説明

透析液配管中の透析液判別方法及び透析液供給システム

【課題】個人用或いは多人数用透析液配管内の液の性状を明確に判別することのできる透析液配管中の透析液判別方法及び透析液供給システムを提供する。
【解決手段】多人数用透析液供給装置2により複数の透析器へと供給する透析液、又は、その他の液体を流動させるために多人数用透析液配管3を備えた透析液供給システム1において、多人数用透析液配管3内を流れる液体の電気伝導率とpH値とを連続的に測定して、多人数用透析液配管3内を流動する液体の種類を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析施設において、多人数の患者へと同時に透析液を送給することのできる透析液配管内の液を常時測定し、透析液配管内の液の種類を判別する透析液配管中の透析液判別方法及び透析液供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、透析施設においては、例えば、図10に示すような、少なくとも2人以上、通常、20人から50人程度の多くの患者に対して同時に透析治療ができるようにした多人数用透析液配管が設置された透析液供給システムが採用されている。
【0003】
本例における透析液供給システム1について説明すると、多人数用透析液供給装置2は、多人数用透析液配管3により同時に、患者のベッドサイドに患者毎に設置された透析用監視装置4へと透析液を供給する。患者のベッドサイドに配置された透析用監視装置4は、透析器(図示せず)が接続されており、透析器に透析液を供給すると共に、透析器の監視を行っている。
【0004】
患者毎に配置されている透析用監視装置4は、通常、透析器に供給される透析液の濃度を監視する機能はない。一部オプションにて電気伝導率計を内蔵できるものもあるが、この電気伝導率計は、高ナトリウム透析時のナトリウム注入量を監視するものであり、透析液配管3内の透析液の性状を監視するものではない。
【0005】
また、透析液供給システム1は、RO装置(逆浸透法精製水製造装置)6、粉末溶解装置7(例えば、A剤溶解装置7a、B剤溶解装置7b)、次亜塩素酸ナトリウム活性化装置(消毒液作製装置)8、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置9、酢酸タンク装置10等を備えており、各装置が連携して動作している。
【0006】
つまり、多人数用透析液供給装置2は、RO装置6と粉末溶解装置7(A剤溶解装置7a、B剤溶解装置7b)を作動させることにより、透析液を多人数用透析液配管3に送給し、また、必要に応じて、RO装置6と次亜塩素酸ナトリウム活性化装置8を作動して、或いは、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置9及び酢酸タンク装置10からの薬剤を多人数用透析液配管3内へと送給して多人数用透析液配管3内の消毒、洗浄等を行う。
【0007】
従来、多人数用透析液供給装置2は、電気伝導率計(図示せず)を内蔵しており、多人数用透析液配管3内へと供給される透析液が正しい濃度の透析液であるか否かを監視している。
【0008】
特許文献1には、粉体状の凝縮物と水から透析液を調整する際に導電率を制御して行う薬剤調整装置を開示している。
【特許文献1】特許第3198172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、現在の透析施設において、多人数用透析液配管3内の液を常時測定し、液の種類を判定する機器を備えた透析液供給システム1は、本発明者らの知る限りにおいては存在しない。
【0010】
現状では、透析施設新設時に、透析液配管3内の液の置換時間等を測定して確認することが行われ、この確認事項に基づいて、各装置の動作タイムチャート、洗浄時間等が決められている。
【0011】
そのため、日常的には、施設の技師などが、残留塩素計などで消毒液が透析液配管3内に残留していないかの確認がなされているに過ぎない。
【0012】
このような現在の透析液供給システム1では、多人数用透析液配管3内の液が何であるかは、多人数用透析液供給装置2などの動作状態から必要な液が流れているものと判断しているのみで、直接液の状態を監視することはなされていない。
【0013】
一方、透析液供給システム1における各装置内や各装置間を接続する配管のバルブ等に誤動作やリーク、或いは、故障があれば、意図しない液が流れたり、混入したりする可能性がある。
【0014】
また、近年、多人数用透析液配管3を夜間、低濃度殺菌水(低濃度の次亜塩素酸ナトリウム活性水:次亜塩素酸ナトリウムと酢酸とRO水の混合溶液)で滞留させる透析施設が増えてきている。しかし、例えば、意図した低濃度殺菌水ではなくRO水を滞留させてしまったとしても気が付かない。
【0015】
上述のように、従来の多人数用透析液供給装置2に備えられた電気伝導率計は、多人数用透析液配管3内へと供給される透析液の導電率を測定し、正しい濃度の透析液であるか否かを監視しているものであるが、この多人数用透析液供給装置2に内蔵されている電気伝導率計を利用して、多人数用透析液配管3内の液の性状を監視することも考えられる。そのためには、電気伝導率計は、RO水から透析液まで広い測定範囲が要求される。
【0016】
しかしながら、多人数用透析液供給装置2に内蔵されている電気伝導率計は、上述のように透析液の電気伝導率(約14000μmS/cm)を測定するもので、RO水の電気伝導率(数μS/cm以下)を測定できる仕様ではない。
【0017】
そこで、本発明者らは、多くの研究実験を行った結果、多人数用透析液配管の出口部分に、或いは、環流管路部分に、電気伝導率計及びpH計を備えた透析液配管内液監視装置を設置することにより、多人数用透析液配管内の液の性状を明確に判別することができ、上記諸問題を解決し得ることを見出した。
【0018】
上述した諸問題は、個人用の透析液供給システムにおける個人用透析液配管おいても同様である。
【0019】
