説明

透析液作成用希釈水の製造装置および方法

【課題】逆浸透膜モジュールを比較的短時間で効率よく熱湯洗浄できるようにした透析液作成用希釈水の製造装置および方法を提供する。
【解決手段】原水貯留槽、原水を加圧供給する加圧ポンプ、前処理手段、原水をさらに加圧供給する高圧ポンプ、逆浸透膜により原水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュール、透過水貯留手段、透過水貯留手段に貯留された透過水を透析液作成用希釈水として供給する透過水供給手段を有し、逆浸透膜モジュールの透過水および濃縮水をそれぞれ原水貯留槽に循環させる循環経路を設け、原水貯留槽に加温手段を付設し、該加温手段により循環水を徐々に昇温して逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄可能に構成したことを特徴とする透析液作成用希釈水の製造装置、および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析用の透析液を透析用粉末剤または透析用濃縮原液と希釈水とを所定の比率で混合して作成するのに用いられる、透析液作成用希釈水の製造装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
とくに、多人数用の血液透析を中央で集中管理できるようにした、いわゆるセントラル透析システムにおいては、個々の血液透析に用いられる透析液を調製するに際し、とくに所定濃度の透析用原液が、透析用粉末剤または透析用濃縮原液と希釈水とを所定の混合比率で混合し、透析用粉末剤を希釈水で溶解あるいは透析用濃縮原液を希釈水で所定濃度に希釈することにより、多量に調製されることが多い。このような透析液作成用希釈水には、通常、高い清浄度が要求される。
【0003】
近年、透析液作成用希釈水の清浄化要求はさらに高まりつつあり、逆浸透膜等を使用した希釈水製造装置が種々検討されている。逆浸透膜を用いた透析液作成用希釈水の製造装置としては、1段の逆浸透膜モジュールを備えた装置に加え、さらに水質向上を図るために、逆浸透膜モジュールを2段直列に配置した2段処理装置も知られている。このような逆浸透膜を用いた透析液作成用希釈水の製造装置においては、逆浸透膜の1次側および2次側の殺菌を確実に行い長期的に高い清浄度を維持するために、従来から、熱湯による膜洗浄が実施されている。しかしながら、従来技術においては下記のような問題が残されている。
【0004】
(1)熱湯作製手段を逆浸透膜による処理水タンクに具備し、作製した熱湯を1段および2段逆浸透膜に通水して逆浸透膜処理水タンクに戻す循環方式が一般的に採用されているが、循環できるのは逆浸透膜を透過した熱湯の一部だけであり、2段処理の場合には、熱媒体として2段目の逆浸透膜に供給される熱湯は減少し、2段目の逆浸透膜を透過して逆浸透膜処理水タンクに還流される熱湯はさらに減少する。そのため、熱湯による膜洗浄効率が低い。
(2)逆浸透膜に一気に高温熱湯を供給するのは好ましくないため、逆浸透膜処理水タンク内の昇温は上記逆浸透膜と逆浸透膜処理水タンクとの間の循環を行いながら徐々に昇温していくことが望ましいが、上述の如く熱媒体である逆浸透膜透過水が減少すること、逆浸透膜一次側の停滞水が昇温の阻害になるなど、昇温の際の熱効率が悪く、所望の昇温に時間を要する。
(3)夜間透析などの実施により1日の透析治療時間が長くなる傾向にあり、翌日の透析までの待機時間が短くなってきているため、夜間に熱湯洗浄を行う場合には短時間で洗浄工程を終了する必要がある。しかし、上記の如く昇温に時間を要するため、この短時間での洗浄の要求に応えることが困難になっている。
【0005】
