径で確認すると、平均粒径が35〜70μmであれば、上述の好ましい数値範囲に入ることがわかった。
【0181】
そのうち、実施例4(平均粒径35μm)と実施例6(平均粒径70μm)では、直線透過率の最大値と最小値の比が他の実施例よりもわずかに悪い結果となっている。このことから、さらに好ましい平均粒径の範囲としては、実施例1、2、5に示すように、50〜60μmであることがわかる。
【0182】
ただ、実施例3では、平均粒径が35μmであるにも拘わらず、直線透過率が高く、直線透過率の最大値と最小値の比が1.1であり、同じ平均粒径35μmの実施例4と比して良好な結果となっている。これは、スラリーにSiO(シリカ)、NaO(酸化ナトリウム)、KO(酸化カリウム)を添加したことによるものと考えられる。焼結体に含まれるSiO、NaO及びKOを確認したところ、重量ppmで、10〜50ppmのSiO、10〜50ppmのNaO、10〜50ppmのKOを含むことがわかった。
【0183】
また、実施例7〜10では、全光線透過率の改善が見られ、焼結体へのアニール処理が有効であること、アニール処理には大気雰囲気が好ましいこと、アニール温度は1100℃〜1600℃が好ましいことがわかった。
【0184】
なお、本発明に係る透光性多結晶質焼結体、透光性多結晶質焼結体の製造方法及び高輝度放電灯用発光管は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0185】
10…高輝度放電灯 12…発光管
14…外管 16A…第1給電部材
16B…第2給電部材 20…発光部
24…電極構体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナを主成分とし、高輝度放電灯に用いられる発光管の製造に適した透光性多結晶質焼結体において、
前記透光性多結晶質焼結体を構成する焼結体粒子の平均粒径が35〜70μmであることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項2】
請求項1記載の透光性多結晶質焼結体において、
0.5mm厚の平板形状とした場合における波長600nmの光の直線透過率が30%以上であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項3】
請求項1記載の透光性多結晶質焼結体において、
0.5mm厚の平板形状とした場合における可視光領域(360〜830nm)の直線透過率の最大値と最小値の比が2:1〜1:1であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項4】
請求項1記載の透光性多結晶質焼結体において、
曲げ強度が250MPa以上であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項5】
請求項1記載の透光性多結晶質焼結体において、
全光線透過率が85%以上であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体において、
添加材料として、30〜200重量ppmのMgOを含むことを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体において、
添加材料として、200〜1200重量ppmのZrOを含むことを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体において、
添加材料として、5〜300重量ppmのYを含むことを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体において、
添加材料としてMgO、ZrO及びYを含み、
前記ZrOとYの重量の合計と、MgOの重量の比が、1:1から50:1であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体において、
添加材料としてMgO及びYを含み、
前記Yの重量と、MgOの重量の比が、1:1から1:40であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体において、
添加材料として、10〜50重量ppmのSiO、10〜50重量ppmのNaO、10〜50重量ppmのKOを含むことを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体において、
前記透光性多結晶質焼結体を構成する焼結体粒子のうち、粒径が平均粒径の1/2以下の焼結体粒子の数が40%以下であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項13】
請求項12記載の透光性多結晶質焼結体において、
前記透光性多結晶質焼結体を構成する焼結体粒子のうち、粒径が平均粒径の1.5倍以上の焼結体粒子の数が5%以上15%以下であることを特徴とする透光性多結晶質焼結体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体を製造するための焼結体の製造方法において、
主成分と添加材料とを調合して混合物を作製する材料調合工程と、
前記混合物を成形して成形体を作製する成形体作製工程と、
前記成形体を予備焼成して焼結体前駆体を作製する予備焼成工程と、
前記焼結体前駆体を本焼成して透光性多結晶質焼結体を作製する本焼成工程とを有することを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の焼結体の製造方法において、
前記混合物は、前記主成分と前記添加材料とを含むセラミックス粉末とゲル化剤と溶剤とが少なくとも混合されたスラリーであり、
前記成形体は、前記スラリーを金型に供給した後に硬化することにより作製されることを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15記載の焼結体の製造方法において、
前記予備焼成は、酸化雰囲気で前記成形体中の有機バインダーを分解除去し、
前記本焼成は、前記焼結体前駆体を、水素雰囲気又は真空中で1700℃〜2000℃で焼成することを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の焼結体の製造方法において、
前記本焼成工程は、前記本焼成を、複数回に分けて行うことを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項18】
請求項16記載の焼結体の製造方法において、
前記本焼成工程は、1700℃〜2000℃で焼成される時間が3時間以上であることを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法において、
前記本焼成により、作製される前記透光性多結晶質焼結体中のMgOを一部除去することを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の焼結体の製造方法において、
前記焼成工程により、作製される前記透光性多結晶質焼結体中のMgOを、前記材料調合工程におけるMgO添加量の2/3に相当する量まで減らすことを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項21】
請求項16記載の焼結体の製造方法において、
前記本焼成工程の後、大気中で1100℃〜1600℃でアニール処理を行うことを特徴とする焼結体の製造方法。
【請求項22】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の透光性多結晶質焼結体にて構成された高輝度放電灯用発光管。
【請求項23】
請求項14〜21のいずれか1項に記載の焼結体の製造方法にて製造された透光性多結晶質焼結体にて構成された高輝度放電灯用発光管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−100717(P2011−100717A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201576(P2010−201576)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】