つまり、本発明の目的は、個人用或いは多人数用透析液配管内の液の性状を明確に判別することのできる透析液配管中の透析液判別方法及び透析液供給システムを提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、個人用或いは多人数用透析液配管内に流動している液体の種類を把握し、透析器への不所望の液体が混入することを完全に回避することができる透析液供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的は本発明に係る透析液配管中の透析液判別方法及び透析液供給システムにて達成される。要約すれば、第1の本発明によると、透析液若しくはその他の液体を透析器へと流動させるか、又は、前記透析器からの前記液体を排出するための個人用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおける前記透析液配管中の透析液判別方法であって、
前記透析液配管内を流れる液体の電気伝導率とpH値とを連続的に測定して、前記透析液配管内を流動する液体の種類を判別することを特徴とする透析液配管中の透析液判別方法が提供される。
【0022】
第2の本発明によれば、多人数用透析液供給装置により透析液若しくはその他の液体を流動させるために多人数用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおける前記透析液配管中の透析液判別方法であって、
前記多人数用透析液配管内を流れる液体の電気伝導率とpH値とを連続的に測定して、前記多人数用透析液配管内を流動する液体の種類を判別することを特徴とする透析液配管中の透析液判別方法が提供される。
【0023】
本発明の透析液判別方法では、一実施態様によれば、前記その他の液体は、RO水、次亜塩素酸ナトリウム活性水(低濃度:2〜20ppm)、次亜塩素酸ナトリウム活性水(高濃度:25〜100ppm)、酢酸、及び、次亜塩素酸ナトリウムである。
【0024】
本発明の透析液判別方法では、他の実施態様によれば、前記液体の種類を判別するための判定基準は、
(1)電気伝導率(μS/cm)が5以下、pH値が5.0〜7.0の場合は、RO水、
(2)電気伝導率(μS/cm)が8〜60、pH値が4.0〜6.0の場合は、低濃度次亜塩素酸ナトリウム活性水、
(3)電気伝導率(μS/cm)が70〜400、pH値が3.5〜5.5の場合は、高濃度次亜塩素酸ナトリウム活性水、
(4)電気伝導率(μS/cm)が300〜1000、pH値が2.0〜3.0の場合は、0.5%〜2%の酢酸、
(5)電気伝導率(μS/cm)が400〜3000、pH値が8.0〜12.0の場合は、200〜1200ppmの次亜塩素酸ナトリウム、
(6)電気伝導率(μS/cm)が13700〜14300、pH値が7.1〜7.5の場合は、透析液、
である。
【0025】
第3の本発明によれば、透析液若しくはその他の液体を透析器へと流動させるか、又は、前記透析器からの前記液体を排出するための個人用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおいて、
前記透析液配管に接続された測定管路と、
前記測定管路に接続された電気伝導率計及びpH計と、
前記電気伝導率計及びpH計からの測定値を基に前記透析液配管内を流動する液体の種類を判別する演算処理装置と、
を有することを特徴とする透析液供給システムが提供される。
【0026】
第3の本発明の透析液供給システムにて、一実施態様によれば、RO装置、粉末溶解装置、次亜塩素酸ナトリウム活性化装置、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置、及び、酢酸タンク装置を備えており、前記各装置は、前記透析液配管を介して前記透析器に接続されている。
【0027】
第3の本発明の透析液供給システムにて、他の実施態様によれば、前記測定管路には、前記透析液配管に接続された入口部から出口部へと順に、流量調整弁、逆止弁、流量計、前記電気伝導率計及び前記pH計が設置されている。
【0028】
第4の本発明によれば、多人数用透析液供給装置により透析液若しくはその他の液体を流動させるために多人数用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおいて、
前記多人数用透析液配管の出口部に接続された測定管路と、
前記測定管路に接続された電気伝導率計及びpH計と、
前記電気伝導率計及びpH計からの測定値を基に前記多人数用透析液配管内を流動する液体の種類を判別する演算処理装置と、
を有することを特徴とする透析液供給システムが提供される。
【0029】
第4の本発明の透析液供給システムにて、一実施態様によれば、RO装置、粉末溶解装置、次亜塩素酸ナトリウム活性化装置、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置、及び、酢酸タンク装置を備えており、前記各装置は、前記多人数用透析液供給装置に接続されている。
【0030】
第4の本発明の透析液供給システムにて、他の実施態様によれば、前記多人数用透析液配管の出口部は、前記多人数用透析液配管の入口部に接続されている。
【0031】
第4の本発明の透析液供給システムにて、他の実施態様によれば、前記測定管路には、前記多人数用透析液配管に接続された入口部から出口部へと順に、流量調整弁、逆止弁、流量計、前記電気伝導率計及び前記pH計が設置されている。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、透析液配管内の液の性状を明確に判別することができる。これにより、透析液配管内に流動している液体の種類を把握し、透析器への不所望の液体が混入することを完全に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る透析液配管中の透析液判別方法及び透析液供給システムを図面に則して更に詳しく説明する。
【0034】
実施例1
図1に、本発明に係る透析液配管中の透析液判別方法を実施する透析液供給システムの一実施例を示す。
【0035】
本実施例の透析液供給システム1は、多人数用透析液供給システムとされ、先の図10を参照して説明した従来の透析液供給システムと同様の構成とされる。
【0036】