なお、本発明に関連する技術として、特許文献1に、医薬品用精製水の製造において熱水殺菌を行う技術が記載されているが、特許文献1に記載の技術は、処理対象が本発明とは異なり、医薬品製造用の精製水を対象としており、透析液については言及されていない。また、前提構成が本発明とは異なり、逆浸透膜装置(逆浸透膜モジュール)と電気再生式純水製造装置の直列配置を必須の構成としており、逆浸透膜装置の前段に前処理手段はなく、逆浸透膜装置と前処理手段を有する場合の熱水殺菌については全く言及されていない。また、システム清浄化の基本プロセスが本発明とは異なり、複雑であり、原水を一旦逆浸透膜装置と電気再生式純水製造装置で処理して処理原水とし、その処理原水を加熱してシステムを熱水殺菌するようにしている。さらに、加熱方式も本発明とは異なり、循環配管中に加熱器を設けているので、原水貯留手段に加温手段を付設する場合に比べ加熱効率が低く、所望の加温に長時間を要するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−74109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、上述したような現状の透析液作成用希釈水の清浄化方法における問題点に着目し、逆浸透膜モジュール洗浄のための原水および循環水を効率よく所望の温度に加温でき、逆浸透膜モジュールを比較的短時間で効率よく熱湯洗浄でき、逆浸透膜モジュールの前段に前処理手段を有する場合にも最適な加温洗浄水の通水に切り換え可能で、しかも逆浸透膜モジュールを2段に配置した2段処理の場合にあっても容易に適用可能な、セントラル透析システムに好適な透析液作成用希釈水の製造装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る透析液作成用希釈水の製造装置は、原水を貯留する原水貯留槽と、原水貯留槽内の原水を加圧し供給する加圧ポンプと、加圧ポンプにより供給された原水を前処理する前処理手段と、前処理手段により前処理された原水をさらに加圧し供給する高圧ポンプと、高圧ポンプにより供給された原水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、逆浸透膜モジュールからの透過水を貯留する透過水貯留手段と、透過水貯留手段に貯留された透過水を透析液作成用希釈水として供給する透過水供給手段を有する装置において、前記逆浸透膜モジュールの透過水および濃縮水をそれぞれ前記原水貯留槽に循環させる循環経路を設け、前記原水貯留槽に加温手段を付設し、該加温手段により原水および前記循環経路の循環水を徐々に昇温して前記逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄可能に構成したことを特徴とする装置からなる。なお、上記前処理手段としては、例えば、各種フィルタ、軟水器、濾過器(例えば、活性炭濾過器)等の少なくとも一つを含むものに構成できる。また、上記加温手段としては、一般的な原水加温手段をそのまま転用すればよく、特別な熱湯作製設備は不要である。
【0009】
このような本発明に係る透析液作成用希釈水の製造装置においては、逆浸透膜モジュールの透過水と濃縮水の両方が循環経路を介して原水貯留槽に循環され、原水貯留槽に付設された加温手段により昇温され、逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄に供される。したがって、逆浸透膜モジュールの透過水(二次側透過水)と濃縮水(一次側濃縮水)の全量が原水貯留槽に回収されて循環されることになり、熱湯循環水量が減少されずに逆浸透膜モジュールが熱湯洗浄され、熱湯による膜洗浄効果が高く維持される。また、加温手段により原水および上記循環経路の循環水が徐々に昇温されるので、逆浸透膜に一気に高温熱湯が供給されることはなく、逆浸透膜は望ましい温度条件にて洗浄され得る。また、循環水は水量が減少されずに、その全量が原水貯留槽に付設された加温手段により昇温され、とくに原水貯留槽では昇温のための熱容量を大きい状態に維持できるので、高い加温効率が得られ、短時間のうちに目標とする温度に昇温可能となる。目標温度への昇温に時間を要しないため、所望の熱湯洗浄を短時間で終えることが可能になり、短くなりつつある夜間の洗浄可能時間にも容易に対応できるようになる。さらに、昇温された熱湯は逆浸透膜モジュールのみならず原水貯留槽から前処理手段にも通水されるので、効率のよい前処理手段の熱湯洗浄も可能になり、前処理手段での細菌コンタミ等をより適切に防止できるようになり、システム全体の優れた洗浄が可能になる。このように優れた性能の洗浄が短時間で可能になるので、比較的多量の透析液作成用希釈水の製造が要求されるセントラル透析システムにおける希釈水製造にも容易に対応できるようになる。
