説明

透明導電性体およびその製造方法

【課題】耐熱安定性に優れ、高導電性でかつ透過性にすぐれた透明導電性体、またその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ[A]と分散剤[B]と分散媒[C]とを、カーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が1〜9、カーボンナノチューブ[A]の含有率{[A]/([A]+[B]+[C])}が0.0003〜0.015質量%となる範囲で含む被処理分散液を、分散剤[B]の分子量より分画分子量が大きい限外濾過膜を用いて被処理分散液のカーボンナノチューブの濃度を10〜500倍に濃縮して塗布用分散液を調製し、該塗布用分散液を透明基材上に塗布した後、乾燥させることを特徴とする透明導電体の製造方法。限外濾過法によって事前に分散剤を取り除くことで、透明導電性および耐熱安定性を向上させることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性体、およびその製造方法に関する。より詳細には、耐熱安定性に優れ、高導電性で、かつ透過性に優れる透明導電体およびその簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、中でも特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、自体が優れた真性の導電性を有し、導電性材料として使用されることが期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブを用いた透明導電性フィルムは公知である。カーボンナノチューブを用いた透明導電性フィルムを作製するために、カーボンナノチューブを均一に溶媒中に分散する場合は、一般的には分散性に優れたイオン性分散剤を用いる。分散性に優れた高濃度のカーボンナノチューブ集合体の分散体を与え得るカーボンナノチューブ集合体を得ることで、均一な透明導電体を作製することができる。
【0004】
しかし、一般にイオン性分散剤は絶縁性物質であり、カーボンナノチューブの導電性を低下させてしまう。さらに、イオン性官能基を有するため、高温度・高湿度などの環境変化に影響されやすく、抵抗値安定性が悪い。以上より、高導電性で、かつ透過性に優れる透明導電体を作成する際には、分散に用いるイオン性分散剤を透明導電体上より取り除く必要がある。
【0005】
カーボンナノチューブ分散液をフィルム上に塗布後、余剰なイオン性分散剤を水によるリンスで除去することで、カーボンナノチューブの特性を損なうことなく、高導電性で透過性にすぐれた透明導電性フィルム、その製造方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、限外濾過により余剰な分散剤を除去した、均一なカーボンナノチューブ含有ポリマー樹脂が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
特許文献1について、耐熱安定性に関する記載は見られず、さらに水によるリンス工程は量産性、量産安定化の大きな課題となりうる。
【0008】
また、特許文献2について、カーボンナノチューブ含有ポリマー樹脂に関するものであり、透明導電体およびその製造方法とは関係がなく、かつ耐熱安定性に関する記述も見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−149516号公報
【特許文献2】特開2009−196877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐熱安定性に優れ、高導電性でかつ透過性にすぐれた透明導電性体、またその簡便な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する過程において、限外濾過法によって事前に分散剤を取り除くことで、透明導電性および耐熱安定性を向上させることを見出し、本発明に到ったものである。
【0012】
すなわち本発明は、下記の構成からなる。
【0013】
(I)カーボンナノチューブ[A]と分散剤[B]と分散媒[C]とを、カーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が1〜9、カーボンナノチューブ[A]の含有率{[A]/([A]+[B]+[C])}が0.0003〜0.015質量%となる範囲で含む被処理分散液を、分散剤[B]の分子量より分画分子量が大きい限外濾過膜を用いて前記被処理分散液のカーボンナノチューブの濃度を10〜500倍に濃縮して塗布用分散液を調製し、該塗布用分散液を透明基材上に塗布した後、
乾燥させることを特徴とする透明導電体の製造方法。
【0014】
(II)前記分散剤[B]がイオン性分散剤である請求項1に記載の透明導電体の製造方法。
【0015】
(III)前記カーボンナノチューブ[A]の長さが1.0μm以上である請求項1または2に記載の透明導電体の製造方法。
【0016】
(IV)前記被処理分散液に含まれるカーボンナノチューブ[A]分散体の直径が2.0nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電体の製造方法。