つまり、本実施例にて、透析液供給システム1は、多人数用透析液供給装置2を備えており、多人数用透析液供給装置2は、多人数用透析液配管3により同時に、患者のベッドサイドに患者毎に設置された透析用監視装置4へと透析液を供給する。通常、多人数用の透析液供給システム1においては、患者のベッド数は、2以上、例えば、20から50程度とされる。それ以上も可能である。
【0037】
患者のベッドサイドに配置された透析用監視装置4は、透析器(図示せず)が接続されており、透析器に透析液を供給すると共に、透析器の監視を行っている。
【0038】
多人数用透析液配管3の入口には、エンドトキシンカットフィルタ5が配置されている。また、多人数用透析液供給装置2は、電気伝導率計(図示せず)を内蔵しており、多人数用透析液配管3内へと供給される透析液が正しい濃度の透析液であるか否かを監視している。
【0039】
また、透析液供給システム1は、本実施例では、RO装置(逆浸透法精製水製造装置)6、粉末溶解装置7、次亜塩素酸ナトリウム活性化装置(消毒液作製装置)8、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置9、酢酸タンク装置10等を備えており、各装置が連携して動作している。なお、酢酸及び次亜塩素酸ナトリウムの代わりに、過酢酸を使用することもある。
【0040】
RO装置6は、切替バルブ11を備えた配管12にて多人数用透析液供給装置2に接続されている。本実施例では、粉末溶解装置7は、A剤溶解装置7a及びB剤溶解装置7bから成り、各装置7a、7bとも、入口配管13(13a、13b)がRO装置6に接続され、出口配管14(14a、14b)が多人数用透析液供給装置2に接続されている。A剤は、透析液を調製するための乾燥薬剤であるグルコース(ブドウ糖)などを含む粉末状薬剤であり、B剤は、重曹等を含む粉末状薬剤である。粉末溶解装置7は、A剤溶解装置7a及びB剤溶解装置7bから成る構成に限定されるものではない。また、粉末状薬剤ではなく、液剤であるA液、B液を使用することもできる。
【0041】
次亜塩素酸ナトリウム活性化装置8は、入口管路15がRO装置6に接続され、出口管路16は、切替バルブ17を介して多人数用透析液供給装置2に接続されている。
【0042】
また、本実施例では、次亜塩素酸ナトリウム(消毒薬剤)タンク装置9及び酢酸(炭酸カルシウム除去用薬剤)タンク装置10が多人数用透析液供給装置2に接続されている。
【0043】
つまり、多人数用透析液供給装置2は、RO装置6と粉末溶解装置7(即ち、A剤溶解装置7a、B剤溶解装置7b)を作動させることにより、透析液を多人数用透析液配管3に送給する。また、必要に応じて、RO装置6と次亜塩素酸ナトリウム活性化装置8を作動して、或いは、次亜塩素酸ナトリウム(例えば、200〜1200ppmの次亜塩素酸ナトリウム)タンク装置9及び酢酸(例えば、0.5〜2%の酢酸)タンク装置10からの薬剤を多人数用透析液配管3内へと供給して、或いは、RO装置6のみを作動して多人数用透析液配管3内の消毒、洗浄等を行うことができる。
【0044】
次に、本発明の特徴部分を構成する多人数用透析液供給装置2からの透析液を患者のベッド毎に設置された透析用監視装置4へと供給する多人数用透析液配管3の構成について説明する。
【0045】
本発明によれば、多人数用透析液配管3には、透析液配管内液監視装置20が設置される。
【0046】
本実施例にて、多人数用透析液配管3は、図1に示すように、多人数用透析液供給装置2に接続された配管入口部31と、各透析用監視装置4が設置された患者のベッドサイドに接続された配管本体部32と、配管本体部32の配管出口部33を前記配管入口部31へと接続する環流管路部34と、を備えている。
【0047】
透析液配管内液監視装置20は、環流管路部34の任意の位置に配置することができる。本実施例では、環流管路部34の出口部35、即ち、環流管路部34と配管出口部31の接続部に近接した環流管路部34に配置される。
【0048】
図2を参照すると、本実施例にて、透析液配管内液監視装置20は、環流管路部34に接続された測定管路21を備えている。測定管路21は、一端が環流管路部34に接続された入口端部22とされ、他端が廃液出口端部23とされる。測定管路21の入口端部22に近接して手動式の流量調整弁41が設置され、測定管路21内へと流入する液流量を調整する。通常、測定管路21内の流量は、100mL/min〜300mL/minの間で調整される。
【0049】
流量調整弁41から、更に測定管路21の下流側へと、順に、逆止弁42、流量計43が設置される。流量計43の更に下流側に、電気伝導率計51が配置される。また、本実施例によれば、電気伝導率計51の下流側にフローセル44を設け、pH計(pH電極)52が配置される。pH電極52にはKClリザーブタンク53が併設されている。電気伝導率計51及びpH電極52は、増幅器、A/D変換器、CPU、メモリ等を備えた演算処理装置100に接続されており、測定した電気伝導率及びpH値が演算される。測定結果は、演算処理装置100に接続されたディスプレー101に表示される。また、必要に応じてプリンター102にてプリントされる。
【0050】
なお、演算処理装置100内のメモリに測定時間と共に測定値を記憶することにより、システムの作動状況を後から確認することもできる。
【0051】
多人数用透析液配管3内に液が流れる時は、配管3内の液は陽圧(プラス)とされている。従って、上記構成により、透析液配管3内に液が流れている時は、測定管路21内には、環流管路部34から液が分岐されて自然に流れ込む。特別な吸入ポンプ手段等は必要としない。
【0052】
測定管路21内へと導入された液は、測定管路21内を流動し、廃液出口端部23から排出される過程において、測定管路21内の、即ち、多人数用透析液配管路3内を流動する液の性状、本実施例では、液の電気伝導率及びpH値が連続的に測定される。測定後の液は、pH電極52からKCl液が混入することにより出口端部23から排出される。
【0053】
次に、本実施例の上記構成とされる透析液配管内液監視装置20を使用した液判別方法について説明する。
【0054】
図3に、本実施例の透析液供給システム1にて使用される液体、即ち、透析液、RO水、次亜塩素酸ナトリウム活性水(低濃度:2〜20ppm)、次亜塩素酸ナトリウム活性水(高濃度:25〜100ppm)、酢酸(0.5〜2.0%)、次亜塩素酸ナトリウム(200〜1200ppm)の電気伝導度とpH値とを示す。