【0010】
上記のような本発明に係る透析液作成用希釈水の製造装置においては、さらに、上記透過水供給手段からの透過水を上記原水貯留槽に循環させる透過水循環経路を設け、逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄する循環水としてこの透過水とすることを可能に構成することができる。すなわち、上述の如く、逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄には原則として循環される透過水と濃縮水の両方が用いられるのであるが、より清浄な透過水のみを使用して熱湯による膜洗浄を行うことを可能とし、洗浄後すぐに希釈水の製造をより適切に開始できるようにしたものである。
【0011】
また、上記加圧ポンプの出口側と上記高圧ポンプの入口側とを連通し上記前処理手段をバイパスするバイパス回路を設け、該バイパス回路の切り換えにより、上記前処理手段に通水する熱湯の温度と上記逆浸透膜モジュール以降に通水する熱湯の温度を切り換え可能に構成することもできる。このように構成すれば、バイパス回路を閉じて前処理手段への回路のみを開ける場合には、前処理手段の洗浄に最適な温度の熱湯を前処理手段に通水させることができ、バイパス回路を開いて前処理手段への回路を閉じる場合には、前処理手段には通水させず前処理手段とは無関係に、逆浸透膜モジュールの洗浄に最適な温度の熱湯を逆浸透膜モジュールに通水させることができるようになる。したがって、前処理手段と逆浸透膜モジュールの最適な通水温度が互いに異なる場合にも容易に対応できるようになり、各部位をそれぞれ最適な熱湯温度でより適切に洗浄できるようになる。
【0012】
また、上記原水貯留槽と上記逆浸透膜モジュールとの間で循環される熱湯の温度が所定温度に達し、所定時間循環を行った後、該逆浸透膜モジュールの透過水を上記透過水貯留手段に供給し、上記透過水供給手段により上記透過水循環経路を介して透過水貯留手段と原水貯留槽との間で透過水を循環させ、該循環水により原水貯留槽から透過水貯留手段までを熱湯洗浄可能に構成することもできる。すなわち、所定時間上記原水貯留槽と上記逆浸透膜モジュールとの間の循環を行って洗浄がある程度進んだ段階で、透過水供給手段を利用して透過水貯留手段の透過水を原水貯留槽に循環させることができるようにし、より清浄な透過水を用いて最終的な熱湯洗浄を行うことを可能としたものである。この場合にも、最終洗浄後すぐに希釈水の製造を適切に開始できるようになる。
【0013】
さらに、上記逆浸透膜モジュールを、1段目の逆浸透膜モジュールと、該1段目の逆浸透膜モジュールからの透過水をさらに透過水と濃縮水とに分離する2段目の逆浸透膜モジュールとから構成し、少なくとも、2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水を上記原水貯留槽に循環させる2段目濃縮水循環経路を有する構成とすることもできる。すなわち、逆浸透膜モジュールの2段処理の場合にも、本発明は問題なく適用できる。この場合、2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水とともにその透過水も原水貯留槽に循環させることが可能である。あるいは、その透過水は上記透過水貯留手段に送り、そこから原水貯留槽に循環させるようにすることも可能である。
【0014】
本発明に係る透析液作成用希釈水の製造方法は、原水貯留槽内に貯留された原水を加圧ポンプにより加圧して前処理手段に供給し、前処理手段により前処理された原水を高圧ポンプによりさらに加圧して逆浸透膜モジュールに供給し、逆浸透膜モジュールの逆浸透膜により供給されてきた原水を透過水と濃縮水とに分離し、逆浸透膜モジュールからの透過水を透過水貯留手段に貯留し、透過水貯留手段に貯留された透過水を透過水供給手段により透析液作成用希釈水として供給する方法において、前記逆浸透膜モジュールの透過水および濃縮水をそれぞれ前記原水貯留槽に循環させ、該循環水を前記原水貯留槽で原水とともに徐々に昇温して前記逆浸透膜モジュールへと循環させ、該昇温された逆浸透膜モジュールへの循環水により逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄することを特徴とする方法からなる。
