説明

透明表示用部材の作製方法および透明表示物作製部材

【課題】透明性があり、インクの吸収性や、インクの乾燥性、顔料インクに対する印刷性、さらに、耐久性、特に耐水性、耐光性、耐擦過性が良好な透明表示用部材を作製する方法を提供する。
【解決手段】透明基材10の一方の面に多孔質記録層11を有する記録用シート1を用い、a.記録用シート1の多孔質記録層11に記録する工程、b.多孔質記録層11の空隙110を埋めて、透明化する工程、をこの順に行う透明表示用部材4の作製方法とする。または、透明基材と接着層とからなるカバー用部材と多孔質記録層を有する記録用シートとを用い、a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程、b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程、c.多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着する工程、のうち、a、b工程をこの順に行い、さらにc工程を含む透明表示用部材の作製方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示物に用いられる透明表示用部材の作製方法および透明表示物作製部材に関し、特に、記録層に記録するときには不透明で、記録した後に透明化する透明表示用部材および透明表示物作製部材に関する。
【背景技術】
【0002】
記録材料に文字や絵などの画像を記録する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、昇華転写印刷、電子写真印刷など多種多様な印刷技術がある。その中でも、小ロットで印刷する場合の低価格性、記録機器の普及などから、インクジェット印刷によるものが増加してきている。特に、印字品質の向上、大型化の容易性などから、ディスプレイ・ポスター・看板等の産業分野への応用が期待されている。
【0003】
このようなディスプレイ・ポスター・看板等の表示板の一用途として、ウインドウ用ポスターのような透過画像として認識させる用途や、電飾看板のような透明表示板などがある。電飾看板は、直方体の箱体内部に、蛍光灯等の背面光源、透過表示板、アクリル板などが配置され、背面光源の発光により、透過表示板に施された文字・図形等を透過画像として認識させるようにしているものである(特許文献1)。
【0004】
一方、インク記録層には、記録層の空隙によりインクを吸収することで記録することができる多孔質記録層と、記録層を構成する樹脂の膨潤によりインクを吸収することで記録することができる樹脂膨潤記録層がある。多孔質記録層は、多孔質であるため記録層が不透明であり、透明性を要求される用途には、樹脂膨潤記録層が用いられる(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−80820号公報(従来の技術)
【特許文献2】特開2005−186486号公報(背景技術)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような樹脂膨潤記録層は、透明性を有するものの、多孔質記録層に比べて、インクの吸収性や、インクの乾燥性に劣るものが多く、また、顔料インクに対する印刷性も劣るものが多い。
【0007】
また、このような透明性を有する記録材料は、出力機器での用紙検知機能がうまく発揮できないため、出力機器での用紙検知機能を正常に作動させるために、不透明基材と共に搬送させたり、記録材料の一部分に用紙検知させるためのマークをつけたりすることが行われている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、インクの吸収性やインクの乾燥性、顔料インクに対する印刷性を低下させずに、インク記録層を透明化する方法を検討した結果、不透明な多孔質記録層に記録した後、多孔質記録層の空隙を埋めることによって、多孔質記録層を透明化できることを見出し、これを解決するに至った。
【0009】
即ち、本発明の透明表示用部材の作製方法は、透明基材の一方の面に多孔質記録層を有する記録用シートを用い、
a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程
b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程
をこの順に行うことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の透明表示用部材の作製方法は、透明基材と接着層とからなるカバー用部材と多孔質記録層を有する記録用シートとを用い、
a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程
b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程
c.多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着する工程