【0017】
(V)透明基材の少なくとも片面に、カーボンナノチューブ[A]と分散剤[B]とを、カーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が0.1〜1.0となる範囲で含む導電層を有し、150℃で1時間熱処理後の前記導電層の抵抗値の増加が、該熱処理前の1.0〜1.3倍であることを特徴とする透明導電体。
【0018】
(VI)前記分散剤[B]がイオン性分散剤である請求項5に記載の透明導電体。
【0019】
(VII)前記カーボンナノチューブ[A]の長さが1.0μm以上である請求項5または6に記載の透明導電体。
【0020】
(VIII)[透明導電体の550nmの光線透過率]/[透明基材の550nm光線透過率]の比率が50%以上、表面抵抗値が10〜10Ω/□であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の透明導電体。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基材と基材の上にカーボンナノチューブを有する透明導電体において、カーボンナノチューブを溶媒中に分散剤で分散させた液を、事前に限外濾過法で分散剤を取り除き、基材の上に塗布、乾燥させ形成することで、透明導電性および耐熱性を向上させることを特徴とする透明導電体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における限外濾過法を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の透明導電性体の製造方法は、カーボンナノチューブ[A]と分散剤[B]と分散媒[C]とをカーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が1〜9、カーボンナノチューブ[A]の含有率{[A]/([A]+[B]+[C])}が0.0003〜0.015質量%の範囲で含む被処理分散液を分散剤[B]の分子量より分画分子量が大きい限外濾過膜を用いて前記被処理分散液のカーボンナノチューブの濃度を10〜500倍に濃縮して塗布用分散液を調製し、該塗布用分散液を透明基材上に塗布した後、乾燥させることを特徴とする。
【0024】
このような工程を経て透明導電体の製造することにより、透明基材の上に形成されるカーボンナノチューブ[A]を含む導電層の耐熱性を向上させることが出来るのである。すなわち、かかる製造方法を採用することにより、カーボンナノチューブを含む導電層を形成する前に高温度・高湿度などの環境変化に影響されやすく、抵抗値安定性を悪化させる分散剤[B]を限外濾過法で取り除くことで、形成されるカーボンナノチューブを含む導電層の導電性を向上させることが可能となるのである。
【0025】
[カーボンナノチューブ]
本発明において用いられるカーボンナノチューブ[A]は、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しするものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ、多層に巻いた多層カーボンナノチューブいずれも適用できるが、中でもグラファイトの1枚面を2層に巻いた特に2層カーボンナノチューブがカーボンナノチューブ100本中50本以上であるとカーボンナノチューブの導電性ならびに分散液中でのカーボンナノチューブの分散性が極めて高くなることから好ましい。さらに好ましくは100本中75本以上が二層カーボンナノチューブ、最も好ましくは100本中80本以上が二層カーボンナノチューブであることである。また、2層カーボンナノチューブは酸処理などによって表面が官能基化されても導電性などの本来の機能が損なわれない点からも好ましい。
【0026】
カーボンナノチューブは、例えば以下のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に流通させ、メタンと前記触媒を500〜1200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理することにより得られる。すなわち上記カーボンナノチューブの合成法により、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブは、製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜5層の割合を、特に2層〜5層の割合を増加させることができる。酸化処理は例えば、硝酸処理する方法により行われる。硝酸処理法は本発明のカーボンナノチューブが得られる限り、特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。硝酸処理時間は特に限定されないが、5時間〜50時間の範囲であることが望ましい。
【0027】
カーボンナノチューブの長さについては、高導電・高透過率の透明導電体を作成するために、1.0μm以上であることが好ましい。また、より好ましくは、2.0μm以上であることが好ましい。