【0015】
この透析液作成用希釈水の製造方法においては、さらに、上記透過水供給手段からの透過水を上記原水貯留槽に循環させ、上記逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄する循環水を透過水とすることができる。
【0016】
また、上記加圧ポンプの出口側と前記高圧ポンプの入口側との間において、上記前処理手段をバイパスするバイパス回路を設け、該バイパス回路の切り換えにより、上記前処理手段に通水する熱湯の温度と上記逆浸透膜モジュール以降に通水する熱湯の温度を切り換えるようにすることができる。
【0017】
また、上記原水貯留槽と上記逆浸透膜モジュールとの間で循環される熱湯の温度が所定温度に達し、所定時間循環を行った後、該逆浸透膜モジュールの透過水を上記透過水貯留手段に供給し、上記透過水供給手段により透過水を透過水貯留手段と原水貯留槽との間で循環させ、該循環水により原水貯留槽から透過水貯留手段までを熱湯洗浄するようにすることもできる。
【0018】
さらに、上記逆浸透膜モジュールを、1段目の逆浸透膜モジュールと、該1段目の逆浸透膜モジュールからの透過水をさらに透過水と濃縮水とに分離する2段目の逆浸透膜モジュールとから構成し、少なくとも2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水を上記原水貯留槽に循環させるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る透析液作成用希釈水の製造装置および方法によれば、逆浸透膜モジュール洗浄のための原水および循環水を効率よく所望の温度に加温でき、逆浸透膜モジュールを、さらには前処理手段についても、短時間のうちに効率よく熱湯洗浄でき、セントラル透析システムにおける透析液作成用希釈水の製造に容易に対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施態様に係る透析液作成用希釈水の製造装置の機器系統図である。
【図2】本発明の第2実施態様に係る透析液作成用希釈水の製造装置の機器系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施態様に係る透析液作成用希釈水の製造装置を示しており、逆浸透膜モジュールが1段の場合の一例を示している。図1に示す透析液作成用希釈水の製造装置1は、供給されてくる原水2を貯留する原水貯留槽3と、原水貯留槽3内の原水を加圧し供給する加圧ポンプ4と、加圧ポンプ4により供給された原水を前処理する前処理手段5(例えば、各種フィルタ、軟水器、濾過器(例えば、活性炭濾過器)等の少なくとも一つを含む前処理手段)と、前処理手段5により前処理された原水をさらに加圧し供給する高圧ポンプ6と、高圧ポンプ6により供給された原水を逆浸透膜7により透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュール8と、逆浸透膜モジュール8からの透過水を貯留する透過水貯留手段9と、透過水貯留手段9に貯留された透過水を透析液作成用希釈水10として供給する透過水供給手段としての送水ポンプ11を有している。
【0022】