のうち、a、b工程をこの順に行い、さらにc工程を含むことを特徴とするものである。また、好ましくは、本発明の透明表示用部材の作製方法は、a工程、c工程、b工程の順に行うことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の透明表示用部材の作製方法は、前記多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程が、多孔質記録層に空隙を埋める材料を浸透させる工程であることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明の透明表示用部材の作製方法は、前記多孔質記録層が、バインダー樹脂と顔料とを含み、バインダー樹脂と顔料と前記多孔質記録層の空隙を埋める材料との屈折率の差が、0.10以下であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の透明表示物作製部材は、透明基材と接着層とからなるカバー用部材と、多孔質記録層を有する記録用シートとからなり、記録用シートの多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着し、接着層の成分を多孔質記録層の空隙に浸透させることによって、多孔質記録層を透明化することができることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の透明表示物作製部材は、前記多孔質記録層が、バインダー樹脂と顔料とを含み、バインダー樹脂と顔料と接着層の多孔質記録層に浸透する成分との屈折率の差が、0.10以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の透明表示用部材の作製方法によれば、透明性があり、インクの吸収性や、インクの乾燥性、顔料インクに対する印刷性、さらに、耐久性、特に耐水性、耐光性、耐擦過性が良好な透明表示用部材を作製することができる。
【0016】
また、本発明の透明表示物作製部材によれば、透明性があり、インクの吸収性や、インクの乾燥性、顔料インクに対する印刷性、さらに、耐久性、特に耐水性、耐光性、耐擦過性が良好な透明表示用部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の透明表示用部材の作製方法の実施の形態について説明する。
本発明の第一の透明表示用部材の作製方法は、透明基材の一方の面に多孔質記録層を有する記録用シートを用い、
a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程
b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程
をこの順に行うことを特徴とするものである。
【0018】
透明基材の一方の面に多孔質記録層を有する記録用シートを用い、図1に示すように、a.記録用シート1の多孔質記録層11に記録する工程、b.多孔質記録層11の空隙110を埋めて、透明化する工程を含む工程を行うことにより、透明表示用部材4を作製することができる。
【0019】
透明基材の一方の面に多孔質記録層を有する記録用シートの多孔質記録層に記録する工程は、多孔質記録層に出力機器により、画像を記録することにより行われる。鏡像を記録した場合には、透明基材がカバーフィルムの役割をすることができる。画像を記録する方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、昇華転写印刷、電子写真印刷などを用いることができるが、インクに熱硬化性や紫外線硬化性の樹脂を用いていると、空隙を埋める妨げになりやすいため、このような硬化性樹脂を使用しないインクを用いることが好ましい。したがって、溶剤と色素成分、熱可塑性樹脂成分よりなるインクを用いることが好ましく、インクジェット印刷が好ましい。
【0020】
次いで、多孔質記録層の空隙を埋めることにより、多孔質記録層を透明化する。多孔質記録層の空隙を埋める方法としては、空隙に液状、ゲル状の材料を浸透させる方法などを用いることができる。例えば、多孔質記録層に空隙を埋める材料である液状物やゲル状物を塗布する方法、接着層を有するカバーフィルムを貼着し、接着層の接着剤及び/又は可塑剤を浸透させる方法、多孔質記録層に予め熱により溶融する物質を添加し、熱を加えることにより溶融させる方法などがある。
【0021】
多孔質記録層に空隙を埋める材料を塗布する方法に用いられる液状物やゲル状物としては、多孔質記録層に浸透しやすく、揮発しにくいものが好ましく、グリコールエーテル類、油類などの溶剤や可塑剤、界面活性剤などの添加剤、より好ましくは、モノマー、オリゴマなどの光重合性材料や、イソシアネート、エポキシ、メチロールなどの熱硬化性材料などの硬化性材料が、空隙を埋めて、透明化する工程の後、液状物やゲル状物の流失を防ぐことができるため好ましい。また、このような硬化性材料を用いることにより、カバーフィルムを用いることなく印刷画像を保護することができる。さらに、硬化性材料として、ハードコート性を有する樹脂などを選択することにより、印刷画像表面にハードコート性を付与することもできる。
【0022】
さらに、多孔質記録層に空隙を埋める材料を塗布する方法に用いられる液状物やゲル状物は、多孔質記録層を形成するバインダー樹脂や顔料との屈折率の差を、透明性を向上させるために、0.10以下とすることが好ましく、より透明性を向上させるために、0.05以下とすることがより好ましい。
【0023】