【0028】
[分散剤]
本発明において用いられる分散剤[B]は、多糖類または芳香族の構造を骨格中に有するポリマーまたは低分子のアニオン性界面活性剤である。以下、多糖類の構造を骨格中に有するポリマーを多糖類ポリマー、芳香族の構造を骨格中に有するポリマーを芳香族性ポリマー、低分子のアニオン性界面活性剤をアニオン性界面活性剤と記す。かかる分散剤[B]がカーボンナノチューブを分散媒中に均一に孤立に分散させる理由については、次のように考えている。カーボンナノチューブは、強固な束や互いに絡まり合い強固な凝集体を形成するため、溶媒中に孤立に分散させることが非常に困難である。カーボンナノチューブを溶媒中で孤立分散させるためには、カーボンナノチューブのグラファイトとπ電子相互作用し束や凝集を解すこと、もしくはカーボンナノチューブとの疎水性相互作用により束や凝集を解すことが必要である。本発明においては、上記より孤立したカーボンナノチューブ分散液を得られるという観点から、多糖類ポリマーや芳香族性ポリマーが有効に作用しているものと推測される。
【0029】
本発明において用いられる分散剤[B]に好ましく用いられる多糖類ポリマーとしては、例えばカルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロースおよびその誘導体、キシランおよびその誘導体があげられる。中でも、分散性の観点から、カルボキシメチルセルロースもしくはその誘導体が好ましく、さらには、イオン性である、カルボキシメチルセルロースもしくはその誘導体の塩の使用が、好ましい。分散剤[B]として上記のカルボキシメチルセルロースもしくはその誘導体の塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明において用いられる分散剤[B]に好ましく用いられる芳香族性ポリマーとしては、例えば芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ビニル樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、ポリアニリン等の導電性ポリマー、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−α−メチルスチレンスルホン酸等のポリスチレンスルホン酸の誘導体があげられる。中でも、分散性の観点から、ポリスチレンスルホン酸もしくはその誘導体の使用が好ましく、さらには、イオン性である、ポリスチレンスルホン酸もしくはその誘導体の塩の使用が、好ましい。
【0031】
本発明において用いられる分散剤[B]に好ましく用いられるアニオン性界面活性剤としては、例えばオクチルベンゼンスルホン酸塩、ノニルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、モノイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。中でも、分散性の観点から、コール酸ナトリウム、またはドデシルベンゼンスルホン酸塩の使用が好ましい。
【0032】
[分散剤の分子量]
本発明において用いられる分散剤の分子量は、分散媒への溶解性分散液の粘度上昇等を考慮して、1000〜300000重量平均分子量であることが好ましい。
【0033】
[分散媒]
本発明において用いられる分散媒[C]は、上記分散剤を溶解できる水系、また非水系の分散媒を用いることができる。廃液の処理や環境や防災上の観点から、水が好ましい。
【0034】
非水系溶媒としては、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、塩素含有炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N、N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを用いることができる。
【0035】
[被処理分散液]
本発明において用いる被処理分散液は、上記の分散剤[B]、分散媒[C]をもちいてカーボンナノチューブ[A]を孤立に分散させたものをさす。被処理分散液の分散が不十分であると、限外濾過の際に濾過膜上に凝集する恐れがあるためである。本発明において分散性の指標としては、分散液中での孤立分散を表すカーボンナノチューブ分散体の直径を指標として用いる。カーボンナノチューブ分散体の直径とは、カーボンナノチューブ分散体の見かけの直径であり、凝集した束では大きく、孤立分散時には、カーボンナノチューブ自体の直径となるため、カーボンナノチューブの分散状態を示す指標となる。通常、カーボンナノチューブは溶液中で束として安定に存在する。しかし、分散剤添加などにより、被処理溶液の分散性が高くすることで、束をほぐしてカーボンナノチューブを孤立した状態にすることが可能である。孤立に分散するとは、カーボンナノチューブ分散体の直径が3.0nm以下であることを言う。カーボンナノチューブ分散体の直径の測定法を以下に示す。カーボンナノチューブを分散した被測定液のカーボンナノチューブの濃度を0.003wt%に調整し、マイカ基板上にスピンコートする。その後、AFM(Shimadzu,SPM9600M)により、ランダムに約100本のカーボンナノチューブ分散体の直径の平均として求める。