逆浸透膜モジュール8の濃縮水および透過水は、それぞれ、濃縮水循環経路12と透過水循環経路13を介して原水貯留槽3に循環されることが可能に構成されている。また、透過水貯留手段9に貯留された透過水は、送水ポンプ11を利用し、透過水循環経路14を介して原水貯留槽3に循環されることが可能に構成されている。原水貯留槽3には、原水および各循環経路を介して回収されてくる循環水を加温する加温手段15が付設されている。加温手段15により原水および各循環経路の循環水が徐々に昇温され、昇温された熱湯が前処理手段5、逆浸透膜モジュール8へと通水循環され、とくに逆浸透膜モジュール8の逆浸透膜7の熱湯洗浄に供される。ただし供給されてくる熱湯により、前処理手段5、透過水貯留手段9を含めたシステム全体の洗浄も可能である。さらに本実施態様では、加圧ポンプ4の出口側と高圧ポンプ6の入口側とを連通し前処理手段5をバイパスするバイパス回路16が設けられている。バイパス回路16を通水させる経路と通水させない経路との切り換えにより、とくに前処理手段5に通水する熱湯の温度と、逆浸透膜モジュール8以降に通水する熱湯の温度とを切り換えることが可能になっている。なお、濃縮水循環経路12からは必要に応じて排水17が可能となっている。
【0023】
このように構成された透析液作成用希釈水の製造装置1においては、逆浸透膜モジュール8により分離された透過水と濃縮水の両方がそれぞれの循環経路13、12を介して原水貯留槽3に循環され、原水貯留槽3に付設された加温手段15によって徐々に昇温される。したがって、循環水量が減少されることなく、全量循環され、加温された循環水の全量が逆浸透膜7の熱湯洗浄に供され、熱湯による膜洗浄効果が高く維持される。また、加温手段15により循環水が徐々に昇温されるので、逆浸透膜7に一気に高温熱湯に曝されることはなく、逆浸透膜7は望ましい温度条件で洗浄される。さらに、循環水は水量が減少されずに、その全量が原水貯留槽3に付設された加温手段15により昇温されるので、高い加温効率を実現でき、短時間のうちに目標温度まで昇温できる。昇温時間の短縮により、所定の膜洗浄時間も短くなり、短くなりつつある夜間の洗浄可能時間中に、十分な洗浄を行うことが可能になる。
【0024】
また、昇温された熱湯は前処理手段5にも通水されるので、逆浸透膜モジュール8のみならず前処理手段5の効率のよい熱湯洗浄も可能になり、洗浄後の希釈水製造の際の前処理手段での細菌コンタミ等をより適切に防止できるようになる。さらに、透過水貯留手段9も循環水により熱湯洗浄可能であり、システム全体の効率のよい優れた洗浄が可能である。
【0025】
また、透過水循環経路14を介した循環透過水も洗浄用熱湯として利用することが可能であるから、例えば、逆浸透膜モジュール8からの透過水と濃縮水による熱湯洗浄がある程度進んだ段階で、より清浄な透過水貯留手段9からの透過水のみを使用して熱湯による膜洗浄を行うようにすれば、より清浄度を高めることが可能になり、洗浄後すぐに希釈水の製造がより適切に開始できるようになる。この透過水の循環には、機器を付加することなく、送水ポンプ11を有効活用できる。
【0026】
さらに、バイパス回路16の切り換えを利用することにより、前処理手段5と逆浸透膜モジュール8(逆浸透膜7)の最適な熱湯通水温度が互いに異なる場合にあっても、各部位をそれぞれ最適な熱湯温度でより適切に洗浄できるようになる。
【0027】
図2は、本発明の第2実施態様に係る透析液作成用希釈水の製造装置を示しており、逆浸透膜モジュールが2段直列に配置された場合の一例を示している。図2に示す透析液作成用希釈水の製造装置21において、供給されてくる原水22、原水貯留槽23、加圧ポンプ24、前処理手段25、1段目高圧ポンプ26、逆浸透膜27を有する1段目逆浸透膜モジュール28、透過水貯留手段29、透過水を透析液作成用希釈水30として供給する透過水供給手段としての送水ポンプ31、1段目逆浸透膜モジュール28の濃縮水および透過水の濃縮水循環経路32と透過水循環経路33、透過水貯留手段29からの透過水循環経路34、加温手段35、バイパス回路36、濃縮水循環経路32からの必要に応じた排水37は、図1に示した第1実施態様における原水2、原水貯留槽3、加圧ポンプ4、前処理手段5、高圧ポンプ6、逆浸透膜7を有する逆浸透膜モジュール8、透過水貯留手段9、透過水を透析液作成用希釈水10として供給する透過水供給手段としての送水ポンプ11、逆浸透膜モジュール8の濃縮水および透過水の濃縮水循環経路12と透過水循環経路13、透過水貯留手段9からの透過水循環経路14、加温手段15、バイパス回路16、濃縮水循環経路12からの必要に応じた排水17に、それぞれ、相当している。
【0028】