【0055】
尚、本願明細書等にて、「次亜塩素酸ナトリウム活性水」とは、次亜塩素酸ナトリウムと酢酸とRO水の混合溶液であり、所定の濃度に調製される。「次亜塩素酸ナトリウム活性水」は、単に「活性水」と呼ぶこともある。
【0056】
図3から分かるように、本実施例にて使用する液体、即ち、透析液、RO水、活性水(低濃度:2〜20ppm)、活性水(高濃度:25〜100ppm)、酢酸(0.5〜2.0%)、次亜塩素酸ナトリウム(200〜1200ppm)は、それぞれ互いに異なる電気伝導度とpH値とを示すものであって、多人数用透析液配管路内を流動する液の電気伝導率とpH値を測定すれば、液の種類を判定することができる。下記表1に、本実施例にて採用した液判別の判定基準を示す。
【0057】
なお、活性水は、濃度とpHを自由に設定し得るので、透析施設毎に判定基準を変える必要がある。
【0058】
【表1】

【0059】
測定例
図4に、病院Aにおける透析液供給システム1の1日(24時間)における作動状況を監視した際の時間系列のモニターデータの一例を示す。
【0060】
(1)午前6時半から7時半
RO水を使用し、透析液供給システム1の使用前の洗浄(水洗)を行う。
【0061】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を開とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を閉として、多人数用透析液供給装置2にRO水を供給する。
【0062】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約0.004mS/cm、pH値が約5.8であることを示している。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内にはRO水が流れていることが確認される。
【0063】
(2)午前7時半から午後2時15分
透析液供給システム1に透析液を供給し、多人数用透析液配管路3に透析液を供給する。
【0064】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を開とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を閉とする。多人数用透析液供給装置2は、RO装置6及び粉末溶解装置7(A剤溶解装置7a、B剤溶解装置7b)を作動させて所望の透析液を調製し、多人数用透析液配管路3に透析液を供給する。
【0065】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約14.2mS/cm、pH値が約7.3であることを示している。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内には透析液が流れていることが確認される。
【0066】
(3)午後2時15分から午後2時45分
RO水を使用し、透析液供給システム1の使用後の洗浄(水洗)を行う。
【0067】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を開とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を閉として、多人数用透析液供給装置2にRO水を供給する。
【0068】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約14.2mS/cmから約0.01mS/cmへと変動途中であり、また、pH値は、約7.3から約4.2へと変動中である。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内の液が、透析液からRO水に交換中であることが確認される。
【0069】
(4)午後2時45分から午後3時10分
次亜塩素酸ナトリウム活性水を使用し、透析液供給システム1の使用後の洗浄(薬洗)を行う。
【0070】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を閉とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を開として、多人数用透析液供給装置2に活性水(高濃度:55ppm)を供給する。
【0071】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約0.2mS/cmであり、pH値は、約4.1である。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内の液が、RO水から高濃度の活性水に交換されたことが確認される。
【0072】
(5)午後3時10分から3時45分
RO水を使用し、透析液供給システム1の使用前の洗浄(水洗)を行う。
【0073】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を開とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を閉として、多人数用透析液供給装置2にRO水を供給する。
【0074】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約0.007mS/cm、pH値が約5.8であることを示している。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内にはRO水が流れていることが確認される。
【0075】
(6)午後3時45分から午後11時10分
透析液供給システム1に透析液を供給し、多人数用透析液配管路3に透析液を供給する。
【0076】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を開とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を閉とする。多人数用透析液供給装置2は、RO装置6及び粉末溶解装置7(A剤溶解装置7a、B剤溶解装置7b)を作動させて所望の透析液を調製し、多人数用透析液配管路3に透析液を供給する。