【0036】
本発明において用いる被処理分散液は、カーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が1〜9である。質量比([B]/[A])が1より少ない場合は、均一に分散させることが困難になるため適さない。一方、カーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が9より多い場合は、耐熱安定性を向上させるための濾過回数が多くなり、工程数簡素化のメリットが失われてしまうため適さない。
【0037】
また、本発明において用いる被処理分散液は、カーボンナノチューブ[A]の含有率{[A]/(カーボンナノチューブ[A]+分散剤[B]+分散媒[C])}が0.0003〜0.015質量%の範囲である。カーボンナノチューブ[A]の含有率{[A]/(カーボンナノチューブ[A]+分散剤[B]+分散媒[C])}が0.0003より少ない場合は、濾過を行う溶液量が非常に多くなり、工程簡素化のメリットが失われてしまうため適さない。一方、カーボンナノチューブ[A]の含有率{[A]/(カーボンナノチューブ[A]+分散剤[B]+分散媒[C])}が0.015より多い場合は、濃度の上昇による凝集物の発生が懸念されるため適さない。
【0038】
本発明において用いる被処理分散液の調製方法は、先に述べた分散状態が得られるものであれば特に限定されないが、例えば次のような手順で行うことが出きる。つまり、分散時から上記濃度で分散し被処理分散液を調製する、もしくは分散時はより濃い濃度範囲で分散し、分散後に分散媒にて希釈して上記所定の濃度に調整することが挙げられる。中でも、分散時の処理時間が短縮できることから、一旦、分散媒中にカーボンナノチューブを0.003〜0.15質量%の濃度範囲で含まれる分散溶液を調製した後、希釈することで、所定の濃度とすることが好ましい。調製時の分散手段としては、カーボンナノチューブと分散剤を分散媒中で塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。中でも、超音波装置を用いて分散する方法が、得られる分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であることから好ましい。
【0039】
このようにして調製した被処理分散液中のカーボンナノチューブ分散体の直径が2.0nm以下であることが好ましく、1.5nm以下であればより好ましい。
【0040】
[限外濾過膜]
本発明においては、前記被処理分散液を、限外濾過膜を用いて限外濾過し、カーボンナノチューブ分散液の濃度を10〜500倍に濃縮して塗布用分散液を調製する。
【0041】
限外濾過膜とは、液体を対象とする濾過膜で、細孔の大きさは明確な定義はないが、通常0.01μm 以下とされている。図1に示すように、限外濾過とは、限外濾過膜1を用いて溶液中の粒子を除去し、濾過液2を得る分離技術である。限外濾過膜1の細孔3に関しては、膜の孔を電子顕微鏡等で見ることが困難な場合もあるために、細孔3の大きさを表す指標を、既知の分子量を有する標準物質を透過させて阻止率90%に相当する分子量から定める方法がとられている。この分子量を分画分子量と呼ぶ。通常、限外濾過膜の分画分子量は、1,000〜300,000程度である。限外濾過膜は、材質の観点から、高分子材料を用いる有機膜とセラミック膜などの無機膜に大別される。高分子膜としては、酢酸セルロース系、ポリアクリロニトリル系、ポリスルホン系などがある。
【0042】
本発明において用いる限外濾過膜1は、その分画分子量が分散剤[B]の分子量よりも、大きいものを用いる。これにより、限外濾過膜の分画分子量以下の重量平均分子量を有する分散剤を分散媒と共に濾過により除去することでカーボンナノチューブ被処理分散液4に含まれるカーボンナノチューブの濃度を濃縮することが可能となる。
【0043】
濾過膜の材質としては、例えばポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン高分子電解質錯合体、酢酸セルロース誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポオリイミド、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどの高分子素材、アルミナ、多孔質セラミックなど無機セラミックスが好ましい。特に、分画分子量が大きい点において、ポリスルホンが好ましい。
【0044】
[限外濾過後の分散剤量]