本第2実施態様においては、上記構成に加えて、2段目高圧ポンプ41、逆浸透膜42を有する2段目逆浸透膜モジュール43が設けられ、直列2段処理システムに構成されて、透析液作成用希釈水を製造する際の希釈水の清浄度の向上が図られている。2段目逆浸透膜モジュール43の濃縮水は、濃縮水循環経路44を介して原水貯留槽23へ循環可能に構成されている。2段目逆浸透膜モジュール43の透過水は、送水回路45を介して透過水貯留手段29に送られ、透過水貯留手段29から送水ポンプ31を利用し透過水循環経路34を介して原水貯留槽23へ循環可能に構成されているが、鎖線で示したように、2段目逆浸透膜モジュール43の透過水を透過水循環経路46を介して原水貯留槽23へ循環できるように構成してもよい。濃縮水循環経路44からも必要に応じて排水47が可能なように構成しておくことができる。
【0029】
このように構成された第2実施態様に係る透析液作成用希釈水の製造装置21においては、1段目逆浸透膜モジュール28と2段目逆浸透膜モジュール43の2段処理構成を備えたシステムにおいても、本発明における循環、加温、洗浄システムが問題なく適用できることが分かる。すなわち、図2に示した形態では、1段目逆浸透膜モジュール28により分離された透過水と濃縮水の両方がそれぞれの循環経路33、32を介して原水貯留槽23に循環され、2段目逆浸透膜モジュール43により分離された透過水と濃縮水の両方がそれぞれの循環経路34または46、循環経路44を介して原水貯留槽23に循環され、原水貯留槽23に付設された加温手段35によって徐々に昇温されて、逆浸透膜27、42の熱湯洗浄に供される。その他の作用、効果は前記第1実施態様に準じる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、前処理手段、逆浸透膜モジュールを有するあらゆる透析液作成用希釈水の製造に適用でき、とくに多人数用の血液透析を中央で集中管理できるようにしたセントラル透析システムにおける透析液作成用希釈水の製造に好適なものである。
【符号の説明】
【0031】
1、21 透析液作成用希釈水の製造装置
2、22 原水
3、23 原水貯留槽
4、24 加圧ポンプ
5、25 前処理手段
6 高圧ポンプ
7、27、42 逆浸透膜
8 逆浸透膜モジュール
9、29 透過水貯留手段
10、30 透析液作成用希釈水
11、31 透過水供給手段としての送水ポンプ
12、32、44 濃縮水循環経路
13、14、33、34、46 透過水循環経路
15、35 加温手段
16、36 バイパス回路
17、37、47 排水
26 1段目高圧ポンプ
28 1段目逆浸透膜モジュール
41 2段目高圧ポンプ
43 2段目逆浸透膜モジュール
45 送水回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を貯留する原水貯留槽と、原水貯留槽内の原水を加圧し供給する加圧ポンプと、加圧ポンプにより供給された原水を前処理する前処理手段と、前処理手段により前処理された原水をさらに加圧し供給する高圧ポンプと、高圧ポンプにより供給された原水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、逆浸透膜モジュールからの透過水を貯留する透過水貯留手段と、透過水貯留手段に貯留された透過水を透析液作成用希釈水として供給する透過水供給手段を有する装置において、前記逆浸透膜モジュールの透過水および濃縮水をそれぞれ前記原水貯留槽に循環させる循環経路を設け、前記原水貯留槽に加温手段を付設し、該加温手段により原水および前記循環経路の循環水を徐々に昇温して前記逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄可能に構成したことを特徴とする透析液作成用希釈水の製造装置。
【請求項2】
さらに、前記透過水供給手段からの透過水を前記原水貯留槽に循環させる透過水循環経路を設け、前記逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄する循環水を透過水とすることを可能に構成したことを特徴とする、請求項1に記載の透析液作成用希釈水の製造装置。