【0077】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約14.2mS/cm、pH値が約7.3であることを示している。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内には透析液が流れていることが確認される。
【0078】
(7)午後11時10分から午後11時45分
RO水を使用し、透析液供給システム1の使用後の洗浄(水洗)を行う。
【0079】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を開とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を閉として、多人数用透析液供給装置2にRO水を供給する。
【0080】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約14.2mS/cmから約0.004mS/cmへと変動し、また、pH値は、約7.3から約5.7へと変動した。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内の液が、透析液からRO水に交換されたことが確認される。
【0081】
(8)午後11時45分から午前1時
活性水を使用し、透析液供給システム1の使用後の洗浄(薬洗)を行う。
【0082】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を閉とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を開として、多人数用透析液供給装置2に活性水(高濃度:55ppm)を供給する。
【0083】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約0.08mS/cmであり、pH値は、約4.1である。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内の液が、RO水から高濃度の活性水に交換されたことが確認される。
【0084】
(9)午前1時から午前6時半
次の使用開始までの間、透析液供給システム1に低濃度の活性水を滞留させる。
【0085】
図1にて、RO装置6の管路12の切替バルブ11を閉とし、次亜塩素酸ナトリウム活性装置8の切替バルブ17を開として、多人数用透析液供給装置2に活性水(低濃度:2ppm)を供給する。
【0086】
このとき、図4にて、透析液配管内液監視装置20は、電気伝導率が約0.007mS/cmであり、pH値は、約5.2である。即ち、表1から、透析液配管内液監視装置20の測定管路21内、即ち、多人数用透析液配管3内の液が、高濃度の活性水から低濃度の活性水に交換されたことが確認される。
【0087】
上述の測定例にて理解されるように、本実施例にて使用する液体、即ち、透析液、RO水、次亜塩素酸ナトリウム活性水(低濃度:2ppm)、次亜塩素酸ナトリウム活性水(高濃度:55ppm)は、それぞれ互いに異なる電気伝導度とpH値とを示すものであって、多人数用透析液配管路内を流動する液の電気伝導率とpH値を測定すれば、表1に示すような判断基準により、液の種類を判定することができる。
【0088】
上記測定例では、酢酸及び次亜塩素酸ナトリウムは使用されてはいないが、図3、表1にて分かるように、これらの液も他の液とは異なる電気伝導度とpH値とを示すものであって、多人数用透析液配管路内を流動する液の電気伝導率とpH値を測定すれば、液の種類を判定することができる。
【0089】
なお、上述したように、酢酸及び次亜塩素酸ナトリウムの代わりに、過酢酸を使用することもあるが、この液も他の液とは異なる電気伝導度とpH値とを示すものであって、多人数用透析液配管路内を流動する液の電気伝導率とpH値を測定すれば、液の種類を判定することができる。
【0090】
次に、本実施例の液の種類の判別を自動化する場合の手順を、図5及び図6に示すフロー図を参照して説明する。
【0091】
(1)図5にて、液の種類判別モードが開始される(S1)。
【0092】
(2)先ず、流量計にて43にて測定管路21内に所定量の液が供給されているか否かを判定する(S2)。流量が所定流量、本実施例では、100mL/min未満の場合には、即ち、S2でYesの場合、測定不能とする。
【0093】
(3)流量が所定流量、即ち、100mL/min以上の場合には、即ち、S2でNoの場合、次のステップ(S3)に進み、電気伝導率計51の測定結果を見る。電気伝導率が所定値、本実施例では、5μS/cm以下であるか否かを判断する。5μS/cm以下(即ち、0〜5μS/cmの範囲)である場合、即ち、S3でYesの場合、次のステップ(S4)に進み、pH電極52の測定結果を見る。pH値が所定値、本実施例では、5.0〜7.0の範囲であるか否かを判断する(S4)。5.0〜7.0の範囲にある場合、即ち、S4でYesの場合、RO水であると判定する。S4でNoの場合、判定無しとする。
【0094】
(4)S3で、電気伝導率が5μS/cmを超える場合、即ち、S3でNoの場合、次のステップ(S5)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、8μS/cm未満であるか否かを判断する。8μS/cm未満(即ち、5〜8μS/cmの範囲)である場合、即ち、S5でYesの場合、判定無しとする。
【0095】
(5)S5で、電気伝導率が8μS/cm以上である場合、即ち、S5でNoの場合、次のステップ(S6)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、60μS/cm以下であるか否かを判断する。60μS/cm以下(即ち、8〜60μS/cmの範囲)である場合、即ち、S6でYesの場合、次のステップ(S7)に進み、pH電極52の測定結果を見る。pH値が所定値、本実施例では、4.0〜6.0の範囲であるか否かを判断する(S7)。4.0〜6.0の範囲にある場合、即ち、S7でYesの場合、活性水(低濃度)であると判定する。S7でNoの場合、判定無しとする。