本発明においては、前記限外濾過の工程において、分散液中のカーボンナノチューブの濃度を10〜500倍に濃縮(すなわち、被処理分散液の90〜99.8体積%を除去)して塗布用分散液を得る。塗布用分散液の分散剤量比については、耐熱安定性(150℃、1hr加熱後の抵抗値変化率の低下幅が少ないこと)を向上させるために、カーボンナノチューブ[A]と分散剤[B]とを、[A]に対する[B]の質量比([B]/[A])を0.1〜1.0の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、[A]に対する[B]の質量比([B]/[A])が0.1〜0.8の範囲である。[A]に対する[B]の質量比([B]/[A])を、1.0以下とすることにより、150℃1時間熱処理後の前記導電層の抵抗値の変化が、該熱処理前の1.0〜1.3倍に抑制することができる。[A]に対する[B]の質量比([B]/[A])の下限については、上記観点からは、低ければ低い程良いが、限外濾過後の塗布用分散液の分散性の観点から、0.1以上であることが好ましい。
【0045】
濾過により除去された分散剤量を定量するために、分散剤の種類に応じた分析方法を適宜適用すればよい。分散剤として、本発明において好ましく用いることができるカルボキシメチルセルロースもしくはその誘導体、又はその塩の場合には、糖類の定量法の一つであるアントロン硫酸法が挙げられる。この分析方法では濃硫酸により多糖のグリコシド結合を加水分解し、さらに脱水することでフルフラールやその誘導体にした後、これらとアントロンを反応させて青緑色を呈する錯体を形成し、吸光度測定により糖類の定量を行なう。
【0046】
かかる方法により調製した塗布用分散液は、カーボンナノチューブ分散物の直径が2.0nm以下であり、被処理分散液と同様に分散性がよい。
【0047】
[透明基材]
本発明においては、以上のようにして得た、塗布用分散液を透明基材上に塗布した後、乾燥させて透明導電性体を製造する。透明基材とは、少なくとも波長550nmの光を50%以上透過させる性能を有するものをいう。かかる特性を満たしていれば、形態としては特に限定されず、例えば厚み250μm以下で巻き取り可能な透明フィルムであっても厚み250μmを超える透明基板等を適用することができる。
【0048】
本発明に用いられる透明基材の素材としては、樹脂、ガラスなどを挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどを挙げることができる。ガラスとしては、通常のソーダガラスを用いることができる。また、これらの複数の基材を組み合わせて用いることもできる。例えば、樹脂とガラスを組み合わせた基材、2種以上の樹脂を積層した基材などの複合基材であってもよい。樹脂フィルムにハードコートを設けたようなものであっても良い。透明基材の種類は上述に限定されることはなく、用途に応じて透明性や耐久性やコスト等から最適なものを選ぶことができる。
【0049】
[塗布用分散液の透明基材への塗布]
本発明の透明導電性体の製造方法では、上記により得た塗布用分散液を透明基材に塗布し、その後溶媒を乾燥させてカーボンナノチューブを透明基材上に固定して透明導電性体を得る。
【0050】
本発明において、塗布用分散液を透明基板上に塗布する方法は特に限定されない。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせても良い。最も好ましい塗布方法は、ロールコーティングである。
【0051】
[塗布厚みの調整]
塗布用分散液を透明基板上に塗布する際の塗布厚み(ウェット厚み)は塗布用分散液の濃度にも依存するため、望む光線透過率、表面抵抗値が得られるように適宜調整すればよい。本発明におけるカーボンナノチューブ塗布量は、透明導電性を必要とする種々の用途を達成するために、容易に調整可能であり、例えば膜厚を厚くすることにより表面抵抗は低くなり、膜厚を薄くすることにより高くなる傾向にあり、塗布量が1mg/m〜40mg/mであれば透明導電性フィルムの550nmの光線透過率/基材の550nmの光線透過率を50%以上とすることができる。
【0052】
塗布量を40mg/m以下とすれば50%以上とすることができる。さらに、塗布量を30mg/m以下とすれば60%以上とすることができる。さらに、塗布量を20mg/m以下であれば70%以上、塗布量を10mg/m以下であれば80%以上とすることでき好ましい。
【0053】
基材の550nmの光線透過率とは、基材に表面樹脂層がある場合は、表面樹脂層も含めた光線透過率をいう。また、塗布量によりフィルムの表面抵抗値も容易に調整可能であり、塗布量が1mg/m〜40mg/mであればフィルムの表面抵抗値は10〜10Ω/□とすることができ、好ましい。さらに、芳香族ポリマーや各種添加剤の含有量にもよるが、塗布量を40mg/m以下とすればフィルムの表面抵抗値を10Ω/□以下とすることができる。塗布量を30mg/m以下とすればフィルムの表面抵抗値を10Ω/□以下とすることができる。さらに、塗布量が20mg/m以下であれば、10Ω/□以下、塗布量を10mg/m以下であれば10Ω/□以下とすることができる。
【0054】
[濡れ剤]
塗布用分散液を、透明基板上に塗布する際、塗布ムラを抑制するため、塗布用分散液中に濡れ剤を添加しても良い。塗布用分散液の分散媒に水系の分散倍を選択し非親水性の表面を有する透明基材上に塗布する場合には界面活性剤やアルコール等の濡れ剤を塗布用分散液中に添加することで、透明基板上で前記塗布用分散液がはじかれることなく塗布することができる。濡れ剤としては、アルコールが好ましく、アルコールの中でもメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールは揮発性が高いために塗布後の基材乾燥時に容易に除去可能である。場合によってはアルコールと水の混合液を用いても良い。