【請求項3】
前記加圧ポンプの出口側と前記高圧ポンプの入口側とを連通し前記前処理手段をバイパスするバイパス回路を設け、該バイパス回路の切り換えにより、前記前処理手段に通水する熱湯の温度と前記逆浸透膜モジュール以降に通水する熱湯の温度を切り換え可能に構成したことを特徴とする、請求項1または2に記載の透析液作成用希釈水の製造装置。
【請求項4】
前記原水貯留槽と前記逆浸透膜モジュールとの間で循環される熱湯の温度が所定温度に達し、所定時間循環を行った後、該逆浸透膜モジュールの透過水を前記透過水貯留手段に供給し、前記透過水供給手段により前記透過水循環経路を介して透過水貯留手段と原水貯留槽との間で透過水を循環させ、該循環水により原水貯留槽から透過水貯留手段までを熱湯洗浄可能に構成したことを特徴とする、請求項2または3に記載の透析液作成用希釈水の製造装置。
【請求項5】
前記逆浸透膜モジュールを、1段目の逆浸透膜モジュールと、該1段目の逆浸透膜モジュールからの透過水をさらに透過水と濃縮水とに分離する2段目の逆浸透膜モジュールとから構成し、少なくとも、2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水を前記原水貯留槽に循環させる2段目濃縮水循環経路を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透析液作成用希釈水の製造装置。
【請求項6】
原水貯留槽内に貯留された原水を加圧ポンプにより加圧して前処理手段に供給し、前処理手段により前処理された原水を高圧ポンプによりさらに加圧して逆浸透膜モジュールに供給し、逆浸透膜モジュールの逆浸透膜により供給されてきた原水を透過水と濃縮水とに分離し、逆浸透膜モジュールからの透過水を透過水貯留手段に貯留し、透過水貯留手段に貯留された透過水を透過水供給手段により透析液作成用希釈水として供給する方法において、前記逆浸透膜モジュールの透過水および濃縮水をそれぞれ前記原水貯留槽に循環させ、該循環水を前記原水貯留槽で原水とともに徐々に昇温して前記逆浸透膜モジュールへと循環させ、該昇温された逆浸透膜モジュールへの循環水により逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄することを特徴とする、透析液作成用希釈水の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記透過水供給手段からの透過水を前記原水貯留槽に循環させ、前記逆浸透膜モジュールを熱湯洗浄する循環水を透過水とすることを特徴とする、請求項6に記載の透析液作成用希釈水の製造方法。
【請求項8】
前記加圧ポンプの出口側と前記高圧ポンプの入口側との間において、前記前処理手段をバイパスするバイパス回路を設け、該バイパス回路の切り換えにより、前記前処理手段に通水する熱湯の温度と前記逆浸透膜モジュール以降に通水する熱湯の温度を切り換えることを特徴とする、請求項6または7に記載の透析液作成用希釈水の製造方法。
【請求項9】
前記原水貯留槽と前記逆浸透膜モジュールとの間で循環される熱湯の温度が所定温度に達し、所定時間循環を行った後、該逆浸透膜モジュールの透過水を前記透過水貯留手段に供給し、前記透過水供給手段により透過水を透過水貯留手段と原水貯留槽との間で循環させ、該循環水により原水貯留槽から透過水貯留手段までを熱湯洗浄することを特徴とする、請求項7または8に記載の透析液作成用希釈水の製造方法。
【請求項10】
前記逆浸透膜モジュールを、1段目の逆浸透膜モジュールと、該1段目の逆浸透膜モジュールからの透過水をさらに透過水と濃縮水とに分離する2段目の逆浸透膜モジュールとから構成し、少なくとも2段目の逆浸透膜モジュールの濃縮水を前記原水貯留槽に循環させることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の透析液作成用希釈水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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