接着層の接着剤及び/又は可塑剤を浸透させる方法に用いられる接着剤は、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤、ホットメルト系接着剤を用いることができ、特に、低分子量の接着剤を用いることが好ましい。低分子量の接着剤としては、重量平均分子量(Mw)10万以下のものが好ましく、1万以下のものを用いることがより好ましい。また、接着層に含有される可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリエステル系、エポキシ化エステル系可塑剤のほか、一般的な可塑剤を用いることができる。
【0024】
多孔質記録層に、接着剤及び/又は可塑剤を浸透させるために、透明表示用部材に熱をかけたり、圧力をかけたりすることも適宜することができる。また、経時的な浸透によって透明化することも可能である。
【0025】
さらに、接着剤及び/又は可塑剤は、多孔質記録層を形成するバインダー樹脂や顔料との屈折率の差を、透明性を向上させるために、0.10以下とすることが好ましく、より透明性を向上させるために、0.05以下とすることがより好ましい。
【0026】
多孔質記録層に予め熱により溶融する物質を添加し、熱を加えることにより溶融させる方法に用いられる熱により溶融する物質としては、熱により溶融することができるものならば、特に限定されないが、溶融温度が50℃〜200℃のものが、プラスチックフィルムを透明基材として使用した場合に、耐熱性に優れるため好ましい。また、多孔質記録層の各種性能を阻害させない点や、バインダー樹脂との接着力や屈折率の点から、バインダー樹脂に用いたものと同系統の樹脂を用いることが好ましい。特に、ポリビニルアルコール系樹脂をバインダー樹脂とした場合には、同じビニル系樹脂である酢酸ビニル系ホットメルト樹脂が好ましい。
【0027】
このような工程により透明表示用部材を作製することにより、出力機器に画像が記録される際には、多孔質記録層が不透明なため、用紙検知が容易にでき、画像を確認するために他の不透明シートを必要とすることなく、画像を容易に確認することができる。また、記録層が多孔質なため、インクの吸収性や、インクの乾燥性、顔料インクに対する印刷性に優れるものである。さらに、鏡像記録したものでは、透明基材により表面を保護することができるため、記録層を保護するためのカバーフィルムを必要とせず、耐久性、特に耐水性、耐光性、耐擦過性に優れるものである。また、透明化することにより、画像を透過画像として認識することができ、光透過性に優れるものである。
【0028】
本発明に用いられる記録用シートは、透明基材の一方の面に多孔質記録層を有するものである。透明基材としては、光透過性を有するものであれば特に制限されることなく使用することができるが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのプラスチックフィルムが好適に使用される。透明基材の厚みは特に限定されるものではないが、出力機器での搬送性などの点から、5〜300μmのものが好適に使用される。
【0029】
多孔質記録層は、少なくともバインダー樹脂および顔料から構成される。バインダー樹脂は、主として記録層のバインダー樹脂として従来公知のものを用いることができるが、このようなものとして例えばポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジウムハライド、メラミン樹脂、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアクリル酸ナトリウム等の親水性合成高分子やゼラチン、でんぷん、セルロース誘導体セルロース、カゼイン、キチン、キトサン等の親水性天然高分子、ポリエチレンオキサイドやその共重合体等の高吸収性樹脂、ポリビニルブチラール、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フェノール系樹脂等があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0030】
顔料としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイトなどの無機顔料の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などからなる樹脂ビーズ、若しくはこれらを原料とする中空樹脂ビーズなどの有機顔料があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0031】
また、顔料とバインダー樹脂との屈折率の差は、0.10以下とすることが好ましく、0.05以下とすることがより好ましい。このような範囲にすることにより、多孔質記録層の空隙を埋めたときに、より透明性を増すことができる。特に、多くのバインダー樹脂との屈折率が近く、多孔質構造をもちやすいシリカを用いることが好ましい。顔料の添加量は、多孔質記録層の全樹脂100重量部に対し、通常0.1〜200重量部程度である。
【0032】
また、本発明の硬化を阻害しない範囲で、バインダー樹脂との屈折率の差が、0.10を超える顔料を、バインダー樹脂との屈折率の差が、0.10以下の顔料と併せて用いることができる。
【0033】
多孔質記録層の厚みは、5〜70μmであることが好ましい。5μm以上とすることによりインク吸収性を良好にすることができ、70μm以下とすることによりカールの発生を防止することができる。
【0034】
本発明の第二の透明表示用部材の作製方法は、透明基材と接着層とからなるカバー用部材と多孔質記録層を有する記録用シートとを用い、
a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程