【0055】
[耐熱安定性]
本発明の透明導電体の150℃、1時間熱処理後の耐熱安定性について、前記導電層の抵抗値の変化が、該熱処理前の1.0〜1.3倍であることが好ましい。より好ましくは、1.0〜1.1倍であることが好ましい。この範囲にあることで、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどの透明導電膜付き基材として好ましく用いることができる。すなわち、上記処理後の抵抗値変化が1.0〜1.3倍以下であれば、上記基材として誤差の小さい安定な動作を実現することができる。
【0056】
[透明導電性]
本発明の透明導電体の透明導電性について、透明導電体の550nmの光線透過率/透明基材の550nm光線透過率の比率が50%以上、表面抵抗値が10〜10Ω/□であることが好ましい。
【0057】
より好ましくは、透明導電体の550nmの光線透過率/透明基材の550nm光線透過率の比率が80%以上、表面抵抗値が10〜10Ω/□であることが好ましい。この範囲にあることで、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどの透明導電膜付き基材として好ましく用いることができる。すなわち、1×10Ω/□以上であれば、上記の基材として透過率を高くかつ消費電力を少なくすることができ、1×10Ω/□以下であれば、タッチパネルの上記の座標読みとりにおける誤差の影響が小さくすることができる。
【0058】
[本発明の透明導電性フィルムの用途]
本発明の透明導電性フィルムは、主に表面の平滑性が要求されるタッチパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパーなどのディスプレイ関連の透明電極として用いられる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
なお、特にn数を示していないものは、n数2で測定を行っており、平均値を記している。
【0060】
(1)表面抵抗値
5cm×10cmにサンプリングした透明導電複合材の導電面の中央部を4端子法で室温下で以下に示すプローブを導電層側に密着させて抵抗値を測定した。用いた測定器はダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、4探針プローブはダイアインスツルメンツ(株)製MCP−TPO3Pを用いた。
【0061】
(2)550nm透過率
JIS−K7361(1997年)に基づき、光線透過率は、フィルムを分光光度計(日立製作所 U−2100)に装填し、波長550nmでの光線透過率を測定して得た。
次に、カーボンナノチューブ透明導電複合材の作成方法および評価結果を示す。
【0062】
(3)カーボンナノチューブ長さ測定
濃度0.003wt%に調整したカーボンナノチューブ分散液を、マイカ基板上にスピンコートしたのち、AFM(Shimadzu,SPM9600M)により、カーボンナノチューブ分散体の直径を1.5nm以下に限りカーボンナノチューブ長さを測定した。
【0063】
(4)カーボンナノチューブ分散体の直径測定
カーボンナノチューブを分散した被測定液のカーボンナノチューブの濃度を0.003wt%に調整し、マイカ基板上にスピンコートしたのち、AFM(Shimadzu,SPM9600M)により、ランダムに約100本のカーボンナノチューブ分散体の直径を測定した。
【0064】
(5)分散剤定量法
被処理分散液を限外濾過することで得られた濾液100mlを水が無くなるまでエバポレーターを用いて減圧濃縮し、濃縮物を25mlメスフラスコに水で洗い入れ、25mlにメスアップした。上記試料にアントロン硫酸試験液(水34mLに硫酸66mLを加え、冷却後アントロン50mgを加えて溶解し、次にチオ尿素1gを加えて溶解させた溶液)を加え、沸騰浴中で10分間加熱した後、冷水中で急冷し、620nmの吸光度を測定した。その吸光度を標準希釈液の吸光度から作成した検量線にプロットすることで検体等のCMC含有量を求めた。
【0065】
(6)分散剤の分子量測定方法
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、島津製作所、10Aシリーズ(ポンプ、インジェクター等)LC Solution、使用カラム、昭和電工(株)社製 Shodex/Asahi GF−7M HQ)を用い、臭化リチウム水溶液(10mmol/L)をサンプル濃度0.48mg/ml、注入量100μl、Flow rate1.0ml/min、時間30minにて重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0066】
(実施例1)
[触媒調製例]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュの範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39wt%であった。
【0067】