【0096】
(6)S6で、電気伝導率が60μS/cmを超える場合、即ち、S6でNoの場合、次のステップ(S8)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、80μS/cm未満であるか否かを判断する。80μS/cm未満(即ち、60〜80μS/cmの範囲)である場合、即ち、S8でYesの場合、判定無しとする。
【0097】
(7)S8で、電気伝導率が80μS/cm以上である場合、即ち、S8でNoの場合、次のステップ(S9)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、400μS/cm以下であるか否かを判断する。400μS/cm以下(即ち、80〜400μS/cmの範囲)である場合、即ち、S9でYesの場合、次のステップ(S10)に進み、pH電極52の測定結果を見る。pH値が所定値、本実施例では、3.5〜5.5の範囲であるか否かを判断する(S10)。3.5〜5.5の範囲にある場合、即ち、S10でYesの場合、活性水(高濃度)であると判定する。S10でNoの場合、次のステップ11に進む。
【0098】
以降、図6を参照して説明する。
【0099】
(8)図6を参照すると、S9で、電気伝導率が400μS/cmを超える場合、即ち、S9でNoの場合、及び、ステップ10でNoの場合、次のステップ11(S11)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、300μS/cm未満であるか否かを判断する。300μS/cm未満(即ち、300〜100μS/cmの範囲)である場合、即ち、S11でYesの場合、判定無しとする。
【0100】
(9)S11で、電気伝導率が300μS/cm以上である場合、即ち、S11でNoの場合、次のステップ(S12)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、1000μS/cm以下であるか否かを判断する。1000μS/cm以下(即ち、1000〜300μS/cmの範囲)である場合、即ち、S12でYesの場合、次のステップ(S13)に進み、pH電極52の測定結果を見る。pH値が所定値、本実施例では、2.0〜3.0の範囲であるか否かを判断する(S13)。2.0〜3.0の範囲にある場合、即ち、S13でYesの場合、酢酸であると判定する。S13でNoの場合、次のステップ14に進む。
【0101】
(10)S12で、電気伝導率が1000μS/cmを超える場合、即ち、S12でNoの場合、及び、ステップ13でNoの場合、次のステップ(S14)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、400μS/cm未満であるか否かを判断する。400μS/cm未満(即ち、400〜300μS/cmの範囲)である場合、即ち、S14でYesの場合、判定無しとする。
【0102】
(11)S14で、電気伝導率が400μS/cm以上である場合、即ち、S14でNoの場合、次のステップ(S15)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、3000μS/cm以下であるか否かを判断する。3000μS/cm以下(即ち、3000〜400μS/cmの範囲)である場合、即ち、S15でYesの場合、次のステップ(S16)に進み、pH電極52の測定結果を見る。pH値が所定値、本実施例では、8.0〜12.0の範囲であるか否かを判断する(S16)。8.0〜12.0の範囲にある場合、即ち、S16でYesの場合、次亜塩素酸ナトリウムであると判定する。S16でNoの場合、判定無しとする。
【0103】
(12)S15で、電気伝導率が3000μS/cmを超える場合、即ち、S15でNoの場合、次のステップ17(S17)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、13700μS/cm未満であるか否かを判断する。13700μS/cm未満(即ち、13700〜3000μS/cmの範囲)である場合、即ち、S17でYesの場合、判定無しとする。
【0104】
(13)S17で、電気伝導率が13700μS/cm以上である場合、即ち、S17でNoの場合、次のステップ(S18)に進み、電気伝導率が所定値、本実施例では、14300μS/cm以下であるか否かを判断する14300μS/cm以下(即ち、14300〜13700μS/cmの範囲)である場合、即ち、S18でYesの場合、次のステップ(S19)に進み、pH電極52の測定結果を見る。pH値が所定値、本実施例では、7.1〜7.5の範囲であるか否かを判断する(S19)。7.1〜7.5の範囲にある場合、即ち、S19でYesの場合、透析液であると判定する。S19でNoの場合、次のステップ(S20)にて判定無しとする。
【0105】
(14)S18で、電気伝導率が14300μS/cmを超える場合、即ち、S18でNoの場合、次のステップ20(S20)に進み、同じく判定無しとする。
【0106】
本実施例によれば、透析液配管内監視装置20にて、演算処理装置100により上記諸ステップ(工程)を実施することにより、自動的に、多人数用透析液配管3内を流動する液の種類を判別することができる。
【0107】
上述したように、本発明によれば、多人数用透析液配管内の液の性状を明確に判別することができる。これにより、多人数透析液供給装置により多人数透析液配管内に流動している液体の種類を把握し、透析器への不所望の液体が混入することを完全に回避することができる。
【0108】
上記実施例においては、多人数用透析液配管3に環流管路部34を付設し、この環流管路部34に透析液配管内監視装置20を設置する構成としたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、図7に示すように、多人数用透析液配管3に環流管路部34を付設することなく、多人数用透析液配管3に配管出口部33に透析液配管内監視装置20を設置する構成であっても良い。この変更実施例においても、上記実施例と同様の作用効果を達成し得る。
【0109】