b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程
c.多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着する工程
のうち、a、b工程をこの順に行い、さらにc工程を含むことを特徴とするものである。
【0035】
本発明に用いられるカバー用部材は、透明基材と接着層からなるものである。透明基材上に接着層が設けられていても良いし、透明基材と接着層が個々の部材となっていても良い。
【0036】
透明基材としては、光透過性を有するものであれば特に制限されることなく使用することができるが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのプラスチックフィルムが好適に使用される。また、離型処理されたプラスチックフィルムを使用することも可能である。このような離型処理されたプラスチックフィルムを用いることにより、カバー用部材の接着層によって、他の部材に貼着することができる。
【0037】
接着層としては、少なくとも接着剤を含み、接着剤としては、従来公知のものを使用することができ、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤、ホットメルト系接着剤などがあげられる。特に、低分子量の接着剤を用いることが好ましい。低分子量の接着剤としては、重量平均分子量(Mw)10万以下のものが好ましく、1万以下のものを用いることがより好ましい。また、接着層に含有される可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリエステル系、エポキシ化エステル系可塑剤のほか、一般的な可塑剤を用いることができる。さらに、接着剤及び/又は可塑剤は、多孔質記録層を形成するバインダー樹脂や顔料との屈折率の差を、透明性を向上させるために、0.10以下とすることが好ましく、より透明性を向上させるために、0.05以下とすることがより好ましい。
【0038】
本発明に用いられる記録用シートは、多孔質記録層を有するものであり、多孔質記録層以外の構成材料が透明性を有するものであれば、多孔質記録層単層であっても、透明基材などに積層されていても何ら差し支えない。
【0039】
多孔質記録層は、前述の第一の実施の形態の多孔質記録層と同じもので良く、厚みとしては、透明基材などに多孔質記録層を設ける場合には、5〜70μmであることが好ましい。5μm以上とすることによりインク吸収性を良好にすることができ、70μm以下とすることによりカールの発生を防止することができる。透明基材などを用いず多孔質記録層単独で取り扱う場合、インクジェットプリンタへの搬送性や取り扱い性を考慮し、多孔質記録層の厚みは、5〜300μmであることが好ましい。
【0040】
本発明の透明表示用部材の作製方法は、上述のカバー用部材、記録用シートを用い、a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程、b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程、c.多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着する工程のうち、a、b工程をこの順に行い、さらにc工程を含むものである。
【0041】
記録用シートの多孔質記録層に記録する工程と多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程は、本発明の第一の実施の形態と同様の工程である。それぞれの工程の作業順は、a.多孔質記録層に記録する工程の後、b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程を行うことが必要である。
【0042】
一方、多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着する工程(以下、「カバー用部材を貼着する工程」とする場合もある。)は、記録用シートの構成や多孔質記録層の空隙を埋める方法を適宜選択することにより、工程の作業順は任意である。
【0043】
例えば、記録用シートが多孔質記録層単層の場合には、多孔質記録層に記録する工程、多孔質記録層の空隙を埋める工程をした後、カバー用部材を貼着する工程を行うことも、カバー用部材を貼着する工程の後、多孔質記録層に記録する工程、多孔質記録層の空隙を埋める工程を行うこともできる。
【0044】
また、多孔質記録層の空隙を埋める方法として、多孔質記録層に液状物やゲル状物を塗布する方法を選択する場合には、多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程の後、カバー用部材を貼着する工程を行う。
【0045】
また、カバー用部材の接着層の接着剤及び/又は可塑剤を浸透させる方法を選択する場合には、多孔質記録層に記録する工程、カバー用部材の接着層を貼着する工程、カバー用部材の接着層の接着剤及び/又は可塑剤を浸透させて多孔質記録層の空隙を埋める工程の順にするようにでき、その後に、カバー用部材の透明基材を貼着する工程を行い、透明表示用部材を作製する。または、多孔質記録層に記録する工程、カバー用部材の接着層を介して透明基材を貼着する工程、カバー用部材に設けられた接着層の接着剤及び/又は可塑剤を浸透させて多孔質記録層の空隙を埋める工程の順にすることもできる。