[カーボンナノチューブ含有組成物製造例1]
触媒調製例で調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラーを用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラーを用いてメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の重量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169min・g/L、メタンを含むガスの線速度が6.55cm/secであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/minで通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。
【0068】
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
【0069】
[カーボンナノチューブ含有組成物製造例2]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られた触媒付きカーボンナノチューブ組成物115gを用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返し、触媒が除去されたカーボンナノチューブ組成物を得た。上記のカーボンナノチューブ組成物を約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)に添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。このカーボンナノチューブ組成物の平均外径は1.7nmであった。また2層カーボンナノチューブの割合は90%であり、波長633nmで測定したラマンG/D比は79であり、燃焼ピーク温度は725℃であった。
【0070】
(被処理分散液調製)
20mLの容器に得られた含水ウェット状態のカーボンナノチューブ組成物を乾燥時換算で15mg、1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル社製11kDa,50〜200cps)水溶液4.5gを量りとり、イオン交換水を加え10gにした。硝酸を用いてpHを4.0に合わせ超音波ホモジナイザー出力20W、7.5分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10,000G、15分遠心し、上清9mLを得た。この上清液にイオン交換水を添加し、カーボンナノチューブが0.0015wt%となるように濃度を調整し被処理分散液を得た。
【0071】
上記被処理分散液を、ウルトラフィルターQ2000(分画分子量200,000、ADVANTEC製)と攪拌型ウルトラホルダーUHP−76Kを用いてコンプレッサーにて0.3MPaで限外濾過したのち、さらにウルトラフィルターユニットUSY−20(ADVANTEC)と加圧用のシリンジを用いて限外濾過を行った。この操作により被処理分散液を0.15wt%に溶液を濃縮し、塗布用分散液を調製した。
【0072】
上記塗布用分散液にイオン交換水とエタノールを添加して分散液濃度を0.08wt%、エタノール濃度を4wt%に調整後、PETフィルム(東レ(株)製ルミラーU46)上にワイヤーバーを用いて塗布して、125℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。
【0073】
カーボンナノチューブ長さ測定の結果、2.13μmであった。
【0074】
カーボンナノチューブ分散体の直径測定の結果、1.44nmであった。
【0075】
(実施例2)
上記20mLの容器に得られた含水ウェット状態のカーボンナノチューブ組成物を乾燥時換算で15mg、1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル社製11kDa,50〜200cps)水溶液6.0gを量りとり、イオン交換水を加え10gにした。硝酸を用いてpHを4.0に合わせ超音波ホモジナイザー出力20W、7.5分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10,000G、15分遠心し、上清9mLを得た。この上清液にイオン交換水を添加し、カーボンナノチューブが0.0015wt%となるように濃度を調整し被処理分散液を得た。
【0076】
上記被処理分散液を、ウルトラフィルターユニットUSY−20(分画分子量200,000、ADVANTEC)と加圧用のシリンジを用いて限外濾過を行った。この操作を繰り返し行うことで0.15wt%に溶液を濃縮し、塗布用分散液を調製した。
上記カーボンナノチューブ分散液をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーU46)上にワイヤーバーを用いて塗布して、125℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。
【0077】
カーボンナノチューブ長さ測定の結果、2.28μmであった。