実施例2
次に、図8を参照して、本発明の透析液供給システムの他の実施例について説明する。本実施例では、透析液供給システムは、個人用の透析液供給システムとされる。
【0110】
実施例1においては、多人数用透析液配管3中の透析液判別方法を実施する透析液供給システム1について説明したが、本発明の原理は、個人用の透析液供給システムにおいても同様に適用し、同様の作用効果を達成し得る。
【0111】
図8を参照すると、個人用透析液供給システム1Aは、患者のベッドサイドに患者毎に設置された透析用監視装置4へと透析液を供給する。
【0112】
患者のベッドサイドに配置された透析用監視装置4は、透析器40が接続されており、透析器40に透析液を供給すると共に、透析器40の監視を行っている。
【0113】
個人用透析液供給システム1Aは、透析用監視装置4毎に、即ち、透析器40毎に、原液装置7(A液装置7a、B液装置7b)、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置9、酢酸タンク装置10等を備えており、各装置が透析器40に接続され、連携して動作している。
【0114】
RO装置6は、切替バルブ11を備えた配管12、及び、分岐配管19にて透析用監視装置4に接続されている。
【0115】
本実施例では、透析液調製用の原液装置7は、A液装置7a及びB液装置7bから成り、各装置7a、7bとも、出口配管14(14a、14b)がRO装置6の分岐配管19に接続され、透析液監視装置4に接続されている。
【0116】
また、本実施例では、次亜塩素酸ナトリウム(消毒薬剤)タンク装置9及び酢酸(炭酸カルシウム除去用薬剤)タンク装置10が配管9a、10aにてRO装置6の分岐配管19に接続され、個人用透析液監視装置4に接続されている。
【0117】
透析液監視装置4内には透析液配管3Aが配置されており、透析液配管3Aは、透析器40の入口部の配管(内部透析液配管)3Aaと、透析器40の出口部の配管(排液配管)3Abとを備えている。
【0118】
従って、個人用透析液監視装置4は、RO装置6と原液装置7(即ち、A液装置7a、B液装置7b)を作動させることにより、透析液を内部透析液配管3Aaを介して透析器40に送給する。
【0119】
また、必要に応じて、RO装置6、次亜塩素酸ナトリウム(例えば、200〜1200ppmの次亜塩素酸ナトリウム)タンク装置9及び酢酸(例えば、0.5〜2%の酢酸)タンク装置10を作動させ、或いは、RO装置6のみを作動させて、内部透析液配管3Aaを介して透析器40内へと供給し、透析器40等の消毒、洗浄等を行うことができる。
【0120】
透析器40からの使用済み透析液等の液体は、透析液配管3Aの出口部(即ち、排液配管)3Abを介して排出される。
【0121】
本実施例によれば、透析液配管3Aの入口部、即ち、内部透析液配管3Aaに、実施例1で説明したと同様の構成及び機能をなす透析液配管内液監視装置20が設置される。
【0122】
つまり、透析液配管内液監視装置20は、図2に示すように、内部透析液配管3Aaに接続された測定管路21を備えている。本実施例では、測定管路21は、その入口端部22が内部透析液配管3Aaに接続され、他端の廃液出口端部23から排液される。
【0123】
測定管路21の入口端部22に近接して手動式の流量調整弁41が設置され、測定管路21内へと流入する液流量を調整する。通常、測定管路21内の流量は、100mL/min〜300mL/minの間で調整される。
【0124】
本実施例においても、測定管路21内へと導入された液は、測定管路21内を流動し、廃液出口端部23から排出される過程において、測定管路21内の、即ち、透析液配管路3Aの入口部の内部透析液配管3Aa内を流動する液の性状、本実施例では、液の電気伝導率及びpH値が連続的に測定される。測定後の液は、排出される。
【0125】
実施例1と同様にして、透析液配管内液監視装置20により液判別が行われる。
【0126】
つまり、図3から分かるように、本実施例にて使用する液体、即ち、透析液、RO水、次亜塩素酸ナトリウム活性水(低濃度:2〜20ppm)、次亜塩素酸ナトリウム活性水(高濃度:25〜100ppm)、酢酸(0.5〜2.0%)、次亜塩素酸ナトリウム(200〜1200ppm)は、それぞれ互いに異なる電気伝導度とpH値とを示すものであって、透析液配管路3A内を流動する液の電気伝導率とpH値を測定すれば、例えば、上記表1に示す判定基準に従って、液の種類を判定することができる。
【0127】
また、透析液配管内監視装置20にて、演算処理装置100により、図5及び図6に示した上記諸ステップ(工程)を実施することにより、自動的に、個人用透析液配管3A内を流動する液の種類を判別することができる。
【0128】
上述したように、本実施例においても、個人用透析液配管3A内の液の性状を明確に判別することができる。これにより、個人用透析液供給システム内を流動する液体の種類を把握し、透析器への不所望の液体が混入することを完全に回避することができる。
【0129】
上記実施例においては、透析液配管3Aの入口部(即ち、内部透析液配管)3Aaに透析液配管内監視装置20を設置する構成としたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、図9に示すように、透析器40からの使用済み透析液等の液体を排出するための透析液配管3Aの出口部(即ち、排液配管)3Abに透析液配管内監視装置20を設置する構成であっても良い。この変更実施例においても、上記実施例と同様の作用効果を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明に係る透析液供給システムの一実施例を説明する概略構成図である。
【図2】本発明に従って構成される透析液配管内液監視装置の一実施例を説明する概略構成図である。
【図3】透析液供給システムにて使用される透析液、RO水、活性水(低濃度:2ppm)、活性水(高濃度:55ppm)、酢酸、次亜塩素酸ナトリウムの電気伝導度とpH値とを説明する図である。
【図4】透析液供給システムの作動状況を監視した際のモニターデータの一例を示す図である。
【図5】本発明に係る透析液供給システムにて実施される液の種類判別方法を説明するフロー図である。