【0046】
カバー用部材の透明基材と接着層が一体となっている場合は、多孔質記録層に記録する工程、カバー用部材の接着層を貼着する工程、カバー用部材に設けられた接着層の接着剤及び/又は可塑剤を浸透させて多孔質記録層の空隙を埋める工程の順に行う。カバー用部材の透明基材と接着層を一体とすることにより、特別な材料や塗布などの工程を行うことなく、容易に多孔質記録層の空隙を埋めることができる。多孔質記録層の空隙を埋めるためには、記録用シートの多孔質記録層にカバー用部材の接着層を貼着した後、熱、圧力、時間を適宜調整すればよい。
【0047】
カバー用部材に設けられた接着層の接着剤及び/又は可塑剤を浸透させる方法には、例えば図2に示すような本発明の透明表示物作製部材を用いることができる。本発明の透明表示物作製部材5は、透明基材10と接着層20とからなるカバー用部材2と、多孔質記録層11を有する記録用シート1とからなり、記録用シート1の多孔質記録層11表面に、カバー用部材2の接着層20を貼着し、接着層20の成分を多孔質記録層11の空隙110に浸透させることによって、多孔質記録層11を透明化することができるものである。
【0048】
本発明の透明表示物作製部材に用いられるカバー用部材は、前述のカバー用部材と同様のものを使用することができ、記録用シートも、前述の記録用シートを使用することができる。
【0049】
このような工程により透明表示用部材を作製することにより、出力機器に画像が記録される際には、多孔質記録層が不透明なため、用紙検知が容易にでき、画像を確認するために他の不透明シートを必要とすることなく、画像を容易に確認することができる。また、記録層が多孔質なため、インクの吸収性や、インクの乾燥性、顔料インクに対する印刷性に優れるものである。さらにカバー用部材により表面を保護することができるため、耐久性、特に耐水性、耐光性、耐擦過性に優れるものである。また、透明化することにより、画像を透過画像として認識することができ、光透過性に優れるものである。
【0050】
本発明の透明表示用部材の作製方法によって作製された透明表示用部材は、画像を透過画像として認識することができる。このような透明表示用部材は、一方の面に粘着加工などを施し、ウインドウ掲示用の表示物として用いることや、透過表示板として電飾看板などの透明表示板として用いることができる。
【0051】
以上説明した多孔質記録層および接着層は、各々の構成成分や必要に応じて他の成分を配合して、適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法などの公知の方法により塗布、乾燥した後、適宜必要な硬化方法を用いて硬化させることにより形成することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0053】
記録用シートの作製:
厚み100μmの透明基材(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に下記組成の多孔質記録層用塗布液をバーコーティングにより塗布後、乾燥することにより、厚み約20μmの多孔質記録層を形成した。
【0054】
<多孔質記録層用塗布液>
・ポリビニルブチラール 10部
(エスレックBM-S:積水化学工業社 屈折率 1.48〜1.49)
・シリカ 10部
(サイリシア445:富士シリシア化学社 屈折率 約1.45)
・希釈溶剤 30部
・硬化剤 0.5部
(タケネートD110N:三井化学ポリウレタン社)
【0055】
[印刷方法]
作製した記録用シートに、インクジェットプリンタ(SOLJET SC−540:ローランドディー.ジー.社)で溶剤系インク(Eco−Sol−MAX:ローランドディー.ジー.社)を用いて任意の画像データで出力した。
【0056】
[透明表示用部材の作製]
[実施例1]
記録用シートの画像が記録された多孔質記録層表面に、可塑剤(サンソサイザーE-6000:新日本理化社 屈折率 1.46)を塗布し、厚み100μmの透明基材(ルミラーT60:東レ社)を貼着し、実施例1の透明表示用部材を得た。
【0057】
[実施例2]
カバー用部材の作製:
厚み100μmの透明基材(ルミラーT60:東レ社)の一方の面に下記組成の接着層用塗布液をバーコーティングにより塗布後、乾燥することにより、厚み約30μmの接着層を形成し、透明表示物作製部材のカバー用部材を作製した。
【0058】
<接着層用塗布液>
・アクリル系感圧接着剤 50部
(SKダイン2094:綜研化学社 屈折率 約1.49)
・可塑剤 50部
(サンソサイザーE-6000:新日本理化社 屈折率 1.46)
【0059】
記録用シートの画像が記録された多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着し、2kg/cm2、30℃の荷重条件で7日間静置し、実施例2の透明表示用部材を得た。
【0060】
[実施例3]
記録用シートの画像が記録された多孔質記録層表面に、下記組成の樹脂塗布液を加熱しながら、塗布・浸透させ、高圧水銀灯により紫外線照射を行って硬化させることにより、実施例3の透明表示用部材を得た。
【0061】
<樹脂層用塗布液>
・光重合性材料 10部
(紫光UV-3000B:日本合成化学社 屈折率 約1.45)
・光重合開始剤 0.3部
(イルガキュア184:チバスペシャリティケミカルズ社)
【0062】
[比較例1]