【0078】
カーボンナノチューブ分散体の直径測定の結果、1.14nmであった。
【0079】
(比較例1)
実施例1の塗布用分散液をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーU46)上にワイヤーバーを用いて塗布して、125℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。
【0080】
このフィルムをイオン交換水にて30秒間リンスし、分散剤を除去した。リンス後、フィルムに付着した水滴をエアダスターで除去、その後常温で乾燥させた。
【0081】
(比較例2)
実施例2の塗布用分散液をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーU46)上にワイヤーバーを用いて塗布して、125℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。
【0082】
このフィルムをイオン交換水にて30秒間リンスし、分散剤を除去した。リンス後、フィルムに付着した水滴をエアダスターで除去、その後常温で乾燥させた。
【0083】
(比較例3)
実施例1の塗布用分散液をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーU46)上にワイヤーバーを用いて塗布して、125℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。
【0084】
(比較例4)
実施例2の塗布用分散液をPETフィルム(東レ(株)製ルミラーU46)上にワイヤーバーを用いて塗布して、125℃乾燥機内で1分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。
【0085】
上記の実施例、比較例の評価結果を表1にまとめた。
【0086】
【表1】

【0087】
以上、発明の実施例について述べてきたが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る透明導電性体およびその製造方法は、耐熱安定性および高い透明性、導電性が要求される導電性材料として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 限外濾過膜
2 濾過液
3 細孔
4 分散液
A カーボンナノチューブ
B 分散剤
C 分散媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ[A]と分散剤[B]と分散媒[C]とを、カーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が1〜9、カーボンナノチューブ[A]の含有率{[A]/([A]+[B]+[C])}が0.0003〜0.015質量%となる範囲で含む被処理分散液を、分散剤[B]の分子量より分画分子量が大きい限外濾過膜を用いて前記被処理分散液のカーボンナノチューブの濃度を10〜500倍に濃縮して塗布用分散液を調製し、該塗布用分散液を透明基材上に塗布した後、乾燥させることを特徴とする透明導電体の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤[B]がイオン性分散剤である、請求項1に記載の透明導電体の製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ[A]の長さが1.0μm以上である、請求項1または2に記載の透明導電体の製造方法。
【請求項4】
前記被処理分散液に含まれるカーボンナノチューブ[A]分散体の直径が2.0nm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電体の製造方法。
【請求項5】
透明基材の少なくとも片面に、カーボンナノチューブ[A]と分散剤[B]とを、カーボンナノチューブ[A]に対する分散剤[B]の質量比([B]/[A])が0.1〜1.0となる範囲で含む導電層を有し、150℃で1時間熱処理後の前記導電層の抵抗値の増加が、該熱処理前の1.0〜1.3倍であることを特徴とする透明導電体。
【請求項6】
前記分散剤[B]がイオン性分散剤である、請求項5に記載の透明導電体。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブ[A]の長さが1.0μm以上である、請求項5または6に記載の透明導電体。
【請求項8】
[透明導電体の550nmの光線透過率]/[透明基材の550nm光線透過率]の比率が50%以上であり、表面抵抗値が10〜10Ω/□である、請求項5〜7のいずれかに記載の透明導電体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−79450(P2012−79450A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221293(P2010−221293)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】