【図6】本発明に係る透析液供給システムにて実施される液の種類判別方法を説明するフロー図である。
【図7】本発明に係る透析液供給システムの他の実施例を説明する概略構成図である。
【図8】本発明に係る透析液供給システムの他の実施例を説明する概略構成図である。
【図9】本発明に係る透析液供給システムの他の実施例を説明する概略構成図である。
【図10】従来の透析液供給システムを説明する概略構成図である。
【符号の説明】
【0131】
1、1A 透析液供給システム
2 多人数用透析液供給装置
3 多人数用透析液配管
3A 個人用透析液配管
4 透析用監視装置
5 エンドトキシンカットフィルタ
6 RO装置
7 粉末溶解装置
8 次亜塩素酸ナトリウム活性化装置
9 次亜塩素酸ナトリウムタンク
10 酢酸タンク
20 透析液配管内液監視装置
21 測定管路
40 透析器
51 電気伝導率計
52 pH電極(pH計)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液若しくはその他の液体を透析器へと流動させるか、又は、前記透析器からの前記液体を排出するための個人用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおける前記透析液配管中の透析液判別方法であって、
前記透析液配管内を流れる液体の電気伝導率とpH値とを連続的に測定して、前記透析液配管内を流動する液体の種類を判別することを特徴とする透析液配管中の透析液判別方法。
【請求項2】
多人数用透析液供給装置により透析液若しくはその他の液体を流動させるために多人数用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおける前記透析液配管中の透析液判別方法であって、
前記多人数用透析液配管内を流れる液体の電気伝導率とpH値とを連続的に測定して、前記多人数用透析液配管内を流動する液体の種類を判別することを特徴とする透析液配管中の透析液判別方法。
【請求項3】
前記その他の液体は、RO水、次亜塩素酸ナトリウム活性水(低濃度:2〜20ppm)、次亜塩素酸ナトリウム活性水(高濃度:25〜100ppm)、酢酸、及び、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透析液配管中の透析液判別方法。
【請求項4】
前記液体の種類を判別するための判定基準は、
(1)電気伝導率(μS/cm)が5以下、pH値が5.0〜7.0の場合は、RO水、
(2)電気伝導率(μS/cm)が8〜60、pH値が4.0〜6.0の場合は、低濃度次亜塩素酸ナトリウム活性水、
(3)電気伝導率(μS/cm)が70〜400、pH値が3.5〜5.5の場合は、高濃度次亜塩素酸ナトリウム活性水、
(4)電気伝導率(μS/cm)が300〜1000、pH値が2.0〜3.0の場合は、0.5%〜2%の酢酸、
(5)電気伝導率(μS/cm)が400〜3000、pH値が8.0〜12.0の場合は、200〜1200ppmの次亜塩素酸ナトリウム、
(6)電気伝導率(μS/cm)が13700〜14300、pH値が7.1〜7.5の場合は、透析液、
であることを特徴とする請求項3に記載の透析液配管中の透析液判別方法。
【請求項5】
透析液若しくはその他の液体を透析器へと流動させるか、又は、前記透析器からの前記液体を排出するための個人用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおいて、
前記透析液配管に接続された測定管路と、
前記測定管路に接続された電気伝導率計及びpH計と、
前記電気伝導率計及びpH計からの測定値を基に前記透析液配管内を流動する液体の種類を判別する演算処理装置と、
を有することを特徴とする透析液供給システム。
【請求項6】
RO装置、粉末溶解装置、次亜塩素酸ナトリウム活性化装置、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置、及び、酢酸タンク装置を備えており、前記各装置は、前記透析液配管を介して前記透析器に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の透析液供給システム。
【請求項7】
前記測定管路には、前記透析液配管に接続された入口部から出口部へと順に、流量調整弁、逆止弁、流量計、前記電気伝導率計及び前記pH計が設置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の透析液供給システム。
【請求項8】
多人数用透析液供給装置により透析液若しくはその他の液体を流動させるために多人数用の透析液配管を備えた透析液供給システムにおいて、
前記多人数用透析液配管の出口部に接続された測定管路と、
前記測定管路に接続された電気伝導率計及びpH計と、
前記電気伝導率計及びpH計からの測定値を基に前記多人数用透析液配管内を流動する液体の種類を判別する演算処理装置と、
を有することを特徴とする透析液供給システム。
【請求項9】
RO装置、粉末溶解装置、次亜塩素酸ナトリウム活性化装置、次亜塩素酸ナトリウムタンク装置、及び、酢酸タンク装置を備えており、前記各装置は、前記多人数用透析液供給装置に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の透析液供給システム。
【請求項10】
前記多人数用透析液配管の出口部は、前記多人数用透析液配管の入口部に接続されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の透析液供給システム。
【請求項11】
前記測定管路には、前記多人数用透析液配管に接続された入口部から出口部へと順に、流量調整弁、逆止弁、流量計、前記電気伝導率計及び前記pH計が設置されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかの項に記載の透析液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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