記録用シートの作製において、多孔質記録層用塗布液に酸化チタン(FTL-300:石原産業社 屈折率 2.71)を3部加えて記録用シートを作製した以外は、実施例2の透明表示用部材の作製と同様に比較例1の表示用部材を得た。
【0063】
実施例1の透明表示用部材は、記録用シートに記録時には、記録用シートが白色であり、記録用シートがプリンタに検知され、記録された画像の確認も容易であった。また、多孔質記録層の空隙を埋める材料として可塑剤を塗布したものであるため、多孔質記録層の空隙に可塑剤が浸透するのに時間がかからないものであり、透明性に優れるものであった。
【0064】
実施例2の透明表示用部材は、記録用シートに記録時には、記録用シートが白色であり、記録用シートがプリンタに検知され、記録された画像の確認も容易であった。また、多孔質記録層の空隙を埋める材料として接着剤及び可塑剤を用いたものである。接着層を有するカバー用部材を貼着したものであるため、多孔質記録層の空隙に接着剤や可塑剤が浸透するのに実施例1のものに比べて若干時間がかかるものであったが、透明性に優れるものであった。
【0065】
実施例3の透明表示用部材は、記録用シートに記録時には、記録用シートが白色であり、記録用シートがプリンタに検知され、記録された画像の確認も容易であった。また、多孔質記録層の空隙を埋める材料として光重合性材料である電離放射線硬化型樹脂を用いたものである。多孔質記録層の空隙に電離放射線硬化型樹脂が浸透するものであるため、多孔質記録層の空隙に浸透するのに時間がかからず、透明性に優れるものであった。また、最表面に電離放射線硬化型樹脂層が設けられていることから、カバーフィルムを必要とせず、記録された画像の傷付き防止性に優れるものであった。
【0066】
比較例1の表示用部材は、記録用シートに記録時には、記録用シートが白色であり、記録用シートがプリンタに検知され、記録された画像の確認も容易であったが、接着層を貼着し、接着剤及び可塑剤により多孔質記録層の空隙を埋める工程を行ったが、透明にすることはできなかった。
【0067】
また、実施例1〜3の透明表示用部材をウインドウ掲示用の透明表示物としたところ、画像を透過画像として認識することができ、良好な透明表示物を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の透明表示用部材の作製方法の一例を示す断面図
【図2】本発明の透明表示物作製部材の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0069】
1・・・・記録用シート
10・・・透明基材
11・・・多孔質記録層
110・・空隙
2・・・・カバー用部材
20・・・接着層
3・・・・画像(インク)
4・・・・透明表示用部材
5・・・・透明表示物作製部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に多孔質記録層を有する記録用シートを用いた透明表示用部材の作製方法であって、
下記a、b工程をこの順に行うことを特徴とする透明表示用部材の作製方法。
a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程
b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程
【請求項2】
透明基材と接着層とからなるカバー用部材と多孔質記録層を有する記録用シートとを用いた透明表示用部材の作製方法であって、
下記a、b工程をこの順に行い、さらにc工程を含むことを特徴とする透明表示用部材の作製方法。
a.記録用シートの多孔質記録層に記録する工程
b.多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程
c.多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着する工程
【請求項3】
請求項2記載の工程を、a、c、bの順に行うことを特徴とする透明表示用部材の作製方法。
【請求項4】
前記多孔質記録層の空隙を埋めて、透明化する工程が、多孔質記録層に空隙を埋める材料を浸透させる工程であることを特徴とする請求項1または2記載の透明表示用部材の作製方法。
【請求項5】
前記多孔質記録層は、バインダー樹脂と顔料とを含み、バインダー樹脂と顔料と前記多孔質記録層の空隙を埋める材料との屈折率の差が、0.10以下であることを特徴とする請求項4記載の透明表示用部材の作製方法。
【請求項6】
透明基材と接着層とからなるカバー用部材と、多孔質記録層を有する記録用シートとからなる透明表示物作製部材であって、記録用シートの多孔質記録層表面に、カバー用部材の接着層を貼着し、接着層の成分を多孔質記録層の空隙に浸透させることによって、多孔質記録層を透明化することができることを特徴とする透明表示物作製部材。
【請求項7】
前記多孔質記録層は、バインダー樹脂と顔料とを含み、バインダー樹脂と顔料と接着層の多孔質記録層に浸透する成分との屈折率の差が、0.10以下であることを特徴とする請求項6記載の透明表示物作製部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−213208(P2008−213208A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51148(P2007−51148)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】